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地域医療の見え方  2016.May18;2(68)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-超高齢者におけるアピキサバンvsワルファリン-

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[introduction]
世間一般の処方動向をみると、高齢者に対するアピキサバンの使用は決して少なくないようである。確かに、ダビガトランなどと比べるとクレアチニンクリアランスに関する禁忌も緩い(15mL/min未満)。これは同じ抗凝固薬でも薬剤ごとに腎排泄の度合が異なることが理由として挙げられる。ダビガトランの腎排泄が80%なのに対して、リバーロキサバンでは33%、アピキサバンでは25%である。(Circ J. 2011;75(7):1539-47. PMID: 21666370)

またアピキサバンの主要論文である、ARISTOTLE試験(N Engl J Med. 2011 Sep 15;365(11):981-92. PMID: 21870978)参加者も年齢中央値で70歳と、比較的高齢の患者を対象としている。ARISTOTLEではワルファリン比較で、非劣性のみならず優越性も示唆されていたわけであり、ベネフィットを考慮するとアピキサバンという選択肢もありかもしれないと思えてくる。ただコストや加齢に伴う腎機能低下などに起因する有害リスクを上回るかどうかについては、議論の余地もありそうだ。

80歳を超えるような高齢者に対する抗凝固療法において、納豆食に関する問題が無い限り、筆者はワルファリンを推奨してきた。その理由は以下の通りである。

・高齢者においては腎機能低下が進行する懸念があり、少なからず腎で排泄されるエリキュースは、腎機能低下とともに有害事象発症リスクが高まる危険性がある。
・定期的なPT-INRモニターは治療の安全性を高めると思われる。
・エリキュースに比べて、ワルファリンは圧倒的に安価である。
・寝たきり高齢者では納豆食が問題となることは少ない。

しかしながら、上記理由はあくまで薬理作用や病態生理に基づく仮説に過ぎず、実証されたエビデンスがあるわけではない。本稿では、80歳を超える高齢者においても、アピキサバンが安全に使用でき、そのベネフィットがワルファリンを上回るのか検証する。まず、アピキサバンの有効性・安全性を検討した主要論文ARISTOTLEのサブ解析から一つの仮説を提示し、次にその仮説が指示できるものかどうかを、薬理学的に類似の薬剤であるリバーロキサバンとの比較の中で検証する。そのうえで、ワルファリンとの比較を考察し、一つのソリューションを提示してみよう。

[アピキサバンの有効性・安全性に関する仮説]
ARISTOTLEには様々なサブ解析論文が報告されているが、本稿の論点に合わせ、高齢者でのリスクベネフィット、腎機能低下時のリスクベネフィットについて検討された論文を確認していく。

①高齢者へのアピキサバン
(Eur Heart J. 2014 Jul 21;35(28):1864-72. PMID: 24561548)
『Owing to the higher risk at older age, the absolute benefits of apixaban were greater in the elderly.』
高齢者でもベネフィットは大きい。むしろ65歳未満に比べて65~75歳、75歳以上ではよりベネフィットがある可能性が示唆されている。

②腎機能障害者へのアピキサバン
(Eur Heart J. 2012 Nov;33(22):2821-30. PMID: 22933567)
『Patients with impaired renal function seemed to have the greatest reduction in major bleeding with apixaban.』
腎機能障害者において、決して出血リスクが増えるわけではない。腎機能障害患者はむしろアピキサバンによる大出血抑制効果が大きい。

③アピキサバンによる出血のリスクファクター
(J Am Coll Cardiol. 2014 May 27;63(20):2141-7PMID: 24657685)
Major bleedingに関して、『Older age, prior hemorrhage, prior stroke or transient ischemic attack, diabetes, lower creatinine clearance, decreased hematocrit, aspirin therapy, and nonsteroidal anti-inflammatory drugs were independently associated with an increased risk.』

当然ながら高齢者は出血のリスクファクターとなっている。Ageは10-yr increase でMajor Hemorrhageのハザード比1.36 (1.23–1.51) つまり高齢になるほど大出血リスクは高くなる。

①と③はコンフリクトを起こしている。常識的に考えれば③が指示されようが、世間一般的には①及び②の結果は独り歩きしやすいと思われる。サブグループ解析の結果はあくまで仮説にすぎず、因果関係を立証するものではないが、ここで一つの仮説を提示しておく。

【仮説】アピキサバンは超高齢者(本稿では80歳を超えるような高齢者を想定している)において、リスク/ベネフィットに優れており、腎機能が低下している(当然ながら添付文書上の禁忌を除く)からと言って出血リスクが増大するわけではなく、むしろ出血抑制効果が大きい。

[イグザレルトとの比較]
先の仮説を検証するには、厳密には腎機能が低下した超高齢者を対象にランダム化比較試験を行うよりほかない。しかしながら、年齢が出血のリスク因子だと言われている中で、倫理的配慮から、このような介入研究を行うことは難しいかもしれない。

では超高齢者に対するアピキサバンの有効性・安全性をどのように検討したら良いのであろうか。冒頭紹介したようにリバーロキサバンは代謝様式、薬理作用が類似しており、また報告されている臨床試験論文の研究デザインも類似している。前項で提示した仮説が、リバーロキサバンでも提起できるのであれば、その仮説が指示できるとは言えないだろうか。

①高齢者に対する安全性
J-ROCKET AFのサブ解析によれば、75歳を超えると出血は増加傾向にあるようだ。有効性については、高齢者だから効果が大きくなる、というようなことは示されていない。(Circ J. 2014;78(6):1349-56.PMID: 24705469)

ROCKET AFのサブ解析でも同様に高齢者で特に著明な効果が期待できる、というわけではない。むしろ安全性アウトカムは75歳以上では有意に増加している。(Circulation. 2014 Jul 8;130(2):138-46.PMID: 24895454)

年齢は出血のリスファクターである点はリバーロキサバンもアピキサバンも同様なようである。(J Am Coll Cardiol. 2014 Mar 11;63(9):891-900.PMID: 24315894)

②腎機能低下例に対する安全性
J-ROCKET AFのサブ解析を見る限り、腎機能低下例についてはリバーロキサバンでも著明な出血リスク上昇というわけではなさそうである。(Circ J. 2013;77(3):632-8.PMID: 23229461 )

ただ、クレアチニンクリアランスが30〜49おいて大出血に明確な差はないが、腎機能低下例でよりリスクが少ないというわけではないようだ。J-ROCKETのサブ解析でも同様の結果が示されている。(Eur Heart J. 2011 Oct;32(19):2387-94.PMID: 21873708)

つまり腎機能低下例でも比較的安全に使用できるかもしれないが、腎機能低下例においてむしろ出血リスクを抑制するというようなことは示されていない。

[超高齢者に対するアピキサバンとワルファリンの比較]
ARISTOTLEという単一のRCTのみからの仮説をいろいろ提起しても、偶然の解析結果という可能性は常に付きまとう。現段階では、リバーロキサバンにおいてアピキサバンで提起した仮説が指示されないことを踏まえると、超高齢者、腎機能低下例にアピキサバンを積極的に用いるべきと解釈するのは早々だろう。現状では安価なワルファリンで問題ないと思われる。

ただすでに、アピキサバンが投与されている場合についてはどうだろうか。アピキサバンからワルファリンへの変更はやや難しい側面がある。変更時には脳卒中、塞栓症リスク増加の懸念があるからだ。リバーロキサバンでは、ビタミンK拮抗薬などによる標準的治療への移行期において、リバーロキサバン群ではワルファリン群にくらべ脳卒中/全身性塞栓症リスクの上昇がみられたと報告されている。(J Am Coll Cardiol. 2013 Feb 12;61(6):651-8.PMID: 23391196)

半減期がワルファリンに比べて短いアピキサバンやリバーロキサバンは当中止に伴い、脳卒中に関する予防的効果の急速な減少が懸念されるというわけだ。その為アピキサバンとワルファリン併用期間を設定することが多いだろうが、その場合、ワルファリンの投与量には神経を使うことだろう。ただそのリスクを考慮してもワルファリンへの変更はコストの観点や安全性にメリットがあるように思えるがいかがだろうか。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]認知機能に対する緑茶の効果(RCT PMID: 27142448)

Ide K.et.al. Effects of green tea consumption on cognitive dysfunction in an elderly population: a randomized placebo-controlled study. Nutr J. 2016 May 4;15(1):49. PMID: 27142448
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27142448

