本日付のNew York Times電子版によれば、North Dakotaでは毎日150万立方フィートを超えるシェールガスがガス井のフレアスタックで燃やされているそうだ。このシェールガスは50万戸の住宅または38万台の中型車をまかなうエネルギーに匹敵し、毎年200万トン以上の二酸化炭素を発生させている。無駄に燃やしているシェールガスはNorth Dakota州におけるシェールガス生産量の30%に相当する。
1990年以来シェールガスは将来の有望エネルギー源として注目され、この資源が豊富なアメリカではシェールガス開発が盛んで、アメリカ中西部だけでも現在5,000基あるガス井が今後20年間に48,000基になると予想されている。
せっかく開発されたシェールガスがなぜ無駄に燃やされているかというと、鉱区のリース期間が5年程度と短いシェールガスフィールドでは、石油価格が高騰している現在、開発業者は同じ油井に存在する石油を生産して販売した方が、長期的な投資であるシェールガスのシカゴなどの大都市に輸送するパイプラインの敷設や、日本などに輸出するための液化プラント建設より安直に利益が得られるからだ。シェールガスの生産には水圧破砕法や水平坑井掘削などの新技術が開発され、これらの新技術が同じ鉱脈からの石油生産を可能にしているのは皮肉なことである。今後シェールガス開発が計画されているTexas、Oklahoma、Arkansas、Ohioなどでもシェールガスが無駄に燃やされる恐れは高い。
アメリカの環境庁はシェールガスの無駄な燃焼を懸念しており、将来はシェールガスの利用を明確にしない限り開発許可を与えないことを検討している。またあるシェールガス開発業者はメタンがほとんどの天然ガスと異なり、シェールガスはプロパンやブタンも含んでいるためこれらを分離してより高価格で販売することにより、採算性を改善出来ると言っている。
日本にとってもっとも重要かつ親密な同盟国であるアメリカからシェールガスを輸入し、コンバインドサイクルのガスタービンによる熱効率50%の発電を行うシステムが構築されることが、原子力発電に不安を感じている日本のエネルギー安全保障にとってもっとも好ましいのではないだろうか。この場合原子力発電よりは二酸化炭素の排出量は増えるが他の化石燃料による発電より少なく、また発電コストの点では再生可能エネルギーよりもはるかに優れている。
先週の9月23日にCERN(European Organization for Nuclear Research)のセミナーで発表されたニュートリノの速度が光速を超えた、というニュースはきわめて衝撃的である。1905年にアインシュタインが発表した特殊相対性理論によれば、質量のある物質は光速(秒速30万km)を超えることが出来ないことになっている。もしも発表されたデータが正しければ特殊相対性理論を否定し、素粒子物理学や宇宙物理学などに大きな変革をもたらすことになる。
David Brownの小説『天使と悪魔』にも登場する、スイスのジュネーブ郊外にあるCERNのLarge Hadron Collider(LHC)を使って陽子を加速してグラファイトに衝突させ、ニュートリノを発生させる。発生したニュートリノビームを730km離れたイタリアのGran Sasso National Laboratoryの地下1400mにある検出器に送り、ニュートリノがミューニュートリノやタウニュートリノに変換することを観測していたところ、ニュートリノが光速より60ナノ秒(ナノは10⁻⁹)早く検出されたという。この観測は主にイタリアと日本を中心とする11カ国の160名の物理学者により3年に渡り行われたが、ニュートリノの速度測定精度に関しては距離はGPSを使用し誤差20cm、時間の計測はGPSからの時刻をセシウム時計で補正し1.4-3.2ナノ秒の誤差とのことである。
CERNはこのデータの精度を注意深く検討してきたが、新事実のデータの公表により見落とされた点がないかを検証してほしい、と世界中の研究者に呼びかけている。特にこれまで茨城県東海村の高エネルギー研究所から岐阜県神岡のスーパーカミオカンデにニュートリノビームを送ってきた実績のある日本に期待を寄せている。
