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地域医療の見え方  2015.Oct.7;1(38)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ニコランジルと皮膚粘膜障害-

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[ポイント]
■ニコランジルによる皮膚・粘膜潰瘍は特定の部位のみならず様々な部位に発症する可能性がある
■ニコランジルと消化性潰瘍、皮膚潰瘍については疫学的関連性も示唆されている
■ニコランジルによる角膜潰瘍では高用量、高齢者でのリスクが高い可能性がある
■ニコランジルの有効性については、ハイリスク狭心症患者の予後(冠動脈疾患死亡、非致死的心筋梗塞、胸痛による予期せぬ入院の複合アウトカム)を改善する可能性が大規模ランダム化比較試験で示されている。(NNT42/1.6年)
■ニコランジルのリスクベネフィット評価に当たり、今後の有害事象報告に注目したい

[イントロダクション]
2015年7月、ニコランジル錠の使用上の注意の改訂がなされました。その他の副作用として「角膜潰瘍」「性器潰瘍」「皮膚潰瘍」「血中カリウム増加」が追記されています。皮膚潰瘍、角膜潰瘍に関してはこれまで複数の症例報告があるようです。今回はニコランジルの有害事象として新たに追加された皮膚・粘膜潰瘍をテーマにまとめていきます。


[症例報告より]
いくつか報告されている症例報告を具体的にみていきましょう。

■ニコランジルによる角膜穿孔(※1)
ニコランジルによる皮膚・粘膜潰瘍が原因と思われる角膜裂孔の症例報告です。症例は眼疾患の既往のない心血管疾患を有する81歳男性です。ニコランジルは5ネ刊服用していました。

眼の疾患既往のない81歳の患者。ニコランジルを5年間服用。再発性角結膜炎と従来の治療に抵抗性の粘膜皮膚潰瘍で、全層角膜移植実施。またニコランジル中止後は皮膚潰瘍、角膜潰瘍が軽快。治療抵抗性の再発性角結膜炎が続き、全層角膜移植が行われています。なおニコランジル中止後は粘膜潰瘍は軽快しました。眼科医や皮膚科医はこのような有害事象を知っておく必要があると結論されています。

■ニコランジルによる角膜潰瘍(※2)

ニコランジルを服用中(3年間)に2回目の白内障手術(右目)をした78歳女性での角膜潰瘍の報告です。ニコランジルを服用していなかった4年前の初回手術時(左目)には経過は良好でした。ニコランジル中止後、6週間後には症状が軽快しています。

■ニコランジルと口腔潰瘍(※3)
日本人におけるニコランジル誘発性口腔潰瘍の症例報告です。症例は86歳、81歳、91歳と3名の高齢の患者です。それぞれ15mm、10mm、12mmほどの潰瘍がいずれも舌に発生しています。ニコランジル投与期間は15mg/日を22、54、90ヵ月となっています。ニコランジル中止後それぞれ、5週、8週、9週で軽快、再発を認めないことからニコランジルが被疑薬として強く疑われました。

その他にも肛門潰瘍(※4)性器潰瘍(※5)消化潰瘍(※6)など多数の症例報告があり、このような有害事象は特定の部位ではなく、皮膚・粘膜のあらゆる部位で発生する可能性があります。現時点で明確な作用機序は不明です。

[ニコランジルの使用と結膜・角膜潰瘍に関する症例集積研究]

角膜潰瘍を誘発しやすいリスク集団の全体像を垣間見てい視ましょう。症例集積研究が報告されています。(※7)
この報告はニコランジルによると思われる眼に関する有害事象13報告を検討した研究です。視覚異常5報、角膜潰瘍4報、結膜潰瘍4報がニコランジルとの関連を疑われました。13例のうち男性は8人。平均年齢は75.4歳。平均投与量は21.6 mg/日でした。本邦の用法用量は基本的には15mg/日(適宜増減)です。高用量、高齢者でリスクが高い傾向があるようです。

[ニコランジルと潰瘍の疫学的関連]

■皮膚潰瘍
ニコランジルと皮膚潰瘍に関しては台湾の国民健康保険データベースを用いた人口ベースの前向きコホート研究が報告されています。(※8) 傾向スコアマッチングによる解析では非使用者に比べて、使用者でハザード比1.85 (95%信頼区間1.27-2.69)と有意な上昇を示唆しています。

■消化性潰瘍
ニコランジルと消化性潰瘍・裂孔の関連を検討した台湾の国民健康保険データベースを用いた人口ベースのコホート研究が報告されています。(※9)傾向スコアマッチングによる解析では、消化性潰瘍のハザード比1.43[95%信頼区間1.23~1.65]、胃腸裂孔のハザード比1.60[95% 信頼区間1.02~2.51]といずれも有意な上昇を示唆しています。

[ニコランジルのリスクベネフィット]
ニコランジルと皮膚・粘膜潰瘍の関連はかなり高そうな印象です。今回の添付文書追記は薬剤師にとっても臨床判断上重要な問題と言えそうです。特に高齢者ではこのような自覚症状の有無を確認することは必須でしょう。当該症状があれば処方医との連携は必須と言えます。ベ ーチェッ ト病等を除外したうえで、被疑薬の中止提案をすべきでしょう。

ニコランジルの有効性を検討したエビデンスはそう多くはありません。特に真のアウトカムを検討した臨床試験はかなり限定的です。その代表的な研究がIONA試験(※10)でしょう。

この研究は、安定した狭心症でリスクファクターを有する5126人(平均67歳)を対象に、標準治療に上乗せして、ニコランジル20mgを1日2回投与(2565人)と、プラセボ(2561人)投与を比較して、冠動脈疾患死亡、非致死的心筋梗塞、もしくは胸痛による予期せぬ入院の複合アウトカムを検討したランダム化比較試験です。平均追跡は1.6年、統計解析はintention to treat.です。

その結果複合アウトカムはニコランジル群398 (15.5%)、プラセボ群 337 (13.1%) で ハザード比0.83[95%信頼区間0.72~0.97]と有意な減少を示しました。NNTは42人/1.6年と計算できます。一次アウトカムではありませんが全心血管イベントも有意に減りました。(ハザード比0.86[95%信頼区間0.75-0.98]

この研究結果をどう考えるかは重要なテーマだと思います。高リスク狭心症患者に対してニコランジルで待機的な治療を行うというのはこの国ではあまり想定できないかも知れないですし、そのような患者において、胸痛による予期せぬ入院を含めた複合アウトカムでNNT42人という実効性もやや小さい印象です。80を超える高齢者に漫然と使用すべき薬剤かどうか、今後のリスクに関するエビデンスの集積を待ちたいと思います。

[参考文献]
(※1)Campolmi N.et.al. Corneal perforation: another side effect of nicorandil. Cutan Ocul Toxicol. 2014 Jun;33(2):96-8. PMID: 23845070
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23845070
(※2) Trechot F.et.al. A case of nicorandil-induced unilateral corneal ulceration. Int Wound J. 2014 Jun;11(3):238-9. PMID: 23651162
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23651162
(※3) Yamamoto K.et.al. Nicorandil-induced oral ulceration: report of 3 cases and review of the Japanese literature. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2011 Dec;112(6):754-9. PMID: 21872503
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21872503
(※4) Katory M.et.al. Nicorandil and idiopathic anal ulceration. Dis Colon Rectum. 2005 Jul;48(7):1442-6. PMID: 15906129
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15906129
(※5) Kinney M. Nicorandil induced penile ulceration. Ulster Med J. 2010 Sep;79(3):123-4. PMID: 22375086
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22375086
(※6) Egred M.et,al. Nicorandil may be associated with gastrointestinal ulceration. BMJ. 2006 Apr 15;332(7546):889. PMID: 16613962
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16613962
(※7)Fraunfelder FW.et.al. Conjunctival and corneal ulceration associated with nicorandil. Cutan Ocul Toxicol. 2014 Jun;33(2):120-1. PMID: 23841868
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23841868
(※8) Lee MT.et.al. Risk of skin ulcerations associated with oral nicorandil therapy: a population-based study. Br J Dermatol. 2015 Aug;173(2):498-509. PMID: 25939634
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25939634
(※9) Lee CC.et.al. Use of nicorandil is Associated with Increased Risk for Gastrointestinal Ulceration and Perforation- A Nationally Representative Population-based study. Sci Rep. 2015 Jun 29;5:11495. PMID: 26118431
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26118431
(※10)IONA Study Group. Effect of nicorandil on coronary events in patients with stable angina: the Impact Of Nicorandil in Angina (IONA) randomised trial. Lancet. 2002 Apr 13;359(9314):1269-75.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11965271

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■テレビの視聴時間と心血管リスク■
Ikehara S.et.al. Television Viewing Time and Mortality From Stroke and Coronary Artery Disease Among Japanese Men and Women - The Japan Collaborative Cohort Study. Circ J. 2015 Sep 7. [Epub ahead of print] PMID: 26346284
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26346284
背景と研究デザイン:日本においてテレビの視聴時間と心血管疾患の関連を検討したコホート研究(JACCstudy)

P:40歳~79歳の日本人(男性35,959人、女性49,940人)
E:テレビの視聴時間2時間以上
C:テレビの視聴時間2時間未満
O:脳卒中、冠動脈疾患、心血管疾患
・追跡期間:19.2年(中央値)
・調整した交絡因子:BMI、機縁、飲酒、教育水準、スポーツ時間、ウォーキング時間、睡眠時間、精神的ストレス、職業、魚の摂取、うつ症状、高血圧の既往、糖尿病の既往

テレビ視聴時間
アウトカム 2時間未満 5時間 6時間以上
脳卒中 1.06 (0.90–1.23) 1.10 (0.92–1.32)
冠動脈疾患 1.16 (0.92–1.45) 1.24 (0.96–1.61)
心血管疾患 1.03 (0.93–1.14) 1.14 (1.02–1.28)

ハザード比(95%信頼区間)

■吸入抗コリン薬と急性尿閉リスク■
Afonso AS.et.al. Inhaled anticholinergic drugs and risk of acute urinary retention. BJU Int. 2011 Apr;107(8):1265-72. PMID: 20880196
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20880196
背景と研究デザイン:COPD患者における吸入抗コリン薬と急性尿閉リスクを検討した症例対照研究

P:Integrated Primary Care Information (IPCI) データベースより45歳以上のCOPD患者
(症例)急性尿閉の新規診断例209人(男性85.2%、前立腺肥大14.8%)
(対象)年齢、性別、index date.でマッチングした1614人(男性86.1%、前立腺肥大7.1%)
E:吸入抗コリン薬の使用あり(チオトロピウム、イプラトロピウム)
C:吸入抗コリン薬の使用なし
O:急性尿閉

共変量、COPD重症度で調整したオッズ比は1.40[95%信頼区間0.99~1.98]

■喘息患者における吸入ステロイド■
Rodrigo GJ.et.al. Daily vs. intermittent inhaled corticosteroids for recurrent wheezing and mild persistent asthma: a systematic review with meta-analysis. Respir Med. 2013 Aug;107(8):1133-40. PMID: 23769720
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23769720
背景と研究デザイン:持続的な喘鳴や軽度から中等度の安定した喘息患者における吸入ステロイド剤の毎日使用と隔日使用を比較したランダム化比較試験7研究のメタ分析

P:小児~成人の持続的な喘鳴や軽度から中等度の安定した喘息患者1367人
E:吸入ステロイドを8週以上毎日使用
C:吸入ステロイドを8週以上隔日使用
O:喘息増悪

評価者バイアス:Titles, abstracts, and citations were independently analyzed by the two authors
元論文:ランダム化比較試験 Overall, the majority of studies were judged to have a low risk of bias.
異質性:I2統計量0%
出版バイアス;without language restriction.

アウトカム E群 C群 リスク比[95%信頼区間]
喘息増悪 180人/500人 198人/518人 0.96[0.86~1.06]


増悪のない日の割合は毎日吸入群で多い。

(関連)吸入ステロイドの連日投与vs間欠投与
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/7256651.html
(関連)喘息患者の吸入ステロイドは毎日使わないとダメでしょうか?
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/22338972.html

■低用量アスピリン使用時のPPI■
Tran-Duy A.et.al. Should patients prescribed long-term low-dose aspirin receive proton pump inhibitors? A systematic review and meta-analysis. nt J Clin Pract. 2015 Apr 6. [Epub ahead of print]PMID: 25846476
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25846476
背景と研究デザイン:いくつかの臨床ガイドラインでは低用量アスピリン使用時のPPI併用を推奨しているが、実際の報告は限られている。ランダム化比較試験のメタ分析にて低用量アスピリン使用時のPPI併用に関するベネフィットを検討。

P:2つのランダム化比較試験、10の観察研究に参加した低用量アスピリン服用患者
E:PPI併用あり
C:PPI併用なし
O:消化性潰瘍、消化管出血

消化性潰瘍:リスク比0.27[95%信頼区間0.17~0.42]
消化管出血:リスク比0.50[95%信頼区間0.32~0.80]

There was evidence of bias in publications reporting on the GI events.としてPPIの潜在的リスクがベネフィットを上回るか議論の余地があると結論

■過敏性腸症候群とトリメブチンの効果■
Martínez-Vázquez MA.et.al. Effect of antispasmodic agents, alone or in combination, in the treatment of Irritable Bowel Syndrome: systematic review and meta-analysis. Rev Gastroenterol Mex. 2012 Apr-Jun;77(2):82-90PMID: 22672854
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22672854
背景と研究デザイン:過敏性腸症候群に対する鎮痙薬の有効性を検討したメタ分析

P:23研究に参加した過敏性腸症候群患者2585人
E:鎮痙薬の使用(トリメブチン等)
C:プラセボ
O:過敏性腸症候群症状全般評価、疼痛改善

トリメブチンの結果のみまとめる。
・症状全般評価:オッズ比1.273[95%信頼区間0.58~2.79]
・疼痛改善:オッズ比1.28[95%信頼区間0.53~3.14]

■慢性腰痛に対するヨガの効果■
Sherman KJ, C, et al. A randomized trial comparing yoga, stretching, and a self-care book for chronic low back pain. Arch Intern Med. 2011 Dec 12;171(22):2019-26. PMID 22025101
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22025101
背景と研究デザイン:慢性腰痛に対するヨガの効果を検討したランダム化比較試験

P:慢性腰痛を有する患者(228人、平均48.4歳、女性64%)
E: ヨガのクラスを週に75分、12回実施(92人)
E:ストレッチのクラスを週に75分、12回実施。(91人)
C:セルフケアに関する本を配布(45人)
O:12週後の修正RDQスコア(※1)及び、自己評価による疼痛症状

セルフケア本配布に比べてヨガやストレッチでは慢性腰痛による障害度、症状スコアの改善が見られるが、ヨガとストレッチに著明な差は無い

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■DPP4阻害薬と関節痛■
Crickx.et.al. DPP4 inhibitor-induced polyarthritis: a report of three cases. Rheumatol Int. 2014 Feb;34(2):291-2. PMID: 23462883
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23462883
DPP4阻害薬との関連が疑われる多発性関節炎の3症例を報告した文献。シタグリプチン2例、ビルダグリプチン1例。DPP4中止後1~3週間で軽快

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ニコランジルは漫然と使用されるケースも多い薬剤かもしれません。待機的な患者に対する有用性、それも高齢者における有用性はあまり明確ではありません。ニトロ製剤を頻回に頓用しているなどの特殊なケースを除けば、高齢者においてリスクをベネフィットが上回るというようなことはあまり想定できない印象です。漫然と使用されている場合には投与中止を考慮する価値は大きそうです。
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地域医療の見え方  2015.Sep.30;1(37)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ジゴキシンの安全性を擁護する-

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[ポイント]
■複数の研究でジゴキシンの使用と死亡リスクの関連が示唆されている。
■ジゴキシンの安全性については、患者背景(心房細動か、心不全か)で分けて考慮すべき


[イントロダクション]
ジゴキシンに関するランダム化比較試験のサブグループ解析ではジゴキシンの有害アウトカムに関する報告が目につきます。ちょっと、まとめてみましょう。

サブ解析によるジゴキシンの有害報告
研究名 対象患者 総死亡(相対比) 出典PMID
AFFIRM 心房細動患者 1.41[1.19~1.67] 23186806(※1)
TREAT-AF 心房細動患者 1.26[1.23~1.29] 25125296(※2)
ATRIA-CVRN 心房細動患者 1.71[1.52~1.93] 25414270(※3)


TREAT-AF やATRIA-CVRNは観察研究ですが、このようにサブ解析にてジゴキシンの有意な死亡リスク上昇が示唆されているわけです。ただし、AFFIRM の傾向スコアマッチングによる解析では明確な差は出ていないようです(※4)

ジギタリスは古くから民間薬として使用されていましたが、1785 年 Williams Witering が浮腫の治療薬として強心配糖体の効果を報告して以来、臨床上の重要性が認識され、ジギタリス葉、末、抽出物、グルコシド及び葉含有単一成分(強心配糖体)製剤が臨床に用いられています。本邦ではうっ血性心不全や心房細動・粗動による頻脈、発作性上室性頻拍等に用いられます。治療域と中毒域が狭いのも特徴で、常に過量投与には留意せねばなりません。

[サブ解析で示唆された対象患者群に注目]
ジゴキシンは心房細動患者の他にも心不全患者にも用いられるわけですが、ここ最近報告されたサブ解析でのジゴキシン有害性は心房細動患者を対象にしたものでした。なお、前向きコホート研究でも同様の結果が示唆されており、心不全を有さない心房細動患者に対するジゴキシンの使用で死亡リスクは相対危険で1.42 [95%信頼区間1.29~1.56]と報告されています。(※5)

観察研究やそのサブ解析、あるいはランダム化比較試験のサブ解析で示唆されているこのジゴキシンの有害事象をほぼ決定的なものにしたのは今年の7月にEur Heart J.に掲載されたメタ分析(※6)ではないでしょうか。

このメタ分析は心房細動もしくは心不全を有する患者を対象に1次もしくは2次アウトカムで総死亡を報告したジゴキシンの研究を統合解析したものです。19研究(326.42人)が解析対象となりました。心房細動9研究、うっ血性心不全7研究、その両方3研究となっており、ランダム化比較試験の他、やRCTの事後解析、コホート研究が解析に含まれています。ファンネルプロットによる検討で出版バイアスは確認できないとしています。

その結果、総死亡のハザード比は1.21[95%信頼区間1.07~1.38]と報告されています。ただ異質性は高いようです。(I2 = 85.7%) この異質性はブロボグラムを見るだけでは心房細動患者とうっ血性心不全患者での効果量の違いでは無いようです。心房細動患者、うっ血性心不全患者別のサブ解析も行っており、いずれも有意なリスク上昇を示唆しています。

・心房細動患者:1.29; 95% CI, 1.21 to 1.39
・うっ血性心不全:1.14, 95% CI, 1.06 to 1.22

これらの結果を踏まえれば、少なくとも心房細動患者にジゴキシンを積極的に用いる根拠は乏しいかもしれません。ただブロボグラムから見て取れる異質性は大きく、その効果量にはばらつきがありそうです。

[研究デザインの違いに注目してみる]
先日新たなメタ分析が報告されました。(※7)この研究は41研究に参加した999994人を対象にジゴキシンと総死亡リスクを検討したものです。研究デザイン別に解析されている点がこれまでの研究と大きく異なります。主な結果を以下に示します。

解析対象 結果[95%信頼区間]
観察研究[非調整]33研究 相対危険1.76[1.57~1.97]
観察研究[調整]8研究 相対危険1.61[1.31~1.97]
観察研究[調整] 14研究 ハザード比1.17[1.07~1.29]
傾向スコアマッチング6研究 相対危険1.18[1.09~1.26]
傾向スコアマッチング7研究 ハザード比1.07[0.96~1.19]
ランダム化比較試験7研究 相対危険0.99[0.93~1.05]


観察研究とランダム化比較試験で結果が異なっています。交絡因子を考慮するほど死亡リスクが低下する可能性を示唆していますね。さらに解析をよく見てみると、RCT7研究のメタ分析で最も結果に影響を与えているのは DIG Trial 1997(PMID: 9036306)と思われます。この研究は心不全患者約7000人を対象としています。また観察研究のメタ分析でも大規模なものをいくつか見てみると、Flory 2012(PMID: 22505313)ではリスクは低下を示唆しています。この研究も心不全患者57,229人を対象としたものでした。またリスク上昇を示唆したTurakhia 2014では心房細動患者122,465人を対象としています。(PMID: 25125296)

[ジゴキシンの安全性を擁護する]
個人的にはジゴキシンは死亡リスクなどの予後を大きく改善する薬剤ではなく、その使用は現在においてはかなり限定的という認識は大きく変わりませんが、それでもこれまで多くの研究で有害性が指摘されてきただけに、ちょっとジゴキシンを擁護してみたくなりました。これまでの示唆を踏まえると

①交絡の影響
②患者背景の違い

という2点が浮き彫りとなります。参考文献(※7)の論文Fig5にわかりやすい図が出ていますが、心不全患者では総死亡に与える影響は少なく、入院が減るという可能性がランダム化比較試験で示唆されており、心房細動患者では総死亡や入院に関して、観察研究からの示唆しかなくコメントすることができないという記載があります。心房細動、心不全合併例においても観察研究からの示唆ではありますが、死亡は増えない可能性があります。

これまで有害事象が大きく強調されてきたジゴキシンではありますが、心不全単独例での使用は考慮できるのではないか、まあ、そんふうに解釈することも大きな誤りではないような気がします。

[参考文献]
(※1) Whitbeck MG.et.al. Increased mortality among patients taking digoxin--analysis from the AFFIRM study. Eur Heart J. 2013 May;34(20):1481-8. PMID: 23186806
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23186806
(※2) Turakhia MP.et.al. Increased mortality associated with digoxin in contemporary patients with atrial fibrillation: findings from the TREAT-AF study. J Am Coll Cardiol. 2014 Aug 19;64(7):660-8. PMID: 25125296
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25125296
(※3) Freeman JV.et.al. Digoxin and risk of death in adults with atrial fibrillation: the ATRIA-CVRN study. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2015 Feb;8(1):49-58. PMID: 25414270
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25414270
(※4) Gheorghiade M.et.al. Lack of evidence of increased mortality among patients with atrial fibrillation taking digoxin: findings from post hoc propensity-matched analysis of the AFFIRM trial. Eur Heart J. 2013 May;34(20):1489-97. PMID: 23592708
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23592708
(※5) Hallberg P.et.al. Digoxin and mortality in atrial fibrillation: a prospective cohort study. Eur J Clin Pharmacol. 2007 Oct;63(10):959-71. PMID: 17684738
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17684738
(※6) Vamos M.et.al. Digoxin-associated mortality: a systematic review and meta-analysis of the literature. Eur Heart J. 2015 Jul 21;36(28):1831-8. PMID: 25939649
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25939649
(※7)Ziff OJ.et.al. Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data. BMJ. 2015 Aug 30;351:h4451PMID: 26321114
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26321114

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■脳卒中後の嚥下障害患者における抗菌薬の予防投与■
Kalra L.et.al. Prophylactic antibiotics after acute stroke for reducing pneumonia in patients with dysphagia (STROKE-INF): a prospective, cluster-randomised, open-label, masked endpoint, controlled clinical trial. Lancet. 2015 Sep 3. pii: S0140-6736(15)00126-9. PMID: 26343840
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26343840
背景と研究デザイン:脳卒中後の肺炎は機能転帰の悪化や死亡に関連している。急性脳卒中後の嚥下障害患者で抗菌薬の予防投与が肺炎を予防できるか検討したクラスターランダム化比較試験
P:脳卒中発症から48時間以内の嚥下障害を有する患者1224人。(48の脳卒中治療ユニットでランダム化)
E:標準ケア+抗菌薬の予防投与24ユニット
C:標準ケア24ユニット
O:脳卒中後14日以内の肺炎発症
統計解析:intention to treat
盲検化:PROBE

