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[コラム]保険薬局と調剤薬局

スレッド
この問題だけはやや静観していましたし、僕自身は薬局を離れた立場なので、あまり言及しませんでした。「調剤だけが薬局の役目ではない。そもそも調剤薬局という言葉は存在しない。」というテーゼのもと、保険薬局と言う呼称を用いるというのが今のスタンダードなのでしょうか。「単に調剤だけしているわけじゃない」という意味合いで、調剤薬局と言う呼称を使うべきではないということらしいでのです。

誤解を招くといけないので、先に述べておきますが、僕は「薬局」の呼称が保険薬局だろうと調剤薬局だろうとどちらでもいいという立場です。僕は今現在、病院薬剤師ですが、薬剤師の経歴の上では薬局勤務年数の方が長く、至らない点も多々あったかと思いますが、それなりに薬剤師としての職責を全うしよういろいろ模索し、努力を怠っていたつもりはありません。EBMスタイル診療支援は薬局勤務時代から提唱しているものです。

僕が大学を卒業して最初に就職したのが株式会社●●調剤薬局でした。今もその名前は残っています。僕を育ててくれた会社です。当時の直属の上司には薬剤師として、そして社会人として大変多くのことを学んだんです。当時の会社、そしてその上司や先輩方がいなかったら今の僕は無いでしょう。

調剤薬局など存在しないという主張はそのまま株式会社●●調剤薬局の存在を否定することにもつながりかねません。(少なくとも僕はそういう意味においてあまり良い気分ではありません) いやいやそれはコトバの綾だよ、とおっしゃるかもしれません。そうなのです、コトバと言うのは実に奥が深いのです。そのことを理解すれば、この問題はつまるところコトバの同一性をめぐる信念対立であろうかと思います。

コトバには二面性があります。調剤薬局というコトバには音声としての「調剤薬局」そして概念としての「調剤薬局」があります。僕たちが発する言葉としての「調剤薬局」は共通の日本語として交わされますよね。ただそれが概念として認識される「調剤薬局」は個々個人で異なるんですよ。

そもそも調剤というコトバからしてその概念は人それぞれでしょう。僕にとって調剤とは疑義照会やEBMスタイル診療支援も含めて調剤なんです。だから僕の薬剤師としての業務の基本は調剤薬局にある。でも人によっては単に処方箋通りに薬をわたし、無難に薬歴を書く、それが「調剤」と認識されている方もいる。だから調剤なんてコトバに縛られずに、僕らは薬剤師としてそれに終始しない、ということから保険薬局という呼称にこだわりがでるのも理解ができるんです。

ただ大事なのは調剤という業務概念を分節しているのは、個々個人で全く異なるということなんです。だから僕は保険薬局と言う呼称が適切であるということに異存はありませんが、調剤薬局は存在しないという仕方に違和感があるのです。僕の中では存在しているのだからどうしようもないのです。

●●調剤薬局と言う会社名は決して少なくないと思います。大手の会社でもあるでしょう。調剤薬局は存在しない、と言うのは業務内容において存在しないという意味合いだと僕は想像していますが、コトバの捉え方はやはり恣意的な分節に基づいていますから、コトバの綾と言われようと、会社の存在そのものを否定している、あるいはそこに努める薬剤師を簡単に言えば「調剤」しかしていない、と見下すということにもとらえられる恐れをはらんでいます。

薬局の呼称がどうであれ、中身の薬剤師が患者の役に立てるかどうかなんですよ。保険薬局の薬剤師を自称しようが、なかみが「調剤」のみであればそれは「調剤」薬局と変わらんでしょう。念のため、調剤というコトバをあえて「」で示してますが、僕の思う調剤は「」が付きません。

調剤薬局か、保険薬局か、この名称にこだわるのは自由ですし、こだわりを持つことも大切です。しかしながら調剤薬局は存在しないという仕方で無用な信念対立を起こすよりはもっと他にやるべきことがあるでしょう、と言うのが僕の主張ではあります。
#読書 #本 #詩 #エッセイ #コラム

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Feb.18;1(6)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-うつ病と抗炎症薬の効果-

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[ポイント]
■近年神経の慢性炎症と精神疾患発症との関連が示唆されている。
■セレコキシブは複数の研究でうつ症状改善を示唆しているが長期的な安全性については不明であり、特に心血管リスクには留意したい。
■比較的安全性の高いと考えられるEPA製剤でもうつ症状に関する報告はあるがその結果にはばらつきがある。なおIFNα投与に伴ううつ症状発現予防に有効性を認めたとする報告がある。
■TNFα阻害薬の抗炎症効果はうつ症状改善に期待されているが、現段階で明確な有効性を示した報告は限定的であり、コストや有害事象の観点から推奨できない。
■スタチンにも抗炎症作用があり、うつ症状への有効性が期待されている。観察研究ではわずかにうつ病発症を抑制したとする報告がある。

[イントロダクション]
近年、精神疾患に対する炎症の関与が注目されています。うつ病の患者では1IL-6やTNFαというような炎症性サイトカイン上昇を認めるという報告もあるそうです。サイトカインが精神疾患へ関与する機序には神経伝達物質の代謝に関する、キヌレイン経路が示唆されています。
モノアミンの代謝にはインドールアミン酸素添加酵素(IDO)が関与しますが、IDOはIFNγやTNFα、IL-1、IL-6などのサイトカインによって活性化されます。
セロトニンの材料として有名なトリプトファンはサイトカインにより活性化されたIDO存在下でキヌレインとなり、それが中枢神経内でキヌレン酸(KYNA)とキノリン酸(QUIN)になります。KYNAは神経保護に、そしてQUINは神経毒性的に作用すると考えられており、QUINが多すぎて、KYNAが少なすぎると理論上神経毒性が高まり、アルツハイマー型認知症など神経変性疾患につながるのではないかと考えられ、逆にKYNAが多すぎるとNMDA受容体の活性が低下し、統合失調症に結びつくのではないかと考えられています。
うつ病患者においてもサイトカインがIDOを活性化し、セロトニンの減少とともに、QUINの上昇が関与しているのではないかとも言われています。(※1)

[セレコキシブのうつ病に対する有効性]

抗炎症薬の代表的なものとしてNSAIsを取り上げてみましょう。セレコキシブに関する研究が近年報告されています。大うつ病患者(大うつ病もしくはハミルトンうつ病評価尺度-17項目(HAM-D)で18以)40人を対象として、セルトラリン200mg/日に加え、セレコキシブ400mg/日を投与した群とセルトラリン200mg/日に加えプラセボを投与した群と比較したランダム化比較試験(※2)によれば6週間の投与で、セレコキシブ群でIL-6が有意に低下し、ハミルトンうつ病評価尺度も有意に改善したと報告されています。また治療に応答したのはE群で95%、C群で50%、寛解はE群で35%、C群で5%といずれも有意でした。うつ病患者の治療に抗うつ薬へのセレコキシブ上乗せは効果的である可能性が示唆されています。

単一の研究ではなかなかその解釈に難しさも伴うわけですが、セレコキシブの上乗せ効果について、ランダム化比較試験5研究のメタ分析も報告されています。(※3)その結果、ハミルトンうつ病評価尺度スコアの有意な減少と治療応答、寛解の有意な増加が示唆されました。
アウトカム 結果
4週後のハミルトンうつ病評価尺度スコア 平均差3.3[95%信頼区間1.2-5.3]
4週後のハミルトンうつ病評価尺度スコア 平均差3.43[95%信頼区間1.9-4.9]
治療応答 オッズ比6.6[95%信頼区間2.5-17],
寛解 オッズ比6.6[95%信頼区間2.7-15.9]


このように、小規模研究からは単極性うつの治療に抗うつ薬に加えてセレコキシブを投与することのベネフィットが示されていますが、長期的な有効性・安全性については未だ不明な部分も多いでしょう。特にセレコキシブの長期投与は心血管リスクに留意したいところです。

[ω3系不飽和脂肪酸のうつ病に対する有効性]

EPAやDHAのようなω3系不飽和脂肪酸にも抗炎症作用が有ると言われ、特に動脈硬化性疾患の予防など循環器領域において様々な報告があります(が、複数の研究であまり前向きな結果は出ていません…。)精神科領域においても近年報告がなされており、2014年にはメタ分析が報告されています。(※4)

この研究は、大うつ病性障害の患者(11研究)、抑うつ症状のある患者(8研究)を対象に、ω3系不飽和脂肪酸(主にEPA、DHA)の投与あり620人とプラセボ614人を比較して、うつ病重症度臨床尺度の標準化平均差を検討したものです。ランダム化比較試験のメタ分析ですが、全体的に異質性が高い。ブロボグラムにもバラツキを認めます。結果は以下の通りでした。
アウトカム 標準化平均差 I2統計量
大うつ病性障害 0.56 SD [95%信頼区間0.20‐0.92] 71%
抑うつ症状患者 0.22 SD [95%信頼区間0.01‐0.43], 46%
全体 0.38 SD [95%信頼区間0.18‐0.59] 65%

ω3系不飽和脂肪酸は大うつ病性障害の患者、抑うつ症状のある患者に対して有効である可能性を示唆しています。ただし異質性は高く、かなり小規模の研究の寄せ集めのような印象もあります。

インターフェロン(IFN)αでうつ病症状を呈することは有名ですが、やはりこれもサイトカインとうつ症状の関与が想定される一つの事例でしょう。IFN治療において 抗うつ薬、ルーチンの予防投与は、有害事象をもたらしかねないため、安全な代替え療法があれば、それにこしたことはありません。そのような中でもやはり、ω3系不飽和脂肪酸の抗炎症作用とうつ症状は注目されています。IFNα治療におけるDHA、EPAのうつ症状予防投与を検討した小規模のランダム化比較試験も2014年に報告されていました。(※5)

この研究はIFNα治療を行う162人の患者を対象に、EPAの投与、DHAの投与、プラセボの投与を比較して、2週間のうつ病発症を検討した2重盲検ランダム化比較試験です。その結果、うつ病発症率はEPAで10%、DHAで28%、プラセボで30%と、EPAでは発生リスクが統計的に少なくDHAでは不明という結果でした。またEPA,DHAでは、うつの発症時間を遅らす可能性も示唆されています。
アウトカム EPA DHA プラセボ
うつ発症までの時間 12.0週 11.7週 5.3週


[スタチン系薬剤のうつ病に対する有効性]

スタチンは酸化的ストレスを減少させ炎症リスクを低下させる可能性が示唆されています。スタチンの使用とうつ病との関連を検討したコホート研究が報告されています。(※6)

この研究はスウェーデンにおける40歳以上の参加者(うつ病の診断を受けた人を除外)4,607,990人を対象に、シンバスタチン(665932人)、プラバスタチン(27244人)、フルバスタチン(5932人)、アトルバスタチン(95231人)、ロスバスタチン(10493人)の使用をスタチンの使用なしと比較してうつ病の発症を検討しました。

交絡への配慮として、性別、年齢、移民ステータス、婚姻状況、教育、収入、居住地域、COPDによる入院、アルコール依存とそれに関連する肝疾患、冠動脈疾患による入院で調整されています。

その結果、ごくわずかですが、スタチンの使用はうつ病の診断との関連が有意に減少する可能性を示唆しました。特にシンバスタチンで統計的有意な差が示されています。おそらくこれは解析対象人数がシンバスタチンで圧倒的に多く、そのため有意な差がついている可能性があり結果は割り引いて考えた方が良い印象です。現段階ではどのスタチンにも大きな差は無いと考えた方が無難と言えましょう。
薬剤名 調整オッズ比 95% 信頼区間
スタチン全体 0.95 0.91~0.99
シンバスタチン 0.93 0.89~0.97
プラバスタチン 0.90 0.74~1.09
フルバスタチン 0.98 0.65~1.46
アトルバスタチン 1.11 1.01~1.22
ロスバスタチン 1.21 0.92~1.60


[TNFα阻害薬のうつ病に対する有効性]

リウマチ等で用いられるTNFα阻害薬ですが、60人の大うつ病患者を対象としたランダム化比較試験が報告されています。(※7)

インフリキシマブ5mg/㎏とプラセボを比較し12週間治療で、ハミルトンうつ病評価尺度(17項目)が検討されました。その結果、全体で明確な差を認めませんでした。バイオマーカー高値では改善を示唆しているようですが、コストや有害事象リスクなどを考慮すれば、現段階で積極的に推奨できるような治療ではないでしょう。

[うつ症状に対する抗炎症薬の考え方]

これまで見てきたように、うつ症状に対する抗炎症薬は小規模トライアルやそのメタ分析において、有効性をし示唆する報告は多数存在します。このような抗炎症薬全般にたいするうつ症状への治療効果を検討したメタ分析(※8)を見てみましょう。

この研究は、14のランダム化比較試験に参加した、うつ病基準を満たすものを含む、うつ症状を有する成人患者6262人を対象に、抗炎症薬の投与(NSAIDs10研究、サイトカイン阻害薬4研究)とプラセボを比較して、治療後のうつ病スコア及び有害事象を検討したメタ分析です。主な結果を以下にまとめます。
表タイトル
アウトカム 標準化平均差[95%信頼区間] I2統計量
うつ症状全体 -0.34[-0.57~-0.11] 90%
うつ病患者 -0.54[-1.08~-0.01] 68%
うつ症状患者 -0.27[-0.53~-0.01] 68%


サブ解析では特にセレコキシブに有効性が認められたとしています。
▶うつ症状(SMD, -0.29; 95% CI, -0.49 to -0.08; I2 = 73%)
▶寛解(OR, 7.89; 95% CI, 2.94 to 21.17; I2 = 0%)
▶応答(OR, 6.59; 95% CI, 2.24 to 19.42; I2 = 0%).

全体的に異質性が高く、小規模トライアルを含むメタ分析と言う点に注意したいところです。有害事象については感染症や胃腸障害、心血管リスクは短期的な上昇は見られないようですが、長期安全性には留意したいところです。

現段階では明確な安全性は少なくとも示されていないところから、その使用には熟慮が必要ですが、有効性の面からセレコキシブや短期間の使用であれば考慮されるかもしれません。また安全性の面から考慮するとEPA製剤の使用は選択肢として残しておいても良いかもしれません。なおスタチン系薬剤ではその有効性は観察研究において示されているもののごくわずかな印象です。ランダム化比較試験のメタ分析でも、その有効性はあまりよく分かっていません。(※9)今後の介入研究に注目したいと思います。

[参考文献]
(※1)宮内倫也 著 こうすればうまくいく! 精神科臨床 はじめの一歩 2014年 中外医学社
(※2) Abbasi SH, Hosseini F, Modabbernia A.et.al. Effect of celecoxib add-on treatment on symptoms and serum IL-6 concentrations in patients with major depressive disorder: randomized double-blind placebo-controlled study. J Affect Disord. 2012 Dec 10;141(2-3):308-14. PMID: 22516310
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22516310
(※3)Faridhosseini F, Sadeghi R, Farid L,et.al. Celecoxib: a new augmentation strategy for depressive mood episodes. A systematic review and meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. Hum Psychopharmacol. 2014 May;29(3):216-23. PMID: 24911574
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24911574
(※4)Grosso G, Pajak A, Marventano S.et.al. Role of omega-3 fatty acids in the treatment of depressive disorders: a comprehensive meta-analysis of randomized clinical trials. PLoS One. 2014 May 7;9(5):e96905. PMID: 24805797
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24805797
(※5) Su KP, Lai HC, Yang HT.et.al. Omega-3 fatty acids in the prevention of interferon-alpha-induced depression: results from a randomized, controlled trial. Biol Psychiatry. 2014 Oct 1;76(7):559-66. PMID: 24602409
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24602409
(※6)Redlich C, Berk M, Williams LJ,et.al. Statin use and risk of depression: a Swedish national cohort study. BMC Psychiatry. 2014 Dec 4;14(1):348. [Epub ahead of print] PMID: 25471121
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25471121
(※7)Raison CL, Rutherford RE, Woolwine BJ.et.al. A randomized controlled trial of the tumor necrosis factor antagonist infliximab for treatment-resistant depression: the role of baseline inflammatory biomarkers. JAMA Psychiatry. 2013 Jan;70(1):31-41. PMID: 22945416
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22945416
(※8)Köhler O, Benros ME, Nordentoft M.et.al. Effect of anti-inflammatory treatment on depression, depressive symptoms, and adverse effects: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. JAMA Psychiatry. 2014 Dec 1;71(12):1381-91. PMID: 25322082
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25322082
(※9) O'Neil A, Sanna L, Redlich C,et.al. The impact of statins on psychological wellbeing: a systematic review and meta-analysis. BMC Med. 2012 Dec 3;10:154. doi: 10.1186/1741-7015-10-154. PMID: 23206308
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23206308

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■慢性心不全に対するオルメサルタン■
Sakata Y, Shiba N, Takahashi J.et.al. Clinical impacts of additive use of olmesartan in hypertensive patients with chronic heart failure: the supplemental benefit of an angiotensin receptor blocker in hypertensive patients with stable heart failure using olmesartan (SUPPORT) trial. Eur Heart J. 2015 Jan 30. pii: ehu504. [Epub ahead of print] PMID: 25637937
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25637937
研究デザイン:ランダム化比較試験(PROBE)

P:高血圧がありACE阻害薬もしくはβ遮断単薬を服用中の症候性慢性心不全の日本人1147人(平均66歳、男性75%、ACE阻害薬使用は81%以上)
E:オルメサルタンの上乗せ投与578人
C:上乗せなし569人
O:全死因死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全の悪化による入院の複合アウトカム

追跡期間:4.4年 最終的にC群から1名が除外されている
統計解析:intention-to-treat解析
サンプルサイズ:各群565人
患者背景:両群で同等。なおACE阻害薬使用は8割を超えており、E群は事実上ARBとACEIの併用治療となっている。
アウトカム E群(578人) C群(568人) ハザード比[95%信頼区間]
プライマリアウトカム 192人(33.2%) 166人(29.2%) 1.18[0.96-1.46]
腎機能障害 97人(16.8%) 61人(10.7%) 1.64[1.19-2.26]

結局のところARBとACE阻害薬の併用は危険であるという事が浮き彫りとなった印象。

■せん妄に対する非薬物的組み合わせ介入■
Hshieh TT, Yue J2, Oh E.et.al. Effectiveness of Multicomponent Nonpharmacological Delirium Interventions: A Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2015 Feb 2. PMID: 25643002
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25643002
研究デザイン:メタ分析

P:14の介入研究に参加した患者
E:非薬物的組み合わせ介入
C:介入なし(
O:せん妄の発症、転倒リスク、入院期間、施設入所

評価者バイアスは2名の調査者が独立して評価している。元論文はランダム化比較試験以外の介入研究を含む。(抄録からは詳細不明。なおRCTや対象群を置いた研究のみでのメタ分析も行っている)異質性について、出版バイアスについて抄録からは詳細読み取れず。

結果
・せん妄発症:オッズ比0.47[95%信頼区間0.38-0.58](11研究全体)
・せん妄発症:オッズ比0.56[95%信頼区間0.42-0.76](RCT+対照群を置いた研究4研究)
・転倒;オッズ比0.38[95%信頼区間0.25-0.60](4研究全体)
・転倒:オッズ比0.36[95%信頼区間0.22-0.61](RCT+対照群を置いた研究2研究)
・入院期間:平均差-0.16日[95%信頼区間 -0.97~0.64)
・施設入所:オッズ比0.95[95%信頼区間0.71-1.26]

せん妄の発症率や転倒リスク減少に関連という結果

■ラモトリギン関連皮膚有害事象■
Wang XQ, Xiong J, Xu WH.et.al. Risk of a lamotrigine-related skin rash: Current meta-analysis and postmarketing cohort analysis. Seizure. 2015 Feb;25:52-61. PMID: 25645637
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25645637
研究デザイン:市販後調査や前向き研究、後ろ向き研究のメタ分析

P:26の前向き研究から4447人、8の後ろ向き研究から2977人、市販後調査から26,126人
E:ラモトリギンの使用あり
C:ラモトリギンの使用なし
O:皮膚有害事象

発疹発症率は研究デザインごとに以下のように報告されている。
・前向き研究:9.98% (444/4447)
・後ろ向き研究:7.19% (214/2977)
・市販後調査:2.09% (547/26,126)

ラモトリギンと皮疹との関連をメタ分析にて検討したが、プラセボを含む他の治療と日赤くして有意な関連見られず。

本邦では平成26年9月~12月の間に、本剤との因果関係が否定できない重篤な皮膚障害を発現し死亡に至った症例が4例報告されており、2015年2月に安全性速報(ブルーレター)が出されている。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073061.html
PDFhttp://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000073149.pdf

ラモトリギンは特にバルプロサンNaとの併用で発疹リスクが増加するといわれている。
Gélisse P, Crespel A. [Reintroduction of treatment with lamotrigine in combination with valproate after an initial allergic skin reaction]. Rev Neurol (Paris). 2006 Nov;162(11):1122-4. PMID: 17086149
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17086149

■褥瘡治療のための亜鉛サプリメント■
Cereda E, Klersy C, Serioli M.et.al. A nutritional formula enriched with arginine, zinc, and antioxidants for the healing of pressure ulcers: a randomized trial. Ann Intern Med. 2015 Feb 3;162(3):167-74. PMID: 25643304
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25644978
研究デザイン:ランダム化比較試験

P:長期入所しているか在宅介護を受けている軽度から重度(Ⅱ度からⅣ度)の褥瘡が認められる栄養不良の成人200人
E:高エネルギーたんぱく食に加えてアルギニン,亜鉛,抗酸化物質を含むサプリメント101人
C: 高エネルギーたんぱく食99人
O:8週後の褥瘡面積
・多施設盲検試験。追跡8週

褥瘡面積は以下の通り
アウトカム E群 C群 平均差[95%信頼区間]
褥瘡面積の減少割合 60.9% [95%CI 54.3~ 67.5] 45.2% [95%CI 38.4~52.0] 18.7% [95%CI 5.7~31.8]

8週間で40%以上褥瘡面積が減少した患者の割合はE群で有意に多い。オッズ比1.98 [95%信頼区間1.12~3.48]

■DPP4阻害薬のリスクベネフィット■
Savarese G, Perrone-Filardi P2, D'Amore C.et.al. Cardiovascular effects of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors in diabetic patients: A meta-analysis. Int J Cardiol. 2014 Dec 3;181C:239-244. PMID: 25528528
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25528528
DPP4阻害薬に関するリスクベネフィット最新論文。研究デザインはランダム化比較試験のメタ分析。

P:200人規模以上のランダム化比較試験94研究に参加した糖尿病患者85224人(追跡中央値29週)
E:DPP4阻害薬の使用あり
C:DPP4阻害薬の使用なし
O:総死亡、心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全

総死亡、心血管死亡、脳卒中に関して短期間(29週未満)、長期間(29週以上)の使用いずれにおいても明確な差は認めない。短期間の使用において、心筋梗塞リスク減少を示唆(相対リスク0.584[95%信頼区間0.361~0.943]。しかしながら長期間の使用においては明確な差を認めない。一方長期間の使用で心不全リスクが有意に上昇(相対危険1.158[95%信頼区間1.011~1,326]異質性バイアスや出版バイアスは検出されず。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ラモトリギンとバルプロサン併用によるSJS■
Kocak S, Girisgin SA, Gul M.et.al. Stevens-Johnson syndrome due to concomitant use of lamotrigine and valproic acid. Am J Clin Dermatol. 2007;8(2):107-11. PMID: 17428116
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17428116
23歳女性、カルバマゼピン、バルプロ酸、およびラモトリジンを服用し発熱および口腔粘膜病変、発疹を発症し救急搬送。集中治療室にて静脈内輸液、抗菌治療、およびメチルプレドニゾロンを投与。18日後に軽快。

■ラモトリギンとバルプロサン併用によるSJS■
Yalçin B, Karaduman A.et.al. Stevens-Johnson syndrome associated with concomitant use of lamotrigine and valproic acid. J Am Acad Dermatol. 2000 Nov;43(5 Pt 2):898-9. PMID: 11044815
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11044815

