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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(49)『半導体』大鹿靖明(講談社)

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今年の読書(49)『半導体』大...
ダウ平均株価や日経平均株価の値動きに注目していますが、必ずと言っていいほど「AI・半導体銘柄」に関する項目が株価指数の変動要素として反映・登場し、世界経済を動かしています。ということで〈半導体〉というタイトルに惹かれて手にしました<大鹿靖明>の『半導体』で、2026年5月28日に(講談社)より刊行されています。
 
2010年、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視艇に体当たりし、海保職員によって船長が逮捕されました。中国はこれに反発し、〈レアアース〉の輸出を全面禁止すると通告してきます。狼狽した民主党の<菅直人首相>は処分保留のまま船長を釈放します。一連の経緯によって、中国は〈レアアース〉を「戦略物資」することで切り札になることを学習します。
 
翌年の東日本大震災と福島第一原発の放射能漏れ事故によって、日本は太陽光発電を中心とした自然エネルギーに大きく軸足を移しますが、すでに太陽電池の生産は中国メーカーに主導権を奪われつつありました。中国は先進諸国から学んだ技術をもとに政府から巨額の補助金を得てあっという間に日本メーカーを駆逐し、世界市場を握っています。
同じころ、半導体製造の根幹となる露光装置でも日本は後発のオランダ企業に打ち負かされようとしていました。次世代の露光装置に極端紫外線(EUV)を使うというアイデアを世界に先駆けて考案したのは日本人研究者でした。しかしニコンが手をこまねいている間にオランダ企業が実用化に成功し、この分野の「世界一強」となりました。
 
リーマン・ショックとそれに続く円高によって、DRAMと言われる半導体メモリを製造するエルピーダが破綻し、米マイクロンに買収されました。続いて、液晶テレビで世界に先駆けたシャープが、新参者の台湾の鴻海精密工業に下克上されています。
 
日本企業の失敗の原因は、成功体験による傲慢さ、企業内外の人事的対立、経営者のリスク回避姿勢です。
 
2010年代初頭、日本のハイテクメーカーは急速に凋落し、気がつくと、韓国や台湾どころか中国に先端製品を抑えられるようになりました。中国への警戒感が台頭するとともに「経済安全保障」という思想がアメリカやヨーロッパからもたらされました。
 
日本企業の持つ技術や製品を囲い込んで、外国の「侵略」から守るという戦略を模索し始め、経産官僚はまずTSMCを誘致することに成功し、渋る財務省を押し切って巨額の補助金をもぎとります。するとアメリカのIBMから「最先端の半導体製造技術を提供する」という話がもたらされます。当初、一部の官僚は半信半疑でしたが、ロシアのウクライナ侵攻が転機となりました。同じように、もし「中国軍が台湾に侵攻」したら、その連想が、後押しします。こうして、新興企業「ラピダス」に10兆円もの国費が投入される巨大プロジェクトが、進行しはじめます。
 
著者は巨額の投資に対して、「航空母艦が必要な時に戦艦大和を建造しているようなもの」とあとがきに記しています。「その投資が正しかったかどうかは数年後に明らかになるだろう」と追記しています。日本の電機企業の盛衰を30年にわたって取材してきた著者にしか書けない壮大な「半導体」の歴史がつづられている一冊でした。
#半導体 #単行本 #読書

今年の読書(46・47)『骸骨ビルの庭(上・下)』宮本輝(集英社文庫)

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今年の読書(46・47)『骸骨...
兵庫県神戸市出身の<宮本輝>の集英社文庫本として『よき時を思う』に続く『骸骨ビルの庭(上・下)』は、2009年6月に講談社より刊行されていますが、2026年7月25日に集英社文庫として発売されています。
 
物語の舞台は、大阪・十三に戦前からある3階建ての通称「骸骨ビル」です。
 
家電メーカーを早期退職した47歳の「八木沢省三郎」は、不動産会社に転職し、ビルの住人を立ち退かせる仕事のため、管理人として住み込むことになります。
 
住人たちは、戦後の混乱期にビルのオーナー「阿部轍正」と、その親友の「茂木泰造」に育てられた戦争孤児達でした。
 
「八木沢」は一見、風変わりな彼らの子どものころからの話に耳を傾けるうち、「骸骨ビル」に身を寄せるまでの彼らの苦難の日々と、「阿部」との間に結ばれた深い絆を知ることになり、その話を日記の形でメモしていたものを「八木沢」の目線で記述した形をとっています。
 