脳卒中後肺炎は
抗菌薬予防投与群;71 /564[13%]
標準ケア群52/524 [10%]
▶オッズ比1.21 [95%信頼区間0.71~2.08]
脳卒中後の嚥下障害患者における肺炎予防のための抗菌薬予防投与は推奨できない

■せん妄に対する抗精神病薬の有効性・安全性■
Kishi T.et.al. Antipsychotic medications for the treatment of delirium: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Sep 4. PMID: 26341326
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26341326
背景と研究デザイン:せん妄への抗精神病薬の有効性・安全性を検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:15のランダム化比較試験に参加した、成人のせん妄患者(追跡中央値9.8日)949人
E:抗精神病薬の投与(misulpride=20, aripiprazole=8, chlorpromazine=13, haloperidol=316, intramuscular olanzapine or haloperidol injection=62, olanzapine=144、quetiapine=125, risperidone=124、ziprasidone=32)
C:プラセボ、もしくは標準ケアplacebo=75, UC=30
O:response rate

・:response rateリスク比0.22, NNT=2
・せん妄重症度スコアelirium severity scales scores 標準化平均差-1.27
・口渇:リスク比13.0, NNH=5
・鎮静:リスク比4.59, NNH=5

■歯の喪失と認知機能、運動機能■
Tsakos G.et.al. Tooth loss associated with physical and cognitive decline in older adults. J Am Geriatr Soc. 2015 Jan;63(1):91-9. PMID: 25523131
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25523131
背景と研究デザイン:高齢者を対象とした歯の喪失と認知機能、運動機能との関連を検討した縦断研究

P:60歳以上の高齢者3166人(平均74.1~69.3歳)
E:歯の喪失あり
C:歯の喪失なし
O:認知機能(10単語の想いだしテスト)、運動機能(歩行スピードm/s)

交絡因子:年齢、性別、配偶者の有無、社会経済的立場、心血管、非心血管疾患の併存疾患数、
歩行速度のカテゴリ、喫煙、アルコール消費、身体活動、抑うつ症状、BMI、腹囲

歯の喪失ありでは答えられた単語が0.88単語少なく、歩行スピードも0.09 m/s遅かったが、交絡補正後はあまり明確な差を認めない。
認知機能:オッズ比1.07 [95%信頼区間0.92~1.25]
運動機能:オッズ比1.11 [95%信頼区間0.95~1.32]

■抗精神病薬の使用と肺炎リスク■
Nosè M.et.al. Antipsychotic drug exposure and risk of pneumonia: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Aug;24(8) PMID: 26017021
背景と研究デザイン:肺炎は65歳以上の高齢者において死亡の主要な要因の一つである。近年、いくつかの研究において、抗精神病薬の使用と高齢者における肺炎との関連が示唆されている。この観察研究のシステマテックレビュー、メタ分析は1世代、2世代抗精神病薬と高齢者、もしくは若年層での肺炎リスクを検討することを目的とした。

P:コホート研究、症例対照研究に参加した患者
E:抗精神病薬の使用あり
C:抗精神病薬の使用なし
O:肺炎発症

抗精神病薬の使用で肺炎リスク上昇
1世代抗精神病薬:オッズ比1.68[95%信頼区間1.39-2.04]I(2)  = 47%
二世代抗精神病薬:オッズ比1.98[95%信頼区間1.67-2.35]I(2)  = 36.7%
リスク上昇は高齢者及び若年層で類似

■慢性副鼻腔炎の治療■
Rudmik L.et.al. Medical Therapies for Adult Chronic Sinusitis: A Systematic Review. JAMA. 2015 Sep 1;314(9):926-39. PMID: 26325561
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26325561
背景と研究デザイン:慢性副鼻腔炎は3ヶ月以上持続する副鼻腔空洞の持続的な症候性炎症によって定義される一般的な炎症状態である。全医師の1~2%が遭遇し、多大な医療費に関連している。慢性副鼻腔炎のための最適な薬物治療は、日常生活における機能、患者QOLの最適化、急性炎症増悪のリスクを最小限に抑えることである。成人における慢性副鼻腔炎の薬物治療に関するシステマテックレビュー

P:成人の慢性副鼻腔炎患者(メタ分析12研究、システマテックレビュー13研究、その他4RCT)
E:薬物治療あり
C:薬物治療なし
O:慢性副鼻腔炎各種症状

・生理食塩水による洗浄:症状スコア▶標準化平均差1.42 [95%信頼区間1.01~1.84]改善
・局所ステロイド:全体症状スコア▶標準化平均差 -0.46 [95%信頼区間-0.65~-0.27]改善
・ロイコトリエン拮抗薬:鼻症状改善(P < .01)
・3ヶ月のマクロライド系:QOL▶:標準化平均差-0.43 [95%信頼区間-0.82 ~-0.05])改善

■小児におけるインフルエンザワクチン■
Jain VK.et.al. Vaccine for prevention of mild and moderate-to-severe influenza in children. N Engl J Med. 2013 Dec 26;369(26):2481-91. PMID: 24328444
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24328444
背景と研究デザイン:一般に用いられる3価インフルエンザワクチンはB型ウイルスを1種類しか含まず、他のB型ウイルスには無効であることがある。この研究は小児を対象とした、4価ワクチンの有効性を検討したランダム化比較試験である。

P:3歳~8歳の小児
E:4価インフルエンザワクチン5168人(平均5.4歳)
C:A型肝炎ワクチン(対照ワクチン)2584人
O:インフルエンザ感染(rt-PCRにて同定)2584人

盲検化:observer-blinded
統計解析:The principal analysis was an analysis of efficacy in the per-protocol cohort

4価ワクチンの有効性は
total vaccinated cohort:59.3%[95%信頼区間45.2~69.7]
per-protocol cohort:55.4% (95%信頼区間39.1 ~ 67.3)

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■シタグリプチンと関節痛■
Yokota K.et.al. Sitagliptin (DPP-4 inhibitor)-induced rheumatoid arthritis in type 2 diabetes mellitus: a case report. Intern Med. 2012;51(15):2041-4. PMID: 22864134
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22864134
48歳2型糖尿病患者でシタグリプチンによる治療開始から3か月後に継続的な多発関節炎を発症し 慢性関節リウマチと診断された症例。シタグリプチンにより誘発された可能性が疑われている。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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糖尿病治療薬に関してFDAから警告が複数出ています。

①DPP4阻害薬と関節痛
FDA warns that DPP-4 inhibitors for type 2 diabetes may cause severe joint pain
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm459579.htm

②カナグリフロジンと骨折リスク
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm461449.htm

またSGLT-2阻害薬では敗血症が重大な副作用に追加されています。
https://www.pmda.go.jp/files/000207320.pdf

SGLT-2阻害薬のエンパグリフロジンの心血管アウトカム大規模臨床試験の結果が明らかとなり、処方される機会も増えると予測されます。

エンパグリフロジン(ジャディアンス®)の有効性~EMPA-REG OUTCOME~
http://syuichiao.blogspot.jp/2015/09/empa-reg-outcome.html

今後の糖尿病治療薬のリスクベネフィットの情報はめまぐるしくアップデートされるでしょう。今後の動向に注目したいと思います。
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地域医療の見え方  2015.Sep.23;1(36)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-オルメサルタンの有効性・安全性-

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[ポイント]
■オルメサルタンは本邦でも処方頻度が高いと想定される。
■オルメサルタンが他のARBよりも優れた効果があるかどうかは不明である。
■オルメサルタンは40mg/日以上の高用量で用いるべきではない
■オルメサルタンとスプルー様腸疾患の関連性が示唆されてる。
■複数あるARBの中ではバルサルタン、テルミサルタンの有効性がわずかに優れるという観察研究がある。

[イントロダクション]
日経メディカル Onlineの医師会員を対象にした調査では、最も処方頻度の高いアンジオテンシンII受容体拮抗薬はオルメサルタンだそうです。

NMO処方サーベイ:ARB:オルメサルタンが一番人気
2015/2/12付日経メディカル Online
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/survey/201502/540699.html

なおその副作用に「重度の下痢」の記載があり、「長期投与により、体重減少を伴う重度の下痢があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、生検により腸絨毛萎縮等が認められたとの報告がある。」と書かれています。本稿では、オルメサルタンの有害事象として、重度の下痢、に焦点を当てながら、有効性・安全性についてまとめていきます。

[オルメサルタンの有効性]
オルメサルタンの売りとしては優れた降圧効果と24時間にわたる持続的な血圧コントロールと言われています。こう書くとなんだか製薬メーカーの営業見たいですが、このブログではもちろんそんなうたい文句にがされません。具体的な臨床効果を見ていきます。

■透析患者におけるオルメサルタン
長期血液透析の患者を対象としたオルメサルタンの有用性を検討したランダム化比較試験が報告されています。(※1)

この研究は長期血液透析(週3回)を行っている高血圧患者(140-199/90-99 mmHg)469人(平均60歳、男性62%)を対象に、オルメサルタン10-40 mg/日(235人)とARB、ACEIを含まない他の治療(234人)を比較して、死亡、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、冠動脈再建術の複合アウトカムと総死亡を検討したオープンラベル試験です。オープン試験ですが、統計解析は独立して行われており、事実上PROBE法となっています。

なおサンプルサイズは469人と計算されており、統計解析はintention to treat.で全例が解析されています。(ロスト1例のみ)また平均追跡期間は3.5年です。主な結果を以下にまとめます。この研究ではオルメサルタンは、重篤な有害事象のリスクを増加させませんでした。

アウトカム オルメサルタン 他の治療 ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 68人 (28.9%) 67人 (28.6%) 1.00[0.71~1.40]
総死亡 38人(16.2%) 39 (16.7%) i 0.97[0.62~1.52]


対象患者が特殊ゆえにこの論文の解釈はやや難しいのですが、他の治療と比べても比較的安全に降圧を行うことができるが、死亡等を大きく減らすほどのメリットはないという事かもしれません。使用できる薬剤の選択肢が広がるという観点からすれば貴重な報告でしょう。

■心不全患者におけるオルメサルタン
高血圧がありACE阻害薬もしくはβ遮断単薬を服用中の症候性慢性心不全の日本人1147人(平均66歳、男性75%、ACE阻害薬使用は81%以上)を対象に、オルメサルタンの上乗せ投与578人と上乗せなし569人を比較して、全死因死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全の悪化による入院の複合アウトカムを検討したランダム化比較試験が報告されています。(※2)

こちらもprospective, randomized, open-label blinded endpoint study(PROBE)です。統計解析はintention-to-treat、解析から1名が除外されています。サンプルサイズは各群565人と計算されています。患者背景は両群で同等。なおACE阻害薬使用は8割を超えており、E群は事実上ARBとACEIの併用治療となっています。(両剤の併用については、本稿では立ち入らないが既に有害性が報告されている)主な結果を以下にまとめます。

アウトカム オルメサルタンあり オルメサルタンなし ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 192人(33.2%) 166人(29.2%) 1.18[0.96-1.46]
腎機能生涯 97人(16.8%) 61人(10.7% 1.64[1.19-2.26]


結局のところARBとACE阻害薬の併用は危険であるという事が浮き彫りとなっただけな印象があります。

■糖尿病患者におけるオルメサルタン上乗せ効果
30~70歳で、尿アルブミン/クレアチニン比>300 mg/g、血清クレアチニン値が女性で1.0–2.5 mg/dl、男性で1.2–2.5 mg/dlの顕性腎症を有する2型糖尿病患者577人(日本人377人、中国人200人、平均59.2歳、73.5%でACE阻害薬使用)を対象に、オルメサルタン(10〜40 mg)とプラセボ投与を比較したランダム化比較試験が報告されています。(※3)

オルメサルタン群 288人とプラセボ群289人を比較して、血清クレアチニン値倍化、末期腎不全(SCr >442.01 μmol/l [5 mg/dl])、持続的透析、移植、及び総死亡の複合アウトカムが平均3.2にわたり検討されています。

統計解析はintention-to-treat。577人中566人(オルメサルタン群 282人、プラセボ群284人)が解析されています。盲検化についてはAll persons involved in the study were unaware of the drug assignments, except for the person in charge of drug assignment who was not involved in the study.と記載がありまずまず考慮されていそうです。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム オルメサルタンあり オルメサルタンなし ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 116 (41.1%) 129 (45.4%) 0.97[0.75~1.24]
ESRD 74 (26.2%) 78 (27.5%) 1.08[0.78~1.49]
総死亡 19 (6.7%) 20 (7.0%) 0.99[0.53~1.86]


この研究もACE阻害薬とARBの上乗せ治療となっており、オルメサルタン単独の有用性についてはよく分かりません。

■2型糖尿病患者におけるオルメサルタン
観察研究を少し見てみましょう。ARBを新規に使用したメディケア受給者を対象に、オルメサルタンの使用(158054例)とオルメサルタン以外のARBの使用(724673例)を比較して総死亡を検討したコホート研究が報告されています。(※4)

高用量オルメサルタンの6か月以上の使用は糖尿病患者で死亡リスクが増加する(ハザード比2.03[95%信頼区間1.09~3.75])が非糖尿病患者で死亡リスクが低下する(ハザード比0.46[95%信頼区間0.24~0.86])という結果になっています。少なくとも糖尿病患者には高用量のオルメサルタンを使用すべきではないかもしれません。

なおオルメサルタンは他のARBと比較して糖尿病発症リスクがわずかに高い可能性があります。(※5)

■オルメサルタンと他のARBの比較
Clinical Practice Research Datalink.を用いたコホート研究も報告されています。(※6)
この研究は英国のClinical Practice Research Datalinkより過去6か月以内にARBもしくはACE阻害薬の使用が無い患者を対象に、オルメサルタン使用(3964人)と他のARB使用(54 653人)を比較して、心血管アウトカムや総死亡を検討しています。

その結果
急性心筋梗塞:ハザード比1.04[95%信頼区間0.75~1.42]
総死亡:ハザード比1.16[95%信頼区間0.95~1.42]
と明確な差はありませんでした。プライマリケアデータベースの観察研究においても特に他のARBと優れている印象はありません。なおオルメサルタンを高用量(40mg/日)で用いると急性心筋梗塞や総死亡リスクが上昇傾向にあり、オルメサルタンは高用量で用いるべきではないかもしれません。

[オルメサルタンの有害事象リスク]
2014年に報告された後ろ向きコホート研究を見てみましょう。この研究は、糖尿病患者においてオルメサルタンと他のARBを比較して、全原因入院や全原因死亡を検討したものです。(※7)
オルメサルタン使用者10370人(平均53.7±9.3歳)、他のARB使用者34815人(平均54.4±9.7)が比較されました。主な結果を以下に示します。

アウトカム ハザード比[95%CI]
全原因入院+全原因死亡 0.99 (0.94–1.05)
全原因死亡 0.90 (0.62–1.30)
全原因入院 0.99 (0.94–1.05)
消化器疾患関連入院 1.09 (0.98–1.20)
非感染性腸炎や大腸炎関連の入院 1.21 (0.87–1.69)


全原因入院や全原因死亡に明確な差が無いのは予想通りですが、有害事象、消化器系の有害事象リスクが上昇傾向です。ただこの研究では明確な差は出ていません。

[オルメサルタンとスプルー様腸疾患]
米メイヨー・クリニックがオルメサルタンと腸疾患にかんする症例報告の分析を行っています。(※8)
この論文はオルメサルタンと慢性の下痢や体重減少などの症状を呈するスプルー様症状に関する22の症例報告です。主な患者背景は、年齢中央値69.5歳[47~81]、女性13人、多くの患者でオルメサルタン40mg/日を使用。22人中14人で入院を必要とする重症例でした。また主な臨床症状は慢性の下痢(中央値で19.2ヶ月)と体重減少(中央値で18㎏)でした。

同薬中止後、体重は平均12.2kg増加、平均242.3日後に十二指腸の再生検を行った18例全例に組織学的回復または改善が認められています。この報告を見てもかなり重篤な印象ですが、因果関係については不明のままでした。

2013年に米国FDAはオルメサルタンとスプルー様腸疾患に関して,安全性情報を発表しています。これに伴い同年11月には添付文書が改定され、イントロダクションにも示した通り、重度の下痢が追記されたわけです。

2014年に入っても症例報告はいくつか存在します。(※9)しかしながら症例対照研究での疫学的関連検討でも明確な差は見られませんでした。(※10)

この研究は症例に検査適応が下痢症状の患者、対照に検査適応が胃食道逆流症、大腸がんの患者を設定した症例対照研究で、食道胃十二指腸内視鏡検査(2088人)コホートではオッズ比1.99[95%信頼区間0.79-5.00]、大腸内視鏡検査(12428人)コホートでも、オッズ比0.63 [0.23-1.74]と明確な差は出ませんでした。院内ケースコントロールという特殊な患者群を扱っていたため、リスクについてはこの研究のみでは何とも言えない印象です。

[コホート研究の示唆]
今年に入りコホート研究が報告されました。(※10) この研究はスランスの国民健康データベースより4 546 680人を対象として、腸管吸収障害による入院リスクを検討しています。

その結果ACE阻害薬に比べて、オルメサルタンでリスク上昇が示唆されました。(発生率比2.49 [95%信頼区間1.73~3.57])使用期間でみると

・1年未満:0.76 [95%信頼区間0.39~1.49]
・1~2年: 3.66 [95%信頼区間1.84~7.29]
・3年以上:10.65 [95%信頼区間 5.05~22.46]
と長くなるほどリスクとの関連性が上昇しています。
現状ではわずかな関連を示唆、と言う印象ではありますが、アウトカムの重大性を考慮すれば軽視すべきではないでしょう。これまでの有効性を踏まえるとあえてオルメサルタンを使うメリットはあまりないと言えそうです。

[結局のところどうする?]
そもそもARBを積極的に使うべきかは議論の余地がありますが、少なくともオルメサルタンを第一選択に位置付ける根拠はかなり限定的でしょう。イントロダクションに示した最も処方頻度の高いARBがオルメサルタンと言うのはなかなか興味深い示唆ではあります。日経メディカルに登録している医師という一定の情報収集を行っている医療者であってもあまり論文情報は重視されないという現実が垣間見えます。

オルメサルタンが他のARBに比べて優れた効果があるとは言い難く、高用量で用いることは逆に有害、わずかながら糖尿病発症リスクとスプルー様腸疾患リスクがあるとまとめることができます。では複数あるARBの中でどれを選んだら良いでしょうか。

イルベサルタン(12691人)による治療と比較して、カンデサルタン(10940人)、ロサルタン(8411人)、テルミサルタン(8182人)、バルサルタン(13962人)による治療の効果を検討したコホート研究によれば、急性心筋梗塞よる入院、脳卒中による入院、心不全による入院の複合アウトカムはバルサルタン、もしくはテルミサルタンでわずかに優れているという可能性を示唆しています。(※12) 観察研究ですから、実際の治療効果にどれだけ差が有るかは微妙な問題なのですが、あえてリスクが懸念される薬剤を積極的に使うというのもおかしな話ではないでしょうか。

[参考文献]
(※1) Iseki K.et.al. Effects of angiotensin receptor blockade (ARB) on mortality and cardiovascular outcomes in patients with long-term haemodialysis: a randomized controlled trial. Nephrol Dial Transplant. 2013 Jun;28(6):1579-89. PMID: 23355629
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23355629
(※2) Sakata Y.et.al. Clinical impacts of additive use of olmesartan in hypertensive patients with chronic heart failure: the supplemental benefit of an angiotensin receptor blocker in hypertensive patients with stable heart failure using olmesartan (SUPPORT) trial. PMID: 2563793
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25637937
(※3) Imai E.et.al. Effects of olmesartan on renal and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes with overt nephropathy: a multicentre, randomised, placebo-controlled study. Diabetologia. 2011 Dec;54(12):2978-86. PMID: 21993710
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21993710
(※4) Graham DJ.et.al. Cardiovascular and mortality risk in elderly Medicare beneficiaries treated with olmesartan versus other angiotensin receptor blockers. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2014 Apr;23(4):331-9. PMID: 24277678
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24277678
(※5) Chang CH, et.al. Different angiotensin receptor blockers and incidence of diabetes: a nationwide population-based cohort study. Cardiovasc Diabetol. 2014 May 14;13:91. PMID: 24886542
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24886542
(※6) Zhou EH.et.al. Risk of acute myocardial infarction, stroke, or death in patients initiating olmesartan or other angiotensin receptor blockers - a cohort study using the Clinical Practice Research Datalink. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2014 Apr;23(4):340-7. PMID: 24285502
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24285502
(※7) Padwal R.et.al. Comparative effectiveness of olmesartan and other angiotensin receptor blockers in diabetes mellitus: retrospective cohort study. Hypertension. 2014 May;63(5):977-83. PMID: 24535009
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24535009
(※8) Rubio-Tapia A.et.al. Severe spruelike enteropathy associated with olmesartan. Mayo Clin Proc. 2012 Aug;87(8):732-8. PMID: 22728033
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22728033
(※9) Théophile H.et,al. Five cases of sprue-like enteropathy in patients treated by olmesartan. Dig Liver Dis. 2014 May;46(5):465-9. PMID: 24472297
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24472297
(※10) Greywoode R.et.al. Olmesartan, other antihypertensives, and chronic diarrhea among patients undergoing endoscopic procedures: a case-control study. Mayo Clin Proc. 2014 Sep;89(9):1239-43. PMID: 25023670
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25023670
(※11) Basson M.et.al. Severe intestinal malabsorption associated with olmesartan: a French nationwide observational cohort study. Gut. 2015 Aug 6. pii: gutjnl-2015-309690. doi: 10.1136/gutjnl-2015-309690. [Epub ahead of print] PMID: 26250345
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26250345
(※12) Antoniou T.et.al.Comparative effectiveness of angiotensin-receptor blockers for preventing macrovascular disease in patientswith diabetes: a population-based cohort study.
CMAJ. 2013 Sep 3;185(12):1035-41.PMID:23836857

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■インフルエンザワクチンの効果■
Shinjoh M.et.al. Effectiveness of Trivalent Inactivated Influenza Vaccine in Children Estimated by a Test-Negative Case-Control Design Study Based on Influenza Rapid Diagnostic Test Results. PLoS One. 2015 Aug 28;10(8):e0136539. PMID: 26317334
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26317334
背景と研究デザイン:日本における6か月~15歳の小児発熱患者を対象にしたインフルエンザ感染症とインフルエンザワクチン接種の関連を検討した症例対照研究

P:22医療機関を38℃以上の発熱で受診した6か月~15歳の小児患者
(症例)インフルエンザ検査キットで陽性
(対照)インフルエンザ検査キットで陰性
E:インフルエンザワクチンの接種あり
C:インフルエンザワクチンの接種なし
O:インフルエンザワクチン有効率(1-インフルエンザ発症のオッズ比)
交絡因子への配慮:年齢別解析及び、地域、季節

年齢 有効率[95%信頼区間]
6か月~15歳 51%[43%~58%]
6~11か月 21%[-87%~67%]
1~2歳 63%[51%~72%]
3~5歳 60%[49%~69%]
6~12歳 39%[26%~50%]
13~15歳 22%[-33%~54%]