[背景]緑茶は、これまでの基礎実験的研究から認知機能障害に対して潜在的に効果のある飲料であると考えられている。しかし、人間での効果、特にリアルワールドでの摂取量との関連については不明である。

[方法]日本における、認知機能障害(Mini-Mental State Examination Japanese version (MMSE-J) score <28)に対して緑茶摂取の効果を検討した二重盲検ランダム化比較試験。

被験者は緑茶を摂取する群(1日2gの緑茶粉末[カテキン220.2mg含有]、プラセボ[カテキン含有なし]を摂取する群の2群にランダム化され、12か月追跡された。認知機能は3か月ごとにMMSE-Jを用いて評価された。

[結果]認知機能障害を有する33人の特別養護老人ホーム入居者(男性4人、女性29人、平均84.8歳、MMSE-J スコア15.8 )が対象となり、27人が試験を完遂した。1年後のMMSE-J スコア変化は緑茶群とプラセボ群で明確な差が無かった。(差―0.61[95%信頼区間‐2.97~1.74]

[結論]12か月の緑茶摂取ではMMSE-Jによる認知機能にメイクな差を認めない。しかし酸化ストレスを低減することができるかもしれない。追加の研究は効果を明確にするために必要とされている。

[コメント]小規模ながら12か月追跡した貴重な研究。We thus set our total sample size at 32.となっているように、想定されたサンプルサイズを下回っているわけではないので、有意な差が無いということは、想定していたよりも、相当程度小さな効果しかないか、効果が無いことを意味している。

[文献]80歳を超える高齢者に対するスタチン二次予防(PSmコホートPMID: 27146371)

Ble A.et.al. Safety and Effectiveness of Statins for Prevention of Recurrent Myocardial Infarction in 12 156 Typical Older Patients: A Quasi-Experimental Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2016 May 4. [Epub ahead of print] PMID: 27146371
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27146371

[背景]80歳を超えるような患者へのスタチンのリスク及び実効性の根拠は限られている。高齢者において、スタチンの心筋梗塞再発リスク、筋肉関連有害イベント、増分コストを検討した。

[方法] UK Clinical Practice Research Datalink.のプライマリケア電子医療記録を用いて、心筋梗塞再発リスク(一次アウトカム)、転倒、骨折、脳梗塞、認知症、総死亡(60歳以上)を、傾向スコアマッチングにて検討した。(12156人)被験者は10年間追跡された。

[結果]平均76.5歳、女性は45.5%であった。スタチンの使用は心筋梗塞再発リスクを減らした。(subhazard ratio = 0.84, 0.69-1.02, p = .073)60歳から79歳のグループではリスク低下が示唆されたが (0.73, 0.57-0.94) 、80歳を超えるグループでは明確な差が無かった。 (1.06, 0.78-1.44).脳卒中や認知症への効果は不明であった。特に80歳を超えるグループでは、治療最初の2年間で転倒、骨折リスクはそれぞれ増加した。(1.36, 1.17-1.60) 、(1.33, 1.04-1.69)

治療は総死亡低下と関連した。スタチンは60歳から79歳ではcost savingといえるが、80歳を超えるとhigher costと言える。

[結論]60歳~79歳において、スタチンの心筋梗塞予防効果は介入研究とほぼ同様である。しかし、さらなる高齢グループのエビデンスが必要であろう。超高齢者における転倒、骨折はさらなる調査が必要。

[コメント]すべての被験者が心筋梗塞での入院既往を持つ。つまりスタチンの二次予防効果の検討だ。

「80歳を超える高齢者のスタチン療法」は地域医療の見え方2016.Apr.20;2(65)にまとめてある。http://jp.bloguru.com/syuichiao/265022/2016apr20265

結論として、積極的治療を望む場合、二次予防目的でのスタチン治療は継続を考慮できる
が、積極的治療を望まない場合、二次予防目的でさえもスタチン治療は中止を考慮できると言える。今回の研究はこの結論を支持するものとなっている。様々な考え方もあろうが現時点で二次予防に積極的なスタチン投与は推奨できない。ただし、スタチン服用中に発症した脳卒中後のスタチン投与に関しては異論があるかもしれない。
Stroke. 2007 Oct;38(10):2652-7. PMID: 17761916
Neurology. 2007 Aug 28;69(9):904-10. PMID: 17724294

二次予防とひとくくりにするのではなく、脳梗塞後(スタチン服用中の)か心筋梗塞後かで臨床判断が若干異なると言える。ただまあ80を超える高齢者ということであれば、スタチンを使おうが使うまいが、実際のところ、心血管疾患以外の要因で死亡する確率は高く、スタチンどうのと言う問題でもない気がする。今後のエビデンスをフォローし、必要に応じて考え方をあらためていきたいと思う。

[文献]プロバイオティクスの人工呼吸器肺炎予防効果(RCT PMID: 27043237)

Zeng J.et.al. Effect of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia in critically ill patients: a randomized controlled multicenter trial. Intensive Care Med. 2016 Jun;42(6):1018-28. PMID: 27043237

[背景]人工呼吸器装着患者におけるプロバイオティクスの効果を検討する。

[方法]本研究はオープンラベル多施設ランダム化比較試験であり、ICUで48時間以上人工呼吸器装着が見込まれる235人が対象となった。標準的なVAP対策に加え、介入群ではプロバイオティクスカプセル(Bacillus subtilis and Enterococcus faecalis (Medilac-S) 0.5 g[ビオフェルミン])を1日3回投与された。VAPは毎日評価し、咽頭スワブ、胃吸引はベースライン時、その後は週に1回もしくは2回培養された。

[結果]細菌学的に確認されたVAPはプロバイオティクス群で有意に低かった。(プロバイオティクス群36.4%、標準ケア群50.4% P=0.031) VAP発症までの平均日数もプロバイオティクス群で長かった。(プロバイオティクス群10.4日、標準ケア群7.5日 P=0.022) しかし臨床的なVAPや入院期間、死亡に明確な差はなかった。

[結論]プロバイオティクスはVAP予防に効果があるかもしれない。

[コメント]VAPというアウトカムはソフトエンドポイントと言わざるを得ない。本研究はオープンラベル試験であり、結果の解釈は慎重になるべきであろう。また臨床的VAPや死亡に差が無いことを踏まえれば、プロバイオティクスがVAP予防に有効であると結論することは難しい。ただ、そのコストや有害性を考えたときにルーチン投与もありかなあと思うくらいプロバイオティクスは人に優しい。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES「超高齢者におけるアピキサバンvsワルファリン」、初出は思想的、疫学的医療について「薬物治療を思考する~超高齢者に対するアピキサバンの有効性・安全性検討~」
http://syuichiao.hatenadiary.com/entry/2016/05/09/000000

「思考する薬物治療」いつかそんなタイトルで記事を連載してみたい。ネタはあるのだが、どうにも時間が。もう今年も半分終わる。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.May11;2(67)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-単一のRCTで仮説生成された有害事象のゆくえ-

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ランダム化比較試験は仮説検証型研究であるが、仮説を検証できるのは一次アウトカムのみである。また多くの場合で、倫理的な問題から。有害アウトカムが一次アウトカムになることはない。とはいえ、一つのランダム化比較試験で示された有害アウトカムの増加は、サンプルサイズが膨大な大規模観察研究やメタ分析で示唆された有害アウトカムに比べるとかなりインパクトがある。

ただやはり、あくまでも仮説生成であることに注意が必要だ。一次アウトカムではない限り、検証された仮説ではないのである。もちろん軽視はできないが、継続してエビデンスをフォローしていく必要がある。

本稿では、単一のRCTで仮説生成された有害アウトカムのゆくえについて、ピオグリタゾンとDサキサグリプチンの例を挙げ、疫学的研究を時系列に点検しながら考察を加える。

[ピオグリタゾンと心不全リスク]

Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89. PMID: 16214598
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16214598
ピオグリタゾンと心血管アウトカムに関する2重盲検ランダム化比較試験。2型糖尿病患者5238人を対象とし、ピオグリタゾンとプラセボが比較された。この研究ではピオグリタゾン群6%、プラセボ群4%と統計的にも有意にピオグリタゾン群で心不全による入院が増加した。ただし心不全死亡に関しては明確な差はない。