多くの孤児の育ての親となった「阿部」と「茂木」でしたが、しかし5年前、孤児の一人「桐田夏美」がかつて「阿部」から性的虐待を受けたと告発して、マスコミの話題となり、「阿部」は不名誉なまま無念のうちに病で亡くなってしまいます。
 
「茂木」は、「阿部」に着せられた冤罪と汚名を晴らすことができれば、自分たちは速やかに「骸骨ビル」から立ち退くと言いいます。
 
「八木沢」は彼らの思い出にあるビルの庭である畑を甦らせるため庭を耕しはじめ、「茂木」の本心に近づこうとします。
 
多くの孤児たちの現在を通して、戦争の置き土産としての時代背景を巧みに取り入れながら、舞台となる十三を中心に大坂から神戸・明石・京都の阪神間の地域性をうまく取り込んだ構成で、ページが少なくなり読み終えるのが残念に思える物語でした。
#文庫本 #読書

今年の読書(45)『飲中八仙歌─杜甫と李白─』千葉ともこ(新潮社)

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今年の読書(45)『飲中八仙歌...
気温の高い日が続いていますが、ビール党としては、気分良く呑める時期でもあります。そんな中、20025年12月17日に刊行されています気になる題名の『飲中八仙歌─杜甫と李白─』を手にしました。
 
中国の唐時代を生きた詩人の<杜甫>を主人公にしています。まだ何物でもない書生の<杜甫>は、様々な酒好き〈酒仙〉と接しながら、国が腐敗し、民が困窮する激動の時代を生き抜きます。
 
本書は全9章の構成で、章ごとに印象的な人物が登場しています。第1章は、仕官活動をするもうまくいかない<杜甫>が、洛陽の飲み屋で3人の人物と知り合います。詩壇の長老<賀知章>、日本人ですが朝廷に仕えている<阿部仲麻呂>、押して有名な詩人<李白>でした。
 
以後一緒に旅をする<杜甫>と<李白>でしたが、<李白>と別れた後も<杜甫>は〈酒仙〉たちと交わり、詩に己を託し、新年に満ちた人生を歩みます。
 
<杜甫>は、『春望』の冒頭「国破れて山河在り」の境地に辿り着き、民のために皇帝に諫言することを決意します。不遇をかこちながらも志を貫いた大詩人を描いています。
#単行本 #読書

今年の読書(44)『明日のパン』(ノオトBOOKS)

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今年の読書(44)『明日のパン...
関西の日常と人々を描いたエッセイ集『明日のパン』が、7月16日に発売されています。関西ゆかりの21人が、「明日(あした)のパン」にまつわるエッセイを書き下ろしています
 
「明日のパン」は、主に関西エリアの日常会話で毎日のように耳にする言葉です。夕方のスーパーマーケットでは「明日のパン、買わな!」という声が聞こえ、家族に「明日のパン、買うてきて」と頼む場面が日常に溶け込んでいます。SNSでは「翌朝のパンを“明日のパン”と言うのは関西だけ?」「他に何て言うの?」など、しばしば話題になるようです。
 
■エッセイのタイトルと著者一覧(掲載順)
「絶対、6枚切り」鈴木潤(子どもの本専門店「メリーゴーランド京都」店主)
「スクランブル」川西賢志郎(芸人・「M-1グランプリ」ファイナリスト)
「夜のミスタードーナッツ」清繭子(エッセイスト)
「ずっと食べたい」谷じゃこ(歌人)
「母が選んでいたもの」虫明麻衣(編集者・エッセイスト)
「家出中年」いぬじん(ブロガー)
「明日の明日の明日の矛盾をあなたと」はらだ有彩(テキストレーター)
「青春の朝ごはん」稲田俊輔(料理人・文筆家・南インド料理店「エリックサウス」総料理長)
「大阪の鍋の中で」紅ゆずる(俳優・元宝塚歌劇団星組トップスター)
「いつまでも大阪の初心者」スズキナオ(ライター)
「母のおまじない、父の作文。」中前結花(エッセイスト)
「可能性を減らす」大前粟生(小説家)
「京都とポケモンシール」谷川嘉浩(哲学者)
「明日の約束」黒田季菜子(児童文学作家)
「北から西へ、ふたりの朝食はつづく」宮浦宜子(食卓ディレクター・Life on the table 主宰)
「近畿の果てから」なか憲人(漫画家・ウェブライター)
「持ち運べる命」福井晶(食のライター・編集者)
「いつも、ちょっと、辛気くさい」中井治郎(社会学者)
「雨蛙男のフレンチトースト」津田匡保(ファンベースカンパニー代表取締役社長/CEO)
「すてきなピンジェント」藤井亮(映像作家・クリエイティブディレクター)
「明日のサンドイッチ」しまだあや(作家)
 