医療機関受診間者のみを対象とした症例対照研究のためインフルエンザワクチン接種割合が一般人口集団を反映していない可能性あり。また有意な差が出ていない年代は症例数が少なくβエラーの可能性が高い、

■スタチンの一次予防、費用対効果分析■
Pandya A.et.al. Cost-effectiveness of 10-Year Risk Thresholds for Initiation of Statin Therapy for Primary Prevention of Cardiovascular Disease. JAMA. 2015 Jul 14;314(2):142-50. PMID: 26172894
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26172894
背景と研究デザイン:スタチンの一次予防効果を検討した費用対効果分析

P:米国人口で40歳~75歳。動脈硬化性疾患を有さない集団を想定
E:スタチンの使用あり
C:スタチンの使用なし
O:10年後の動脈硬化性疾患の発症における増分費用対効果

10年間の動脈硬化性疾患リスクが少なくとも10%に比べて、7.5%の設定では
スタチンの使用で増分費用対効果は$37000/QALY
スタチンの治療開始基準として10年間の動脈硬化性疾患リスク7.5%は妥当

■ジゴキシンと死亡リスク■
Ziff OJ.et.al. Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data. BMJ. 2015 Aug 30;351:h4451PMID: 26321114
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26321114

背景と研究デザイン:ジゴキシンと臨床アウトカムに関してはネガティブな報告が多々あるが、ジゴキシンと死亡のリスクを検討した観察研究、ランダム化比較試験のメタ分析

P:41研究に参加した999994人
E:ジゴキシンの使用あり260335人
C:ジゴキシンの使用なし739659人
O:総死亡

解析対象 結果[95%信頼区間]
観察研究[非調整]33研究 相対危険1.76[1.57~1.97]
観察研究[調整]8研究 相対危険1.61[1.31~1.97]
観察研究[調整] 14研究 ハザード比1.17[1.07~1.29]
傾向スコアマッチング6研究 相対危険1.18[1.09~1.26]
傾向スコアマッチング7研究 ハザード比1.07[0.96~1.19]
ランダム化比較試験7研究 相対危険0.99[0.93~1.05]


ジゴキシンの安全性は心不全患者と心房細動患者で分けて考える必要があるかもしれない。RCT7研究のメタ分析で最も結果に影響を与えているのは DIG Trial 1997(PMID: 9036306)と思われる。この研究は心不全患者約7000人を対象としている。

観察研究のメタ分析でも大規模なものをいくつか見てみると、Flory 2012(PMID: 22505313)ではリスクは低下を示唆している。この研究も心不全患者57,229人を対象としたものである。またリスク上昇を示唆したTurakhia 2014では心房細動患者122,465人を対象としている。PMID: 25125296

このあたりは詳細な検討を必要とするが、本論文でも心不全患者では死亡リスクは変わらず、入院リスクの低下が示唆されている一方で心房細動患者においては死亡や入院のリスクはコメントできないとしている。

■COPD増悪に対するステロイド使用期間■
Walters JA.et.al. Different durations of corticosteroid therapy for exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease..Cochrane Database Syst Rev. 2014 Dec 10;12:CD006897.
PMID: 25491891
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25491891
背景と研究デザイン:COPD増悪患者に対する短期ステロイド投与と長期ステロイド投与を比較したランダム化比較試験のメタ分析

P:5つの研究に参加したCOPD急性増悪患者519人(平均65~73歳、男性58~84%)
E:全身ステロイド7日以下の投与
C:全身ステロイド7日超の投与
O:治療失敗、再燃、有害事象

治療失敗:オッズ比0.72[0.36~1.46]
再燃:オッズ比1.04[0.70~1.56]
有害事象:0.89[0.46~1.69]
死亡:0.91[0.40~2.06](セカンダリアウトカム)

■オルメサルタンとスプルー様下痢■
Basson M.et.al. Severe intestinal malabsorption associated with olmesartan: a French nationwide observational cohort study. Gut. 2015 Aug 6. [Epub ahead of print] PMID: 26250345
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26250345
背景と研究デザイン:十そのスプルー様腸疾患とオルメサルタンの関連は報告があるものの、その疫学的関連は不明なままである。他のARBもしくはACE阻害薬と比較してオルメサルタンと腸管吸収障害による入院のリスクを検討したコホート研究

P:フランスにける国民健康保険データより4546680人
E:オルメサルタンの使用
C:ACE阻害薬の使用
O:腸管吸収障害による入院

ACE阻害薬に比べてオルメサルタンでは腸管吸収障害による入院に関連
率比2.49[95%信頼区間1.73~3.57]
・1年未満使用:0.76[0.39~1.49]
・1~2年使用:3.66[1.84~7.29]
・2年超の使用10.65[5.05~22.46]

■ピロリ除菌療法の最適レジメン■
Li BZ.et.al. Comparative effectiveness and tolerance of treatments for Helicobacter pylori: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2015 Aug 19;351:h4052.PMID: 26290044
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26290044
背景と研究デザイン:Hピロリ除菌療法における最適レジメンを検討したネットワークメタ分析

P:143研究に参加した32056人
E:各種除菌レジメン(以下を参照)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4541168/table/tbl1/
C:標準3剤療法(PPI+クラリスロマイシン+アモキシシリンもしくはメトロニダゾール)7日間
O:除菌率、有害事象発生率

主な結果は以下を参照いただきたい。
除菌率
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4541168/table/tbl2/
有害事象
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4541168/table/tbl3/

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ニコランジルによる角膜潰瘍■
Trechot F.et.al. A case of nicorandil-induced unilateral corneal ulceration. Int Wound J. 2014 Jun;11(3):238-9. PMID: 23651162
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23651162
ニコランジルを服用中(3年間)に2回目の白内障手術をした78歳女性での角膜潰瘍。4年毎の初回手術時には経過は良好であった。ニコランジルが被疑薬として疑われた。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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オルメサルタンに匂いは独特ですよね。この匂いがどうしてもだめだと言う人もいるかもしれません。僕はあの匂いがあまり好きではないです。

オルメテックはエステル結合によりプロドラッグ化しているとのことで、本来、経口投与後に体内で加水分解されるわけですが、実は製剤中でもごくわずかにエステル結合が外れてしまうそうです。この外れた部分がジアセチルと言うやつで、ヨーグルト等のにおい成分と類似した構造を持っています。有効性、安全性には問題ないそうですが。
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スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ビルダグリプチンの実効性を探る-

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[ポイント]
■ビルダグリプチンは基礎研究で心不全やアルツハイマー型認知症、網膜症等への有用性が示唆されている。
■ビルダグリプチンの有害事象として血管浮腫や水疱性類天疱瘡などが示唆される
■ビルダグリプチンの主要心血管イベントは減少傾向あることがメタ分析で示唆されている。


[イントロダクション]
前回に引き続きDPP4阻害薬の実効性を探るシリーズです。今回はビルダグリプチンについてまとめていきます。ただビルダグリプチンに関する論文を検索したところ、真のアウトカムに関する研究は管理限定的でした。HbA1cがどうのこうのという論文はここで取り上げるつもりはありませんが、基礎研究からの示唆をちょっとまとめたいと思います。

[基礎研究が比較的豊富なビルダグリプチン]
基礎研究についてはほとんど論文を読みませんので、他のDPP4阻害薬については分かりませんが、今回ビルダグリプチンの論文を検索していて、ちょっと興味深いものがありましたのでご紹介します。基礎研究に関する論文の読み方について、僕はほとんど知りませんので、その解釈に誤りがあるかもしれません。詳細は原著をご確認ください。

基礎研究から垣間見るビルダグリプチン
臨床応用が期待される疾患 概要 PMID
心不全 ラットにおいてイソプロテレノールへの継続的な暴露によって引き起こされる左心室肥大抑制 [24521405](※1)
心不全 心不全モデルマウスの28日後の生存割合を増加させた [23504176](※2)
認知症 ストレプトゾシンを脳内に注射したアルツハイマー病モデルマウスに対するアミロイドβとタウタンパクのクリアランスを改善 [24117480](※3)
網膜症 肥満2型糖尿病ラットの網膜に対する保護効果 [24081217](※4)


やはり日本の研究が多い印象です。余談ですが、人を対象にした臨床試験では得られた結果の外的妥当性を人種や生活習慣、まあ研究対象の代表性とか、一般化化膿性とかを考えるわけですけど、動物実験のデータってそういったことを考えるのでしょうか。研究に用いたラットが地球上のすべてのラットの特性を代表しているの?というのはおかしな問何でしょうかね。95%信頼区間を用いた区間推定はあまりされないのでしょうか。

まあ普通に考えればラットで認められた発癌性は人体にとっても起こりうると、割とダイレクトに結び付いちゃいます。動物実験の結果がなんだかリアルに人に起こりうる現象に結び付いちゃうのはあまり外的妥当性とかそういったことを考えない(無視できる?)からなのかもしれません。いや、そうではなく、臨床試験の一般化可能性を考える方がおかしいのでしょうか。例えばアフリカ系アメリカ人で示唆された有効性や安全性が日本人に当てはまらないって考えるのもやや違和感があります。得られた結果の生物学的妥当性については研究の内的妥当性や概的妥当性とは別問題なのではないか、まあそんなことはどうでもいいのですが…。

[ちょっと気になる有害事象]
もちろん、基礎研究の結果は鵜呑みにできません。現にDPP4阻害薬の心不全リスクについては複数の研究で示唆されているところであります。有効性どころの問題ではありません。そんなビルダグリプチンですがやや気になる併用注意があります。添付文書にも記載されていますが、「アンジオテンシン変換酵素阻害剤を併用している患者では、併用していない患者に比べて血管浮腫の発現頻度が高かったとの報告がある。」となっています。

ACEもDPP4いずれの酵素もサブスタンスPを分解するといわれています。サブスタンスPはブラジキニン等とともに薬剤性血管浮腫の発現メカニズムに関与すると考えられておりACE阻害薬重篤の重篤な有害事象として有名ですよね。DPP4を阻害するDPP4阻害薬でも理論上は血管浮腫が起こり得る可能性があるというわけです。ビルダグリプチンの第3相試験に参加した139211人を対象にビルダグリプチンの投与とプラセボ、メトホルミン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グリメピリド、アカルボースの投与を比較し血管浮腫リスクを検討した疫学的研究が報告されています。(※5)

血管浮腫確定例は27人で平均年齢は58.3歳、女性の割合が多い印象です。27人のうち重症例は5人(26%)でした。全体では有意な差はつきませんでしたが、ACE阻害薬併用中の患者ではビルダグリプチンの服用と血管浮腫リスクの有意な関連が示されました。(オッズ比9.29[95%CI1.22~70.70])一方ARBでは差が出ませんでした。

血管浮腫 ビルダグリプチン C群 オッズ比[95%CI]
全体 19人/8553人(0.22%) 8人/5368人 (0.15%) 1.49 [0.65~3.41]
ACE阻害薬服用者 14人/2754人(0.51%) 1人/1819人 (0.05) 9.29 [1.22~70.70]
ARB服用者 3人/1336人(0.22%) 2人/886人 (0.23%) 0.99 [0.17~5.97]


イベント数が少なく、その結果については議論の余地も多々あるかと思いますが、少し気になるテーマではあります。添付文書上の併用注意はビルダグリプチンにしか記載がなく、当薬剤固有のものなのか、他の薬剤ではどうなのか、クラスにより違いがあるのかという問題もありますよね。2013年に報告されたビルダグリプチンによる血管浮腫ではアログリプチンに変更後、症状が消失したとされています。(※6) 現段階でクラスエフェクトなのか不明ですが、シタグリプチンでも血管浮腫が報告されています。(※7) この症例ではロサルタンが併用されていました。

[その他の有害事象報告]
血管浮腫以外は疫学的に検討された報告はかなり限定的ですが症例報告ならいくつかあります。簡単にまとめましょう。


有害事象から垣間見るビルダグリプチン
報告された有害事象 概要 PMID
首下がり症候群 ビルダグリプチンによる薬剤性の筋障害に伴う首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS) [23947215](※8)
急性膵炎 ビルダグリプチンによるものと思われる急性膵炎 [PMID:21324812](※9)
急性壊死性膵炎 ビルダグリプチン開始後、激しい腹痛、嘔吐。膵炎と診断 [23306341](※10)
水疱性類天疱瘡 薬剤誘発性皮膚疾患として3例の症例が報告されている。いずれも高齢者 [24861252](※11)


急性膵炎については近年の報告では疫学的関連性はあまりなさそうな印象です。類天疱瘡とは皮膚に対する自己抗体によって皮膚に水疱ができる疾患です。DPP4阻害薬により誘発される症例はシタグリプチン、ビルダグルプチンを中心に報告されています。(※12) 半数以上が持続例であり、治療は難渋する傾向がある印象です。DPP4阻害薬にはまだまだ不明な部分が多いと言えましょう。

[結局のところ、肝心の効果はどうなの?]
さて、肝心の効果ですが、ビルダグリプチンに関しては、臨床アウトカムを検討した大規模臨床試験の結果が出ていません。しかしながら先日メタ分析の論文が報告されました。(※13)

この研究は40のランダム化比較試験を対象に17,446人(平均57歳、平均BMI30.5 kg/m2 、平均HbA1c 8.1%、平均罹病期間5.5年)が解析対象となりました。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム E群 C群 リスク比[95%信頼区間]
心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡 0.86% 1.20% 0.82[0.61~1.11]
心不全 0.43% 0.45% 1.08[0.68~1.70].


この結果からだけでは何とも言えませんが、MACEは減少傾向にあります。今後の研究に注目したいと思います。

[参考文献]
(※1)Miyoshi T.et.al. Effect of vildagliptin, a dipeptidyl peptidase 4 inhibitor, on cardiac hypertrophy induced by chronic beta-adrenergic stimulation in rats. Cardiovasc Diabetol. 2014 Feb 13;13:43PMID: 24521405
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24521405
(※2) Takahashi A.et.al. Dipeptidyl-peptidase IV inhibition improves pathophysiology of heart failure and increases survival rate in pressure-overloaded mice. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2013 May 15;304(10):H1361-9. PMID: 23504176
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23504176
(※3) Kosaraju J.et.al. Vildagliptin: an anti-diabetes agent ameliorates cognitive deficits and pathology observed in streptozotocin-induced Alzheimer's disease. J Pharm Pharmacol. 2013 Dec;65(12):1773-84. PMID: 24117480
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24117480
(※4) Maeda S.et.al. Beneficial effects of vildagliptin on retinal injury in obese type 2 diabetic rats. Ophthalmic Res. 2013;50(4):221-6. PMID: 24081217
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24081217
(※5)Brown NJ.et.al. Dipeptidyl peptidase-IV inhibitor use associated with increased risk of ACE inhibitor-associated angioedema. Hypertension. 2009 Sep;54(3):516-23. PMID: 19581505
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19581505
(※6) Saisho Y.et.al. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and angioedema: a class effect? Diabet Med. 2013 Apr;30(4):e149-50. PMID: 23323612
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23323612
(※7) Gosmanov AR.et.al. Sitagliptin-associated angioedema. Diabetes Care. 2012 Aug;35(8):e60. PMID: 22826453
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22826453
(※8) Akaishi T.et.al. [Case report; suspected DPP-4 inhibitor-induced dropped head syndrome] Nihon Naika Gakkai Zasshi. 2013 Jun 10;102(6):1464-6. PMID: 23947215
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23947215
(※9) Girgis CM.et.al. Vildagliptin-induced acute pancreatitis. Endocr Pract. 2011 May-Jun;17(3):e48-50PMID: 21324812
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21324812
(※10) Kunjathaya P.et.al. Acute necrotizing pancreatitis associated with vildagliptin. JOP. 2013 Jan 10;14(1):81-4. PMID: 23306341
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23306341
(※11) Béné J.et.al. Bullous pemphigoid induced by vildagliptin: a report of three cases. Fundam Clin Pharmacol. 2015 Feb;29(1):112-4. PMID: 24861252
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24861252
(※12) Attaway A.et.al. Bullous pemphigoid associated with dipeptidyl peptidase IV inhibitors. A case report and review of literature. J Dermatol Case Rep. 2014 Mar 31;8(1):24-8. PMID: 24748908
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24748908
(※13) McInnes G.et.al. Cardiovascular and heart failure safety profile of vildagliptin: a meta-analysis of 17000 patients. Diabetes Obes Metab. 2015 Aug 7. [Epub ahead of print] PMID: 26250051
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26250051

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■不眠症と睡眠薬とQOL■
Scalo J.et.al. Insomnia, hypnotic use, and health-related quality of life in a nationally representative sample. Qual Life Res. 2015 May;24(5):1223-33. PMID: 25432884
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25432884
背景と研究デザイン:不眠症における睡眠薬の使用と健康関連QOLを検討した医療支出パネル調査(MEPS:Medical Expenditure Panel Survey連邦厚生省医療政策研究所AHCPRが毎年実施している全米調査(national surveys)の一つ)

P:104274人の成人(1401人が不眠症の診断、そのうち45.6%[639人]が睡眠薬を処方されている)
E:睡眠薬の使用あり639人
C:睡眠薬の使用なし762人
O:健康関連QOL(SF-12におけるMCSとPCS)

平均PCS、MCSは不眠症患者で有意に低い。(それぞれ9.2ポイント、7.0ポイント)
人口統計的要素や臨床共変量で補正後も同様
(PCS:5.1ポイント、MCS:6.2ポイント)

しかし不眠症患者において睡眠薬の使用あり、となしで健康関連QOL(HRQoL)に差は見られなかった。

不眠症の診断でQOLが低下するのに対し、不眠症における睡眠薬の使用でQOLは改善しない。

■高血圧患者における薬剤師のアドヒアランス介入■
Hedegaard U.et.al. Improving medication adherence in patients with hypertension: a randomized trial. Am J Med. 2015 Aug 21. pii: S0002-9343(15)00785-8. PMID: 26302142
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26302142
背景と研究デザイン:高血圧患者において、服薬アドヒアランスはしばしばサブオプショナルであり、それらは虚血性心疾患や脳卒中リスクを高める。薬剤師による高血圧患者のアドヒアランス改善介入の効果をランダム化比較試験にて検討。

P:3つの医療機関における外来患者532人
E:6か月にわたり薬剤師によるアドヒアランス改善介入(薬剤レビューカウンセリング、電話フォローアップ)
C:標準ケア
O:降圧薬や脂質低下薬のmedication possession ratio

※投薬占有率(MPR: Medication Possession Ratio)
望ましくないある予後に達する(もしくはデータを打ち切る)までの総治療可能期間に対する、患者が実際に治療を受けた期間の割合。この値が1に近いほど、治療可能期間に占めるアウトカム発症が遅いことを示している。治療期間と長期予後との関連性を検討する指標で、治療をきちんと受け続けられるかそれとも途中で辞めてしまうか、という患者の傾向(動向)というバイアスを排除できる。

追跡期間:1年

12か月後のノンアドヒアランスは介入群で20.3%、標準ケアで30.2%であった。
(リスク差-9.8[95%信頼区間-17.3~-2.4])
medication possession ratio中央値は介入群で0.93、標準ケアで0.91と統計的に有意であった。なお心血管死亡、脳卒中、急性心筋梗塞の複合アウトカムに明確な差は見られず、血圧や入院に関しても明確な差は無い。

症例数が少ないためクリニカルエンドポイントに差が無いのは分かる。これをもってして薬剤師による介入がハードエンドポイントを改善しないとすることはできないだろうが、プライマリアウトカムのMPRと言う指標には有意差がついた。治療期間に対する薬剤中止割合を示しているものと推測されるが、1年間の観察期間のうち両群とも90%は超えている。2%の差は365日のうち1週間程度という事を意味しているのか定かではないが、統計的有意差と臨床的有意差にギャップのようなものを感じる。この研究をもってして薬剤師によるアドヒアランス介入が有用であると結論するのは早々であろう。有用の定義にもよるが、現実的には患者QOLなどを検討したいところだ。クリニカルエンドポイントを検討するには膨大な症例数をようするだろう。

■近隣居住地域と脳卒中■
Honjo K.et.al. Impact of neighborhood socioeconomic conditions on the risk of stroke in Japan. J Epidemiol. 2015;25(3):254-60. PMID: 25757802
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25757802
背景と研究デザイン:居住地域の社会経済的状況が心血管リスクに及ぼす影響は過去に報告がある。しかしながら、アジアにおける居住地域の社会経済的状況と脳卒中の関連については検討されていない。近隣居住地域の社会経済的状況と脳卒中、脳卒中死亡を検討したコホート研究(JPHC study)

P:40歳~69歳の日本人140420人(平均50.3歳、BMI23.5)
E:近隣居住地域剥奪度(五分位に分類)
C:近隣居住地域剥奪度(最低五分位)
O:脳卒中(追跡期間15.4年)脳卒中死亡(追跡期間16.4年)

交絡補正:地域剥奪指数(ADI)、年齢、性別、人口密度、身体的要素及び振る舞い(喫煙、活動量、ストレス、婚姻状況)、心血管疾患リスクファクター(過体重、降圧薬や脂質異常症の薬剤使用歴)

最低五分位に比べて最高五分位でリスクはほぼ同等。
脳卒中:調整ハザード比1.02[0.76~1.38]
脳卒中死亡:調整ハザード比1.05[0.90~1.23]

抄録結論では脳卒中リスクとの関連について言及しているが交絡補正後は明確なリスク上昇示されず。

■飲酒とがん■
Cao Y.et.al. Light to moderate intake of alcohol, drinking patterns, and risk of cancer: results from two prospective US cohort studies. BMJ. 2015 Aug 18;351:h4238. PMID: 26286216
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26286216

背景と研究デザイン:アルコール摂取と発がんリスクを検討した前向きコホート研究

P: Nurses' Health Studyから女性88 084人、Health Professionals Follow-up Study から男性47 881人
E:アルコール摂取あり
C:アルコール摂取なし
O:がん発症

アルコール消費量はg/日で定義。(ビール355mlで12.8g、ワイン118mlで11g)
交絡補正:人種、年齢、体重、BMI、家族既往、身体検査、大腸検査、喫煙、身体活動、アスピリンの使用、マルチビタミンの使用、総エネルギー摂取、赤味や加工肉の摂取

アルコール摂取は癌リスクに関連しているが特に女性でリスクが高い。
1日5-14.9gの摂取でも相対危険1.13[1.06~1.20]

少しの飲酒なら体に良いとも限らない可能性。癌患者ほど少量のアルコールを摂取している可能性はあり。

■降圧治療の中止と認知機能■
Moonen JE.et.al. Effect of Discontinuation of Antihypertensive Treatment in Elderly People on Cognitive Functioning-the DANTE Study Leiden: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2015 Aug 24. [Epub ahead of print] PMID: 26301603
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26301603
背景と研究デザイン:観察研究において低血圧患者においては認知機能低下リスクを増加させる。血圧低下が脳血流、認知機能を損なう恐れがある。軽度認知機能障害を有する高血圧患者の降圧治療中止が認知、心理状態、一般的な日常機能を改善するかを検討したランダム化比較試験。

P:降圧治療を受けている75歳以上の高齢者385人(MMSEスコアで21~27、重篤な心血管疾患のない患者)
E:降圧治療の中止199人
C:降圧治療の継続186人
O:認知複合スコアoverall cognition compound scoreの変化

統計解析:ITT
追跡期間:16週
継続投与群に比べて薬剤中止群では血圧が上昇
収縮期圧差:7.36mmHg[3.02~11.69] 
拡張期圧差:2.63mmHg[0.34~4.93]
認知複合スコアoverall cognition compound scoreの変化に明確な差は無い。
差:0.02[-0.19~0.23]
降圧薬の中止で認知、心理状態、一般的な日常機能は改善しない。
個人的には血圧変動が気になった。薬剤をやめても10mmHg以上跳ね上がることは稀なのだとしたら、降圧薬をやめる機会は多い気がしている。

※関連論文※
75歳以上の高齢しゃにおける低血圧は“無関心”との関連を示唆した横断研究
Moonen JE.et,al. Lower blood pressure and apathy coincide in older persons with poorer functional ability: the Discontinuation of Antihypertensive Treatment in Elderly People (DANTE) Study Leiden. J Am Geriatr Soc. 2015 Jan;63(1):112-7 PMID: 25597563
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25597563

■アカルボースと大腸がん■
Tseng YH.et.al. Use of an α-Glucosidase Inhibitor and the Risk of Colorectal Cancer in Patients With Diabetes: A Nationwide, Population-Based Cohort Study. Diabetes Care. 2015 Aug 25. pii: dc150563. [Epub ahead of print] PMID: 26307605
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26307605
背景と研究デザイン:αグルコシダーゼ阻害剤のアカルボースは、バイオマーカー研究において、結腸直腸癌に対する抗腫瘍効果を有することが示唆されている。糖尿病患者におけるアカルボースの使用と大腸癌患との関連を評価したコホート内症例対照研究

P:台湾国民健康保険研究データベースより糖尿病1343484人より
症例、対照それぞれ199,296人(年齢、性別、糖尿病発症、併存疾患でマッチング)
E:アカルボースの使用あり
C:アカルボースの使用なし
O:大腸がん発症

アカルボースの累積使用と調整ハザード比[95%信頼区間]
[0~90]0.73 (0.63-0.83),
[91~364]0.69 (0.59-0.82)
[365~]0.46 (0.37-0.58)
(P for trend < 0.001).