JAMA. 2007 Sep 12;298(10):1180-8. PMID: 17848652
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17848652
ピオグリタゾンと心血管アウトカムに関するランダム化比較試験のメタ分析。19研究16 390人が解析対象となった。重篤な心不全はピオグリタゾン群で2.3%、プラセボ群で1.8%とハザード比は1.41[95%信頼区間1.14~1.76]であった。

JAMA. 2007 Dec 12;298(22):2634-43. PMID: 18073359
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18073359
高齢者のチアゾリジンと心血管アウトカムに関するコホート内症例対照研究。チアゾリジンによる治療でうっ血性心不全リスクが増加。発生率比は1.60[95%信頼区間1.21~2.10]ただし、この研究で示唆されたリスク増加はチアゾリジンといってもピオグリタゾンではなく、ロシグリタゾンである。

Diabetes Obes Metab. 2008 Dec;10(12):1221-38. PMID: 18505403
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18505403
ピオグリタゾンと心血管アウトカムに関するランダム化比較試験のメタ分析。94研究が解析に含まれているが、PROACTIVEが除外されているところがポイント。ピオグリタゾン群11268例、対照群9912例が解析対象となっており、このメタ分析ではリスクの有意な上昇は示されなかった。オッズ比1.38 [95%信頼区間0.90~2.12]

Database of Abstracts of Reviews of Effectsの要約を見ると「data from the PROACTIVE trial (n=5 238) was not included in some of the meta-analysis, because the number of events was much larger than for the other studies.」とあるようにPROACTIVEのみでイベントが多かったことが示唆されている。

BMJ. 2009 Aug 18;339:b2942. PMID: 19690342
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19690342
ピオグリタゾンとロシグリタゾンを比較し、心血管アウトカムを検討した後ろ向きコホート研究。カナダ、オンタリオのデータベースより39 736人が解析対象となった。この研究ではピオグリタゾンよりもロシグリタゾンで心不全リスクが高いことが示されている。

JAMA. 2010 Jul 28;304(4):411-8. PMID: 20584880
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20584880
ピオグリタゾン、ロシグリタゾンを比較し、心血管アウトカムを検討した後ろ向きコホート研究。65歳以上の227,571人が対象となった。この研究でもピオグリタゾンよりもロシグリタゾンで心不全リスクが高いことが示されている。

BMJ. 2011 Mar 17;342:d1309. PMID: 21415101
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21415101
ロシグリタゾンとピオグリタゾンの心血管アウトカムを検討した観察研究のメタ分析。16研究810,000人が解析対象となっている。ピオグリタゾンに比べてロシグリタゾンではオッズ比1.22[95%信頼区間 1.14 ~1.31]であり、これまでの研究を踏まえれば、ピオグリタゾンに比べて、ロシグリタゾンのリスクは一貫している。

PLoS One. 2011;6(12):e28157. PMID: 22164237
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22164237
The General Practice Research Databaseを用いてピオグリタゾンとロシグリタゾンを比較し、心血管アウトカムを検討したコホート研究。ピオグリタゾンに比べてロシグリタゾンでは心不全による入院だけでなく死亡リスクも増加している。

Am J Cardiovasc Drugs. 2011;11(2):115-28. PMID: 21294599
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21294599
チアゾリジンと心不全リスクを検討したランダム化比較試験のメタ分析29 研究、20254人が対象となっている。間接比較だが、この研究でもピオグリタゾンよりロシグリタゾンで心不全リスク増加が示唆されている。
ロシグリタゾン:オッズ比2.73[95%信頼区間1.46~5.10]
ピオグリタゾン:オッズ比1.51[95%信頼区間1.26~1.81]

J Manag Care Spec Pharm. 2014 Sep;20(9):895-903. PMID: 25166288
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25166288
メトホルミン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンと心不全の関連を検討した後ろ向きコホート研究。Medicaidのデータより6,271人が解析対象。メトホルミンに比べて、ロシグリタゾンではリスク増加したが、ピオグリタゾンでは差が見られなかった。

Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Dec;24(12):1259-70. PMID: 26376779
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26376779
ロシグリタゾン、ピオグリタゾンのRCT、観察研究のメタ分析。ピオグリタゾンのうっ血性心不全NNHは11[6〜403]

[単一のRCTで示唆された有害アウトカムとその後のRCT]
これまでの研究を俯瞰してみると、ロシグリタゾンのリスクはもはや明らかな印象だが、ピオグリタゾンと心不全リスクは2005年のPROACTIVEを引きずっているように思われる。観察研究やPROACTIVEを除外した解析では心不全リスクは明確には増加していないことからも、この仮説は支持されるのではないか。

ただ、注意が必要なのは、PROACTIVE以降、ピオグリタゾンのトライアルでは心不全という有害アウトカムに対して、倫理的な観点から様々な配慮がなされているであろうことが推測される。

PROACTIVEでも、一部の心不全患者は除外基準となっていたが、近年報告されたピオグリタゾンの大規模ランダム化比較試験IRIS Trial [N Engl J Med. 2016 Apr 7;374(14):1321-31. PMID: 26886418]でも、「We also excluded patients withNew York Heart Association class 3 or 4 heart failure or class 2 heart failure with a reducedejection fraction」となっている。
ちなみにこの研究では心不全に有意な差はついていない。

[DPP4阻害薬と心不全]
DPP4阻害薬と心不全リスクも同様な考察が可能だと思われる。SAVOR-TIMI 53 で示唆されたサキサグリプチンの心不全による入院リスクはその後の研究を見ていくと、ピオグリタゾンの心不全リスクとよく似た経過を示唆する。

[SAVOR-TIMI 53:N Engl J Med. 2013 Oct 3;369(14):1317-26 PMID: 23992601]
hospitalized for heart failure (3.5% vs. 2.8%; hazard ratio, 1.27; 95% CI, 1.07 to 1.51)

[Cardiovasc Ther. 2014 Apr 21.PMID: 24750644]
メタ分析:statistically significant increase in heart failure outcomes (n = 39,953, RR = 1.16, 95% CI 1.01-1.33, P = 0.04).

[Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2014 Jul;24(7):689-97. PMID: 24793580]
メタ分析:The overall risk of acute heart failure was higher in patients treated with DPP4i in comparison with those treated with placebo/active comparators (MH-OR: 1.19[1.03; 1.37]; p = 0.015).

[Lancet. 2015 May 23;385(9982):2067-76 PMID: 25765696]
メタ分析alogliptin did not increase the risk of heart failure outcomes.

[Eur Heart J. 2015 Sep 21;36(36):2454-62 PMID: 26112890]
コホート研究the use of DPP-4i was associated with a reduced risk of HHF when compared with sulphonylureas.

[Diabetes Care. 2016 Jan 6. pii: dc150764. [Epub ahead of print] PMID: 26740636]
コホート研究there was no association between hHF, or other selected cardiovascular outcomes, and treatment with a DPP-4i relative to SU or treatment with saxagliptin relative to sitagliptin.

[BMJ. 2016 Feb 17;352:i610. PMID: 26888822]
メタ分析he relative effect of DPP-4 inhibitors on the risk of heart failure in patients with type 2 diabetes is uncertain

[JAMA Cardiol. Published online April 13, 2016. doi:10.1001/jamacardio.2016.0103]
RCT二次解析Sitagliptin use does not affect the risk for hHF in T2DM,

[Ann Intern Med. 2016 Apr 26. [Epub ahead of print]PMID: 27110660]
higher risk for hHF was not observed in users of saxagliptin or sitagliptin compared with other selected antihyperglycemic agents.10660]

DPP4阻害薬の心不全リスクはアログリプチンのEXAMIN、シタグリプチンのTECOSでも示されていないことから、関連性はかなり低い印象がある。もちろんチアゾリジンという同一クラス薬剤でもロシグリタゾンとピオグリタゾンにはリスクの程度に差異がある可能性が高いことから、サキサグリプチンも同様に安全とは言い切れないのだが、SAVOR-TIMI 53以降、一部のメタ分析でリスクの上昇が示唆されたのは出版バイアスの影響も大きいだろう。

[仮説の生成と消滅可能性]
単一の大規模RCTでなにがしかの有害イベントリスク上昇が示唆されると、その後のメタ分析の結果はやはりバイアスがかかってしまうことはあると思われる。しかし、その有害アウトカムに対する倫理的配慮は後続の研究における有害事象検出にバイアスをかけることになるかもしれない。整理しよう。