33歳女性。薬剤中止後経口プレドニゾロン療法後10日で軽快

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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DPP4阻害薬の最新メタ分析が昨年12月に出ていたんですね。注目していたテーマでしたが、見逃していました。近年の報告、まあメタ分析が多いですが、おおむね心血管イベントを明確に減らさず、心不全が多いという結果になっています。ただこの現象だけを抜き取るのもいささか早計な気がしています。ある現象を構造化するにはエビデンスを時系列に並べて、その文脈を知っておく必要があると僕は考えています。
少しエビデンスクロニクルをまとめてみましょう。
DPP4阻害薬に関する報告は当初代用のアウトカムがほとんどでしたが、2012年から2013年にかけて小規模トライアルのメタ分析で心血管リスク減少が示唆されていました。

Monami M, Ahrén B, Dicembrini I.et.al. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and Cardiovascular risk : a meta-analysis of randomized clinical trials Diabetes Obes Metab.2013 Feb;15(2):112-20PMID:22925682
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22925682

Patil HR, Al Badarin FJ, Al Shami HA.et.al. Meta-Analysis of Effect of Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors on Cardiovascular Risk in Type 2 Diabetes Mellitus Am J Cardiol. 2012 Jun 14[Epub ahead of print]PMID:22703861
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22703861

DPP4阻害薬ではその有害事象として急性膵炎に関する研究が複数報告されましたが、その結果にはばらつきがあるようで、リスクの懸念はあるものの、因果関係なのか。と言うところで、その関連の強さはむしろそれほど高くない印象です。このテーマに関しては、あまり深入りせず以下の論文を抑えおけば十分でしょう。ここでも詳細は割愛します。

Singh S Chang HY, Richards TM.et.al. Glucagonlike Peptide 1-Based Terapies and Risk of Hospitalization for Acute Pancreatitis in Typ 2 Diabetes MellitusJAMA Intern Med. 2013 Apr 8;173(7):534-9 PMID:23440284
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23440284

Giorda CB, Picariello R2, Nada E.et.al. Incretin therapies and risk of hospital admission for acute pancreatitis in an unselected population of European with type 2 diabetes : a case-control studyLancet Diabetes Endocrinol. 2014 Feb;2(2):111-5. PMID: 24622714
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24622714

Monami M, Dicembrini I, Mannucci E.Dipeptidyl-peptidase-4 inhibitors and pancreatitis risk : a meta-analysis of randomized clinical trials.Diabetes Obes Metab 2014 jan;16(1):48-56.PMID:23837679
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23837679

Li X, Zhang Z, Duke J.Glucagon-like peptide 1-based therapies and risk of pancreatitis: a self-controlled case series analysis.Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2014 Mar;23(3):234-9.PMID: 24741695
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24741695

Li L, Shen J, Bala MM.et.al. Incretin treatment and risk of pancreatitis in patients with type 2 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis of randomised and non-randomised studies BMJ. 2014 Apr 15;348:g2366. PMID: 24736555
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24736555

Faillie JL, Azoulay L, Patenaude V.et.al. Incretin based drugs and risk of acute pancreatitis in patients with type 2 diabetes: cohort study BMJ. 2014 Apr 24;348:g2780PMID: 24764569
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24764569

Meier JJ1, Nauck MA.Risk of pancreatitis in patients treated with incretin-based therapies
Diabetologia. 2014 Jul;57(7):1320-4. PMID: 24723174
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24723174

やや話題が脇道にそれましたが、2013年には非常に重要なランダム化比較試験2報がNEJMに掲載されました。

Scirica BM, Bhatt DL, Braunwald E,et.al.Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus.N Engl J Med. 2013 Oct 3;369(14):1317-26PMID:23992601 (SAVOR-TIMI 53)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992601

Alogliptin after Acute Coronary Syndrome in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2013 Oct 3;369(14):1327-35.PMID:23992602
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992602

この2つの論文はそれぞれ、サキサグリプチン、アログリプチンの心血管死亡やそのイベント発症をプラセボ比較で検討した非劣性試験です。いずれもプラセボに比べて劣っていないという結果で、DPP4阻害薬は心血管ベント上昇を起こさず血糖を下げる薬剤ということが示されました。糖尿病の真のアウトカムを考えると意味の分からない結論に戸惑うこともあるかと思います。要するにプラセボと同等(厳密には同等と言う表現はふさわしくない)の薬剤にどんな意味があるのか…。

まあ100歩譲って、一部のSU剤には冠動脈疾患リスクが示唆されていましたから、それよりはマシという解釈もできなくはないところですが、何せ薬価が高いということもあり、メトホルミンと比較した際のアドバンテージはなかなか見いだせない印象ではありました。それだけならまだよかったのですが、Scirica BMet.ai.2013 (SAVOR-TIMI 53)においてサキサグリプチンでは心不全による入院(心不全ではない)が有意に増加したという衝撃的な結果が示されたのです。

入院基準にもまあいろいろ議論の余地はあるかと思いますが、のちのサブ解析で心不全既往、アルブミン/クレアチニン>33.9 mg/mmol、eGFR≤60 mL/min、75歳以上等のリスクファクターが挙げられています。

Scirica BM, Braunwald E, Raz I.et,al, Heart failure, saxagliptin, and diabetes mellitus: observations from the SAVOR-TIMI 53 randomized trial.Circulation. 2014 Oct 28;130(18):1579-88. PMID: 25189213
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25189213

DPP4阻害薬の効果を考える際は、この2013年がターニングポイントとなりました。DPP4阻害薬はこれまで、膵炎リスクの懸念があるかもしれないが、心血管イベント減少に有望な薬剤である可能性があったわけですが、2013年に報告された大規模RCT2研究でイベントの減少を示せず、心不全リスクの懸念が浮上してしまい、その後のメタ分析ではきれいにこの結果が反映されています。

Wu S, Hopper I, Skiba M,et.al.Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and cardiovascular outcomes: Meta-analysis of randomized clinical trials with 55,141 participants. Cardiovasc Ther. 2014 Apr 21PMID: 24750644
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24750644

Monami M, Dicembrini I, Mannucci E.Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and heart failure: A meta-analysis of randomized clinical trials. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2014 Jul;24(7):689-97. PMID: 24793580
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24793580

Savarese G, Perrone-Filardi P2, D'Amore C.et.al. Cardiovascular effects of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors in diabetic patients: A meta-analysis. Int J Cardiol. 2014 Dec 3;181C:239-244. PMID: 25528528
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25528528

これにはやはり2013年の大規模試験2研究の結果を受けている(出版バイアス)可能性はあるでしょう。心不全リスクに関してはSAVOR-TIMI 53の影響をもろに受けていると言えそうです。そのため実際の現象がどの程度構造化されているかには議論の余地もあるかと思います。しかしながら観察研究でも示唆されている点は興味深いです。

Weir DL, McAlister FA, Senthilselvan A.et.al. Sitagliptin use in patients with diabetes and heart failure: a population-based retrospective cohort study. JACC Heart Fail. 2014 Dec;2(6):573-82. PMID: 24998080
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24998080

なかなか難しいところではありますが、SAVOR-TIMI 53で示された心不全リスクへの懸念をどうとらえるか、少なくともサブ解析で示されたリスクファクターには警戒すべきかと思いますが、今後新たなRCTや大規模コホートが報告されない限りは、量産されるメタ分析からは現象の実態は捉えづらいのかもしれません。だからと言ってDPP4阻害薬を第一選択薬として積極的に推奨する根拠は現時点では限定的でしょう。
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[コラム]医療に対する常識を形作るもの

スレッド
一般の方が医療に関する情報をどのようなツールから得ているのでしょうか。テレビによる健康情報が最も重要な情報源であるとする報告もあるようです。(※1)(※2)あるいはインターネット上の情報を調べることも多いと思います。

[健康に関するテレビ番組の情報妥当性]
本邦でも健康に関する情報番組は決して少ないわけではなく、そのような情報をもとに健康食品の売り上げすら変わるという事もあるようです。レスベラトロールや花粉症に対するヨーグルトなど過去に事例もありますよね。

テレビで放映されている健康情報プログラムの情報の妥当性はどの程度なのでしょうか。海外の医療情報番組ですが、その情報の妥当性を検討した論文がBMJに掲載されています。(※3)

この研究は健康問題に関するテレビの医療番組での推奨内容や主張内容を評価した前向き観察研究です。健康情報トーク番組の「ドクター・オズ・ショー」と「ザ・ドクター」で放送されたエピソードからランダムに40エピソードをそれぞれ抽出し、さらにそれぞれの番組から80の推奨テーマ(全160テーマ)について、経験豊富なエビデンスレビューアーによりエビデンスに支持されたテーマの割合を検討しました。

その結果160の推奨テーマのうち少なくとも54% (95%信頼区間47~62)がエビデンスにより支持された内容でした。「ドクター・オズ・ショー」では46%が支持され、15%が矛盾し39%は根拠不明でした。「ザ・ドクターズ」では63%が支持され、14%が矛盾し、24%が不明でした。

番組内容の半分はその情報の根拠がないか矛盾しているという衝撃の結果です。このような番組の推奨内容には懐疑的であるべきと結論しています。

[医療ジャーナリストが伝える情報妥当性]

医療ジャーナリストって何でしょうか。具体的な定義は見当たりませんが、医学・医療・福祉分野での報道に関心を持つジャーナリストと言えましょう。インターネットの普及とともに、テレビ番組のみならず、健康問題はネット上で実に多彩な情報が入手できるようになりました。しかし、その多くが明確な根拠に裏付けされたものではない印象があります。グーグル検索でトップに表示されるような健康情報には何かと健康によさそうな文句で関心を集めるような文言が並んでいますが、明確な出典がほぼ明記されていません。

そのような中で医療情報を妥当な根拠に基づいて伝える仕事は僕ら医療者の使命でもあるわけですが、世間一般への情報の発信は医療ジャーナリストによりなされていることも多いでしょう。

がん関連問題を報じる医療ジャーナリストに関するアンケート調査が報告されていました。(※4)この報告は82団体の364人の日本人医療ジャーナリストに対してがん関連問題を報じる理由と、直面しうる困難さに関するアンケート調査を行ったものです。364人中57人(約16%)から回答を得得ました。非常に少ない回答率です。ジャーナリストは必ずしも医療系出身の専門家ではありません。この研究の対象となったジャーナリストのうち34人は人文科学を専攻し、自然科学専攻は13人、医学を専攻していたのは1人だけでした。

健康問題について以下の項目が挙げられています。
理由 結果
個人的な興味 36人
従来治療について 33人
医療政策について 30人
新規治療法について 25人
診断について 25人
ワクチンについて 25人

最も多かったのは個人的な興味でした。これは大変重要な示唆です。個人的に興味のないことは報じられないのですから。たとえばワクチンの害に興味があればワクチンの有効性について報じられることはなく、薬の効果について興味があれば害について報じられることがない可能性を示唆しています。ワクチンの有害性についてはテレビのニュースでも取り上げられますが、ワクチンにより疾患が激減したという報道はあまりなされませんよね。明らかな関心相関の原理が働いているように思えます。

アンケート調査したジャーナリストの全員が、健康上の問題を報告における困難さを経験しているようです。


感じている困難さ 結果
情報の質について 36人
社会的影響について 35人
専門的な知識の欠如 35人
専門用語を理解する困難さ 35人

回答したジャーナリストの背景にもよるかと思いますが、この調査では多くが人文科学系出身者ですから、医療介入の因果関係を論じる際に必要な疫学や確率論、統計学はもとより基本的な医学・薬学知識の不足はジャーナリスト業務遂行の上で大きな困難さを生み出すことは間違えないでしょう。

医療ジャーナリストの情報ソースを見てみましょう。主なソースは、医師を含む個人のネットワーク(42人)、電子メール、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディア(32人)で学術誌18人(38%)でした。このアンケートは16%しか回答が得られていませんので、実際のところ学術誌をベースに報道されているという状況はかなり低いものと言えそうです。なお 48人中35人のジャーナリストがホスピスに関するトピックを報告したことがなく、情報が偏っていと報告されています。先にも述べた通り、個人的な興味で報道を行っていますから、必然的に内容にはバイアスが生じます。システマテックレビューでもこのようなバイアスを避けるために2名以上のレビューアーが独立してアセスメントしますよね。
現状では日本の医療ジャーナリストが報道する内容は、質・バランスともに非常に偏りがあるのもまた事実でしょう。

[医療に対する常識]
テレビ番組や医療ジャーナリストによる報道により形成される医療への価値観は、非常に拡散力が高く、世間の一般常識に登録されることもしばしばでしょう。しかしながらそのような常識を形成している情報は明確な根拠がないかあるいは矛盾しているか、情報発信者の関心のある部分しか強調されていない非常に偏ったものです。繰り返しますが医療に関する常識は非常に偏った考え方である可能性が高いのです。

これは臨床医学論文を読んだことのある方ならすぐにでも実感できることかもしれませんが、少なくとも本邦において医療に対する常識と、臨床医学論文の示唆は矛盾することが多々あります。EBM実践者であれば、そのような世間との常識のギャップから、患者との信念対立を起こすことも多々経験されているかと思います。

 臨床医学論文からの示唆、いわゆるエビデンス自体も現象の部分に過ぎないという面もあり、エビデンスの結果のみを正しい価値観とするとこも大きな偏りなのではないかと僕は思います。客観的に正しい価値観なるものが存在するというわけではないので、どちらを正しい価値観とするかで信念対立は避けられないでしょう。偏った医療の価値観、それをどこまで補正できるか、エビデンスと常識の折り合いをどこでつけるのか、医療情報を発信し、実際に活用する僕たちにとってはとても重大な問題でしょう。

この信念対立の解消はよりよい医療を行い、患者のアウトカムを改善する、といったようなことが目的ではありません。医療に対する常識がほんの少し変化したところで日本人の平均寿命はもうこれ以上劇的に伸びることはないでしょう。大事なのは常識が変わることそのものです。風邪に抗菌薬、病気は早期に発見するべき、新薬は良い等の常識が変わることで、医療者、患者問わず、「これが良い医療だ」、から「こんな選択肢」もある、に代わることが期待できます。
まあそう単純じゃないかもしれませんが、この問題は決して軽視でいないものと思います。

妥当性の低い情報で世間の価値観を医療を受ける方向に誘導させることは、テレビ番組やジャーナリストの報道でいとも簡単にできますが、それにより医療スタッフの負担や医療経済的な問題が現実となって降りかかります。日本は医療アクセスも良いとこもあるでしょうが世界的に見ても不必要な医療を受けすぎているように思います。早めに医療を受けることが本当に安心なのか、そういった常識をほぐすためにエビデンスを活用してみる、偏った価値観から多数の選択肢を導ける柔軟な価値観へ、それだけで僕らの暮らしが少し豊かでゆとりのあるものになるような気がしているのですがいかがでしょうか。

[参考文献]
(※1)Chew F, Palmer S, Slonska Z.et.al. Enhancing health knowledge, health beliefs, and health behavior in Poland through a health promoting television program series. J Health Commun. 2002 May-Jun;7(3):179-96. PMID: 12166872
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12166872
(※2)Oakley A, Bendelow G, Barnes J.et.al. Health and cancer prevention: knowledge and beliefs of children and young people BMJ. 1995 Apr 22;310(6986):1029-33.. PMID: 7728055
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7728055
(※3)Korownyk C, Kolber MR, McCormack J.et.al. Televised medical talk shows--what they recommend and the evidence to support their recommendations: a prospective observational study. BMJ. 2014 Dec 17;349:g7346. PMID: 25520234
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25520234
(※4)H. Nakada, M. Tsubokura, Y. Kishi, Koichiro Yuji, et.al. How do medical journalists treat cancer-related issues? ecancer 9 502 / DOI: 10.3332/ecancer.2015.502
http://ecancer.org/journal/9/full/502-how-do-medical-journalists-treat-cancer-related-issues.php
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地域医療の見え方  2015.Feb.10;1(5)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-インフルエンザ感染症に対するクラリスロマイシン-

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[ポイント]
■クラリスロマイシンはインフルエンザウイルスに対するIgA抗体増強が示唆されている
■クラリスロマイシンをノイラミニダーゼ阻害薬と併用することで発熱や咳症状の早期改善が示唆されているが、実臨床での推奨に値するほど強い根拠とは言えない。
■ノイラミニダーゼ阻害薬の使用はインフルエンザ再感染を有意に増やす可能性が示されている
■現時点でインフルエンザ感染症に対するクラリスロマイシンの投与は再感染抑止をいう名目をもってしても、原則的にその使用を推奨できない。
■インフルエンザ感染症に対するクラリスロマイシンは保険上の適応もない

[イントロダクション]
オセルタミビルに代表されるような抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑制することで早期症状改善に寄与するものと考えられます。この早期改善効果にも議論の余地はありますが、仮にその通りだとすると、ウイルス増殖抑制により、体内で産生されるウイルス抗原量が理論上減少すると考えられます。そのため免疫獲得作用も抑制される可能性があるわけです。

近年、免疫刺激作用を有すると考えられているマクロライド系抗菌薬を抗インフルエンザ薬と併用投与することにより、インフルエンザの再感染を抑制できる可能性が示唆されています。しかし、安易なマクロライドの使用は薬剤耐性を招く、あるいはマクロライドの重篤な有害事象リスク(心血管系イベント等)にさらされることになります。そのため、インフルエンザ感染症に対する抗インフルエンザ薬、マクロライド併用療法のベネフィットは慎重に検討せねばならない問題です。また現在、本邦ではマクロライド系抗菌薬にインフルエンザ感染症に対する保険上の適応がないことからも、その使用を正当化するための記事ではないことを、まず最初に強調しておきます。

[インフルエンザ感染症に対するクラリスロマイシンの免疫調整作用]

A型インフルエンザ感染症に罹患した小児(平均5.7歳、インフルエンザワクチン接種40.9%)を対象とし、クラリスロマイシンの免疫調整作用を検討した後ろ向き研究が報告されています。(※1) この研究はインフルエンザウイルスに罹患した小児40例を対象に、オセルタミビル5日間(14人)、クラリスロマイシン5日間(8人)、オセルタミビル+クラリスロマイシン5日間(12人)、薬剤使用なし(8人)の群を比較し、インフルエンザウイルス(H3N2) 、H1N1)に対する分泌型IgA抗体、鼻咽頭拭い液からのウイルスRNAコピー数、そして疾患症状を検討しています。

その結果、IgA抗体の量はクラリスロマイシン群、オセルタミビル+クラリスロマイシン群で顕著に増加したと報告されています。ウイルスRNAコピー数は無治療群以外のすべての群で減少しており、クラリスロマイシン単独でも減少を示唆した点は興味深いです。このような代用のアウトカムが実臨床にどのような影響をもたらしたのでしょうか。5日後の臨床症状を以下にまとめます。

各症状を有する患者の割合(%、カッコ内は研究開始時の割合)
症状 無治療6人 CAM 8人 OSV 14人 OSV+CAM 12人
発熱 17(100) 13(100) 0(100) 0(100)
喉の痛み 50(66.7) 0(25.0) 16.7(42.9) 0(33.3)
100(100) 88(100) 100(78.6) 25.0 *(100)
鼻汁 40(66.7) 33(75.0) 54.5(78.6) 28.6(58.3)
頭痛 50(33.3) 0(25.0) 11.1(57.1) 12.5(66.7)

*他のグループに対してP<0.01

あくまで後ろ向きの症例集積検討である点に注意が必要で、この結果が実臨床で即推奨に値するほどの強い根拠とはなり得ませんが、5日後の臨床症状は主に咳に対する有効性を併用群で示唆しました。

[基礎研究からの示唆]

培養細胞を用いた実験的研究ですが、クラリスロマイシンは気道粘膜に存在するA型季節性インフルエンザのための受容体数の発現を低下させ、ウイルス感染を阻止する可能性を示唆したとする論文が報告されています(※2)

またマウスを用いた実験でもクラリスロマイシンが抗インフルエンザウイルス分泌型IgA抗体の誘導を増強することが報告されています(※3)

これらはいずれも基礎研究からの示唆であり、この結果を実臨床へ当てはめるのは、やや理論が飛躍しすぎていましょう。

[抗インフルエンザ治療薬とインフルエンザ再感染リスク]

イントロダクションでも述べたとおり、抗インフルエンザ薬による治療でインフルエンザ再感染リスクが高まるのでしょうか。2013年に報告された症例集積研究から興味深い示唆が得られます。(※4)
この研究は、2008年~2009年にA型インフルエンザに感染した0~14歳の小児(195人、平均5.9歳)を対象に、オセルタミビル70人、ザナミビル27人、オセルタミビル+クラリスロマイシン20人、ザナミビル+クラリスロマイシン10人、治療なし68人の5群を比較し、5日後の臨床症状の改善、そして2009/2010シーズンにおける再感染検討しました。主な結果を以下にまとめます。

臨床症状改善率%(追跡5日)
発熱 咽頭痛 鼻水
治療なし 94.1(64/68) 92.0(23/25) 35.4(23/65) 41.5(27/65)
OSV 94.3(66/70) 68.2(15/22) 31.3(20/64) 39.4(26/66)
OSV+CAM 95.0(19/20) 80.0(4/5) 58.8(10/17) 61.1(11/18)
ZNV 96.3(26/27) 93.3(14/15) 50.0(12/24) 37.5(9/24)
ZNV+CAM 100(10/10) 100(5/5) 60.0(6/10) 77.8(7/9)


2009/2010シーズンの再感染率
再感染率 P値
治療なし 8.6% referense
OSV 37.3% P<0.01,
OSV+CAM 17.6%
ZNV 45.0% P<0.01,
ZNV+CAM 22.2%

5日間の追跡において、臨床症状改善は治療なし群でもほぼ回復、再感染率はノイラミニダーゼ阻害薬群で有意に多く、クラリスロマイシンを併用するとその次のシーズンの再感染率が低くなる傾向にあるという結果でした。こちらもランダム化研究ではなくあくまで症例集積研究である点に注意が必要ですが、注目すべきは抗インフルエンザ薬を使用した群での再感染率の高さです。ザナミビルに至っては45%という衝撃の数値で、オセルタミビルでも治療なしとの比較で有意に高いという結果でした。

臨床症状に関して特に著明な差異があるとも思えず、この報告では抗インフルエンザ薬に伴うデメリットが浮き彫りになった印象です。論文の結論ではクラリスロマイシンが再感染率の低下に寄与したとしていますが、そうではなくて、無治療でも多少、咳の症状は残るかもしれませんが、5日間でほぼ臨床症状が改善し再感染が最も起こりにくかったというのが僕の解釈ではあります。

[抗インフルエンザ薬とクラリスロマイシンの併用効果]

併用メリットは本当にあるのでしょうか。オープンラベルですがランダム化比較試験が報告されています。(※5)
この研究は、パンデミックA / H1 2009インフルエンザや季節性インフルエンザウイルスに感染した15歳以上の患者79人を対象にクラリスロマイシン+ノイラミニダーゼ阻害薬とノイラミニダーゼ阻害薬単独を比較して、治療開始後5日間の臨床症状を検討しました。79人中63人が解析対象となりました。
その結果、併用群で38.5度以上の発熱が42時間から24時間へ約42%短縮しました。パンデミックA / H1 2009インフルエンザに罹患していた患者ではクラリスロマイシンの併用で有意に鼻漏症状改善を示しました。(p=0.03; 88% vs. 20%)
ノイラミニダーゼ阻害薬とクラリスロマインの併用で発熱や鼻漏症状などの速やかな改善を期待できる結果となっています。

フリーでアクセスできるのがアブストラクトのみなので情報が限定的ですが、オープン試験であることを踏まえると症状改善という主観的なアウトカムに加えて併用薬剤がどうなっていたのか気になるところです。

なお因果関係は不明ではありますが、糖尿病歴10年の65歳女性のB型インフルエンザ感染症へオセルタミビル, クラリスロマイシンの内服治療を開始したところ、2週間後, 徐々に尿量が低下し, 嘔吐, 全身倦怠感が出現。さらに著明な高K血症, 腎機能障害を認め, 緊急透析を施行し入院した症例が報告されています。(※6)2回目の透析後より徐々に、尿量が改善し血液透析を2回施行し離脱しました。その後、全身状態が軽快し退院したとされています。本症例は受診までの経過、来院後の検査結果からオセルタミビルとクラリスロマイシンを被疑薬とする薬剤性腎障害が疑われています。