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. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ニコランジルによる角膜潰瘍、皮膚潰瘍■
Campolmi N.et.al. Corneal perforation: another side effect of nicorandil. Cutan Ocul Toxicol. 2014 Jun;33(2):96-8. PMID: 23845070
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23845070
眼の疾患既往のない81歳の患者。ニコランジルを5年間服用。再発性角結膜炎と従来の治療に抵抗性の粘膜皮膚潰瘍で、全層角膜移植実施。またニコランジル中止後は皮膚潰瘍、角膜潰瘍が軽快。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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2015年7月にニコランジルの添付文書が改定されています。角膜潰瘍、皮膚潰瘍など粘膜潰瘍の報告が集積されているようです。長期に使用されることの多いこの薬剤、その有効性・安全性についてはいずれこのブログでも取り上げたいと思います。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Sep.9;1(34)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-シタグリプチンの実効性を探る-

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[ポイント]
■シタグリプチンは介入研究(TECOS試験)において心血管イベントを増加させないことが示されているものの、2型糖尿病治療における真のアウトカム改善効果につては未だ不明である。
■ハイリスク2型糖尿病患者におけるシタグリプチンの効果は複数の観察研究で検討されているが、おおむねTECOS試験の結果を支持するものである。但し慢性腎臓病患者における使用は心血管イベント増加を示唆した報告もあり、当該患者における使用には熟慮を要する。
■FDAのガイダンスをクリアするためだけのような論文の結論に少々うんざりするという現実が明らかとなった。

[イントロダクション]
DPP4阻害薬全体に関するエビデンスは以下にまとめてあります。
http://en.bloguru.com/syuichiao/245539/2015aug5129
FDAは2008年に、2型糖尿病治療薬が心血管系有害事象リスクを高めないとする根拠の提示をガイダンスとして定めており、それに伴い、ランダム化比較試験がDPP4阻害薬でも実施され、2013年以降、サキサグリプチン、アログリプチン、シタグリプチンと報告されました。いずれも心血管疾患ハイリスク患者に対するプラセボに対する心血管リスクの非劣性を検討したものです。少なくとも有効性を検討するための研究ではなく、ガイダンスに定められた安全性を示すための研究であり、この結果をもってして糖尿病治療薬としての有用性根拠とすべきではないというのが僕の立場ではあります。

しかしながら現時点で大規模臨床試験はこの3つしか無なく、実臨床での実効性については、明確なエビデンスが存在しません。少なくとも心血管イベントを増やすことはない、と言うのはまあある意味で、安全に血糖を下げることができるような印象を持ちますが、2型糖尿病治療における真のアウトカム改善効果については未だ不明な部分も多いわけです。

シタグリプチンに関する大規模ランダム化比較試験は現時点で1つしかありません。(※1)心血管疾患の既往のある2型糖尿病患者(14671人)を対象としたもので、心血管死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・不安定狭心症による入院の複合アウトカムは中央値3年でハザード比0.98[95%信頼区間0,88~1.09]と言う結果でした。

今回は、有効性に関する介入研究が未だ乏しいDPP4阻害薬の中でも、本邦で一番最初に発売されたシタグリプチン(ジャヌビア®、グラクティブ®)の実効性を観察研究からの示唆よりまとめていきたいと思います。

[慢性腎臓病患者の心筋梗塞後におけるシタグリプチン]
急性心筋梗塞後の慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者を対象とした、シタグリプチンの有効性・安全性を検討した台湾のコホート研究が報告されています。(※2)

この研究はTaiwan National Health Insurance Research Databaseより、心筋梗塞を発症した慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者1025人を対象としたもので、シタグリプチンの投与あり205人とシタグリプチンの投与なし820人を比較し、心筋梗塞、脳梗塞、心血管死亡の複合アウトカムを平均1.02年にわたり追跡したものです。主な結果を以下に示します。

アウトカム シタグリプチンあり シタグリプチンなし ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 54/205(26.3%) 164/820(20.0%) 1.32[0.97~1.79]


心血管複合アウトカムに明確な差はありませんが、リスクは上昇傾向にあります。なお心筋梗塞のみの解析では、リスクは有意に上昇と言う結果になっています。(ハザード比1.43[95%信頼区間1.04~1.95])

慢性腎臓病における2型糖尿病治療薬はかなり限られてしまうのですが、この結果だけを見ると、現時点で心筋梗塞の既往があり、慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者にシタグリプチンは他に選択肢がある限り避けたい印象です

[脳梗塞後の2型糖尿病患者におけるシタグリプチン]
脳梗塞の既往がある2型糖尿病患者5145人に対するシタグリプチンの有効性、安全性を検討したコホート研究が、やはり台湾より報告されています。(※3)この研究もTaiwan National Health Insurance Research Databaseより2型糖尿病患者で脳梗塞を発症した患者が対象となりました。脳梗塞、心筋梗塞、心血管死亡の複合アウトカムをシタグリプチンの使用あり(1715人)、使用なし(3430人)で比較しています。平均1.17年追跡しました。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム シタグリプチンあり シタグリプチンなし ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 190/1715(11.1%) 370/3430 (10.8%) 1.02[0.85~1.21]


明確な差は見られませんでした。また脳梗塞、脳出血、総死亡、いずれにおいてもハザード比はほぼ同等という結果になっています。心血管リスク上昇の懸念は晴れたという結論でしょうが、やはり観察研究においてもその実効性は曖昧です。

[シタグリプチンの心不全リスク]
サキサグリプチンはSAVOR-TIMI53(※4)で心不全による入院リスク上昇が示唆されてしまったわけですが、シタグリプチンではTECOS試験(※1)において、有意なリスク上昇は示されていません。ただ、その懸念が完全にないという事もまた示されておらず、この問題は議論のよりがあると僕は思っています。

シタグリプチンと心不全リスクに関してUS claims dataを用いた人口ベースコホートより症例対照研究が報告されていました。(※5)

この研究は急性冠症候群イベント発症時においてシタグリプチンに使用と心不全発症リスクとの関連を検討したものです。急性冠症候群発症の3年以前に心不全の既往が無い糖尿病患者が対象となっています。

急性冠症候群発症後30日以内に心不全で入院した患者を症例457人、年齢性別でマッチングした心不全を起こさなかった対照4570人を設定し、急性冠症候群発症90日以前のシタグリプチン使用割合を検討しました。傾向スコアなどを用いて交絡補正を行っています。

研究対象者は平均55歳、65%が男性でした。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム 症例 対照 調整オッズ比[95%CI]
心不全 11/147 (7%) 446/4880(9%) 0.75[0.38~1.46]


大規模コホートを用いた症例対照研究でも明確な差は示されませんでした。シタグリプチンによる心不全リスク上昇はあってもわずかという印象で、臨床的に問題となるレヴェルではないかもしれません。ただ心不全リスクを改善するかどうかは不明です。

[急性心筋梗塞後のシタグリプチン]
慢性腎臓病を有する患者における検討は報告されていましたが、やや特殊な患者だけに一般化は難しそうな印象でした。心筋梗塞後の2型糖尿病患者におけるシタグリプチンの実効性を検討した、前向きコホート研究が台湾より報告されています。(※6)

この研究は台湾の国民健康保険データベース、National Health Insurance Research Database (NHIRD)より急性心筋梗塞で入院をした2型糖尿病患者3,282人を対象としたものです。シタグリプチン使用あり(547人、平均66.0歳、男性64.0%)と、使用なし(2,735人、平均65.9歳、男性63.7%)が比較されています。平均追跡期間は1.15年で、一次アウトカムは心血管死亡、心筋梗塞、脳梗塞の複合アウトカムに設定されました。なお傾向スコアによる交絡補正がなされています。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム シタグリプチンあり シタグリプチンなし ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 9.50/100人年 9.70/100人年 0.97 [0.73~1.29]


複合アウトカムに明確な差を認めませんでした。なおこの研究でも心不全リスクの上昇は示されませんでした。心血管有害アウトカムの上昇を認めず、まあTECOS試験の結果を補完するといえばそうでしょうが、有効性については観察研究でも示されていません。

[ハイリスク2型糖尿病患者におけるシタグリプチン]
介入研究、観察研究ともにハイリスク2型糖尿病患者においては多くの場合で心血管リスクを上昇させないという結果は一貫しています。ただ慢性腎臓病を有する患者においてはリスク上昇が示唆されており、その投与は熟慮すべきだと思います。

安全性が示されたのか、はたまた効果がないのか、いずれにしてもFDAのガイダンスをクリアするためだけの結論の書き方に少々うんざりしてきました。結局のところ有効性はどうなのか?というクリニカルクエスチョンに真っ向から答えるようなエビデンスはもう出てこないのでしょうか。

[参考文献]
(※1) Green JB.et.al. Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Jul 16;373(3):232-42.PMID: 26052984
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26052984
(※2) Chen DY.et.al. Sitagliptin and cardiovascular outcomes in diabetic patients with chronic kidney disease and acute myocardial infarction: A nationwide cohort study. Int J Cardiol. 2015 Feb 15;181:200-6. PMID: 25528312
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25528312
(※3) Chen DY.et.al. Sitagliptin After Ischemic Stroke in Type 2 Diabetic Patients: A Nationwide Cohort Study. Medicine (Baltimore). 2015 Jul;94(28):e1128. PMID: 26181549
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26181549
(※4) Scirica BM, et al. Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus. N Engl J Med.2013 Oct 3;369(14):1317-26. PMID 23992601
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992601
(※5)Eurich DT.et.al. Risk of new-onset heart failure in patients using sitagliptin: a population-based cohort study. Diabet Med. 2015 Jul 23. [Epub ahead of print] PMID: 26206341
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26206341
(※6) Wang SH.et.al. Cardiovascular Outcomes of Sitagliptin in Type 2 Diabetic Patients with Acute Myocardial Infarction, a Population-Based Cohort Study in Taiwan. PLoS One. 2015 Jun 26;10(6):e0131122. PMID: 26115092
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26115092

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■WEBベース手洗い改善介入の効果■
Little P.et.al. An internet-delivered handwashing intervention to modify influenza-like illness and respiratory infection transmission (PRIMIT): a primary care randomised trial. Lancet. 2015 Aug 6. pii: S0140-6736(15)60127-1. PMID: 26256072
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26256072
背景と研究デザイン:呼吸器感染の伝播を予防する手洗いは広く励行されている。特にH1N1パンデミックの時はそうだったであろう。しかしながら、手洗いの臨床的役割については論争があり、成人を対象とした質の高いランダム化比較試験のエビデンスは限定的である。この研究の目的はインターネットにより提供される手洗いの改善介入が成人やその同居家族の呼吸器感染症を抑制できるか検討したランダム化比較試験である。

P;英国GPを受診している20066人
E:WEBベースの手洗い改善介入へのアクセス(手洗いに対する意欲増強、手洗い行動の改善、ネガティブな心境への対処、個別に合わせたフィードバック等)10040人
C:WEBベースの介入プログラムにアクセスしない10026人
O:16週における呼吸器感染発症

・盲検化:PROBE
・統計解析:修正ITT解析(結果の過大評価注意)
・ランダム化:されている。本研究ではクラスターランダム化が望ましいのでは?抄録からではランダム化の手法について詳細情報得られず
・追跡:フォローアップは84%(16908人)

アウトカム WEBベース介入あり WEBベース介入なし リスク比[95%CI]
呼吸器感染症 4242/8241(51%) 5135/8667(59%) 0.86[0.83~0.89]


信頼区間の幅が非常に短い。症例数が多いためか。サンプル計算について抄録からは確認できず。ランダム化の保持の問題や本研究で通常のランダム化が適切だったかどうかは議論の余地がある。呼吸器感染症発症というアウトカムとPROBEも適切だったのだろうか。

■術後疼痛における音楽の効果■
Hole J.et.al. Music as an aid for postoperative recovery in adults: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2015 Aug 12. [Epub ahead of print]. PMID: 26277246
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26277246
背景と研究デザイン:音楽は非侵襲的で、安全であり安価な介入である。音楽が手術後の状態の回復に効果的かどうかをシステマテックレビュー&メタ分析で検討した。

P:73のランダム化比較試験に参加した手術後の患者。中枢神経系や頭部、頸部の手術を除いた。元論文の言語制限なく組み入れた。
E:手術前、手術中、手術後の音楽
C:音楽なしの標準ケア、非薬物療法
O:術後疼痛、不安、鎮痛薬使用、患者満足度、入院期間

アウトカム 標準化平均差[95%信頼区間]
術後疼痛 -0.77[-0.99~-0.56]
不安 -0.68[-0.95~-0.41]
鎮痛の実施 -0.37[-0.54~-0.20]
患者満足度 1.09[0.51~1.68]
入院期間 -0.11[-0.35~0.21]


入院期間を長引かすことなく、術後疼痛、不安、鎮痛手技を減らし、患者満足度を向上させるという結果

■シートベルトに関する法律と交通事故■
Lee LK.et.al. Motor Vehicle Crash Fatalities in States With Primary Versus Secondary Seat Belt Laws: A Time-Series Analysis. Ann Intern Med. 2015 Aug 4;163(3):184-90. PMID: 26098590
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26098590
背景と研究デザイン:自動車による衝突事故(すなわち交通事故)は米国において、いまだ障害関連死亡の大きな要因である。米国では自動車運転手がシートベルトを着用していないという事のみで違反切符を切られるプライマリシートベルト法と、シートベルトを着用せずに他の違反を起こした時に違反切符を切られるセカンダリシートベルト法がある。2001年から2010年にかけて、米国各州ではセカンダリ法からプライマリ法への移行が進んだ。2001年にはプライマリ法が施行されていたのが16州(セカンダリ法33州)であったが、2010年には30州(セカンダリ法19州)までに増えた。この変化が交通事故発生率にどのような影響を及ぼしたのか、後ろ向き解析を行ったのが本研究である。

P:自動車運転を行った人
E:プライマリ法16州で実施していた2001年
C:プライマリ法30州で実施していた2010年
O:人口ベースの交通事故死亡率

アウトカム 2001年 2010年 発生率比[95%CI]
交通事故死亡率 14.6/10万人年 9.7/10万人年 0.83[0.78~0.90]


シートベルト着用の義務化は交通事故死亡を減らす可能性がある。

■生きがいと死亡リスク■
Tanno K.et.al. Associations of ikigai as a positive psychological factor with all-cause mortality and cause-specific mortality among middle-aged and elderly Japanese people: findings from the Japan Collaborative Cohort Study. J Psychosom Res. 2009 Jul;67(1):67-75.PMID: 19539820
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19539820
背景と研究デザイン:心身において前向きな感情である生きがいという要素と死亡との関連を検討したコホート研究(JACC Study)

P:40歳~79歳の男性30,155人、女性43,117
E:アンケート調査により生きがいがあると回答した人
C:生きがいについて、普通もしくははっきり言えないと回答した人
O総死亡

追跡期間:平均12.5年
交絡補正:年齢、BMI、喫煙、身体活動、睡眠時間、教育、職業、配偶者の有無、 知覚精神的ストレス、病歴。

総死亡
・男性:ハザード比0.85 [95%信頼区間0.80-0.90]
・女性:ハザード比0.93 [95%信頼区間0.86-1.00]

■生きがいと死亡リスク②■
Sone T.et.al. Sense of life worth living (ikigai) and mortality in Japan: Ohsaki Study. Psychosom Med. 2008 Jul;70(6):709-15.MID: 18596247
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18596247
背景と研究デザイン:生きがい、と死亡リスクを検討した前向きコホート研究(大崎コホート)

P:43,391人の日本人
E:生きがいなし
C:生きがいあり
O:総死亡
追跡期間7年

生きがいの無い人たちは生きがいのある人たちに比べて総死亡、心血管死亡増加
総死亡▶調整ハザード比:1.5[95%信頼区間1.3-1.7]
心血管死亡▶調整ハザード比1.6[95%信頼区間1.3-2.0]

■2型糖尿病患者への介入■
Seidu S.et.al. Effects of glucose-lowering and multifactorial interventions on cardiovascular and mortality outcomes: a meta-analysis of randomized control trials. Diabet Med. 2015 Aug 18. [Epub ahead of print] PMID: 26282461
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26282461
背景と研究デザイン:心血管もしくは死亡というアウトカムに対する厳格な血糖コントロール単独、もしくは多面的な介入の効果についてはあまりよく分かっていない。さらに心血管アウトカムや死亡における糖尿病の罹病期間の交互作用についても不明である。2型糖尿病における厳格な血糖コントロール単独、もしくは多面的な介入のひとつとしての厳格な血糖コントロールが非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管疾患死亡、総死亡にもたらす影響を検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:19のランダム化比較試験に参加した2型糖尿病患者
E:厳格血糖コントロール(単独もしくは多面的介入の一つとして)
C:標準血糖コントロール
O非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管疾患死亡、総死亡

標準ケアと比較したリスク比[95%信頼区間]は以下の通り

①厳格血糖コントロール
・心筋梗塞:0.90[0.83~0.96]
・脳卒中1.00[0.94~1.06]
・心血管死亡1.00[0.90~1.11]
・総死亡1.00[0.94~1.06]
これまでの研究と同様、心筋梗塞がわずかに減るが他のアウトカムはほぼ同等という結果

②多面的介入
・心筋梗塞0.66[0.38~1.03]
・脳卒中0.53[0.32~0.87]
・心血管死亡0.72[0.46~1.14]
・総死亡0.82[0.64~1.05]

ベースラインで心血管死亡リスクの高い患者では有用かもしれないが、糖尿病平均罹病期間との関連は見られず。また厳格血糖コントロール単独よりは多因子的介入の方がベネフィットがあるかもしれない。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ニコランジルと角膜障害■
Fraunfelder FW.et.al. Conjunctival and corneal ulceration associated with nicorandil. Cutan Ocul Toxicol. 2014 Jun;33(2):120-1. PMID: 23841868
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23841868
ニコランジルの使用と結膜・角膜潰瘍に関する症例集積研究
眼に関する有害事象13報告を検討。視覚異常5報、角膜潰瘍4報、結膜潰瘍4報がニコランジルとの関連を疑われた。

13例のうち男性は8人。平均年齢は75.4歳。平均投与量は21.6 mg/日

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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シタグリプチンに関する観察研究が複数出ていました。台湾はこのところ、非常に興味深い研究を量産しています。日本でもこのような情報を発信できると良いのですが。

生きがいと死亡リスクにかんして2つも研究があるとは知りませんでした。探せばもっと見つかるかもしれませんが、なにか生きがいというものはやはり必要なのでしょうねぇ。

次回はビルダグリプチンを徹底解剖です。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Sep.2;1(33)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-市中肺炎に対するステロイドの効果‐

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[ポイント]
■市中肺炎に対する全身ステロイドの投与は臨床的安定までの期間、入院期間を1日程度短縮する可能性があるが、臨床的な意義については議論の余地がある。
■市中肺炎に対する全身ステロイドの投与は合併症リスクをわずか減らす可能性がある。
■市中肺炎に対する全身ステロイドで治療失敗が少ない可能性が示唆されているが、臨床的意義は無名な部分が多い。
■市中肺炎に対する全身ステロイドでわずかに死亡リスク減少傾向が示唆される
■市中肺炎に対する全身ステロイドで治療が必要な高血糖は多い。

[イントロダクション]
感染症に対するステロイドの投与と言うのは病態生理や薬理学的に考えると、効果があるのかどうか、やや疑わしい印象もありますよね。静注用、経口ともにステロイド製剤の添付文書には有効な抗菌剤の存在しない感染症等には感染症を悪化させる懸念があるとして「原則禁忌」となっています。しかしながらこれは一律に適用できる理論ではなく、肺炎球菌による成人の細菌性髄膜炎に対するステロイドの使用で合併症や死亡が減ることは有名ですよね。しかしながら一般的には感染症に対するステロイドの使用にはやや抵抗があるという事もあるでしょう。

理論的には肺炎により引き起こされた炎症応答を抑制する可能性があるステロイドは臨床的に有用な可能性もあります。このような感染症に対するステロイドのベネフィットについては議論の余地がありそうです。市中肺炎に対するステロイドのベネフィットを報告した研究も存在します。(※1)~(※4) ただ、有効性を示唆した研究では重要患者が除外されていたものも多いようです。また観察研究では明確な効果が示されていない報告も存在します。(※5)

過去に報告されている、市中肺炎とステロイドの効果を検討した9つのランダム化比較試験のメタ分析では、やはり明確な効果が期待できないもの(オッズ比0.62,[95%信頼区間0.37~1.04]、サブ解析では、重症患者において死亡が減る可能性が示唆されました。(オッズ比0.26[95%信頼区間0.11~0.64](※6)

これまでの示唆から、特に重症肺炎に対しては全身ステロイドの使用が肺炎治療アウトカムに良い結果をもたらすという仮説が提起されます。今年(2015年)にはいり、このテーマに関する論文が複数報告されていますので、ここで整理しておきます。

[重症市中肺炎に対するメチルプレドニゾロンの効果(RCT)]

重症市中肺炎に対するメチルプレドニゾロンの効果を検討した2重盲検ランダム化比較試験が報告されています。(※7)

この研究はスペインにおける3つの医療機関より、重症市中肺炎を発症し、炎症反応(CRPが150mg/L以上)が高い18歳以上の患者120人が対象となりました。(平均64.5~66.1歳、男性57~66%)

入院後36時間以内にメチルプレドニゾロン0.5mg/kgを12時間かけて静注する群(61人)と、院後36時間以内にプラセボを12時間かけて静注する群に(59人)ランダム化し、治療失敗を検討しています。治療失敗は大きく早期治療失敗と後期治療失敗に分けられており、その定義は以下の通りです。