素粒子物理学や宇宙物理学では銀河系やその中の太陽系はもちろん、地球もその上に存在するすべての物質はビッグバンの際の物質と反物質の量のバランスが、わずかばかり物質の方が多かったために生じた、と言っている。すなわちわれわれはすべて星屑によって成り立っているのだ。星屑同士が喜び、悲しみ、愛し、憎みあって生きているこの世の中、ひとりひとりが自身を星屑であることを自覚すればもう少し住みよい平和な世界になるのだろう。
東京電力福島第一原子力発電所事故により、このところドイツ、スイス、イタリアなどに反原発ムードが広がり、また日本でも原発見直しの機運が高まっているように思われる。地球温暖化防止の切札として脚光を浴びていた原発の運転や建設が停滞すれば、長期的には再生可能エネルギーへの変換が進むかもしれないが、短期的には石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の消費が増加して、地球温暖化問題は脇に追いやられることになるのではないだろうか。
そもそも地球温暖化問題は必ずしもすべてが科学的な議論ではなく、国際世論を巧妙に誘導して一部の国が利益を上げ、国際交渉の不得手な日本は不利益をこうむる図式の政治問題である、とくまごろうは考えている。地球温暖化により北極グマの生息が困難になり、海抜の低い島嶼国家は領土が水没する、というきわめて感情的な議論でこの問題が取扱われているところに地球温暖化問題の非科学性が示されている。
国連の機関である気候変動に関する国際パネル(IPPC)が2007年に発行したAR4では1900年頃に比較して現在の地球表面平均気温が0.75℃上昇し、その原因が人為的な温室効果ガス、すなわち二酸化炭素によると結論づけた。しかし大気中にある温暖化ガスのうちもっとも多いのは水蒸気であり、その地球温暖化への寄与は90%に達しているのに対し、二酸化炭素の寄与は10%以下である。大気中の水蒸気量は人為的に制御出来ないので二酸化炭素量を制御しようという考えだ。
地球温暖化が大気中の二酸化炭素の増加にあるという説に対しては、現在は1650年から1850年まで続いた小氷期(Little Ice Age)が終わって温暖化の過程にある、という説や、温暖化したことにより海水の二酸化炭素溶解度が低減し、その結果大気中の二酸化炭素が増加したのであり因果関係が逆である、といった反論も少なくない。1970年代までは、世界中の学者が地球寒冷化を心配していたのに、今では温暖化の心配とは少し近視眼的ではないだろうか。2010年5月にシカゴで開催された地球環境に関するコンフェレンスでは、ロシアのPulkovo Astronomical Observatoryにおける宇宙研究リーダーであるHabibullo Abdussamatov博士が長期間にわたる太陽の活動の分析結果として、太陽の活動は1990年代がもっとも活発で、そのため地球は2005年から2008年がもっとも温暖化し、その後黒点活動が減少し2042年に最小となる見込みのため、2014年以降は小氷期に向い、2055-2060年がもっとも寒冷化するだろう、と発表している。彼はこの予測が太陽の観測により年々真実性を増していると報告し、温暖化より寒冷化を示唆している。
専門家の間でも地球温暖化に対しては賛否両論ありよくわかっていないことが多々あるにもかかわらず、京都議定書のような二酸化炭素の排出権取引まで議論するのは政治ショウ以外の何ものでもない。日本政府は途上国に対する無償援助の一環として排出権取引を考えているならそれは必ずしも無意味ではないが、そのためにエネルギーを多く消費する日本の基幹産業が海外に移転しては日本経済や雇用に甚大な影響を与えることになる。政治家や官僚は科学に強くない人たちが多く、一部の国やマスメディアの喧伝する必ずしも科学的に結論付けられていないことで日本の国益を損なってほしくない。
確かに二酸化炭素は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の燃焼により発生し、産業革命以来の化石燃料の消費急増は環境問題としては対策が必要であり、代替エネルギーへの転換が求められる。そのひとつが原子力、更には核融合であるが、東電原発事故が発生した現在、これらのエネルギーへの変換は政治的に困難となった。それゆえ太陽光発電、風力発電、地熱発電のような再生可能エネルギーに対する期待が高まることになるが、これらは化石燃料よりも発電コストが高く、供給の安定性の点からも基幹発電設備となるためには更なる革新的な技術開発が必要である。それゆえ当分の間は50%を越える高エネルギー効率で、環境汚染物質や二酸化炭素の排出量が相対的に少ない天然ガスを使用したガスタービンコンバインドサイクル発電が主役となるのではないか。
