《 雅羅・/・襍録〝蔓性植物 Ⅱ〟❖ 24-287 ❖ 》

ヤブガラシ(藪枯らし) ブドウ... ヤブガラシ(藪枯らし) ブドウ科(Vitaceae)
学名:Cayratia japonica (Thunb.) Gagnep.
別名:ビンボウカズラ(貧乏葛)
ヤブガラシ(藪枯らし);つる性... ヤブガラシ(藪枯らし);つる性多年草
北海道西南部〜琉球の畑や藪に生え、長く根を伸ばし繁殖する。
若い部分には粒状の突起毛がある。
茎には稜角があり、托葉は卵状三角形で、膜質。
葉は互生し、柄があり、鳥足状に配列する5小葉。
頂小葉は、柄があり、狭卵形で尖る。
波状の鋸歯があり、鋸歯の先は小さな突起になる。
表面は深緑色で、側脈は6〜8対、表面は窪み、裏面は隆起する。
側小葉は頂小葉より小型で、柄も短い。
巻きひげは葉もしくは花序と対生し、先は分枝する。
花序は扁平な集散花序で突起毛がある。萼片は低い。
花弁は4個あり、卵状三角形で、淡緑色。
平開し、背面には突起毛があり、先端は僧帽状。
雄蕊は4個、葯は長楕円形。
花盤は平らに広がり、はじめ紅色、後に橙色に変わる。
子房は1個、花柱は1個、柱状で直立する。
液果は球形まれにややだるま形で黒熟する。種子は広卵形。
関東以西に分布する2倍体のものはよく結実するが、
近畿以東に分布し東日本に多い3倍体のものは結実しない。
別名ヤブガラシ。花期は6〜8月。(野に咲く花)
ヤブカラシの花柄、花序枝、茎、葉裏などに小さな球体があり、
Pearl bodies (真珠体)あるいは Pearl glands (真珠腺)と呼ばれる。
植物体由来の栄養体なのだという。(続・樹の散歩道)


《 何処にでも顔を出す〝藪枯らし〟だが!?! 》
《 雅羅・/・襍録〝蔓性植物 ...
藪枯らしを初め、蔓性植物は往々にして邪魔者扱いだ。
蔓植物は自らの力では体が支えられないため、
他の植物を利用して光のあたる方へ伸びていく植物。
つる植物は様々な方法で、他の植物に絡みつく。
吸盤をつけるものや根を食いこませて張り付くもの、
巻きひげで巻きついていくもの等々(仔細は略)。
だが、蔓植物の巻きひげは、植物における運動や接触王統のモデルとして、
ダーウィンの時代から研究されてきた植物。
最近、藪枯らしに付いて面白い研究・新発見が発表された。
ヤブガラシが接触によって葉っぱを識別し、
自分の仲間たちには巻き付かないという。
--- 以下は、研究論文の概要紹介、以上が主旨  ---
 
仲間の葉と他の植物の葉に同時に接触したときには多種の葉を選択して巻き付き、
多種の葉に巻き付いている途中で仲間の葉に接触した場合は巻き戻る能力を持っている由。
研究の結果、ヤブガラシは葉の中に含まれるシュウ酸化合物によって、
仲間と多種を区別していることが明らかにされた。
つる植物は巻き付くことで成長していくが、
巻き付かれた植物は実は成長が抑制されてしまう。
生き残るために身につけた高度な知恵だと言える。
ヤブガラシ;
ブドウ科のつる植物の1種で、草木や樹木、フェンスなどの人工物に
巻き付き上へ上へと伸びて行く繁殖力の強い雑草。
巻きひげで接触して最適なパターンで対象物に巻き付く。
全方向に巻き付くことができるのが特徴で、
自身の葉っぱに巻き付くことはない。
全周巻きパターンとクリップ型で、
対象に応じた最適パターンを生み出している。
つる性植物は、草でも木でもない第3の植物群として区別されている。
(東北大学理学部助教授・鈴木三男著・「よじ登り植物の生存戦略」より引用・以下同じ)
地上部の茎の部分が1年で枯れてしまう草本性(ヘチマやアサガオ)のものと、
毎年太る木本性(フジやサルナシ)のものがあり、
