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地域医療の見え方  2016.Mar.2;2(58)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-[レビュー]バレニクリンと心血管系有害アウトカム-

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[バレニクリンの有効性]
バレニクリンは禁煙補助薬として、複数の研究でその有効性が指示されている。バレニクリン治療開始から9~12週間の4週間持続禁煙割合は43%~47%であり、プラセボの14%~17%に比べて3.8倍から6倍高い。

〔Jorenby DE.et.al. 2006. PMID:16820547〕
〔Gonzales D.et.al.2006. PMID:16820546〕
〔Rigotti NA.et.al.2010. PMID: 20048210〕

この効果はニコチンガムやニコチンパッチなどニコチン置換療法よりも優れた効果である。
〔Cahill K.et.al.2013. PMID: 23728690〕

また近年では喫煙本数をバレニクリンによる禁煙補助療法とともに減らし禁煙を達成するという介入も有効であるとするランダム化比較試験が報告されている。
〔Ebbert JO.et.al.2015.PMID: 25688780〕

リアルワールドでの検討として小規模前向きコホート研究も報告されている。
〔Kotz D.et.al.2014PMID: 25392075〕
6か月の追跡で、バレニクリンの禁煙率39.8%、ニコチン置換療法では19.7%で、交絡補正後約3.8倍、禁煙が多かった。

しかしながら、Rigotti NA.らの2010年のランダム化比較試験では、バレニクリンの心血管系有害イベント上昇が示唆されていた。

[バレニクリンの心血管リスク]
現在までに、ランダム化比較試験のメタ分析が複数報告されており、その概要を以下にまとめる。

メタ分析のまとめ
文献 バレニクリン プラセボ 相対指標[95%CI]
Singh S.et.al.2011.PMID: 21727225 1.06%[52人/4908人] 0.82% [27人/3308人] 1.72 [1.09~2.71]
Prochaska JJ.et,al.2012.PMID: 22563098 0.63% [34人/5431人] 0.47% [18人/3801人] 1.41 [0.82~2.42]
Ware JH.et.al.2013.PMID: 23615317 0.31% [13人/4190人] 0.21% [6人/2812人] 1.95 [0.79~4.82]
Sterling LH.et.al.2016.PMID: 26903004 0.79% 57人/7213人 0.78% 43人/5493人 1.03 [0.72~1.49]


2011年の報告はJohns Hopkins UniversityのSonal Singh先生の論文。2011年にBMJに掲載されたチオトロピウムレスピマットで死亡が増えるというメタ分析を報告した先生だ。様々な薬剤の有害アウトカムを研究している先生だが、わりと害が有意に増えるという研究が多い印象である。それ以降の報告に、明確な差はついていないが上昇傾向にはあるようだ。なお2016年のSterling LH.らによるメタ分析では総死亡や心血管疾患の既往別での解析もしているが、いずれも明確な差は出ていない。

2014年に報告されたネットワークメタ分析でもプラセボとの比較でバレニクリンの明確な心血管アウトカム上昇は示されなかった。この研究ではむしろニコチン置換療法の心血管リスクが浮き彫りとなっている。〔Mills EJ.et.al.2014 PMID: 24323793〕

観察研究もいくつか報告されている。2012年に報告されたコホート研究ではbupropion比較ではあるが、明確な心血管リスク上昇は示されていない。〔Svanström H.et.al. PMID: 23138033〕2015年に報告された後ろ向きコホートではニコチン置換療法に比べて、虚血性心疾患や心不全、不整脈、抑うつ、自傷行為などいずれもバレニクリンでリスクが低かったと報告されている。〔Kotz D.et.al.2015.PMID: 26355008〕

以上を踏まえると、バレニクリンで著明に心血管イベントリスクが上昇するとは考えにくい。禁煙補助効果を加味すれば、ニコチン置換療法よりもリスクベネフィットは優れているであろう。ただプラセボでも1割が禁煙達成できることを踏まえると、コスト、ベネフィットには議論の余地もありそうだ。

[(補足)バレニクリンの精神系有害アウトカムについて]
なお、バレニクリンの精神系有害アウトカムも現段階では否定的である。
〔Thomas KH.et.al.2015. PMID:25767129〕
〔Tonstad S.et.al.2010 PMID: 20297861〕
ただ、いくつかの有害性を報告したコホート研究も報告されている。禁煙による精神状態の変化なのか、不明な部分も多い。
〔Molero Y.et.al.2015 PMID: 26037950〕

テキストメッセージによる介入が禁煙達成に有効とする報告もあり、禁煙治療=バレニクリンというもの早々な印象である。
〔Müssener U.et.al.2016.PMID: 26903176〕

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. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]軽度認知機能障害に対するコリンエステラーゼ阻害薬(メタ分析PMID: 26770964)

Fitzpatrick-Lewis D.et.al. Treatment for mild cognitive impairment: a systematic review and meta-analysis. CMAJ Open. 2015 Dec 1;3(4):E419-27. PMID: 26770964
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26770964

[背景]軽度認知機能障害に対する治療の実効性は不明である。このレビューの目的は65歳以上の高齢者における軽度認知機能障害に対する治療の効果と有害性について検討することである。

[方法]65歳以上の地域在住で軽度認知機能障害の診断を受けた高齢者を対象としたランダム化比較試験を検索した。

[結果]17研究が解析に含まれた。コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)は認知評価Alzheimer's Disease Assessment Scale, cognition subscale)に明確な差異をもたらさなかった。(平均差-0.33[95%信頼区間-0.73~0.06] Mini-Mental State Examinationについても同様に明確な効果については不明であった。(平均差0.17[95%信頼区間 -0.13~0.47])有害事象には明確な差を認めなかった。(リスク比0.98[95%信頼区間 0.86~1.10]

[結論]軽度認知機能障害に対するコリンエステラーゼ阻害薬に臨床的意義のある効果を認めない。

[コメント] 軽度認知機能障害の患者にコリンエステラーゼ阻害薬を投与し、認知症への進行を抑制できるかを検討したメタ分析では、治療開始から3年時点で認知症への進展に対する明確な効果は認められず、副作用が多いという結果であった。〔Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep 12;9:CD009132. PMID: 22972133〕

そもそも軽度認知機能障害から認知症への進展は自然経過でもそれほど多いものではないという。〔J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008 Dec;79(12):1386-91. PMID: 19010949〕〔Acta Psychiatr Scand. 2009 Apr;119(4):252-65. PMID: 19236314〕

過去に報告された軽度認知機能障害に対する認知症治療薬の有効性を検討したメタ分析でもMMSEやADAS-cog変化に対する明確な効果を認めない〔CMAJ. 2013 Nov 5;185(16):1393-401. PMID: 24043661〕本研究はこの結果を支持するものである。

これらの研究結果を踏まえると、軽度認知機能障害と言う概念は不要ではないかとすら思える。

[文献]DPP4阻害薬で心不全は増えるか(メタ分析PMID: 26888822)

Li L.et.al. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and risk of heart failure in type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of randomised and observational studies. BMJ. 2016 Feb 17;352:i610. PMID: 26888822
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26888822

[目的]2型糖尿病患者において、DPP4阻害薬と心不全及び心不全による入院リスクを検討する。

[デザイン]ランダム化比較試験、観察研究のシステマティックレビュー、メタ分析

[データソース] Medline, Embase, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and ClinicalTrials.govを2015年6月25日まで検索し、専門家の意見も聴取した。

[組み入れ基準]
2型糖尿病におけるDPP4阻害薬とプラセボ、他の糖尿病治療薬、生活習慣改善などを比較し、心不全や心不全による入院のアウトカムが明確に報告された、ランダム化比較試験、非ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究。

[解析]レビューアーは独立して、組み入れ研究やリスクバイアス評価を行った。エビデンスの質の評価はGRADEアプローチにより行った。

[結果]43の臨床研究(解析対象68775例)と12の観察研究(コホート研究9研究、コホート内症例対照研究3研究、解析対象1777358例)

臨床研究38研究の統合では心不全リスクに明確な差は見られなかった。(オッズ比0.97[95%信頼区間0.61~1.56])一方、心不全による入院は5研究の統合解析でわずかに上昇した。オッズ比1.13[95%信頼区間1.00~1.26]

心不全の入院について、観察研究の統合解析では、有意な差はみられなかったが増加傾向であった。(オッズ比1.41[95%信頼区間0.95~2.09]

[結論]2型糖尿病におけるDPP4阻害薬と心不全リスクの関連は不明である。しかしながら、ランダム化比較試験や観察研究では、心不全による入院リスク増加の可能性を示唆した。

[コメント]43の臨床研究とは43のランダム化比較試験であり、参加者の平均年齢は49.7歳~72.6歳であった。このうち38研究がメタ分析されており、オッズ比は0.97[95%信頼区間0.61~1.56]という結果であった。異質性はI2=0%となっているが、OR1を中心にややばらつきを認める。心不全による入院については、5研究の統合解析がなされており、オッズ比1.13[95%信頼区間1.00~1.26]という結果だ。わずかな上昇を示唆する。異質性は低い印象だが、入院というアウトカムの曖昧性を考慮すると、有意な差がどこまで妥当なのか、議論の余地もあるかもしれない。

入院リスクの増加傾向は観察研究でも類似の結果となっている。ノンユーザーと比較した2研究ではともに有意な増加が示唆されている。

現時点では明確なことは不明という印象である。近年報告されたDPP4阻害薬のRCTを見ても心不全リスクの有意な増加が示唆されていないことを踏まえると、実臨床におけるインパクトはそれほど大きいものではないかもしれない。(ただし、心血管アウトカムに対するインパクトもない)

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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有害リスクの評価は本当に難しい。実臨床においては軽視すべきではないというものの、ある程度ベネフィットが見込める薬剤については、その取扱いをどうすれば良いか悩むことも多い。

バレニクリンのメタ分析は2011年以来、継続してフォローしてきたが、心血管アウトカムに関しては、著明なリスク増加、と言うわけでもなさそうである。むしろ市販で購入できるニコチンパッチの方が危険な印象はある。

市販で購入できるものよりは安全性が高い可能性がある。なんだか矛盾した世の中だが、こういったことに気づくことができるのも論文を読み続けることの大切さなんだと思う。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Feb.24;2(57)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-アクがトクするのか、ダレがトクするのか-

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[なつかしのPROactiveにまつわる話]
ピオグリタゾンに関する最新のランダム化比較試験IRIS Trialの結果がN Engl J Med.に2月17日付で掲載された。先発品の商品名アクトス®。現在では後発品も発売されており、アクトスそのものがどれほどの売り上げを上げているかは不明だが、この薬剤に関してはいろいろ思う所もある。

ピオグリタゾンに関して膀胱癌だ、前立腺癌だ、骨折だ、言われているが、そこはあまり本質的ではない。癌や骨折リスクに対する疫学的関連は慢性疾患用薬であれば決して珍しいものではない。がん疑惑はARBやエゼチミブなどでもあった。この手の見解は、のちの大規模エビデンスに否定されることもあり、そのリスクは慎重にかいしゃくすべきである。もちろんリスクが小さいと言えど、それはベネフィットとの相対的なものだから、軽視して良いということではない。軽視できないケースもあるということだ。(多くの場合、問題あり、問題なしの2値的な思考をされるケースが多い印象だが、それはある意味でナンセンスである)

ピオグリタゾンの本質的問題はその臨床ベネフィットの不透明さ、そして心不全リスクにある。まずは2005年に報告されたPROactiveを知らねばなるまい。〔Dormandy JA.et,al.2005 PMID: 16214598〕

この研究は2型糖尿病を有する35歳から75歳(平均62歳、男性66%)の5238人を対象とした2重盲検ランダム化比較試験である。ピオグリタゾンとプラセボを比較し、総死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群、冠動脈もしくは下肢動脈への介入、足首より上の下肢切断の複合アウトカム初発が検討された。

参加者の99.96%がintention-to-treat解析された。平均追跡期間は34.5ヵ月であった。その結果、複合アウトカムに有意差はつかなかった。(ハザード比0.90[95%信頼区間0.80~1.02])

この論文では“Main secondary” composite endpoinと題した謎のアウトカムが設定されており、このアウトカムでは有意な差が出た。ハザード比0.84[95%信頼区間0.72-0.98]),この謎のアウトカムは総死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中の結合アウトカムである。この論文の結論には「Pioglitazone reduces the composite of all-cause mortality, non-fatal myocardial infarction, and stroke in patients with type 2 diabetes who have a high risk of macrovascular events.」と書かれており、この謎アウトカム、つまりメインセカンダリなんちゃらアウトカムが結論として採用されている。

統計を少し勉強した人なら明らかだろうが、これは明らかな後出しじゃんけんである。この研究ではもともと、複数アウトカムの複合アウトカムを1次アウトカムに設定していた。そこで有意差がつかなかったのだから、本来有効性は不明と言わざるを得ない。しかし、この複数のアウトカムについて様々な組み合わせを作り、統計的検定を繰り返した結果、総死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中の組み合わせで、有意差が出たということだ。統計解析を担当したものが、多重検定によるαエラーを知らぬでもあるまい。なんとまあ。アクどいこと。

ちなみにPROactiveの追跡調査が先日報告されている。〔Erdmann E.et.al.2016 PMID: 26592506〕

平均7.8年の追跡で、総死亡や心筋梗塞脳卒中、肢切断、心臓関連介入、下肢血行改善に明確な差を認めず。当初有意差の出たメインセカンダリなんちゃらはピオグリタゾン群4.1%、プラセボ群5.6%とハザード比は0.74[0.55~0.99]であった。全悪性腫瘍は両群でほぼ同等であった。膀胱癌はピオグリタゾン群0.8%、プラセボ群1.2%で相対危険は0.65[95%信頼区間0.33~1.28]前立腺癌はピオグリタゾン群3.7%、プラセボ群2.5%で相対危険度は1.47[95%信頼区間0.93~2.34]と報告されている。

この論文の結論部分の訳に自信がないが、「The trends of macrovascular benefits of pioglitazone compared with placebo during PROactive did not persist in the absence of continued pioglitazone during this 10-year follow-up.」と書かれている。10年間においてピオグリタゾンを続けることをabsenceした状況下では、持続しないと。何が持続しないかと言うとPROactiveで示されたピオグリタゾンの大血管ベネフィットと書かれている。つまり、ピオグリタゾンを飲まないとベネフィットが得られないと結論している。(本当か?)

ただ、抄録のResultには「there were no statistically significant differences in the primary」と書かれており、つまり主要な結果には統計的有意な差を認めないと書かれている。このconflictは何だ?この研究で悪名高きメインセカンダリなんちゃらについては長期観察で有意な差がついていることを強調したいのか。それを強調したいのなら、前立腺がんの上昇傾向をデザインの限界と言うのもどうかと思うが…。(should be interpreted with caution because of the limitations of the observational study design.)

ピオグリタゾンはPROactiveにおいて心不全が有意に増加している。NNHはなんと23だ。害必要数としてはなかなか驚異的な数字ではないか。30人投与したらそのうち一人が心不全を起こしているという。なかなかアク…。

心不全に関してはランダム化比較試験19研究のメタ分析でも示されており、〔Lincoff AM.et.al.2007 PMID: 17848652〕ピオグリタゾン特異的な有害アウトカムと言っても良い印象である。膀胱癌や骨折のような大規模観察研究で有意な差が出ているのではなく、RCTとRCTのメタ分析で示されているので、その関連の程度の解釈はかなり差をつけて良い。ただ、このメタ分析では、死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合アウトカム減少が示されている。ハザード比0.82[95%信頼区間0.72~0.94]だが、ちとまてと。死亡、心筋梗塞、脳卒中…。どっかで聞いたことのあるような。

そう、メインセカンダリなんちゃらだ。ちなみにPROactiveを除いた18研究でメタ分析すると有意な差は出ない。ハザード比0.75[95%信頼区間0.55-1.02] これは何を意味するのだろうか。。
この論文のFinancial DisclosuresやFunding/Supportを見てみると、なんと武田製薬から資金提供を受けていいる。そりゃ悪い解析はできない。はやりアク・・・。

[IRIS試験]
それを踏まえたうえで、読みたいIRIS Trial

研究デザインは
「The design of this international, double-blind, placebo-controlled clinical trial」
2重盲検ランダム化比較試験で、研究対象者は以下の通り。
「Eligible patients were at least 40 years of age and had had a qualifying ischemic stroke or TIA during the 6 months before randomization.」
つまり割り付け6か月以内に脳梗塞やTIAを発症した40歳以上の患者である。さらに…。
「Patients were required to have insulin resistance,」
となっており、耐糖能異常を有する患者が対象となっている。また
「Patients with diabetes were excluded from the trial」
となっていて、糖尿病の患者が除外されている。糖尿病の発症を遅らすなんて効果も期待視点のか、と突っ込みたいぐらいの研究デザインである。

さて介入と対照であるが
「Eligible patients were randomly assigned in a 1:1 ratio to receive either pioglitazone or matching placebo.」
と書かれており、ピオグリタゾン、プラセボの2群に均等割り付け方式でランダム化している。初期用量は1日15mg。浮腫などが見られない場合に、30mg、45mgまで増量している。

一次アウトカムは
「The primary outcome was a first fatal or nonfatal stroke or fatal or nonfatal myocardial infarction」非致死的もしくは致死的脳卒中、非致死的、致死的心筋梗塞の初発である。

統計解析はintention-to-treat。サンプルサイズはパワー90%、α0.05で3136人。All analyses were performed on an intention-to-treat basis.と書いてあるが厳密なITTではない。3895人を研究に組み入れ、1948人と1947人にランダム化している。そこから19人脱落しているからだ。「A total of 3895 patients were enrolled…The 19 patients at this site were removed from the study,」

最終的に治療を受けているのは「resulting in a final cohort of 3876 patients (1939 in the pioglitazone group and 1937 in the placebo group). 」である。

患者背景を見ておこう。ピオグリタゾン群は1939人、平均63.5歳、男性66.7%、BMIは29.9スタチン使用者が82.5%である。プラセボ群は1937人、平均63.5歳、男性64.3%、BMI30、スタチン使用者が82.4%であった。両群に大きな差異は認めない印象である。

追跡期間はmedian follow-up of 4.8 yearsでa total of 227 patients (5.9%) withdrew consent and 99 (2.6%) were lost-to-follow-upとなっている。結果を覆すほどの脱落という印象はない。

サンプルサイズ3136人に比べて症例数は3876人とやや多い。統計的検出力はやや高めであり、有意差が出やすいかもしれない。一次アウトカムの結果は以下の通り。

ピオグリタゾン群1775人/1939人(9.0%)、プラセボ群228人/1937人(11.8%)ハザード比0.76[95%信頼区間0.62~0.93]

その他の結果として
・糖尿病新規発症:ハザード比0.48[95%信頼区間0.33~0.69]
・総死亡:ハザード比0.93[95%信頼区間0.73~1.17]
・体重増加:ピオグリタゾン群で多い。(4年間で2.6㎏vs0.5kg)
・心不全、膀胱癌に有意差なし
・骨折:5.1%vs3.2%p=0.003

利益相反についてはSupported by a grant (U01NS044876) from the National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Pioglitazone and placebo were provided by Takeda Pharmaceuticals International.ってなわけだが、武田製薬がどこまで関与しているかよく分からない。

