ヤツガタケキスミレ(八ヶ岳黄菫) ;
ヤツガタケキスミレ(八ケ岳黄菫)は八ヶ岳連峰に自生する特有のスミレ。
八ヶ岳黄菫は、赤岳から硫黄岳の稜線砂礫地で見れる。タカネスミレ亜種の一つ。
タカネスミレはキバナノコマノツメが高山 の砂礫地などに進出した種と言われる。
ヤツガダケキスミレは、地下茎で横に広がる性質を持たず群生せず、まばらに見れる。
又、山上でも比較的早く咲く。クモマスミレよりも早く6月下旬から咲き始める。
ヤツガタケキスミレの特徴は、葉に光沢がない。次に黄色い花の唇弁が先が丸い。
花柄は長さ3 ~7cmで先に長さ1-1.2cm。花弁は倒卵形。
側弁基部は無毛。距は短く黄緑色、葉が円形で無光沢。托 葉には、鋸歯がある。
黄色で唇弁に赤紫の筋があり、タカネスミレと比べると細長い。
花径2㎝前後。上弁や側弁は後方に反り返る。萼片は緑色で赤紫のザラザラ。
隔離型のタカネスミレの仲間だが、八ヶ岳でしか確認されていない。
又、タカネスミレとの違いは、葉に光沢がなく、そして微毛がある。
酷似している花にキバナノコマノツメ (黄花の駒の爪)がある。
1700m以上の高山帯に多く湿り気ある岩場の隙間や、草地に生育している。
草丈5~15㎝くらい。黄色。下弁には赤紫色の脈が数本入る。
直径1.5~2㎝前後。上弁、側弁が反り返る。萼片は、淡緑色。
高山帯でしかみられない黄色いスミレで、スミレと名前がはいらない唯一のスミレ。
葉の先が少し凹んでいるものも多い。
「ヤツガタケキスミレ」と「キバナノコマノツメ」の見分けはどうするか、まず咲く場所が違う。
ヤツガタケキスミレが咲くのは稜線の(横岳から硫黄岳の間)砂礫地だけだ。
キバナノコマノツメのように湿った草地のようなところには生えない。
台座ノ頭の横あたりにコマクサが咲く礫地がある。ヤツガタケキスミレの自生地もほぼ同じ。
またヤツガタケキスミレは地下茎で横に伸びるという性質を持たず、従って「群生」しない。
あちらこちらにポツリポツリと咲くだけ。その咲き方もコマクサにそっくりと言ってよい。
次に花弁だが、ヤツガタケキスミレは四つの花弁が反り返り重なるようにくっついている。
キバナノコマノツメも反り返っているが反りが甘く、花弁はわりと離ればなれだ。
そして前の方に一つだけ伸びる花弁。キバナノコマノツメは先がちょっと尖り気味。
対してヤツガタケキスミレのそれは巾広で丸くてまるでシャモジのような形をしている。
先は尖るどころか反対にへこんでハート型になっているものも多い。
更には葉の色艶。ヤツガタケキスミレは、葉に細かい産毛が生えていて艶はまるでない。
その毛のせいで葉の色は遠目にかなり白っぽく見える。
キバナノコマノツメの葉は緑濃くてつやつやだ。そして、咲く時期が異なる。
キバナノコマノツメは、6月が花盛り。対してヤツガタケキスミレは、コマクサと同じ7月に開花。
ヤツガタケキスミレは八ヶ岳にしか自生していない固有種。生育場所も狭い範囲だ。
7月にコマクサと一緒に硫黄岳周辺で見れる姿は、実に瀟洒だ。
令和参年(皇紀2681年)9月11日、記」