今年の読書(49)『おいしいの「ものさし」』上野直哉(フォレスト出版)
9月
16日
日本料理の枠にとらわれない自由な発想と地の素材への真摯な姿勢により、ミシュランガイドで5 年連続二つ星を獲得しています著者<上野直哉>さんは、1970 年大阪府生まれ。老舗「㐂川」創業者<上野修三>の次男。18 歳で京都「菊乃井」主人<村田吉弘>に師事。2004 年、神戸に「玄斎」(神戸市中央区中山手通4-16-14)を開店しています。
本書は、レシピに頼らない料理のしかたとして、“レシピを見るのはいい。けれども、レシピに縛られすぎていないか? という問いを私たちに投げかけています。
帯に一文を寄せてます「菊乃井」の< 村田吉弘>さんは昨今、「アレンジのアレンジ」のような食のエンタメ化に警鐘を鳴らしておられ、奇しくも弟子である<上野直哉>が呼応したような形となっています。
「味見をして、少し違うと感じたら、自分の味に調整する力」、「何度か作ってみることで、自分なりの正解が見えてくる」「誰かのレシピ」ではなく、「自分のものさし」で料理をすることを説いています。どなたの料理本か著者は失念しましたが、使用する調味料の材料だけの料理本がありました。数字はミスプリントもあり、信用すべきものではきなく、自分の舌だけが頼りだという考え方に納得しました。
「料理に伝承された〈技〉など存在しない」「〈おいしい〉は他人ではなく自分が決めるもの」といった発言の数々は、伝統や常識に囚われがちな現代の料理観に一石を投じる内容となっており、料理人に限らず多くの読者の共感を与える内容だと思います。