形態的、生態的にも草と木とは違ったカテゴリーに入ることがわかる。
戦略の要点は・・・
A) つる性植物、即ち「よじ登り植物」がとった一番の戦術は、
丈夫で自立した茎を造るための資材を、長い蔓を短時間に造る方に向けたことである。
B) 樹木は大量の枝葉を支える丈夫な幹をつくるために、
長い時間をかけて形成層の活動で木部を大量につくるとともに、
道管、師管も大量に造成している。それらは葉に水を送り、
光合成産物を他の部分に分配するパイプラインの働きをしている。
C) それに対して、つる植物は繊維組織はわずかで、
しかも大きな道管や師管を少量しか造らない。
太い道管や師管は大量の水や養分を効率よく運ぶのには適するが、
構造上は脆弱である。
花は放射相称で小さく、4または5の数生の完全花。
D) 毎年地上部が枯れる草本性のつると、
木質化して残る木本性のつるがある。
ブドウ科は、木本性のつるになる種が殆どだが、少数の変わり種も含む。
つる性の種は、葉は互生し、有柄、単葉、掌状、
叉は羽状複葉で落葉性の托葉をもつ。 
葉に対生する巻きひげがあり、これが植物体を支える役目をする。
巻きひげは茎の変化したもので、葉と対生している。
栽培ブドウ・ヤマブドウ・ツタ・ヤブガラシなどが仲間内。
2.よじ登るための「つる植物の戦略」
自立できる茎を造らないつる植物は、
他の草や木の上に立つにはよじ登らなければならない。
つる植物の進化の過程で、
その植物群のもつ遺伝的な性質とさまざまな試みの結果として、
いろんなよじ登り方法が生まれてきた。
被子植物に見られるものを類型化すると、次の5タイプが考えられる。
板塀にへばりつくツタの吸盤
・寄りかかり型  ヒヨドリジョウゴ・ツルウメモドキなど
・巻きつき型 フジ・アケビ・など (右巻き・左巻き)
・鉤かけ型 カギカズラ・カナムムグラ・など
・巻きひげ型 ブドウ科・ウリ科・マメ科など
・付着型 キズタ(気根)・ツタ(吸盤)
草本性・木本性にかかわらず多くのつる植物は、
多かれ少なかれ形成層の活動によりつるがだんだん太る。
急速に太る例としてフジがあげられる。
サルトリイバラは肥大成長を全くしない。
また、よじ登り植物の弱点は、寄生者がはびこって宿主が十分に光合成ができなくなると、
折損・枯損・倒木・枯死など致命的なダメージが宿主側に発生する。
宿主の死は寄生者の死に直結するのは明らかである。
運命共同体にあることをつる植物は知らない。
.帆柱山系のつる性植物の要点・・・結構多いんです・詳細は別項へ。
 ワク内にそれぞれの科の要点を、
また★印の項には似たもの同士の対比をまとめ、
つる性植物の項で書き尽くせないものを補足したものです。
マメ科の特徴は、キク科・ラン科に次いで大きな科。
  A) 1枚の心皮からなる果皮が子葉種子を包む、という果実の構造。(子葉をもつ)
  B) 葉は互生し托葉がある、3小葉から羽状複葉が多い。
  C) 葉や小葉の基部に膨らんだ部分があって就眠運動する。
  D) この他に、土壌中の根粒菌と共生して空中の窒素を養分にする。
などが特徴。
 農業上の重要性はイネ科に一歩譲るが、
総合的な有用性はマメ類に勝る植物はない。
利用範囲は多岐にわたっている。利用される種類は極めて多い。
クロンキストの分類体系にに従い、マメ類を3科からなるマメ目としている。
花弁より長い雄しべ雌しべをもつ放射相称花をつけるムネノキ科、
旗弁が内側にあるジャケツイバラ科、
蝶形花をつけるマメ科の3科をマメ目としている。
ネムノキの長い赤紅色の毛は花糸といい、たいていは色がついている。
昆虫や動物には花弁に代わる目印になる。
マメ科の花は蝶形で花弁が3種類に分化する。