ざっと読むとなかなか鮮やかな結果。骨折リスクの有意な増加を強調するには、メインセカンダリなんちゃらと同じロジックで難しい。まあ鮮やかな結果と言っても11.8%が9.0%に減るということがはたしてどういうことなのかよく分からない。NNTは4.8年の追跡で36人。

脳梗塞後の耐糖能異常者には投与を考慮すべきなのか。まあ日本では適応が無い。この研究の対象となったのはBMI30だとか、かなりいろいろな薬剤を投与されている人たちであり、日本人の一般的な耐糖能異常者とのギャップは考慮すべきだろう。糖尿病患者が除外されているあたり、なかなか適用範囲は狭い印象だ。この結果を信じるにせよ、その使いどころがいまいち想像できない。この研究結果が実臨床のプラクティスに与える影響はそう大きくはない。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]糖尿病患者の降圧薬(メタ分析 PMID: 26868137)

Bangalore S.et.al. Diabetes mellitus as a compelling indication for use of renin angiotensin system blockers: systematic review and meta-analysis of randomized trials. BMJ. 2016 Feb 11;352:i438. PMID: 26868137
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26868137

[目的]
糖尿病患者におけるレニンアンジオテンシン系薬剤とその他の降圧薬を比較する。

[研究デザイン]
メタ分析

[結果]
19のランダム化比較試験に参加した糖尿病患者25414人を解析対象とした。他の降圧薬と比較した相対危険度[95%信頼区間]は、死亡0.99[0.93~1.05]、心血管死亡1.02[0.83~1.24]、心筋梗塞 0.87[0.64~1.18], 狭心症0.80[0.58~1.11]、脳卒中1.04[0.92~1.17]、心不全,0.90, [0.76~1.07]、血行再建術 0.97[0.77~1.22]、末期腎不全0.99[0.78~1.28]

[結論]糖尿病患者において、レニンアンジオテンシン系薬剤は他の降圧薬(チアジド、カルシウム拮抗薬、β遮断薬)に比べて優れているわけではない。

[コメント]
降圧薬全般に言えることだが、とびぬけて優れた実効性を持つ降圧薬なるものは無いように思える。ごくわずかな臨床的差異を考慮して、患者背景に合わせた薬剤選択が完投であろう。その中でも低用量利尿薬の効果は古くから実証されている。

このメタ分析では2名のレビューアーが独立してデータを抽出し評価するなどの配慮、元文献がランダム化比較試験、死亡のアウトカムでは異質性を認めないなど、研究の妥当性を致命的に揺るがすような因子は少ないと思える。

[文献]厳格血糖コントロールのゆくえ(ランダム化比較試験長期追跡PMID: 26822326)

ACCORD Study Group Writing Committee. 9-Year Effects of 3.7 Years of Intensive Glycemic Control on Cardiovascular Outcomes. Diabetes Care. 2016 Jan 28. pii: dc152283. [Epub ahead of print] PMID: 26822326
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26822326

[目的]2型糖尿病患者を対象に、厳格な血糖コントロールと標準的な血糖コントロールを比較して心血管アウトカムを検討したACCORD試験では、非致死的心筋梗塞が減少したものの、心血管死亡、総死亡が上昇した。この研究を長期に追跡し解析した。

[結果] 解析はITTの原則に即して行われた。ACCORD trialの研究期間中、死亡や一次アウトカムを発症しなかった人たちの98%にあたる8601人をランダム化から中央値で8.8年、平均7.7年観察した。その結果、平均3.7年間の厳格血糖コントロールは一次アウトカム(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死亡)と総死亡につては同等であった。総死亡を含む複合アウトカムは1.49[1.19~1.87]から1.20[1.03~1.39]に減少したが、リスクは残存した。

[結論]ハイリスク2型糖尿病患者を9年にわたり観察した結果、3.7年の厳格血糖コントロールは死亡と非致死的心血管イベントについては同等であったが、心血管死亡は増加したままだった。

[コメント]
2型糖尿病における厳格な血糖管理は多くの場合で正当化されないであろう。VADT、
ADVANCEの追跡調査も昨年報告されており、その結果は一貫している。(詳細は㈱南山堂月刊誌「薬局」2016年1月号 糖尿病治療薬の項を参照)

[文献]NSAIDsで脳卒中は増えるか?(観察研究メタ分析 PMID: 26670086)

Ungprasert P.et.al. Nonaspirin Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs and Risk of Hemorrhagic Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies. Stroke. 2016 Feb;47(2):356-64. PMID: 26670086
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26670086

[背景と目的]NSAIDs出血性脳卒中の関連には未だ不明な部分がある。この関連について、観察研究のシステマティックレビュー、メタ分析で検討した。

[方法]NSAIDs使用と出血性脳卒中の関連を比較した症例対照研究及びコホート研究を網羅的に検索し、ランダムエフェクトモデルにより、メタ分析を行った。

[結果] 10研究を解析に含めた。NSAIDsの使用はわずかに出血性脳卒中を増加させる傾向にあったが、統計的有意ではなかった。相対危険1.09 (95%信頼区間, 0.98-1.22).薬剤個別の解析ではジクロフェナクとメロキシカムで有意なリスク上昇が見られた。(相対危険はそれぞれ1.27[95%信頼区間1.02-1.59]、1.27[95%信頼区間1.08-1.50])ロフェコキシブの相対危険は高かったが統計的な有意差を認めなかった。(相対危険[1.35[95%信頼区間0.88-2.06].

[結論] NSAIDs全体では出血性脳卒中との関連を認めなかった。しかしながら、ジクロフェナクとメロキシカムではわずかなリスク上昇が見られた。

[コメント]観察研究のメタ分析だけに因果関係のほどはよく分からない。全体の解析でリスクの明確な上昇は示されていない。薬剤別の解析では特定薬剤に有意な差がついているようだが、αエラーの可能性は高いだろう。仮説生成として捉えるべきである。現段階で関連性は不明と考えて良いように思える。なおNSAIDsの有害アウトカムに関して近年の報告をまとめておこう。

・心不全発症:Clin Cardiol. 2015 PMID: 26720629
・急性腎傷害:Eur J Intern Med. 2015 PMID: 25862494
・心不全増悪:Eur J Intern Med. 2015 PMID: 26427540
・上部消化管出血:Drug Saf. 2012 Dec 1;35(12):1127-46 PMID: 23137151
・高カリウム血症:Am J Kidney Dis. 2012  PMID: 22503390
・静脈血栓症:Rheumatology (Oxford). 2015PMID: 2525270

[文献]スタチン存在下でのACE阻害薬とARBの比較(RCTメタ分析PMID: 26861251)

Hoang V.et.al. Efficacy of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors and Angiotensin-Receptor Blockers in Coronary Artery Disease without Heart Failure in the Modern Statin Era: a Meta-Analysis of Randomized-Controlled Trials. Cardiovasc Drugs Ther. 2016 Feb 9. [Epub ahead of print] PMID: 26861251
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26861251

[目的] 近年の実践的なガイドラインでは心不全の無い冠動脈疾患を有する患者へのACE阻害薬もしくはARBの使用が推奨されている。しかしながら、引用された文献の多くはスタチン使用が流行する年代以前のものである。ACE阻害薬、ARBがスタチン療法のインパクトと同程度の心血管イベント減少効果があるか検討した。

[方法] MEDLINE、EMBASEより1980年1月1日~2015年8月31日までに報告された心不全を有さない冠動脈疾患患者にACE阻害薬もしくはARBを投与したランダム化比較試験を検索した。非致死的心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡、総死亡を検討した。これらの評価項目と、スタチン療法を行っていた患者割合はmeta-regression 解析にて行った。

[結果]AEC阻害薬10研究、ARB5研究を解析に含めた。(平均追跡期間36か月、解析対象78761人)ACE阻害薬による治療は非致死的心筋梗塞(RR 0.83; 95 % CI 0.75-0.91),脳卒中 (RR 0.76; 95 % CI 0.68-0.86),心血管死亡(RR 0.83; 95 % CI 0.72-0.95), 総死亡 (RR 0.86; 95 % CI 0.80-0.93)を有意に低下させた。ARBによる治療は脳卒中のみ低下させた (RR 0.92; 95 % CI 0.87-0.98).スタチン使用で調整したところ、スタチン使用が増加すると、心血管死亡に対するACE阻害薬の効果が減弱する傾向にあった。

[結論]心不全のない冠動脈疾患患者において、ACE阻害薬とARBは脳卒中リスクを低下させるが、ARBは非致死的心筋梗塞や心血管死亡、総死亡を減らさない。

[コメント]スタチンの心血管ベネフィットは複数の研究で示されている。スタチンが汎用される以前、ACE阻害薬のベネフィットが目立っていたが、スタチンが汎用されるようになった現在、そのベネフィットが薄まってしまったということか。まあそれでも有意な減少を示している。ただ、近年、特に2000年以降のトライアルにおいて、ACE阻害薬とARBにはそれほど大きな臨床的差異はないのではないかという指摘もあり、有害事象の少ないARBを考慮することもありうる選択肢だと考えている。〔Mayo Clin Proc. 2016 Jan;91(1):51-60 PMID: 26763511〕このメタ分析は80年代のトライアルから解析に含めており、結果に示されたような差異が、現在の薬物治療下の実効性を反映するものかどうか議論の余地がある。スタチンが汎用されている現在において、レニンアンジオテンシン系薬剤の薄まったベネフィットに、ACE阻害薬とARBの明確な臨床的差異を求めるのはややナンセンスなことなのかもしれない。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ピオグリタゾンが効くというのは基礎的研究から得られた幻想であると僕は思う。今になってこのようなトライアルが実施されていたことに少し驚いた。心不全も増えておらず、脳卒中・心筋梗塞を減らした。(わずかだけど)今後、この結果がどのように取り上げられるのか、興味深い。個人的にはこの薬剤にそう多くの期待は寄せていない。PubMedで有害アウトカムを検索してみると良い。ざっくざっく出てくるぞ!

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Feb.17;2(56)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-優先的にDeprescribingすべき薬剤とは?-

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多剤併用問題が浮き彫りになる中で薬物治療の中止介入(Deprescribing)が注目されている。潜在的に不適切な処方は積極的に中止すべきと言うような考え方は、まあ一部では大きな誤りではないように思うが、それも医療の部分に過ぎないという認識は必要だろうかと思う。

不適切な処方と言う概念があるからには適切な処方な処方なるものがあることを前提としている節もあるが、本来、適切な医療を測る物差しなど存在しない。エビデンスに基づく医療が必ずしも正しい医療とは限らないし、エビデンスの無い医療が必ずしも不適切とは限らない。

まあそれでも、禿げ頭理論という考え方がある。これは連続的につながっている概念において線引きが難しくとも、確かに白と黒は別物だ、という考え方である。フサフサの髪の毛を1本1本抜いていくとフサフサからテルテルまでは連続的につながり、何本抜いた時点で禿げ頭となるのか、明確に線引きすることはできない。しかし、フサフサとテルテルは明らかに異なる状況と言えよう。つまり、適切な処方や不適切な処方の境目は明確に区分できるものではないが、明らかに不適切な処方や、明らかに適切な処方なるものは存在するのだ、ということである。

さて、では明らかに不適切な処方があったとして、積極的にDeprescribingすべき薬剤とは何なのか。「What are priorities for deprescribing for elderly patients?」と題された論文が2015年に報告されている。〔Farrell B.et.al.2015 PMID: 25849568〕

この研究は修正デルファイアプローチを用いて、中止介入を実施すべき薬剤の優先順位を決めたものだ。3名の薬剤師、2名の家庭医、1名の社会科学者からなる専門家チームのコンセンサスにより決定されている。また本調査には65名の老年医学の専門家も参加している。なお、デルファイ法とは、集団の意見や知見を集約し、統一的な見解を得る手法の一つである。主な結果は以下の通りだ。

優先順位
1位 ベンゾジアゼピン
2位 抗精神病薬
3位 スタチン
3位 三環系抗うつ薬
3位 PPI


トップはベンゾジアゼピンであった。抗精神病薬、スタチン、三環系抗うつ薬、PPIと続く。

薬物療法中止に当たりその難易度を決める一つの要因が、対症的薬剤か予防的薬剤かと言う問題だ。現に今起きている症状を緩和する対照的薬剤は、将来的な合併症を予防するような予防的薬剤に比べて、減処方の難易度が高い。これは患者要因が関与するためだ。実際のところ、薬物療法中止を阻害する要因として、薬物治療への過度な期待や中止することへの恐怖などが挙げられる〔Reeve E.et.al.2013  PMID: 23912674〕

一方で予防的薬剤に関しては、その薬物療法中止難易度はそれほど高い印象ではない。先の優先順位で3位にあげられていたスタチンに関しては、基本的には医師が中止可能である旨をしっかり説明すれば、比較的容易に薬剤が中止できる可能性がある。〔Qi K.et.al.2015 PMID: 26047944〕〔Savarese G.et.al.2013 PMID: 23954343〕 〔Kutner JS.et.al.2015 PMID: 25798575〕 〔Alpérovitch A.et.al.2015 PMID: 25989805〕

抗精神病薬については、薬物治療中止に伴う状態の悪化など、リスクの懸念が減処方の障害となっている部分は大きいだろう。2剤の抗精神病薬を服用している統合失調症もしくは統合失調感情障害を有する患者において、その80%が安全に単剤へ移行できたとする小規模RCTも報告されているが、少数の患者では併用療法の恩恵を受けているともいえる、と結論されている。〔Borlido C.et.al.2016  PMID: 26845273〕

僕たちは薬のわずかな有害事象を軽視しないのと同じように、ごく少数の患者が併用療法から恩恵を受けている点についても軽視してはいけないのではないかと思う。

PPIについても投与が必要なケースと不要なケースに関して患者個別に熟慮が必要である。〔Lødrup AB.et.al.2013 PMID: 23311977〕〔Mo C.et.al.2015 PMID: 25954113〕〔Mo C.et.al.2015 PMID: 26147767〕〔Tran-Duy A.et.al.2015 PMID 25846476.〕また消化器系薬剤は多くの場合で対症的薬剤であり薬剤中止に伴う症状再燃というリスクも考慮したい。

1位に挙げられているベンゾジアゼピンだが、その減処方戦略には実に様々な手法が報告されている。一般的には漸減療法、心理療法、抗うつ薬や抗てんかん薬などを追加する治療などが挙げられるだろうが、実はその方法論に一貫性が無いことが文献上明らかにされており、実際にどの方法が最良なのか、不明確な部分もある。〔Pollmann AS.et,al.2015 PMID: 26141716〕

ベンゾジアゼピンは対症的薬剤の代表的薬剤であり、実際に減処方する際の難易度は非常に高い。高齢者においては、転倒、骨折を除けば、そのリスクはあまり明確ではない。〔Shelly.L.G.et.al.2016 PMID: 26837813〕〔Jaussent I.et.al.2013PMID: 24070457〕〔Dublin S.et.al.2011PMID: 22091503〕

最優先でやめるべき薬剤かどうかは、やはり患者個別の問題であり、一律に規定できない部分は確かと言える。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]第1子、第2子いおける妊娠間のBMI変化と周産期アウトカム(コホート研究PMID: 26651225)

Cnattingius S.et.al. Weight change between successive pregnancies and risks of stillbirth and infant mortality: a nationwide cohort study. Lancet. 2015 Dec 2. [Epub ahead of print] PMID: 26651225
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26651225

[背景]妊娠中の過体重や肥満は死産や乳児死亡の危険因子である。しかしながら、母体体重の経時変化は、これらのリスクにどのような影響を与えるか、定かではない。第1子から第2子までの間におけるBMI変化が死産や乳児死亡と関連するか検討した。

[方法]スウェーデンで妊娠、出生した女性を対象にしたスウェーデンにおける人口ベースコホート研究。第1子、第2子までの間におけるBMI変化と、死産や新生児、や乳幼児死亡との関連を調査した。

[結果]第1子、第2子を妊娠した587710人の女性の内77.7%にあたる456711人の情報を得た。BMIが-1〜+1未満と安定している女性に比べて、BMIが少なくとも4以上増加すると、相対危険は死産1.55[95%信頼区間1.23〜1.96]、乳幼児死亡1.29[95%信頼区間1.00〜1.67]であった。BMIが上昇すると死産は直線的に増加。

[結論]妊娠間の母親体重増が死産リスク高める可能性があり、体重増加を防ぐことが望まれる。

[文献]DPP4阻害薬の有効性安全性(メタ分析 PMID: 26510994)

Abbas AS.et.al. Cardiovascular and non-cardiovascular safety of dipeptidyl peptidase-4 inhibition: a meta-analysis of randomized controlled cardiovascular outcome trials. Diabetes Obes Metab. 2016 Mar;18(3):295-9. PMID: 26510994
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26510994

DPP4阻害薬は欧米において、心血管リスクが30%未満となるような安全性が要求される。これまで3つの大規模臨床試験の解析から36543人において、3334例の心血管イベントが報告されている。これら3つの研究のFixed-effect meta-analysisにより算出された相対危険は、プラセボに比べてDPP4阻害薬は心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合アウトカム0.99 [95%信頼区間0.93~1.06]、心血管死亡1.01 [95%信頼区間 0.91~1.12]、非致死的心筋梗塞0.98 [95%信頼区間0.89~1.09]、非致死的脳卒中1.00[95%信頼区間0.86~1.16]であった。急性膵炎については相対危険で1.79[95%信頼区間1.13~2.81]と有意に上昇。10000人年あたり5.5件、NNHにして年間1940人と算出された。

[コメント]
急性膵炎に関しては近年報告されている観察研究ではあまり関連が見られていなかったがRCTのメタ分析ではNNH1940となっている。おそらくTECOS、SOVER、EXAMIの3つの統合解析と思われる。なお膵臓癌に関しては同じくDiabetes Obes Metab. 2016 Mar;にretrospective population-based cohort studyが掲載されている。

Knapen LM.et.al. Use of incretin agents and risk of pancreatic cancer: a population-based cohort study. PMID: 26537555
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26537555

182 428人を4.1年追跡した結果、Incretin use was not associated with pancreatic cancer when compared with control subjects with diabetes (HR 1.36, 95% CI 0.94-1.96);つまりincretin use was not associated with pancreatic cancer

[文献]ダビガトランvsワルファリン(観察研究メタ分析 PMID: 26812933)

Romanelli RJ.et.al. Dabigatran Versus Warfarin for Atrial Fibrillation in Real-World Clinical Practice: A Systematic Review and Meta-Analysis. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2016 Jan 26.. [Epub ahead of print] PMID: 26812933
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26812933

[背景] 非弁膜性心房細動治療においてワルファリンとダビガトランのリスクベネフィットに関するデータは限定的である。この研究ではこれら薬剤の有効性、安全性を比較した外的妥当性の高い観察研究を用いて検討した。

[方法と結果] ダビガトランとワルファリンを比較した観察研究について網羅的にサーチした。2名の調査者が研究組み入れ作業を行い、脳梗塞や消化管・頭蓋内出血のハザード比をランダムエフェクトモデルを用いてメタ分析した。7つの後ろ向きコホート研究を組み入れた。348750例、平均追跡は2.2年であった。

