今年の読書(63)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(みすず書房)
11月
18日
〈ハナバチ〉の認知研究の権威である著者<ラース・チットカ>が、1匹の〈ハチ〉の内にある驚くべき精神生活を説き明かす本書『ハチは心をもっている 1匹が秘める驚異の知性、そして意識』は、2025年2月17日に発売されています。
もちろん、〈ハチ〉の心は人間の心とはまったく異なります。しかし〈ハチ〉の心が「原始的」だと思ったら大間違い。本書の読者はまず、ハチの賢さに驚嘆することでしょう。どんな課題もたちどころに学習し、瞬時に効率のよい判断を下して問題解決していきます。数を数え、道具を使い、ほかのハチやほかの動物から問題解決の方法を盗みさえする、などなど。
この速くて柔軟な心は、採餌や帰巣の必要、〈ハチ〉の形態やサイズなどに適う方向へ、進化の手が精巧に磨き上げてきた結果です。<ファーブル>、<カール・フォン・フリッシュ>、<マルティン・リンダウアー>、そしてもちろん著者自身も含め、数多の研究者たちがアイデアを凝らした巧妙な実験によって、その「異なる心」の解明に挑んできました。本書は、科学実験がいかにクリエーティブな営みであるかを知ることができ、〈ハチ〉の内面を探る実験のおもしろさも本書の大きな読みどころの一つになっています。
著者は〈ハチ〉の個体が「パーソナリティ」をもち、「自他」を区別し、内的表象を形成し、苦痛や情動を経験するといった心的機能も探っています。本書を読む前と後で、〈ハチ〉はもちろん、すべての昆虫への見方が変わることでしょう。










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