目立つ旗弁、黒い斑紋のある翼弁、さらに翼弁の中に小型の竜骨弁がある。
キョウチクトウ科は、その多くは有毒で、有毒成分は200種以上もあるアルカロイドである。
この毒は古くから矢毒として用いられた。
マダガスカル島の乾燥地の主役はバオバオ。
よく似たパキボディウムゲアイは、太く膨らんだ女性的な樹形は、
1年間全く雨が降らないでも耐えうるように水をたっぷり含む。
同じ仲間のニチニチソウ(日日草・日々新しい花に咲き替わることから)はこの島が原産地。
ニチニチソウの薬効成分を抽出するために営利栽培始まる。
このほか身近にはサカキカズラ・テイカカズラ・キョウチクトウなどがあり、
容姿は全く異なるが同じ仲間内である。
4.ガガイモ科とアサギマダラチョウの生活史・・・
ガガイモ科は、虫媒花をを発達させた進化の一つの頂点に立つ植物群と考えられている。
それは5本の雄しべと、内側の2本の雌しべを合着させて
肉柱体という特別な筒をつくっていることと、
花粉を集めて花粉塊という団子を作り出したことによっている。
筒には縦に5本の隙間が開いている。
ペリプロカ亜科・セカモネ亜科は花粉塊をつくらない。
日本には9属33種が知られているが、
いずれもトウワタ亜科で花粉塊をつくる。
花は大きくないが、形・色・香り・の三拍子揃っていて昆虫を招く。
キョウチクトウ科から進化してきたと推測される。
両者は有毒な乳液をもつことや、つる性植物が多いことなど、共通の性質が多い。
ガガイモ・イケマ・フウセントウワタなどが同じ仲間。
イエライシャンは中国原産のつる性植物で、花の香りは脂粉のようだという。
花は野菜として扱われ、民間薬にも利用。
◆ アサギマダラ蝶の生活
有毒なカガイモ科植物を食草としているのが、マダラチョウの仲間である。
アサギマダラは九州南部から本州中部の山岳地にかけて
渡りをするらしいことがわかってきた。
低地では幼虫の状態で常緑のキジョランの葉で越冬する。冬の宿。
春になって気温が上昇すると、幼虫はキジョランの葉を食べて成長し、
やがて羽化して夏場の生活地である山岳地へと登っていく。
5月末頃の山岳地では、イケマが地中から新芽を伸ばしてくると、
さつそくイケマの若葉に産卵する。
5.よく似たツル性の対比で、見分けのポイントを
★ イワガラミと〈ツルアジサイ〉の対比
ユキノシタ科〈ユキノシタ科〉・葉は対生〈対生〉
・葉身は広卵形〈楕円形~長楕円形〉・葉柄は3~12㎝〈3~9㎝〉
・葉脈上に粗毛・裏面脈上に軟毛・〈粗毛・裏面脈上に軟毛〉
・葉縁は大きな鋭鋸歯〈細かい鋭鋸歯〉・葉先は鋭尖頭か鋭頭〈急に鋭頭〉
・花は5~7月〈5~6月〉・装飾花1枚〈4枚〉
★ アケビと〈ムベ〉の対比
アケビ科〈アケビ科〉・落葉性灌木〈常緑性藤本〉
・5小葉の長柄掌状複葉〈5~7個の掌状複葉〉
・全縁で先端凹頭〈先端は尖る〉
・雌雄同株〈雌雄同株〉・花期4~5月〈4~5月〉
★ キヅタと〈ツタ〉の対比
ウコギ科〈ブドウ科〉・常緑性灌木〈落葉つる性藤本〉・別名フユヅタ〈ナツヅタ〉
・気根で登る〈巻きひげは分岐し先端に吸盤がある〉
・樹皮は灰色〈黒褐色〉・花序のつく枝の葉は楕円形で全縁
〈花序のつく短枝の葉は大きく長柄で3裂し先端は鋭く尖り、縁は芒状の鋸歯がまばら〉
・互生で葉身は掌状に浅く3~5裂〈花のつかない長枝の葉は小さく短柄、
きれ込みはないもの~3裂〉・花期は10~12月〈6~7月〉
 
“ヤブガラシに学ぶ植物型スマート構造の開発”
--植物の情報処理のメカニズムをロボットに活かす--
光を求めて他の植物や人工物に巻き付いて成長するつる植物。
神経系をもたないのに、対象物に応じて最適な巻き付きパターンを生み出している、
ヤブガラシに学ぶ植物型スマート構造の開発とは?