[インフルエンザ感染症に対するクラリスロマイシンの考え方]

基礎研究で示唆されるのは、IgA抗体を誘導してインフルエンザウイルスに対する免疫を増強する作用でした。症例集積研究では咳に対する臨床症状の早期改善を示唆する報告もありますが、因果関係を示唆する根拠としては弱いものです。
またランダム化比較試験では発熱持続時間の短縮が示唆されていますが、オープン試験のため、症状持続に影響する他の要因は完全に排除されているとは言い難いでしょう。
ノイラミニダーゼ阻害薬によるインフルエンザ感染症治療では翌シーズンまでの再感染率を有意に上げるとする報告があり、インフルエンザ治療の根本のあり方を考えさせられます。

現時点でインフルエンザ感染症に対するクラリスロマイシンの投与はリスクこそあるものの、ベネフィットは明確に示されておらず、再感染抑止をいう名目をもってしても、原則的にその使用を推奨できません。免疫抑制剤を服用中の患者においては、あるいは一定の効果が期待できる可能性もありますが、現在本邦においてはインフルエンザ感染症に対する保険上の適応もありません。

[参考文献]

(※1)Sawabuchi T, Suzuki S, Iwase K.et.al. Boost of mucosal secretory immunoglobulin A response by clarithromycin in paediatric influenza. Respirology. 2009 Nov;14(8):1173-9. PMID: 19909463
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19909463
(※2)Yamaya M, Shinya K, Hatachi Y.et.al. Clarithromycin inhibits type a seasonal influenza virus infection in human airway epithelial cells. J Pharmacol Exp Ther. 2010 Apr;333(1):81-90. PMID: 20040578
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20040578
(※3)Takahashi E, Kataoka K, Indalao IL.et,al. Oral clarithromycin enhances airway immunoglobulin A (IgA) immunity through induction of IgA class switching recombination and B-cell-activating factor of the tumor necrosis factor family molecule on mucosal dendritic cells in mice infected with influenza A virus. J Virol. 2012 Oct;86(20):10924-34. PMID: 22896605
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22896605
(※4) Shinahara W, Takahashi E, Sawabuchi T.et.al. Immunomodulator clarithromycin enhances mucosal and systemic immune responses and reduces re-infection rate in pediatric patients with influenza treated with antiviral neuraminidase inhibitors: a retrospective analysis. PLoS One. 2013 Jul 17;8(7):e70060. PMID: 23875018
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23875018
(※5)Higashi F, Kubo H, Yasuda H.et,al, Additional treatment with clarithromycin reduces fever duration in patients with influenza. Respir Investig. 2014 Sep;52(5):302-9. PMID: 25169846
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25169846
(※6)渡邉 廉也, 高橋 宏治, 多田 和弘. 他 オセルタミビルとクラリスロマイシンによる急性腎障害が疑われ, 緊急透析を施行した1例 日本透析医学会雑誌Vol. 47 (2014) No. 12 p. 755-759
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/47/12/47_755/_article/-char/ja/

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■HBVワクチンの免疫持続効果■
Gara N, Abdalla A, Rivera E.et.al. Durability of antibody response against hepatitis B virus in healthcare workers vaccinated as adults. Clin Infect Dis. 2015 Feb 15;60(4):505-13. PMID: 25389254
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25389254
研究デザイン:症例集積検討

P:18歳~60歳の初回ワクチンを接種した成人の医療従事者。以下の3グループに層別化
・グループ①ワクチン接種後10~15年:平均41歳、女性68%、50人
・グループ②ワクチン接種後16~20年:平均46歳、女性72%、50人
・グループ③ワクチン接種後20年以上:平均54歳、女性81%、59人
E,C:HVBワクチンの摂取
O:HBs抗体の抗体価(12 mIU/mLの患者割合;通常10 mIU/mLで免疫獲得と判断)

HBs抗体の抗体価が<12 mIU/mL であったのは、
・グループ①9/50 [18%]
・グループ②13/50 [26%]
・グループ③14/59 [24%]
抗体価が低下した36人のうち34人にブースター投与を行うと3週間以内に32 人(94%)が >12 mIU/mLを達成した。

HBs抗体価レベルが10~31年で減少するのは約25%にとどまり、ブースターワクチンで抗体価の速やかな上昇が期待できる。なお日本環境感染症学会が策定している「医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版」ではワクチン接種シリーズ後の抗体検査で免疫獲得と確認された場合は、その後の抗体検査やワクチンの接種は必要ではないとしている。経年による抗体価低下に関わらず、免疫が持続することが報告されている。

■化学療法誘発性悪心•嘔吐の予防に対する制吐薬■
Navari RM, Gray SE, Kerr AC. Olanzapine versus aprepitant for the prevention of chemotherapy-induced nausea and vomiting: a randomized phase III trial. J Support Oncol. 2011 Sep-Oct;9(5):188-95. PMID: 22024310
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22024310
背景と研究デザイン:催吐性の高い化学療法剤の投与を受けた患者を対象に化学療法誘発性悪心•嘔吐の予防に対するオランザピンとアプレピタントの有効性を比較したランダム化比較試験

P:シスプラチン、シクロフォスファミド、ドキソルビシンの投与を受けた患者250人
E:[オランザピンレジメン]
1日目▶パロノセトロン0.25mg静注、デキサメタゾン20mg静注+経口オランザピン10mgの投与⇒2~4日目▶経口オランザピン10mg単独
C:[アプレピタントレジメン]
1日目▶パロノセトロン0.25mg静注、デキサメタゾン12mg静注+経口アプレピタント125mgの投与⇒2~3日目▶経口アプレピタント80mg+デキサメタゾン4mg1日2回⇒4日目デキサメタゾン
O:化学療法後24時間~120時間以内の嘔吐完全寛解
追跡:250人中241人 追跡期間:5日(120時間)

結果
▶オランザピンレジメン
・24時間以内の完全寛解97%
・2~5日間の完全寛解77%
・120時間以内の完全寛解77%
▶アプレピタントレジメン
・24時間以内の完全寛解87%
・2~5日間の完全寛解73%
・120時間以内の完全寛解73%

学療法誘発性悪心•嘔吐に対して、オランザピンレジメンはアプレピタントレジメンに匹敵する

■抗コリン薬の使用と認知症リスク■
Gray SL, Anderson ML, Dublin S.et.al. Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia: A Prospective Cohort Study. JAMA Intern Med. 2015 Jan 26. [Epub ahead of print] PMID: 25621434
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25621434
背景と研究デザイン:多くの薬剤は抗コリン作用を有するが、いくつかの抗コリン薬は認知症との関連が示唆されている。抗コリン薬の使用と認知症リスクを検討した人口ベース前向きコホート研究

P:認知症のない65歳以上の3434人
E:過去10年における抗コリン薬の累積暴露(直近12か月は除外)
(10年間のSDDの合計であるtotal SDDs(TSDDs)で比較した)
C:抗コリン薬の使用なし
O:標準的な診断基準に基づいたアルツハイマー型認知症
配慮した交絡因子:人口統計学的特性、健康行動、併存疾患を含む健康状態
追跡期間:平均7.3年

最も使用頻度の高い抗コリン薬は、三環系抗うつ薬、第1世代抗ヒスタミン薬、過活動膀胱治療薬であった。平均7.3年の追跡で23.2%にあたる797人が認知症を発症。そのうち79.9%にあたる673人がアルツハイマー型認知症であった。抗コリン薬の使用なしと比較した、結果は以下の通り
TSDDs 調整ハザード比 95%信頼区間
1~90 0.92 0.74-1.16
91~365 1.19 0.94-1.51
66~1095 1.23 0.94-1.62
1095以上 1.54 1.21-1.96


※臨床スクリプト※
高用量の抗コリン薬の投与が認知症リスクを増加させるという結果。少なくとも高齢者にPL顆粒、第1世代抗ヒスタミン薬の投与は避けるべきだろう。ちなみに1種類の抗コリン薬を1年間標準用量で投与するとTSDDsは365であり、1095を3年で超えてしまう。例えば過活動膀胱治療薬を3年以上投与することは認知症リスク増加に寄与している可能性をこの報告は示唆している。

※関連論文※
Kalisch Ellett LM, Pratt NL, Ramsay EN.et.al. Multiple anticholinergic medication use and risk of hospital admission for confusion or dementia. J Am Geriatr Soc. 2014 Oct;62(10):1916-22. PMID: 25284144
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25284144
オーストリアの退役軍人コホートをもちいた後ろ向きコホート研究。研究開始1年前より少なくとも1剤以上の抗コリン薬の使用と使用なしが比較され、認知症や錯乱状態による入院が検討された。その結果抗コリン剤を2剤以上服用していた人たちは入院発生が多いことが示された。
・2剤以上服用:発生率比2.58 (95%信頼区間1.91-3.48)
・3剤以上服用:発生率比3.87 (95%信頼区間1.83-8.21)

■ハイリスクインフルエンザ患者へのノイラミニダーゼ阻害薬■
Lee N, Leo YS, Cao B.et.al. Neuraminidase inhibitors, superinfection and corticosteroids affect survival of influenza patients. Eur Respir J. 2015 Jan 8. pii: ERJ-01697-2014. [Epub ahead of print] PMID: 25573405
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25573405
研究デザイン:コホート研究

P: アジア3か国(香港、シンガポール、北京)のコホートより2649人(ノイラミニダーゼ阻害薬の投与75.2%(オセルタミビル73.8%、ペラミビル/ザナミビル1.4%。44.5%が症状発生の2日以内に投与され、65.5%が症状発生から5日以内に投与された)全身性コルチコステロイドは23.1%で投与された。)対象患者は呼吸器/非呼吸合併症68.4%、呼吸不全48.6%、肺炎40.8%、細菌重複感染10.8%、30日以内の死亡率5.9%、60日以内の死亡率6.9%とハイリスクな集団であった。
E:ノイラミニダーゼ阻害薬の投与あり
C:ノイラミニダーゼ阻害薬の投与なし
O:30日以内の死亡
交絡調整:患者特性に合わせて傾向スコアにて調整
アウトカム NAI投与あり NAI投与なし 調整ハザード比[95%信頼区間]
30日以内の死亡 5.3% 7.6% 0.28[0.19-0.43]

なお重複感染は死亡リスク上昇(ハザード比2.18[95%信頼区間1.52-3.11]、スタチンの使用はリスク低下(ハザード比0.44[95%信頼区間0.23-0.84]が示唆されている。
2日以内の投与で生存改善が示唆される。ハザード比0.20[95%信頼区間0.12-0.32]

※旧ブログ関連記事※
抗インフルエンザ薬をどう考える
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/04/blog-post_14.html

※臨床スクリプト※
介入研究もしくはそのメタ分析で示されたノイラミニダーゼ阻害薬の効果は相対的に見れば決して大きな効果とはいいがたい。しかしながら、この結果はあくまで健常者を対象としたものである。すなわち健常者にとってノイラミニダーゼ阻害薬を服用する臨床的なメリットは文脈にもよるが、著明なものとは言い難いものの、合併症を有する高齢者においては死亡リスクを抑制しうるものとしての価値がある。原則として、健常者のインフルエンザ感染症にルーチンで使用すべきではなく、必要としている患者群を見極めることこそが肝要であり、耐性株の観点からも臨床上重要なテーマとなろう。

■妊娠中におけるノイラミニダーゼ阻害薬■
Dunstan HJ, Mill AC, Stephens S.et.al. Pregnancy outcome following maternal use of zanamivir or oseltamivir during the 2009 influenza A/H1N1 pandemic: a national prospective surveillance study. BJOG. 2014 Jun;121(7):901-6. PMID: 24602087
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24602087
研究デザイン:前向きコホート研究

P:UK Teratology Information Service (UKTIS)のデータより2009 A / H1N1のパンデミック時に妊娠していた女性
E:ノイラミニダーゼ阻害薬の使用あり(ザナミビル180人、オセルタミビル27人)
C:ノイラミニダーゼ阻害薬の使用なし575人
O:先天性奇形、早産、低出生体重

結果:妊娠の有害転帰との関連は見られなかった

調整オッズ比[95%信頼区間
アウトカム ザナミビル オセルタミビル
先天性奇形 0.37[0.02‐2.70] 0.81 [0.05-14.15]
早産 0.95[0.45‐1.89] 1.68[0.38‐5.38]
低体重 0.94[0.25‐2.90] 4.12[0.59‐17.99]


※関連論文※
Beau AB, Hurault-Delarue C, Vial T.et.al. Safety of oseltamivir during pregnancy: a comparative study using the EFEMERIS database. BJOG. 2014 Jun;121(7):895-900. PMID: 24512604
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24512604
フランスの処方データベースEFEMERISを用いたコホート研究。2010年12月31日に2004年7月1日に出生した女性を対象とし、オセルタミビルと流産、早産、低出生体重、新生児病理学的異常、先天性奇形を検討。オセルタミビルの処方を受けたのは337人で処方を受けなかった674人と比較された。その結果、有害な妊娠転帰と妊娠中のオセルタミビルへの曝露との間に有意な関連はみられなかった。

■プロバイオティクスと急性上気道炎予防■
Hao Q, Dong BR, Wu T. Probiotics for preventing acute upper respiratory tract infections. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Feb 3;2:CD006895. PMID: 25644978
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25644978
研究デザイン:メタ分析

P:12のランダム化比較試験に参加した3720人の小児、成人、高齢者
E:プロバイオティクスの摂取
C:プラセボ
O;急性上気道炎の発症
・元論文;ランダム化比較試験のメタ分析
・評価者:2名のレビューアーが独立して評価
・異質性:いくつかのサブグループで高い

主な結果は以下の通り
・少なくとも1エピソードの予防:オッズ比0.53[95%信頼区間0.37~0.76]low quality
・少なくとも3エピソードの予防:オッズ比0.53[95%信頼区間0.36~0.80]low quality
・平均罹病期間:平均差-1.89[95%信頼区間‐2.03~‐1.75]low quality
・抗菌薬使用:オッズ比0.65[95%信頼区間0.45~0.94]moderate quality
・風邪関連の欠席:オッズ比0.10[95%信頼区間0.02~0.47]very low quality
・急性上気道炎の発生率比:0.83[95%信頼区間0.66~1.05]very low quality
・有害事象;オッズ比0.88[95%信頼区間0.65~1.19]low quality

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■オセルタミビルとIFN/リバビリンの併用による重度貧血■
Simón-Talero M, Buti M, Esteban R. Severe anaemia related to oseltamivir during treatment of chronic hepatitis C: a new drug interaction? J Viral Hepat. 2012 Jan;19 Suppl 1:14-7. PMID: 22233409
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22233409
慢性C型肝炎患者にてペグインターフェロンαとリバビリン投与中の患者に、インフルエンザ感染症治療のためオセルタミビルを投与したところ重度の貧血を発症した症例。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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インフルエンザシーズンもピークを越えたでしょうか。今回はインフルエンザ感染症とその治療を大きく取り上げました。ノイラミニダーゼ阻害薬とマクロライドの併用に関しては、個人的には最近あまり見かけなくなりましたが、実際のところはどうなのでしょう。現段階ではそのメリットを強力にアピールできるような根拠は無い印象です。日本では肺炎球菌、そして溶連菌においてもマクロライド耐性菌は広がっています。特に肺炎球菌に対してマクロライドの耐性は深刻です。そのような現状を踏まえれば安易な使用は推奨されないことは僕が強調するまでもないでしょう。

ノイラミニダーゼ阻害薬の有効性についても議論の余地は多々あるかと思いますが、翌シーズンまでの再感染を増やす可能性については、そのリスクとして頭の片隅に置いておいても良いかもしれません。あまり良いところのないノイラミニダーゼ阻害薬ですが、もちろん、その投与を積極的に考慮すべき患者群はいます。特にハイリスク集団では死亡リスクの低下が観察研究で示されており、比較的健康な人を対象とした介入研究の結果とは対照的となっている印象です。

ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザの簡易検査で陽性だからと一律に投与するのではなく、患者の潜在リスクに合わせた考慮が大事だろうかと考えています。
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ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Feb.4;1(4)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ピタバスタチンと糖尿病発症リスク-

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[ポイント]
■ピタバスタチンの糖尿病リスクについて報告した研究は限定的である。
■2型糖尿病患者においてアトルバスタチンは短期的にも血糖コントロールを悪化させる可能性があり避けるべきである。
■アトルバスタチンと比較してピタバスタチンでは安全に使用できると考えられるが、長期的な予後は不明である。
■後ろ向き症例集積検討では、ピタバスタチンが他のスタチンと比べて糖尿病の新規発症が多いことが報告されている。
■プライマリ・ケア領域におけるスタチン使用は相互作用の観点からもプラバスタチンが第一選択として挙げられる。

[イントロダクション]

スタチンと糖尿病発症リスクは、これまでにも複数の研究で示唆されており、一部薬剤には添付文文書上でも注意喚起がなされています。観察研究はもとより、介入研究(※1)やそのメタ分析(※2)でも糖尿病発症リスクが示されています。概ね高力価スタチンでは低力価スタチンに比べてそのリスクが高いと考えられますが、心血管ベネフィットがリスクを上回るだろう(※3)とするのが現段階での一般的な解釈かもしれません。海外の臨床試験では日本よりも高用量のスタチンが用いられることが多く、日本の通常用量における糖尿病発症リスクはそれほど高くないにしても、臨床上、軽視できない有害事象ではあります。

スタチンの種類別では、プラバスタチンと比較して、アトルバスタチンやロスバスタチンでリスクが高いと考えられます(※4)心血管疾患の潜在リスクが欧米と比較して比較的低い日本人において、日本人に対するエビデンス(※5)を有するプラバスタチンを差し置いて、アトルバスタチン、ロスバスタチンを使用するメリットは本当にあるのだろうかという印象はあります。

今回取り上げるのは日本で創薬されたピタバスタチンと糖尿病発症リスクです。海外での使用経験が少ないせいか、文献上、ピタバスタチンと糖尿病発症リスクを検討した大規模な研究は少なく、今回は主に小規模の研究からの示唆をもとに、そのリスクをまとめていきたいと思います。

[間接比較から垣間見るスタチンの有害事象]

やや本題からそれますが、介入研究によるスタチンとその有害事象全般との関連を検討した論文が2012年に報告されています。(※6)糖尿病発症リスク以外にも横紋筋融解症や発癌に関するデータがまとめられた貴重な報告となっています。

この研究は72のランダム化比較試験(解析対象39歳~75歳で平均59.8歳、計159458人)のメタ分析で、各スタチンとプラセボ、もしくは無治療を比較して各有害事象リスクを検討しています。なお平均追跡は2.7年でした。データは2名の研究者が独立して抽出するなど評価者バイアスへの配慮がなされています。また文献検索は言語の制限なしに行っています。異質性についてはI2統計量で評価されています。各スタチンの有害事象リスクを以下に示します。

アトルバスタチン
アウトカム オッズ比 95%信頼区間 I2統計量
0.902041 0.735756–1.105906 0
横紋筋融解症 1.378303 0.606514–3.132197
糖尿病 データ不足 データ不足


プラバスタチン
アウトカム オッズ比 95%信頼区間 I2統計量
1.030049 0.954297–1.111813 0
横紋筋融解症 1.077021 0.821407–1.412179
糖尿病 1.038997 0.909307–1.187185 35.2


フルバスタチン
アウトカム オッズ比 95%信頼区間 I2統計量
0.890431 0.754528–1.050813 0
横紋筋融解症 2.679039 0.680016–10.554537 NA
糖尿病 データ不足 データ不足


ロスバスタチン
アウトカム オッズ比 95%信頼区間 I2統計量
0.970027 0.860884–1.093007
横紋筋融解症 0.730423 0.172542–3.092107 42.3
糖尿病 1.142353 1.011682–1.289902 1.5


シンバスタチン
アウトカム オッズ比 95%信頼区間 I2統計量
1.002891 0.911183–1.103828
横紋筋融解症 1.838624 0.497649–6.79302 NA
糖尿病 1.102552 0.971698–1.251027 NA


肝心のピタバスタチンの情報がありませんが、やはり使用実績が少ないのでしょうか。多くの文献に登場しない薬剤ではあります。全体を見てみると糖尿病発症リスクはやはりロスバスタチンで高いですが、これまでの研究結果に引きずられているのでしょう。間接比較の結果は、スタチン間で明確な差は無かったと報告しています。(AST等代用のアウトカムには差が有り)

[ピタバスタチンの血糖コントロールへの影響]

アトルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチンの3つのスタチンを後方視的に観察比較し、血糖コントロールへの影響を検討した文献は2008年に報告されています(※7)この研究は、レトロスペクティブにアトルバスタチン (10 mg/day,99人のうち74人が解析)、プラバスタチン(10 mg/day,85人のうち71人が解析)、ピタバスタチン(2 mg/day,95人のうち74人が解析)を比較しました。治療3か月間の血糖コントロールへの影響を評価しています。対象患者は平均59.7歳から65.9歳、女性が約半数です。

その結果、アトルバスタチンで有意に血糖パラメータの上昇を認めましたが、ピタバスタチン、プラバスタチンでは認めませんでした。非ランダム化比較の症例集積的観察ですが、ピタバスタチンは血糖パラメータへの影響が相対的に少ない可能性を示唆しました。

[2型糖尿病患者におけるピタバスタチンと血糖コントロール]

90人の2型糖尿病を有する日本人を対象として、ロスバスタチンとピタバスタチンのコレステロール低下効果を検討したクロスオーバー試験では、24週の治療で両群に血糖コントロールへの悪影響は認めなかったと報告されています。(※8)

また、2型糖尿病患者を対象とした中国における非盲検試験でも12週の治療でピタバスタチンは血糖コントロールに影響を与えない可能性が示唆されています。(※9)

さらに28人の2型糖尿病の日本人(平均63.3)を対象にアトルバスタチンとピタバスタチンを比較した準ランダム化比較クロスオーバー試験では、投与前後比較のHb1A1c変化において、アトルバスタチン(12週)よりもピタバスタチン(12週)で血糖コントロールへの影響が少ない可能性が示唆されています。(※10)

台湾で行われた糖尿病患者225 人(平均 58.7歳、女性38.2% [86/225])を対象にした2重盲検ランダム化比較試験でも、同様に12週の治療でアトルバスタチン群で有意なHbA1c上昇がみられましたが、ピタバスタチンでは認められませんでした。(※11)

脂質異常を有する2型糖尿病の日本人(86人)を対象とした症例検討(※12)では、ピタバスタチン2mg/日の12か月投与で、グルコース代謝関連を検討したところ、投与前後で大きな変化は見られず、BMIが25以上の患者群ではBMIが25未満の患者群に比べて空腹時血糖を有意に減少させたと報告されました。この研究はランダム化比較試験ではなく、投与前後比較である点にも注意が必要です。

質の高い研究は見つかりませんでしたが、複数の研究を見ると、おおむね結果は一貫しおり、2型糖尿病患者において、12週~24週までの短期間の治療においてピタバスタチンは血糖コントロールへの影響は少ない薬剤と言えそうです。一方、アトルバスタチンは短期間でも血糖コントロールへの影響が懸念される薬剤かもしれません。

[ピタバスタチンと新規糖尿病発症]

これまでピタバスタチンの血糖コントロールに与える影響を見てきましたが、実際のところ、新規糖尿病発症リスクに関連するのでしょうか。糖尿病を有しない3680人を対象とした後ろ向き検討(※13)では、平均62.6か月の検討で新規糖尿病発症は以下のように報告されています。
後ろ向き検討によるスタチンのDMリスク
薬剤名 糖尿病発症 割合
ピタバスタチン 49人/628人 7.8%
アトルバスタチン 68人/1327人 5.1%
ロスバスタチン 77人/1191人 6.5%
シンバスタチン 11人/326人 3.4%
プラバスタチン 12人/298人 5.8%

患者背景が異なる上に、後ろ向き検討ですから、当然その因果を論じることも難しく、結果の解釈はかなり限定的ですが、この報告ではピタバスタチンの糖尿病発症が一番多いという意外な結果でした。

[ピタバスタチンと糖尿病リスクをどう考える?]