解析の結果、ダビガトラン15mgはワルファリンと比べて脳卒中;ハザード比0.92[95%信頼区間0.84~1.01]と優れた結果ではなかったが、頭蓋内出血0.44[95%信頼区間0.34~0.59]と有意に低かった。ダビガトラン150mgはワルファリンに比べて消化管内出血が多かった。ハザード比1.23[95%信頼区間1.01~1.50]

[結論]
この外的妥当性の優れた研究では、非弁膜性心房細動患者において、ダビガトランはワルファリンに匹敵する脳梗塞予防効果を有する。しかしながら、頭蓋内出血リスクは低いものの、特に高齢者では消化管内出血が多かった。

[コメント]
これまでの示唆を大きく覆す結果ではないような印象もある。高齢者では腎機能が低下しているケースも多々あり、ダビガトランは消化管内出血に十分注意すべきである。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ポリファーマシー、多剤併用。薬を減らすことが薬剤師の実績みたいな仕方で、様々なメディアにも情報が発信されるようになってきました。薬を減らすことは正義なのでしょうか。正義とは美徳の問題であり、多分に価値判断を伴う問題でもあります。このテーマについてはさらなる思索を続けたいと考えています。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Feb.10;2(55)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-【レビュー】アロプリノールの有効性・安全性-

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[アロプリノールの有効性]
痛風や高尿酸血症が心血管疾患を増加させる可能性が示されてきたが、アロプリノールのようなキサンチンオキシダーゼ阻害薬による心血管疾患への有用性は不明な部分も多い。2015年にKim SCらにより報告された米国のコホート研究では傾向スコアマッチングによる解析後、キサンチンオキシダーゼ阻害薬(アルプリノール、フェブキソスタット)による治療で心血管疾患はむしろ増える傾向にあった。(ハザード比1.16 [95%信頼区間0.99-1.34])〔Am J Med. 2015 PMID: 25660249〕

痛風に対するアロプリノールの効果について、2014年のコクランレビューでは、痛風発作の発生はプラセボと同等であり、身体機能や健康関連QOL治療成功に関する全体評価を報告した研究は無いと結論されている。〔Cochrane Database Syst Rev. 2014 PMID: 25314636〕

アロプリノールの有用性を報告した文献はあるが、その研究の質は必ずしも高くない。慢性腎臓病の進展を遅らし、心血管イベントを減らしたと結論した2015年のGoicoechea Mらの報告は、ランダム化比較試験のPost hoc analysisである。〔Am J Kidney Dis. 2015 PMID: 25595565〕

また、心不全があり、痛風発作の既往がある患者においては、アロプリノールは心不全による入院や死亡を減らすとしたThanassoulis Gらの2010年の報告はnested case-control研究のサブ解析である。少なくともこの研究では無症候性の心不全患者にアロプリノールを投与してもアウトカム改善は示されていない。〔Arch Intern Med. 2010 PMID: 20696962〕

[アロプリノールの安全性]
アロプリノールにはSJSやTENを含む重症薬疹などの致命的な有害事象リスクが報告されており、台湾国民健康保険研究のデータベースを用いた解析では、無症候性高尿酸血症で、腎疾患や心血管疾患を有する患者での使用は死亡リスク増加が示唆されている。〔JAMA Intern Med. 2015 PMID: 26193384〕

2014年にKok VCらにより報告されたマッチングコホートを用いた解析によると、中央値5.25年の追跡で、アロプリノール使用群で非使用群に比べて心血管リスクが増加した。(調整ハザード比1.25 [95%信頼区間1.10~1.41] ただこの研究では交絡因子の補正が十分でない可能性や、マッチングによるセレクションバイアスの影響が想定でき、直ちにアロプリノールと有害アウトカムの関連を決定づけるものではない。

ただ、これまでの研究結果を踏まえれば、痛風もしくは高尿酸血症患者へのアロプリノールは尿酸値を下げるかもしれないが、痛風発作や心血管アウトカムへの明確な実効性は不明であり、重篤な過敏症リスクの増加が示唆される。

アロプリノールには慢性腎臓病の進展を遅らすのではないか、と結論したメタ分析も報告されているが、代用のアウトカムからの推測であり、末期腎不全や死亡に関するデータは乏しいと報告されている。〔Nephrol Dial Transplant. 2014 PMID: 24042021〕

[アロプリノール、近年の報告から]
しかし、近年アロプリノールが死亡リスクを減らすという研究が複数報告されている。Dubreuil Mらによる2015年の報告では、傾向スコアマッチングによるコホート研究で、平均2.9年間の追跡後、総死亡がわずかに低下した。(ハザード比0.89 [95%信頼区間0.80 ~ 0.99])生存に対するベネフィットは重篤な有害事象よりも上回るとまで結論されている。〔Ann Rheum Dis. 2015 PMID: 24665118〕

さらに2016年には高血圧患者に対するアロプリノールの有用性を検討したClinical Research Practice Datalinkを用いたコホート研究が報告されている。この報告はhypertention 電子版2016年1月25日付で掲載されたものだ。現時点でPubMed収録されていない。〔doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.115.06344〕

この報告によれば、65歳以上の高血圧患者にアルプリノールは脳卒中(ハザード比0.50[95%信頼区間0.32~0.80])、心血管イベント(ハザード比0.61[95%信頼区間0.43~0.87])を有意に減らしている。この研究ではアロプリノールの降圧効果が、心血管アウトカムを改善するのか、という仮説のもと解析されており、痛風や高尿酸血症とは独立した検討となっている。対象となっている患者の特性に留意する必要があるが、なかなか興味深い結果である。

なお、アロプリノールの降圧効果は2013年に、Agarwal Vらによってメタ分析が報告されている。〔J Clin Hypertens (Greenwich). 2013 PMID: 23730993〕

[フェブキソスタットとの比較]
アロプリノールは尿酸値を下げるだけと言う視点であれば、まあその効果が無いとは言えない。その効果はフェブキソスタットとほぼ同等である。〔N Engl J Med. 2005 PMID: 16339094〕〔Semin Arthritis Rheum. 2013 PMID: 24326033〕〔Int J Rheum Dis. 2014 PMID: 24467549〕

コストを踏まえれば、少なくともフェブキソスタットを第一選択とする根拠は少ないだろう。尿酸値降下療法としての費用対効果はフェブキソスタットよりもアロプリノールで優れている。〔Ann Intern Med. 2014 PMID: 25364883〕

[結論]
対象患者の年齢を踏まえる必要はあるが、高血圧を有する痛風発作の既往のある高尿酸血症患者において、キサンチンオキシダーゼ阻害薬を投与する場合、アロプリノールが推奨される。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]コクランレビューと非コクランレビュー (マッチドペア解析 PMID26671213)

Useem J .et.al. Systematic Differences between Cochrane and Non-Cochrane Meta-Analyses on the Same Topic: A Matched Pair Analysis. PLoS One. 2015 Dec 15;10(12):e0144980. PMID:
26671213

[背景] コクラン共同計画によるメタ分析においては、バイアスを最小限にするために、透明性/再現性を最大化し、集計データの精度を向上することを目指し、厳格な方法論及び報告基準に準拠している。コクランではないメタ分析の結果が異なった結果をもたらすかどうかについては未解決の問題である。

[方法]心血管疾患に関する介入とアウトカムが同じコクランレビューとによる非コクランレビューのペアを比較し、結果の不一致頻度や効果量、精度の差異、二次引用の頻度などを検討した。疾患状態、介入、アウトカム、出版年を考慮してペアを作成。

[結果]40の文献ペアが解析に含まれた。2つの研究は最初の出版、含めた研究数、平均サンプルサイズが類似していた。ペアに含まれたレビューには344の臨床試験が含まれていた。このうち111(32.2%)の研究がコクランレビューのみに含まれ、104(30.2%)がコクランではないレビューのみに含まれていた。なお129(37.5%)はどちらのレビューにも含まれていた。換言すれば、62.5%の研究で含まれた研究の一致を見ないということになる。

結果的に37.5%のペアで結果の一致を見なかった。7ペアで結果の有意差の有無に一致を見ない。95%信頼区間の一致を見ないことで、これは統計的解釈の差異を生み出してしまう。また5ペアでは効果量に20%の差異を認め、3ペアでは2倍以上の差異を示していた。コクランではないメタ分析はコクランよりも高い効果量(P< 0.001)を報告しており、精度は低かった。(P< 0.001)

[結論]テーマをマッチさせたコクランレビューと非コクランレビューでは結果の類似性は認めたものの、結果の矛盾も多く、含まれた研究は相当程度異なっていた。非コクランレビューではコクランレビューに比べて効果量を大きく報告し、また精度も低かった。

[コメント]
コクランレビューというと何となく世の中の真理を示した科学的根拠というようなイメージがあるが、おなじリサーチクエスチョンのメタ分析と、組み入れられた研究が一致を見ないという事態が60%を超えることに驚愕する。結果の矛盾が生じるのはもはややむをえない印象だが、いったいどちらが真理なのかは不明である。何を信じて、何をなせばよいのか。それでも僕たちは何かを信じ、臨床判断を下すしかないのである。

[文献]終末期患者における薬剤の不適切使用の評価(システマティックレビューPMID: 26733578)

Todd A.et.al. Inappropriate prescribing of preventative medication in patients with life-limiting illness: a systematic review. BMJ Support Palliat Care. 2016 Jan 5. pii: bmjspcare-2015-000941. PMID: 26733578
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26733578

[目的]余命の限られた患者における予防的薬剤の不適切な処方を特定する方法に関する文献のシステマティックレビューを行う。

[方法]MEDLINE, EMBASE, CINAHL, PsycINFOの4つのデータベースを用いて文献を検索した。文献の選択基準は、限られた余命の患者が対象であったこと、予防的薬剤の使用、薬物治療の適切性が研究目的あるいはアウトカムとして評価されていること、とした。

[結果]19研究が基準を満たした。薬物治療の適切性を評価したクライテリアは、Beers Criteria、STOPP criteria、デルファイコンセンサスや専門家の意見などであった。不適切な薬剤使用のカテゴリとして、脂質異常治療薬(12研究)高血圧治療薬(11研究)糖尿病治療薬(9研究)が主要なものであった。

[結論]余命限られた患者において、その余命という文脈に不適切と思われる予防的薬剤が処方されている。予防的薬剤の妥当性に関する方法論は高齢者集団のために開発された既存のクライテリアを利用するいくつかの方法論が評価された。対象患者の特殊性を考慮すると、余命の限られた患者に特化したアプローチが必要である。

[コメント]確かに潜在的に不適切な薬剤使用に関するクライテリアを用いた介入により、臨床アウトカムが改善されたという報告は現段階でない。〔J Am Geriatr Soc. 2014 Sep;62(9):1658-65. PMID: 25243680〕〔. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Oct 7;10:CD008165. PMID: 25288041〕終末期患者のみならず、潜在的に不適切な薬剤使用へのアプローチの方法論の開発は重要なテーマかもしれないが、やはり基盤となるのはEBMではなかろうか。ちなみにデルファイ法とはconsensus methodの一つ。質的研究で用いられる手法。詳しくは以下を参照

週刊医学界新聞  質的研究入門 第16回consensus methodによる研究(1)
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/n2432dir/n2432_02.htm


[文献]降圧治療の心不全への効果(メタ分析PMID: 26780184)

Thomopoulos C.et.al. Effects of blood pressure-lowering treatment. 6. Prevention of heart failure and new-onset heart failure - meta-analyses of randomized trials. J Hypertens. 2016 Jan 16. [Epub ahead of print] PMID: 26780184
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26780184

[目的]様々なアウトカムにおける降圧治療の相対的有用性をランダム化比較試験のメタ分析により評価されている。本研究では降圧治療による心不全への効果をランダム化比較試験のメタ分析で検討した。

[方法]降圧薬対プラセボもしくは治療なしを比較したランダム化比較試験をメタ分析した。random-effects modelによりリスク比と95%信頼区間を算出。

[結果]35の降圧治療RCTでは心不全や脳卒中を抑制した。リスク比(95%信頼区間)はそれぞれ、RR 0.63 (0.52-0.75)、RR 0.58 (0.49-0.68) また心不全や脳卒中の現象は収縮期血圧、拡張期血圧の低下と関連していた。研究開始時に心不全を有していない降圧治療のRCT18研究では、心不全の新規発症が抑制された。RR 0.58 (0.44-0.75) 薬剤クラス別ではカルシウム拮抗薬は心不全予防効果が劣っていた。RR 1.16 (1.01-1.33)  ただし利尿薬やβ遮断薬、レニンアンジオテンシン系薬剤との同時使用でリスク増加は示されなかった。RR 0.96 (0.81-1.12)

[結論]降圧治療で心不全発症を防ぐことができる。カルシウム拮抗薬による降圧治療は、カルシウム拮抗薬に対するthe trial design creates an unbalanceを除いて、他の降圧薬と同様に心不全の新規発症予防に効果がある。

[コメント]読みづらい英文。背景、目的はなんと1文である。それはさておき、カルシウム拮抗薬単独では心不全への効果はあまり期待できないかもだが、基本的には降圧治療で心不全の新規発症を予防できる可能性が示されている。ただカルシウム拮抗薬も多剤併用すれば有意差が消失している。

[文献]ベタヒスチンはメニエール病の眩暈発作に有効か?(RCT PMID: 26797774)

Adrion C.et.al. Efficacy and safety of betahistine treatment in patients with Meniere's disease: primary results of a long term, multicentre, double blind, randomised, placebo controlled, dose defining trial (BEMED trial). BMJ. 2016 Jan 21;352:h6816. PMID: 26797774
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26797774

[臨床疑問]ベタヒスチンはプラセボに比べてメニエール病を有する患者の眩暈発作に対する長期的な効果はあるのか?

[方法]多施設、二重盲検、プラセボ対照3群比較ランダム化比較試験。対象となったのは21歳~80歳で両側性、もしくは片側性のメニエール病患者(平均56歳)。被験者はプラセボ群74人、低用量(24mgを1日2回)ベタヒスチン群(73人)高用量(48mgを1日3回)ベタヒスチン群(74人)に割り付け9か月治療を行った。プライマリアウトカムは7か月~9か月の間における3か月間の患者日誌に基づく30日ごとの発作の回数。

[結果]メニエール病の発作頻度は3群間で明確な差が無かった。(P=0.759). プラセボに比べて、発作の発生率比は低用量群で1.036 (95%信頼区間 0.942 to 1.140)高用量群で 1.012 (95%信頼区間0.919 to 1.114) であった。月の平均発作発生頻度は、プラセボ群、低用量群、高用量群でそれぞれ、2.722 (1.304 to 6.309), 3.204 (1.345 to 7.929), 3.258 (1.685 to 7.266)であった。

[結論]メニエール病による眩暈発作に対するベタヒスチンの効果は限定的である。

[コメント]ベタヒスチンは強力なH3受容体拮抗作用と弱いH1受容体拮抗作用を持ち、蝸牛の血流を増加させると言われている。まあこれはモルモットさんでの研究。〔Int J Audiol 2014 ; 53:753- 9.PMID 25014609〕これまで人に対する明確な効果は不明であるにもかかわらず、眩暈と言えばメリスロン®、そんな現実が確かにあった。

本研究は、有効性に関する統計解析はAnalyses were based on the intention to treat principle;であり、安全性についてはFASである。ベタヒスチンをかなり高用量で用いても効果不明と言う結果になってしまった。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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眩暈と言えばメリスロン® 効いているのか効いていないのか、調剤する立場の人間でもよく分からない薬の一つであったが、RCTの結果はまあ予想通り。薬価は高くないが、多くの場合でプラセボでもよかったのだろう。

こんな薬剤はきっと山ほどある。既に消えたダーゼン®や適応の一部が消えたリゾチーム製剤。昔から使われている薬の多くが、まあとにかく効果があると信じられている。

一体、何を根拠に?

剤効果を把握するという思考プロセスにおいて何を重視するのか。薬剤効果がどれほど見込めるのかと言うような「疑念」が「信念」へと到達するプロセスには大きく4つある。

①固執:僕が効くと思うから効くのだ。
②権威:偉い先生が効くと言ったから効くのだ。
③先天的:世間の常識では効くと言われているから効くのだ。
④科学的:主観的なものではなく客観的なものにより実証されているから効くのだ

薬剤師として薬剤効果を把握するという仕事はどのプロセスで行うべきか?答えは明らかであろう。しかし、ここで問題なのは「科学的」な信念形成は、必ずしも実証的な事実に支持されていなくても形成されうるという事だ。メリスロン®やダーゼン®について、僕たちは非科学的な医療を提供していたのだろうか?違うだろう?それでも僕たちは科学的だと思っていた。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Feb.3;2(54)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
- 祈りのエビデンス-

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神などの人間を超える神格化されたものに対して、何かの実現を願うこと、それを僕たちは祈りと言う。たとえ無宗教と言われるような人でさえ、何か自然を超えた力の存在を敬う心は持ち合わせているだろう。それが人間というものだ。僕はそう思う。

米国のがん患者2262人を対象にした調査では、自身の健康のために祈ったという人たちが68%[95%信頼区間66.2〜70.8]であると報告されている。〔J Altern Complement Med. 2008 Oct;14(8):931-8. PMID: 18925865〕

ストレスを受ける現代社会、その日常の中で僕らは、信仰する宗教に関わらず、祈るという行為はごくありふれたものだ。日本人は無宗教などと言われることもあるが、よくよく考えてみたら、何らかの宗教的営為を行いながら日々生きている。神社へ参拝すること、これは初詣などもそうだし、またクリスマスを祝ったり、お墓参りに行ったりする。健常者の間でも祈りは日常的に用いられているが、人は病を患った時に、身体不条理からの回復を願い祈ることも多いだろう。

慢性疾患(がん患者がほとんど)を対象にしたレビューでは祈りの多くが健康や心理状態の改善など病気を中心とした祈りであったと報告されている。多くの慢性疾患患者では自身の苦痛緩和のために祈るが、祈ることは治癒を望むことだけではない。むしろ祈りは彼らの体験そのものポジティブな仕方で変容させることができる。〔Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:927973. PMID 25815041〕

〔コクランは神の存在を証明できたか〕
祈りは古来より世界各地において健康の増進や病気の症状緩和を目的に行われてきた。とりなしの祈り、つまり他者への祈りに関するランダム化比較試験のシステマティックレビューが報告されている。〔Cochrane Database Syst Rev. 2009 Apr 15;(2):CD000368. PMID: 19370557〕

この研究では10研究7646人が解析に含まれた。その結果、標準ケア単独に比べて、標準ケアにとりなしの祈りを加えても死亡に対する明確な効果は不明であった。ランダム化比較試験6研究(6784人)の統合で相対危険は0,77[95%信頼区間0.51~1.16]であった。また5つのランダム化比較試験の統合で一般的な臨床状態についても検討しているが、明確な実効性は示されなかった。(相対危険0.98[95%信頼区間0.86~0.11]

同様に冠動脈疾患ケアユニットへの再入室に対する効果も認めず。(4 RCTs, n=2644, 相対危険 1.00[95%信頼区間0.77~1.30].さらに再入院への効果も不明という結果であった。(2 RCTs, n=1155, 相対危険 0.93[95%信頼区間0.71~1.22])

仮に科学的厳密な研究手法でとりなしの祈りの実効性が示されたなら、それは神の存在証明にもつながるのだろうか。そのような結果が実証的に示されたならば、デカルトももう少し、この世界をあるがままに受け入れる事が出来たのかもしれない。

〔祈りは無力か〕
コクランレビューは、とりなしの祈りに関する複数の研究を分析したが、レビューアは祈りの有効性についての結論を引き出すことができなかった。しかしながら有用性を示唆した文献報告もある。その一つが、2012年に報告された、とりなしの祈りが精神的な幸福に与える影響を検討したランダム化比較試験だ。〔Altern Ther Health Med. 2012 Sep-Oct;18(5):18-27.PMID: 22894887〕

標準的ながん治療に加えて、とりなしの祈りの効果を検討している。参加者は癌センターへ入院している患者であった。研究開始時のアンケートに回答した999人のうち66.6%を追跡。平均年齢は61歳であった。とりなしの祈りはキリスト教の外部グループにより行われた。慢性疾患治療における精神的幸福度とQOLを検討した。対照群に比べて介入群で精神的幸福度が有意に改善した。(P = .03,) 感情面での幸福度(P = .04,)、身体機能面での幸福度(P = .06)も同様の傾向であった。キリスト教によるとりなしの祈りは標準ケア群に比べて精神的、感情的な幸福度をわずかに改善する可能性が示唆された。

そのほかにもとりなしの祈りの有用性を示唆した文献は過去に複数報告されているようだ。健康アウトカムと宗教活動の関連を検討したレビューが報告されている。〔Explore (NY). 2005 May;1(3):186-91.PMID: 16781528〕

この研究では5つのランダム化比較試験がレビューされている。

①体外受精を受けた219人の女性を対象にした2重盲検試験ではとりなしの祈りを受けた群で有意に高い妊娠率であった。(50% versus 26%, p=0.0013)

②約4000人の血流感染患者を対象とした研究では、とりなしの祈りが発熱時間(p=0.04);や入院期間(p=0.01)の有意な減少をもたらした。ただし発熱期間の中央値には差がなかった。

③冠動脈疾患ケアユニットから退室した799人を対象とした2重盲検試験では、とりなしの祈りは、死亡や血行再建術、救急診療部受診や心停止への効果に差を認めなかった。

④経皮的冠動脈インターベンションを受けた患者150人を対象としたランダム化比較試験では標準ケアに加えてnoetic therapyを行うと、周術期における有害転帰を減らす傾向にあったが有意差を認めなかった。

⑤末期腎臓病を有する95人を対象としたランダム化比較試験では、とりなしの祈りに医学的、心理学的な有意差は報告されなかったが、とりなしの祈りを受けるであろうと期待した患者において幸福度が改善された。

宗教的活動が健康関連アウトカムを改善する可能性が示唆されている。祈りの臨床効果は客観的な改善しないかもしれないが、主観的なアウトカムの改善は示唆されている。祈ることは無力なのか。僕はそうは思わない。統計データがどうあれ、僕たちは祈らずにはいられない、そんな状況を経験することは多々あるだろう?