[早期治療失敗]0~72時間
①臨床的増悪によるショックの発症
②ベースライン時において不要であった侵襲的人工呼吸器の必要性
③72時間以内の死亡
[後期治療失敗]72~120時間
①X線検査により確認された増悪
②持続的な重度呼吸不全
③ショック発症
④ベースライン時において不要であった侵襲的人工呼吸器の必要性
⑤72~120時間内の死亡

なお治療は両群とも5日間行われています。サンプルサイズはパワー80%αlevel0.05で各群60例と計算されており、必要症例数をほぼ満たしています。統計解析はintention-to-treat。試験完遂は112例(93%)と大きな脱落はありません。主な結果を以下にまとめます。

CAPに対するメチルプレドニゾロン
アウトカム E群 C群 差[95%信頼区間]
治療失敗 8人/61人(13%) 13人/59人(31%) 18%[3~32]
早期治療失敗 6人/61人(10%) 6人/59人(10%) 0%[-10~11]
後期治療失敗 2人/61人(3%) 15人/59人(25%) 22%[10~34]
院内死亡 6人/61人(10%) 9人/59人(15%) 5%[-6~17]

一次アウトカムである治療失敗は有意に減少しました。アウトカムの中身を見てみると、特に後期治療失敗が減少しているようです。なお院内死亡については少ない傾向にとどまりました。サンプルサイズの問題もあるでしょう。高血糖については両群で明確な差を認めませんでした。

炎症反応が高値の重症市中肺炎患者では36時間以内のステロイド静注で予後改善が見込める可能性が示唆されています。ただ、プライマリアウトカムが複合アウトカムとなっていますが、結合しているアウトカム数がやや多く、臨床的意義を明確に推定できない印象です。画像所見などの代用のアウトカムも含まれており、このstudyだけでステロイドの使用を積極的に行うべきかは議論の余地があるでしょう。

[市中肺炎に対する経口プレドニゾン(本邦未承認)の効果(RCT)]

プレドニゾンは、本邦未承認ですが、肝臓で代謝されプレドニゾロンとなります。このプレドニゾンをもちいて短期的なステロイドの使用が市中肺炎により入院した患者の臨床転帰を改善するかどうかを検討した2重盲検ランダム化比較試験が報告されています。(※8)

この研究は、スイスにおける7つの医療機関において18歳以上で市中肺炎で入院した患者785人を対象としたものです。プレドニゾン1日50mgを7日間投与する群(392人)とプラセボを投与する群(393人)にランダム化し、バイタルが24時間安定する臨床的安定までに要する時間(中央値:日)を検討しました。なお統計解析はintention to treatです。主な結果は以下の通りです。

CAPに対するプレドニゾン
アウトカム E群 C群 結果[95%信頼区間]
臨床的安定[IQR] 3.0日[2.5~3.4] 4.4日[4.0~5.0] ハザード比1.33[1.15~1.50]
30日以内の合併症 11人(3%) 22人(6%) オッズ比0.49[0.23~1.02]
院内高血糖 76人(19%) 43人(11%) オッズ比1.96[1.31~2.93]


肺炎合併症を増やさず、臨床的安定を早める(中央値で1.4日)としていますが、インスリンを要する院内高血糖の発症はE群で増加に関連していました。有害事象については症例数が少なく、このstudyをもって安全とは言い切れない部分もあるでしょう。少ない症例数にも関わらず、高血糖が増加している点には注意したいです。臨床的安定が中央値で1.4日早まるというのもどう解釈してよいかわかりにくいところはあります。入院コストなど社会的意義はあるのかもしれませんが、治療として有効な手段かどうかは、これまでのstudyから明確に結論することは難しい印象です。

[市中肺炎入院患者に対するステロイドの効果(メタ分析)]

Ann Intern Med.よりメタ分析が出ました。(※8) この研究は市中肺炎で入院した成人患者を対象としたランダム化比較試験のメタ分析です。2名のレビューアーが独立してデータを評価するなど配慮されています。解析対象患者の年齢は中央値で60歳代、男性は60%程度でした。主な結果を以下にまとめます。

市中肺炎に対するステロイド
アウトカム 統合研究数 解析対象数 リスク比[95%信頼区間]
総死亡 12 1974人 0.67 [0.45~1.01]
人工呼吸の必要性 5 1060人 0.45 0.26~0.79]
急性呼吸窮迫症候群 4 945人 0.24 [0.10~0.56]


上記いずれのアウトカムも「moderate certainty」となっていて、その確からしさは“中等度”です。代用のアウトカムかもしれませんが以下のアウトカムも検討されています。いずれも「high certainty」となっていて、その確からしさは“高度”となっています。

市中肺炎に対するステロイド
アウトカム 統合研究数 解析対象数 平均差[95%信頼区間]
臨床的安定化 5 1180人 -1.22 日[-2.08~-0.35]
入院期間 6 1499人 -1.00 日[-1.79~-0.21
治療を要する高血糖 6 1534人 リスク比1.49 [1.01~2.19];


臨床的安定化までの期間や、入院期間に関しは「high certainty」で有意に減っているようです。概ね1日前後というところでしょうか。ただステロイドを投与できるような重篤な有害事象が懸念されない患者を対象としている点には注意したいところです。(limitationにも記載があります)

[市中肺炎に対するステロイドの効果]

これまでの示唆を簡単に整理してみましょう。
[治療失敗]
減少する可能性があるが、画像所見など臨床的意義と直結しないアウトカムも含まれており、現段階で論文が示唆する効果が臨床上どの程度のものかよく分からない。
[臨床的安定]
中央値で1日前後短縮する可能性がある。しかしながら、総死亡など実際の予後に与える影響はこのアウトカムからではよく分からず、1日という時間が臨床的お意義のあるものかどうかも分かりにくい。コストの面でメリットがあるかも知れない。

[合併症]
人工呼吸器の必要性や急性呼吸窮迫症候群などの合併症が減るかもしれない。

[総死亡]
明確な差は示されていないが、わずかに減少傾向にある。

[高血糖]
治療が必要な高血糖は有意に上昇する。その他有害事象については検討症例数が少なく、検出できていない可能性がある。

現時点で、積極的な推奨は控えたいと思います。

[参考文献]
(※1) Confalonieri M.et,al, Hydrocortisone infusion for severe community-acquired pneumonia: a preliminary randomized study. Am J Respir Crit Care Med. 2005 Feb 1;171(3):242-8. PMID: 15557131
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15557131
(※2) Garcia-Vidal C.et.al. Effects of systemic steroids in patients with severe community-acquired pneumonia. Eur Respir J. 2007 Nov;30(5):951-6.PMID: 17690125
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17690125
(※3) Fernández-Serrano S.et.al. Effect of corticosteroids on the clinical course of community-acquired pneumonia: a randomized controlled trial.Crit Care. 2011 Mar 15;15(2):R96. PMID: 21406101
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21406101
(※4) Meijvis SC.et.al. Dexamethasone and length of hospital stay in patients with community-acquired pneumonia: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2011 Jun 11;377(9782):2023-30. PMID: 21636122
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21636122
(※5) Salluh JI.et.al. Impact of systemic corticosteroids on the clinical course and outcomes of patients with severe community-acquired pneumonia: a cohort study. J Crit Care. 2011 Apr;26(2):193-200. PMID: 20889284
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20889284
(※6) Nie W.et.al. Corticosteroids in the treatment of community-acquired pneumonia in adults: a meta-analysis. PLoS One. 2012;7(10):e47926. PMID: 23112872
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23112872
(※7)Torres A.et.al. Effect of corticosteroids on treatment failure among hospitalized patients with severe community-acquired pneumonia and high inflammatory response: a randomized clinical trial. JAMA. 2015 Feb 17;313(7):677-86. PMID: 25688779
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25688779
(※8)Blum CA, et.al. Adjunct prednisone therapy for patients with community-acquired pneumonia: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial. Lancet. 2015 Jan 16. pii: S0140-6736(14)62447-8. PMID: 25608756
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25608756
(※8) Siemieniuk RA.et.al. Corticosteroid Therapy for Patients Hospitalized With Community-Acquired Pneumonia: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2015 Aug 11. doi: 10.7326/M15-0715. [Epub ahead of print] PMID: 26258555
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26258555


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■ビルダグリプチンの有効性■
McInnes G.et.al. Cardiovascular and heart failure safety profile of vildagliptin: a meta-analysis of 17000 patients. Diabetes Obes Metab. 2015 Aug 7. doi: 10.1111/dom.12548. [Epub ahead of print] PMID: 26250051
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26250051
背景と研究デザイン:ビルダグリプチンの心血管アウトカムを検討したメタ分析。

P:40の2重盲検ランダム化比較試験に参加した17466人(平均57歳、BMI30.5 、HbA1c8.1% 、罹病期間5.5年)
E:ビルダグリプチンの投与9599人
C:プラセボもしくはビルダグリプチンの投与なし7847に
O:主要心血管イベント(MACE:心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡)

アウトカム E群 C群 リスク比[95%信頼区間]
MACE 83人(0.85% 85人(1.2%%) 0.82[0.61~1.11]
心不全 41人(0.43%) 32人(0.45%) 1.08[0.68~1.70]


■乳癌治療におけるアロマターゼ阻害薬とタモキシフェン■
Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group (EBCTCG). Aromatase inhibitors versus tamoxifen in early breast cancer: patient-level meta-analysis of the randomised trials. Lancet. 2015 Jul 23. pii: S0140-6736(15)61074-1. PMID: 26211827
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26211827
背景と研究デザイン:早期乳癌治療におけるアロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの有効性を比較したIPDメタ分析

P:エストロゲン受容体陽性の乳癌を有する閉経後女性31920人
E:アロマターゼ阻害薬の投与
C:タモキシフェンの投与
O:乳癌再発、乳癌死亡、再発なしの死亡、総死亡

アロマターゼ阻害薬5年対タモキシフェン治療5年の結果のみまとめる。

表タイトル
アウトカム リスク比[95%信頼区間]
再発 0.80[0.73~0.88]
乳癌死亡 0.85[0.75~0.96]
再発なしの死亡 0.94[0.82~1.07]
総死亡 0.89[0.8~0.97]


タモキシフェンの効果は
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/26739310.html
パロキセチンとタモキシフェンの併用は
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/22260962.html

■急性筋骨格痛への局所NSAIDs■
Derry S.et.al. Topical NSAIDs for acute musculoskeletal pain in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jun 11;6:CD007402. PMID: 26068955
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26068955
背景と研究デザイン:局所NSAIDsの急性筋骨格痛への有効性を検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:16歳以上で、筋骨格痛を有する成人
E:ゲル、クリーム、プラスター製剤など局所NSAIDsの使用
C:プラセボ
O:臨床的治療成功

局所NSAIDsで臨床的治癒成功が26%~64%多い。(NNT3.7~8.3)
特にジクロフェナク局所外用の効果が高い
リスク比1.60[1.49~1.72]、NNT3.7[3.2~4.3]
局所有害事象に明確な差を認めず。

■PTSDに対するマインフドフルネス■
Polusny MA.et.al. Mindfulness-Based Stress Reduction for Posttraumatic Stress Disorder Among Veterans: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015 Aug 4;314(5):456-65. PMID: 26241597
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26241597
背景と研究デザイン:退役軍人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するマインドフルネスベースのストレス低減介入の効果を検討したランダム化比較試験

P:PTSDを有する退役軍人116人(男性84%、平均58.5歳)
E:マインドフルネスベースのストレス低減療法(58人)
C:現在中心グループセラピーresent-centered group therapy(58人)
O:PTSDの重症度(3、6、9、17週で評価。スコアレンジは17~85点)
追跡期間17週
統計解析:全例がITT解析

マインドフルネスベースのストレス低減療法で、治療中および2か月後の自己申告によるPTSD症状の重症度が改善した

期間 E群 C群 スコア改善の群間差
研究開始 63.6 58.8
3週 63.9 61.7 2.66[-0.36~5.68]
6週 61.3 60.7 4.45[1.37~7.52]
治療期間中 55.7 55.8 4.95[1.92~7.99]
2か月追跡 54.4 56.0 6.44[3.34~9.53]


■日本在宅医療現場のポリファーマシー■
Onda M,.et.al. Identification and prevalence of adverse drug events caused by potentially inappropriate medication in homebound elderly patients: a retrospective study using a nationwide survey in Japan. BMJ Open. 2015 Aug 10;5(8):e007581PMID: 26260347
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26260347
背景と研究デザイン:日本の在宅現場における潜在的不適切処方の実態調査。

P:1890の薬局における4815人の患者データ
O:潜在的不適切処方

潜在的に不適切な処方は48.4%に認められた。なおそのうち8%において同薬剤によると思われる有害事象が発生していた。特に抗コリン作用を有する抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、スルピリド、ジゴキシンが原因薬剤であった。

■市中肺炎に対するステロイドの効果■
Siemieniuk RA.et.al. Corticosteroid Therapy for Patients Hospitalized With Community-Acquired Pneumonia: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2015 Aug 11. doi: 10.7326/M15-0715. [Epub ahead of print] PMID: 26258555
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26258555
背景と研究デザイン:市中肺炎に対する全身ステロイドの効果を検討したメタ分析(CLINICAL EVIDENCE SUMMARIESで紹介したものと同じ)

P:ランダム化比較試験に参加した市中肺炎患者(年齢60歳、男性60%)
E:ステロイドの投与
C:ステロイドの投与なし
O:総死亡、人工呼吸器の必要性、急性呼吸窮迫症候群、臨床的安定までの期間、入院期間、有害事象等

市中肺炎に対するステロイド
アウトカム 統合研究数 解析対象数 リスク比[95%信頼区間]
総死亡 12 1974人 0.67 [0.45~1.01]
人工呼吸の必要性 5 1060人 0.45 0.26~0.79]
急性呼吸窮迫症候群 4 945人 0.24 [0.10~0.56]


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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■シタグリプチンによる斑丘疹型薬疹■
Nakai N.et.al. Maculopapular-type drug eruption caused by sitagliptin phosphate hydrate: a case report and mini-review of the published work. PMID: 24957113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24957113
シタグリプチンによる斑丘疹型薬疹に関する症例報告とレビュー

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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市中肺炎に対するステロイド投与、実際のプラクティスにはやや反映しづらいなあというのが個人的な感想です。現時点では積極的推奨とはならないかなと思っています。ただ、今後のエビデンスには注目したいと思います。

さて季節もかわり9月となりました。夏が終わり、今年も後半戦に突入しているんですねぇ。風邪などひかないように頑張りたいと思います。

9月12日(土曜)はCMECワークショップです。今回は「医療者と医療者ではない人のための勉強会」というテーマです。僕もお手伝いさせていただく予定です。
http://cmecjclub.blogspot.jp/2015/07/6-cmec.html

是非、ご参加ください。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Aug.26;1(32)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-特集:昼寝は有害でしょうか?‐

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[ポイント]
■昼寝は決して健康的というわけではありません
■昼寝と死亡リスクとの関連が示唆されています。
■昼寝は1時間以内にとどめることが望ましいといえます。

[昼寝苦しい夜に]
夏休み特集最終回は、あまり臨床とは関係ありませんが、昼寝の有害リスクについてまとめてみます。僕が毎週木曜日に連載させていただいている日刊ゲンダイの「役に立つオモシロ医学論文」のネタにも使ったテーマです。

この原稿を書いているのは8月1週目ですが、夜中も気温が下がらず、寝苦しい夜が続いています。なかなか寝付けず、睡眠不足にもなりがち、なんて方もいらっしゃるでしょう。どうも昼食後は眠気が襲ってきますが、昼寝は健康的、なんでしょうか。

[日本の観察研究から]
昼寝と死亡、心血管リスクなどの関連については、シエスタという長時間の昼寝をとることが日常的な地中海地域や中南米での研究がいくつか報告されているようですが、その結果にはばらつきがあり、昼寝が健康に良いのか悪いのか不明な部分も多いとされています。

JACC Studyは日本人の生活習慣ががんとどのように関連しているかを明らかにすることを目的としたコホート研究です。そのJACC studyから昼寝と死亡リスクや心血管リスクを検討したコホート研究が報告されています。(※1)

このコホート研究は、脳卒中や心臓病、がんの既往がなく、夜間に労働をしていない、40歳~79歳の非労働者や日中の労働者67129人(男性27755人、平均55.3歳~59.5歳)を対象に、昼寝と死亡リスク、心血管疾患、がんの発症を検討したものです。追跡期間は中央値で14.3年でした。

交絡因子は年齢、性別、睡眠時間、高血圧治療、糖尿病既往、治療中の疾患、喫煙状況、BMI、20歳からの体重減少、血圧、精神的ストレス、抑うつ症状、歩行状況、教育状況、勤務時間で調整しています。

その結果昼寝は総死亡リスクの有意な上昇を示しました。(ハザード比1.19[95%信頼区間1.14–1.24])。また全心血管疾患も同様に上昇しています。(ハザード比1.31[95%信頼区間1.22–1.42])主な結果を以下にまとめます。

アウトカム 昼寝あり 昼寝なし HR(95% CI)
総死亡 4395 5248 1.19(1.14–1.24)
心血管死亡 1411 1441 1.31(1.22–1.42)
がん 1473 2170 1.03(0.96–1.10)


昼寝についてはアンケートで「はい」か「いいえ」なので、昼寝の時間までは考慮されておらず、やや解釈が難しい印象です。

[昼寝時間でリスクは変わる?]
英国で検討されたpopulation-basedの前向きコホート研究では昼寝の時間も考慮した解析がなされています。(※2)

対象となったのは40–79歳の男性7,161人(昼寝なし4,508人、昼寝1時間未満2,379人、昼寝1時間以上274人)および女性9,213人(昼寝なし6,985人、昼寝1時間未満2,033人、昼寝1時間以上195人)16,374人です。13年間の追跡を行っています。交絡因子への配慮は、年齢、性別、社会階級、教育レベル、婚姻状況、雇用状況、BMI、身体活動レベル、喫煙状況、アルコール摂取、うつ症状、自己報告による健康状態、睡眠薬、抗うつ薬、COPD治療薬の使用、夜間におけるベッドで過ごす時間、睡眠時無呼吸とかなり入念な調整を行っています。主な結果を以下に示します。

ハザード比[95%信頼区間]
アウトカム 昼寝なし 昼寝1時間未満 昼寝1時間以上
総死亡 Referent 1.14[1.02~1.27] 1.32[1.04~1.68]
心血管疾患 Referent 1.00[0.81~1.22] 0.92[0.57~1.48]
がん Referent 1.18[1.00~1.41] 1.27[0.84~1.92]


総死亡はリスク増加を示していますが、心血管疾患やがんに関しては明確な差は見られませんでした。また昼寝時間が1時間以上のほうが死亡リスクは高い印象です。

[メタ分析を見てみよう]
今年に入りメタ分析が複数出ました(※3)~(※5)いつものように横断的にまとめてしまいます。

相対比[95%信頼区間]
PMID[統合研究数] 総死亡 心血管死亡 がん
26051864[12](※3) 1.22[1.14-1.31] 1.2[0.96-1.50] 1.07[0.99-1.15]
25937468[7](※4) 1.15[I1.07-1.24] 1.19[0.97-1.48]
26158892[11](※5) 1.27 [1.11-1.45],

(※4)の文献ではやはり1時間以上の昼寝で有意なリスク上昇を示唆しています。(※5)のデータは昼寝60分以上の相対リスクです。昼寝60分未満では有意な差は出ませんでした。昼寝は1時間以内、というのがよさそうです。


[参考文献]
(※1) Tanabe N, Iso H, Seki N.et.al. Daytime napping and mortality, with a special reference to cardiovascular disease: the JACC study. Int J Epidemiol. 2010 Feb;39(1):233-43. PMID: 19900974
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19900974
(※2) Leng Y, Wainwright NW, Cappuccio FP.et.al. Daytime napping and the risk of all-cause and cause-specific mortality: a 13-year follow-up of a British population. Am J Epidemiol. 2014 May 1;179(9):1115-24. PMID: 24685532
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24685532
(※3) Zhong G, Wang Y, Tao T.et.al. Daytime napping and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: a meta-analysis of prospective cohort studies. Sleep Med. 2015 Jul;16(7):811-819. PMID: 26051864
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26051864
(※4) Liu X, Zhang Q, Shang X. Meta-analysis of self-reported daytime napping and risk of cardiovascular or all-cause mortality. Med Sci Monit. 2015 May 4;21:1269-75. PMID: 25937468
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25937468
(※5)Yamada T, Hara K, Shojima N.et.al. Daytime Napping and the Risk of Cardiovascular Disease and All-Cause Mortality: A Prospective Study and Dose-Response Meta-Analysis. Sleep. 2015 Jun 22. pii: sp-00105-15. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26158892

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■閉経後女性に対するビタミンD3製剤の有用性■
Hansen KE, Johnson RE, Chambers KR.et.al. Treatment of Vitamin D Insufficiency in Postmenopausal Women: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2015 Aug 3. [Epub ahead of print] PMID: 26237520
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26237520
背景と研究デザイン:閉経後女性に対するコレカルシフェロールの有用性を検討した2重盲検ランダム化比較試験

P:75歳以下の閉経後女性。骨粗鬆症を有さず25(OH)Dレベルが14~27 ng/mLの230人
E:ビタミンD3 800 IU投与
E:ビタミンD3
C:プラセボの投与76人
O:1年後のカルシウム吸収の変化、骨密度、筋肉量

高用量のビタミンD3製剤ですら、カルシウム吸収をわずかに改善するものの、骨密度や筋肉量に影響を与えない。転倒回数にも差はない。代用のアウトカムすら改善せずという結果。

■降圧薬と認知機能■
Peters R, Collerton J, Granic A.et.al. Antihypertensive drug use and risk of cognitive decline in the very old: an observational study - The Newcastle 85+ Study. J Hypertens. 2015 Jul 31. [Epub ahead of print] PMID: 26237554
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26237554
背景と研究デザイン:降圧薬と認知機能低下の度合いを検討した人口ベースコホート研究

P:高血圧を有する85歳以上の高齢者238人
E:カルシウム拮抗薬の使用
C:他の降圧薬の使用
O:Standardized Mini-Mental State Exam (SMMSE)
追跡期間:3年
交絡調整:年齢、性別、教育、ベースラインSMMSEスコア、喫煙、BMI、ベースラインの血圧、および脳血管イベント

カルシウム拮抗薬は他の降圧薬に比べて認知機能低下が少ない。
・SMMSEスコア低下率は1.29 点[95%信頼区間0.16-2.42] 低い

■ピオグリタゾンと膀胱がんリスク■
Lewis JD, Habel LA, Quesenberry CP.et.al. Pioglitazone Use and Risk of Bladder Cancer and Other Common Cancers in Persons With Diabetes. JAMA. 2015 Jul 21;314(3):265-77. PMID: 26197187
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26197187
背景と研究デザイン:ピオグリタゾンと膀胱がんリスクについては別の機会にまとめたい。本研究は、ピオグリタゾンと膀胱がんのほか10のがんリスクについて検討したCohort and nested case-control analyses

P:コホートは40歳以上の193,099人
ケースコントロールは464 case patients and 464 matched controls
E:ピオグリタゾ投与34,181 (median duration, 2.8 years)
C:ピオグリタゾン投与なし。
O:膀胱がん発症