これまでの報告から、アトルバスタチンやロスバスタチンはプラバスタチンと比較して、糖尿病発症リスクは高いと考えられます。ピタバスタチンの立ち位置を明らかにしようとする試みでしたが、なかなか、検討するにはデータが不十分な印象です。2型糖尿病患者においては短期間であってもアトルバスタチンは血糖コントロールを悪化させる可能性があり、相対的にピタバスタチンは安全と考えられますが、長期的な予後は不明です。後ろ向きの症例集積検討ではピタバスタチンで他のスタチンよりも多い新規糖尿病発症を報告しました。

以上を踏まえ、簡単まとめるとするのならば、2型糖尿病ではアトルバスタチンをつかうべきではないとか考えます。糖尿病を有しない人においては、ベネフィットや相互作用の観点も踏まえると、本邦では初期治療において原則的にプラバスタチン以外の選択を推奨する強い根拠は見当たりません。

[参考文献]

(※1)Ridker PM, Danielson E, Fonseca FA. Et.al. Rosuvastatin to prevent vascular events in men and women with elevated C-reactive protein.N Engl J Med. 2008 Nov 20;359(21):2195-207PMID: 18997196
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18997196
(※2)Sattar N, Preiss D, Murray HM. Et.al. Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials. Lancet. 2010 Feb 27;375(9716):735-42. PMID: 20167359
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20167359
(※3)Preiss D, Seshasai SR, Welsh P.et.al. Risk of incident diabetes with intensive-dose compared with moderate-dose statin therapy: a meta-analysisJAMA. 2011 Jun 22;305(24):2556-64. PMID: 21693744
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21693744
(※4)Carter AA, Gomes T, Camacho X,et.al. Risk of incident diabetes among patients treated with statins: population based study.BMJ. 2013 May 23;346:f2610. PMID: 23704171
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23704171
(※5)Nakamura H, Arakawa K, Itakura H, et al.; MEGA Study Group. Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial. Lancet. 2006 Sep 30;368(9542):1155-63. PubMed PMID: 17011942.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17011942
(※6)Alberton M, Wu P, Druyts E, Adverse events associated with individual statin treatments for cardiovascular disease: an indirect comparison meta-analysis. QJM. 2012 Feb;105(2):145-57. PMID: 21920996
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21920996
(※7)Yamakawa T, Takano T, Tanaka S.et.al. Influence of pitavastatin on glucose tolerance in patients with type 2 diabetes mellitus. J Atheroscler Thromb. 2008 Oct;15(5):269-75. PMID: 18981652
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18981652
(※8)Yanagi K, Monden T, Ikeda S.et.al. A crossover study of rosuvastatin and pitavastatin in patients with type 2 diabetes. Adv Ther. 2011 Feb;28(2):160-71. PMID: 21222064
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21222064
(※9)Mao Y, Yu JM, Zhang F.et.al. [The effect of pitavastatin on blood glucose and its efficacy in diabetic patients with hypercholesterolemia]. Zhonghua Nei Ke Za Zhi. 2012 Jul;51(7):508-12. PMID: 22943820
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22943820
(※10)Mita T. Nakayama S2, Abe H.et.al. Comparison of effects of pitavastatin and atorvastatin on glucose metabolism in type 2 diabetic patients with hypercholesterolemia. J Diabetes Investig. 2013 May 6;4(3):297-303. PMID: 24843669
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24843669
(※11)Liu PY, Lin LY, Lin HJ,et.al. Pitavastatin and Atorvastatin double-blind randomized comPArative study among hiGh-risk patients, including thOse with Type 2 diabetes mellitus, in Taiwan (PAPAGO-T Study). PLoS One. 2013 Oct 1;8(10):e76298. PMID: 24098467
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24098467
(※12)Daido H, Horikawa Y, Takeda J. The effects of pitavastatin on glucose metabolism in patients with type 2 diabetes with hypercholesterolemia. Diabetes Res Clin Pract. 2014 Dec;106(3):531-7. PMID: 25458331
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25458331
(※13)Cho Y, Choe E, Lee YH.et.al. Risk of diabetes in patients treated with HMG-CoA reductase inhibitors. Metabolism. 2014 Sep 28. pii: S0026-0495(14)00290-X. PMID: 25312577
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25312577

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■冠攣縮性狭心症への硝酸製剤■
Takahashi J, Nihei T, Takagi Y.et.al. Prognostic impact of chronic nitrate therapy in patients with vasospastic angina: multicentre registry study of the Japanese coronary spasm association. Eur Heart J. 2014 Sep 4. pii: ehu313. [Epub ahead of print] PMID: 25189599
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25189599
研究デザイン:コホート研究

P:冠攣縮性狭心症を有する1429人(平均66歳 男性1090人、90%以上がカルシウム拮抗薬を使用)
E:硝酸製剤の使用あり695人(ニトログリセリンやイソソルビド551人、ニコランジル306人)
C:硝酸製剤の使用なし
O:主要な心臓イベントの累積発症率
交絡への配慮:傾向スコアマッチング、及び治療にける選択バイアスと潜在的な交絡因子を多変量解析にて調整
追跡期間:中央値32か月

結果:
主要な心臓イベントの累積発症率は硝酸製剤使用ありで11%、使用なしで8%
・ハザード比1.28[95%信頼区間0.72~2.28]
ニトログリセリンとニコランジルの併用では有意にリスク上昇
・ハザード比2.14[95%信頼区間1.02~4.47]

※臨床スクリプト※
併用によりイベントリスクが増加するかの因果は今後のエビデンスに注目したい。多剤併用となってしまった背景には患潜在的な患者の予後不良が想定できるものの、カルシウム拮抗薬を服用している冠攣縮性狭心症患者に対して可能な限り、ニコランジルとニトログリセリンの3剤併用は避けたい。

■日本人における血圧、コレステロールと心血管死亡リスク■
Satoh M, Ohkubo T, Asayama K .et.al. Combined Effect of Blood Pressure and Total Cholesterol Levels on Long-Term Risks of Subtypes of Cardiovascular Death: Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan. Hypertension. 2015 Jan 19. pii: HYPERTENSIONAHA.114.04639. [Epub ahead of print] PMID: 25601929
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25601929
研究デザイン:

P:11のコホートから73916人の日本人(平均57.7歳、男性41.1%)
E:血圧≥160 mm Hg、総コレステロール≥5.7 mmol/L(220mg/dl)
C:血圧<120 mm Hg、総コレステロール<4.7 mmol/L(181mg/dl)
O:冠動脈疾患死亡
交絡への配慮:Cohort-stratified Cox proportional hazard models
追跡期間:平均15年

結果:調整ハザード比4.39(P<0.0001)とリスク上昇を示唆

※関連文献※
Chiang HH, Tseng FY, Wang CY.et.al. All-cause mortality in patients with type 2 diabetes in association with achieved hemoglobin A(1c), systolic blood pressure, and low-density lipoprotein cholesterol levels. PLoS One. 2014 Oct 27;9(10):e109501. PMID: 25347712
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25347712
台湾における18歳以上の2型糖尿病患者12,643人を対象とした後ろむきコホート研究。HbA1c値、収縮期血圧(SBP)、LDLコレステロール値Population全体における各値と任意の値による比較し、総死亡を検討。平均追跡期間5.6±2.4年。の研究集団の全体と比較した際、各任意の数値との比較で死亡のハザード比は概ねU字型。

■高齢者への減塩と死亡リスク■
Kalogeropoulos AP, Georgiopoulou VV, Murphy RA.et.al. Dietary Sodium Content, Mortality, and Risk for Cardiovascular Events in Older Adults: The Health, Aging, and Body Composition (Health ABC) Study. JAMA Intern Med. 2015 Jan 19.PMID: 25599120
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25599120
研究デザイン:前向きコホート研究(community-based, prospective cohort study)

P:71歳から80歳の2642人の高齢者(平均73.6歳、女性51.2%、白人種61.7%
E&C:Na摂取が、1500 mg/d未満(291人 [11.0%])、1500 ~2300 mg/d (779 人 [29.5%]),2300 mg/d超 (1572 人[59.5%]).
O:総死亡、心血管疾患、心不全
追跡期間:10年

結果:
死亡は1500~2300 mg/dの群で (30.7%)、1500 mg/d未満の群で (33.8%)、2300 mg/d 超の群で(35.2%)Na摂取は死亡リスクとの関連が認められなかった。Na1gあたりのハザード比1.03[95% 信頼区間0.98-1.09]。2300 mg/d 超の群の死亡リスクは1500~2300 mg/dの群と比較してハザード比1.15[95%信頼区間0.99-1.35]。高齢者においては推奨値を超える塩分摂取量でも,10年後の死亡や心血管疾患、心不全、リスクが低下しないことを示唆と結論。

■座位時間と死亡、心血管疾患、糖尿病、癌リスク■
Biswas A, Oh PI, Faulkner GE.et.al. Sedentary Time and Its Association With Risk for Disease Incidence, Mortality, and Hospitalization in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2015 Jan 20;162(2):123-32. PMID: 25599350
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25599350
研究デザイン:メタ分析

P:47研究に参加した患者
E:座位時間が長い
C:座位時間が短い
O:総死亡、心血管死亡、心血管疾患・癌・2型糖尿病の発症
元論文バイアス:観察研究のメタ分析
評価者バイアス:Two independent reviewers performed data abstraction and quality assessment, and a third reviewer resolved inconsistencies
異質性バイアス:There was marked heterogeneity in research designs
出版バイアス:抄録に詳細の記載なし

アウトカム ハザード比 95%信頼区間
総死亡 1.240 1.090~1.410
心血管死亡 1.179 1.106~1.257
心血管疾患 1.143 1.002~1.729
1.130 1.053~1.213
2型糖尿病 1.910 1.642~2.222


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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ロスバスタチンとヘノッホ•シェーンライン紫斑病■
Gonen KA, Erfan G, Oznur M.et.al. The first case of Henoch-Schonlein purpura associated with rosuvastatin: colonic involvement coexisting with small intestine. BMJ Case Rep. 2014 Mar 19;2014. PMID: 24648473
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24648473

ヘノッホ•シェーンライン紫斑病は皮膚や腸管、それに腎臓の小血管に発生する血管炎。成人では稀であるが、本症例は成人においてロスバスタチン投与との関連が疑われたヘノッホ•シェーンライン紫斑病症例

■スタチンと慢性咳嗽■
Psaila M, Fsadni P, Montefort S. Chronic cough as a complication of treatment with statins: a case report. Ther Adv Respir Dis. 2012 Aug;6(4):243-6. PMID: 22761129
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22761129

80歳男性、シンバスタチン、フルバスタチンによる加療。乾性咳嗽により呼吸器科受診。

■ロスバスタチンと虚血性大腸炎■
Tan J, Pretorius CF, Flanagan PV.et.al. Adverse drug reaction: rosuvastatin as a cause for ischaemic colitis in a 64-year-old woman. BMJ Case Rep. 2012 Jun 28;2012. PMID: 22744258
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22744258

64歳女性、高コレステロール血症のためのロスバスタチンを開始した後で出血性下痢を提示。便の顕微鏡検査と便培養は感染性を否定。大腸内視鏡生検により虚血性大腸炎。薬剤中止で完全寛解。

■スタチンと記憶障害■
Okeahialam BN,Isiguzoro I. Statin related memory dysfunction in a Nigerian woman: a case report. Curr Drug Saf. 2012 Feb;7(1):33-4. PMID: 22663955
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22663955

ナイジェリアからの報告。シンバスタチン投与後に日常生活に支障をきたす記憶障害を発症した女性症例。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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今回はスタチンと糖尿病リスクの中でも、比較的情報が少ないピタバスタチンを中心に考察してきました。この記事の原稿を書いた翌日に、Lancet誌にスタチンと2型糖尿病リスクに関する興味深い論文が掲載されていました。

Swerdlow DI, Preiss D, Kuchenbaecker KB.et.al. HMG-coenzyme A reductase inhibition, type 2 diabetes, and bodyweight: evidence from genetic analysis and randomised trials. Lancet. 2014 Sep 24. pii: S0140-6736(14)61183-1. PMID: 25262344
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25262344

このランダム化比較試験のメタ分析でも、スタチンと2型糖尿病新規発症リスクとの関連が有意に示されています。(オッズ比1.12[95%信頼区間1.06~1.18])この研究のメインは遺伝学的解析によるもので、それによれば、スタチンによる2型糖尿病の発症は少なくとも一部はHMG-CoA還元酵素阻害作用によって説明されるとしています。皮肉にもコレステロールの生合成を阻害し、血中コレステロールを下げるメイン薬理作用が、一方で糖尿病発症を増やしている可能性が示唆されました。高力価スタチンで糖尿病リスクが高まるのも納得です。

さて、ピタバスタチンは日産化学工業(株)が原体を合成し、興和(株)が製剤開発を行った HMG-CoA 還元酵素阻害剤で、本邦で創薬され2003年 7 月に承認された薬剤です。2012年には世界10か国で上市されていますが、まだまだ海外実績の歴史は浅いと言えましょう。海外における大規模介入研究、あるいは大規模観察研究ではピタバスタチンに関する情報があまりないのが常です。

スタチンと糖尿病リスクはわずかであるものの、臨床上軽視できない有害事象であります。しかしながら、そのリスクの程度の低さ、スタチンで得られるベネフィットを考えたときにこのリスクを実臨床でどう生かせばよいのか、悩むことも多いかと思います。

ただ、少なくとも本邦で使用できるスタチンのうち、糖尿病リスクが最も低いものを選択するというのは臨床上重要な意味を持つと考えます。そもそも、冠動脈疾患リスクが欧米に比べて低い日本人はスタチンで得られるベネフィットも相対的に少なく、ゆえにベネフィットに関してスタチン間であまり差がないように思います。もちろん例外はあるかと思いますが、スタチンはやはりリスクの観点から選択を考慮すべきです。

現時点でプラバスタチンのリスクベネフィットは安定的と考えられます。ピタバスタチンも比較的リスクが低い薬剤と考えられますが、臨床データに乏しく、あえてピタバスタチンを選択するメリットはないのではないかと個人的には思います。
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[構造主義薬学概論]

スレッド
~臨床薬学実践のための行動原理~2015年2月4日更新

序章:構造主義薬学論の位置づけとその機能

[薬学教育における根本問題]

これまでの薬学部における教育課程を振り返れば、そもそも薬学部は臨床薬剤師育成のみならず、創薬研究者育成も兼ねていたため、学問領域は臨床と言うよりはむしろ基礎科目に重点が置かれてきた。(少なくとも自分はそうであった。)有機化学や生物学を基盤に薬理学や病態生理学を駆使しながら薬剤の効果を考え、また実臨床へ出てからも学問基盤として臨床判断の根拠を支えていたのはこのような基礎学問であったこともまた事実であろう。薬剤師向けの専門書の多くもそういった基礎学問を基盤とした記述が多く、薬学部6年制以前において、臨床疫学的知見をベースとした薬剤師向けの専門書はほとんどなかったのではないだろうか。近年EBM(Evidence-based medicine:科学的根拠に基づいた医療)が臨床薬学領域においてもクローズアップされるようになってきており、臨床疫学による知見の臨床応用が普及してきている。しかしながら、いまだ病態生理学的知見、薬理学的知見に基づく薬物治療の考え方の多くが世間一般にも「常識」に登録されているということは大きな誤りではない。

[糖尿病治療における信念対立]
例えば糖尿病を例に挙げてみよう。臨床疫学的知見が示すことは、厳格な血糖コントロールではあまり良いアウトカムを生み出さず、むしろ有害アウトカムが増加するという結果を複数の研究が一貫して示している。しかしながら血糖値が高いのが糖尿病の病態生理であり、合併症を予防するためにもインスリン分泌を促す作用のある薬剤がその治療に有用であり、健康を維持することにつながるという病態生理・薬理学的知見に基づく解釈に違和感を感じる人はむしろ少数ではないだろうか。

近年、糖尿病の早期発見をめざし、薬局店頭での簡易血液検査が可能となり、積極的に勧めているプロジェクトも存在する。糖尿病を早期に発見し、食事指導や医療介入により合併症を予防し、健康を維持しようという目的である。しかしながら英国で行われた糖尿病スクリーニングのクラスターランダム化比較試験ではその有用性を示すことはできなかった。

臨床疫学的知見と病態生理・薬理学的知見はその結果が同じ方向であれば何の問題もない。しかしながらこの2つは相反することが多々存在する。そのためEBM実践を意識する人たちは、病態生理・薬理学的知見に基づき臨床判断をする人たちと時に信念対立を起こすことがある。

病態生理・薬理学的知見は学部教育で多くの時間を費やし、学ぶ「背景知識」だけに、正しい医療は病態生理・薬理学的知見の上に存在するという信憑が深く根付いているという側面もある。一方、病態生理・薬理学的知見と相反することの多い、臨床疫学的知見は、研究参加者の現象を具体的に構造化したものである。基礎理論ではなく、実際のヒトで検討しているがゆえによりリアルに感じるであろう。しかしながらその結果はごく一部の特殊な人を対象に行われた研究である。そのため推定統計学を駆使して構造を95%信頼区間と言う形で一般化する。EBMの実践はこの結果に基づきつつも、自分自身の経験や患者の思い環境をも統合して臨床判断を行うという行動スタイルである。なおEBM創始者のSackett は「EBMとは個々の患者の医療判断の決定に、最新で最善の根拠を、良心的かつ明確に、思慮深く利用すること (Sackett DL et al.:BMJ,312:71,1996.)」と述べている。
しかしながらここで重要なのは、様々な要素を統合すると言ってもエビデンス(≒臨床疫学的知見)をベースにする限りは、まさにそこに関心があると言っても過言ではない。エビデンスによりゆがめられた医療を実践する恐れもはらんでいるのである。

[構造主義薬学概論の役割]

そもそも正しい医療などは存在しないのである。外部に正しい医療が自存するという錯覚は、むしろより多くの知識を学んだからこそ存在する。構造主義薬学概論は臨床薬学分野におけるメタ理論であり、その行動原理の構築を目指すものである。そしてこの理論は正しい医療など外部に自存しないということをあらためて再認識させる装置として機能するという面も有する。

構造主義薬学概論は現在社会においては、いまだ認知されていないが、臨床薬学もまた人間科学であり、このようなメタ理論はいずれ必要になってくるだろう。構造主義薬学概論における構造とは「関心相関的にたち現れる何か」のことである。その何かに名前がつくことにより現象の同一性が編み上げられるのであり、世界が分節されることもある。コトバによって世界が編み上げられるというのは、やや大げさであり、そのすべてがそうであるとは言わない。当然ながら構造のみにとどまるということもありうる。

 繰り返しになるが、臨床疫学的知見、すなわち医薬品の臨床試験から得られた知見は、研究参加者における現象の構造化であり、その一般化として推測統計に基づく統計解析がなされる。そして、一般化に基づいたデータを活用しながら、よりよい臨床行動を模索するその仕方がEBMとも考えられ、構造主義薬学概論はEBMをも包括するメタ理論である。

[EBMが目指したもの]

医療に関してその方針決定にかかわる思考は様々と言えよう。この思考プロセスはもちろん科学的妥当性、医学的妥当性が大きな割合を占めることになるが、それ以外の要素も大きく影響している。でなければ、ワクチンはうたない方がいい、と言うような極端な思考プロセスが話題となることもないだろう。EBMもそのような観点からすれば思考プロセスの一つともとらえることができる。より良い医療を目指すためのツールとしてのEBMがあるならば、何がより良い医療なのか、ある一定の思考プロセスに基づいて、決断している、これは考え方の一つであり、思想であるという側面をもつ。

 考え方の多様化が進む現代社会において、思想は哲学や文学あるいは宗教ともその境界は曖昧と言える。もともとヒトの考え方、思考プロセスにカテゴライズできるような明確な境界線は存在しない。ここからが宗教でここからが哲学そんな線引きは困難と言えよう。そういった思想や宗教において良い思想、悪い思想、そういったカテゴライズもまた意味をなさないことも自明である。

 しかしながらヒトは分類をする生き物である。生物学者の池田清彦先生は「分類とは思想の一つである」と指摘している。分類という思想は、人が有する根本的な価値観なのかもしれない。カオスよりはましという仕方で“あれ”と“これ”を区別する。そして“あれ”と“これ”を共有する2つの集団が時に無用な対立を引き起こす。

 医療における根源的な考え方の違いが医療従事者の間でもやはり対立を生み出す。たとえばEBMを「主義や思想」にしてしまうと、それは必ず相容れない集団を生み出すと考えられる。EBMに関わらず、臨床判断、治療方針等、医療者同士での信念対立は日常的に生み出されていることは多くの医療従事者が経験することだろう。

 例えばEBMをよく理解してない人は対立概念にNBM (Narrative Based Medicine)を提示することがあるが、NBMも結局どこにフォーカスするかの問題であり、医療者自身の関心がどこに向けられているかの違いに他ならない。関心のある部分が強調され、関心のない部分は視野に入らない。無意識的に行われているこの現象は関心相関性と呼ばれる人間の根本的な認識原理である。分類を一言で表すのならば、関心相関的に恣意的に現象を区別したものと言えよう。それをコトバでコードしたものがカテゴライズするということである。これは人に立ち現れる身体不条理と言う現象を、病名によりコードしカテゴライズするという構造と原理的には同じものである。

 EBMとNBMというような二項対立が生み出す信念対立はなにも医療の現場だけではない。二項対立という図式は日常でもごくごく身近に生み出される。たとえば、「赤」と「青」や「男性」「女性」のように、二項対立には「自己は正しく、他者は誤りである」というメタ認知が関心相関的に駆動していると言える。

 あるテーゼの正しさをいったんカッコに入れ、判断停止する。オーストリアの哲学者フッサールはこれを判断停止「エポケー」と呼び、そこから、なぜ自己を正しいと認識したのか、その前提そのものを問い直すこと、これを還元という仕方で信念対立を解消するための思考プロセスを提示する。このような思考プロセスはいわゆる現象学と呼ばれる系譜に繋がっていく。

 フッサールはさらに『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』という書籍の中で「自然の数学化」という、とても興味深い示唆を述べている。科学の進歩は、ヒトがかかわる現象を一般化していくのだが、それは数値で示せる客観的な指標として自然科学の体系を基礎づけてきたわけだ。科学の進歩によって、世界はすべて数学的に説明できるという信憑が一般に広がったと言えよう。そしてそのことが、僕らの生の意味というものをあまり深く考えないようになってきていると指摘する。つまり学問体系は、意味世界を排除することで、客観的な世界を説明するものとなってしまったということだ。

このように自然の数学化は、数量的に示すことができる客観的物体世界とそれ以外の主観的世界に分裂していくことを引き起こした。これは、哲学上最大の難問である主観、客観問題に発展していく。そしてこの二項対立は自己と他者という二元論を形作ることになる。様々な宗教感、多様な思想、思考プロセスの違いが、信念対立を生み出し、時に人は争いを起こしてきたことは歴史を振り返れば自明だろう。

 EBMはこうした二元論、あるいは信念対立を解消するひとつのツールとしての機能するはずであった。人を幸せにすることがEBMの真のアウトカムであるのならば、EBMは医療者、患者、全ての人を繋ぐ架け橋として実践されるべきものであったはずだ。当然ながらEBM実践の多くはそのような仕方で機能してきた。しかしながら、EBM推進論者を時にエビデンス原理主義と言うような仕方で批判することもありうる。またEBM実践者は時に自身の最善の医療と確信する構造と患者が抱く、受けたい医療の構造とのギャップに悩まされる。

 これらは大変重要な示唆である。関心相関の原理に従えば、EBMの実践が価値あるものとして取り出される背景にはそのベースとなる論文、すなわちエビデンスそのものに関心があるという事を忘れてはならない。エビデンスにとらわれ、ある行動原理の価値は、それを実践する人の関心により変動するものであるということだ。エビデンスか、ラナティブか、EBMは本来、実践的原理であったはずではあるが、理論的原理としてとらえられ、多くの誤解を生んできたこともまた事実である。

[構造主義薬学論の概要]