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]後発品に関するベストプラクティス〔システマティックレビューPMID: 26594818〕

Choudhry NK.et.al. Improving Adherence to Therapy and Clinical Outcomes While Containing Costs: Opportunities From the Greater Use of Generic Medications: Best Practice Advice From the Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2016 Jan 5;164(1):41-9. PMID: 26594818
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26594818

ジェネリック医薬品に関する臨床ガイドライン

[疾患/状態]
薬物治療が必要とされるすべての疾患/病態

[対象医療者]
全ての臨床医

[介入カテゴリ]

薬物治療
[後発品と先発品のエビデンス]

先発品が後発品に比べて優れているとするエビデンスはない。後発品の推進は特に慢性疾患で患者のコストを減らし、治療へのアドヒアランス向上に寄与する。

[エビデンスに基づく実践の障壁因子]
後発品に対する安全性と有効性に関する医師の認識及び患者の期待や好み

[後発品推進戦略]
処方薬やそのコストの状況について処方者に通知する電子カルテの採用や処方の一部負担システム、医師や患者の教育など

[患者説明のポイント]
先発品は後発品より有効性が高いわけではない。
後発品では剤形や色などが先発品と異なるが、むしろそれがメリットとなることがある。
先発品と後発品で薬剤ごとに含まれる用量が異なることがあり、同用量では同じ効果が得られないことがある。
先発品から後発への変更でコストが低く抑えられる
安定した慢性疾患患者において先発品から後発品への変更は稀にしか行われていない

[推奨]
臨床医は可能であれば高価な先発品よりも後発品を使用すべきである。

[コメント]
詳細は原著参照。薬剤師の視点で特に気になるのが後発品と先発品の差異である。
以下の論文が挙げられている。
スタチン:Ann Intern Med. 2014 Sep 16;161(6):400-7PMID: 25222387
心血管用薬:JAMA. 2008 Dec 3;300(21):2514-26PMID: 19050195
ワルファリン:Pharmacotherapy. 2011 Apr;31(4):386-93. PMID: 21449627
抗てんかん薬:Drugs. 2010 Mar 26;70(5):605-21PMID: 20329806
ラタノプロスト点眼:Indian J Ophthalmol. 2007 Mar-Apr;55(2):127-31. PMID: 17322603
J Glaucoma. 2013 Dec;22(9):707-12. PMID: 22595934
Clin Exp Pharmacol Physiol. 2015 Feb;42(2):220-4. PMID: 25345750

いずれも先発、後発に著明な差を認めないと結論されている。(ラタノプロストに関しては2007年の報告には差異が示唆されている。しかしながら他の複数の研究でその知見は否定的)このように科学的根拠においては明確な差異を認めないにも関わらず、後発品変更を阻害する因子として、医師や患者の認識が挙げられることは言うまでもない。医師の約25%がジェネリック医薬品の安全性と有効性について懸念を抱いているようだ。〔Health Aff (Millwood). 2009 Mar-Apr;28(2):546-56 PMID: 19276015〕

[文献]認知症に対するスタチンの効果 (システマティックレビューPMID: 26727124)

McGuinness B.et.al. Statins for the prevention of dementia. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jan 4;1:CD003160. PMID: 26727124
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26727124

[背景]高コレステロールなどの血管リスクファクターはアルツハイマー病や血管認知症などの認知症リスクを増加させる。いくつかの観察研究ではスタチンの使用と認知症発症の低下が示唆されている。

[目的]年齢などから認知症ハイリスク患者に対するスタチンの認知症予防効果を検討する。

[選択基準]認知症リスクのある人に少なくとも12か月以上スタチンとプラセボを投与した2重盲検ランダム化比較試験

[主な結果]2研究を解析に組み入れた。40歳から82歳の26340人が対象とな値、70歳以上は11610人であった。すべての被験者が血管疾患の既往もしくはそのリスクを有していた。2研究において、用いられたスタチンはシンバスタチンとプラバスタチンであった。追跡は中央値で3.2年と5年であった。リスクバイアスは低いと判断された。2研究うちで認知症発症を報告したのは1研究のみでオッズ比は1.00, 95% confidence interval (CI) 0.61 to 1.65,と報告されている。認知機能は2研究で検討されていたが、異なるスケール評価のためメタ分析できなかった。5つの異なる認知テストでスタチンとプラセボに明確な差を認めなかった。

[著者の結論]心血管リスクのある中高年患者にスタチンの使用は認知機能を低下や認知症を予防しない。

[コメント]スタチンをいつまで投与するのか。難しい問題だが、少なくとも認知機能低下予防という根拠は現段階では通用しない。

[文献]急性気道感染症への適切な抗菌薬使用 (システマティックレビュー PMID: 26785402)

Harris AM.et.al. Appropriate Antibiotic Use for Acute Respiratory Tract Infection in Adults: Advice for High-Value Care From the American College of Physicians and the Centers for Disease Control and Prevention. Ann Intern Med. 2016 Jan 19. [Epub ahead of print] PMID: 26785402
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26785402

[背景]成人において急性気道感染症は主な抗菌薬処方理由となっている。抗菌薬は急性気道感染症においてしばしば不適切に用いられている。この記事では慢性肺疾患や免疫に異常がない健常成人に対する気道感染症の抗菌薬適正使用に関する情報をまとめる。

[方法]成人における気道感染症への抗菌薬使用に関するエビデンスをレビュー。各専門学会からの臨床ガイドラインはメタ分析、システマティックレビュー、ランダム化比較試験により補完された。エビデンスの選定は 「急性気管支炎」、「気道感染」「咽頭炎」、「副鼻腔炎」「風邪」のワードでCochrane Library, PubMed, MEDLINE, EMBASEを2015年9月まで検索した。

[HIGH-VALUE CARE ADVICE 1]
肺炎が疑われる場合を除き、気管支炎患者では検査の実行や抗菌薬を開始すべきではない
[HIGH-VALUE CARE ADVICE 2]
例えば、持続性の発熱、前頸部リンパ節炎、滲出性の扁桃炎を有する患者に様に、A群レンサ球菌咽頭炎が疑われる症状を有する患者においては、迅速診断キットもしくは培養による検査をすべきである。
[HIGH-VALUE CARE ADVICE 3]
以下の状況のために抗菌薬使用は温存しておくべきである。
・10日以上の持続的な症状を有する急性鼻副鼻腔炎患者
・39度を超える発熱と膿性鼻汁もしくは3日間連続した顔面痛を有する患者
・ウイルス性疾患症状改善後の症状悪化(2峰性の経過)
[HIGH-VALUE CARE ADVICE 4]
臨床医は風邪に抗菌薬を処方してはならない。

[コメント]
要点は以下の表にまとまっている。
http://annals.org/data/Journals/AIM/0/M151840tt1_Table_Antibiotic_Prescribing_Strategies_for_Adult_Patients_With_Acute_Respiratory_Tra.jpeg
以下、本文の主要箇所をまとめる。(誤訳の可能性あり!二次利用注意)

急性の気道感染症に対する抗菌薬の不適切使用は公衆衛生上の脅威と言えるだろう。CDCの報告によれば…。

「Each year in the United States, at least 2 million people become infected with bacteria that are resistant to antibiotics and at least 23,000 people die each year as a direct result of these infections.」

Centers for Disease Control and Prevention. Antibiotic Resistance Threats in the United States, 2013. Atlanta, GA: Centers for Disease Control and Prevention; 2014. Accessed at http://www.cdc.gov/drugresistance/threat-report-2013/ 25 September 2015
.
つまり、米国では毎年、少なくとも200万人が抗菌薬に対する耐性を持つ最近に感染し、少なくともそれらの感染症が原因で毎年23000人が死亡しているというわけだ。当然ながら、Antibiotic use is a major factor contributing to the spread of antibiotic resistance;であり、広域スペクトルの抗菌薬を使うほど、多大耐性肺炎球菌の存在割合が高くなる。〔Clin Infect Dis. 2011 Oct;53(7):631-9.  PMID: 21890767〕

抗菌薬の使用はまた、薬物治療による有害事象の大多数を占める。〔Clin Infect Dis. 2008 Sep 15;47(6):735-43. PMID: 18694344〕 不適切な抗生物質使用後の有害事象に関するデータについては不明な部分も多いが、抗菌薬を使用した患者の5~25%で有害事象が発生していると推定され、重篤な有害事象は1000人に1人の割合と考えられる。〔http://www.cdc.gov/drugresistance/threat-report-2013/〕

外来において処方された抗菌薬の50%が不要、もしくは不適切であると言われており〔N Engl J Med. 2013 Apr 11;368(15):1461-2. PMID: 23574140〕外来での不適切な抗菌薬処方を減らすことは公衆衛生上の優先事項である。

〔急性単純性気管支炎〕
急性単純気管支炎は咳の持続が6週以内で自己治癒する気管支の炎症を伴う。約90%がウイルスにより引き起こされる。急性気管支炎への抗菌薬使用のベネフィットは限定的であり有害事象リスクが増加する。〔Cochrane Database Syst Rev. 2014 Mar 1;3:CD000245. PMID: 24585130〕コクランレビューに含まれていないランダム化比較試験でもプラセボに比べて、アモキシシリン・クラブラン酸で咳の頻度を改善しなかった。〔BMJ. 2013 Oct 4;347:f5762. PMID: 24097128〕マクロライドはしばしば咳嗽患者に使用されるが、急性気管支炎へのマクロライド使用でプラセボよりも有害事象が多い。〔J Fam Pract. 1996 Jun;42(6):601-5. PMID: 8656171〕

根拠となるエビデンスは限られているが、デキストロメトルファンやグアイフェネシン、ジフェンヒドラミン、フェニレフリン、アルブテロールなどが症状緩和に有効であろう。ただしβ刺激薬は喘息やCOPDの無い患者に対するベネフィットは示されていない。〔Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 3;9:CD001726. PMID: 26333656〕

〔咽頭炎〕
咽頭炎の原因も多くがウイルスである。ただしA群溶連菌を除外する必要がある。Centor criteria等を用いて身体所見から、疑わしい症状を有する場合は迅速診断キットなどの検査が推奨される。ほとんどの咽頭炎はウイルスではあるが、成人咽頭炎の60%に抗菌薬が使用されている。〔JAMA Intern Med. 2014 Jan;174(1):138-40. PMID: 24091806〕

A群連鎖球菌感染症と診断された患者の場合、抗菌薬は咽頭痛を1〜2日早く改善するが、ベネフィットは控えめであり、症状軽減に関するNNTは3日後で6人、1週間の治療で21人である。リウマチ熱は減る可能性があるが糸球体腎炎については不明である。〔Cochrane Database Syst Rev. 2013 Nov 5;11:CD000023. PMID: 24190439〕

〔急性副鼻腔炎〕
急性副鼻腔炎も通常はウイルスにより引き起こされる。細菌性が疑われる場合は以下のケースである。細菌性が疑われた場合に抗菌薬の使用は考慮できる。
・臨床的改善を見ず10日以上の症状持続
・39度を超える発熱、膿性鼻汁、3日間持続する顔面痛など重度の症状を有する
・症状が二峰性の経過

急性副鼻腔炎と診断された患者への抗菌薬使用の多くが有害でしかない。メタ分析によれば、症状改善のNNTは18に対して、抗菌薬関連有害事象のNNHは8である〔Cochrane Database Syst Rev. 2012 Oct 17;10:CD006089. PMID: 23076918〕重症者を除き多くの場合は対症療法で十分である。

〔風邪〕
風邪に抗菌薬は有効ではない。対症療法で十分である。抗ヒスタミン薬は単独で使用した場合、有害事象リスクの方が高いが、抗スタミン薬・鎮痛・充血除去剤を併用すると症状緩和が期待できる。〔Cochrane Database Syst Rev. 2012 Feb 15;2:CD004976PMID: 22336807〕ビタミンCやエキナセアの有用性は明確ではない。
〔Cochrane Database Syst Rev. 2014 Feb 20;2:CD000530PMID: 24554461〕
〔Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;1:CD000980. PMID: 23440782〕
亜鉛サプリメントの有用性も示唆されるが嘔気など有害事象リスクが高い。
〔Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 18;6:CD001364. PMID: 23775705〕
〔JAMA. 2014 Apr 9;311(14):1440-1. PMID: 24715076〕

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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あっという間に1月が過ぎてしましました。インフルエンザも流行も始まり、なんだかやっと本格的に冬と言う感じです。今回は祈りのエビデンスを少しレビューしてみましたが、宗教活動と臨床アウトカムは今後も注目していきたいテーマです。

近年ではマインドフルネスの有効性に関するエビデンスも集積しつつあります。人間が生きると言うことそのものの営為が信仰と密接にかかわっているわけで、それらが人に何らかの影響を及ぼしていることは確かなのだと思います。

考えてみれば統計学や一般的に妥当と考えられている科学ですら、一つの思想に過ぎないわけですよ。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Jan.27;2(53)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
- ACE阻害薬とARBの比較のゆくえ-

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〔心不全を有さない患者におけるACE阻害薬とARBの比較〕
最新のメタ分析が出ている。〔Mayo Clin Proc. 2016 Jan;91(1):51-60 PMID: 26763511〕
この研究は1980年1月1日~2015年4月13日までに報告された、ACEs阻害薬もしくはARBを、プラセボもしくは他の降圧薬と比較、または直接比較したランダム化比較試験のメタ分析である。評価項目は総死亡、心血管死亡、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、糖尿病の新規発症とされている。

106のランダム化比較試験(254301人)が検索され、メタ分析の結果、プラセボに比べてACE阻害薬では各アウトカム減少したが、ARBでは明確な差が出なかった。プラセボと比較したACE阻害薬、ARBの相対危険は以下の通り

▶総死亡
ACE阻害薬・相対危険0.89[95%信頼区間0.80-1.00]
ARB   ・相対危険1.01[95%信頼区間 0.96-1.06]

▶心血管死亡
ACE阻害薬・相対危険0.83[95%信頼区間 0.70-0.99]
ARB   ・相対危険1.02[95%信頼区間 0.92-1.14]

▶狭心症
ACE阻害薬・相対危険0.83[95%信頼区間0.78-0.90]
ARB   ・相対危険0.93[95%信頼区間0.85-1.03]

しかし、この論文によると2000年以降に出版された論文では両者のアウトカムはほぼ同等であり、直接比較試験では差異を認めず。むしろACE阻害薬では有害事象による脱落リスクが多いという。つまり臨床的な有効性はほぼ同等であり、副作用はARBで少ないという事だ。心不全のない患者において、2000年以降に発表されたランダム化比較試験や直接比較試験ではARBの有効性はACE阻害薬に劣らず、より忍容性に優れた薬剤と結論されている。まあ、そうはいっても概ね予想通りの結果である。薬価を考慮すればACE阻害薬を差し置いてARBを積極的に使用する根拠は少ないというこれまでの示唆を大きく覆す印象はない。

〔ARBは見直されても良いかもしれない〕
確かに、これまでACE阻害薬の有用性は血管浮腫など特異的な副作用〔Am J Cardiol. 2012.PMID: 22521308など〕を除けばARBよりも優れた印象があった。〔J Hypertens. 2007PMID: 17414657〕〔Eur Heart J. 2012 PMID: 22511654〕

またARBは過去に発癌を示唆したメタ分析〔Lancet Oncol.2010.PMID:20542468〕も報告されており、コストの高いARBを積極的に使用することはあまり推奨さない、と言う認識を強めた。しかしながら発癌に関しては後のメタ分析で否定されている〔Lancet Oncol.2011 .PMID:21123111〕〔BMJ 2012;344:e2697 PMID:22531797〕〔PLoS 2012.PMID:23251399〕

ARBによって癌が増えるという仮説は、ARBによって心血管イベントが減少し寿命が延びた結果、癌になったという仮説の方が支持できるかもしれない。後発品もそろったARBは見直されても良い時期とは言える。ACE阻害薬とARBの有効性に差異を認めないことは心不全のない患者を対象にした観察研究でも同様の結果が得られている。〔Eur Heart J. 2014 PMID: 24616336〕

ただ糖尿病患者では本研究結果は当てはまらないかもしれない。糖尿病患者においてARBを第一選択で積極的に使用すべき根拠は少ない。〔JAMA Intern Med. 2014 PMID: 24687000〕また高齢者においても注意が必要である。高齢者に対するARBの使用は死亡リスクを減らさず、有害事象が多いという可能性が16のランダム化比較試験のメタ分析で示唆されているからだ。〔Am J Hypertens. 2014 PMID: 25391580〕これも仮説にすぎないかもしれないが…。