■単一のランダム化比較試験で有害アウトカムが示唆された場合
①それが一次アウトカムであれば、その有害性をかなり重視する。
②それが一次アウトカムでなければ、その有害性を軽視しない。
・サンプルサイズの観点から、少なくとも観察研究やメタ分析で示唆された有害性よりもインパクトは強い。
・しかしながらあくまでも仮説生成であり、その後の研究をフォローする必要性があり、重要視する程度は後続研究の結果により、変動して行く

■単一のランダム化比較試験で有害アウトカムが仮説生成した場合
①後続のメタ分析では、当該RCTが解析に含まれているか注意する。
・当該RCTが解析に含まれている場合、異質性を評価する
・異質性が低い場合、リスクを重要視する程度は高くなる。
②後続のRCTでは倫理的観点から当該有害事象への配慮がなされているケースがある
・後続のRCTの除外基準などを当該RCTと比較検討すべき
・RCTのみならず、観察研究も横断的に俯瞰する必要がある。

真のリスク(そんなものがあればだが)はどの程度か、やはり継続して論文を読み続けるしかない。仮説生成された有害アウトカムについては、その時点で軽視することなく、ただ、その後の論文結果にバイアスが入り込む余地があること、そして、仮説は常に消滅可能性を有するという事も意識したい。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]DPP4阻害薬と心不全リスク

Toh S.et.al. Risk for Hospitalized Heart Failure Among New Users of Saxagliptin, Sitagliptin, and Other Antihyperglycemic Drugs: A Retrospective Cohort Study. Ann Intern Med. 2016 Apr 26. [Epub ahead of print] PMID: 27110660
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27110660

[背景]近年の市販後調査では、DPP4阻害薬と心不全による入院の関連は矛盾しており、糖尿病治療薬の安全性についての懸念を生み出している。この研究では後ろ向きコホート研究でサキサグリプチンおよび、シタグリプチンの新規使用と心不全の関連を検討した。

[方法]米国FDAの健康システムデータ及び18の健康保険データを用いた解析。18歳以上の2型糖尿病患者が対象となった。解析対象者はサキサグリプチン、シタグリプチン、ピオグリタゾン、第2世代SU剤、長時間型インスリンを使用していた。評価項目は心不全による入院とした。

[結果]サキサグリプチンで治療を受けたのは78 553 人、シタグリプチンで治療を受けたのは98 124人で、1剤以上の比較に関して平均7~9か月の治療データを入手した。DPP4阻害薬は他の糖尿病治療薬にくらべて、心不全リスクは高くなかった。疾患リスクスコアによるハザード比はサキサグリプチン対シタグリプチンで0.83 (95% CI, 0.70 to 0.99)、サキサグリプチン対ピオグリタゾンで0.63 (CI, 0.47 to 0.85)、サキサグリプチン対SU剤で 0.69 (CI, 0.54 to 0.87)、サキサグリプチン対インスリンで0.61 (CI, 0.50 to 0.73) であった。

同様に、シタグリプチン対ピオグリタゾン0.86 (CI, 0.77 to 0.95) 、シタグリプチン対
インスリン0.71 (CI, 0.64 to 0.78) 出会った。1;1の傾向スコアマッチング解析でも同様であった。結果はまた心血管疾患の有無でのサブ解析でも同様であった。

[結論]研究限界として残渣交絡や短い追跡期間が挙げられるが、この大規模コホートにおいて、心不全リスク増加は、他の糖尿病治療薬に比べてサキサグリプチンやシタグリプチンで観察されなかった。

[コメント]この手の解析も出尽くした感がある。結局SVOR-TIMI53での示唆にとどまるのか。

[文献]統合失調症に対するピオグリタゾン増強療法(ランダム化比較試験PMID: 26856695)

Iranpour N.et.al. The effects of pioglitazone adjuvant therapy on negative symptoms of patients with chronic schizophrenia: a double-blind and placebo-controlled trial. Hum Psychopharmacol. 2016 Mar;31(2):103-12. PMID: 26856695
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26856695

[目的]統合失調症の陰性症状における、炎症、酸化ストレス、代謝異常はその病態生理根拠の中心的役割を担っているが、これらの症状に対する有望な薬理学的選択肢を洞察することになった。ピオグリタゾンは抗炎症作用、抗酸化作用を有する糖尿病治療薬である。この研究は統合失調症の陰性症状を軽減するためにリスペリドンの補助療法としてのピオグリタゾンの有効性を検討した。

[方法]慢性的な統合失調症患者40人を対象としたランダム化比較試験である。リスペリドン+ピオグリタゾン30㎎/日、リスペリドン+プラセボにランダム化し8週間の治療を行った。患者の症状と有害イベントは研究開始時、2.4.6.8.週目で行われた。この研究の一次アウトカムはPANSS negative subscale scoresの低下度の両群差であった。

(※)PANSS (Positive and Negative Syndrome Scale)陽性・陰性症状評価尺度
主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的として,Kay ら(1991)によって作成された評価尺度である。BPRS簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)の18項目を含む30項目で構成されており,その内訳は陽性尺度7項目,陰性尺度7項目,それに総合精神病理尺度16項目からなっている。

[結果]ピオグリタゾングループではPANSS negative subscale scoresがプラセボよりも有意に改善(p < 0.001)。PANSS total scoresも有意に改善した。(p = 0.01)統合失調症の陰性症状を低減させるのに増強療法としてピオグリタゾンの有効性を示唆。

[文献/考察]死を迎える場所について-死の差別化思想-(コホート研究PMID: 25821408他)

Murakami N.et.al. Going back to home to die: does it make a difference to patient survival? BMC Palliat Care. 2015 Mar 19;14:7. PMID: 25821408
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25821408

[背景]癌における終末期では多くの人が自宅で過ごしたいと願う。しかしながら、自宅において提供される医療は生存に対するネガティブな影響を及ぼすのではないかという懸念がある。この研究は、入院ケアを受けているがん患者と在宅ケアを受けているがん患者で、生存期間に差があるかどうかを調査したものである。

[方法]2007年~2012年に、日本の一般病院の緩和ケアチームから紹介を受けた後、190人のがん患者のケアを受けた場所、生存期間を後ろ向きに調査した。研究対象患者は、死亡するまで病院で緩和ケアを受ける入院ケアグループ、患者宅において、緩和ケアチームと連携した医師により緩和ケアを受ける在宅ケアグループに層別化した。ケアを受けた場所、生存期間、年齢、性別、化学療法の既往、PS(パフォーマンスステータス:全身状態指標)などの患者背景は電子医療記録より入手し、傾向スコアマッチングによりマッチング後に解析された。

[結果]
傾向スコアで調整後の生存中央値は在宅ケアグループ67日(69人)で入院ケアグル―プの33日(69人)よりも有意に長かった。(P=0.0013)Cox比例ハザードモデルによる解析ではケアを受ける場所が、共変量調整後も生存期間の主要な要素であることが明らかとなった。

[結論]この研究では、在宅ケアが生存を短くさせてしまうというような一般的な懸念にエビデンスは無いと言いうことを示唆している。より多くの予後因子を含むコホートでの結果を確認する必要がある。

[コメント]2016年にも類似論文が出ている。
Hamano J.ey.al. Multicenter cohort study on the survival time of cancer patients dying at home or in a hospital: Does place matter? Cancer. 2016 May 1;122(9):1453-60. PMID: 27018875

簡単に目を通しておこう。研究デザインはThis multicenter, prospective cohortとなっており、内的妥当性は今回紹介した論文よりも高い印象。日本人の末期がん患者2426人を recruited、最終解析は2069 人。1582 receiving hospital-based palliative care and 487 receiving home-based palliative care.となっている。

生存期間は
①予後が数日の患者群
在宅グループで、estimated median survival time, 13 days [95% confidence interval (CI), 10.3-15.7 days] 、入院グループで 9 days [95% CI, 8.0-10.0 days]
②予後が数週の患者群
在宅グループで36 days [95% CI, 29.9-42.1 days] 、入院グループで29 days [95% CI, 26.5-31.5 days]; P = .007)
③予後が数か月の患者群
No significant difference was identified in the months' prognosis group.
となっている。