膀胱がんのハザード比は1.06[95%信頼区間0.89-1.26]と明確な差を認めず。ケースコントロール解析でも同様オッズ比1.18[95%信頼区間0.78-1.80]
なお他のがんについては前立腺がんとすい臓がんリスク増加。アウトカムが複数設定されているためαエラーの可能性も。今後の検討に注目。

■透析患者におけるスピロノラクトン■
Lin C, Zhang Q, Zhang H.et.al. Long-Term Effects of Low-Dose Spironolactone on Chronic Dialysis Patients: A Randomized Placebo-Controlled Study. J Clin Hypertens (Greenwich). 2015 [Epub ahead of print] PMID: 26224543
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26224543
背景と研究デザイン:慢性的な透析患者におけるスピロノラクトンの有用性を検討したランダム化比較試験

P:末期腎疾患を有する非心不全透析患者253人
E:スピロノラクトン25mg 125人
C:プラセボ128人
O:心・脳血管疾患、aborted cardiac arrest、心臓突然死の複合アウトカム
追跡期間:2年

複合アウトカムはE群7.2% 、C群18.0%; 調整ハザード比 0.42[95%信頼区間0.26-0.78]

■辛い食べ物と死亡リスク■
Lv J, Qi L, Yu C.et.al. Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study. BMJ. 2015 Aug 4;351:h3942. PMID: 26242395
背景と研究デザイン:辛い食べ物と死亡リスクを検討した、人口ベース前向きコホート研究

P:がんや心臓病、脳卒中の既往のない30~79歳の男性199 293と女性288 082
E:自己報告に基づく辛い食べ物の摂取あり(週に1~2日、週に3~5日、週に6~7日)
C:辛い食べ物の摂取なし(週に1回未満)
O:死亡
追跡中央値7.2年
交絡因子:年齢、性別 、教育レベル、配偶者の有無、アルコールの消費、喫煙状況、身体活動、BMI、
肉、新鮮な果物、野菜、の摂取頻度、ベースラインでの高血圧と糖尿病、閉経状態

アウトカム 週に1~2日 週に3~5日 週に6~7日
総死亡 0.90(0.84 to 0.96) 0.86 (0.80 to 0.92) 0.86 (0.82 to 0.90)
がん 0.92 (0.83 to 1.03) 0.97 (0.87 to 1.08) 0.92 (0.85 to 0.99)
脳血管疾患 1.03 (0.89 to 1.20) 0.86 (0.73 to 1.01) 0.96 (0.87 to 1.07)
虚血性心疾患 0.82 (0.67 to 1.00) 0.75 (0.61 to 0.94) 0.78 (0.67 to 0.89)
糖尿病 0.94(0.64 to 1.40) 0.60 (0.36 to 0.99) 0.82 (0.63 to 1.05)


■ベンゾジアゼピン系薬剤と認知症リスク■
Imfeld P, Bodmer M, Jick SS.et.al. Benzodiazepine Use and Risk of Developing Alzheimer's Disease or Vascular Dementia: A Case-Control Analysis. Drug Saf. 2015 Jun 30. [Epub ahead of print] PMID: 26123874
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26123874
背景と研究デザインベンゾジアゼピン系薬剤と認知症リスクとの関連が指摘されている
(参考)BZD系薬を飲み続けると認知症になるって本当ですか?
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/ebm/201504/541786.html
しかしながら研究手法の限界がこの因果関係を決定づけていない。英国のClinical Practice Research Datalink (CPRD)のデータベースを用いたケースコントロール解析

P:
症例:新規にアルツハイマー病・血管認知症を発症した65歳以上の26,459人
対照:年齢、性別、暦年等でマッチングしたコントロール(1;1)
E:ベンゾジアゼピン系薬剤使用あり
C:ベンゾジアゼピン系薬剤使用なし
O;アルツハイマー症認知症もしくは血管認知症の発症

アルツハイマー型認知症診断前1年以内にベンゾジアゼピン使用を開始したばあいにはリスクの上昇が示唆されたが(調整オッズ比2.20[95%CI:1.91~2.53])診断前2~3年以内に開始したケースでは明確な関連は示されなかった。(調整オッズ比0.99[95%CI:0.84~1.17])血管認知症でもほぼ同様。前駆期におけるベンゾジアゼピン使用開始を考慮しても、ベンゾジアゼピンの長期使用はリスクとの関連見られず。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■シタグリプチンと白血球減少症■
Pitocco D.et.al. Severe leucopenia associated with Sitagliptin use. Diabetes Res Clin Pract. 2011 Feb;91(2):e30-2.PMID: 21035885
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21035885
2型糖尿病患者へのシタグリプチン使用が原因と考えられる、重篤な白血球減少症の症例報告

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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夏休み特集最終号です。最近は昼寝を取る余裕もない日々が続いていますが、やはり昼食後の昼寝時間はなんとも至福の時間ではあります。まあ現実的に1時間以上も寝ているわけにはいかないでしょうが、昼寝は意外にも死亡リスクを含む予後悪化という懸念があるのですねぇ。これは逆の因果関係、すなわち結果→原因の関連かもしれないので、何とも言えないところではありますが。

ベンゾジアゼピンと認知症リスクに関しても新しい報告が出ています。実際の因果関係はどうなんでしょうか。前向きに長期追跡した大規模コホート研究が出てくれば良いなあと思っています。ただ大規模コホートを用いた症例対照解析は、なかなか侮れない解析方法であり、多くの場合でコホート研究と同様の結果をはじき出してきます。このテーマは引き続き注目していきたいと思います。
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地域医療の見え方  2015.Aug.19;1(31)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-特集:高齢者の降圧療法を考える-

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[イントロダクション]
さて、夏休み特集という事で、今回はエビデンスレビューではなく、高齢者の降圧療法について考えてみたいと思います。80歳を超える高齢者における降圧療法のポリファーマシーというのは決して珍しいものではないと思います。何剤以上がポリファーマシーというのか、という定義の問題もありますが、個人的には単剤もしくは薬剤なしというのも選択肢として残しておきたいし、そのようなことを疫学データと照らし合わせながら考察したいと思うわけです。

ACE阻害薬についてはその有用性から高齢者に使用される機会も多いと思いますが、高カリウム血症など思わぬ有害事象リスクも孕んでいます。Ca拮抗薬でも徐脈やら、決して安全性が高い、ともいえない側面があります。一般的には高血圧治療において脳卒中予防の観点から降圧療法が開始されることに違和感がありませんし、むしろ高血圧といわれるような状態を放置するほうがどうかしているようにも思います。

[高齢患者におけるポリファーマシー:80歳代における高血圧管理]
JAMAより表題のタイトルを冠した論文が掲載されました。(※1)
高血圧患者における降圧療法は多くの患者にとって有益であることはこれまでのエビデンスからも示唆されています。しかし多くのランダム化比較試験は平均的な健常成人を組み入れることがほとんどであり、80を超えるような超高齢者に対する大規模臨床試験はあまり実施されません。この論文ではMEDLINE, PubMed Central, the Cochrane Database of Systematic Reviewsを検索し、超高齢者における降圧療法の有用性を検討した研究を検索しています。

その結果クライテリアを満たしたのはHYVET試験(※2)とその事後解析でした。ランダム化比較試験はなんとHYVETのみ。この論文ではプライマリアウトカムの脳卒中に有意な差が出ていないなんて書かれています。

あ、そうそう僕の立場を明らかにしておきましょう。このブログでは「ポリファーマシーのゆくえ」と題して特集を2回ほど組みました。また旧ブログでも思索をまとめてあります。

[参考]E-SCLIPT
http://syuichiao.jimdo.com/%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%BC/

ポリファーマシーは医療的には「悪」でしょう。でもどう是正すれば良いのかは議論の余地がある。残薬問題が浮き彫りになる中で、僕はポリファーマシー是正が残薬問題の都合のよい道具的に使われることにすごい嫌悪感を抱いてしまうのです。薬を減らせばいいのか、それが薬剤師の職能なのか、まあそんなに単純じゃないし、なんとなく道具的に使われるのが嫌なだけですが、なぜそう思うのかといえば、ポリファーマシーの是正こそが薬剤師のプロフェッショナルだと思うからですよ。

[超高齢者の降圧療法、結局のところどうなの]
HYVETを見る前に、ちょっとメタ分析を見てみましょう。幸いなことに2009年にはCochrane Database Syst Rev.が出てました(※2)

この報告は60歳以上の高齢者24,055人を対象としたランダム化比較試験15研究のメタ分析で、降圧薬の有用性をプラセボまたは無治療と比較しています。集められた試験は主にファーストラインのサイアザイド利尿療法について評価しており、平均治療期間は4.5年でした。

60歳以上の高齢者では降圧療法で死亡リスク低下しています(相対リスク0.90[95%信頼区間0.84~0.97]これは参加者1,000例あたりのイベント頻度で116から104に低下していると報告されています。しかし80歳超の高齢者では死亡に明確な差が出ませんでした。(相対リスク1.01[95%信頼区間0.90~1.13])なお、当然ながら、有害作用による薬剤中止は治療群で有意に多いと報告されています。(相対危険1.71[95%信頼区間1.45~2.00])。総死亡には差が出ていないというわけですね。これは貴重な示唆となりそうです。まあ脳卒中に対する効果は、という事ですが、それを検討した唯一のランダム化比較試験、そろそろ見てみましょう。

[HYVET試験]
この試験は80歳を超える高齢者に対する降圧薬の有用性を検討した唯一の2重盲検ランダム化比較試験です。(※3)とても貴重な示唆ですね。論文のPECOは以下の通りです。

P: 80歳以上で収縮期血圧>160mmHgの高血圧患者3,845人。
E:インダパミド除法1.5mgで治療を開始。目標血圧値150/80mmHgに達しない場合にペリンドプリル 2mg~4mgを追加1933 人
C:プラセボ1912 人
O:致死性・非致死性脳卒中

ここで批判的吟味するつもりもありませんが、セカンダリアウトカムの総死亡がE群で有意に減ったために、早期に中止されています。主な結果を以下にまとめましょう。

HYVET試験
アウトカム E群 C群 ハザード比[95%信頼区間]
脳卒中 12.4/1000人年 17.7/1000人年 0.70 (0.49–1.01)
総死亡 47.2/1000人年 59.6/1000人年 0.79 (0.65–0.95)


イベント数に注目したい。「脳卒中」<「総死亡」という感じですね。脳卒中の競合リスクとしての総死亡の影響が大きい。80歳超を対象としているで当たり前といえばあたりまえですが、そのような状況の中でも脳卒中がここまで減る傾向にあるという印象もあります。早期中止されていなかったら有意な差が出ていたかもしれませんね。

ただ早期中止ランダム化比較試験は結果を過大評価するというメタ分析(※4)なんかも報告されていて、いろいろ考えるとわけが分かりません。まあここでは発症率に注目したいと思います。この研究で脳卒中発症率は年間1000人当たり12~17程度という感じです。まあ発症率はスピードなんで年間何人当たりなんて表現はややおかしいのですが、毎回1000人年なんて書くのがめんどくさいのでご容赦ください。ここでは12~17と記憶しておきましょう。

[脳卒中発症リスクを定量化するCHADS2スコア]
CHADS2スコアは、心房細動患者における脳卒中発症リスクの評価指標です。うっ血性心不全1点、高血圧1点、年齢(75歳以上)1点、糖尿病1点、脳卒中、TIAの既往2点で計算しスコアを求めます。算出されたスコアの脳卒中リスクは以下のようになります。(※5)なお1000人年は単純に100人年を10倍した理論値で僕が勝手に算出したものです。

脳卒中発症
スコア 100人年 1000人年[理論値]
0 1.9 (95% CI, 1.2-3.0) 19
2.8 (95% CI, 2.0-3.8) 28
2 4.0 (95% CI, 3.1-5.1) 40
3 5.9 (95% CI, 4.6-7.3) 59
4 8.5 (95% CI, 6.3-11.1) 85
5 12.5 (95% CI, 8.2-17.5) 125
6 18.2 (95% CI, 10.5-27.4) 182


厳密には異なるかと思いますが、参考地としてこの数値を扱いたいなぁと考えています。なおワルファリンの投与はスコアで1より考慮されます。またスコア2以上でワルファリンのベネフィットが上回ると見積もった論文も報告されています。(※6)

HYVET試験での脳卒中発症頻度は年間1000人当たり12~17でした。これをCHADS2スコアの各頻度と比べてみると、スコア0よりも低いリスクであることが分かります。CHADS2スコアの脳卒中は「脳梗塞」であり、HYVET試験の脳卒中は「一過性虚血性脳発作を除く全脳卒中」で脳出血も多く含むものかもしれませんが、ここではリスクベネフィットという観点から参考にはなるかと思います。

心房細動というのは脳卒中のリスクファクターなんだなぁと思うわけですが、0点ではワルファリンを積極的投与するのははばかれますよねぇ。それはワリファリンがハイリスクな薬剤だからでしょうか。降圧薬なら比較的安全性も高いから投与は正当化されるのでしょうか。

血圧が高いと脳卒中リスクがものすごく高いようにも思えるけどCHADS2スコアと相対的に見比べてみると、以外にも小さい印象があります。ワルファリンのリスクベネフィットを考慮するなら、降圧薬もそういったリスク評価は必要なのではないでしょうか。

[高齢者にARBはリスクしかないかもしれない]
超高齢者に対する降圧療法はHYVET試験しか妥当な研究がないわけですから、検討されているのはインダパミドとペリンドプリルのみ。というのは言い過ぎかもしれませんが、まあそういう事にしておきましょう。

16の研究に参加した65歳以上の高齢者113,386人を解析対象にしたランダム化比較試験のメタ分析によれば、ARBの使用で総死亡は減らず(相対危険1.03[95%信頼区間1.00~1.06])急性腎傷害や低血圧、高カリウム血症は有意に増加すると報告されています。(※7)まあ脳卒中は若干減るみたいですけど。降圧薬は高齢者にとってはただでさえ、転倒、骨折リスクになり得ます。(※8)(※9)ワルファリンのようにネットクリニカルベネフィットって言う概念があっても良い気はしています。

[降圧薬のポリファーマシー]
降圧薬にまつわる多剤併用とその有害事象に関する報告は確かに存在します。

比較的健常な中年層の患者であれば血圧140~150あたりが降圧治療開始・強化の目安となりそうですが、施設入所の高齢者においては過度の降圧が死亡リスクに関連するという前向き観察研究が出ています。(※10)

この研究はフランスとイタリアにおける施設入所高齢者(80歳以上、平均87.6歳、女性78.1%)の患者1127人を対象に収縮期圧が130mmHg以下で降圧薬を2剤以上服用しているケースとそれ以外のケースを比較して2年間前向きに観察し死亡を検討した縦断研究です。

その結果、収縮期血圧が130以下で2剤以上の降圧薬を服用している高齢者では死亡リスクが有意に上昇しました。(ハザード比1.81[95%信頼区間1.36~2.41])。傾向スコアマッチングや交絡因子で補正後も同様の結果で、施設入所の高齢者においては降圧薬を複数服用している場合、収縮期圧の過度な降圧は死亡リスクに関連する可能性が示唆されました。

また487372例の降圧薬使用者を対象にして、非ステロイド性抗炎症薬と降圧薬の2剤、3剤療法の組み合わせにおける急性腎障害のリスクを検討したコホート内症例対照研究が報告されています。(※11)

平均5.9年(SD3.4)のフォローアップ中に急性腎障害は2215例(発生率:7/10000人年)。非ステロイド性抗炎症薬とACE阻害薬/ARB、利尿薬のいずれかによる2剤治療の組み合わせは、急性腎障害の増加率に関連付けられていなかったが、これとは対照的に、3剤併用療法の組み合わせの現在の使用は急性腎障害リスク上昇しました。(発症率比1.31, [95%信頼区間 1.12 ~1.53]

利尿剤とACE阻害薬/ARBは合剤も出ており、臨床では汎用されていることでしょう。これとNSAIDsの併用は決して珍しいものではありませんね。

降圧薬のリスクベネフィットは80歳超の高齢者ではあまり良く検討されていないのが現実です。脳卒中リスクにおいて心房細動患者の抗凝固療法はネットクリニカルベネフィットという概念が一般的になりつつあるのに、降圧薬ではあまり考慮されていない印象もあります。血圧が高いから薬剤を投与するという機械作業の中にポリファーマシーや思わぬ有害事象が起こり得ます。そして、効果は非常にあいまい・・・といえそうです。

ちなみにJMSコホート研究から、10年間の脳卒中発症率を予測できるリスクチャートを作成している論文があり興味深いです。(※12)このチャートによれば収縮期血圧が180を超える70歳の人で、喫煙や糖尿病がなければ、10年間で20%以上という発症率になっています。年間で換算すれば2%以上、1000人当たりで20人以上という感じですから、これもCHADS2スコア2点を下回るリスクである可能性が高いでしょう。

高齢者における降圧療法、これからも継続して考察していきたいテーマです。今回はイントロダクションとして、そのクリニカルベネフィットという概念の必要性を提起してみました。

[参考文献]
(※1)Benetos A.et.al. Polypharmacy in the Aging Patient: Management of Hypertension in Octogenarians. JAMA. 2015 Jul 14;314(2):170-80. PMID: 26172896
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26172896
(※2) Musini VM.et.al. Pharmacotherapy for hypertension in the elderly. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Oct 7;(4):CD000028. PMID: 19821263
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19821263
(※3) Beckett NS,et.al. Treatment of hypertension in patients 80 years of age or older. N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1887-98. PMID: 18378519
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18378519
(※4) Bassler D.et.al. Stopping randomized trials early for benefit and estimation of treatment effects: systematic review and meta-regression analysis. JAMA. 2010 Mar 24;303(12):1180-7. PMID: 20332404
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20332404
(※5)Gage BF.et.al. Validation of clinical classification schemes for predicting stroke: results from the National Registry of Atrial Fibrillation. JAMA. 2001 Jun 13;285(22):2864-70. PMID: 11401607
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11401607
(※6) Singer DE.et.al. The net clinical benefit of warfarin anticoagulation in atrial fibrillation. Ann Intern Med. 2009 Sep 1;151(5):297-305. PMID: 19721017
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19721017
(※7) Elgendy IY.et.al. Efficacy and safety of angiotensin receptor blockers in older patients: a meta-analysis of randomized trials. Am J Hypertens. 2015 May;28(5):576-85 PMID: 25391580
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25391580
(※8)Butt DA,.et.al. The risk of hip fracture after initiating antihypertensive drugs in the elderly. Arch Intern Med.2012;172(22):1739-44. PMID: 23165923
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23165923
(※9) Butt DA.et.al. The risk of falls on initiation of antihypertensive drugs in the elderly.
Osteoporos Int. 2013 Oct;24(10):2649-57. PMID: 23612794
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23612794
(※10)Benetos A.et.al. Treatment With Multiple Blood Pressure Medications, Achieved Blood Pressure, and Mortality in Older Nursing Home Residents: The PARTAGE Study. JAMA Intern Med. 2015 Jun;175(6):989-95. PMID: 25685919
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25685919
(※11) Lapi F.et.al. Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ. 2013 Jan 8;346:e8525. PMID: 23299844
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23299844
(※12) Ishikawa S.et.al. Risk charts illustrating the 10-year risk of stroke among residents of Japanese rural communities: the JMS Cohort Study.
J Epidemiol. 2009;19(2):101-6. Epub 2009 Mar 6.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19265267

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■小腸粘膜病変に対するセレコキシブとロキソプロフェン■
Fujimori S.et.al. Celecoxib Monotherapy Maintained Small Intestinal Mucosa Better Compared With Loxoprofen Plus Lansoprazole Treatment: A Double-blind, Randomized, Controlled Trial. J Clin Gastroenterol. 2015 Jul 9. [Epub ahead of print] PMID: 26166140
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26166140
背景と研究デザイン:ロキソプロフェンとセレコキシブの小腸への影響を検討した2重盲検ランダム化比較試験。

P:40歳~70歳の健常者150人
E:セレコキシブ200㎎/日(74人、平均49歳、女性36人)
C:ロキソプロフェン180㎎/日+ランソプラゾール15㎎/日(76人、平均49歳、女性39人)
O:カプセル内視鏡による14日後の小腸所見により、少なくとも1つ以上の粘膜障害(3名のレビューアーで評価)

追跡状況:E群5名、C群4名除外。

粘膜障害はセレコキシブ群10%、ロキソプロフェン群49%(P<0.0001)。小腸保護の観点からはロキソプロフェン+ランソプラゾールよりもセレコキシブが優れていると結論

■褥瘡に対するアトルバスタチン軟膏■
Farsaei S.et.al. Efficacy of topical atorvastatin for the treatment of pressure ulcers: a randomized clinical trial. Pharmacotherapy. 2014 Jan;34(1):19-27. PMID: 23940000
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23940000
背景と研究デザイン:重症患者おける、褥瘡に対する局所アトルバスタチンの有効性を検討した2重盲検ランダム化比較試験。

P:2-digit Stirling Pressure Sore Severity ScaleでステージⅠもしくはⅡの褥瘡患者104人
E:標準ケア+局所アトルバスタチン(アトルバスタチン1%軟膏1日1回)51人
C:標準ケア+プラセボ軟膏1日1回53人
O:褥瘡治癒の度合い(2-digit Stirling Pressure Sore Severity Scale)

ベースラインでは両群間の褥瘡に関して有意な差を認めない。
褥瘡の平均ステージはアトルバスタチン群で有意に低下
・7日:0.97 ± 0.76 vs 1.74 ± 0.75, p<0.01
・14日:0.42 ± 0.67 vs 1.71 ± 0.78, p<0.01
褥瘡表面積もアトルバスタチンで有意に少ない。
・5.55 ± 4.55 vs 9.41 ± 5.03 cm², p<0.01
・3.72 ± 4.45 vs 10.41 ± 6.41 cm², p<0.01

※P:2-digit Stirling Pressure Sore Severity Scale:ステージ0~Ⅳで評価。0は臨床的に褥瘡を認めず。Ⅳは骨露出など全皮膚欠損。なお2桁スケールでは各ステージをさらに3つに分類

■アロプリノールと過敏症リスク■
Yang CY.et.al. Allopurinol Use and Risk of Fatal Hypersensitivity Reactions: A Nationwide Population-Based Study in Taiwan. JAMA Intern Med. 2015 Jul 20. [Epub ahead of print] PMID: 26193384
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26193384
背景と研究デザイン:アロプリノールは高尿酸血症の第一選択と用いられているが、SJSやTENなどの重症薬疹などの致命的な有害事象リスクと関連しており、アロプリノール使用の全体的なリスクについては不明である。アロプリノール新規使用者において、過敏症の危険因子や死亡リスクについて検討した後ろ向き解析研究


P:台湾国民健康保険研究のデータベースから495 863人の新規アロプリノール使用者
E:アロプリノールの新規使用
C:アロプリノールの使用なし
O:アロプリノールによる過敏症(新規使用から3か月以内)、関連入院(新規使用から1か月以内)、腎合併症もしくは死亡(新規使用から2か月以内)

新規アロプリノールによる有害事象の発症率は以下の通り
・過敏症:4.68/1000人年
・関連入院:2.02/1000人年
・関連死亡:0.39/1000人年

主なリスク因子は以下の通り
・女性
・60歳以上
・初回100㎎/日を超える投与
・腎・心血管死亡
・無症候性高尿酸血症の治療目的

無症候性高尿酸血症への使用は過敏症リスク増加
腎疾患:オッズ比1.61[95% CI,1.33-1.94]
心血管疾患:オッズ比1.52[95% CI,1.19-1.93]