患者背景に留意しながら、ルーチンでARBを積極的に使用することは勧められないが、ARBをACE阻害薬より優先的に用いることも選択肢としては考慮できるかもしれない。確かにかつてARBをただ売りさばきたいというメーカーの想いだけで医療が提供されていたことは事実としか言いようがないが、学問的認識は常に更新していかねばならない。Limitationを念頭に入れながらも。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]降圧薬の中止は起立性低血圧リスクを低下させるか?(RCT二次解析PMID: 26758532)

Moonen JE.et.al. Effect of discontinuation of antihypertensive medication on orthostatic hypotension in older persons with mild cognitive impairment: the DANTE Study Leiden. Age Ageing. 2016 Jan 11. [Epub ahead of print] PMID: 26758532
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26758532

[背景]一貫性のない観察研究データやクリニカルトライアルが限定的なために、高齢者における降圧薬と起立性低血圧の因果関係は曖昧である。

[目的]軽度の認知機能障害を有する高齢者を対象に、降圧薬中止による起立性低血圧を評価する

[方法] Discontinuation of Antihypertensive Treatment in Elderly people (DANTE) Studyに参加した、起立性低血圧を有する高齢者162人を対象とした。このランダム化比較試験では、軽度の認知機能障害はあるが、重篤な心血管疾患が無く、降圧薬を使用している75歳以上の地域在住高齢者が対象となっている。対象患者は降圧薬中止群と降圧薬継続群にランダムに割り付けられた。起立性低血圧は、座位からの起立時に、収縮期血圧が少なくとも20mmHg低下、もしくは拡張期血圧が少なくとも10mmHg低下、あるいはその両方と定義された。評価項目は4か月間のフォローアップ中の起立低血を起こしていない症例。intention-to-treat and per-protocol analysesにて相対リスクを算出した。

[結果] intention-to-treat analyses,では降圧薬中止群86人のうち、43人(50%)で起立性低血圧を発現していなかった。それに対して、降圧薬継続群では76人中29人(38%)にとどまった。RR 1.31 (95% 信頼区間 0.92-1.87)

Per-protocol analysisでは、起立性低血圧を発現しなかった症例は、降圧薬中止群で61%、降圧薬継続群で38%となっており、RR 1.60 (95% 信頼区間 1.10-2.31)であった。

[結論]軽度の認知機能障害を有する高齢者において、降圧薬の中止は起立性低血圧からの回復を増加させる可能性がある。

[コメント]2015年に報告された DANTE Study Leiden 〔JAMA Intern Med. 2015 PMID: 26301603〕は重要な報告。観察研究において低血圧患者では認知機能低下リスクを増加させる可能性が示唆されていた。血圧低下が脳血流、認知機能を損なう恐れがあるためと推測される。このDANTE Study Leidenは軽度認知機能障害を有する高血圧患者の降圧治療中止が認知、心理状態、一般的な日常機能を改善するかを検討したランダム化比較試験である。降圧治療を受けている75歳以上の高齢者385人(MMSEスコアで21~27、重篤な心血管疾患のない患者)が対象となり、降圧治療の中止199人と降圧治療の継続186人が比較された。その結果、認知複合スコアoverall cognition compound scoreの変化に明確な差は認められなかった。つまり降圧薬を中止しても認知機能低下を予防できるかは不明と言う結果であった。しかしこの研究のうまみは、降圧薬中止に伴う血圧上昇がどの程度か、という疑問に対する示唆を得られるところだ。研究開始時の収縮期血圧148前後が薬剤中止後、16週で平均約5.4mmHg増加している。血圧の低い高齢者であれば、複数降圧薬を使用している場合、1剤中止してもそれほどリバウンドが大きくない可能性がある。

さてこの論文はDANTE Studyの2次解析。つまりこの研究に参加した患者の中から起立性低血圧を有している患者を対象に降圧薬中止後の変化を検討しているわけだ。厳密なランダム化比較試験ではないところに注意が必要だが、降圧薬の中止で、起立性低血圧の発現が有意に減る可能性が示されている。

[文献]C型肝炎ウイルスの感染はパーキンソン病のリスク因子か(コホート研究PMID: 26701382)

Tsai HH.et.al. Hepatitis C virus infection as a risk factor for Parkinson disease: A nationwide cohort study. Neurology. 2015 Dec 23. [Epub ahead of print] PMID: 26701382
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26701382

[目的]C型肝炎ウイルスへの感染がパーキンソン病のリスクファクターになっているかを検討する。

[方法] Taiwan National Health Insurance Research Databaseより49,967人の肝炎患者を解析。さらに199,868人の肝炎を有さない患者と比較した。肝炎患者はHBV感染者、HCV感染者、HBV及びHCVの重複感染者に分類。Cox proportional hazards modelによりパーキンソン病リスクのハザード比を算出。

[結果]パーキンソン病の未調整ハザード比はHBV感染者で0.66 (95% CI = 0.55-0.80)、HCV感染者で2.50 (95% CI = 2.07-3.02)、重複感染者で1.28 (95% CI = 0.88-1.85)であった。HCV感染者において、年齢、性別、併存疾患で調整後のハザード比は1.29, 95% CI = 1.06-1.56)と統計学的にも有意に増加した。

[結論] 大規模な全国の人口ベースの研究によれば、HCVを有する患者は、パーキンソン病の発症リスクに有意な増加を示すことを見出した。

[コメント]もちろん仮説にすぎないかもしれないが、重要な仮説には違いない。今後の研究に注目したい。

[文献]PPI中止に伴う胃酸分泌過多再燃リスクは?

Lødrup AB.et.al. Systematic review: symptoms of rebound acid hypersecretion following proton pump inhibitor treatment. Scand J Gastroenterol. 2013 May;48(5):515-22. PMID: 23311977
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23311977

[背景]PPI中止後の胃酸分泌過多rebound acid hypersecretion (RAHS)の生理的存在は確立されているが、臨床的意義はあまり明確ではない。このことが胃酸分泌抑制薬の中止を困難にさせる原因となり、PPIの長期使用の増加を説明する要因であると推測させる。この問題について多くの研究がなされているが、本研究では体系的にエビデンスを整理した。

[方法]PPIの一般名とrebound acid hypersecretionでPubMed検索した。

[結果]5つの研究を組み入れた。無症候性の健常者を対象とした2つの研究ではPPI中止後、4週間、44%で胃酸関連症状を経験していた。症状は軽度から中等度の胸やけと逆流であった。3つの研究では逆流性食道炎患者を対象としており、リバウンドによる症状を認めなかった。

[結論]リバウンド現象は無症候性者では認められたが、患者集団においては不明な部分もある。しかしながら逆流性食道炎患者を対象とした研究の方法論的限界が垣間見られた。

[コメント]PPI投与中止後、一過性に胃酸分泌過多を起こすことは知られているが、臨床症状との関連性についてはあまり明確ではないようだ。ただ、このレビューではリバウンドに関する記述も見られる。無症候性患者を対象としているだけに、外的妥当性は低いものの、これは実臨床での実感に近い印象もある。PPIの減処方を考えるうえで、重要なテーマだけに、今後の研究に注目したい。なお44%のリスク上昇を示唆した文献は〔Gastroenterology. 2009 PMID: 19362552〕

[文献]クラリスロマイシンと心筋梗塞リスク (コホート研究PMID: 26768836)

Wong AY.et.al. Cardiovascular outcomes associated with use of clarithromycin: population based study. BMJ. 2016 Jan 14;352:h6926. PMID: 26768836
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26768836

[臨床疑問]クラリスロマイシンの心血管リスクはどの程度か

[方法]香港において2005~2009年の間に経口クラリスロマイシン、もしくはアモキシシリンの処方を受けた18歳以上の成人における心血管アウトカムを人口ベースの研究で検討した。年齢、性別、暦年等に基づき、クラリスロマイシン使用者とアモキシシリン使用者をマッチングした。解析コホートはクラリスロマイシンの処方を受けた108988人とアモキシシリンの処方を受けた217793人が含まれた。なお、ピロリ菌除菌療法におけるクラリスロマイシンについてはセルフコントロールドケースシリーズ解析、及びケースクロスオーバー解析を行った。主要評価項目は心筋梗塞。副次評価項目は総死亡、心臓もしくは非心臓死亡、不整脈、脳卒中とした。

[研究結果とその限界]
傾向スコアマッチングによる補正後、抗菌薬治療開始14日以内の心筋梗塞発症は、クラリスロマイシンの 132 件(44.4/ 1000人年)に比べて、アモキシシリンでは149件(19.2 /1000人年)であり、発症率比は3.66 (95%信頼区間2.82 to 4.76)と有意な上昇を示した。一方で長期間での観察では明確な差を認めなかった。副次評価項目もほぼ同様であり、脳卒中を除き、すべてのアウトカムでリスク上昇が示された。セルフコントロールドケースシリーズ解析ではピロリ菌除菌のためのクラリスロマイシンと心血管イベントに関連が見られた。ケースクロスオーバー解析でも同様。心筋梗塞の調整絶対危険はアモキシシリンに比べてクラリスロマイシンの使用で1000人当たり1.90件の超過発症(95%信頼区間1.30~2.68)と算出された。

[研究により付け加えられること]
クラリスロマイシンの現在使用は心筋梗塞、不整脈、心臓死亡の増加に関連する。しかし、長期間の観察では関連が示されなかった。

[コメント]クラリスロマイシンと心血管リスクについては、複数の研究が報告されている。主要なものは以下の通り。
BMJ. 2006 Jan 7;332(7532):22-7.PMID:16339220
BMJ. 2014 Aug 19;349:g4930. PMID: 25139799
BMJ2013;346:f1235  PMID: 23525864
Eur J Intern Med. 2015 PMID: 26412674
Clin Infect Dis. 2014 PMID: 25409476
一部研究では明確なリスク上昇が示唆されていないが、本研究では有意なリスク上昇が示唆されており、これまで報告されている複数の研究と同様の結果である。ピロリ菌除菌では800mg/日、という高用量を使用することもあり、研究参加者が特殊なことから、一般集団とは別に自己対照の研究デザインで解析されている点は素晴らしい。参加者の年齢中央値は60歳であり、クラリスロマイシン群、アモキシシリン群でマッチングされている。解析は14日以内において脳卒中を除くすべてのアウトカムで上昇したが、15日以上の追跡では有意な差を認めていない。長期効果が観察されないことが、薬剤による因果関係の傍証と言えるかもしれない。少なくとも注意が必要であろう。外来のセッティングでクラリスロマイシンを使う臨床的意義はそれほど大きくないが故、この論文で示されたリスクは軽視できない印象である。

[文献]喘息様症状エピソードに対するアジスロマイシン(RCT  PMID: 26704020)

Stokholm J.et.al. Azithromycin for episodes with asthma-like symptoms in young children aged 1-3 years: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Respir Med. 2016 Jan;4(1):19-26. PMID: 26704020
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26704020

[背景]小児において、細菌やウイルスは喘息様症状の急性発症リスクに等しく関連するが、そのようなエピソードに対する潜在的な治療として抗菌薬が用いられる。この研究の目的は喘息様症状の再発に伴う小児の呼吸器エピソードに対するアジスロマイシンの効果に関して、症状持続期間をへらすであろう仮説を検討することである。

[方法]2重盲検ランダム化比較試験において、再発性の喘息様症状と診断された1歳~3歳の小児が研究対象となった。なおマクロライドアレルギーや心疾患、肝臓疾患、神経疾患
腎臓病を有する患者、肺炎の既往患者は除外された。少なくとも3日間持続する喘息様症状エピソードに対し、にアジスロマイシン10mg/kg/日、3日間とプラセボ3日間にランダム割り付けした。(ブロックランダム化)研究者、及び小児を盲検化した。一次アウトカムは、前向きに記録された日誌に基づく治療後の呼吸器エピソード持続期間で、解析はper protocol。

[結果]158人の喘息様症状エピソード(対照被験者72人)が対象となり、アジスロマイシン群79件、プラセボ群79件が割り付けられた。エピソードの平均持続期間はアジスロマイシン群で3.4日、プラセボ群では7.7日であった。アジスロマイシン群で有意に持続期間が短縮した。63.3% (95% CI 56.0-69.3; p<0•0001). また早期治療で、より大きな効果が得られた。エピソードから6日以内では83%のエピソード持続期間の短縮が得られたが、6日後では36%にとどまった。なお臨床的な有害事象に明確な差は無かった。(アジスロマイシン23%、プラセボ30%)しかし耐性菌に関する調査を実施していない。

[結論]アジスロマイシンは小児の喘息様症状持続期間を短縮する。この示唆は呼吸器アウトカム増悪の長期的な管理に有用である可能性がある。

[コメント]アジスロマイシンの呼吸器感染症アウトカム改善報告は多い。
JAMA. 2015 Nov 17;314(19):2034-44. PMID: 26575060
Thorax. 2013 Apr;68(4):322-9. PMID:23291349
Lancet. 2002 May 11;359(9318):1648-54.PMID:12020525
こちらも参照
気管支拡張症に対する低用量マクロライド
http://jp.bloguru.com/syuichiao/240699/2015jun3120

まあいずれにせよ、耐性菌リスクなどとの比較の中で、ベネフィットを考慮すべきであってルーチン使用は推奨されないであろう。なおこの研究はエピソード単位でランダム化した研究である。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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万物は流転する、医学薬学分野のエビデンス更新はめまぐるしいです。これは、そもそもエビデンスが真理を示していないことの裏返しなのかもしれません。あるいは医療の進展の結果なのか。いずれにせよふぉろし続けなければならないことをあらためて確認させてくれます。

早いもので1月も残りわずか、遅めのインフルエンザ流行、体調崩さないように頑張ります。
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地域医療の見え方  2016.Jan.20;2(52)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-高齢者のベンゾジアゼピン-

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[漫然と使用される背景]

高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬剤の効果は24研究のメタ分析で、総睡眠時間25.2分[95%信頼区間12.8~37.8]延長、夜間覚醒、平均0.63回[95%信頼区間0.48~0.77]減少と報告されている。しかし、当然ながら有害事象は多い。同メタ分析では記憶障害4.78 倍[95%信頼区間1.47~15.47]、日中の倦怠感3.82 倍[ 95%信頼区間1.88~7.80]という結果であった。〔BMJ. 2005 PMID: 16284208〕

ベンゾジアゼピン系薬剤の有害事象報告は多いが実は高齢者に限定した研究は少なく、その程度もあいまいである。割と明確なのは転倒・骨折リスクや認知症リスクだ。しかしそのリスクはハザード比やオッズ比で1.5倍前後。海外文献であるが故、日本人に対する外的妥当性の問題もあり、リスクを軽視すべきではないが、なにか著明なリスク上昇とは言えない印象もある。一般人口集団で示唆された死亡リスクは、高齢者に限定すると明確なことは不明である。死亡リスクなどについても明確なことは示されていない。詳細情報は以下の文献等を参照してほしい。

▶認知症
〔BMJ. 2012 PMID: 23045258〕
〔BMJ. 2014 PMID: 25208536〕
〔PLoS One. 2015 PMID: 26016483〕
▶転倒・骨折
〔Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2010.PMID: 20931664〕
〔Osteoporos Int. 2014 Jan;25(1):105-20PMID: 24013517〕
〔Arch Intern Med. 2009 PMID:19933955〕
▶死亡
〔BMC Med. 2013.PMID: 24070457〕
〔BMJ. 2014. PMID: 24647164〕
〔Aust N Z J Psychiatry. 2015 PMID: 26590022〕
〔BMJ Open. 2012 PMID: 22371848〕

つまり、高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬剤のリスクはいまいち不鮮明だ。少なくとも「高齢者」「ベンゾジアゼピン」「漫然使用」と言うような言葉から受けるネガティブな印象と、実際に起こっている現象にはギャップがあることは確かだ。夜間覚醒が減る(減ると言っても1回も減らないが…)ことは何か転倒リスクすら減る印象もある。ただ、先のメタ分析で注意が必要なのは、あくまで短期的な効果と言うことだ。解析された元論文は5日から9週の追跡となっており、3か月を超えるような研究は解析されていない。短期的な実効性が、患者の薬剤効果に対する過度な期待をもたらし、同時に薬剤中止に対する恐怖を立ち上げる。これは潜在的に不適切な薬剤使用を中止する歳、その障害となるファクターにも挙げられている。〔Drugs Aging. 2013 PMID: 23912674〕

そもそも加齢そのものがベンゾジアゼピン漫然使用の独立したリスクファクターであるという。〔J Am Geriatr Soc. 2000 PMID: 10894322〕
また米国ではベンゾジアゼピンに対する副作用について正しい説明がなされていない実態が指摘されている。
〔J Gen Intern Med. 2007 PMID: 17356959〕

高齢者の抑うつ傾向も決して珍しいものではない。そして抗うつ薬には睡眠障害に対して一定の効果が示されている。
〔J Gen Intern Med. 2007.PMID: 17619935〕
もちろん抗うつ薬そのものの有害事象リスクも存在するわけだが、安易にベンゾジアゼピンを投与して対症的に治療するよりかは良いのかもしれない。ただ、すべての患者において、投与された抗うつ薬でうまく症状が改善するわけではない。そこにベンゾジアゼピン系薬剤が上乗せされる可能性は決して低くないだろう。この場合、やはり短期的な効果が示されている。

うつ病に対する抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用は、抗うつ治療からの脱落が少なく(相対危険0.63〔95% 信頼区間0.49~0.81〕)さらに1週目、4週目のうつ症状を改善する。(1週:相対危険1.63〔95%信頼区間1.18~2.27〕、4週:相対危険1.38〔95%信頼区間1.15~1.66〕)しかしながら、こちらも短期的な効果に過ぎない。うつ症状に関して、6週目で明確な差を認めない。〔Cochrane Database Syst Rev. 2002;(1):CD001026. PMID: 11869584〕

ベンゾジアゼピンの漫然投与については、おおよそこのような要素で構造化されるのではないだろうか。

[常用量依存とベンゾジアゼピンからの離脱]
ベンゾジアゼピン系薬剤の錠用量依存に関しては患者個別に様々なケースが想定できるが、古典的には8か月以上の漫然使用で退薬症状が43%と報告されており、これをもってして8か月以上の投与は常用量依存形成のリスクとすることが多い。
〔JAMA. 1983.PMID: 6348314〕
投与期間だけでなく、投与量や連日投与という仕方などもリスクファクターとして示唆されている。
〔臨床薬理. 1996;27(2):465-46〕

離脱戦略には漸減、代替え、教育的介入、認知行動療法などがある。ランダム化比較試験も複数報告されているが、漸減+教育的介入で、ベンゾジアゼピンからの離脱は、通常ケアに比べて3倍~8倍多い。
〔JAMA Intern Med. 2014 PMID: 24733354〕
〔Br J Psychiatry. 2014 PMID: 24526745〕

漸減方法にも様々なパターンがあるが、2~4週ごとに10~25%ずつ減量する方法が良く用いられている印象である。教育的介入についてはやはりリスクの具体的な説明だろう。冒頭述べた有害事象リスや依存について、そのような説明が適切になされていない実態が本邦でも確かに存在するのではないか。

しかし、ベンゾジアゼピン系薬剤を中止することが必ずしも患者に幸福をもたらすかどうかは分からない。肺癌のリスクを十分に承知のうえで、喫煙がやめられないように、ベンゾジアゼピン系薬剤のリスクをいくら知ったとしても、その服用をやめることができないという事はあるだろう。人が何に関心があり、何に価値を見出しているのか、それは医学的正しさとは別問題である。良く寝つけること、そこに大きな価値を見出しているのであれば、たとえベンゾジアゼピンの長期的な効果が不明で、有害事象リスクの懸念があるにせよ、その患者にとって、ベンゾジアゼピンの漫然使用は決してネガティブな意味を持たない。それを公的な医療財源で賄うことが正しいかどうかは議論の余地があるかもしれない。確かにタバコは自費であり、さらに税金まで払っているわけだから。しかしながら、薬を飲むよう、そのきっかけを与えたのは、僕たち医療者ではなかったか?