つまり、予後がある程度見込める患者群では、在宅、入院で明確な差はない。在宅ケアで生存期間が長くなるというようなことはあまり明確ではないが、在宅だから生存期間が短くなるということでもないようだ。なお、死亡に関して、在宅、入院でのadjusted models HRは 0.87; 95% CI, 0.77-0.97とわずかに在宅でリスクが低い。

さて、ここでもう少し全体的なことを考えてみたい。終末期がん患者において、真のアウトカムは生存期間でよいのだろうか。もちろん在宅ケアの場合、同居家族や介護者の想いも重要だ。100歳の末期がん患者を支える70歳の介護者。生存期間が延びるということが、この2人の関係にどのような影響を及ぼすのか、そういった想像力は必要だろう。

今回紹介した論文のイントロダクションを少し見てみよう。For cancer patients, dying in a preferred place is one of the most important determinants of quality of life (QOL)と記載があり引用文献も4つけられている。つまり、がん患者にとって、死を迎える場所は、QOLを決定する重要な要素の一つと言うわけなのだが…。意識のはっきりした患者ではそうかもしれない。癌患者は終末期と言えど、死の直前まで意識がはっきりしていることは多々ある。そういった状況では、家族とのコミュニケーション等の観点から良い面もあるのかもしれない。

nationwide bereaved family survey revealed that among all patients dying of cancer, around 31% wanted to die at homeと記載があるように癌患者においては在宅での死を希望する者は決して少なくない。ただ、the actual figure of cancer patient home deaths during the last decade in Japan was less than 10%と言うわけで、これだけ見ると癌患者の希望がかなえられていないこともあるのだろう。

これら一連の研究の前提として、やはり入院加療では手厚い医療が受けられるため、生存ベネフィットが大きいというようなイメージがあり、またそこになにがしかの「価値」を見出しているということはあるだろう。研究背景として、在宅では生存が短くなるのではないかという懸念があるのではないか…。抄録の背景にも「there is concern that medical care provided at home may negatively affect survival.」と書かれている。生存期間が長いことが良いという前提の下での研究であることはもはや疑いようもないだろう。これはある意味で「死の差別的思想」である。

末期がん患者において「生存」には価値がある、という認識はひとつの思想であるが、本来「死」にも価値がある、という認識と等価ではないか。どんな生き方にも価値がある。死を迎えるというその仕方においても絶対的に正しいというようなものは、本来存在しない。

情報の批判的吟味はいくらでも可能だ。在宅で死を迎えることのできるような患者は入院患者との潜在的なリスク因子が異なるだろうと推測される。確かに傾向スコアによる補正がなされているランダム化比較試験ではないのである。また、生存期間中央値に統計的有意な差があると言うのだが、どうだろうか。統計的な有意差検定は世界を有意な差がある、なしのように明確に2つに区分する。しかし、個別の認識の問題に還元した時に、本質的な意味をなさない。つまり、統計的有意な世界の存在としての「ある」、「なし」というのは、僕たちには直接アクセスできない世界観である。現実には有意かもしれないし、有意ではないかもしれない曖昧な世界を認識しているに過ぎない。自宅で死を迎えようが、病院で死を迎えようが、まあそれはそれぞれで良いと思う。どのような死に方に価値があるのか問うのをやめよ。それは患者やその家族を取り巻く、多種多様な価値観で判断されて良い。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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有害事象はインパクトがある。しかしそれだけが独り歩きする可能性がある。「出来事」は常に生成し、消滅を繰り返す流動的なものである。永続性を有するのか否か、それはエビデンスを時系列で追っていくしかない。薬剤の効果を僕たちは常に暫定的にしか知ることができない。それをあらためて知ることが必要だ。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Apr.27;2(66)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
- STOPP/STARTクライテリアversion2-

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以下は、2015年に改訂されたSTOP、STARTクライテリアの全訳です。日本語訳に加えて、原文を併記しています。二次利用の際は必ず原文をご確認ください。なお誤訳などございましたら、ツイッター等(@syuichiao)でご一報いただけるとありがたいです。)

原著:O'Mahony D.et.al. STOPP/START criteria for potentially inappropriate prescribing in older people: version 2. Age Ageing. 2015 Mar;44(2):213-8 . PMID: 25324330 Supplementary Data3,4
翻訳:青島周一

Screening Tool of Older Persons’ Prescriptions (STOPP) version 2.
STOPPクライテリア version2.


The following prescriptions are potentially inappropriate to use in patients aged 65 years and older.
以下の処方は65歳以上の高齢者において潜在的に不適切である。

Section A: Indication of medication
セクションA:薬剤適応


1. Any drug prescribed without an evidence-based clinical indication.
1.臨床適用に関してエビデンスの無いすべての薬剤

2. Any drug prescribed beyond the recommended duration, where treatment duration is well defined.
2.治療期間が明確に定義されている、推奨期間を超えて処方されている薬剤

3. Any duplicate drug class prescription e.g. two concurrent NSAIDs, SSRIs, loop diuretics, ACE inhibitors, anticoagulants (optimisation of monotherapy within a single drug class should be observed prior to considering a new agent).
3.重複薬剤クラスの処方(例えば、NSAIDs、SSRI、ループ利尿薬、ACE阻害薬、抗凝固薬[単一クラス薬剤での単剤療法最適化は、新たな薬剤を検討する前に熟慮されるべきである]

Section B: Cardiovascular System
セクションB:心血管システム


1. Digoxin for heart failure with normal systolic ventricular function (no clear evidence of benefit)
1.心室収縮機能が正常な心不全に対するジゴキシン(ベネフィットを示唆した明確なエビデンスなし)

2. Verapamil or diltiazem with NYHA Class III or IV heart failure (may worsen heart failure).
2.NYHAクラスⅢもしくはⅣの心不全に対するベラパミルもしくはジルチアゼムの投与(心不全悪化の懸念)

3. Beta-blocker in combination with verapamil or diltiazem (risk of heart block).
3.ベラパミルもしくはジルチアゼムと併用してβ遮断薬の投与(房室ブロックのリスク)

4. Beta blocker with bradycardia (< 50/min), type II heart block or complete heart block (risk of complete heart block, asystole).
4.除脈(< 50/min),や、二度房室ブロック、完全房室ブロックを有する患者へのβ遮断薬投与(完全房室ブロック、心停止の危険性あり)

5. Amiodarone as first-line antiarrhythmic therapy in supraventricular tachyarrhythmias (higher risk of side-effects than beta-blockers, digoxin, verapamil or diltiazem)
5.上室性頻拍性不整脈に対する抗不整脈両方の第一選択としてアミオダロン(β遮断薬やジゴキシン、ベラパミル、ジルチアゼムに比べて副作用リスクが高い)

6. Loop diuretic as first-line treatment for hypertension (safer, more effective alternatives available).
6.高血圧治療の第一選択としてループ利尿薬(より安全で効果のある降圧薬が使用可能)

7. Loop diuretic for dependent ankle oedema without clinical, biochemical evidence or radiological evidence of heart failure, liver failure, nephrotic syndrome or renal failure (leg elevation and /or compression hosiery usually more appropriate).
7.心不全、肝不全、ネフローゼ症候群、腎不全の臨床的、生化学的根拠、もしくは放射線的な根拠なしでの下肢浮腫に対するスープ利尿薬(より適切な治療として、下肢を挙げたり圧力を加えるなどの治療が考慮できる)

8. Thiazide diuretic with current significant hypokalaemia (i.e. serum K+ < 3.0 mmol/l), hyponatraemia (i.e. serum Na+ < 130 mmol/l) hypercalcaemia (i.e. corrected serum calcium > 2.65 mmol/l) or with a history of gout (hypokalaemia, hyponatraemia, hypercalcaemia and gout can be precipitated by thiazide diuretic)
8.現段階で明らかな低カリウム血症(例えば、血清カリウムが3.0 mmol/l未満)、低ナトリウム血症(例えば血清ナトリウムが< 130 mmol/l)、高カルシウム血症(例えば血清カルシウムが> 2.65 mmol/l)、痛風既往のある患者へのチアジド系利尿薬(低カリウム血症、低ナトリウム血症、高カルシウム血症及び痛風は、サイアザイド系利尿薬により悪化することがある)

9. Loop diuretic for treatment of hypertension with concurrent urinary incontinence (may exacerbate incontinence).
9.尿閉を有する高血圧患者へのループ利尿薬(尿閉が増悪する懸念あり)