 構造主義薬学概論は「正しい医療」なる前提を疑い、関心相関性という人の根源的な認識原理を踏まえたうえで、現象学的思考を中核とする信念対立解消モデルを採用する。これは西條剛央先生が体系化した構造構成主義の原理を継承している。(と個人的には思っている) また特に疾患という現象に対して言葉が世界を構築していく側面を、ソシュール言語学を源流とする構造主義を科学論に特化させた池田清彦先生の構造主義科学論、そしてそれをさらに医療に特化した名郷直樹先生が提唱する構造主義医療論をもとに、臨床薬学領域への応用を試みたメタ理論がこの構造主義薬学概論である。

 この構造主義薬学概論は、先に述べたように関心相関性という人の根源的な認識原理を踏まえ、現象学的思考を中核とする信念対立解消モデルを駆使しながら、疾患成立の恣意性、薬剤効果の恣意性、そして医療における時間と同一性という3つの原理を認識装置として活用することによって、不毛な信念対立を解消し、臨床判断の多面的評価を可能にさせ、新たな視点を通して、薬剤師における臨床行動原理を構築するものである。いずれもその内容は「当たり前」のことかもしれない。しかしながら、「当たり前だ」という事を人は当たり前に忘れていくので、それが当たり前だということを当たり前に意識できないのだといえる。この概論はその当たり前の認識プロセスをあらためて再認識させるような仕方で駆動することを目的に構築を試みている行動原理である。

第1章:疾患成立の恣意性

[コトバの恣意性と差異性]

 言語学と言っても、さまざまであるが、この構造主義薬学概論ではフェルディナン・ド・ソシュール(1857~1913)の言語学、そしてソシュールの思想をより具体的に体系化した丸山圭三郎先生の、からの示唆を用いて、疾患成立の恣意性を捉えていく。

 例えば、兄弟と言うのは日本語であり、英語ではbrotherである。これは対応的な恣意性と呼ばれる。言語が異なれば、現象とコトバに違いが生まれ、これは恣意的な対応であるということである。また兄弟は日本語で兄と弟という2つの言葉がある。要するに兄弟には年上と年下という2つの概念が存在するわけだ。しかしながら英語のbrother原則的に兄と弟を区別しない。日本語で姉妹に相当するSisterも同様に、姉と妹を区別しない。もちろん英語話者では全て“双子”で生まれてくるわけではない。また当然ながら2人の子供がいたら、双子でない限りにおいて、どちらかが年上であり、一方は年下であるはずだ。僕らは英語を習う時、あまりそのことを意識させられないまま学んでいる。だがしかし、言語の種類によって、その言語話者が有する認識に応じて、目の前の事物の分類の仕方が変わるというのは大変重要な示唆である。

 この世界をコトバと言う道具を使って、切り取りながら、いうなれば言葉を用いながら混沌とした世界に切れ目を入れ、それに名称をつけながらこの世界を理解していると言える。この切れ目の入れ方が、言語ごとに異なるというのである。これを分節恣意性と言う。

 病気と言われるような現象も診断基準というコトバによって単なる身体不条理という現象から疾患を切り取ると考えられる。本来“あれ”と“これ”の病名の間には境界がない連続帯なのだといえるが、例えば咽頭炎と喉頭炎と副鼻腔炎のように言葉をあてがうことで、上気道の炎症という現象をカテゴライズし、概念化し、認識し、治療を考えていく。

 また他者と比較できないような感情表現。こういった感情表現は特に難しい。なぜならば物事の認識は他者との比較により物の価値が産み出される。すなわち、”大きい”という価値観は”小さい”が存在しているからこそ概念化される。言葉は差異の体系であるがゆえに、対立概念のない現象を具体的に概念化し名指すことは困難であることがありうる。不定愁訴と言うのはその良い例であろう。

言語次第で現実の連続帯がどのように不連続化されていくか、その区切り方にみられる異なり方の問題は、例えば日本語で分節できない感情表現、すなわち「言葉では表せない気持ち」のような。これは個人の主観的な問題ではなく、その人のリアルな現象のはずであるが、言語化できないためにリアルさを共有できないということが起こりうるのである。医療においては「なんだかわからない症状」と変換されてしまう恐れを孕んでいる。

[病名分類と疾患生成]

 これまで見てきたように、目の前の連続帯に切れ目をいれカテゴライズする、二項対立に価値を見いだす、言葉はこの二つの性質をもつと言える。すなわち言葉の恣意性と差異性である。言葉は価値を相対化し、物事をカテゴライズすることを可能にしたが、言葉を使えることで、むしろ人は何事も感情を伝え、物事を区別し、概念を共有できると錯覚するようになっている。言葉を使う限りにおいて、曖昧さを受容することは困難なのだという側面もあると言えよう。

 今目の前の身体不条理に病名をつけてもらわないと不安なように、あらゆる身体不条理は病名によりカテゴライズされ、治療が最適化できると考えがちである。でも実際のところ、感染性胃腸炎なら、そこには吐き気と下痢症状という現象が存在するだけで、それ以上でもそれ以下でもない。その原因がノロウイルスだろうとロタウイルスだろうと、そんなことはあまり重要ではないのであるが、ウイルス名が確定されることをヒトは求める。現象に切れ目を入れることで医学は発展してきた。ただそれは切れ目を入れる必要があるかどうかとは、また別の問題を孕んでいるということだ。

 構造主義薬学概論では、疾患の成立は恣意的な側面があり、また関心相関的に現象が病名に変換されるという側面を重視する。したがって、病名ともとの現象には関心と言う名の増幅装置が機能しており、また、その対応がコトバを使う限り、恣意的であるということを十分に認識することで、現場における薬剤適応を多数の視点から考察できるわけである。繰り返すが、構造主義薬学概論は薬剤師の臨床現場における臨床判断の原理となるものであり、イデオロギーではない。疾患成立が関心相関的に恣意的に病名へコードされるという側面を認識することで、様々な視点を獲得できる点を強調するものである。

具体的に機能性ディスペプシアという疾患を取り上げてみよう。機能性ディスペプシアのROME IIIという診断基準(コトバ)によってその同一性がコードされている。診断基準を改めて見てみると、内視鏡検査で潰瘍などの異常が認められなければ、このような現象は従来、臨床的には慢性胃炎として取り扱われてきたと考えられる。消化器症状という現象自体は変わらないにも関わらず、ROME IIIというコトバにより、慢性胃炎と機能性ディスペプシアが分節された良い例である。またその病名がクローズアップされてくるようになった背景にはアコチアミドという新薬の開発がある。この薬剤は機能性ディスペプシアにしか適応を持たない。アコチアミドという薬剤の認識を高めるためにも機能性ディスペプシアという疾患をクローズアップさせなければいけないという構造になっている。すなわち、薬剤の売り上げを伸ばすにはどうすればよいのかという、売り上げへの「関心」がそこには存在する。

 なお疾患成立については恣意的ではないという指摘もあるだろう。確かに急性期の疾患では、ウイルスが同定されたり、血管が詰まって脳梗塞が起きたりとその原因が明確であり、疾患成立は恣意的ではないという批判である。しかしながら、ここでは原因が明らかかどうかを問題としているのではない。感染症においてもウイルスや細菌がいるだけでは疾患として成立することはないだろう。また脳梗塞でもその重症度は大なり小なり幅が存在し、治療適応となるかどうかという意味において疾患成立は恣意性を帯びているということである。またガイドラインや診断基準も言葉で記述される限り、その構造化には恣意性が伴うと言わざるを得ない。

[本章のまとめ]

疾患は診断基準というコトバにより構造化されたものであり、コトバで構造化される限り、もとの現象とのギャップが生じることは否定できない。そして、現象とコトバの対応が恣意的である以上、疾患成立も恣意的と言わざるを得ない。このことはある疾患名がその現象の実体を指し示すものではないということである。したがってこの疾患にはこの薬剤を使うべき、というような正しい医療が存在しえない側面もありうるということがお分かりいただけるであろう。

第2章:薬剤効果の恣意性

 臨床試験の結果、いわゆるエビデンスから得られた客観的な薬剤効果は一種の構造であると言える。そしてその構造の一般化が統計解析である。したがって、臨床医学論文を読むということは現象を構造化し可視化するための手段の一つであり、それが実臨床における臨床判断の唯一の根拠となるものではない。EBMが誤解されている点は、まさにここにある。

[自然の数学化と正しい医療なる錯覚]

 自然現象の数学化あるいは定量化という自然科学が打ち立てた法則や関係式はヒトの世界認識を大きく変えた。フッサールは「ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学」の中で、現象の定量化(構造化)はヒトの日常経験と言う主観的な世界観を、いわゆる「関係式」により具体化することで、確実で絶対的な世界だ、という感覚をヒトに与えることに成功したと指摘する。関係式を与える自然科学は、法則が表現する定式化された世界こそ客観的なものの見方であり、日常の経験そのものはそれに比べてしまえば相対的であいまいなものだという感覚をヒトに植え付けてきたということだ。生活の便宜として現れた自然科学は、やがてある因果関係の体系化を推し進めていくことが目的となり、現実の生活世界は、この目的のために検証されるべき手段に過ぎないものとみなされていく。

 分子生物学、薬理学、病態生理学、疫学や統計学といった学問は、現象を構造化し、それに名称を付けることで定式化し、因果的な法則の客観化を成し遂げたが、現実の生活世界における現象に必ずしも直結しないという事が忘れ去られてきたということは軽視すべきではない。端的に言えば自然科学は目の前の現象を捉えるため、その認識に対する仮説的補助線(≒フィクション)であるという事を認識できなくなっている。

 学的に生成された構造から生活世界をみつめるというのは、構造化の手法により、相反する結果が出てしまった場合、信念対立を引き起こす。例えば、糖尿病では血糖値を下げることで治療効果が得られるという認識は、病態生理学的知見から構造化されたものだ。また真のアウトカムを検討したエビデンスが示す厳格な血糖コントロールが死亡を増やすという臨床データも現象を構造化したものに過ぎない。この2つの構造は、相反する結果を生み出しているため、その構造を常識としているものどうして信念対立を引き起こす。薬剤効果を学的に生成された構造から考察することはこのような信念対立を生み出す可能性を有している。

 EBMはその相反する構造をうまく融合しながら、その時点で最善の臨床判断を模索しようという行動原理であったはずであるが、現象の構造化の際にエビデンスばかりが重視されているというような誤解もまた孕んできた。しかし一方で、文脈のみが重視されEBMと言えど、エビデンスはほとんど意識されていないとする指摘もある

[医療者の理論的薬剤効果から現象としての薬剤効果への思考変容]

ここで視点を180℃変えてみよう。薬剤効果を医療を受ける人の立場で考えてみると、患者自身は、死亡や合併症発症など真のアウトカムとしての薬剤効果を現象として「感じる」ことは現実的に不可能であり、薬剤効果の判断基準は、血糖値や血圧など代用のアウトカムであることが多い。

 この薬は効くのか、と言うのはどういうことなのか。血圧の薬であれば血圧が下がることをその薬の効果と言うのか。それとも寿命が延びることをその薬の効果と言うのか。血圧が下がると言ってもどの程度下がれば効果として認められるのか。寿命が延びたとして、いったい何日延びれば効果と言えるのか。

寿命と言う時間は年単位、一か月単位、1日単位、時間、分、秒…切れ目のない連続性の中で、いったいどこからが寿命が延びたという効果につながるのか、ヒトが意識の中で薬の「効果」を規定しているもの、それは極めて恣意的であると言わざるを得ない。薬の効果を期待している個人個々の感覚と、現実に現れる薬剤効果が一致するかどうか、指しあたって重要なのはこの点であろう。

 主観的な薬剤効果(現象としての薬剤効果)を考えるうえで、実は医療従事者によって理論的に構造化された薬剤効果はあまり大きな意味を持たない。人は薬剤効果を裏付けた学問的正当性の存在と言うよりはむしろ自分の認識の中で意味のある物かどうかと言うところで薬の効果を判断している。すなわち薬が効いたのか効かないのかは多くの場合、個々個人の文脈に依存している。そしてその効果の尺度は有効性という連続帯の中で個人の感覚的なものによって恣意的に分節されている。

 主観的な薬の効果において、真のアウトカムと代用のアウトカムという軸は大切であるが、さらにそれぞれの効果の尺度は連続帯で存在するという事であり、人が恣意的にその尺度を効果あり、なしみたいに分節しているという、もう一つの軸が存在する。

 連続帯の中のどこからが「効果あり」なのかはヒトの認識の中にある「意味」によって分節されていく。また真のアウトカムは多くの場合、自分自身でその効果を確かめることが相当困難である。例えば死亡リスクが減るという真のアウトカムは、統計的手法でこそ示せるものの、これはあくまで現象を可視的に構造化したものにすぎず、主観的にこれを“感じる”ことは難しい。だから現実的には多くの人が代用のアウトカムを基準に主観的な薬剤効果を判断していると言えよう

 これまで述べたようにヒトは生物学という科学理論で合理的な解釈ができるような認識があるかと思えば、一方では自分の認識の中に存在する「意味」で編まれていることの方が多いという事はありうる。プラセボ効果と言うのは、体の中での生化学的反応、薬理学的反応、薬物動態学的反応と言うよりはむしろ、関心相関的にヒトが作り出した「意味」によって規定されるものと言えよう。すなわち、薬が効いたという現象とを患者の言葉で一般化したものと、臨床試験データから構造化し統計手法で一般化したものの間には限りなく大きなギャップがあるわけだ。

 これは真のアウトカムに関してエビデンスと言う客観的データの前に圧倒的無力な健康食品について考えてみるとわかりやすい。健康食品が「効くのか」「効かないのか」という判断は、客観的な臨床試験データに基づく有効性の強弱が重要なのではなく、薬剤有効性尺度の連続帯にヒトが編み上げた『意味』が入れる切れ目の問題である。ヒトによってはこの健康食品がよく効いた、とか全く効果ないよ、と言うのは、代用のアウトカム、真のアウトカムに関わらず、そのヒト個々の基礎疾患や背景因子などを含む文脈により関心相関的に編み上げられた「意味」が大きなウエイトを占めてくるといえよう。

 また市販薬でも同じことが当てはまる。風邪をひいたら早めに病院へ行って抗生剤をもらおう、とか、早めに風邪薬を飲んでおこう、と言うのはこの社会において人々が共有している共通合意であることは、その学術的な正しさを差し置けば、大きな間違えではない。物事、認識の正しさは学術的な妥当性よりはむしろ、社会合意(意味)が編み上げるという側面をもつ。

 風邪のひき初めに総合感冒薬で、その疾患症状が、因果関係がなくとも改善したという事実があるのであれば、その患者にとって総合感冒薬は効果があるということになる。そして、その総合感冒薬と言うのは特定の総合感冒薬であり、他の風邪薬はこの患者にとっての「エビデンス」がない。臨床試験により構造化されたデータによればある総合感冒薬と葛根湯に大きな臨床効果がないことが示されている。
(Intern Med. 2014;53(9):949-56. Epub 2014 May 1. PMID: 24785885)
しかしこの患者に副作用の観点から葛根湯を進めたところで、この患者は総合感冒薬が欲しいと思うだろう。

 何かを正しいと確信した時に、その事象の正しさという要素が問題なはずなのだが、主観的な正しさへの好みという要素が、無意識的に排除されている。したがって、本来好みというバイアスがあるにもかかわらず、自分の好みを無意識的に排除された上で物事の正当性を主張することが多い。関心や意味を見いだせない事象に関して僕たちは、興味がないので別に知りたくない、ということを意図せず自ずからそうせざるを得ない生き物と言えよう。この薬が欲しいという、患者の希望は、その薬が正しい選択か否かという問題よりも、薬が欲しいという欲望・関心相関がたち現れている良い例である。時として医療者は薬剤選択の正当性に関心があるため、ここで患者との信念対立に陥る。

 そのことを踏まえたうえで、薬剤効果を考察すれば、「薬が効いた」というのは関心相関的に立ち現れた、ヒトの主観的な症状に対する感覚がコトバにより恣意的に構造化されたものである。したがって薬の有効性も恣意的に決定づけられるという面を排除できない。臨床試験データにより構造化された薬剤効果とのギャップはかなり大きいものと言えよう。それをふまえてEBMではこのギャップをどう埋めていくかと言うところを重視するのだが、EBMを誤解している多くの人たちはこの点を言及しない。

[本章のまとめ]

 構造主義薬学概論ではEBMの基本スタンスを継承しつつも、関心相関的に立ち現れる主観的な薬剤効果(現象としての薬剤効果)と、医療者が学問的に構造化した薬剤効果という信念対立が現象学的還元を用いながら、その対立解消方法の原理を構築しようというものである。また、そもそも薬剤効果は恣意的な側面を有し、病態生理学的知見や薬理学的知見からの薬剤効果の仮説に対して、臨床疫学的知見がそれに相反するからと言って、前者を否定することの意味があまり大きくないことがお分かりいただけたであろうか。
その目的を理解していただければ、構造主義薬学概論の立ち位置がより明確になるとともに、この概論が単なる理論ではなく、実臨床における薬剤師の行動原理となりうることがお分かりいただけるであろう。

第3章:医療における時間と同一性

 疾患成立の恣意性と薬剤効果の恣意性を踏まえたうえで、薬剤師が学部教育課程の中で学んできた学問的な臨床薬学、あるいは臨床試験データに基づく薬剤の臨床知識、それらを実際に現場でどのように用いたら良いのかと言う問題に対して、その行動原理を構築しようとするのがこの概論の目的である。この原理を十分に機能させるために「医療における時間と同一性」について触れておく。なおこの章は名郷直樹先生が提唱されている構造主義医療論を臨床薬学領域への応用を模索したものである。

 高血圧を例に考えてみよう。高血圧と言うのはいわゆる正常血圧に比べて血圧の値がやや高い状態のことである。そのため将来的にやや脳卒中リスクが高い。ここで大事なのは将来的な脳卒中リスクがどの程普高いかという問題である。年齢を重ねれば、血圧が正常であっても脳卒中リスクが高くなることは疫学的研究により示されている。したがって、時間の経過とともに、どのくらいのスピードで脳卒中と言うイベントが起こり得るのか、それが高血圧と正常血圧でどのくらいの時間差が有るのかと言う問題に帰結できる。

 いうなれば健康という状態がどのくらいのスピードで崩壊していくか、という問題に対して、高血圧はそれを加速するファクターではあるけれども、どの程度加速していくのか、また人によってどのくらいの加速に差がつくのかという問題である。

 高血圧という状態が10年後も高血圧であり、それ以上でもそれ以下でもない場合、それは治療すべき高血圧と言えるのか、と言う問題は、治療をうける患者の年齢にもよるだろう。例えば50歳であれば10年後は60歳であり、まだまだ余命は長い。したがってそれ以降の予後を込みで考える必要があるのに対して、現在90歳である患者に対してはどうであろうか。語弊を恐れずに言えば、高血圧により脳卒中を起こして亡くなるというよりは、寿命により亡くなる可能性が高くなる。したがって両者を同じ治療すべき高血圧症としてカテゴライズするには原理的に無理があるということがお分かりいただけるであろう。

 このように病名と言うのは「時間を生み出す形式」であると言える。構造主義医療論では疾患名のことを「時間を含む変なる現象である」ととらえ、モノではなくコトとして定義すべきと指摘する。すなわち、病名にはその後患者が死亡するなどと言った時間的な流れは定義化されておらず、本来「高血圧というコト」であるはずが、「高血圧というモノ」として定義されているということである。これは大変重要な指摘である。

 認知症を例に考えてみよう。患者にとって、認知症という実体は、患者自身のコトバにより物忘れ症状と言うような現象へ変換される。この時点でこの構造は「コト」であるが、医療はさらにこの現象を「認知症」と構造化する。すなわち認知症は「コト」ではなく「モノ」として医療従事者は取り扱わざるを得ない。診断基準を含め、薬物治療が体系化されるためには実体から現象へ、そしてその現象をモノ化しないと取り扱えないのである。

 しかしここで問題なのがモノと言うのは時間を生み出す形式ではない。認知症は診断基準という同一性が担保される限りは100年後も認知症として構造化されたままだろう。本来病名は「時間を含む変なる現象である」ととらえられるはずなのに、医療者があつかう病名は時間を含まない現象である。

 患者にとっては、疾患は自覚あるいは診断された時点から「コト」であり、刻々と変化する自分自身の「コト」の中で生きていると言えよう。

 従って医療者は病名がまず「モノ」であるという認識をもちながら患者の時間を軸にするという立ち位置をとることが必要となる。この時間軸を「固有の時間」という。病名の時間ではなく患者固有の時間を扱うことこそが「モノ」から「コト」への思考変容につながる。

[本章のまとめ]

 疾患成立の恣意性を踏まえれば、病名を「コト」としてとらえることもまた恣意的と言わざるを得ない。その恣意的な「コト」に対する薬剤効果もまた恣意性を帯びている。臨床薬学は薬理学を背景に臨床疫学的知見に基づき実臨床で使用されるわけではあるのだが、前提となる現象の構造化が既に恣意性を帯びている点は注目に値する。したがってそのような実態を意識しつつ、疾患をモノとしてとらえる事、薬剤効果の前に患者固有の時間を考慮することで、病名の捉え方、薬剤効果の捉え方に複数の視点を生成することを可能にするのである。

第4章:構造主義薬学概論を用いた信念対立解消モデル

 構造主義薬学概論はいまだ未熟な理論であり、その実践原理として完成していない部分が多い。しかしながら、疾患成立の恣意性、薬剤効果の恣意性、医療における時間と同一性という3つの原理を意識することで、実臨床に行ける行動様式の多面的評価が期待できるものと考える。エビデンスか、ナラティブか、と言うような行動方針の信念対立や、エビデンス、プラクティスギャップの取り扱い方、に対して、端的な思考を避け、複数視点からの考察を可能にするものと考えられる。

[薬剤を使用すべきか否かに関する信念対立]

ではここで具体的な例を挙げながら、構造主義薬学概論の全体像をまとめておこう。

薬剤師Aはある糖尿病治療薬Pについて臨床医学論文をシステマテックに検索し、その有効性についてはHbAc1は下げるかもしれないが、心不全を有意に上昇させ、なおかつコストも高く、第一選択としては全く推奨できないと結論したとしよう。

薬剤師Bは基礎研究論文を数多く読み、糖尿病治療薬Pが血糖降下作用のみならず、肥満予防効果、インスリン抵抗性改善効果、動脈硬化進展抑制効果があることを知る。また腎機能が低い患者でも使用可能なこのPは将来的に糖尿病で腎機能が低下したとしても安全に使用できる点を考慮し、第一選択として推奨した。

さてこの薬剤師AとBがある糖尿病患者を巡り、医師に処方提案するということを考えたとき、どの薬剤を提案するか議論したとする。当然ながら薬剤師Bは医薬品Pを推奨するわけだが、薬剤師Aはそれを完全に否定する立場であり、両者の議論は不毛化することはお分かりいただけるであろう。どちらの薬剤師もより良い薬剤選択をしているのにもかかわらずこのような信念対立に陥るのである。

そこで構造主義薬学概論の中核原理を思い出してほしい。どちらが正しい推奨なのかをいったんカッコに入れ、まず医薬品Pを推奨する背景には関心相関性の原理が働いているということを意識する。薬剤師Aは糖尿病の真のアウトカムと言う点に関心があり、それを評価検討したランダム化比較試験とメタ分析をシステマテックに評価し、結論を出した。この薬剤師Aは論文の結果を重視しているということになる。一方薬剤師Aは血糖降下作用と言う点も加味しながら、動脈硬化進展抑制や肥満抑制など様々な生理作用に関心があるものと考えられる。また腎機能低下者でも使用可能な点の評価は薬剤師Bならではの視点と言える。このようにそもそも結論に至るまでに2人の薬剤師の関心には大きなずれがあることがお分かりいただけよう。この時点でそういった背景を認識できれば、不毛な議論へ向かう可能性が低くなる。(全くなくなるとは言わないが、少なくともその可能性は低くなる)

糖尿病の真のアウトカム、代用のアウトカムという概念を話し合い、薬剤Pの生理作用と腎機能の件に言及し、患者背景をもう一度見直したら、やや腎機能が低く、今のところ心不全の既往もなく、患者にとっての関心は血糖が高いことのみであり、さらにこの患者の家族が薬剤Pを服用しており、コストが高いにも関わらず患者自身も希望していたと言った事実が浮かび上がる、と言うようなケースも十分想定できる。ただし有害アウトカムである心不全の件は軽視できないため、薬剤師と医師で慎重にモニターしようということにつながるかもしれない。