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]BPSDに対する抑肝散の有効性、安全性(RCT PMID:26711658

Furukawa K.et.al. Randomized double-blind placebo-controlled multicenter trial of Yokukansan for neuropsychiatric symptoms in Alzheimer's disease. Geriatr Gerontol Int. 2015 Dec 29. [Epub ahead of print] PMID: 26711658
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26711658

[目的]抑肝散はBPSDの治療に用いられる漢方薬である。この研究はアルツハイマー型認知症患者に対するBPSD治療への抑肝散の有効性、安全性を検討した初の2重盲検ランダム化比較試験である。

[方法]入院もしくは施設入所のアルツハイマー型認知症患者145人が対象となった。抑肝散(7.5g/日)75人とプラセボ70人にランダムに割り付けた。一次アウトカムは4週後のNPI-Qスコア変化であった。(NPI-Qスコア:介護者が評価するBPSDスコア)

[結果]4週及び12週後のNPI-Qスコアに明確な差は認めなかった。二次アウトカムであるMMSEスコアにも明確な差は認めなかった。サブグループ解析においてMMSEスコアが20点以下の患者においては、攻撃性のスコアがプラセボに比べて抑肝散群で有意に減少した。(P=0.007)重大な有害事象に明確な差は見られなかった。

[結論]BPSDに対する抑肝散の明確な効果を観察することはできなかった。

[コメント]結果は予想通り。漢方製剤に関する疫学的検討は少なく、その点この研究の意義は大きい。結果として観察された現象が全て、だとは思わないが、薬物治療においては大変参考になる情報である。これまでのエビデンスは以下を参照してほしい。

地域医療の見え方2015.Jan.21;1(2)
http://jp.bloguru.com/syuichiao/posts/2015/1/21

上記レビューは2015年1月に作成したものだが、このレビューの結論は本ランダム化比較試験により覆された。簡単に以下にまとめる。

MMSEに対する効果は本研究では2次アウトカムとして検討されており、明確な差を認めていない。サンプルサイズに対する指摘もできようがこれまでのエビデンスから得られる示唆も同様であり、認知機能を改善する効果は「科学的」には認められていない。この部分は大きな変更はないだろう。
しかし、NPIスコアに関してはどうだろうか。NPIに関してはこれまで投与前後比較において有意な改善が示唆され、その傾向はメタ分析にも引き継がれた。つまりBPSDに対して抑肝散は一定の効果が期待できる可能性があった。しかしプラセボ比較の2重盲検試験では明確な差が出ず、これまでの示唆は、そのエビデンスの質を考慮すると大きく覆された感じだ。臨床上の有用性についてはもう一度再検討する非地用があろう。

[文献]朝食はしっかり摂るべきか [コホート研究PMID: 26732562]

Kubota Y.et.al. Association of Breakfast Intake With Incident Stroke and Coronary Heart Disease: The Japan Public Health Center-Based Study. Stroke. 2016 Jan 5[Epub ahead of print] PMID: 26732562
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26732562

[背景と目的]朝食と脳卒中を含むし血管疾患の関連について、アジア人においては今まで不明確であった。日本人において朝食を摂らない習慣が、脳卒中や冠動脈疾患の上昇に関連するかを検討した。

[方法]45歳~74歳で心血管疾患や癌の既往のない82772人(男性38676人)が対象となった。参加者は朝食の頻度で層別化された。(週に0~2回、週に4~6回、週に5~6回 週に7回)

[結果]1050030人年のフォローアップ注、4642件の脳卒中と870件の冠動脈疾患が発生した。多変量解析にて朝食を摂らない人は毎日とる人に比べて、心血管疾患、脳卒中リスクが上昇した。(ハザード比1.14[95%信頼区間1.01~1.27]、ハザード比1.18[95%信頼区間1.04~1.34]) なお冠動脈疾患リスクに明確な差は見られなかった。

[結論]朝食を毎日食べることは脳卒中予防にベネフィットがあるかもしれない。

[コメント]解析人数の多さが有意差検出に貢献したという指摘はできよう。もちろん生活習慣が結果にもたらす影響は大きい。つまり交絡因子がどれだけ補正されていたかが重要なテーマである。まあ朝食は食べた方が良さそうと言うのはこれまでの研究でも指摘されており、朝食をしっかり食べた方が良い、と言うのはあながち否定できない部分もある。
J Epidemiol. 2015 May 5;25(5):351-8. PMID: 25787236
Circulation.2013;128:337-343 PMID: PMID:23877060
Am J Clin Nutr. 2014 Jun 4;100(2):507-513 PMID: 24898236

[文献]ビタミンDの摂取は身体機能を改善するか (RCT PMID: 26747333)

Bischoff-Ferrari HA.et.al. Monthly High-Dose Vitamin D Treatment for the Prevention of Functional Decline: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2016 Jan 4:1-10. PMID: 26747333
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26747333

[重要]ビタミンDの欠乏は身体能力の低下と関連している

[目的]高用量のビタミンD摂取が身体機能低下リスクに効果があるか検討する

[デザイン、セッティング、参加者]スイス、チューリッヒで行われた2重盲検ランダム化比較試験。200の地域に在住する70歳以上の高齢者が対象となった。

[介入]ビタミンD3を月に24 000 IU投与するグループ、ビタミンD3を月に60 000 IU投与するグループ、ビタミンD3を月に24 000 IUとカルシフェロール300μg投与する3群にランダム割り付け。

[評価項目]主要評価項目は下肢機能改善と6月、12か月時点での少なくとも30 ng/ mL25-ヒドロキシビタミンD濃度達成。副次評価項目は転倒。年齢、性別、BMIで補正。

[結果]研究対象となったのは70歳以上の高齢者200人(平均78歳、67.0%が女性)ITT解析において、24000IU群よりも60000IU群、24000IU+カルシフェロール群で5-ヒドロキシビタミンD濃度達成が多い。(P = .001),しかし、下肢機能改善に差を認めず。12か月追跡で転倒には差異を認めた。24000IU群の(47.9%; 95% CI, 35.8%-60.3%)に比べて、60 000 IU 群で(66.9%; 95% CI, 54.4% to 77.5%) 、 24 000 IU +calcifediol 群で(66.1%; 95% CI, 53.5%-76.8%)と有意に増加した。転倒発生率は60 000 IU 群(平均 1.47) 24 000 IU + calcifediol 群 (平均 1.24) 24 000 IU 群 (mean, 0.94) (P = .09)であった。

[結論]高用量のビタミンD投与は血中濃度への影響に対する効果は認めたものの、下肢機能改善に効果を認めず、転倒が多い。

[コメント]ビタミンDの転倒、骨折リスクに関しては研究結果に一貫性がなく、不明な部分も多い。(PMID: 24729336、PMID: 20068257、PMID:22762317、PMID: 20460620. PMID: 17720017.)少なくとも高用量投与は有害でしかない可能性がある、という印象である。

[文献]PPIの使用と慢性腎臓病リスク (コホート研究 PMID: 26752337)

Lazarus B.et.al. Proton Pump Inhibitor Use and the Risk of Chronic Kidney Disease. JAMA Intern Med. 2016 Jan 11:238-246. PMID: 26752337
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26752337

[重要]PPIは世界中で最も一般的な薬剤の一つであるが、間質性腎炎リスクの懸念がある。また限定的であるものの、PPIの使用と慢性腎臓病の関連が知られている。

[目的]PPIの使用と慢性腎臓病の関連について人口ベースのコホート研究で検討する

[参加者] the Atherosclerosis Risk in Communities studyに登録されたeGFRが少なくとも60 mL/min/1.73 m2の参加者10482人。

[曝露]自己申告によるPPI使用もしくは外来患者におけるPPI処方記録。

[評価項目]慢性腎臓病の発症

[結果]研究対象となった10482人の平均年齢は63歳、男性は43.9%であった。PPI非使用者に比べて、PPI使用で慢性像病リスクが増加した。人口統計、社会経済、臨床的要素で調整したハザード比[95%信頼区間]は1.50[1.14-1.96] 傾向スコアマッチングでも同様。1.76[1.13-2.74] H2受容体拮抗薬との比較でもリスク上昇が見られた。1.39[1.01-1.91]。1日の投与回数においては1回投与よりも2回投与でリスクが高い。1回投与1.15[1.09-1.21] 2回投与:1.46[ 1.28-1.67]

[結論]PPI使用は慢性腎臓病との関連性が示唆される。PPIの使用を制限することで、満船腎臓病が減るかどうか、今後の検討が必要である。

[コメント]因果は分からない。ただCKD患者へのPPI使用で肺炎リスク(CKD患者に限らないけど)を示唆した論文もある。〔J Microbiol Immunol Infect. 2015  PMID: 24291618〕

[文献]DPP4阻害薬の心不全リスク (コホート研究 PMID: 26740636)

Fu AZ.et.al. Association Between Hospitalization for Heart Failure and Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors in Patients With Type 2 Diabetes: An Observational Study. Diabetes Care. 2016 Jan 6. pii: dc150764. [Epub ahead of print] PMID: 26740636
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26740636

[目的]DPP4阻害薬、SU剤による治療、及び、サキサグリプチン、シタグリプチンによる治療を比較して2型糖尿病患者における心不全リスクを検討する。

[研究デザイン] U.S. insurance claims database.を用いた後ろ向きコホート研究。研究対象患者は2010年8月1日~2013年8月30日に治療を開始した。なお比較治療群では過去12か月に当該薬剤使用なしの患者を研究対象とした。傾向スコアで1:1にマッチングし、Cox modelsにて、それぞれ比較を行った。解析は心血管疾患の有無で層別化を行った。

[結果]マッチング後、DPP4阻害薬、SU剤の比較では218556人、サキサグリプチン、シタグリプチンの比較では112888人が解析に含まれた。DPP4阻害薬による心不全入院リスクは、SU剤を基準として、心血管疾患ありでHR 0.95 (95% CI 0.78-1.15),心血管疾患なしで HR 0.59 (95% CI 0.38-0.89),であった。またサキサグリプチンでは同様にシタグリプチンに比べて、心血管疾患ありでHR 0.95 (95% CI 0.70-1.28), 心血管疾患無でHR 0.99 (95% CI 0.56-1.75), であった。

[結論]2型糖尿病患者において、DPP4阻害薬はSU剤に比べて、またサキサグリプチンはシタグリプチンに比べて心不全による入院は増やさなかった。

[コメント]DPP4阻害薬による心不全リスクの懸念に一石を投じるstudy。この研究の臨床的意義はこれまでの背景を知らねばならない。詳細は以下を参照。

DPP4阻害薬の考え方使い方〔地域医療の見え方2015.Aug.5;1(29)〕
http://en.bloguru.com/syuichiao/245539/2015aug5129

これまで報告されているDPP4阻害薬の大規模臨床試験においてサキサグリプチンだけが心不全による入院リスク増加を示唆していた。その後報告された複数のメタ分析の結果はこの結果を引きずっている印象。今回の研究は後ろ向きコホートではあるが、SU剤に比べて明確なリスク上昇を示さなかった。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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年末にかけてあまりまとまった時間が取れなかったせいか、ブログなどWEBコンテンツの方向性を考える余裕があまりありませんでした。なんとなくこれまでのスタイルを継続していますが、今後どのように展開していこうか悩んでいます。

エビデンス情報を発信するだけでは、もう情報としての価値はあまりないような、そんな気もしています。もちろんデータベースとしての個人的な利便性はあるので、論文要約の継続的な情報発信は続けていくつもりです。ただ情報の質や価値と言うのは、なにか情報の拡散性とかそういったものとはあまり関係のないようなもの、最近はそんな気もしています。情報はエンターテインメントの一つであり、娯楽的要素がないとあまり読まれない。娯楽的要素を取り入れながらも学術情報をどうまとめ上げていくのか。さしあたって今後の課題と言えそうです。
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地域医療の見え方  2016.Jan.13;2(51)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-高齢者における呼吸器系薬剤を悩む -

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[仮想症例]
まずは、嚥下機能が著しく低下し、寝たきりにある虚弱高齢者にテオフィリンが漫然と使用されているケースを想定してみよう。喫煙既往なし。テオフィリンが投与されている理由はあまり明確ではなく、慢性呼吸不全、あるいは喘息と言うような病名がついている。経口での食事摂取は不可能。経管栄養を経鼻胃管より投与。他の呼吸器系薬剤は併用されていない。もちろん吸入薬を使用できる状況ではなく、錠剤の内服ですら困難な状況で、テオフィリンはドライシロップを用事溶解し投薬が続けられている仮想症例だ。

高齢者では疾患特異的な症状に乏しく、呼吸器系症状はそれが心不全などの循環器疾患に起因するものなのか、そもそも加齢とともに低下した呼吸器症状なのか。精密な検査などもできない状況では現象をどう取り扱えばよいのか判然としない。

[テオフィリンと死亡リスク]
COPDにおけるテオフィリンの漫然使用はメタ分析にて、死亡リスク上昇が示唆されている。〔Arch Bronconeumol. 2015.PMID: 26612542〕テオフィリンは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者の呼吸機能及び酸素化を改善することが示されているようだが、COPD患者に対するテオフィリンの使用と死亡リスクの関連はこれまで十分に評価されていなかった。

このメタ分析は名の調査者が独立して文献をサーチし、364の文献をスクリーニングした。そのうち259文献がタイトルと抄録内容に基づき除外された。さらにフルテキストを精査し99文献が除外された。最終的に6つの観察研究(1研究において2コホート)が解析に含まれた。なおランダム化比較試験は解析に含まれなかった。

各研究参加者は47人から46403人であった。研究間の異質性は(I2=42%, P=.11)であり、出版バイアスは(Begg's test r=0.21, P=.662)と実質的に問題は認めなかった。Fixed-modelによるメタ分析の結果、テオフィリンの使用で、わずかながら死亡のリスク上昇を示した。(ハザード比:1.07 (95% 信頼区間: 1.02-1.13, P=.003).

[テオフィリン単独の漫然使用という不適切さ]
そもそもCOPD高齢者におけるテオフィリンの単剤使用は、より安全で有効な代替薬があり、また治療域が狭いリスクの理由から潜在的に不適切な処方に該当する。〔Int J Clin Pharmacol Ther. 2008 Feb;46(2):72-83〕

ポリファーマシーというと何かたくさんの薬が処方されている患者さんを想像するが、テオフィリン単剤の漫然使用だって潜在的に不適切な薬剤使用である。ポリファーマシーという状態が、必ずしも薬剤の不適切使用状態を示すものではない。

なんとなくテオフィリンを中止するのは気味が悪いというような(あくまでも個人的な印象だが…。)感覚があり、そのまま継続的に使用してしまう薬剤の一つのように思える。呼吸器症状に関連する薬剤だけに、患者さんの主観的症状に影響したらどうしようか、なんて懸念があるのも事実。しかし懸念があるからと言って漫然投与が正当化されるわけじゃない。 テオフィリンは治療域と中毒域がとても近しい厄介な薬物であり、血中濃度管理を必要とするくらいハイリスクな薬剤なのだ。薬剤中止にともなうリスクの懸念が正当化されるのであれば、同じくらい薬剤有害事象の懸念も正当化されるはずである。

さらにテオフィリンは薬物相互作用もあったりする。尿路感染症では主力薬剤であるシプロフロキサシンとは添付文書上で併用注意である。具体的にはテオフィリンとシプロフロキサシンとの併用で、テオフィリン中毒による入院リスクが1.86倍[95%信頼区間1.18-2.93].増加する可能性がコホート研究で示されている。〔Eur J Clin Pharmacol. 2011 PMID: 21234553〕

もちろん観察研究であり、因果を決定づけるものではない。さらに1.86倍というリスクは臨床的にはわずかなインパクトしかないかもしれない。尿感染症のファーストチョイスにキノロンという選択も、臨床感染症学的観点からすれば、あまりセンスが良いとは言えないかもしれないが、現実的な話をすれば、寝たきり高齢者は、それだけで尿路感染ハイリスクであり、シプロフロキサシンを投与するたびに、テオフィリン中毒リスクを懸念するくらいなら、テオフィリンそのものを投与しないという選択肢も考慮できるはずだ。

[テオフィリンの代替えとして]
呼吸機能に関する懸念があるのならば、代替え薬剤だって存在する。COPD患者においては、テオフィリンよりもツロブテロールテープの方がより効果的というランダム化比較クロスオーバー試験が報告されている。〔Intern Med. 2008 PMID: 18344636〕

この研究は40歳以上のCOPD患者16人(平均71.8歳、男性14人、喫煙12人、COPD重症度GOLDステージⅢ~Ⅳの重症から最重症が10人)を対象に、ツロブテロールテープの4週間貼付と、テオフィリン徐放製剤の4週間投与が比較され、呼吸困難スコア、症状スコア、咳嗽スコア、身体活動スコア、睡眠状況、QOL(SGRQ)などを検討したものだ。

その結果、ツロブテロールテープでは咳嗽スコアなどが有意に改善したのに対して、テオフィリンでは明確な改善を示さなかった。両群の比較では呼吸困難スコア、咳嗽頻度、QOLスコアであるSQRQスコア、睡眠状況に明確な差を認めず、4週時点での喀痰スコアはテオフィリンに比べてツロブテロールで有意に低かった。(P =0.017)代替え候補としては有力な選択肢になろう。

コスト面でも比較したい。テオフィリン徐放ドライシロップ小児用20%は38.00円/gであり、ツロブテロールテープ1mg「HMT」39.20/枚である。テオフィリン2g/日であれば、虚弱高齢者にはツロブテロールテープの方がコスト面でも、アドヒアランスの面でも有利な可能性がある。

[悩み続ける高齢者呼吸器用薬]
ツロブテロールテープには40歳以上103人のCOPD患者におけるチオトロピウム吸入への上乗せ効果に関するランダム化比較試験の報告がある。一次アウトカムは肺機能、二次アウトカムはQOLを評価している。ベースラインからの変化を比較した投与前後解析ではツロブテロール上乗せ群に有意な差を認めたアウトカムもあるが、両群比較においては有意な差を認めていなかった。〔Respir Med. 2010 PMID: 19875277〕 症候性のCOPD患者において吸入薬が使用できる段階においてはツロブテロールテープを追加投与する臨床意義はそれほど大きくないかもしれない。ただ、吸入剤と比べれば経皮製剤を希望する患者は多い可能性がある。〔Respir Med. 2007PMID: 17587559〕 