10. Centrally-acting antihypertensives (e.g. methyldopa, clonidine, moxonidine, rilmenidine, guanfacine), unless clear intolerance of, or lack of efficacy with, other classes of antihypertensives (centrally-active antihypertensives are generally less well tolerated by older people than younger people)
10.中枢作動型の降圧薬(メチルドパ、クロニジン、moxonidine, rilmenidine,グアンファシン)を、他の降圧薬で効果が得られていない、もしくは忍容性が悪い状態以外での使用(中枢作動型の降圧薬は、一般に若年層よりも高齢者で忍容性が低い)

11. ACE inhibitors or Angiotensin Receptor Blockers in patients with hyperkalaemia.
11.高カリウム血症のある患者に対するACE阻害薬、もしくはARBの使用

12. Aldosterone antagonists (e.g. spironolactone, eplerenone) with concurrent potassium-conserving drugs (e.g. ACEI’s, ARB’s, amiloride, triamterene) without monitoring of serum potassium (risk of dangerous hyperkalaemia i.e. > 6.0 mmol/l – serum K should be monitored regularly, i.e. at least every 6 months).
12.血清カリウム値のモニタリングをしていない状況下で、カリウム保持性の薬剤(ACE阻害薬、ARB,、amiloride、トリアムテレン)に併用してアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)の使用

13. Phosphodiesterase type-5 inhibitors (e.g. sildenafil, tadalafil, vardenafil) in severe heart failure characterised by hypotension i.e. systolic BP < 90 mmHg, or concurrent nitrate therapy for angina (risk of cardiovascular collapse)
13.低血圧(収縮期血圧< 90 mmHg)を特徴とするような重度の低血圧患者や、現在、狭心症で硝酸製剤による治療を受けている患者へのホシホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル)の投与(心血管虚脱のリスク)

Section C: Antiplatelet/Anticoagulant Drugs
セクションC:抗血小板/抗凝固薬


1. Long-term aspirin at doses greater than 160mg per day (increased risk of bleeding, no evidence for increased efficacy).
1.1日160mgを超えるようなアスピリンの長期投与(出血リスクの増加、及び、効果が増すというエビデンスなし)

2. Aspirin with a past history of peptic ulcer disease without concomitant PPI (risk of recurrent peptic ulcer ).
2.消化性潰瘍の既往がある患者にPPIの併用なしにアスピリン投与(消化性潰瘍再発リスクの増加)

3. Aspirin, clopidogrel, dipyridamole, vitamin K antagonists, direct thrombin inhibitors or factor Xa inhibitors with concurrent significant bleeding risk, i.e. uncontrolled severe hypertension, bleeding diathesis, recent non-trivial spontaneous bleeding) (high risk of bleeding).
アスピリン、クロピドグレル、ジピリダモール、ビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬を出血リスクの高い患者(重度のコントロール不良高血圧、出血傾向のある状態、最近の出血既往)(出血リスク増加の懸念)

4. Aspirin plus clopidogrel as secondary stroke prevention, unless the patient has a coronary stent(s) inserted in the previous 12 months or concurrent acute coronary syndrome or has a high grade symptomatic carotid arterial stenosis (no evidence of added benefit over clopidogrel monotherapy)
4.過去12か月以内に冠動脈ステント留置があるか急性冠症候群合併か高度の症候性頚動脈狭窄を有している場合を除き、脳卒中の二次予防にアスピリンにクロピドグレルを上乗せ投与(クロピドグレル単独療法を超えるベネフィットは不明)

5. Aspirin in combination with vitamin K antagonist, direct thrombin inhibitor or factor Xa inhibitors in patients with chronic atrial fibrillation (no added benefit from aspirin)
5.慢性心房細動患者へのアスピリンとビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬の併用(アスピリンへの追加ベネフィットなし)

6. Antiplatelet agents with vitamin K antagonist, direct thrombin inhibitor or factor Xa inhibitors in patients with stable coronary, cerebrovascular or peripheral arterial disease (No added benefit from dual therapy).
6.安定した冠動脈、脳血管、末梢血管疾患を有する患者へのビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬と抗血小板薬の併用(2剤療法の追加ベネフィットなし)

7. Ticlopidine in any circumstances (clopidogrel and prasugrel have similar efficacy, stronger evidence and fewer side-effects).
7.あらゆる状況でのチクロピジン使用(クロピドグレル、ラスグレルとほぼ同等の効果であり、これら薬剤は効果に関して強いエビデンスがあり、さらに副作用も少ない)

8. Vitamin K antagonist, direct thrombin inhibitor or factor Xa inhibitors for first deep venous thrombosis without continuing provoking risk factors (e.g. thrombophilia) for > 6 months, (no proven added benefit).
8.6か月以上続き、誘発されるおそれのある危険因子(血栓性素因)のない深部静脈血栓症に対してビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬の使用(追加ベネフィットなし)

9. Vitamin K antagonist, direct thrombin inhibitor or factor Xa inhibitors for first pulmonary embolus without continuing provoking risk factors (e.g. thrombophilia) for > 12 months (no proven added benefit).
9.12か月以上続き、誘発されるおそれのある危険因子(血栓性素因)のない、肺血栓塞栓症患者へのビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬の使用(追加ベネフィットなし)

10. NSAID and vitamin K antagonist, direct thrombin inhibitor or factor Xa inhibitors in combination (risk of major gastrointestinal bleeding).
NSAIDsとビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬の使用の併用(消化管出血のリスク)
11. NSAID with concurrent antiplatelet agent(s) without PPI prophylaxis (increased risk of peptic ulcer disease)
11.予防的PPIの使用なしにNSAIDsと抗血小板薬の併用(消化性潰瘍リスク増加)

Section D: Central Nervous System and Psychotropic Drugs
セクションD:中枢神経系及び向精神薬


1. TriCyclic Antidepressants (TCAs) with dementia, narrow angle glaucoma, cardiac conduction abnormalities, prostatism, or prior history of urinary retention (risk of worsening these conditions).
1.狭隅角緑内障、心臓伝導系の異常、前立腺肥大症、尿閉の既往歴がある患者に対する、認知症患者に対する三環系抗うつ薬の使用(これら状態の悪化)

2. Initiation of TriCyclic Antidepressants (TCAs) as first-line antidepressant treatment (higher risk of adverse drug reactions with TCAs than with SSRIs or SNRIs).
2.うつ病の初期治療に三環系抗うつ薬を使用(SSRIやSNRIに比べて薬物有害反応リスクが高い)

3. Neuroleptics with moderate-marked antimuscarinic/anticholinergic effects (chlorpromazine, clozapine, flupenthixol, fluphenzine, pipothiazine, promazine, zuclopenthixol) with a history of prostatism or previous urinary retention (high risk of urinary retention).
3.前立腺肥大や尿閉既往を有する患者への中等度の抗ムスカリン/抗コリン作用を持つ精神系薬剤(尿閉リスク増加の懸念)

4. Selective serotonin re-uptake inhibitors (SSRI’s) with current or recent significant hyponatraemia i.e. serum Na+ < 130 mmol/l (risk of exacerbating or precipitating hyponatraemia).
4.最近もしくは現在において、低ナトリウム血症(血清ナトリウム< 130 mmol/l)の患者に対するSSRI使用(状態の悪化や、低ナトリウム血症治療薬を使用せねばならないリスク)

5. Benzodiazepines for ≥ 4 weeks (no indication for longer treatment; risk of prolonged sedation, confusion, impaired balance, falls, road traffic accidents; all benzodiazepines should be withdrawn gradually if taken for more than 4 weeks as there is a risk of causing a benzodiazepine withdrawal syndrome if stopped abruptly).
5.4週を超えるベンゾジアゼピン使用(長期治療に関するデータなし、鎮静、錯乱ふらつき、転倒、交通事故のリスク。4週以上使用されているすべてのベンゾジアゼピンは退薬症状のリスクがあり、一般的には脱処方は徐々に行われるべき。)

6. Antipsychotics (i.e. other than quetiapine or clozapine) in those with parkinsonism or Lewy Body Disease (risk of severe extra-pyramidal symptoms)
6.パーキンソン症候群やレビー小体型認知症に対する抗精神病薬(クエチアピン、クロザピンを除く)の使用(重度の錐体外路症リスク)

