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神戸:ファルコンの散歩メモ

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  • ハッシュタグ「#読書」の検索結果1757件

今年の読書(141)『かばん屋の相続』池井戸潤(文春文庫)

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今年の読書(141)『かばん屋...
<今年の読書>も、目標の120冊を超え、141冊目でいよいよ最後になりました。
著者の本は初めて読みましたが、どれも質の高い短篇が6話が収められています。

元銀行員の経歴を生かし、6編のお話しはどれも銀行員を主人公として、中小企業の社長さんたちとの金銭に関わる出来事を、銀行員の目線で、優しくもありタテ社会の銀行内部の哀愁もありと、人間関係を主軸にお金を中心とした物語が展開されてゆきます。

タイトルの『かばん屋の相続』は、読み出してすぐに京都の有名な「一澤帆布」の相続争いがネタ元だと気が付きますが、著者流の味付でほっとする結末は見事です。

お金自体は単なる経済社会の中で、国に保障された<印刷物>ですが、扱う人間によって価値観が変わる<印刷物>でもあることを、改めて感じさせてくれた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(140)『はいつくばって慈悲を乞え』ロジャー・スミス(早川書房)

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今年の読書(140)『はいつく...
2009年に発表された第一作目の『血のケープタウン』に続き、同じく南アフリカ共和国のケープタウンを舞台とする犯罪小説です。

元モデルの<ロクシー>は、武器商人の夫と帰宅中に強盗に襲われ、ベンツを盗まれますが、その際強盗が落としていった拳銃で夫を射殺してしまいます。
<ロクシー>の行動に疑問をもった強盗たちは、彼女をゆすろうと出向いてきます。
そんなとき夫に雇われていた傭兵の元刑事<ビリー>が、遅れている支払いを求めに訪ねてきますが、未払いの賃金をもらえるまでの期間、<ロクシー>の護衛役をかってでます。

ケープタウンという犯罪が当たり前に横行する街を中心に置き、対抗する二つのギャング団の抗争を絡め、また<ビリー>の幼馴染であり終身刑者の<パイパー>が脱走し、横暴な殺戮が繰り返されてゆきます。

登場人物たちがどこかで過去の接点を持ち、人種差別の強いケープタウンの社会背景を巧みに取り入れながら、ラストまで一気に読ませるクライムスリラー小説として、読み応えのある一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(139)『小さな理由』森浩美(双葉文庫)

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今年の読書(139)『小さな理...
『家族の言い訳』・『こちらの事情』 に続く、「双葉文庫」からの<家族小説短篇集シリーズ>として著者の三冊目になる『小さな理由』です。

父と娘、母と息子、男兄弟、夫と妻等、家族の形態をいろいろと使い分けながら、著者の目線は「家族とは、こうあるべきだ」というおしきせがなく、ただ淡々と読者に物語として語りかけています。

幸せも不幸せも、その家族、家族によって違いますし、喜びや悲しみの内容も千差万別です。
   端から見れば、
   取るに足りない理由かもしれない。
   でも、その小さな理由がなければ
   人は生きていけない。
冒頭で著者が書かれている言葉ですが、登場するそれぞれの家族に取っての「小さな理由」を織り込みながら、何気ない人間の<愛情>が素直に表現されている8話の短篇集、今回も感動させていただきました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(138)『暴雪圏』佐々木譲(新潮文庫)

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今年の読書(138)『暴雪圏』...
『制服捜査』に続く、シリーズです。
札幌の刑事だった<川久保篤>は、道警不祥事のあおりのために、志茂別駐在所に単身赴任しています。

三月末に「彼岸荒れ」と呼ばれる強烈な暴雪が起こり、志茂別近辺の交通網は遮断され、大きな密室状態に町は閉ざされてしまいます。

そんな暴雪のなか、暴力団の組長宅に二人組の強盗がおそい、組長の妻を射殺して現金を強奪する事件が起こります。
事件と並行して、出会い系サイトで不倫関係に陥り、夫に知られる前に自力で解決しようとする主婦や、義父の性的虐待から逃れるために家出した女子高生、病気で死にゆくだけの人生に絶望して会社のお金を持ち逃げした会社員等が、吹雪の中一軒のペンションに偶然に集まり、天気の回復を待つ長い夜が始まります。

逃亡する犯人を縦軸に、それぞれの人生を切り開こうとする市井の人々を横軸として、人間ドラマが紡ぎ出されるサスペンスに仕上がっています。
<川久保篤>の駐在所員としての人間的な側面も良く出ており、警察小説としての魅力も十分です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(137)『偽計』相場英雄(双葉文庫)

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今年の読書(137)『偽計』相...
副題に「みちのく麺食い記者」とありますように、福島・山形・青森・秋田・岩手に続き、最終の6作品目で宮城県が舞台です。
前作までは読んでいませんが、新聞記者<宮沢賢一郎>が東京から遊軍記者として派遣された仙台総局を中心に活躍するミステリーシリズだと想像できます。

所属しています大和新聞社の経理局長が、怪しげな投資ファンドで会社のお金を運用して70億円もの損失を出し、仙台に逃避しているという情報を得た<宮沢>は調査に乗りだしますが、経理局長は殺され、ファンドと関わりのある人物の第二の殺人事件が起こります。

冒頭はアメリカの<9・11事件>から始まるのですが、話しの筋とどこで結びつくのかと訝りながら読み進めましたが、計算された筋立てと思わぬ犯人の存在、持ちつ持たれつの警察関係者との絡みなど、一気に読み進める内容でした。