臨床試験により構造化された知見と、目の前の患者の現象にはかなりのギャップがあるというのは薬剤効果の恣意性で述べてきた。また糖尿病自体の疾患成立も診断基準がコトバでコードされている限り恣意的である。それらを踏まえれば、薬剤をそもそも用い得るべきかどうかと言った議論も可能になり、より建設的な議論をかわせよう。そして、薬剤を服用することが患者にとって何を意味するのか、患者固有の時間軸での考察を可能にさせる。医薬品Pたとえ1剤であっても、この患者にとってそれを服用するというのは、糖尿病患者として生きていくことを意味する。糖尿病として生きるとはどういうことなのか、糖尿病と言う「モノ」の視点から糖尿病という「コト」への思考変容が可能となる。

[構造主義薬学概論の概要]

構造主義薬学概論は主に、疾患成立の恣意性、薬剤効果の恣意性、医療における時間と同一性の3つの原理を「視点」として活用することで、関心相関・現象学的還元モデルを駆使しながら不毛な信念対立による非建設的な議論を少しでも回避できる可能性を残し、患者固有の時間に配慮した医療提供を模索する、臨床薬学領域における行動原理である。

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地域医療の見え方  2015.Jan.28;1(3)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-慢性心不全に対するループ利尿薬-

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[ポイント]
■ループ利尿薬の効果持続時間はフロセミド<トラセミド<アゾセミドである
■ループ利尿薬の生物学的利用率はフロセミド<トラセミドである。
■フロセミドに比べてトラセミドは血清カリウム値の異常が起こりにくく、心不全予後も改善する可能性が示唆されている。
■アゾセミドはフロセミドに比べて心不全による予期せぬ入院リスクの低下が示唆されている。
■サイアザイド系利尿薬による電解質異常などの有害事象リスクはNNHで12人と報告されており、利尿作用が強力なループ利尿薬ではさらなる警戒が必要と考えられる。

[イントロダクション]

浮腫発現メカニズムは複数の要因がありますが、その一つに心不全による心拍出量低下の低下が挙げられます。心拍出量の低下は、腎還流圧低下を引き起こし、そのためレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系を亢進し、Na貯留が更新していきます。その結果、細胞外液量が増加し浮腫を形成します。心不全治療における利尿薬の使用頻度は高いと思いますが、今回は利尿薬の中でも比較的利尿作用が強いループ利尿薬に関してその効果をまとめていきます。

[ループ利尿薬を整理してみよう]

本邦で処方頻度の多いと考えられるループ利尿薬フロセミド、トラセミド、アゾセミドの3つを取り上げ、大きく生物学的利用率、そして効果持続期間の2つの側面から以下のように整理してみます。

ループ利尿薬
薬剤名生物学的利用率効果持続時間
フロセミド(ラシックス®)51%6時間
トラセミド(ルプラック®)79~91%6~8時間
アゾセミド(ダイアート®)9~12時間

(各製剤インタビューフォームより作成)

アゾセミドの生物学的利用率に関してはインタビューフォームに記載がないのでよくわかりませんが、効果持続時間は[フロセミド<トラセミド<アゾセミド]の順となっており、また生物学的利用率は[フロセミド<トラセミド]となっています。

ループ利尿薬に関してはおおむね効果発現時間が速く(1時間以内)効果持続時間が短いため、効果減弱後、腎でのNa再吸収が亢進し、単回投与のみでは1日の正味のNa排泄が期待できないとして、1日に数回の分割投与が適切であると考えられています。(※1)また生物学的利用率にやや個人差のあるフロセミドは、その効果持続時間の短さもあり、心不全に対する利尿薬の選択肢としてあまりふさわしくないような印象もありますが、実臨床ではどの程度の違いが起こり得るのでしょうか。

[トラセミドとフロセミドの比較]

前述したとおり、生物学的利用率にばらつきがあり、なおかつ効果持続時間も短いフロセミドは慢性心不全治療の長期管理に関して言えば理論的にはあまり好ましくない選択と考えられています。トラセミドは生物学的利用率が安定して高く、効果持続時間もフロセミドより長いわけですが、実際に心不全患者の予後にどの程度影響するのでしょうか。

NYHA class II-IIIの慢性心不全患者1377人(男性約50%、平均約68歳)を対象にトラセミド10 mg/日778人と、フロセミド40mg/日527人+その他の利尿薬72人を比較し、死亡を検討したオープンラベル非ランダム化市販後調査研究が報告されています。(※2)当然ながらランダム化比較試験でありません。患者背景に大きなばらつきはないとしていますが、結果は割り引いて考えるべきでしょう。なお追跡は平均9.2ヵ月です。主な結果は以下の通りでした。

結果
アウトカムトラセミドフロセミド+他の利尿約P値
死亡17人(2.2%)27人(4.5%)<0.05
心臓死亡11人(1.4%)27人(3.5%)P <0.05
異常なK値※95人(12.9%)102人(17.9%) 0.013

※異常なK値(3.5 mEq/l or >5 mEq/l)

あくまで観察的研究という解釈に近くなりますが、トラセミドで有意に死亡減少、カリウム異常値が少ないという結果でした。トラセミドは抗アルドステロン作用を有している(※3)そうで、このあたりが低カリウムリスクの低下につながる可能性は示唆されます。

ランダム化比較試験は2001年に報告されていました。(※4)この研究は慢性心不全患者234人(平均64歳)を対象に、トラセミド113人、フロセミド121人にランダム化し、1年間追跡しました。主要評価項目は心不全による入院です。なお研究はオープンラベル試験であり、アウトカムが入院というソフトエンドポイントになっている点に注意が必要でしょう。心不全による入院はトラセミドで19 人[17%],フロセミドで39人 [32%]、と有意に少ない結果でした。(P <0.01)ただし全原因入院には明確な差はありませんでした。(P = 0.36)

以上を踏まえると、現時点ではフロセミドとトラセミドを比較した場合、心不全予後という観点からは、トラセミドのほうがやや優れているような印象もあります。

[アゾセミドとフロセミドの比較]

アゾセミドはフロセミドにくらべて作用持続時間が長いことはダイアート®のインタビューフォームにも書かれています。このような作用時間の差異が実臨床で実際に患者予後に影響を与えうるのでしょうか。直接比較試験が報告されています。(※5)

この研究は慢性心不全患者320人(NYHA II~III、平均71歳、)を対象にアゾセミド160人、フロセミド160人にランダム化しました。研究デザインはPROBE法で主要評価項目は、心不全による予期せぬ入院と心血管死亡の複合アウトカムです。「予期せぬ」入院というのはやはりPROBE法採用への配慮かとおもいますが、オープンラベル試験で入院というソフトエンドポイントはここでも注意が必要です。追跡は平均35.2か月でした。主な結果は以下の通りです。
結果
アウトカム ハザード比 95%信頼区間
心不全による予期せぬ入院と心血管死亡 0.55 0.32–0.95
心不全による予期せぬ入院(※) 0.53 0.30–0.96
心血管死亡(※) 0.64 0.24–1.67
総死亡(※) 0.93 0.47–1.85

(※)主要評価項目ではない

主要評価項目は有意に減っていますが、死亡等、ハードエンドポイントで検討したハザード比には有意な差がついていませんでした。当然サンプルサイズの問題もありまが、予期せぬ入院というアウトカムへの配慮がなされているものの、やはりPROBR法という試験デザインは頭の片隅に置いておいたほうがよさそうです。

[利尿薬で注意したい電解質異常]

電解質異常の面ではやはりトラセミドの抗アルドステロン作用に注目したいところですが、実際のところどの程度リスクが減るのか、明確なところはやや不明確です。ただ、現時点でそのベネフィットも含めて考えた際、フロセミドよりは良い選択肢なのかなと思います。実際のところ利尿薬による電解質異常はどのくらいの頻度で起こり得るものなのでしょうか。ループ利尿薬ではなく、サイアザイド利尿薬での報告ですが、コホート研究が報告されています。(※6)

この研究は2007年から2008年までのNational Veterans Affairs dataを用いて65歳以上の患者よりpropensity-matchedにより患者を抽出し、新規にサイアザイド系利尿薬を処方された患者1,060人新規に降圧薬を処方された患者1,060人(サイアザイド非使用群)を比較しました。9か月の追跡でサイアザイド系利尿薬による有害事象[低Na血症(135 mEq/L以下)、低カリウム血症(3.5 mEq/L)、eGFRのベースラインから25%減少]を検討しています。

その結果、有害事象はサイアザイド利尿薬群で14.3%、利尿薬なし群で6.0%であり、利尿薬群で有意にリスクが高く(P < .001)そのNNHは12人[95%信頼区間9~17]と報告されています。なかなか高頻度な印象です。利尿作用が強力なループ利尿薬ではさらに電解質異常に関して警戒が必要ではないかと思います。

[慢性心不全患者におけるループ利尿薬の考え方]

経口ループ利尿薬の薬剤選択において、リスクベネフィットの観点からフロセミド(ラシックス®)と比較して、やはり低カリウムリスクの少なく予後改善が示唆されている、トラセミド(ルプラック®)、あるいは作用時間の長く、予後改善が示唆されているアゾセミド(ダイアート®)という感じでしょうか。病態生理理論や臨床報告を見ても結果の方向性はほぼ同じです。

電解質異常のリスクは薬剤師としても特に注意したいところです。先に紹介した報告(※6)では特に重大な有害事象のNNHは82人となっており、これはサイアザイド系利尿薬での報告ですが、ループ利尿ではさらにリスクを過大評価しても良い印象です。そういった意味でもカリウム保持性利尿薬トラセミドの存在意義は大きいという印象です。

[参考文献]

(※1)柴垣有吾 体液電解質異常と輸液 改訂3版中外医学社 2007 P28
http://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=205
(※2)Cosín J, Díez J; TORIC investigators. et.al. Torasemide in chronic heart failure: results of the TORIC study. Eur J Heart Fail. 2002 Aug;4(4):507-13. PMID: 12167392
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12167392
(※3)木戸 秀明, 大滝 裕 カリウム保持性ループ利尿薬トラセミド(ルプラック®)の薬理作用と臨床効果 日本薬理学雑誌Vol. 118 (2001) No. 2 P 97-105
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/118/2/118_2_97/_article/-char/ja/
(※4)Murray MD, Deer MM, Ferguson JA.et.al. Open-label randomized trial of torsemide compared with furosemide therapy for patients with heart failure. Am J Med. 2001 Nov;111(7):513-20. PMID: 11705426
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11705426
(※5)Masuyama T, Tsujino T, Origasa H.et.al. Superiority of long-acting to short-acting loop diuretics in the treatment of congestive heart failure. Circ J. 2012;76(4):833-42. PMID: 22451450
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22451450
(※6)Makam AN, Boscardin WJ, Miao Y.et.al. Risk of thiazide-induced metabolic adverse events in older adults. J Am Geriatr Soc. 2014 Jun;62(6):1039-45. PMID: 24823661
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24823661

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■ロキソプロフェンとセレコキシブの消化性潰瘍リスク■
Sakamoto C, Kawai T, Nakamura S.et.al. Comparison of gastroduodenal ulcer incidence in healthy Japanese subjects taking celecoxib or loxoprofen evaluated by endoscopy: a placebo-controlled, double-blind 2-week study. Aliment Pharmacol Ther. 2013 Feb;37(3):346-54. PMID: 23216412
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23216412
研究デザイン:ランダム化比較試験

P:40歳~74歳の日本人189人(平均57.5歳、男性28.6%、H.pylori陽性42.9%)
E:セレコキシブ100mgを1日2回投与
C:ロキソプロフェン60mgを1日3回投与
C:プラセボを投与
O:内視鏡的に確認された胃十二指腸潰瘍(追跡期間14日)
サンプルサイズ:185人(<最終解析人数186人)
統計解析:安全性解析対象集団(modified safety analysis set)解析186人/189人
患者背景:著名な差異なし

結果: セレコキシブは対ロキソプロフェンでリスクのオッズ比0.00454[95%信頼区間0.0027~0.2570]と著明に低い

内視鏡的に確認された胃十二指腸潰瘍
・セレコキシブ群:1人(1.4%) 
・ロキソプロフェン群21人(27.6%)
・プラセボ群1人(2.7%)

※関連文献※
Coxib and traditional NSAID Trialists' (CNT) Collaboration, Bhala N, Emberson J, Merhi A, .et.al. Vascular and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individual participant data from randomised trials. Lancet. 2013 Aug 31;382(9894):769-79. PMID: 23726390
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23726390

NSAIDsとプラセボを比較した124513人(280研究)とNSAIDs同士を比較した229296人(474研究)を解析対象にして、NSAIDsと心血管イベントリスク及び消化管障害リスク等を検討したIPDメタ分析。上部消化管リスクは概ね「コキシブ≒ジクロフェナク<イブプロフェン<ナプロキセン」

■自宅における転倒防止介入■
Keall MD, Pierse N, Howden-Chapman P.et.al. Home modifications to reduce injuries from falls in the Home Injury Prevention Intervention (HIPI) study: a cluster-randomised controlled trial. Lancet. 2014 Sep 22. pii: S0140-6736(14)61006-0. PMID: 25255696
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25255696
研究デザイン:単盲検クラスターランダム化比較試験

P:1980年以前に建築された家屋に居住する家庭842世帯。(少なくともそのうちの一人が補助金などの明細を有している。)世帯単位のクラスターランダム化。対象参加者にマスキングできず。
E:家屋内の手すりの設置やすべり止めの設置など、家屋の即時修復436世帯(950人)
C:家屋の修復待機(3年間:待機コントロール)406世帯 (898人)
O:家屋内における治療を要する年間1人当たりの転倒率
統計解析:intention to treat解析 
追跡中央値:1148日 (IQR 1085-1263),

▶転倒による障害 E群:0.061/人年 C群:0.072/人年 
・相対危険0.86[95%信頼区間0.66~1.22]


結果
アウトカム E群 C群 相対危険[95%信頼区間]
転倒による障害 0.061/人年 0.072/人年 0.86[0.66~1.22]

・年齢、転倒既往、性別、人種起源で調整後の相対危険0.74[95%信頼区間0.58~0.94]

低コストの家屋修復が一般集団における転倒による損傷を減少させる手段であり得ることを示唆していると結論。

■変形性関節症に対するセレコキシブとグルコサミン+コンドロイチン■
Hochberg MC, Martel-Pelletier J, Monfort J.et.al. Combined chondroitin sulfate and glucosamine for painful knee osteoarthritis: a multicentre, randomised, double-blind, non-inferiority trial versus celecoxib. Ann Rheum Dis. 2015 Jan 14. pii: annrheumdis-2014-206792. PMID: 25589511
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25589511
研究デザイン:ランダム化比較非劣性試験

P:中等度から重度の疼痛を伴う膝の変形性関節症を有する患者(Kellgren-Lawrence分類で2~3[6段階指標で数値が大きいほど重度]、WOMAC疼痛スコア301以上[0~500で数値が大きいほど重症]
E:コンドロイチン硫酸400mg+グルコサミン塩酸塩500mgを1日3回投与606人(平均62.7歳、女性83.9%)
C:セレコキシブ200mg/日の投与
O:6か月後のWOMAC疼痛スコアの変化(非劣性マージン40)
サンプルサイズ:各群280人(>解析人数522人)
統計解析:per-protocol解析(非劣性試験、解析人数522人/606人[86.1%])
追跡期間:6か月
患者背景:ほぼ同等

結果:6か月後のWOMAC疼痛スコアの変化はE群で‐185.7、C群で‐186.8とその差は‐1.1[95%信頼区間‐22.0~19.8]で非劣性マージンの40以内に収まり非劣性が示された。

コンドロイチン+グルコサミン:372.0⇒185.8(差-185.7)
セレコキシブ:370.6⇒184.7(差‐186.8)

※関連文献※
Reichenbach S, Sterchi R, Scherer M.et.al. Meta-analysis: chondroitin for osteoarthritis of the knee or hip. Ann Intern Med. 2007 Apr 17;146(8):580-90. PMID: 17438317
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17438317
変形性関節症におけるコンドロイチンの効果をプラセボもしくは治療なしと比較したランダム化比較試験、準ランダム化比較試験20研究(解析対象3846人)のメタ分析。研究間の異質性が極めて高い(I2 = 92%) コンドロイチンの疼痛への有効性は10cmvisual analogue scale(VAS)で0.6mmの違いであり、その効果はごくわずかであるか、ほぼ期待できないと報告されている。漫然日常的にと投与することは推奨されないという結論している。なお有害事象の有意な増加は検出されなかった。相対危険0.99 [95%信頼区間0.76~1.31]

※関連論文
Wandel S, Jüni P, Tendal B,et.al. Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis. BMJ. 2010 Sep 16;341:c4675. PMID: 20847017
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20847017
変形性関節症に対する、コンドロイチン、グルコサミン、もしくはその併用効果を検討したランダム化比較試験10研究(解析対象3803人)のネットワークメタ分析。関節痛への有効性を10 cm visual analogue scaleにて評価。臨床的意義のある最小値は‐0.9㎝とした。

プラセボと比較して
・グルコサミン:-0.4cm [95%信頼区間-0.7~-0.1 cm]
・コンドロイチン-0.3cm [95%信頼区間-0.7~0.0 cm]
・グルコサミン+コンドロイチン-0.5cm[95%信頼区間-0.9 to 0.0 cm]

※臨床スクリプト※
変形性関節症に対するコンドロイチン、グルコサミンの効果は一貫しない。概ねそれぞれの単独よりも併用した方が効果的かもしれない。しかしながら複数の研究でその有用性は否定的である。非劣性試験1つの結果で有効と結論するのは早々であろう。しかしながら疼痛は患者の主観症状であるため、服用後の状態に改善を認めるのであればエビデンスを盾にその服用を否定するものではない。後述する有害事象を考慮したうえで使用するのもありだろう。

■リウマチ患者におけるメトトレキサート、TNFα阻害薬の有効性■
Roubille C, Richer V, Starnino T.et,al, The effects of tumour necrosis factor inhibitors, methotrexate, non-steroidal anti-inflammatory drugs and corticosteroids on cardiovascular events in rheumatoid arthritis, psoriasis and psoriatic arthritis: a systematic review and meta-analysis. Ann Rheum Dis. 2015 Jan 5. pii: annrheumdis-2014-206624. PMID: 25561362
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25561362
研究デザイン:ランダム化比較試験のメタ分析

P:リウマチ患者、乾癬性関節炎患者,乾癬患者を対象としたランダム化比較試験34研究の参加者(リウマチ28研究236525人、乾癬性関節炎/乾癬6研究220209人)
E:TNF阻害薬、メトトレキサート、NSAIDs、ステロイドの使用あり
C:TNF阻害薬、メトトレキサート、NSAIDs、ステロイドの使用なし
O:全心血管イベント
評価者バイアス:2名の著者が独立して評価
元論文バイアス:ランダム化比較試験のメタ分析
異質性バイアス:no significant heterogeneity was found for the all CVE endpoint
出版バイアス:visual inspection did not suggest publication bias for this outcome.

結果
▶リウマチ患者
・TNFα阻害薬の使用で心血管イベント減少が示唆。
相対危険0.70[95%信頼区間0.54~0.90]
・メトトレキサートの使用で心血管イベント減少が示唆
相対危険0.72[95%信頼区間0.57~0.91]
・NSAIDsの使用で心血管イベント増加が示唆
相対危険1.81[95%信頼区間1.01~1.38]
・ステロイドの使用で心血管イベント増加が示唆
相対危険1.47[95%信頼区間1.34~1.60]

▶乾癬性関節炎/乾癬
・TNF阻害薬及びメトトレキサートの使用で心血管イベント減少が示唆
0.75[95%CI信頼区間0.63~0.91]

※旧ブログ関連記事※
リウマチに対する生物学的製剤 2014年7月16日
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/07/blog-post_16.html
リウマチに対する生物学的製剤② 2014年7月17日
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/07/blog-post_17.html


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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■グルコサミンと喘息増悪■
Tallia AF, Cardone DA. Asthma exacerbation associated with glucosamine-chondroitin supplement. J Am Board Fam Pract. 2002 Nov-Dec;15(6):481-4. PMID: 12463294
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12463294

喘息を有する52歳女性。変形性関節症による疼痛へのグルコサミン、コンドロイチンサプリメントの使用によって、呼吸困難、歩行困難、日常的な喘鳴が発現。アルブテロール吸入に抵抗性を示した。環境的要因や感染症など、増悪暴露因子は他になかった。グルコサミン、コンドロイチンサプリメントの中止により喘息症状改善。


■慢性肝臓疾患患者におけるグルコサミンの肝毒性■
Cerda C, Bruguera M, Parés A. Hepatotoxicity associated with glucosamine and chondroitin sulfate in patients with chronic liver disease. World J Gastroenterol. 2013 Aug 28;19(32):5381-4. PMID: 23983444
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23983444

慢性肝疾患を持つ151人の患者(平均59歳、女性56.9%、C型肝炎ウイルス[38.2%]、自己免疫性肝炎[12%]、B型肝炎ウイルス[7.1%]、アルコール性肝硬変[4.9%])から23人の患者にコンドロイチン(6人)、グルコサミン(16人)、あるいはその両方(1人)の服用が確認された。グルコサミン消費に伴うALT、ASTの上昇は2例確認された。71歳のC型肝炎の女性では5~7倍の上昇が認められた。やはりC型肝炎を有する77歳の女性では4倍近くの上昇が認められた。このケースでは薬剤によるものと考えられる皮疹を確認した。


■グルコサミン摂取が原因と疑われる自己免疫性肝炎様の肝障害■
von Felden J, Montani M, Kessebohm K,et.al, Drug-induced acute liver injury mimicking autoimmune hepatitis after intake of dietary supplements containing glucosamine and chondroitin sulfate. PMID: 23391366
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23391366

グルコサミンとコンドロイチン硫酸塩を含有する製剤の摂取後に急性および重度の自己免疫性様肝炎を発症。ステロイドへの反応は良好で、患者の完全寛解をもたらした。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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先日、青山学院大学の教授で生物学者の福岡伸一先生の著作、「動的平衡」を読みました。「動的平衡」とは、ドイツ生まれのアメリカ合衆国の生化学者、ルドルフ・シェーンハイマー(Rudolph Schoenheimer、1898~1941年)が明らかにした、安定同位体元素を用いた、生体内での代謝を追跡する手法による知見から示唆されたものです。

シェーンハイマーは窒素を放射性同位元素でマーキングしたロイシンを含むエサを、成熟したネズミに与えました。このロイシンは摂取後、体に取り込まれやがて、尿中排泄されるだろうと誰もが考えていました。しかし取り込まれた窒素は、そのまま尿中には排泄されることなく,体内に存在する蛋白質に取り込まれ、その後全身の組織へと分散され、一定期間体内にとどまりました。そしてこの間、ネズミの体重は大きく変化しなかったのです。すなわち、タンパクの合成と分解が同時的にしかも別々の場所で行われていたという事を明らかにしました。

今回はメインテーマのループ利尿薬のほかに、コンドロイチンやグルコサミンに関するいくつかの文献を紹介しました。コンドロイチンは体内にある全身の軟骨や目の角膜、骨、各臓器、皮膚などに分布しています。サプリメントで摂取したコンドロイチンがそのまま吸収されたにせよ(生物学的利用率は12%程度とも言われています)、直ちに全身に分布していくわけであって、例えば変形性膝関節症の疼痛を有する患部部分に直接経口摂取したコンドロイチンが補充されるわけではありませんね。

生命体というのは実に不思議なもので、生体内のある部位における、物質が不足したときに、経口的に、その物質を摂取しても、そのある部位に接種した物質が直接補充されるわけではありません。髪の毛を食べたら、髪の毛が生えてくるわけではありませんよね。

福岡先生曰く、合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」ということであり、生命とは、そのバランスの上に成り立つ「効果」であるというわけです。生命現象とは、因果関係ではなくただ平衡状態があるに過ぎないのですね。
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[コラム]因果関係の思想構造