#単行本 #読書

今年の読書(42・43)『判事の殺人リスト』(上・下)ジョン・グリシャム(新潮文庫)

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今年の読書(42・43)『判事...
法廷小説では第一人者といってもいい<ジョン・グリシャム>ですが、『告発者』(上・下)以来に手にしました、本書『判事の殺人リスト』は、2025年12月22日に文庫本(上・下)が発売されています。
 
法廷を描いた小説は、国内外共に多くありますが、裁判を扱う小説の舞台は法廷だけに限りません。本書は、現役判事の不法行為を調査する公務員が主人公の物語です。
 
主人公「レイシー」はフロリダ州司法審査会の調査官ですが、彼女の下にある告発が寄せられます。大学教授を務める女性「ジェリ」によると、22年前に父親を殺したのが現職の地区裁判所の判事で、過去に何件もの殺人に手を染めているというのでした。「レイシー」は警察官のような逮捕権限がありません。告発者が小出しにする状況証拠は確かに判事が殺人者だと示しています。
 
派手な展開に頼らず、小刻みに盛り上げ、狂気な事件を扱いつつも、冷静に、理知的に物語は展開していきます。
#文庫本 #読書

今年の読書(41)『古本屋の誕生』鹿島茂(草思社)

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今年の読書(41)『古本屋の誕...
中学生時代からお世話になりました「古本屋」も、神戸では数少なくなりました。このブログルで私の2007年12月16日の初投稿は、《古書店が消えてゆく》でした。
 
本書は、19世紀フランス文学を専門とするフランス文学者、文芸評論家、翻訳家の著者による〈知と文化の集積地はいかにして作られてきたか?〉ということで、江戸時代の「書店」の誕生から、明治以降の東京古書界の変遷まで、本の街の歴史を詳細にたどる一冊です。
 
古本屋はいつから存在するのかという基本的な疑問は、本書によれば書物の売買に関する記述が登場するのは平安時代だといいます。時代が下りますと店舗を構える書店が登場しますが「新刊本屋」と「古本屋」が分けられるのは、明治初年の頃になります。つまり江戸時代には「新刊」と「古書」は一緒に扱われていました。
 
著者は、古書店主たちが書き残した記述を紐解きながら、古書店の誕生と、神田神保町の古書街誕生の過程を解き明かしていきます。
 
また明治以降の出版業界の実情に踏み込み、これからの書物を取り巻く厳しい環境に一条の光を見いだす一石を投じている構成でした。
#単行本 #古書店 #古本屋 #読書

今年の読書(40)『夏帆』村上春樹(新潮社)

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今年の読書(40)『夏帆』村上...
先だって取り上げました、2026年7月3日発売されました<村上春樹>の新刊『夏帆─The Tale of KAHO─』です。
 
 「夏帆」という女性を主人公にした初の長編小説。冒頭に面と向かって「醜い」だの「不美人」だの「不器量」だという男が登場して、なんと無礼な奴だと驚かされます。
 
外見を非常に重視する「ルッキズム」や女を見下そうとする「有害な男らしさ」に対する反省が、現代社会に根付きつつあります。本作でもダメな男に対刷る戦いが展開されるかと思いきや、物語はファンタジーや奇想を軸としてのびやかに進んでいきます。
 
本書は「ありくい小説」とでもいうべく、細長い舌で、大量の蟻を舐めとる動物が重要な役割を演じ、「夏帆」の人生に大きな転変をもたらします。ブラジルからやってきたありくいの夫婦は「夏帆」に救いを求めると共に、彼女の直面する危機を救う役割を担います。
 
 また。「夏帆」が26歳の絵本作家ゆえの面白さも楽しめます。彼女が描く新作の内容が、小説の展開と同期して次の展開に期待がかります。

綿密な構成の〈村上ワールド〉ですが、この小説が〈娘と母の物語〉であるということです。この枠組みは〈娘と母の和解の物語〉とも言い換えられるし、どぎつい表現を使えば〈娘による母殺しの物語〉”でもあるようです。
#単行本 #読書

今年の読書(39)『映画のロケ地を歩く』津田なおみ(神戸新聞総合出版センター)