新聞記者を主人公にした堂場瞬一の 『虚報』 も秀逸でしたが、時間に追われる新聞業界の舞台は緊迫感に追われ、楽しめる世界です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(136)『虚栄の肖像』北森鴻(文春文庫)

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今年の読書(136)『虚栄の肖...
主人公の<佐月恭壱>は、花師として銀座のお店に花を飾ることを生業としていますが、同時に絵画修復師として二つの顔を持っています。

個人の肖像画、古備前のツボ、藤田嗣治、女体の秘画等、絵画修復にまつわる三編の物語が連作で続き、<佐月>の過去の人生も浮かび上がらせます。

絵画修復と言う特殊な分野の話が中心ですので、興味深い美術の裏世界が垣間見れました。

内容が濃く楽しめた美術ミステリーだけに、著者がすでの2010年1月に逝去されており、この<佐月恭壱>の続きが読めないのが残念に思える一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(135)『公園で逢いましょう』三羽省吾(祥伝社文庫)

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今年の読書(135)『公園で逢...
読み終わりただ一言、「これはいい本に当たった」というのが正直な感想です。
年末に入り、一躍今年の読書のベスト5に躍り出た感があります。

「公園デビュー」という言葉が一時流行りましたが、市営アパートに付属する通称「ひょうたん公園」に、子供を連れて集まる5人のお母さんたちを主人公として、それぞれが歩んできた人生を、連作短篇5話として組まれています。

お母さんが井戸端会議に夢中の間、よその子供たちの動向を見守っている母親、最年少の二十歳で二児の母親、ブランド物で身を固めている母親、眼鏡の物静かな母親、しきりたがり屋の母親等、それぞれ個性ある母親たちの目線から、自らの人生を見つめ直した短篇が続き、著者の切りこんだ人間性溢れる描写に、ただただ感動を覚えて読み終わりました。

乱読派として気になる本を読んでいますが、「なるほど」と思わずうなってしまう著者の目線に、感動しました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(134)『有馬温泉 陶泉御所坊殺人事件』柏木圭一郎(小学館文庫)

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今年の読書(134)『有馬温泉...
神戸は観光都市として人気があるのか、一時期神戸に居を構えていた斉藤栄や、西村京太郎、山村美沙など多くの推理作家が、殺人事件の舞台としてよく利用しています。

今回は神戸市北区にあり、日本三大古湯に数えられる有馬温泉が舞台の推理小説です。
主人公の<京極要平>は、日本造形大学建築学部の教授です。
実家が京都の旅館を経営している素地から、日本の旅館建築を研究しています。

幼馴染の<木俣次郎>の家族たちと名旅館「陶泉 御所坊」にて旧交を温めた翌朝、<次郎>が別館の庭で死亡しているのが発見されます。
有馬署の刑事は誤って転落した事故死として処理しようとしますが、助手の<奈々子>が裏から手を回し、有馬署から兵庫県警の捜査に切り替わります。<奈々子>は総理大臣<鷹山征夫(ゆきお)>の娘であり、<要平>と共に事件解決に乗り出します。

文中に出てくる旅館や建物、街並みや飲食店等はすべて実在しており、「陶泉 御所坊(ごしょのぼう)」は1191年創業の由緒ある旅館です。
古き良き木造3階建てを維持する一方、西洋文化の良さを旅館に取り込む努力をされています。

<京極要平>と<奈々子>の二人を中心に、日本の名旅館が登場する事件簿がシリーズ化されるようで、今後を期待しています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(133)『毒のある街 K・S・P』香納諒一(徳間文庫)

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今年の読書(133)『毒のある...
第一作目の 『孤独なき地』 に続く、<歌舞伎町特別分署(K・S・P)>シリーズの二作目です。
多くの警察小説が出版されていますが、登場人物のあざやかな性格づけが緻密に構成されているのは、著者自らが「10作まで続ける」という構想を持ち得ているからだと見ています。

一作目以降おだやかな歌舞伎町でしたが、暴力団神流会の構成員二人が射殺されるところから物語は始まります。
重ねて、神竜会の幹部までが、中国マフィアに爆弾で処刑される事件が起こり、利権の勢力争いと報復が繰り返されるなか、主人公の<沖>がどう対処してゆくのかが楽しめる一冊です。

前作で登場した新署長の秘書であった<村井貴里子>が、(K・S・P)のチーフに昇格、<沖>は彼女の部下となり捜査を進めざる得なくなる展開も、前作に散りばめられた下地が生きてきています。

暴力団と中国マフィアの抗争のなか、<沖>の部下だった<円谷>の家族が爆弾で殺され、事件解決後に休暇という形で(K・S・P)を去りますが、きっと「10作」までのどこかで復帰してくるのではないかと、期待しています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(132)『人生の収穫』曾野綾子(河出書房新社)

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今年の読書(132)『人生の収...
若々しいバイタリティーでもって世界中を飛び回られている印象がありますので、曾野綾子さんがはや81歳とは驚きました。

「置いてこそ、人生は輝く」との心意気で、歯に衣を着せぬいつもながらの歯切れのいい文体で、曾野綾子流の独自の目線に拍手を送りながら読み終えました。

・・・つまりあまりにも単純に優等生的な道をえらぶということは、多分それだけで優等生でない証拠なのである。
・・・私の実感によると、人生の面白さは、そのために払った犠牲や危険と、かなり正確に比例している。冒険しないで面白い人生はない、と言ってもいい。
・・・人は最後の瞬間まで、その人らし日常性を保つのが最高なのである。

抜き書きだけでは文意が伝わりにくいのですが、世間の常識にとらわれず、自分独自の価値観でありのままの運命を受け入れる勇気を感じさせてくれるエッセイー集です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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