無症候性高尿酸血症への使用は死亡リスク増加
腎疾患:オッズ比5.59[95% CI, 2.61-11.94]
心血管疾患:オッズ比3.57[95% CI, 2.31-5.51]

■抗うつ薬とNSAIDsの併用■
Shin JY.et.al. Risk of intracranial haemorrhage in antidepressant users with concurrent use of non-steroidal anti-inflammatory drugs: nationwide propensity score matched study. BMJ. 2015 Jul 14;351:h3517 PMID: 26173947
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26173947
背景と研究デザイン:抗うつ薬使用患者におけるNSAIDsの併用に伴う頭蓋内出血リスクを検討した後ろ向きコホート研究

P:韓国における全国健康保険データベースより新規抗うつ薬処方患者(平均52歳)
E:NSAIDs併用あり2072613人
C:NSAIDs併用なし2072613人
O:薬剤使用後30日以内の頭蓋内出血

交絡への配慮:傾向スコアマッチング、 認知症、ワルファリン、ヘパリン類似物、ステロイド使用

頭蓋内出血
サブグループ 抗うつ薬単独 NSAIDs併用 調整ハザード比
全体 1.6/1000人年 5.7/1000人年 1.6 (1.32 to 1.85)
三環係抗うつ薬 1.5/1000人年 5.8/1000人年 1.7 (1.33 to 2.13)
SSRI 1.3/1000人年 6.8/1000人年 1.4 (1.17 to 1.72)
SNRI 4.3/1000人年 4.4/1000人年 0.4 (0.32 to 0.46)


■自殺関連ツイートと自殺行動■
Sueki H. The association of suicide-related Twitter use with suicidal behaviour: a cross-sectional study of young internet users in Japan. J Affect Disord. 2015 Jan 1;170:155-60. PMID: 25240843
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25240843
背景と研究デザイン:自殺関連ツイートと自殺の関連を検討した横断研究

P:日本の大手インターネット調査会社から1000人を解析対象(平均24.9歳、女性61.3%)
E:Twitterによる自殺関連ツイートあり
C:自殺関連ツイートなし
O:自殺行動

「死にたい」「自殺したい」のツイートは自殺念慮や自殺行動に関連
自殺の予測因子として「死にたい」よりも「自殺したい」が強く関連

オンライン調査のため適応範囲には偏りがあり、一般化可能性を制限するもの、Twitterのログは自殺リスクの高い若年層ユーザーを識別する可能性を示唆する。

■人工甘味料と糖尿病■
Imamura F, O'Connor L2, Ye Z.et.al. Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction. BMJ. 2015 Jul 21;351:h3576. PMID: 26199070
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26199070
背景と研究デザイン:砂糖で甘味を付けた飲料、人工甘味料で甘味を付けた飲料、100%果物ジュースと2型糖尿病発症の関連を検討したシステマテックレビュー・メタ分析

P:17研究における、糖尿病の既往のない8歳以上の成人38 253人
E:砂糖で甘味を付けた飲料、人工甘味料で甘味を付けた飲料、100%果物ジュースの摂取
C:摂取なし
O:2型糖尿病の発症

・three authors (FI, LO’C, and ZY) independently reviewed
・language of publications were not restricted.
・funnel plots indicated that the findings for artificially sweetened beverages and fruit juice were not stable

250mlあたりの摂取における相対危険(肥満調整)は以下の通り
・砂糖で甘味を付けた飲料:13% (6% to 21%, I(2)=79%)
・人工甘味料で甘味を付けた飲料:8% (2% to 15%, I(2)=64%);
・100%果物ジュース:7% (1% to 14%, I(2)=51%).

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■エゼチミブと急性膵炎■
Ahmad I.et.al. Ezetimibe-induced acute pancreatitis. South Med J. 2007 Apr;100(4):409-10. PMID: 17458405
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17458405
エゼチミブによる急性膵炎の報告

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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夏休み特集第3弾。今回はちょっと砕けた文体で、総説スタイルをやめて、高齢者における降圧薬のネットクリニカルベネフィットとポリファーマシーについて言及してみました。カルシウム拮抗薬を中止すると血圧がリバウンドして危険な印象もありますが、個人的経験では超高齢者においてはそれほどリバウンドすることは経験していません。過度の降圧がなされているようであれば、処方中止提案は必要だと思います。ACE阻害薬も高齢者降圧療法に有用なイメージがありますが、高カリウム血症の原因となっていることもあり、不必要な投与はリスクしかないと思います。

さて次回は夏休み特集最終回、昼寝についてまとめますよ!
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地域医療の見え方  2015.Aug.12;1(30)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-2型糖尿病における厳格血糖管理-

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[ポイント]
■糖尿病の血糖管理は、新規発症か、罹病期間10年程度かで大きく異なる
■新規発症における早期厳格血糖管理はメトホルミンによる治療において、10年後から20年後の死亡リスクを低下させるかもしない。
■罹病期間10年を超える糖尿病患者においては厳格な血糖コントロールをすべきではない。
■低血糖は死亡リスクや心血管イベントを増加させる可能性が示唆されている。

[イントロダクション]
日本糖尿病学会による血糖管理目標は現在3段階に分かれています。

・血糖正常化を目指す際の目標:HbA1c6.0%未満
・合併症予防のための目標:HbA1c7.0%未満
・治療強化が困難な際の目標:HbA1c8.0%未満

糖尿病薬物治療の真のアウトカムという観点からすれば、6.0%未満の設定は「血糖正常化」を目的とするという言葉の意味そのものもが、理解しがたい部分もあります。病態生理学的に考えれば、HbA1cを厳格にコントロールすることこそが理想とも考えられますが、臨床試験から得られる示唆は、どうも理論通りにうまくいかないという事を浮き彫りにさせます。代表的な臨床試験を少しふりかえってみましょう。

インスリンもしくはトルブタミドによる血糖コントロールが、血管合併症を減少させるか否かを検証した臨床試験(UGDP研究)が1970年に報告されています。(※1)

この研究は1027人の2型糖尿病患者を対象に、トルブタミドを投与する群、インスリンを注射する群、無治療群で比較したランダム化比較試験です。その結果、驚くべきことに何もしなかった人の死亡率が一番低く、トルブタミドを服用した人たちの死亡率が一番高いという結果でした。

その後、代表的な2型糖尿病の臨床試験は1998年に報告された、UKPDS333でしょう。(※2)
新規に診断された2型糖尿病患者3867人を対象に、厳格血糖コントロール治療と、食事療法を中心とした通常コントロ―ルを比較したランダム化比較試験です。糖尿病関連合併症(突然死、高血糖や低血糖による死亡、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、腎不全、下肢の切断、重篤な出血、凝固療法が必要な網膜症、失明、白内障手術)と、糖尿病関連死、そして総死亡の3つのアウトカムが検討されました。

糖尿病関連合併症は相対危険で0.88[95%信頼区間0.79~0.99]有意に低下 しましたが、糖尿病関連死亡や総死亡に明確な差は出ませんでした。また糖尿病関連合併症のうち細小血管合併症リスクの低下が示唆されましたが、大血管合併症には明確な差が見られませんでした。

同年、UKPDS34が報告されます。(※3)
UKPDSに登録された4075人のうち、理想体重より 120%以上肥満のある2型糖尿病1704人を対象に,厳格な血糖コントロールの大血管障害に対する長期的な効果を検討した試験です。その結果、をメトホルミンで治療すると、糖尿病関連合併症、糖尿病関連死、総死亡が少ない、という可能性が示唆され、肥満糖尿病患者におけるメトホルミンの有用性が示唆されました。2008年は2型糖尿病における重要な臨床試験が複数報告されています。まずはここから、横断的に見てみましょう。

[2008年の重要な臨床試験の結果]

2008年の代表的RCT
研究名(PMID) ACCORD(18539917)※4 ADVANCE(18539916)※5 VADT(19092145)※6
対象患者 心血管疾患の既往、もしくは危険因子を持つ2 型糖尿病患者10251 人(罹病期間10年) 心血管疾患の既往、もすくは危険因子を持つ 2 型糖尿病患者11140 人(罹病期間約8年) 2 型糖尿病退役軍人1791 人(罹病期間11.5年)
介入 HbA1c6.0%未満を目標 HbA1c 6.5%未満を目標 厳格血糖コントロール
対照 HbA1c7.0~7.9%を目標 ガイドラインに基づく標準的なコントロール 標準的治療
評価項目 心血管疾患及び死亡の複合アウトカム 心血管疾患、死亡、糖尿病性腎症の複合アウトカム 心血管疾患
主要な結果 心血管疾患及び死亡は相対危険で0.90[0.78-1.04]。セカンダリアウトカムの総死亡が有意に上昇 複合アウトカムは相対危険0.90[0.82~0.98]心血管疾患及び死亡には明確な差は出ず。 心血管疾患に明確な差はない0.88[0.74~1.05]

これら3つの臨床試験で共通するのは罹病期間8年~11年というが比較的長い2型糖尿病患者に対して、厳格な血糖コントロール治療をおこなっても大血管合併症を抑制できないという結果です。ACCORD(※4)に関しては総死亡の上昇まで示唆されています。当然ながら厳格な血糖コントロールで低血糖は多いという結果。

では糖尿病早期から厳格な血糖コントロールを行えばどうでしょうか。UKPDSの追跡調査UKPDS80(※7)も2008年に報告されています。当初のトライアルに参加した患者を10年後に再調査したものです。UKPDS33、34、80についていかにまとめます。

UKPDS33,34,80
研究名(PMID) UKPDS33(9742976)※2 UKPDS34(9742977)※5 UKPDS80(18784090)※7
対象患者 25~65 歳の 新規2 型糖尿病患者3867 人 UKPDSに登録した患者から、理想体重より 120%以上肥満の2 型糖尿病患者1704 人 25~65 歳の 新規2 型糖尿病患者
介入 空腹時血糖 108mg/dL を目標 食事療法に加え、メトホルミン、あるいはインスリン、もしくはSU剤による治療 厳格血糖コントロール
対照 空腹時血糖 270mg/dLを目標 食事療法に加え、高血糖なら薬物をランダムに選択 従来血糖コントロール
評価項目 糖尿病関連合併症、糖尿病関連死、総死亡 糖尿病関連合併症、糖尿病関連死、総死亡 糖尿病関連合併症、糖尿病関連死、総死亡等
主要な結果 糖尿病関連合併症は減ったものの、糖尿病関連死や総死亡に明確な差を認めず。 メトホルミンで治療すると糖尿病関連合併症、糖尿病関連死、総死亡が少ない。 この研究では総死亡も有意に低下した。相対危険0.87[0.79~0.96]


UKPDS80では総死亡や糖尿病関連死についても減少を認め、糖尿病発症早期の厳格治療の有用性が、のちに現れる、すなわちlegacy effect(遺産効果)が見られました。SU剤による総死亡を見てみると、治療開始から20年後に厳格治療群と通常治療群に、ごくわずかに差が開いていきます。リスクが減るといっても、legacy effectを得るには相当程度の時間が必要です。すなわち研究開始時に60歳であった参加者にとって、legacy effectの恩恵はさほど重要ではない可能性があります。


[ADVANCE、VADTの長期追跡]
ADVANCE、VADTの10年わたる長期追跡の結果が報告されています。以下にその概要をまとめます。

研究名(PMID) ADVANCEの長期追跡(25234206)※8 VADT長期追跡(26039600)※9
対象患者 ADVANCE 試験に参加した少なくとも一つ以上の心血管リスクを有する55歳以上の2型糖尿病患者。 VADTに参加した退役軍人(完全コホート92.4%、調査コホート77.7%)
介入 グリクラジド徐放錠を中心とした厳格な血糖コントロール 厳格血糖コントロール
対照 標準コントロール 従来血糖コントロール
評価項目 総死亡、主要血管イベント。全期間の中央値9.9年 心血管イベント初発。追跡:全体で9.8年(中央値)
主要な結果 総死亡1.00[0.92-1.08]、主要血管イベント1.00[0.92-1.08] 厳格な血糖コントロールの長期的なベネフィット不明 心血管イベント初発はハザード比0.83[0.70~0.99]。セカンダリアウトカムの総死亡に明確な差は無い。


またACOORD試験では全体で約5年間の追跡調査が行われており、基本的には本試験の結果と同様に非致死的心筋梗塞は少ないものの総死亡は上昇(ハザード比1.19[1.03~1.38])を示唆したままでした。(※10)

[厳格血糖コントロールの有用性]
メタ分析は複数出ていますが、本記事ではコクランをご紹介します。(※11)
28の研究に参加した2型糖尿病患者34912例を対象としたランダム化比較試験のメタ分析で、厳格血糖コントロールの有用性を検討しています。主な相対リスクを以下にまとめます。

総死亡:1.00[0.92~1.08]
心血管死亡:1.06[0.94~1.21]
大血管合併症:0.91[0.82~1.02]
非致死的心筋梗塞:0.87[0.77~0.98]
重大な低血糖:2.18[1.53~3.11]

[厳格血糖コントロールのゆくえ]
糖尿病早期からのメトホルミンによる厳格血糖コントロールで、総死亡が減る可能性はあるかもしれません。しかしその恩恵が受けられるのは10年とか20年とか、そういったかなり長期間にわたる経過の中で、という事です。したがって糖尿病を発症した年齢は十分に考慮されるべきです。80代の新規糖尿病患者で厳格な血糖コントロールはベネフィットが得られる可能性は少ないばかりか、低血糖などのリスクが非常に高いといえます。低血糖は死亡リスクや心血管イベントを増やすという報告もあります。(※12)(※13)(※14)

また罹病期間が長い患者に対して、血糖を厳格にコントロールすることは総死亡を増やす可能性まで示唆されています。このことは観察研究でも支持されています。

糖尿病罹病期間7.8年を対象とした後ろ向きコホート研究によれば、最も死亡率の低いHbA1cは7.5%付近であることが示唆されています。(※15)

死亡リスクについてHbA1cで7.5%を底とするU字型を描いており、それよりも低くても、高くてもリスクは上昇するという結果を示しています。HbA1cを6%未満を目標として血糖コントロールすることのメリットはほぼないといえるでしょう。少なくとも罹病期間が10年近い糖尿病患者に厳格な血糖コントロールはすべきではありません。以上を簡単にまとめると以下のようになるかと思います。

[新規糖尿病患者]
年齢を考慮、厳格血糖コントロールは10年から20年後のリスク低下を示唆
[罹病期間の長い糖尿病患者]
全年齢で厳格血糖コントロールをすべきではない。HbA1cで7.5%を目安にコントロール

[参考文献]
(※1)Meinert CL.et.al. A study of the effects of hypoglycemic agents on vascular complications in patients with adult-onset diabetes. II. Mortality results. Diabetes. 1970;19:Suppl:789-830. PMID: 4926376
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4926376
(※2) Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes (UKPDS 33). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group. Lancet. 1998 Sep 12;352(9131):837-53. PMID: 9742976
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742976
(※3) Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group. Lancet. 1998 Sep 12;352(9131):854-65. PMID: 9742977
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742977
(※4) Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group, Gerstein HC, et al.
Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008 Jun 12;358(24):2545-59. 2008 Jun 6. PubMed PMID: 18539917.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18539917
(※5)ADVANCE Collaborative Group, Patel A, et al. Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008 Jun 12;358(24):2560-72. PubMed PMID: 18539916
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18539916
(※6) VADT Investigators. Duckworth W.et.al. Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2009 Jan 8;360(2):129-39. PMID: 19092145
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19092145
(※7)Holman RR. .et.al.10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008 Oct 9;359(15):1577-89. PMID: 18784090
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18784090
(※8)ADVANCE-ON Collaborative Group. Zoungas S,et.al. Follow-up of blood-pressure lowering and glucose control in type 2 diabetes. PMID: 25234206
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25234206
(※9) Hayward RA.et.al. Follow-up of glycemic control and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2197-206. PMID: 26039600
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26039600
(※10) ACCORD Study Group, Gerstein HC.et.al. Long-term effects of intensive glucose lowering on cardiovascular outcomes. N Engl J Med. 2011 Mar 3;364(9):818-28. PMID: 21366473
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21366473
(※11) Hemmingsen B.et.al. Targeting intensive glycaemic control versus targeting conventional glycaemic control for type 2 diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Nov 11;11:CD008143. PMID: 24214280
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24214280
(※12) Zhao Y.et.al. Impact of hypoglycemia associated with antihyperglycemic medications on vascular risks in veterans with type 2 diabetes. Diabetes Care. 2012 May;35(5):1126-32. PMID: 22432106
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22432106
(※13) Hsu PF.et.al. Association of clinical symptomatic hypoglycemia with cardiovascular events and total mortality in type 2 diabetes: a nationwide population-based study. Diabetes Care. 2013 Apr;36(4):894-900. PMID: 23223349
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23223349
(※14) Goto A.et.al. Severe hypoglycaemia and cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis with bias analysis. BMJ. 2013 Jul 29;347:f4533. PMID: 23900314
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23900314
(※15) Currie CJ.et.al. Survival as a function of HbA(1c) in people with type 2 diabetes: a retrospective cohort study. Lancet. 2010 Feb 6;375(9713):481-9PMID: 20110121
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20110121

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■握力と予後■
Leong DP.et.al. Prognostic value of grip strength: findings from the Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study. Lancet. 2015 May 12. pii: S0140-6736(14)62000-6. PMID: 25982160
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25982160
背景と研究デザイン:握力によって測定される筋力減少は総死亡や心血管死亡との関連が示唆されている。握力は個人の心血管死亡リスク層別化に当たり、簡便かつ迅速でコストのかからない手段としてのアドバンテージがある。しかしながら、人口分布や交絡等を踏まえると握力の予測値には不明な部分が多い。社会文化的、及び経済的に多様な国々における握力とその予後について検討した前向きコホート研究。Prospective Urban-Rural Epidemiology (PURE) study

P:PUREstudyに参加した17か国における30歳~75歳の参加者より139691人を解析
E&C:握力測定に基づく握力評価
O: 総死亡率、心血管死亡、非心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、癌、肺炎、肺炎もしくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院、呼吸器疾患による入院、転倒による傷害、骨折

追跡期間:4年(中央値)

握力が5㎏減少するごとに
総死亡:ハザード比1.16[95%信頼区間 1.13~1.20]
心血管死亡:ハザード比1.17[95%信頼区間1.11~1.24]
非心血管死亡:ハザード比1.17[95%信頼区間1.12~1.21]
心筋梗塞:ハザード比1.07[95%信頼区間1.02~1.11]
脳卒中:ハザード比1.09[95%信頼区間1.05~1.15]
糖尿病や呼吸器疾患による入院、転倒による傷害、骨折に明確な関連を認めない。

■高齢者うつに対するエクササイズ介入■
Huang TT.et.al. Physical fitness exercise versus cognitive behavior therapy on reducing the depressive symptoms among community-dwelling elderly adults: A randomized controlled trial. Int J Nurs Stud. 2015 Jun 10. pii: S0020-7489(15)00190-X. PMID: 26105535
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26105535
背景と研究デザイン:うつ病は地域在住高齢者のための主要な健康問題である。高齢者の高いうつ病有病割合を低下させるために利用できる資源は限られている。地域在住高齢者を対象に身体運動プログラムと認知行動療法を比較して、抑うつ症状への効果を検討したランダム化比較試験。

P:認知機能障害のない、抑うつ症状を有する57人の高齢者
E①:身体運動プログラム
E②:認知行動療法
C:コントロール
O:高齢者うつ病尺度(GDS-15) 
追跡期間9か月

介入直後において、認知行動療法群ではうつ症状が低下した(p=0.009)
また身体運動プログラム群では介入直後、3か月後、6か月後いずれにおいてもGDS-15が低下(p=0.003, 0.012 and 0.037, respectively)

■高齢者認知機能に対するエクササイズ介入■
Nishiguchi S.et.al. A 12-Week Physical and Cognitive Exercise Program Can Improve Cognitive Function and Neural Efficiency in Community-Dwelling Older Adults: A Randomized Controlled Trial. J Am Geriatr Soc. 2015 Jul;63(7):1355-63. PMID: 26114906
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26114906
背景と研究デザイン:12週間にわたる身体・認知運動プログラムが地域在住の高齢者における認知機能に対する有用性を検討したランダム化比較試験。

P:地域在住高齢者48人
E:12週にわたる歩数計を用いた歩行エクササイズとmultimodal exerciseの実施24人
C:普段通りの時間を過ごす対照群24人
O:認知機能、記憶機能、行動機能、MRIによる脳の活性化

運動群は対照群に比べて、記憶や行動に関する機能を改善。また脳の活性化に寄与する可能性を示唆。

■DPP4阻害薬の心不全リスク■
Suh S.et.al. Increased Risk of Hospitalization for Heart Failure with Newly Prescribed Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors and Pioglitazone Using the Korean Health Insurance Claims Database. Diabetes Metab J. 2015 Jun;39(3):247-52. PMID: 26124995
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26124995
背景と研究デザイン:韓国のデータベースを用いたDPP4阻害薬と心不全の関連を検討した報告

P:40歳~79歳の2型糖尿病患者935,519人(平均59.4歳、男性518,614人、女性416,905人)
E:シタグリプチン481,245人、ビルダグリプチン220,484人
C:、ピオグリタゾン233,790人
O:心不全による入院(平均追跡336.8日)

人口10万人年あたりの発症率と、薬剤投与30日以内のリスクは以下の通り
心不全による入院
薬剤名 発症率 薬剤投与30日以内のリスク
ピオグリタゾン 117.7 reference
シタグリプチン 105.7 1.02[95%信頼区間0.69-1.49]
ビルダグリプチン 135.8 1.19[95%信頼区間0.77-1.84]


■血糖降下薬と心不全リスク■
Udell JA.et.al. Glucose-lowering drugs or strategies and cardiovascular outcomes in patients with or at risk for type 2 diabetes: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 May;3(5):356-66. PMID: 25791290
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25791290
背景と研究デザイン:ランダム化比較試験のメタ分析による血糖降下薬と心不全リスクの検討

P:14試験に参加した95 502人(平均追跡4.3年)
E:血糖降下薬の使用あり、厳格血糖コントロール、厳格体重コントロール
C:血糖降下薬の使用なし(標準治療)
O:心不全の発症

心不全に対するリスク比は以下の通り。

・血糖降下薬全体:1.14[95%信頼区間1.01~1.30]
・PPAR-γ受容体アゴニスト(ピオグリタゾン等):1.42[95%信頼区間1.15~1.76]
・DPP4阻害薬:1.25[95%信頼区間 1.08~1.45]
・インスリングラルギン:0.90[95%信頼区間0.77~1.05]
・厳格血糖コントロール:1.00[95%信頼区間 0.88~1.13]
・厳格体重コントロール:0.80[95%信頼区間0.62~1.04]

■血糖降下薬と心不全リスク②■
Varas-Lorenzo C.et.al. The risk of heart failure associated with the use of noninsulin blood glucose-lowering drugs: systematic review and meta-analysis of published observational studies. BMC Cardiovasc Disord. 2014 Sep 26;14:129. PMID: 25260374
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25260374
背景と研究デザイン:観察研究のメタ分析による血糖降下薬と心不全リスクの検討

P:メタ分析に組み入れたのは12研究(8研究は異質性が高いため除)11研究がコホート研究、1研究がコホート内症例対照研究
E&C:ロシグリタゾン(本邦未承認)、ピオグリタゾン、メトホルミン、SU剤の各薬剤間での比較
O:心不全