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今年の読書(39)『映画のロケ...
映画評論家、フリーアナウンサーとして活躍中の<津田なおみ>が、兵庫県内で撮影された映画のロケ地を訪ね、映画を彩る兵庫県内の60カ所を、撮影エピソードなどと共にまとめています『映画のロケ地を歩く ひょうご シネマの旅』は、2025年3月に刊行されていますします。

本書は、神戸新聞の夕刊に連載されました『兵庫舞台の名画』を単行本化されています。一冊の本にまとめられたことで、兵庫県のどんな場所がロケ地として人気があるのかが、よくわかります。
 
現在、作品に合ったロケ地を制作側に紹介する組織「フィルム・コミッション」が各地にありますが、2000年に誕生しました「神戸フィルムオフィス」は先駆者として、すでに3700以上の映画や映像作品を支援してきています。
 
神戸市出身の作家<村上春樹>原作の『ノルウェイの森』『ラストサムライ』などをはじめ、神戸市内で撮影が行われました『新宿インシデント』・『スパイの妻』などの作品をはじめ、いかに多くの作品が兵庫県かで撮影されてきたかを実感できる一冊になっています。
#ロケ地 #単行本 #映画 #読書

今年の読書(38)『避けた明日』佐々木譲(新潮文庫)

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今年の読書(38)『避けた明日...
歴史や犯罪を題材とした重厚な作風が好きな作家のひとり<佐々木譲>の『避けた明日』は、2022年8月に刊行され、2026年6月1日に文庫本が発売されています。
 
『偽装同盟』の系統に並ぶ、内戦と分断で崩壊した近未来の日本を舞台にしたサバイバル・ドラマです。
 
市役所を定年後福島県二本松市で独り暮らしの「沖本信也」のもとに、少女「由奈」を連れた女性「酒井真智」が、〈北〉から逃れてきて現れます。テロだとみなされ、敵に追われている、といいます。
 
「酒井真智」は、「沖本」の大学時代のサークル仲間の「酒井史子」の娘でした。記憶力の良い<由奈>の頭脳は反政府活動の人物のデータベースとなっており、各勢力から命を狙われていました。
 
南海大地震を契機として日本は戦争に敗北し、多国籍軍が進駐。国内は盛岡政府軍や民間防衛隊など複数の勢力が入り乱れ、テロと銃撃が頻発していました。「沖本」は二人を安全圏まで送り届けること考えますが、その道すがら、彼女の仲間がいる東京まで同行することを決意します。役所勤めの経験を生かし、検問を抜け、福島から東京まで、あらゆる危機をすり抜けていきます。なぜそこまで友人の娘だというだけで自身の命を賭けてまで、占領軍が徘徊する地域を抜け検問を潜り抜けていくのか? 
 
最後の場面で、銃撃戦の中で絞り出された「沖本」の言葉で、この物語は、単なる戦争中の冒険小説ではなく、過去の情熱の後悔をエネルギーとする恋愛小説という伏線が隠された慟哭の近未来小説だとの感動とともに、読み終えることができます。
#文庫本 #読書

今年の読書(37)『ダブルマザー』辻堂ゆめ(幻冬舎)

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今年の読書(37)『ダブルマザ...
<辻堂夢>による『ダブルマザー』は、2024年9月.19日に 発売されています。
 
暴投から目まぐるしい展開に引き付けられます。馬淵温子の一人娘「鈴」が、列車の飛び込み死亡します。1週間後。温子は娘のバッグの底に「柳島詩音」の学生証とスマホを見つけます。温子が「詩音」の連絡先に電話を入れると母親の「由里枝」が出て、「詩音」は「探さないで」という書置きを残し、1週間前から行方不明だといいます。
 
やがて家を訪ねてきた「由里枝」は、「スズ」の遺影を見て「詩音!」と叫びます。二人は瓜二つでした。
 
亡くなったのは「鈴」なのか「詩音」なのか。性格も家庭環境も全く異なる二人の共通点はただひとつ。娘のことを何も知らないということでした。
 
性格も家庭環境も全く異なる二人の母親が、それぞれの娘の足跡を追い始めることで、思いもよらない事実と事件の真相が明らかになっていきます。
 
秘密を抱えた二人の母親と本音を隠して生きてきた娘たちとのドラマは終盤にひっくり返ります。悪意がとがり、純情が際立ち、気色悪さと切なさが交じり合う結末へと進みます。
 
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