2010年9月に初版が発行された村山斉博士の『宇宙は何でできているのか』を読んだ。1960年代に大学で量子力学を少しかじっただけのくまごろうは湯川秀樹博士の中間子理論はおぼろげながら理解していたつもりだったが、この本は現代物理学をしろうとが理解出来るようにやさしく解説している。宇宙全体の重さの23%は正体不明の暗黒物質、73%は得体の知れない暗黒エネルギーで、銀河も含むすべての星を足しても0.5%にしかならないことや、小柴昌俊博士がカミオカンデを使ってその存在を証明しノーベル賞を受賞した電荷のない電子であるニュートリノが0.5%を占めていることも驚きだ。
地球上にある原子は原子核と電子、また原子核は陽子と中性子で形成されているが、陽子はアップクォーク2つとダウンクォーク1つ、中性子はアップクォーク1つとダウンクォーク2つから成っているので、これに電子を加えた4つの素粒子が原子を形成していること、クォークは3世代あるはずだという小林・益川理論や、宇宙にはクォークが6種類、電子やニュートリノなどの素粒子であるレプトンが6種類、更に力の伝達粒子であるボソンが4種類あることも平易に解説している。
ふたつの磁石が引力や斥力を及ぼすのは電磁気力によるがこれは光子(フォトン)をやり取りするからであり、原子核の中で陽子同士や陽子と中性子がばらばらにならないことについて湯川秀樹博士は中間子のやり取りするからと予言したが、中間子はクォークと反クォークから成っていること、原子核での陽子や中性子の結合は現在ではグルーオンと呼ばれる素粒子のやり取りによること、更にまだ見つかっていないが重力もグラビトンという素粒子をやり取りで力が伝達されていることなどは興味深い。
しかしこの本を読んでますます素粒子力学がこんがらかってしまったことも確かだ。その原因はくまごろうの頭が悪いからだ。世の中には頭の良い人がたくさんいることを改めて実感した。
しかし多くのノーベル物理学賞受賞者を輩出し、スーパーカミオカンデ、すばる望遠鏡、数物連携宇宙研究機構(IPMU)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などにより宇宙物理学に積極的に取り組んで、日本が大いに現代物理学の発展に貢献していることはまことに頼もしい限りだ。民主党の政治家が『2番ではいけないんですか?』などと言ってほしくない。
昨日、定例の土曜ゴルフを欠席して孫息子の日本語補習校小学部卒業式に参列した。月曜から金曜までは地元の学校に通う子供たちは、日本では1週間で学ぶ科目を土曜日に学ぶ。そのため宿題も多く、金曜日はほとんどの家庭で宿題やテストの準備でおおわらわだ。加えて土曜日は地元の学校やスポーツクラブなどのイベントが多く、生徒たちはどちらを優先するか悩むことが少なくない。孫息子もリトルリーグのために途中で授業を抜け、試合終了後補習校に戻って授業を続けたこともある。
卒業式は日本のそれとほぼ同じ形式であり、卒業生はひとりづつ校長先生から卒業証書を受取るが、本年度は59名の生徒が卒業した。5年生代表の送辞、6年生代表の答辞も内容・読み方共に日本で行われるものと遜色がなく、6年間生徒たちも先生方も大変な努力をして勉強してきたことが伝わってくる。
この補習校は1971年に創設され、長男は小学校4年から高校3年まで、長女は幼稚園から高校3年までお世話になった。おかげで二人とも英語も日本語もほぼ完璧であり、在学中の彼らの苦労が報われている。
私も1980年代にこの補習校運営委員会の理事を2年務め、地元の学校の校舎借受け、教師の雇用などに及ばずながら尽力した。当時は留学生や駐在員の配偶者で教職資格があっても補習校で勤務するには米国移民局より特別な許可を取得する必要があり、運営委員会は苦労したものだ。この点では現在は以前に比べると楽になっているようで、限られた時間内に生徒たちを指導する優れた教師が多いと聞く。
将来の日本を担ってゆく日米二カ国の言葉と文化を学んだ補習校卒業生が頼もしく思えた卒業式であった。
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