・ピオグリタゾン VS メトホルミン リスク比:1.14[0.86~1.50] 2研究 I2=0%
・SU剤 VS メトホルミン リスク比:1.17[1.06~1.29] 5研究 I2=24%
・ピオグリタゾン VS SU剤 リスク比;1.30[0.90~1.87] 2研究 I2=0%

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■エゼチミブ肝障害■
Castellote J.et.al. Serious drug-induced liver disease secondary to ezetimibe. World J Gastroenterol. 2008 Aug 28;14(32):5098-9. PMID: 18763297
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18763297
エゼチミブ10mg/日を4カ月服用後に重篤な肝薬物誘発性肝疾患を発症した女性の症例報告。薬剤中止後患者は徐々に回復。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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厳格血糖コントロール、その有用性について検討してきました。罹病期間が長くなるほど、その有用性は小さく、逆に有害事象リスクが高まる印象です。新規は発症においてもまずは第一選択としてのメトホルミンは疑いのないように思えます。前回取り上げたDPP4阻害薬の有用性も糖尿病新規発症者に対する検討は限定的です。DPp4阻害薬を第一選択とする根拠は少ないでしょう。

高齢者糖尿病における血糖管理もまた難しいというのが個人的な印象です。厳格コントロールは必要ないにしても、急な高血糖などを起こすこともあり、その治療方針に悩むところではあります。高齢者の糖尿病については別の機会でまとめてみたいと思います。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Aug.5;1(29)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-DPP4阻害薬の考え方使い方-
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[ポイント]
■本邦においてDPP4阻害薬は、事実上、糖尿病治療の第一選択薬となっている
■DPP4阻害薬の真のアウトカムに対する有用性は現時点でも示されていない
■DPP4阻害薬と心不全による入院リスクは不明な部分が多いが、リスクファクターを有する患者で注意すべきである。
■DPP4阻害薬と急性膵炎の因果関係は明確ではない。しかしながらアウトカムの重大性を考慮すれば、すべての糖尿病患者において高TG血症やアルコール多飲などのリスクファクターに注意すべきである。
■DPP4阻害薬とACE阻害薬の併用において、血管浮腫の有害事象リスクが示唆されている。
■現時点ではメトホルミンの次に加える薬剤として考慮できる薬剤としてDPP4阻害薬を捉えるべきではないだろうか。

[イントロダクション]
本邦ではシタグリプチンの発売以来、約5年、実臨床においては既に糖尿病の薬物治療の第一選択にDPP4阻害薬が位置付けられていると言います。52の健康保険組合に加入する280万人について、定期健康診断データとレセプトデータが関連付けられている日本医療データセンターのデータベースを用いた解析で、糖尿病治療薬を処方されている患者の実に68.8%にインクレチン関連薬(うち97.9%がDPP-4阻害薬)が用いられていたと言います。事実上、DPP4阻害薬は糖尿病治療の第一選択薬となっています。

(出典)日経メディカルオンライン:「未治療糖尿病患者の6割にDPP-4阻害薬」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201507/542900.html

国内では現在までに以下の8種類の薬剤が使用可能となっています。
・シタグリプチン ・ビルダグリプチン ・アログリプチン ・リナグリプチン
・テネリグリプチン ・アナグリプチン ・サキサグリプチン ・トレラグリプチン

なお、トレラグリプチンについては「地域医療の見え方2015.May.13;1(17)」にまとめてあります。
http://en.bloguru.com/syuichiao/238495/2015may13117

今回はDPP4阻害薬の有効性と安全性についてこれまでの臨床試験の結果を横断的にみていこうと思います。なお安全性に関しては、急性膵炎リスクと心不全リスクをまとめたいと思います。

[有効性(メタ分析)]
有効性についてはこれまでに複数のメタ分析が報告されており、2013年以前の報告では概ね心血管イベント低下が示唆されていました。(※1)(※2) しかしながら、2014年以降の報告では総死亡や心血管死亡に明確な差は出ていません。(※3)(※4)

メタ分析からみるDPP4阻害薬の効果
PMID 報告年 メインアウトカム 結果[95%信頼区間]
22703861 2012 心血管イベント リスク比0.48[0.31~0.75]
22925682 2013 主要心血管イベント オッズ比0.71[0.59~0.86],
24750644 2014 総死亡 リスク比1.01[0.91~1.13]
25528528 2015 総死亡 did not affect all-cause and CV mortality


これにはSAVOR-TIMI53(※5)とEXAMINE(※6)という2つの大規模臨床試験の結果の影響が大きいと考えられます。2015年にはTECOS(※7)の結果も報告されていますのでこの3つの臨床試験を横断的にまとめましょう。なおいずれもプラセボ対照の2重盲検ランダム化比較非劣性試験です。いずれの試験もFDAのガイダンスに基づき非劣性マージンは1.3に設定されています。(SAVOR-TIMI53には論文本文に非劣性マージンの記載がありませんが、プロトコルに非劣性マージンが1.3であることが記載されています。)

表タイトル
臨床試験 患者背景と薬剤名 プライマリアウトカム 結果
SAVOR-TIMI53 心血管イベントの既往、もしくはリスクを有する2型糖尿病患者(16492人、平均65歳)に対するサキサグリプチン 心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合アウトカム 中央値2.1年でハザード比1.00[95%信頼区間0.89~1.12]
EXAMINE 急性心筋梗塞又は入院の必要な不安定狭心症を発症した2型糖尿病患者(5380人、年齢中央値61歳)に対するアログリプチン 心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合アウトカム 中央値18か月で、ハザード比0.96(95%信頼区間上限が1.16)
TECOS 50歳以上で心血管疾患の既往のある2型糖尿病患者(14671人)に対するシタグリプチン 心血管死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・不安定狭心症による入院の複合アウトカム 中央値3年でハザード比0.98[95%信頼区間0,88~1.09]


いずれの試験もプラセボに非劣性と言う結果で、プラセボに比べて心血管イベントを増やさず、血糖を下げることが示されたわけですが、プラセボに対する優越性については示されていません。現時点でプラセボを上回る効果があるのかは不明という事です。なおこの3つの臨床試験のうち、SAVOR-TIMI53でのみサキサグリプチン群で心不全による入院が有意に増加しました。(ハザード比1.27[95%信頼区間1.07~1.51])

[有害事象(心不全リスク)]
SAVOR-TIMI53試験で示唆された心不全リスクですが、その後に行われたサブグループ解析で心不全既往、アルブミン/クレアチニン>33.9 mg/mmol、eGFR≤60 mL/min、75歳以上等のリスクファクターが挙げられています。(※8)

DPP4阻害薬と心不全リスクのメタ分析も報告されており、概ねSAVOR-TIMI53の結果の影響下にあるようです。(※4)(※9)(※3) しかしながら観察研究でもリスクが示唆されています。(※10)主な結果を横断的にみてみましょう。

DPP4阻害薬と心不全
PMID  報告年 研究デザイン 結果[95%信頼区間]
24750644 2014年 メタ分析 リスク比1.16[1.01~1.33]
24793580 2014年 メタ分析 オッズ比1.19[1.03~1.37]
25528528 2015年 メタ分析 リスク比1.158[1.011~1.326]
24998080 2014年 コホート研究 オッズ比1.84[1.16~2.92]※

※心不全による入院

リスクの増加はわずか、と言う印象で、一つのランダム化比較試験では検出することは難しそうです。

最近の報告ではSU剤に比べてDPP4阻害薬で心不全による入院リスク低下を示唆したコホート研究が報告されています。ハザード比0.70[95%信頼区間0.52~0.94](※11)

その因果関係についてはまだまだ不明な部分も多いのですが、リスクが明確に否定されたわけでもありません。すくなくともサブグループ解析で示唆されているリスク因子には十分留意すべきでしょう。そもそも有効性について不明なこの薬剤において、有害事象の軽視はできないと筆者は考えています。

[有害事象(急性膵炎)]
DPP4阻害薬と急性膵炎については発売当初より注意喚起がなされ、添付文書にも記載があります。症例報告も複数存在します。(※12)(※13)(※14)

当然ながら既に疫学的研究が複数報告されており、実は結果については1件研究を除き全て関連不明と言う結果になっています。(※15)~(※22)個別の報告に関しては参考文献より原著を確認いただければと思いますが、ここでも複数の研究を横断的にみてみます。

DPP4阻害薬(インクレチン関連薬)と急性膵炎
PMID 報告年 研究デザイン 結果[95%信頼区間]
23440284 2013年 症例対照研究 オッズ比2.24 [1.36~3.68]
24622714 2014年 症例対照研究 オッズ比0·98[0.69~1.38]
23837679 2014年 RCTメタ分析 オッズ比0.93[0.51~1.69]
24741695 2014年 SCCS(※) 発生率比0.68~1.46,
24736555 2014年 RCTメタ分析 オッズ比1.11,[0.57~2.17]
24764569 2014年 コホート研究 ハザード比1.00,[0.59~1.70]
24723174 2014年 RCTメタ分析 オッズ比1.39[0.67~2.88]
25633664 2015年 症例対照研究 オッズ比1.04[0.80~1.37

(※)self-controlled case series analysis

DPP4阻害薬との因果関係は現時点では明確ではありません。少なくともDPP4阻害薬に特異的な有害事象とは言えない印象ですが、高トリグリセリド血症、アルコール多飲なのどリスクファクターを有する糖尿病患者では、アウトカムの重大性を考慮しDPP4阻害薬の投与有無を問わず、警戒すべきでしょう。

[有害事象(血管浮腫)]
特にACE阻害薬との併用に関する有害事象として個人的には注目しています。
詳細は以下にまとめてあります。

ACE阻害薬とDPP4阻害薬の併用による血管浮腫リスク
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/12/acedpp4.html

[DPP4阻害薬の臨床的位置づけ]

DPP4阻害薬は少なくとも第一選択として積極的に用いるべき薬剤ではありません。現時点ではメトホルミンの次に加える薬剤として考慮できる薬剤としてDPP4阻害薬を捉えるべきではないか、と筆者は考えています。メトホルミン+SU剤に比べた有効性について、DPP4阻害薬の上乗せは複数の研究で総死亡リスク低下が示唆されています。

(参考)地域医療の見え方2015.Jun.10;1(21)
2型DM:メトホルミンの次に使用すべき薬剤は何か
http://jp.bloguru.com/syuichiao/240827/2015jun10121

[参考文献]
(※1) Monami M.et.al.Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and Cardiovascular risk : a meta-analysis of randomized clinical trials Diabetes Obes Metab.2013 Feb;15(2):112-20PMID:22925682
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22925682
(※2) Patil HR.et.al.Meta-Analysis of Effect of Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors on Cardiovascular Risk in Type 2 Diabetes Mellitus Am J Cardiol. 2012 Jun 14[Epub ahead of print]PMID:22703861
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22703861
(※3) Savarese G.et.al. Cardiovascular effects of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors in diabetic patients: A meta-analysis. Int J Cardiol. 2014 Dec 3;181C:239-244. PMID: 25528528
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25528528
(※4) Wu S.et.al. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and cardiovascular outcomes: meta-analysis of randomized clinical trials with 55,141 participants. Cardiovasc Ther. 2014 Aug;32(4):147-58. PMID: 24750644
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24750644
(※5) Scirica BM, et al. Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus. N Engl J Med.2013 Oct 3;369(14):1317-26. PMID 23992601
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992601
(※6) White WB, et al. Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2013 Oct 3;369(14):1327-35. PMID: 23992602
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992602
(※7) Green JB.et.al. Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Jun 8. [Epub ahead of print] PMID: 26052984
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26052984
(※8) Scirica BM,.et,al, Heart failure, saxagliptin, and diabetes mellitus: observations from the SAVOR-TIMI 53 randomized trial.Circulation. 2014 Oct 28;130(18):1579-88. PMID: 25189213
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25189213
(※9) Monami M, Dicembrini I, Mannucci E.Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and heart failure: A meta-analysis of randomized clinical trials. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2014 Jul;24(7):689-97. PMID: 24793580
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24793580
(※10) Weir DL,.et.al. Sitagliptin use in patients with diabetes and heart failure: a population-based retrospective cohort study. JACC Heart Fail. 2014 Dec;2(6):573-82. PMID: 24998080
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24998080
(※11)Fadini GP, Avogaro A, Degli Esposti L.et.al. Risk of hospitalization for heart failure in patients with type 2 diabetes newly treated with DPP-4 inhibitors or other oral glucose-lowering medications: a retrospective registry study on 127,555 patients from the Nationwide OsMed Health-DB Database. Eur Heart J. 2015 Jun 25. pii: ehv301. [Epub ahead of print] PMID: 26112890
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26112890
(※12) Sue M.et.al. A case of severe acute necrotizing pancreatitis after administration of sitagliptin.Clin Med Insights Case Rep. 2013;6:23-7.PMID: 23467428
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23467428
(※13) Girgis CM.et.al. Vildagliptin-induced acute pancreatitis. Endocr Pract. 2011 May-Jun;17(3):e48-50PMID: 21324812
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21324812
(※14)Kunjathaya P.et,al.Acute necrotizing pancreatitis associated with vildagliptin. JOP. 2013 Jan 10;14(1):81-4.PMID: 23306341
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23306341
(※15)Singh S Chang HY, Richards TM.et.al. Glucagonlike Peptide 1-Based Terapies and Risk of Hospitalization for Acute Pancreatitis in Typ 2 Diabetes MellitusJAMA Intern Med. 2013 Apr 8;173(7):534-9 PMID:23440284
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23440284
(※16)Giorda CB, Picariello R2, Nada E.et.al. Incretin therapies and risk of hospital admission for acute pancreatitis in an unselected population of European with type 2 diabetes : a case-control studyLancet Diabetes Endocrinol. 2014 Feb;2(2):111-5. PMID: 24622714
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24622714
(※17)Monami M, Dicembrini I, Mannucci E.Dipeptidyl-peptidase-4 inhibitors and pancreatitis risk : a meta-analysis of randomized clinical trials.Diabetes Obes Metab 2014 jan;16(1):48-56.PMID:23837679
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23837679
(※18)Li X, Zhang Z, Duke J.Glucagon-like peptide 1-based therapies and risk of pancreatitis: a self-controlled case series analysis.Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2014 Mar;23(3):234-9.PMID: 24741695
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24741695
(※19)Li L, Shen J, Bala MM.et.al. Incretin treatment and risk of pancreatitis in patients with type 2 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis of randomised and non-randomised studies BMJ. 2014 Apr 15;348:g2366. PMID: 24736555
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24736555
(※20)Faillie JL, Azoulay L, Patenaude V.et.al. Incretin based drugs and risk of acute pancreatitis in patients with type 2 diabetes: cohort study BMJ. 2014 Apr 24;348:g2780PMID: 24764569
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24764569
(※21)Meier JJ, Nauck MA.Risk of pancreatitis in patients treated with incretin-based therapies
Diabetologia. 2014 Jul;57(7):1320-4. PMID: 24723174
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24723174
(※22)Thomsen RW.et.al.Thomsen RW, Pedersen L, Møller N.et.al. Incretin-Based Therapy and Risk of Acute Pancreatitis: A Nationwide Population-Based Case-Control Study. Diabetes Care. 2015 Jan 29. PMID: 25633664
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25633664


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-
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■再燃、再発性うつ病に対するマインドフルネス認知行動療法の効果■
Kuyken W, Hayes R, Barrett B.et.al. Effectiveness and cost-effectiveness of mindfulness-based cognitive therapy compared with maintenance antidepressant treatment in the prevention of depressive relapse or recurrence (PREVENT): a randomised controlled trial. Lancet. 2015 Apr 20. pii: S0140-6736(14)62222-4. PMID: 25907157
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25907157
背景と研究デザイン:再発性うつ病の既往のある患者においては、再発や再燃リスクが高い。少なくとも2年の抗うつ薬による維持療法が推奨されている。しかし、多くの人が抗うつ薬を用いない代替え療法に関心を寄せている。マインドフルネスに基づく認知行動療法(MBCT)は通常ケアに比べてうつ病の再燃、再発リスクを減らす可能性が示唆されているが、抗うつ薬の維持療法と比較し多研究は無い。MBCTと抗うつ薬の減量もしくは中止による治療と抗うつ薬維持療法を比較してうつ病の再燃、再発リスクを検討したランダム化比較試験

P:過去に3回以上のうつ病ある患者で抗うつ薬による維持療法をうけている424人(平均50歳、女性71~82%)
E:マインドフルネス認知行動療法+抗うつ薬の漸減、中止介入212人
C:抗うつ薬の維持療法212人
O:うつ病の再燃、再発

統計解析:intention to treat
盲検化:single-blind
サンプルサイズ:420人(パワー90%、α5%)
追跡期間24か月

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
プライマリアウトカム 94/212[44%] 100/212[47%] 0.89[0.67~1.18]


両群に明確な差を認めず。有意差なし=同等ではない。また非劣性試験ではないのでその解釈には議論の余地があるかもしれないが、抗うつ薬維持療法における薬剤減量を行える可能性を示唆しているともいえる。

■喫煙肺癌患者における禁煙効果■
Dobson Amato KA. Hyland A, Reed R.et.al. Tobacco Cessation May Improve Lung Cancer Patient Survival. J Thorac Oncol. 2015 Jul;10(7):1014-9. PMID: 26102442
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26102442
背景と研究デザイン:肺癌患者における喫煙と生存期間への影響を検討した解析

P: 30日以内にたばこを吸ったことのある肺癌患者
E:電話による禁煙サービスプログラムの実施250人
C:継続的に喫煙していた場合
O:全生存期間

250人のうち102人(40.8%)がプログラムを終了した。年齢、性別、pack year history,診断までの期間、Eastern Cooperative Oncology Group performance status,等で補正。全生存期間は中央値で9ヶ月改善した。ハザード比1.79[95%信頼区間1.14~2.82]

■学校ベース自殺予防プログラム介入の有用性■
Wasserman D, Hoven CW, Wasserman C.et.al. School-based suicide prevention programmes: the SEYLE cluster-randomised, controlled trial. Lancet. 2015 Apr 18;385(9977):1536-44. PMID: 25579833
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25579833
背景と研究デザイン:青年による自殺は公衆衛生上の重大な問題である。エビデンスベースの自殺予防プログラムが必要とされている。学校ベースでの自殺予防プログラムの有用性を検討したクラスターランダム化比較試験

P:欧州168校に通う生徒11,110人。年齢中央値15 歳(IQR 14-15)。学校単位でランダム化
E:①教師や他の学校職員に対する、質問、説得、照会のゲートキーパートレーニング(40校2692人)
E:②生徒を対象にしたメンタルプログラム(45校2721人)
E:③専門家によるリスクのある生徒のスクリーニング(43校2764人)
C:コントロール群(40校 2933人)
O3か月、12か月後の自殺企図件数
統計解析:ITT

コントロール群と比較して3か月時点でどの介入群も明確な差を認めない。12カ月フォローで生徒を対象にしたメンタルプログラムで自殺企図件数低下が示唆された。

オッズ比[95%信頼区間]
介入 3か月 12か月
ゲートキーパー 0.62[0.32~1.18] 0.70[0.39~1.25]
メンタルプログラム 0.78[0.42~1.44] 0.45[0.24~0.85]
スクリーニング 1.10[0.61~1.97] 0.65[0.36~1.18]



■地中海色と認知機能■
Valls-Pedret C, Sala-Vila A, Serra-Mir M.et.al. Mediterranean Diet and Age-Related Cognitive Decline: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2015 Jul 1;175(7):1094-103. PMID: 25961184
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25961184
背景と研究デザイン:地中海食は抗酸化物質を豊富に含み認知機能低下を浴せする可能性が示唆されている。しかし臨床エビデンスが限定的である。ランダム化比較試験PREDIMEDの一環で行われた地中海食と認知機能低下に関する報告

P心血管リスクはあるものの、認知機能の低下のない447人(平均66.9歳、女性52.1%)
E:①地中海食+オリーブオイル
E:②地中海食+ナッツ
C:低脂肪食(コントロール)
O:認知機能(記憶力、前頭葉機能の評価、包括的認知機能の評価)

追跡期間:中央値4.1年でE①、E②ともに認知機能改善を認めた。
認知機能スコアの変化Z値は以下の通り。

スコア変化(Z値)
介入 記憶力 前頭葉機能 結果
地中海食+オリーブオイル 0.04(−0.09~0.18) 0.23(0.03~0.43 0.05(−0.11~0.21)
地中海食+ナッツ 0.09(−0.05~0.23 0.03(−0.25~0.31) −0.05(−0.27~0.18
低脂肪食 −0.17(−0.32~−0.01) 0.33(−0.57~−0.09) −0.38(−0.57~−0.18)


■近隣環境と糖尿病リスク■
Christine PJ.et.al. Longitudinal Associations Between Neighborhood Physical and Social Environments and Incident Type 2 Diabetes Mellitus: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA). JAMA Intern Med. 2015 Jun 29. [Epub ahead of print]PMID: 26121402
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26121402

背景と研究デザイン:近隣の環境と2型糖尿病リスクを検討したコホート研究。

P:45歳~84歳の2型糖尿病でない参加者5124人
E:健康的な食品の利用や、身体活動のリソースなどがある近隣の環境
C:健康的な食品の利用や、身体活動のリソースなどがない近隣の環境
O:2型糖尿病発症。
追跡期間:中央値8.9年

・健康的な食品利用環境は糖尿病リスク12%低下。ハザード比0.88[0.79~0.88]
・身体活動のリソースのある環境は糖尿病リスク21%低下。ハザード比0.79[0.71~0.88]

■社会的地位と肥満■
Kachi Y, Otsuka T, Kawada T. Socioeconomic Status and Overweight: A Population-Based Cross-Sectional Study of Japanese Children and Adolescents. J Epidemiol. 2015 Jul 5;25(7):463-9. PMID: 26005066
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26005066
背景と研究デザイン:肥満の決定要因として、社会経済的地位(SES)は、日本ではわずかな注目を集めている。SESと小児、若年層での肥満の関連を検討した横断研究。

P:日本人の小児(6~11歳)397人、青年(12~18歳)397人
E:社会的地位(中所得、低支出)
C社会的地位(高所得、高支出)
O:肥満

交絡因子への配慮:年齢、性別、および親の体重の状態

・中所得世帯在住の青年では高所得世帯在住の子供より過体重が多い。
オッズ比2.26[95%信頼区間1.01-5.67]
・低所支出帯の青年では高支出世帯在住の子供より過体重が多い。
オッズ比3.40[95%信頼区間1.20-9.60]

なお小児では明確な関連を認めない。
低い社会経済的地位の青年は親の体重とは独立して過体重である可能性が示唆された。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-
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■シタグリプチンとシンバスタチンの併用による腎不全■
Kao DP.et.al. Renal failure and rhabdomyolysis associated with sitagliptin and simvastatin use. Diabet Med. 2008 Oct;25(10):1229-30PMID: 19046202
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19046202
腎機能低下者ではシタグリプチンの用量調節が推奨されている。シタグリプチンとシンバスタチンの併用で慢性腎不全をきたした症例の報告

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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DPP4阻害薬の大規模臨床試験がおおむね出そろいました。いずれも糖尿病新規発症者が対象となっている者ではありません。本トライアルを持って糖尿病の第一選択として積極的に使用すべき根拠とはならないでしょう。当然ながらプラセボに比べてイベントを抑制できるかどうかは今をもって不明です。そんな薬剤が糖尿病治療の主軸を担いかけている現状は確かにあるような気もしています。

次回は厳格血糖コントロールについてまとめていきます。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

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