スレッド
~ランダム化、傾向スコアから垣間見る因果効果の考え方~

日経DIオンライン に連載させていただいております コラム に、風邪に対する抗菌薬の有用性を検討した英国のコホート研究を取り上げさせていただきました。僕自身、過去に経験があるのは、「抗菌薬を飲んだから風邪が早く治ったんです」と言うような患者さんの声でした。

風邪症状の改善と抗菌薬の服用にどのような関係があるのか、それを明確に示すのは実は相当困難なのです。まず抗菌薬の効果云々以前に、自然経過による軽快という現象があり、その自然経過に関わる因子は多岐にわたるからです。

例えば、風邪症状を起こしている病原体の種類によって重症化リスクが変わるかもしれないですし、個々人の免疫力による自然治癒のスピード、そして感染時期や地域によって、あるいは食事内容や他の薬剤服用による主観的な症状改善などなど、多数のファクターがあり、風邪症状の改善と抗菌薬との関連を明確に示すことは相当困難なことがお分かりいただけるでしょう。

そもそも、風邪と抗菌薬に限らず、おおよそ世の中に起こる現象は、その原因を考えるという立場に立った時に、因果関係を決定づける要因を探索することは相当困難だと言えます。その原因を考える立場に立ったという時点で、原因がもはや明確に特定できず、あるいは関連が一番高そうだという因子を原因と推測しているにすぎないのです。

[料理中におきた手のけがの原因は何か]

良く考えてみると、原因が分かりきった事象について僕たちは、「あれが原因だろう」と言うふうに思考しません。例えば包丁で手を切ってけがをした時に、「このけがの原因は包丁で切ったからでしょう」と切った本人は考えません。本人にとっては「包丁で切ったからけがをした」のだということが自明だからです。しかし、包丁で手を切ったところを直接見ていない、第3者からしたらどうでしょうか。まあ、やや馬鹿げた例ではありますが、けがの原因は包丁以外にも様々なものを想定することができます。カッターナイフで切ってしまったかもしれませんし、紙で切ってしまったかもしれません。そういった要因の中から、少なくとも文脈によりフィットする事象を原因としてより強く確信するのです。

このような思考プロセスの中核は、文脈によりフィットする要因は何かという思想構造にあります。例えば料理をしている時にけがをした、という文脈であれば、まずは「関心」が料理中のアクシデント、に集中するわけです。料理中にアクシデントを起こすようなファクターと言えば火傷や包丁による外傷が挙げられるでしょう。そして目の前の創傷と照らし合わせたときに、「料理中に包丁で手を切ってしまった」という現象と目の前の創傷がリンクし、原因を確信するのです。

しかし、実際には包丁ではなく、はさみでけがをしていたかもしれないですし、その原因とは原因を探る立場の人が最も、原因であるらしいと確信している事象に過ぎないわけです。そもそも関心の的ではなかった料理中のアクシデント以外の要因が原因かもしれません。料理レシピをプリントアウトした紙で手を切ってしまった、など原因はいくらでも考えられるのです。

このように多数の要因の中から、注目した文脈上において、“主観的に感じた、最もありうる要因”を原因として確信する構造が我々にはあります。そしてその確信構造は概して、原因が分からない時に起動するものです。また最もありうる要因はヒト個々人の「関心」により抽出されたものといえましょう。このように考えると、ヒトが確信する因果関係ほど曖昧なものはないのかもしれません。

[サプリメントで痩せるというのは因果効果か]

よくインターネットや雑誌に掲載されている、「このサプリメントを飲めば痩せる」と言うようなものも、曖昧な因果関係に裏付けされた幻想にすぎない可能性を排除できません。サプリメントが原因で痩せたことを示すのは相当困難なのです。なぜならば、サプリメントを服用する対象となる人間そのものが複雑な要因で構成されているからにほかなりません。

ヒトを構成している要素は数え上げればきりがありません。年齢、性別、体重、身長、食習慣、思想、居住地域、治療中の疾患や薬剤、行動パターン、経済状況、…そのすべてが全く同じ人は存在しません。薬の効果を論じる際には、薬剤とその効果の因果関係を示す必要があります。人に対する、ある薬剤の効果を因果関係として導くにはどうすれば良いのかということを、考えねばならないのです。

ここで大事なのが、薬の効果を知るためには、薬以外のファクターが全て同じ条件でなければならないということです。差を知りたい介入以外の介入が等しくなければ、因果関係が正しくわからないのです。因果関係によりもたらされる効果を因果効果とするならば、因果効果は、「ある事象Xが起きた世界A」と「ある事象Xが起きなかった世界B」の差で示されます。

タケオさんがサプリメントを飲んだ世界Aとタケオさんがサプリメントを飲まなかった世界Bの差が因果効果と言うわけです。これによってタケオさんの体重が減り、より男前になったということが示されれば、サプリメントと美容効果の因果関係が示されたことになるでしょう。

しかし、どうしても越えられない問題がここにはあります。当たり前ですが、この世界Aと世界Bは同時的に存在しません。僕たちはただ一つの世界を生きています。サプリメントを飲む選択をすれば、飲まなかった世界にめぐり合うことはありません。すなわち、どちらか一方の世界を選択することで比較する対照を失っていることが、因果関係をより幻想化することを助けています。

介入ありと介入なしと言うのは一人の人間を対象にした場合、同時的にデータを求めるのは不可能です。すなわち差の因果効果は求まりません。介入あり、と介入なしの時間軸をずらせば可能ですが、そうなると、人間を取り巻く様々なファクターが変化します。たった1週間ずれるだけで、感染症の流行状況が変わったり、食べ放題の焼き肉を食べに行ったり、飲み会でビールを飲みすぎたりするわけです。そういったファクターが純粋な因果効果をマスクします。

ランダム化と傾向スコアマッチングに共通する試み

この壁を乗り越えるために考えられた研究デザインの代表的なものがランダム化比較試験です。一人の人間を対象としていては、比較対象データが得られない、だけれども複数の人間を対象にしてみてはどうか。この複数人数が十分なサンプル数であれば、まったくランダムに介入群と非介入群に分けることで2つの同一的な集団と仮定できるようになります。すなわち、同時時系列で比較可能な2群が設定できるのです。そしてこの差が介入効果として定量的に算出することが可能になります。

しかし、実際にはランダム化比較試験が困難なことも多いでしょう。薬を飲ませる人、飲ませない人、そういう仕方で研究に参加者してくれる人たちの同意を得なくてはならないからです。お金もかかりますし、有害事象を検討するのであれば倫理的に問題でしょう。

さて、ランダム化できない場合にどうするか。対象患者の様々なファクターをどう取り扱うかが肝になります。近年はやりの傾向スコアは、この問題をクリアするために開発された手法です。対象患者一人一人の要素(年齢や性別、併存疾患や既往歴…などなど)をもとに、介入を受けるであろう確率を算出するのです。この確率を傾向スコアと呼びます。

例えば心臓病があって、糖尿病もあって、高血圧もある人は、低用量アスピリンを飲んでいる可能性が高いですよね。例えばその可能性を90%の確率と見積もったとしたら0.9という傾向スコアが算出されます。一方、いたって健康そうな対象者では低用量アスピリンを飲んでいる可能性は少ないですよね。例えばこちらは10%の確率と見積もったとして0.1という傾向スコアが算出されます。このように患者1人ずつ傾向スコアを算出していきます。

そして、介入を受けた人、介入を受けなかった人、この2群を比較する際、傾向スコアが等しい人同士でマッチングを行い解析集団を構築するのです。これを傾向スコアマッチングと呼びます。上記の例で言えば、実際にアスピリンを飲んだ人、飲まなかった人の2群に分けるのですが、それぞれ傾向スコアが等しい人どうしてマッチさせ、抽出するのです。すると、傾向スコア算出に用いたファクタ-の偏りなく解析集団を抽出することができます。こうすることによって比較可能性を高めるのです。比較可能性の高い2群を比較することで初めてアスピリンの効果を論じることができます。

しかし、マッチされなかった患者も当然出てきます。特に傾向スコアが極端に高い、あるいは低い患者群では、マッチペアが見つからないという事態が起こりえます。そのため最終解析集団はコホート全体の中でも平均的な集団になっている可能性があり、因果効果の差の検出力はやや低くなるでしょう。そしてそれは特に有害事象を評価する際に過小評価につながる恐れもあるかもしれません。またあくまで調整できるのは、既知のファクターのみです。未知のファクターまで平均することが理論上可能なランダム化とはこの点で大きく異なります。

[人は因果を作り出す生き物である]

さて、これまでに因果関係を示すための手法としてランダム化、そして傾向スコアマッチングを紹介してきました。いずれにも共通するのは差を知りたい介入以外の介入が等しくなければ、因果関係が正しくわからないということに尽きます。あらゆる現象の原因と結果を考えるときに、そういった思考抜きに、原因を特定してしまうというような仕方はあまりセンスが良いとは言えません。

原因とはそもそも「わからない」を前提にしているもので、人間が原因と確信しているものは、その原因が取り出された文脈に関心があるのに過ぎないのです。それがたまたま本当の原因かもしれないですし、そうでないかもしれない、よく分からないということを放置できずに、なにがしかの原因を後付けで挿入する、そういう仕方で物事を考えるのがそもそも人間なのかもしれません。
#読書 #本 #詩 #エッセイ #コラム

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地域医療の見え方  2015.Jan.21;1(2)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-認知症に対する抑肝散の効果-

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[ポイント]

■認知症患者のBPSDに対して抑肝散は一定の効果が期待できる可能性がある
■認知症患者のADLに対して抑肝散の効果はあってもわずかかもしれない
■認知症患者の認知機能に対して抑肝散の効果はほぼ期待できない
■抑肝散にはアレルギー性肺炎や低カリウム血症など重篤な有害事象の報告がある

[イントロダクション]

一般に認知症と言われるような患者では、記憶障害や見当識障害を中心とする、中核症状以外にも、幻覚や妄想、あるいは抑うつ、せん妄、興奮、攻撃的言動、徘徊などの多彩な精神症状や行動障害がおこることがあります。このような周辺症状のうち特に精神症状および行動障害をBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と総称することも多くなりました。

BPSDの治療には向精神薬が用いられることも多いのですが、有害事象リスクなどもあり、その使用は慎重に考慮されるべきではあります。このようなBPSDに対して漢方製剤である抑肝散の有効性が認められた症例が報告されています。(※1)向精神薬による治療が困難な例に対して、抑肝散の臨床効果が期待されています。しかしながら、介入研究による臨床効果については、触れられる機会も少ない印象です。今回は認知症に対する抑肝散の臨床効果をテーマにまとめていきたいと思います。

[臨床研究から垣間見る抑肝散の効果]

2005年に単盲検ランダム化比較試験が報告されています。(※2)この研究は52人の中等度から重度の認知症患者(男性24人、女性28人、平均80.3歳)を対象に抑肝散(27人)と治療なし(25人)にランダム化し、4週間後のNPIスコアによるBPSD、MMSEによる認知機能、Barthel IndexによるADLを評価しました。

NPIスコア(Neurophychiatric Inventory)とは介護者による精神症状を評価するための方法で、妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、多幸、無感情、脱抑制、易刺激性、異常行動の10項目につき、それぞれの頻度を1~4の4段階で、重症度を1~3の3段階で評価します。点数が高いほど頻度、重症度が大きいことを示しています。各項目のスコアは頻度×重症度で表され(1~12点)、10項目で合計1~120点となります。

MMSE(Mini-Mental State Examinationとは認知機能検査のことで満点は30点。総合得点が21点以下の場合は、認知症などの認知障害がある可能性が高いと判断されます。

Barthel IndexとはADL評価法の一つです。総得点は最高100、最低0となります。BIが60以上では介助が少なくなり,40以下ではかなりの介助を要し,20以下では全介助となります。

試験の結果、抑肝散群では、BPSDに関してNPIスコアで平均37.9から19.5と有意な改善を認め、またADLもBarthel Indexで56.4から62.9と有意な改善を示しました。しかし、治療なし群では明確な差はありませんでした。MMSEに関しては両群ともに明確な差はありませんでした。この研究では抄録の記載を見る限り、各群の差を両群で比較しているわけではないので、実質的には投与前後比較研究という印象で、プラセボとの差がどの程度あるのかよく分かりません。

2009年には106人の認知症患者(アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症)を対象にした、ランダム化クロスオーバー試験が報告されています(※3) 治療期間を①と②にわけ、①に抑肝散を投与し、②に治療を行わないグループA群と、①に治療を行わず、②に抑肝散を投与するグループB群に分けてBPSDをNPIで認知機能をMMSEで評価しました。なお治療期間①、②ともに4週間と設定されています。

試験の結果、無治療期間ではNPIスコアの有意な改善は見られませんでしたが、抑肝散治療期間では有意にNPIスコアの改善が見られました。(グループA:p=0.002、グループB:p=0.007)ただしこれも投与前後比較なので、プラセボ効果やホーソン効果の影響は少なからず残る印象です。また認知機能やADLに対して有効性は認められませんでした。比較対照群と実薬群との比較により検討している研究ではないので、2005年の報告(※2)と同様、プラセボと比較してどの程度の差なのか、という純粋な薬剤効果は評価しにくいところではあります。

ひとつの臨床研究だけではその有効性はよく分かりませんが、メタ分析が2013年に報告されていました。(※4)抑肝散と通常ケアを比較した4つランダム化比較試験から個々の患者データを用いて検討したIPDメタ分析です。解析対象は236人で、BPSDはNPIスコアにて評価されています。

その結果、通常ケアに比べて抑肝散ではNPIスコアの有意な改善が認められました。(p = 0.0009)また幻覚、妄想、攻撃性等のNPIサブスケールも有意に改善しました。さらにADLスコアに関しても抑肝散で有意な改善を示しています。(標準化平均差-0.32, p = 0.04, I(2) = 0%)

スコアの統計的有意差と実臨床上での違いが気になるところです。ADLに関してはP値が0.04ですから、著明な効果とは言えないかもしれません。(抄録には95%信頼区間の記載なし)この研究でもMMSEスコアに関しては明確な効果は示されませんでした。

[認知症のBPSDに対する抑肝散の考え方]

BPSDに対する認知症への効果を検討した妥当性の高いエビデンスは現時点で限定的です。ただBPSDをNPIで評価した際、抑肝散には一定の効果が期待できそうです。ADLに関しては改善があったとしてもごくわずかかもしれません。また複数の研究でMMSEに対するスコアの改善効果は示されておらず、認知機能に対する有効性はほぼ期待できないと考えられます。

安全性に関しては重篤な低カリウム血症(※5)、アレルギー性肺炎(※6)等も報告されており、漢方製剤だから安全に投与できるというわけではありません。また漢方製剤はアドヒアランスの問題もあります。ただBPSDに用いられるような向精神薬の有害事象も決して侮れるものではなく、抑肝散の使用によるNPI の改善が介護負担の軽減につながる効果を期待できる可能性があることから、血清カリウム値等に注意しながら使用することで、介護者も含めた臨床上の有用性に期待できる可能性はあります。

[参考文献]

(※1)水上 勝義, 畑中 公孝, 田中 芳郎 他 精神症状や行動障害に抑肝散が効果的であったアルツハイマー型認知症の5例 日本東洋医学雑誌Vol. 57 (2006) No. 5 P 655-660
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed1982/57/5/57_5_655/_article/-char/ja/
(※2) Iwasaki K, Satoh-Nakagawa T, Maruyama M.et.al. A randomized, observer-blind, controlled trial of the traditional Chinese medicine Yi-Gan San for improvement of behavioral and psychological symptoms and activities of daily living in dementia patients. J Clin Psychiatry. 2005 Feb;66(2):248-52. PMID: 15705012
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15705012
(※3)Mizukami K, Asada T, Kinoshita T.et.al. A randomized cross-over study of a traditional Japanese medicine (kampo), yokukansan, in the treatment of the behavioural and psychological symptoms of dementia. Int J Neuropsychopharmacol. 2009 Mar;12(2):191-9. PMID: 19079814
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19079814
(※4)Matsuda Y, Kishi T, Shibayama H,et.al. Yokukansan in the treatment of behavioral and psychological symptoms of dementia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Hum Psychopharmacol. 2013 Jan;28(1):80-6 PMID: 23359469
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23359469
(※5)Nishiyama N, Takeshita M, Tanaka K,et.al. [A case of severe hypokalemia caused by a Chinese herbal remedy (Yokukansan) in an 81-year-old woman with dementia]. Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2011;48(5):553-7. PMID: 22323035
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22323035
(※6) Nakamura K, Shimizu T, Mitsuhata H. [Case of pneumonitis caused by Yokukansan]. Masui. 2012 Feb;61(2):214-6. PMID: 22413451
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22413451

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■キノロン系抗菌薬とぶどう膜炎リスク■
Eadie B, Etminan M, Mikelberg FS. Risk for uveitis with oral moxifloxacin: a comparative safety study. JAMA Ophthalmol. 2015 Jan 1;133(1):81-4. PMID: 25275293
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25275293
研究デザイン:症例対照研究

P:40歳~85歳の男性コホートから
※(症例)新規にブドウ膜炎と診断された13313人
※(対照)年齢、コホート登録年、追跡期間でマッチした133130人
E:モキシフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンの現在使用あり
C:モキシフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンの現在使用なし
O:ぶどう膜炎発症

結果:モキシフロキサシン、シプロフロキサシンではぶどう膜炎リスクが有意に上昇するが、レボフロキサシンでは有意でなかった。
・モキシフロキサシン:調整率比2.98[95%信頼区間1.80~4.94]
・シプロフロキサシン:調整率比1.96[95%信頼区間1.56~2.47]
・レボフロキサシン :調整率比1.26[95%信頼区間0.90~1.77]

※関連文献※
Etminan M, Forooghian F, Brophy JM,et.al. Oral fluoroquinolones and the risk of retinal detachment. JAMA. 2012 Apr 4;307(13):1414-9. PMID: 22474205
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22474205
経口キノロンの使用と網膜剥離リスクを検討したコホート内症例対照研究。NNHは2500.

■マクロライド系抗菌薬、キノロン系抗菌薬と不整脈リスク■
Chou H, Wang J, Chang C.et.al. Risks of Cardiac Arrhythmia and Mortality Among Patients Using New-Generation Macrolides, Fluoroquinolones, and β-Lactam/β-Lactamase Inhibitors: A Taiwanese Nationwide Study. Clin Infect Dis. 2014 Nov 18. pii: ciu914. [Epub ahead of print] PMID: 25409476
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25409476

研究デザイン:コホート研究

P:台湾国民健康保険データベースから10684100人の外来患者
E:アジスロマイシン、クラリスロマイシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、経口投与
C:アモキシシリン - クラブラン酸の経口投与
O:抗菌薬処方から7日以内の心室性不整脈、心血管死亡
交絡への配慮:傾向スコアにて調整

結果:クラリスロマイシン、シプロフロキサシンではリスクの上昇は見られなかったが、モキシフロキサシン、アジスロマイシン、レボフロキサシンではリスクが増加した。

▶心室性不整脈
・アジスロマイシン :調整オッズ比4.43[95%信頼区間2.95~6.33]
・モキシフロキサシン:調整オッズ比3.30[95%信頼区間2.07~5.25]
・レボフロキサシン :調整オッズ比1.41[95%信頼区間0.91~2.18](増加傾向)
▶心血管死亡
・アジスロマイシン :調整オッズ比2.62[95%信頼区間1.69~4.06]
・モキシフロキサシン:調整オッズ比2.31[95%信頼区間1.39~3.84]
・レボフロキサシン :調整オッズ比1.77[95%信頼区間1.22~2.59]

※関連文献※
Rao GA Mann JR, Shoaibi A.et.al. Azithromycin and levofloxacin use and increased risk of cardiac arrhythmia and death. Ann Fam Med. 2014 Mar-Apr;12(2):121-7. PMID: 24615307
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24615307
アジスロマイシン、レボフロキサシンともに死亡や重篤な不整脈リスクが有意に増加した。

※関連文献※
Lapi F, Wilchesky M, Kezouh A.et,al Fluoroquinolones and the risk of serious arrhythmia: a population-based study. Clin Infect Dis. 2012 Dec;55(11):1457-65. PMID: 22865870
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22865870
ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシンで重篤な不整脈リスクが増加した。しかしながらレボフロキサシンでは明確な差が出ていない。

※臨床スクリプト※
少なくともモキシフロキサシン、ガチフロキサシンは重篤な不整脈リスクに留意すべきである。アジスロマイシンの心血管リスクは報告によりばらつきがあるものの不整脈リスクは考慮すべきかもしれない。

■うつ病に対するスタチンの有用性■
Redlich C, Berk M, Williams LJ,et.al. Statin use and risk of depression: a Swedish national cohort study. BMC Psychiatry. 2014 Dec 4;14(1):348. [Epub ahead of print] PMID: 25471121
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25471121
背景と研究デザイン:近年、炎症と精神疾患の関連が注目されている。スタチンは酸化的ストレスを減少させ炎症リスクを低下させる可能性が示唆されている。スタチンの使用とうつ病との関連を検討したコホート研究

P:スウェーデンにおける40歳以上の参加者(うつ病の診断を受けた人を除外)4,607,990人
E:シンバスタチン(665932人)、プラバスタチン(27244人)、フルバスタチン(5932人)、アトルバスタチン(95231人)、ロスバスタチン(10493人)の使用
C:スタチンの使用なし
O:うつ病の発症
交絡への配慮:性別、年齢、移民ステータス、婚姻状況、教育、収入、居住地域、COPDによる入院、アルコール依存とそれに関連する肝疾患、冠動脈疾患による入院

結果:ごくわずかではあるがスタチンの使用はうつ病の診断との関連が有意に減少する可能性を示唆している。特にシンバスタチンで統計的有意な差が示されている。おそらくこれは解析対象人数がシンバスタチンで圧倒的に多く、そのため有意な差がついている可能性があり結果は割り引いて考えた方が良い印象。どのスタチンにも大きな差は無いと考えた方が無難。
うつ病発症
薬剤名調整オッズ比95% 信頼区間
スタチン全体0.95 0.91~0.99
シンバスタチン0.930.89~0.97
プラバスタチン0.90 0.74~1.09
フルバスタチン0.98 0.65~1.46
アトルバスタチン1.11 1.01~1.22
ロスバスタチン1.21 0.92~1.60

※関連文献※
Köhler O, Benros ME, Nordentoft M.et.al. Effect of Anti-inflammatory Treatment on Depression, Depressive Symptoms, and Adverse Effects: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. JAMA Psychiatry. 2014 Dec 1;71(12):1381-91. PMID: 25322082
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25322082
NSAIDsやサイトカイン阻害薬等の抗炎症薬とうつ病リスクを検討したランダム化比較試験のメタ分析。うつ症状の標準化平均差が有意に減少。

※関連文献※
Grosso G, Pajak A, Marventano S.et.al. Role of omega-3 fatty acids in the treatment of depressive disorders: a comprehensive meta-analysis of randomized clinical trials. PLoS One. 2014 May 7;9(5):e96905. PMID: 24805797
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24805797
ω3系不飽和脂肪酸とうつ病リスクを検討したランダム化比較試験のメタ分析。ω3系不飽和脂肪酸は大うつ病性障害の患者、抑うつ症状のある患者に対して有効である可能性を示唆。

※臨床スクリプト※
現段階で抗炎症薬のうつ病への有効性に関する研究は小規模のものが多く限定的である。効果があったとしても著明なものとは言い難く、個人差も大きいと推測される。補助的な治療の選択肢として考慮に入れても良いかもしれない。

■薬剤服用と体重変化■
Domecq JP, Prutsky G, Leppin A.et.al. Drugs Commonly Associated With Weight Change: A Systematic Review and Meta-analysis. J Clin Endocrinol Metab. 2015 Jan 15:jc20143421. [Epub ahead of print] PMID: 25590213
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25590213
背景と研究デザイン:様々な薬物がその副作用として体重の増減に影響すると考えられているが、薬剤服用と体重変化に関するランダム化比較試験のメタ分析。

P:257のランダム化比較試験に参加者した84696人
E:あらかじめ選択した54種類の薬剤
C:プラセボ
O:体重の増減

元論文いついては、コクランのリスクバイアスツールを用いて質を評価した。結果は以下の通り。
体重増加 体重減少
・アミトリプチリン(1.8kg)