7. Anticholinergics/antimuscarinics to treat extra-pyramidal side-effects of neuroleptic medications (risk of anticholinergic toxicity),
7.神経遮断系の精神科用剤の副作用である錐体外路症に対する抗コリン薬/抗ムスカリン薬の使用

8. Anticholinergics/antimuscarinics in patients with delirium or dementia (risk of exacerbation of cognitive impairment).
8.認知症、せん妄患者への抗コリン薬/抗ムスカリン薬の使用(認知機能障害増悪リスク)

9. Neuroleptic antipsychotic in patients with behavioural and psychological symptoms of dementia (BPSD) unless symptoms are severe and other non-pharmacological treatments have failed (increased risk of stroke).
9.他の治療で反応が無いか、重度の症状を除き、BPSDに対する抗精神病薬の使用(脳卒中リスク増加)

10. Neuroleptics as hypnotics, unless sleep disorder is due to psychosis or dementia (risk of confusion, hypotension, extra-pyramidal side effects, falls).
10.睡眠障害が、精神病や認知症によるものでない限り、催眠薬としての神経遮断薬

11. Acetylcholinesterase inhibitors with a known history of persistent bradycardia (< 60 beats/min.), heart block or recurrent unexplained syncope or concurrent treatment with drugs that reduce heart rate such as beta-blockers, digoxin, diltiazem, verapamil (risk of cardiac conduction failure, syncope and injury).
11.永続的な除脈(< 60 beats/min.)既往、房室ブロック、再発性の原因不明の失神、β遮断薬や、ジゴキシン、ジルチアゼム、ベラパミルのような心拍数を減らす薬剤の使用患者に対するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用。(失神、外傷リスク)

12. Phenothiazines as first-line treatment, since safer and more efficacious alternatives exist (phenothiazines are sedative, have significant anti-muscarinic toxicity in older people, with the exception of prochlorperazine for nausea/vomiting/vertigo, chlorpromazine for relief of persistent hiccoughs and levomepromazine as an anti-emetic in palliative care ).
12.第一選択としてのフェノチアジン系薬剤。より安全で効果のある代替薬が存在するため(フェノチアジンは鎮静作用があるが、高齢者では有意な抗ムスカリン毒性を有する。ただし、嘔気/嘔吐/めまいに対するプロクロルペラジンの使用、持続的なしゃっくりに対するクロルプロマジンの使用、緩和ケアにおける制吐剤としてレボメプロマジンを使用することは除く)

13. Levodopa or dopamine agonists for benign essential tremor (no evidence of efficacy)
13.本態性新鮮に対するレボドパ。もしくはドパミンアゴニストの使用(効果に対する根拠なし)

14. First-generation antihistamines (safer, less toxic antihistamines now widely available).
14.1世代抗ヒスタミン薬の使用(安全で毒性の少ない抗ヒスタミン薬が使用可能)

Section E: Renal System. The following drugs are potentially inappropriate in older people with acute or chronic kidney disease with renal function below particular levels of eGFR (refer to summary of product characteristics datasheets and local formulary guidelines)
セクションE:腎臓系。以下の薬剤は、eGFRが基準レベル以下と言うような腎機能が低下している急性もしくは慢性腎臓病、高齢者に潜在的に不適切な薬剤である(詳細については個別ガイドラインを参照せよ)


1. Digoxin at a long-term dose greater than 125µg/day if eGFR < 30 ml/min/1.73m2 (risk of digoxin toxicity if plasma levels not measured).
1.eGFRが< 30 ml/min/1.73m2の患者にジゴキシン125μg/日の長期投与(もしジゴキシンの血中濃度をモニターしていない場合、ジゴキシン中毒リスクの懸念)

2. Direct thrombin inhibitors (e.g. dabigatran) if eGFR < 30 ml/min/1.73m2 (risk of bleeding)
2.eGFRが< 30 ml/min/1.73m2の患者に直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)の投与(出血リスク)

3. Factor Xa inhibitors (e.g. rivaroxaban, apixaban) if eGFR < 15 ml/min/1.73m2 (risk of bleeding)
3.eGFRが < 15 ml/min/1.73m2 の患者にXa因子阻害薬(リバロキサバン、アピキサバン)の投与(出血リスク)

4. NSAID’s if eGFR < 50 ml/min/1.73m2 (risk of deterioration in renal function).
4.eGFRが < 50 ml/min/1.73m2の患者にNSAIDsの投与(腎機能破壊のリスク)

5. Colchicine if eGFR < 10 ml/min/1.73m2 (risk of colchicine toxicity)
5.eGFRが< 10 ml/min/1.73m2の患者にコルヒチンの投与(コルヒチン中毒)

6. Metformin if eGFR < 30 ml/min/1.73m2 (risk of lactic acidosis).
6.eGFRが < 30 ml/min/1.73m2の患者にメトホルミンを投与(乳酸アシドーシスリスク)

Section F: Gastrointestinal System
セクションF:消化器系


1. Prochlorperazine or metoclopramide with Parkinsonism (risk of exacerbating Parkinsonian symptoms).
1.パーキンソン症候群に対するプロクロルペラジン及びメトクロプラミド(パーキンソン症候群悪化)

2. PPI for uncomplicated peptic ulcer disease or erosive peptic oesophagitis at full therapeutic dosage for > 8 weeks (dose reduction or earlier discontinuation indicated).
2.合併症のない消化性潰瘍もしくはびらん性逆流性食道炎に対してPPIを高用量、8週を超える投与(減量もしくはそれ以前の投与中止が示されている)

3. Drugs likely to cause constipation (e.g. antimuscarinic/anticholinergic drugs, oral iron, opioids, verapamil, aluminium antacids) in patients with chronic constipation where non-constipating alternatives are available (risk of exacerbation of constipation).
3.慢性便秘を有する患者への便秘を引き起こす可能性のある薬剤(抗ムスカリン/抗コリン薬、経口鉄剤、オピオイド、ベラパミル、アルミニウム制酸剤)

4. Oral elemental iron doses greater than 200 mg daily (e.g. ferrous fumarate> 600 mg/day, ferrous sulphate > 600 mg/day, ferrous gluconate> 1800 mg/day; no evidence of enhanced iron absorption above these doses).
4.1日200mgを超える経口鉄剤(フマル酸鉄>600mg/日、クエン酸鉄)>600mg/日、グルコン酸鉄>1800mg/日 鉄が吸収されるような明確な根拠なし)

Section G: Respiratory System
セクションG:呼吸器系

1. Theophylline as monotherapy for COPD (safer, more effective alternative; risk of adverse effects due to narrow therapeutic index).
1.CODP患者への単剤療法としてのテオフィリン(より安全で有効性の高い代替薬の存在。治療インデックスが狭いために有害事象リスクの可能性が高い)

2. Systemic corticosteroids instead of inhaled corticosteroids for maintenance therapy in moderate-severe COPD (unnecessary exposure to long-term side-effects of systemic corticosteroids and effective inhaled therapies are available).
2.中等度から重度のCOPD患者に対して、吸入ステロイドによる維持療法の代わりに全身性ステロイド投与(全身ステロイドの長期的な副作用への不必要な暴露、より効果的な吸入製剤が使用可能)

3. Anti-muscarinic bronchodilators (e.g. ipratropium, tiotropium) with a history of narrow angle glaucoma (may exacerbate glaucoma) or bladder outflow obstruction (may cause urinary retention).
3.閉塞隅角緑内障患者や尿閉患者に対する抗ムスカリンの気管支拡張薬(イプラトロピウム、チオトロピウム)の使用(緑内障や尿への悪化)

4. Non-selective beta-blocker (whether oral or topical for glaucoma) with a history of asthma requiring treatment (risk of increased bronchospasm).
4.治療が必要な喘息患者への非選択的β遮断薬(経口、局所、点眼)(気管支痙攣リスク)

5. Benzodiazepines with acute or chronic respiratory failure i.e. pO2 < 8.0 kPa ± pCO2 > 6.5 kPa (risk of exacerbation of respiratory failure).
5.急性、慢性の呼吸不全(pO2 < 8.0 kPa ± pCO2 > 6.5 kP)に対するベンゾジアゼピン(呼吸不全増悪リスク)