人工構造物に生体の脳、神経、筋肉などと同じように、知覚や判断、
応答という機能を持たせて状況に応じた自律的な動きを可能にするスマート構造。
これまでは、センサで感知して神経系で情報処理を行い、
モーターに情報をフィードバックして作動する、
いわば動物型のメカニズム開発が主流でした。
そこに、視覚や神経系をもたないのに環境に適応して生育する
植物規範を取り入れたユニークな研究が行われています。
研究対象となったのは、つる植物の1種であるヤブガラシという雑草です。
他の植物や柵などの人工物に巻き付き、自身のからだを支えて上へ伸びて行きますが、
つかむ相手に対して巻きひげを変形させて最適なパターンで
巻き付くという非常に複雑な動きをしているのです。
これまで、巻きひげの動きを詳細に観察したところ、
巻き付く相手の直径が細い場合はつるを全周に巻く(通常巻き)、
直径が太く巻きひげが長い場合は途中でUターンしてクリップ状になる、
直径が太くて巻きひげが短い場合は巻き付くのをあきらめて離れて行く(先端のみ接触・離脱)
という3つのパターンに分類できることがわかりました。
非常に合理的な巻き方をしていることが明らかになったのです。
さらに、巻きひげへのマーキングと画像データ解析により3D座標データ化を進め、
パターンの違いがどのように生じてくるのか、そのメカニズムの解明を進めています。
植物は神経系を持っていませんが複雑な動きを可能にしているのは、
巻きひげ自身がセンサとして、同時にモーターとしての役割りを担い、
独立的に判断して最適なパターンを生じさせているためだと考えられるのです。
この情報処理と動きのメカニズムをスマート構造に利用できれば、
複雑なセンサネットワークや情報処理系統のない、
植物規範のシンプルな機械ができるのではないかと考えられています。
将来的に、たとえば内視鏡手術用のガイドワイヤーなど、
アクセスが難しい場所で自在に動く植物型ロボットが生まれるかも知れないのです。
斉藤一哉 助教 東京大学 生産技術研究所
深野祐也 助教 東京大学大学院 農学生命科学研究科
“植物規範で従来にない機械をつくりたい”
斉藤の専門は、機械工学・航空宇宙工学です。
コンパクトに収納して宇宙で展開する構造物など、
形状可変構造物をつくっています。
そこで、生物の変形に興味をもち、
昆虫の翅(はね)の折り畳みの研究なども行ってきました。
今回は、植物をターゲットに共同研究を進めることになりました。
 深野の専門は進化生態学という分野で、
生物がどのように環境に適応して生き残ってきたのかを研究しています。
もともとは、植物が周りの個体とか、植物を食べる昆虫の情報をどう手に入れて、
どう生き延びているのか研究していました。
現在は、植物がどのように他の植物を認識しているかを化学的に解明しようということで、
ヤブガラシに注目しました。 
アプローチが異なるので、共同研究は新鮮ですね。
植物に学ぶことで、これまでとは全く違うシステムの機械ができると考えています。
 
 
「令和陸年(皇紀2684年)10月13日」
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