・ミルタザピン(1.5kg)

・オランザピン(2.4kg)

・クエチアピン(1.1kg)

・リスペリドン(0.8kg)

・ガバペンチン(2.2kg)

・トルブタミド(2.8㎏)

・ピオグリタゾン(2.6㎏)

・グリメピリド(2.1㎏)

・グリクラジド(1.8kg)

・グリブリド(2.6㎏)

・グリピジド(2.2㎏)

・シタグリプチン(0.55 kg)

・ナテグリニド(0.3㎏)

・メトホルミン(1.1kg)

・アカルボース(0.4㎏)

・ミグリトール(0.7㎏)

・プラムリンチド(2.3㎏)

・リラグルチド(1.7㎏)

・エクセナチド(1.2㎏)

・ゾニサミド(7.7㎏)

・トピラマート(3.8㎏)

・ブプロピオン(1.3㎏)

・フルオキセチン(1.3㎏)



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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■抑肝散とアレルギー性肺炎■
Nakamura K, Shimizu T, Mitsuhata H. [Case of pneumonitis caused by Yokukansan]. Masui. 2012 Feb;61(2):214-6. PMID: 22413451
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22413451

74歳男性。首の痛みと倦怠感を訴え入院。胸部X線により両肺野にびまん性すりガラス影を認めた。薬剤リンパ球刺激試験により抑肝散が原因薬剤と疑われた。ステロイドパルス療法により、臨床症状、低酸素血症、胸部X線所見が改善した。

■抑肝散と重篤な低カリウム血症■
Nishiyama N, Takeshita M, Tanaka K,et.al. [A case of severe hypokalemia caused by a Chinese herbal remedy (Yokukansan) in an 81-year-old woman with dementia]. Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2011;48(5):553-7. PMID: 22323035
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22323035

81歳女性。高血圧、アルツハイマー型認知症で2つの医療機関を受診。6カ月前より昼夜逆転、BPSDに対し抑肝散7.5 gの投与が開始された。気分不快,嘔気,高血圧(SBP 200 mmHg以上)を認め,著明な低K血症(1.29 mEq/l)と心電図異常を呈し緊急入院。抑肝散中止とK補充にて2週間後にK値はほぼ正常化したものの、BPSDはチアプリド,リスペリドン投与にてもコントロール不良であった。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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今回のテーマはBPSDに対する抑肝散の有効性でした。比較的処方頻度の高い漢方製剤かと思います。個人的には著明な臨床効果を経験していないのですが、文献的にはBPSDに対しては一定の効果が期待できるような印象です。ただ、漢方製剤はプラセボ対照の2重盲検試験を行うのがなかなか難しいのでしょうか。味覚を実薬と同じようにプラセボを作るということはなかなか困難であることは容易に想像がつきます。また、たとえ効果があるにしても、実際に服用するとなると、やはり味の問題もあったりして、まあそう単純ではないのですが…。なお抑肝散はOTC医薬品としても販売が開始されましたね。
http://www.zenyaku.co.jp/aropanol/
市販薬の適応は「神経症、不眠症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症」となっていますが、今回の論文検索ではこのあたりのエビデンスを見つけることができませんでした。

さて当ブログもいよいよ本格的に稼働していきます。旧ブログの運用一時中止は各ブログにて後程お知らせいたします。薬剤師の地域医療日誌 
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/
は約3年にわたり日曜を除くほぼ毎日更新してきただけに、いざ引っ越しするとなりますと、いろいろ思うこともあります。長らくご利用いただきまして誠にありがとうございました。今後はこちらで論文の紹介を週に4本から5本のペースで掲載していく予定です。

当ブログの記事検索はこちらもご活用ください。 
http://twilog.org/commedsa
地域医療の見え方専用ツイッターアカウント [@commedsa] の各記事に対するリンクツイートをツイログに記録することで、ツイログから記事検索ができるようになっています。日常業務に活用できる情報ツールとして今後も模索をしていきたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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地域医療の見え方  2015.Jan.14;1(1)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-クラリスロマイシンの「併用注意」を考える-

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[ポイント]

■クラリスロマイシンと相互作用が懸念されるCa拮抗薬はニフェジピン、フェロジピン、アムロジピンであり、どちらも急性腎傷害リスクが上昇するが特にニフェジピンでリスクが高い。
■クラリスロマイシンとスタチンの併用で横紋筋融解症リスクや腎障害リスク、死亡リスク上昇が報告されている。現段階でアトルバスタチン、ロスバスタチンでリスクが高いものと考えられ、相対的にプラバスタチンではリスクが低いものと考えられる。
■Ca拮抗薬とスタチンは合剤も発売されているように日常的に併用される可能性の高い薬剤群である。特に高齢者や腎機能低下者においてはクラリスロマイシン投与のリスクベネフィットは熟慮したい。

[イントロダクション]

旧ブログでも本テーマを取り扱ったことがありますが、新たな論文が報告され情報がアップデートされていますので、以前の記事を振り返りながら、このテーマを改めて整理したいと思います。

クラリスロマシシンは添付文書上、一部のスタチンやカルシウム拮抗剤と併用注意となっており1)これはクラリスロマイシンが薬物代謝酵素であるCYP3A4を阻害するためと考えられています。なおアジスロマイシンはCYP3A4への影響が少ないと考えられており、以下に述べる研究の多くが比較対象にアジスロマイシンを処方された患者群を設定しています。

クラリスロマイシンと併用注意となっているスタチンは具体的にはアトルバスタチンカルシウム水和物 シンバスタチンが挙げられています。1)そもそもスタチンやフィブラートによる横紋筋融解症による入院頻度はコホート研究において以下のように報告されています。2)

[横紋筋融解症頻度]
薬剤名 発症頻度 95%信頼区間結果
アトルバスタチン 0.54/10000人年 [0.22~1.12]
セリバスタチン 5.34/10000人年 [1.46~13.68]
プラバスタチン 0.00/10000人年 [0~1.11]
シンバスタチン 0.49/10000人年 [0.06~1.76]
フェノフィブラート 0.00/10000人年 [0~14.58]

当然ながらスタチンとフィブラートの併用では横紋筋融解症による入院リスクはかなり上昇します。(5.98/10000人年[95%信頼区間0.72~216.0])またプラバスタチン単独では相対的にリスクがやや低い可能性が示唆されています。なおセリバスタチンは販売が中止されています。

[スタチンとクラリスロマイシンの相互作用による影響]

スタチンとクラリスロマイシンの影響に関して、2013年に人口ベースのコホート研究が報告されました。3)この研究はカナダオンタリオ州における観察研究でスタチン(73%がアトルバスタチン)を使用している65歳以上の高齢者が研究対象となりました。クラリスロマシシンを処方された72,591人とエリスロマイシンを処方された3267人を、アジスロマイシンを処方された68,478人と比較し、抗菌薬を処方されてから30日以内の横紋筋融解症リスク等を検討しています。主な結果は以下の通りです。

▶横紋筋融解症による入院
絶対差 0.02% [0.01% ~ 0.03%]
相対危険 2.17 [1.04 ~ 4.53]
▶急性腎傷害
絶対差 1.26% [0.58% ~ 1.95%];
相対危険 1.78 [1.49 ~ 2.14]
▶総死亡
絶対差 0.25% [0.17% ~ 0.33%]
相対危険 1.56 [1.36 ~ 1.80]

そして2014年12月にあらたなコホート研究の結果が報告されています。4)この研究もカナダオンタリオ州の人口ベースコホート研究です。平均74歳でスタチンを服用している高齢者が観察対象となりました。使用していたスタチンの76%がロスバスタチンで、2013年の報告とは母集団の使用スタチンが異なります。なお残り21%がプラバスタチン、3%がフルバスタチンとなっています。クラリスロマイシンを平均で1000mg/日10日間投与された51523人と、アジスロマイシンを平均300mg/日5日間投与された52518人を比較し30日以内の横紋筋融解症による入院、急性腎傷害による入院、高カリウム血症による入院、総死亡の4つのアウトカムを検討しています。なお調整した交絡因子は年齢、性別、コホート登録年、慢性腎臓病、脳卒中もしくは一過性脳虚血発作、末梢血管疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、癌、糖尿病、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、ARB/ACE阻害薬、NSAIDsの使用で調整しています。主な結果を以下にまとめます。

▶横紋筋融解症による入院                  
CAM:13人(0.03%)
AZM:6人(0.01%)  
相対危険2.27[0.86~5.96]
▶急性腎傷害による入院    
CAM:175人(0.34%)
AZM:122人(0.23% 
相対危険1.65[1.31~2.09]
▶高K血症による入院
CAM:33(0.06%)
AZM:18人(0.03%)
相対危険2.17[1.22~3.86]
▶総死亡
CAM:200人(0.39%)
AZM:155人(0.30%)
相対危険1.43[1.15~1.76]

ごくわずかですが、総死亡リスクも上昇しています。イベント数が少ないためか、結果の数値は変動しうりますが、急性腎傷害や総死亡に関しては軽視できない印象です。もちろん本邦承認用量とのギャップはありますが、アトルバスタチン、ロスバスタチンともにクラリスロマイシンとの併用は特に腎機能の低下した高齢者では注意すべきかもしれません。

[カルシウム拮抗薬とクラリスロマイシンの相互作用による影響]

降圧薬による過度の降圧が起こると腎臓への血液灌流が悪化し急性の腎障害が発生しやすくなると考えられています。2013年にはカナダオンタリオ州における人口ベース後ろ向きコホート研究にてその併用による影響が報告されています。5)

この報告はカナダの一般人口コホートからカルシウム拮抗薬(半数以上がアムロジピン:用量は中央値5mg;IQR5-10mg)を服用している高齢者(平均年齢76歳)190309人を対象として、クラリスロマイシンとカルシウム拮抗薬の併用96226人(クラリスロマイシン:中央値1000mg/日 10日間)とアジスロマイシンとカルシウム拮抗薬の併用94083人(アジスロマイシン:中央値300mg/日5日間)を比較し、抗菌薬の処方から30日以内の急性腎傷害による入院を検討しました。なおセカンダリアウトカムは処方から30日以内の低血圧による入院及び総死亡でした。

調整した交絡因子は年齢、性別、ACE阻害薬、ARB、NSAIDs、経口糖尿病薬およびインスリン、利尿薬、スタチン、β遮断薬、β刺激薬、抗コリン薬、ステロイド、急性腎障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、うっ血性心不全、主要な癌でした。

主な結果を以下にまとめます。アジスロマイシン併用に比べてクラリスロマイシン併用群では急性腎障害による入院リスクが増加する可能性がり、同様に低血圧による入院や総死亡も増加する可能性を示唆しています。

▶急性腎障害による入院
CAM:420人(0.44%)
AZM:208人(0.22人)
調整オッズ比:2.03[1.72~2.41]
NNH:464人[374~609]
▶低血圧による入院
CAM:111人(0.12%)
AZM:68人(0.07%)
調整オッズ比:1.63[1.21~2.22]
NNH:2321人[1406~6416]
▶総死亡
CAM:984人(1.02%)
AZM:555人(0.59%)
調整オッズ比1.74[1.57~1.94]
NNH:231人[195~284]

カルシウム拮抗薬別のサブ解析は以下の通りです。概ね薬剤間で異質性は見られずリスクは増加傾向です。アムロジピンのNNHは663人[451~1223]となっています。またニフェジピンでは各薬剤の中でもオッズは最大となっており、そのNNHは160人[128~205]と衝撃的な数値が出ています。

[Ca拮抗薬別サブ解析]
薬剤名 クラリスロマイシン アジスロマイシン オッズ比[95%信頼区間
アムロジピン 202/50706(0.4%) 126/50944(0.25%) 1.61[1.29~2.02]
ジルチアゼム 63/21403(0.29%) 46/21207(0.22%) 1.36[0.93~1.99]
フェロジピン 17/3665(0.46%) ≦5/3191(≦0.16%) 2.97[1.09~8.06]
ニフェジピン 129/16644(0.78%) 22/15038(0.15%) 5.33[3.39~8.38]
ベラパミル 9/3808(0.24%) 9/3703(0.24%) 0.97[0.39~2.45]

降圧薬の作用増強により懸念されるのが低血圧により引き起こされる転倒、骨折リスクです。過去には高齢者の降圧薬の服用で転倒による重大な事故リスクの増加6)や新規降圧薬による骨折リスク7)が報告されています。このような骨折リスクがカルシウム拮抗薬とクラリスロマイシンの併用で増加するかを検討した人口ベースのコホート研究が報告されています。8)

この研究はカルシウム拮抗薬(アムロジピン50%、ニフェジピン、フェロジピン、ベラパミル、ジルチアゼム)を服用している平均76歳の高齢者を観察対象として、クラリスロマイシンを処方された96226人とアジスロマイシンを処方された94083人を比較して抗菌薬処方から30日以内の非椎体骨折を検討しています。
アウトカムクラリスロマイシアジスロマイシン オッズ比[95%信頼区間]
非椎体骨折 124人/96226人 [0.13%] 98人/94083人 [0.10%] 1.23 [0.94~1.60]


統計的な有意差は出ませんでしたが、リスクはクラリスロマイシンでわずかに増加傾向を示しています。

[クラリスロマイシンの併用注意の考え方]

これまで見てきたように、そのリスク上昇はわずかと言えど、アウトカムの重大性は軽視できるものではない印象です。スタチンの中でも特にアトルバスタチン(リピトール®)やロスバスタチン(クレストール®)、またニフェジピン(アダラート®)、アムロジピン(ノルバスク®/アムロジン®)フェロジピン(スプレンジール®)などとクラリスロマイシンの併用は特に高齢者で十分警戒することは大きな誤りではない印象です。スタチンとカルシウム拮抗薬は合剤も発売されているように日常的に併用頻度が高く、これにクラリスロマイシンを合わせた3剤が併用された場合のリスクは複合的に上昇する可能性もあります。海外の報告ではやはりクラリスロマイシンの投与量が日本に比べて高いということもありますが、ピロリ菌除菌療法や非結核性好酸菌症などで本邦でも高用量を用いることもあります。またプライマリケアにおいても耐性菌などの問題を含め、マクロライド系薬剤を外来で使用すべきセッティングは限定的であることを踏まえれば、安易なクラリスロマイシンの使用は避けるべきではないでしょうか。

[参考文献]

1)アボット ジャパン株式会社 クラリシッド錠200mg 添付文書2013年11月改訂(第27版)
2) Graham DJ, Staffa JA, Shatin D,et.al. Incidence of hospitalized rhabdomyolysis in patients treated with lipid-lowering drugs. JAMA. 2004 Dec 1;292(21):2585-90. PMID: 15572716
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15572716
3) Patel AM, Shariff S, Bailey DG, et.al. Statin toxicity from macrolide antibiotic coprescription: a population-based cohort study. Ann Intern Med. 2013 Jun 18;158(12):869-76. PMID: 23778904
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23778904
4)Li DQ, Kim R1, McArthur E1, Fleet JL.et.al. Risk of adverse events among older adults following co-prescription of clarithromycin and statins not metabolized by cytochrome P450 3A4. PMID: 25534598
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25534598
5) Gandhi S, Fleet JL, Bailey DG.et.al. Calcium-channel blocker-clarithromycin drug interactions and acute kidney injury. JAMA. 2013 Dec 18;310(23):2544-53. PMID: 24346990
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24346990
6) Tinetti ME, Han L, Lee DS.et.al. Antihypertensive medications and serious fall injuries in a nationally representative sample of older adults. JAMA Intern Med. 2014 Apr;174(4):588-95. PMID: 24567036
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24567036
7) Butt DA, Mamdani M, Austin PC.et.al. The risk of hip fracture after initiating antihypertensive drugs in the elderly. Arch Intern Med. 2012 Dec 10;172(22):1739-44. PMID: 23165923
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23165923
8)Fraser LA, Shariff SZ, McArthur E.et,al, Calcium channel blocker-clarithromycin drug interaction did not increase the risk of nonvertebral fracture: a population-based study. Ann Pharmacother. 2015 Feb;49(2):185-8. PMID: 25429094
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25429094

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■アジスロマイシンの有害事象リスク■
Almalki ZS, Guo JJ. Cardiovascular events and safety outcomes associated with azithromycin therapy: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am Health Drug Benefits. 2014 Sep;7(6):318-28. PMID: 25558301
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25558301
研究デザイン:メタ分析

一部の観察研究ではアジスロマイシンに心血管系の有害事象リスクが示唆されていました。12のランダム化比較試験に参加した65歳以上の15,588人を対象にアジスロマイシンの投与とプラセボの投与、もしくは治療なしを比較し、総死亡や入院等を検討したメタ分析。追跡は平均18週から6年。元論文の多くは2重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験でした。出版バイアスの影響も比較的低いとしています。

P:感染症や冠動脈疾患2次予防のために12のRCTに参加した65歳以上の15588人
E:アジスロマイシンの投与
C:プラセボもしくは治療なし
O:総死亡、入院、経皮的冠動脈形成術
アウトカムリスク比[95%信頼区間]I2統計量
総死亡 0.877[0.752–1.024] 0%
入院 1.005[0.922–1.094] 0%
経皮的冠動脈形成術 0.999[0.896–1.114] 0%

いずれも明確な差は出ませんでした。

■癌検診の過剰診断をモニターするための研究手法■
Carter JL, Coletti RJ, Harris RP. Quantifying and monitoring overdiagnosis in cancer screening: a systematic review of methods. MJ. 2015 Jan 7;350:g7773. PMID: 25569206
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25569206
研究デザイン:システマテックレビュー

9種類の癌検診(前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌、子宮癌)の過剰診断をモニターするための研究手法を検討した52研究のレビュー。良くデザインされたランダム化比較試験は一般化が難しくモニタリングに適さない。むしろ生態学的研究やコホート研究のほうが交絡の影響こそあるものの、合理的な手法であるとしています。

■1型糖尿病患者における厳格血糖コントロールの有用性■
Writing Group for the DCCT/EDIC Research Group, Orchard TJ, Nathan DM, Zinman B.et.al. Association between 7 years of intensive treatment of type 1 diabetes and long-term mortality. JAMA. 2015 Jan 6;313(1):45-53. PMID: 25562265
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25562265
研究デザイン:ランダム化比較試験の長期的観察

ランダム化比較試験DCCT研究のコホートを用いた1型糖尿病患者を対象に厳格血糖コントロールの有用性を検討した長期的観察結果の報告。平均6.5年にわたる厳格治療群711人、従来治療群730人を比較し、死亡を検討しました。6.5年の追跡期間中、厳格治療群ではHbA1cが約7%、従来治療群では約9%で推移していました。研究終了後平均追跡27年間以上の追跡で死亡リスクを検討。解析に組み入れられたのは1429 人(99.2%)でした。

P:1型糖尿病患者1441人(研究開始時13 ~39歳)
E:厳格な血糖コントロール(HbA1c7%)
C:従来の血糖コントロール(HbA1c9%)
O:死亡
アウトカム 厳格治療群 従来治療群 ハザード比[95%信頼区間]
死亡 43人/711人

(236/100000人年)

64人/730人

(346/100000人年)

0.67

[0.46~0.99]


厳格治療群では死亡リスクが減少していました。なお女性に比べて男性では死亡リスクが上昇していました。(HR1.61[95%CI1.09~2.39]

■HPVワクチンと多発硬化症リスク■
Scheller NM, Svanström H, Pasternak B.et.al. Quadrivalent HPV vaccination and risk of multiple sclerosis and other demyelinating diseases of the central nervous system. JAMA. 2015 Jan 6;313(1):54-61. PMID: 25562266
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25562266
研究デザイン;コホート研究

症例報告によればHPVワクチン接種は多発性硬化症の発症および脱髄性疾患との関連が示唆されています。4価HPVワクチンと多発性硬化症の発症および脱髄性疾患との関連をコホート研究で検討した報告。追跡は2年間。

P:デンマーク、スウェーデンの10歳~44歳の女性3,983,824人
E:4価HPVワクチン1,927,581人
C:ワクチンなし
O: 多発性硬化症の発症、他の脱髄性疾疾患
アウトカム HPVワクチン接種 HPVワクチンなし 調整率比[95%信頼区間] 
多発性硬化症 6.12/100000人年

[4.86~7.69]

21.54/100000人年

[20.90~22.20]

0.90 [0.70~1.15]
他の脱髄性疾患 7.54/100000人年

[6.13~9.27]

16.14/100000人年

[15.58~16.71]

1.00 [0.80~1.26]



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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■クラリスロマイシンとニフェジピンの併用■
Gerónimo-Pardo M, Cuartero-del-Pozo AB, Jiménez-Vizuete JM. et.al. Clarithromycin-nifedipine interaction as possible cause of vasodilatory shock. Ann Pharmacother. 2005 Mar;39(3):538-42. PMID: 15703161
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15703161

クラリスロマイシンとニフェジピンによる血管拡張にともなう低血圧ショックの症例報告

P:77歳男性。ニフェジピン、カプトプリル、ドキサゾシン内服中
E:クラリスロマイシンの投与

クラリスロマイシン投与2日目に 制御不能な高血圧症、ショック、心ブロック、および多臓器不全。 全身の血管抵抗の低下が示された。CYP3A4阻害によるニフェジピンの作用増強が示唆される。

■クラリスロマイシンとレパグリニドの併用■
Khamaisi M Leitersdorf E. Severe hypoglycemia from clarithromycin-repaglinide drug interaction. Pharmacotherapy. 2008 May;28(5):682-4. PMID: 18447665
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18447665

クラリスロマイシンとレパグリニドの相互作用により低血糖をきたし入院した症例報告

P:80歳男性。末期腎不全であるが状態良くコントロールされた2型糖尿病患者(HbA1c<7%)レパグリニド0.5㎎ 1日3回投与中
E:ヘリコバクターピロリ菌の治療のためクラリスロマイシン1000㎎/日の投与

クラリスロマイシン投与後48時間以内に重度低血糖症状を起こしたためブドウ糖投与で症状改善。しかしさらに48時間以内に重度の低血糖が再発し、治療に反応しなかった。そのためブドウ糖静注を施行、その後回復。レパグリニド中止後は症状発生せず。
※レパグリニドの代謝には一部CYP3Aが関与している。

■クラリスロマイシンとトラマドールの併用■
Kovács G, Péter L. [Complex hallucination (visual-auditory) during coadministration of tramadol and clarithromycin]. Neuropsychopharmacol Hung. 2010 Mar;12(1):309-12. PMID: 20305307
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20305307

クラリスロマイシンとトラマドールの併用により幻聴や幻覚が2日間にわたり発現したという症例報告。これら薬剤中止後に症状は回復した。
※トラマドールの代謝にはCYP3A4が関与する

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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当サイトは僕が運営していた地域医療の見え方、エビデンスの見え方、薬剤師の地域医療日誌、薬剤師のケースレポート日誌の4つのブログを統合し、主に「CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES」「CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES」「CASE REPORT」という3セクションに整理することで、情報の整理と活用の利便性を向上するために立ち上げた、新しい「地域医療の見え方」です。現在試験的に運用しています。今後は週1回の更新を目標にコンテンツの充実を図りながら本稼働に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。

今回のテーマは「クラリスロマイシンの併用注意を考える」でした。クラリスロマイシンの添付文書を見てみればお分かりの通り、薬剤師ならだれでもその相互作用の多さに、なんとなくもやもやした気持ちを抱くのではないでしょうか。「クラリスロマイシンが出たら特に併用薬に注意せよ」まあクラリスロマイシンに限らず注意すべきなんでしょうが、特に留意しておきたい薬剤ではあります。トリアゾラムとの併用で、その作用が増強し1日中傾眠が続いてしまったなんて事例も個人的には経験しています。相互作用に関するエビデンスの評価は薬剤師ならではの仕事ではないかと思います。症例報告も含め、今後も継続して評価していきたいと思います。

当サイトの引用は自由にしていただいて構いません。なおその際は出典(本記事であれば記事タイトルである“地域医療の見え方2015.Jan.14;1(1)”)と記事へのリンクをしていただければと思います。(ただし無断転載はご遠慮ください)

ブログを一新し、今まで継続して読んでくださっていた読者の皆様には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。旧ブログは、当ブログ本稼働をもって更新を停止する予定です。

#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

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