吸入薬、テオフィリン、ツロブテロールテープ。高齢者における呼吸器用薬は漫然と投与されることは多い。少なくともテオフィリンの有害リスクは代替え薬の存在も含めると軽視できないものがある。また吸入剤はいずれ使用できなくなる時が訪れる可能性は高い。ツロブテロールテープの有用性については今後も注目していきたい。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]終末期におけるセデーションは生存期間を短縮するか。(Lancet Oncol.コホート2次解析)

Maeda I.et.al. Effect of continuous deep sedation on survival in patients with advanced cancer (J-Proval): a propensity score-weighted analysis of a prospective cohort study. Lancet Oncol. 2015 Nov 20. pii: S1470-2045(15)00401-5. PMID: 26610854
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26610854

[背景]セデーションは生存期間を短縮する懸念がある。本研究はセデーションの生存期間に与える影響について、傾向スコアマッチングを用いて検討した。

[方法] 日本の58施設で行われた大規模前向きコホート研究の二次解析である。20歳以上で緩和ケアを受けた進行癌患者が対象となった。

[結果] 進行癌患者2426人が研究対象となり、追跡できた1827人が解析されている。この内269人がセデーションを受けており、生存期間中央値はセデーション群で27日、非セデーション群で26日であった。その差は-1日[95%信頼区間 -6 ~ 4]で統計的有意な差は無かった。ハザード比は0.92[95%信頼区間0.81~1.05]となっている。傾向スコアマッチングによる解析では、セデーション群で22日、非セデーション群で26日と、こちらも統計的有意な差は見られなかった。

[コメント] セデーションの施行目的と言う観点からすると、生存期間は真のアウトカムとは言えないだろう。ただセデーションに対して、生存期間がどうのというネガティブな価値観があるのであれば、これらのエビデンスは、治療の選択肢の一つとして、ポジティブになり得る可能性を秘めているようにも思える。

終末期のおけるセデーションに関する2015年のシステマテックレビュー[Cochrane Database Syst Rev. 2015..PMID: 25879099]では、このテーマに関して基準を満たすランダム化比較試験は検索されなかったとし、ケースシリーズ研究14研究のレビューが行われている。解析対象は4167人の成人で、そのうち1137人がセデーションを受けている。また95%以上が癌患者であった。この報告によれば、いずれの研究もQOLやparticipant well-beingを一次アウトカムに設定されていない。5つの研究で異なる研究手法を用いているために結果の統合、つまりメタ分析ができなかったとしている。またセデーション施行にも関わらず、死亡前まで、せん妄や呼吸困難などの症状は持続していたと報告されている。生存期間については明確な差は無かった。セデーションが苦痛を緩和するのか、患者のQOLや幸福度にどのような影響を与えるのか、きちんとした検証はなされていないという事、またその検証はなかなか難しいのではないかと思われる。また鎮静をかけているにもかかわらず、緩和困難な苦痛から、どの程度解放されているのか、よく分かっていないようだ。

[文献]α遮断薬は虚血性脳卒中を増やすか。(CMAJ セルフコントロールドケースシリーズ)

Lai CL.et.al. Risk of ischemic stroke during the initiation period of α-blocker therapy among older men. CMAJ. 2015 Dec 7. pii: cmaj.150624. [Epub ahead of print] PMID: 26644502
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26644502


[背景]α遮断薬は開始早期において、急性の低血圧を起こしやすい薬剤である。 急性期の脳低灌流は、虚血性脳卒中のエピソードを発生させる可能性があるため、セルフコントロールドケースシリーズデザインを用いて、α遮断薬療法と虚血性脳卒中のリスクを検討した。

[方法]台湾国民健康保険データより、α遮断薬を使用しており、虚血性脳梗塞の診断を受けた50歳以上の男性が対象となった。α遮断薬が処方開始となった日をindex dateとした。曝露前リスク期間をindex dateか21日以内、22~60日前の2期間設定し、曝露後リスク期間も同様にindex dateから21日以内、22~60日後の2期間設定した。他の期間は非曝露期間とした。条件付きポアソン回帰モデルを用いて、非曝露期間をreferenceに各曝露期間における虚血性脳卒中の発症リスクを算出した。

[結果]7502人の男性が解析に含まれた。非曝露期間に比べて、曝露後21日以内ではリスクが上昇した。(IRR 1.40, 95% [CI], 1.22-1.61) 他の降圧薬を使用していない人だけでの解析ではさらにリスクが上昇した。(IRR 2.11, 95% CI 1.73-2.57)

[結論]α遮断薬の投与初期にわずかに虚血性脳卒中発症リスクの上昇が示唆された。特に降圧薬を使用していない患者でそのリスクは高かった。

[コメント]暴露後リスク期間に目が行きがちだが、曝露前リスク期間を見てみると、なんと非曝露期間をreferenceとして有意なリスク上昇が示されている。これはいかなる理由なのだろうか、よく分からない。


なお類似論文でα遮断薬と骨折リスクを検討した論文も報告されている。[Br J Clin Pharmacol. 2015 PMID: 25924025]

[文献]ロタウイルス胃腸炎にプロバイオティクスは効果があるか(メタ分析PMID: 26644891)

[背景]小児における急性のロタウイルス感染症へのプロバイオティクスと罹病期間への影響を検討した。

[方法] The PubMed, Cochrane Controlled Trial Register (CCTR) and Ovid (Wolters Kluwer Health)を1980年から2013年6月15日まで検索。乳幼児や小児に対するロタウイルス胃腸炎へのプロバイオティクス治療の効果を検討したランダム化比較試験を組み入れた。

[結果]最終的に14のランダム化比較試験を解析に組み入れた。下痢の罹病期間は平均差で‐0.41[95%信頼区間‐0.56~‐0.25]と有意に減少した。I2統計量は39.9%、ブロボグラムは全体的に有効側へ振られており、異質性はそれほど大きいものではない印象。

[結論]プロバイオティクスは急性ロタウイルス感染症の下痢症状期間を短縮する。

[コメント]解析されたのはランダム化比較試験である。データの抽出、表かは2名のレビューアーが独立して実施している。出版バイアスに関して、ファンネルプロットは非対称。研究間の異質性は低くはないが大きくもない印象。コスト、害を考慮すると、まあ投与しても良い印象。

[文献]インフルエンザはほとんどが無症候性 (コホート研究 PMID: 24717637)

Hayward AC.et.al. Comparative community burden and severity of seasonal and pandemic influenza: results of the Flu Watch cohort study. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):445-54. PMID: 24717637
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24717637

[背景]集団における感染リスクや感染した場合における症状、受診割合など、インフルエンザの影響を評価することは、将来的なインフルエンザ感染症の制御や予防に関する情報として不可欠なものである。この研究は季節性インフルエンザ及び新型インフルエンザ(pandemic influenza)の重症度や地域社会への負荷を異なる年齢層や研究年で比較し、これまでの慣習的なサーベイランスがインフルエンザによる負荷を過小評価している可能性について、洞察を得ることである。

[方法]英国におけるコホート研究。季節性インフルエンザ流行期3期(2006~07、2007~08、2008~09年)及び新型インフルエンザ(第1波:2009年春夏,第2波:2009年秋冬,第3波:2010/11年冬)の連続コホートを追跡調査し、インフルエンザによる地域社会への負荷や重症度を比較した。流行前後で血清学的検査、毎週の電話にて症状報告。有症状者には鼻腔スワブからのインフルエンザのRT-PCRを用いて検査を施行。主要なアウトカムインフルエンザ感染者数であった。(ワクチン接種されていない症例におけるウイルス特異的抗体の4倍上昇で定義)

[結果] ペア血清が得られた3,295人中2,737人(83%)がワクチン非接種であった。ウィルス種特異的血清診断4倍抗体を基準に判断すると、非ワクチン接種者においては、毎冬期に平均18%(95% CI, 16-22%)が罹患している。人口1万人当たりの典型的なインフルエンザ感染状況は、1828人で感染しており、そのうち、1371人(75%)で無症候性であると推測される。また379人(約20%)はインフルエンザにも関わらず、医師を受診しない可能性がある。

[結論]多くのインフルエンザ感染者で無症候性であり、また医師を受診しない人も多い。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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高齢者の薬物治療はいつも悩みます。高齢者と言っても、寝たきりで食事も経口摂取できない患者さんに本当に薬が必要なのか、いつも考えます。ポリファーマシーという言葉がありますが、「ポリ」でなくとも悩みます。薬がもたらす効果とは何なのでしょう。NNTが2という薬剤効果だとしても2人に1人しか効かないのです。

論文を読み実践する中で垣間見えたこと、このブログでも書き続けたいと思います。
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地域医療の見え方  2016.Jan.6;2(50)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-[Clinical script] インフルエンザ関連 Update-
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〔インフルエンザ濾胞influenza follicle〕

インフルエンザ濾胞とは咽頭後壁にみられるリンパ濾胞のことで、インフルエンザ感染症における特異的な所見として注目されている。インフルエンザの臨床診断はインフルエンザ迅速診断キットによるものが主流と考えられるが、その感度、特異度は62.3%、98.2%となっており、検査陰性所見はあまりあてにならないという問題がある。〔Ann Intern Med. 2012 PMID: 22371850〕特にインフルエンザ流行期において、安易に迅速診断キットを用いると、陰性所見は偽陰性である可能性が高い。

2003年のインフルエンザ流行期において、877人の迅速診断キット使用例の解析では発熱発現12時間以内の症例では29%に偽陰性が見られたが、発症後12時間以上では0%であったと報告されている。〔J Infect. 2011 PMID: 21722665〕〔感染症学会誌2004.78: 846-852〕医療アクセスが良好な本邦において、インフルエンザ流行期の迅速診断キット陰性所見はインフルエンザを除外するものではない。インフルエンザ流行期であれば、検査そのものを実行する臨床的意味も少ないであろう。

咽頭後壁のリンパ濾胞は、このような状況においても、感染早期のインフルエンザを臨床診断することが可能となるかもしれない。咽頭後壁のリンパ濾胞を見出すことによりインフルエンザを診断した場合、新型インフルエンザ(novel influenza)では感度100%、特異度97%、季節性インフルエンザ(seasonal influenza)では感度95.46、特異度98.42%と、いずれも迅速診断キットの性能を上回ることが報告されている。なおκ係数は0.557である。〔General Medicine.2011.12:51-60〕

κ係数(kappa statistic)は、二人の観察者間の診断の一致度(reproducibility)を評価する指標であり、0~1で示される。値が大きいほど一致度(reproducibility)が高い事になり、κ係数≧0.6であれば、観察者間の一致度(reproducibility)が十分高いと判断される。

所見画像は以下URLを参考
http://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/ika/141125-070000.php

〔インフルエンザの薬物治療〕
これまでのエビデンスは以下URLを参照
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/04/blog-post_14.html
これまで入院リスクに関しては不明な部分が多かった。最新のシステマティックレビューメタ分析を見ておこう。

今年7月に報告された、12研究のcontrolled clinical trials(解析対象107 712人)のメタ分析〔Infect Dis (Lond). 2015. PMID: 26173991〕によれば、発熱持続期間は‐20.48時間[95%信頼区間‐28.43~‐12.53]と、少なく見積もっても半日ほど早いことが示されている。またインフルエンザ様症状は-19.39時間[ 95%信頼区間-32.94~-5.84]と、少なく見積もって5時間ほどである。

入院リスクは相対危険で0.79[95%信頼区間0.68, ~0.90]と有意に減少。中耳炎も少ない。相対危険 0.78[ 95%信頼区間 0.65~0.93]。さらに非特異的合併症も有意に少ないという結果であった。相対危険0.58[95%信頼区間, 0.35~ 0.95]

今年5月(電子版は1月)にもランダム化比較試験のメタ分析が報告されている。〔Lancet. 2015.PMID: 25640810〕9研究に参加した4328人の成人インフルエンザ(様)患者が解析対象となっており、オセルタミビル群では時間比で21%症状回復が早いことが示されている。time ratio 0.79[95%信頼区間0.74~0.85]

症状消失までの時間は中央値でオセルタミビル群97.5時間、プラセボ群122.7時間であり、差は-25.2 時間[95%信頼区間 -36.2~-16.0]であった。なお抗菌薬を必要とする合併症はオセルタミビル群4.9%、プラセボ群8.7%でリスク比は0.56[95%信頼区間0.42~0.75]、リスク差は-3.8%[95%信頼区間 -5.0~ -2.2]。さらに全原因入院はオセルタミビル群0.6%、プラセボ群1.7%でリスク比0.37[95%信頼区間 0.17~0.81]、リスク差-1.1%[95%信頼区間 -1.4 ~-0.3]であった。

有害事象に関しては嘔気がオセルタミビル群9.9%、プラセボ群6.2% リスク比1.60[95%信頼区間1.29~1.99]、嘔吐オセルタミビル群8.0%、プラセボ群3.3% リスク比2.43[95%信頼区間1.83~3.23]。また精神系有害事象や重篤な有害事象に関しての記録はなかった。

以上を踏まえると症状消失は約半日から1日ほど短縮、入院リスクや合併症リスクが減るかもしれないという結果になっている。(2014年のコクランでは平均差-16.8時間[95%信頼区間-8.4~-25.1]であった。〔Cochrane Database Syst Rev 2014.PMID:24718923〕)

特にハイリスク患者ではノイラミニダーゼ阻害薬の投与で死亡リスク低下が示唆されており〔Eur Respir J. 2015.PMID: 25573405〕入院患者ではノイラミニダーゼ阻害薬を早期に投与することで死亡リスク低下を示したIPDメタ分析が報告されている。〔Lancet Respir Med. 2014 .PMID:24815805〕

このようなハイリスク患者群には早期投与が有用である可能性があり、その際に早期診断も可能なインフルエンザ濾胞による臨床診断は有用であろう。ちなみに重症インフルエンザであってもノイラミニダーゼ阻害薬を倍量で投与することのベネフィットは示されていない。〔BMJ. 2013. PMID: 23723457〕

インフルエンザ感染症に対するアセトアミノフェンの有効性については不明な部分もある。著明な効果を認めない可能性を示唆したランダム化比較試験が報告されている〔Respirology. 2015 PMID: 26638130〕

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-
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■[文献] 呼吸器感染症に対する抗菌薬 (RCT PubMed:未収載)■

de la Poza Abad.M.et.al. Prescription Strategies in Acute Uncomplicated Respiratory Infections.A Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2015.Dec. 21. [Epub ahead-of-print]
doi:10.1001/jamainternmed.2015.7088
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2475025

[重要]抗菌薬の遅延処方戦略は症状コントロールの合理性と抗菌薬の減処方というメリットを兼ね備える。遅延処方戦略には様々なパタンがあるものの、どの戦略がより有用化は不明確である。

[目的]合併症を有さない急性呼吸器感染症に対する2つの遅延処方戦略の有効性を検討する。

[デザイン及び参加者]スペインにおける23のプライマリケアセンターから405人の合併症の無い急性呼吸器感染症患者を対象としたオープンラベルランダム化比較試験。

[介入]研究参加者は以下の4群にランダム化
①患者主導の遅延処方戦略(増悪時に抗菌薬使用指示)
②プライマリケアセンターより処方をうける遅延処方戦略(増悪時に再診指示)
③直ちに抗菌薬投与
④抗菌薬を投与しない

[評価項目] 一次アウトカムは症状持続期間と重症度(6ポイントリッカートスケール使用。3,4は中等度、5,6は重度と定義)

[結果]405人のうち398人がITT解析された。34.2%が男性、平均45歳であった。症状の持続期間は、すぐに抗菌薬投与=11.7日、増悪したら再診する遅延処方戦略=12.3、患者主導の遅延処方戦略=13.1、抗菌薬投与なし=14.4(すぐに抗菌薬投与に対して有意差あり)であった。あらゆる症状の最も高い重症度中央値はすべての群で5であった。

[結論] 重症度、症状持続期間は臨床的にはあまり明確ではなく、遅延処方戦略を支持する結論。

[コメント]風邪に対して抗菌薬が必要か否かと言うような、僕からすると不毛な問いかけを良く見かける。(上から目線ですみません。でもそうでしょ?)この研究でも、抗菌薬なんて不要だ、なんていう極端な思考を見事に粉砕している結果になっている。まあ当たり前だと思う。そもそも抗菌薬が必要ない呼吸器感染症を風邪と呼ぶのだし、呼吸器感染症には抗菌薬が必要な患者もいる、という事を示しているのに過ぎない。風邪に抗菌薬が必要か否か、というロジックはもう時代遅れである。

気になる点がある。サンプル計算だ。αは0.05、パワー80%の設定で600人と計算されている。明らかなパワー不足にも関わらず、すぐに抗菌薬投与戦略では抗菌薬投与なしに比べて有意な症状持続期間の短縮が認められているあたりが興味深い。オープンラベルという研究デザインがどの程度影響しているかと言う問題もあるかもしれないが、症例数を集めたら、他の群でも差が出てきたかもしれない。あくまで仮説だけども。このことからも“呼吸器感染症”には抗菌薬が必要な人と、必要ない人がいるという事はもはや明確でだろう。風邪(抗菌薬の必要ない呼吸器感染症)と風邪じゃない疾患をどう区別するかが肝要なのであって、そういう観点からすると、症状発症早期からこの2つの疾患を区別することは難しいかもしれない。それ故、「遅延処方戦略は妥当だ」と言うのが僕の解釈ではある。

■[文献]SU剤とワルファリンの併用リスク (BMJ PMID: 26643108)■

Romley JA.et.al. Association between use of warfarin with common sulfonylureas and serious hypoglycemic events: retrospective cohort analysis. BMJ. 2015 Dec 7;351:h6223. PMID: 26643108
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26643108

[臨床疑問]ワルファリン投与中において、グルピジド、グリメピリドを使用している高齢者の低血糖リスクはどの程度か?

[方法]65歳以上のメディケア受給者の医療請求からランダムに20%を抽出し解析した後ろ向きコホート研究。2006年~2011年においてグリピジド、グリメピリドを処方された糖尿病患者465 918人の受益者が対象となった。また71 895 (15.4%)人がワルファリンを使用していた。一次アウトカムはSU剤単独とSU剤、ワルファリンの併用が比較し、低血糖による救急診療部受診あるいは入院とした。二次アウトカムとして骨折等を設定した。

[結果]四半期において、ワルファリンなしと比べてワルファリン併用下で救急診療部受診もしくは入院のリスクが上昇した。(294人/416 479人 対 1903人/3 938 939人; 調整オッズ日 1.22, 95% 信頼区間1.05 to 1.42).特に65-74歳の高齢者で新規使用がハイリスクであった。またワルファリンとSU剤の併用は骨折リスクよる救急診療部受診もしくは入院にも関連していた。(3919人/416 479人 対 20 759人/3 938 939人; 調整オッズ比1.47, 95%信頼区間1.41 to 1.54) 意識、精神状態異常についても同様にリスクが上昇した。(2490人/416 479人 対 14 414人/3 938 939人; 調整オッズ比1.22,95%信頼区間 1.16 to 1.29).

[この研究で何が追加されるか]ワルファリンとSU剤の併用は低血糖による入院、救急診療部受診に関連している。この知見は両剤の相互作用に起因するものと推測される。

[コメント]追跡は四半期。急性期相互作用検討であるがゆえに追跡期間は十分であろう。性別、人種、年齢、14の併存疾患で交絡補正している。対象者平均年齢は74.6歳、低血糖リスクである認知症の割合は14.2%で両群に偏りは無い。薬剤の使用を直接確認している研究ではない。したがって、追跡に入る前までにSU剤を服用していた研究参加者がいるかもしれない。またワルファリンを使用している患者特性そのものに何らかの低血糖リスク要因、つまり交絡の影響があるかもしれない。また若年層に一般化できるものではない、などの研究限界がある印象だが、高齢者における両剤の併用は注意が必要であり、ワルファリン服用中の高齢者に対してSU剤を新規で使用することは代替薬剤がある限り避けるべきであろう。

■[文献]高齢者治療抵抗性うつに対するアリピプラゾール(RCT PMID: 26423182)■

Lenze EJ.et.al. Efficacy, safety, and tolerability of augmentation pharmacotherapy with aripiprazole for treatment-resistant depression in late life: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2015 Dec 12;386(10011):2404-12. PMID: 26423182
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26423182

[背景]高齢者において薬物増強療法のベネフィットがあまり明確ではない、治療抵抗性うつは一般的かつ潜在的に生命を脅かすほどの問題である。アリピプラゾールがプラセボに比べて高い寛解をもたらすか検討した。

[方法]米国及びカナダの3施設において実施された、60歳以上の治療抵抗性うつ(MADRSスコア[0~60]で15点以上)を有する高齢者を対象とした2重盲検ランダム化比較試験。venlafaxine extended-release (150-300 mg/day)にて寛解が得られなかった患者をアリピプラゾール追加群(10mg[最大15mg]、プラセボ追加群にランダムに割り付け12週の治療をおこなった。一次アウトカムはMADRSスコアで10以下と定義された寛解者数。統計解析はintention to treat。

[結果]468人が研究に組み入れられた。そのうち181人(39%)が寛解に至らず、アリピプラゾール(91人)、プラセボ(90人)にランダム化された。その結果アリピプラゾール群では寛解者数が有意に多かった。(アリピプラゾール40人[44%]、プラセボ26人[29%]、オッズ比2.0[95%信頼区間1.1~3.7] NNTは6.6[95%信頼区間3.5~81.8]

アカシジアが最もコモンな有害事象でアリピプラゾール群26%、プラセボ群12%と報告された。またパーキンソン症状はアリピプラゾール群で17%、プラセボ群で2%であった。自殺念慮に対する明確な差は見られなかった。(21%vs29%)

[結論]治療抵抗性うつを有する高齢者ではアリピプラゾールの追加投与が寛解に有用である可能性がある。忍容性の懸念としてアカシジアやパーキンソン症状が挙げられる。

[コメント]専門外なのでコメントしづらいのだが、アリピプラゾール上乗せトライアルは比較的多い印象である。例えばSSRI抵抗性強迫性障害に対する効果など。[Depress Anxiety. 2012 PMID: 22933237] この薬剤、その用量に注意したい印象はある。当研究でも標準用量範囲内で決して多い投与量を用いていない。寛解は多いけど有害事象も多く、自殺念慮に差は無い。なかなか難しい。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-
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新年、あけましておめでとうございます。
本年も、よろしくお願い申し上げます。

2016年第1回目はインフルエンザに関する情報アップデートです。特にノイラミニダーゼ阻害薬の有効性については情報をアップデートしないと、毎回微妙に結果が異なっているので注が必要です。

当ブログも旧ブログより引っ越しして1年がたとうとしています。
今後も、情報発信の在り方を模索したいと思います。
#ブログ
役に立つ情報はありましたか?

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Dec.22;1(49)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-[Clinical script] PPIとClostridium difficile infection-

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[イントロダクション]
Clostridium difficile infection.のリスクファクターとして有名なのが抗菌薬であるが、その他のファクターとして制酸剤や加齢などが挙げられる。[J Hosp Infect. 2008.PMID: 18951661] 

抗菌薬では特にクリンダマイシン、やキノロン系のリスクが高いと言える。
[J Antimicrob Chemother. 2013.PMID: 23620467]
[ Antimicrob Agents Chemother. 2013. PMID: 23478961] 

制酸剤では特にPPIの使用がリスクに関連する可能性が示唆されいる。
[Am J Gastroenterol. 2012.PMID: 22710578]
ただ質の高いエビデンスは限定的であり明確な因果関係については議論の余地もある。
[PLoS One. 2012; PMID: 23236397]

[Clostridium difficile感染症発症後のPPI継続使用]
PPIの使用とCDI再発リスクを検討した後ろ向きコホート研究が報告されている。
[JAMA Intern Med. 2015.PMID: 25730198]

対象となったのは医療関連CDIを発症し15日以上生存した754人。PPIの継続使用と、最初の感染エピソードから15~90日以内のCDIの再発リスクが検討された。その結果、PPIの継続使用はCDI再発のリスクファクターである可能性が示された。ハザード比1.5 (95% CI, 1.1-2.0) 他の因子として年齢、1.5 (95% CI, 1.1-2.0)、入院期間1.003 (95% CI, 1.002-1.004)が挙げられる。

[ハイリスク抗菌薬とPPIの使用におけるCDIリスク]
抗菌薬とPPIの使用とCDIリスクの関連を検討した後ろ向きコホート研究が報告されている。
[J Hosp Infect. 2015 PMID: 26616410] 

本研究で定義されたハイリスク抗菌薬とは、 シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、クリンダマイシン、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフタジジム、セフィキシムである。

対象となったのはハイリスク抗菌薬とPPIを使用していた3513人、ハイリスク抗菌薬を使用していたが、PPIの使用のない、6149人である。ベースライン特性は、CDIの重症度、入院、感染の前に抗生物質治療の長さについて、両群で同等であった。その結果、PPIを使用していた群でCDI発生率が有意に高かった。オッズ比2.2; 95%信頼区間: 1.52-3.23 。特にクリンダマイシン、キノロンで強い関連が見られており、既存の報告との一貫性が見られる。ハイリスク抗菌薬とPPIの併用はCDIリスクを上昇させる危険がある。特に高齢者では十分に警戒する必要が有ろう。

[Clinical script]
加齢もClostridium difficile infectionのリスクファクターである。[Clin Microbiol Infect.2012 PMID:23121551] 特にCDIの既往のある高齢者では、抗菌薬、PPIの使用について十分注意したい。高齢者へのPPI漫然投与下で、ハイリスク抗菌薬の使用はCDIを引き起こす可能性に留意すべき。尿路感染症などでキノロンを使用するケースは決して稀では無いだろう。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■[文献]ドンペリドンと心室性不整脈、心臓死リスク(メタ分析PMID: 26649742)■

Leelakanok N.et.al. Domperidone and Risk of Ventricular Arrhythmia and Cardiac Death: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Drug Investig. 2015 Dec 9. [Epub ahead of print] PMID: 26649742
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26649742

[背景] ドンペリドンは、吐き気を軽減し、嘔吐や母乳の産生を促進させることを目的に世界的に使用される薬剤である。しかしながら、いくつかの症例報告や研究では心血管有害事象(不整脈や心臓突然死)とドンペリドンの使用の関連を示唆している。ただ、複数のランダム化比較試験では、そのような有害事象を検出することができなかった。本研究の目的は、ドンペリドン曝露と心血管系有害事象との関連を網羅的に検討し、メタ解析することである。

[方法]一人目のレビューアーがドンペリドンと心室性不整脈、心臓死亡の関連を検討した臨床研究をサーチ。13の文献が同定され、2人目のレビューアーが独立して評価した。最終解析には6研究を含めた。メタ分析はrandom effect modelを用いた。なお異質性はQ statistic とI 2 testにより評価した。

[結果]5つの症例対照研究、1つのケースクロスオーバー研究がメタ分析された。ドンペリドンによる心室性不整脈・心臓死亡のリスクはpooled adjusted odds ratio 1.70[95%信頼区間 1.47-1.97;]I 2 = 0 %であった。異質性は認められなかった。

[結論]このメタ分析では心室性不整脈・心臓死亡リスクがドンペリドンにより70%増加する可能性が示唆されている。高齢者では推奨できない。大規模観察研究及びランダム化比較試験でこの結果は検証される必要がある。

[コメント]何かと話題になるドンペリドンと心臓死亡リスク。感染性胃腸炎が流行する時期、小児科領域でも当たり前のように処方されるこの薬剤、そのリスクはどの程度か、症例対照研究くらいしか(“くらいしか”とはやや失礼かもしれない。僕の気持ちを素直に表した結果だが、申し訳ない)まともな研究が無いのが現状だ。

今年の1月に報告されたシステマテックビュー[Rev Med Chil. 2015 Jan;143(1):14-21PMID: 25860264]では症例対照研究3研究しかレビューされていないことからすれば、徐々にエビデンスは集積しつつあるのだろう。この3つの症例対照研究の結果は以下の通り。いずれもドンペリドンと心室性不整脈、心臓死亡リスクとの関連が示されている。

・オッズ比4.7 [95%信頼区間 1.4-16]
・オッズ比1.59[95%信頼区間1.28-1.98]
・オッズ比 11.02[95%信頼区間2.02-62.3]

冒頭のメタ分析でも異質性は低いと報告されているように、このレビューの3研究においても結果の方向性は一貫しており、リスク上昇に寄与するのだろう。ただオッズ比の大きさはあまり一貫性がなく、どの程度のリスクなのかいまいちわからない。

レビューに含まれた3研究の中でも一番オッズ比が大きい[Drug Saf. 2010.PMID: 20925438]を見てみる。対象となったのは18歳以上のgeneral population.だ。つまり小児の研究ではない。心臓に起因すると思われる死亡例1366人をケースとして、年齢、性別などでマッチングした対照14114人が設定された。その結果、ドンペリドンと心臓突然死はオッズ比で3.72 (95%信頼区間 1.72~8.08).となっている。1日30mg以上ではさらにリスクとの関連性が示されており [調整OR 11.4 [95% CI 1.99~65] 量反応関係が示唆されている。

感染性胃腸炎で汎用される小児へのドンペリドン(ナウゼリン®DS)の投与に関して、実はそのリスクの程度は不明だ。錐体外路症などの懸念もあるこの薬剤をどの程度警戒しながら用いるかについてはあまり情報がない印象である。

■[文献]中等度のがん性疼痛に対する鎮痛 (ランダム化比較試験PMID: 26644526)■

Bandieri E.et.al. Randomized Trial of Low-Dose Morphine Versus Weak Opioids in Moderate Cancer Pain. J Clin Oncol. 2015 Dec 7. pii: JCO610733. [Epub ahead of print] PMID: 26644526
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26644526

[目的] がん性疼痛管理に関するWHOのガイドラインは、3段階の除痛ラダーを推奨している。しかしながら、中等度疼痛に対して、ステップ②である弱オピオイドを用いるか、ステップ③である低用量強オピオイドを用いるかについて、決定的なデータに欠けている。

※WHO3段階除痛ラダーは概ね以下の通り。
軽度:NSAIDs、(ステップ①)
中等度:弱オピオイド-コデイン、トラマドール(ステップ②)
強度:強オピオイド-オキシコドン、モルヒネ(ステップ③)

本研究では中等度の疼痛に対して、弱オピオイドを用いるべきか、強オピオイドを用いるべきか検討したRCT

[参加者及び方法]28日間にわたる多施設オープンラベルランダム化比較試験。中等度のがん性疼痛を有する成人患者が対象。弱オピオイド群と低用量モルヒネ群に割り付けられた。一次アウトカムはnumerical rating scale.(0~10の11段階評価スケール)により評価された疼痛が20%低減された患者数。

[結果]240人(低用量モルヒネ群118人、弱オピオイド群112人)が研究に参加した。一次アウトカムは低用量モルヒネ群で88.2% 、弱オピオイド群で57.7% であり、オッズ比は 6.18; 95% CI, 3.12 to 12.24; P < .001であった。臨床的に意味のある30%以上、臨床的に非常に意味のある50%疼痛軽減も低用量モルヒネ群で有意に高かった。治療不十分による薬剤変更は弱オピオイド群で頻繁になされた。有害事象は両群で同等であった。

[結論]中等度のがん性疼痛を有する患者では低用量モルヒネは弱オピオイドよりも疼痛軽減に有用。忍容性は良好で、効果発現も早い。

[コメント]僕がもしそうなら、早い段階で低用量モルヒネを処方してくれと頼むであろうくらいなstudy。実臨臨床でも弱オピオイドで粘ることはそう多くない印象である。フルテキストで読んでいないので、批判的吟味があまいのかもしれないけれど、WHOくそくらえである。(失礼)

■[文献]1日の歩行時間と死亡リスク(J Epidemiol.コホート研究PMID: 26155815)■

Zhao W.et.al. Health Benefits of Daily Walking on Mortality Among Younger-Elderly Men With or Without Major Critical Diseases in the New Integrated Suburban Seniority Investigation Project: A Prospective Cohort Study. J Epidemiol. 2015 Nov 5;25(10):609-16. PMID: 26155815
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26155815


[背景]定期的な身体活動は癌や心血管疾患、あるいはその他の慢性疾患の予防に寄与すると考えられている。しかしながら、特に高齢者では年齢とともにその身体活動量は低下していく。心疾患や脳血管疾患もしくはがんなど重大な疾患の有無を問わず、65歳から74歳の高齢者において、日々の歩行と死亡の関係について調査した。

[方法] New Integrated Suburban Seniority Investigation Project.より1239 地域から64/65歳の男性を評価した。重大な疾患を有さない986人と、重大な疾患を有する253人の計、1239が対象となっている。日々の歩行時間と総死亡の関係について、調査年、婚姻状況、就労状況、教育、喫煙や飲酒の状況、BMI、定期的な運動、定期的なスポーツ、睡眠時間、医学的状態、病歴、身体機能で補正し、ハザード比[95%信頼区間]を算出した。

[結果]重大な疾患のない男性において、死亡リスクは、交絡因子調整後に歩行時間の増加とともに直線的に減少。(Ptrend=0.018)1日2時間以上の歩行で総死亡は51%低下。(HR 0.49; 95% CI, 0.27-0.90).重大な疾患のある男性では、1日30分未満の歩行と比べて、1~2時間の歩行で、死亡リスクの低下傾向が認められた。(HR 0.29; 95% CI, 0.06-1.20).しかし2時間以上の歩行でも、明確なベネフィットは示されなかった。

[結論]重大な疾患を有さない高齢男性においては、社会人口学やライフスタイル要因、BMI、医学的状態、病歴、および機能的能力とは独立して、歩行時間が死亡のリスク低下に寄与する可能性が示唆された。日常生活において、定期的な歩行をすることにより長寿が期待できるかもしれない。

[コメント]本研究は前向きコホート研究である。この手の研究においては常に交絡を考慮せねばなるまい。歩行を積極的に行う人は健康意識が高いものと推測される。死亡リスクに差が出るのは、様々な要因が絡んでいると言えよう。本研究では歩行時間を<0.5 h/d、0.5–1 h/d、1–2 h/d、≥2 h/dの4カテゴリに区分している。Referenceは<0.5 h/dで、重大な疾患の有無を問わず、全対象者の解析では、≥2 h/dのみに有意差がついており、ハザード比は0.52 (95%信頼区間0.30~0.88)である。重大な疾患のある人で、有意な差がつかないのはβエラーの可能性もあるかもしれない。Table 3.を見れば明らか、症例数はそれほど多くはないのである。少なくとも1日2時間の歩行をすれば、健康長寿でいられる、と結論するのは早々かも知れない。まあ適度なウォーキングは手軽にできることもあり、楽しみながらやる分には健康的な一面があるのかもしれない。

■[文献]歩行速度と死亡の関連(Age Ageing コホート研究PMID: 25236846)■

Zhao W.et.al. Association of gait speed with mortality among the Japanese elderly in the New Integrated Suburban Seniority Investigation Project: a prospective cohort study. Age Ageing. 2015 Jan;44(1):153-7. PMID: 25236846
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25236846

[背景] 歩行速度は高齢者の死亡率に関連していると言われているが、本邦における根拠は限定的である。高齢者における歩行スピードと死亡の関連を調査した。

[対象] New Integrated Suburban Seniority Investigation Projectより2,105の地域における心疾患、脳血管疾患、がんを有さない65歳の高齢者(男性990 人,女性 1,025 人)が研究対象となった。

[方法]歩行スピードと死亡の関係についてCox proportional hazard regressionによりハザード比[95%信頼区間]を見積もった。なお調査年、婚姻状況、就労状況、教育、喫煙、飲酒、BMIや医療受給歴で補正した。

[結果]被験者を75歳まで追跡した。観察期間中188人 (男性140 人,女性 48 人)が死亡した。歩行スピードが遅い人は、男性において有意に死亡リスクが高かった。(HR, 1.72; 95% CI, 1.08-2.63).この関連は1日の歩行時間が1時間以上の人では認められなかった。(HR, 0.98; 95% CI, 0.34-2.25) 歩行時間が1日1時間以上の女性では歩行スピードが遅い人は3倍以上死亡のリスク上昇が示された。(HR, 3.04; 95% CI, 1.34-6.49)

[結論]高齢者において、歩行スピードが遅い人は死亡リスク増加に関連している。

[コメント]この手の研究も交絡の影響はかなり大きいと考えた方が良い。歩行スピードについては、 ‘How fast have you walked over the past year?’ と言う質問にslow, normal and fast.の3つのカテゴリで得られた回答でクラス分けしている。この区分はかなり恣意的と言わざるを得ないだろう。当然、fast.と答えた人は身体能力に自信がある人、slow,と答えた人はその能力に自信がない人である可能性を考慮したい。

抄録の記載はややわかりにくいが、主要結果の解析はNormalをreferenceとしている。男性、女性で層別化、さらに1日の歩行時間1時間未満と1時間以上で層別化して解析もしている。男性の死亡リスクは、FastでHR1.19 (0.69–1.95)  SlowでHR1.72 (1.08–2.63)となっている。歩行スピードが遅いと死亡リスクが増加しているが、早くても死亡リスクが低下するわけではない。女性ではFastでHR0.19 (0.01–0.88)  SlowでHR2.01 (0.98–3.86) 傾向的にはこちらの方が経験的直観と類似している。

歩行時間での層別解析は歩行時間が1日1時間以上のNormal/Fastがreference である。Slowは女性においてはHR3.04 (1.34–6.49)となっておるものの男性ではHR 0.98 (0.34–2.25)と一貫性がない。研究規模が小さい、という事もあるかもしれないが、交絡の影響も加味すると、歩行スピードと死亡リスクの関連について、その解釈は難しい、と言うのが率直な感想である。あくまで仮説探索的研究であることを踏まえれば、今後の大規模研究に期待したい。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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本年最後の更新です。ブログ「地域医療の見え方」の今後の編集方針について、現在検討中です。作成負担と情報の質、そのバランスをどう維持していくのか今後の大きな課題となりました。単一のエビデンスをつなげていく情報加工技術は、「薬のデギュスタシオン」執筆中に学んだものです。臨床的な差異を検討するにはおそらく一つの論文から得られる示唆だけでは結論できません。

エビデンスとエビデンスをつなぐ、そういったことがこのブログの基本編集方針であることには変わりないと思います。時間的な制約の中で、どこまで情報の質を落とさず、記事をまとめることが継続してできるか、旧ブログ立ち上げから、もうじき4年がたとうとしています。

地域医療の見え方、今後の新たな展開にご注目下さい。

本年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

地域医療の見え方 執筆・編集責任者 青島周一
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