Section H: Musculoskeletal System
セクションH:筋骨格系


1. Non-steroidal anti-inflammatory drug (NSAID) other than COX-2 selective agents with history of peptic ulcer disease or gastrointestinal bleeding, unless with concurrent PPI or H2 antagonist (risk of peptic ulcer relapse).
1.消化性潰瘍や消化管出血の刈る患者に、PPIやH2受容体拮抗薬投与無で、COX2選択的阻害薬以外のNSAIDsを使用(消化性潰瘍再発リスク)

2. NSAID with severe hypertension (risk of exacerbation of hypertension) or severe heart failure (risk of exacerbation of heart failure).
2.重度の高血圧に対するNSAIDs(高血圧増悪リスク)、もしくは重度の心不全に対するNSAIDS(心不全増悪リスク)

3. Long-term use of NSAID (>3 months) for symptom relief of osteoarthritis pain where paracetamol has not been tried (simple analgesics preferable and usually as effective for pain relief)
3.変形性関節症に対する症状緩和を目的にアセトアミノフェンを試さずに3か月を超えるような長期のNSAIDs

4. Long-term corticosteroids (>3 months) as monotherapy for rheumatoid arthrtitis (risk of systemic corticosteroid side-effects).
4.関節リウマチに対する3か月を超えるステロイド単剤療法(全身ステロイドの有害事象リスク)

5. Corticosteroids (other than periodic intra-articular injections for mono-articular pain) for osteoarthritis (risk of systemic corticosteroid side-effects).
5.変形性関節症に対するステロイド(単関節痛に対する関節内注射を除く)(全身ステロイドの有害事象リスク)

6. Long-term NSAID or colchicine (>3 months) for chronic treatment of gout where there is no contraindication to a xanthine-oxidase inhibitor (e.g. allopurinol, febuxostat) (xanthine-oxidase inhibitors are first choice prophylactic drugs in gout).
6.キサンチンオキシダーゼ阻害薬(アロプリノール、フェブキソスタット)の禁忌が無いにも関わらず、痛風に対する3か月を超えるようなNSAIDsやコルヒチンの漫然投与。(キサンチンオキシダーゼ阻害薬は痛風治療の第一選択)

7. COX-2 selective NSAIDs with concurrent cardiovascular disease (increased risk of myocardial infarction and stroke)
7.心血管疾患を有する患者にCOX-2選択的阻害薬を投与(心筋梗塞、脳卒中リスクの増加)

8. NSAID with concurrent corticosteroids without PPI prophylaxis (increased risk of peptic ulcer disease)
8・予防的PPIの投与無に、NSAIDSとステロイドの併用(消化性潰瘍疾患リスクの増加)

9. Oral bisphosphonates in patients with a current or recent history of upper gastrointestinal disease i.e. dysphagia, oesophagitis, gastritis, duodenitis, or peptic ulcer disease, or upper gastrointestinal bleeding (risk of relapse/exacerbation of oesophagitis, oesophageal ulcer, oesophageal stricture)
9.最近の上部消化管疾患の(嚥下障害、食道炎、十二指腸炎、消化性潰瘍、消化管出血)既往がある患者に対する経口ビスホスホネート製剤(症状再燃、増悪リスク)

Section I: Urogenital System
セクションI:泌尿器系

1. Antimuscarinic drugs with dementia, or chronic cognitive impairment (risk of increased confusion, agitation) or narrow-angle glaucoma (risk of acute exacerbation of glaucoma), or chronic prostatism (risk of urinary retention).
1.認知症や慢性的な認知障害、閉塞隅角緑内障、慢性的な前立腺疾患に対する抗ムスカリン薬(症状増悪の懸念)

2. Selective alpha-1 selective alpha blockers in those with symptomatic orthostatic hypotension or micturition syncope (risk of precipitating recurrent syncope)
2.症候性起立性低血圧患者、排尿時失神のある患者への選択的α1阻害薬(失神再発リスク)

Section J. Endocrine System
セクションJ:内分泌系


1. Sulphonylureas with a long duration of action (e.g. glibenclamide, chlorpropamide, glimepiride) with type 2 diabetes mellitus (risk of prolonged hypoglycaemia).
1.2型糖尿病患者に対する長時間作用型のSU剤(グリベンクラミド、クロルプラミド、グリメピリド)(低血糖リスク)

2. Thiazolidenediones (e.g. rosiglitazone, pioglitazone) in patients with heart failure (risk of exacerbation of heart failure)
2.心不全を有する患者へのチアゾリジン(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)(心不全増悪リスク)

3. Beta-blockers in diabetes mellitus with frequent hypoglycaemic episodes (risk of suppressing hypoglycaemic symptoms).
3頻回の低血糖エピソードを有する糖尿病患者へのβ遮断薬(低血糖症状の誘発リスク)

4. Oestrogens with a history of breast cancer or venous thromboembolism (increased risk of recurrence).
4.乳癌や深部静脈血栓症の既往がある患者に対するエストロゲン(再発リスクの懸念)

5. Oral oestrogens without progestogen in patients with intact uterus (risk of endometrial cancer).
5.子宮がある患者に対して、プロゲステロンを併用せずにエストロゲンの投与

6. Androgens (male sex hormones) in the absence of primary or secondary hypogonadism (risk of androgen toxicity; no proven benefit outside of the hypogonadism indication).
6.原発性または続発性の性腺機能低下症が無い患者に対するアンドロゲン(男性ホルモン)の投与(アンドロゲン中毒の懸念)

Section K: Drugs that predictably increase the risk of falls in older people
セクションK:高齢者において転倒リスクが増加する可能性のある薬剤


1. Benzodiazepines (sedative, may cause reduced sensorium, impair balance).
1.ベンゾジアゼピン

2. Neuroleptic drugs (may cause gait dyspraxia, Parkinsonism).
2.抗精神薬

3. Vasodilator drugs (e.g. alpha-1 receptor blockers, calcium channel blockers, long-acting nitrates, ACE inhibitors, angiotensin I receptor blockers, ) with persistent postural hypotension i.e. recurrent drop in systolic blood pressure ≥ 20mmHg (risk of syncope, falls).
3.永続的な起立性低血圧を有する患者への血管作動性薬剤(α1受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬、硝酸徐放製剤、ACE阻害薬、ARB)(転倒、失神リスク)

4. Hypnotic Z-drugs e.g. zopiclone, zolpidem, zaleplon (may cause protracted daytime sedation, ataxia).
4.鎮静薬、Z-drugs(ゾピクロン、ゾルピデム、ザレプロン)

Section L: Analgesic Drugs
セクションL:麻薬関連薬


1. Use of oral or transdermal strong opioids (morphine, oxycodone, fentanyl, buprenorphine, diamorphine, methadone, tramadol, pethidine, pentazocine) as first line therapy for mild pain (WHO analgesic ladder not observed).
1.経口もしくは経皮で、強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン、ジアモルフィン、メタドン、トラマドール、ペチヂン、ペンタゾシン()を軽症の疼痛管理の第一選択として使用

2. Use of regular (as distinct from PRN) opioids without concomitant laxative (risk of severe constipation).
2.下剤なしでの継続的なオピオイド使用(重度の便秘リスク)

3. Long-acting opioids without short-acting opioids for break-through pain (risk of persistence of severe pain)
3.突出痛に対する短期作用型オピオイドなしに長期作用型オピオイドの使用

Section N: Antimuscarinic/Anticholinergic Drug Burden
セクションN:抗ムスカリン/抗コリン作動薬


Concomitant use of two or more drugs with antimuscarinic/anticholinergic properties (e.g. bladder antispasmodics, intestinal antispasmodics, tricyclic antidepressants, first generation antihistamines) (risk of increased antimuscarinic/anticholinergic toxicity)
抗ムスカリン/抗コリン作用を有する薬剤の2剤以上併用(過活動膀胱治療薬、腸管作動薬、三環系抗うつ薬、第1世代抗ヒスタミン薬)(抗ムスカリン/抗コリン毒性の増強)

Screening Tool to Alert to Right Treatment (START), version 2.
STARTクライテリア, version 2.

Unless an elderly patient’s clinical status is end-of-life and therefore requiring a more palliative focus of pharmacotherapy, the following drug therapies should be considered where omitted for no valid clinical reason(s). It is assumed that the prescriber observes all the specific contraindications to these drug therapies prior to recommending them to older patients.
高齢者の臨床状態が終末期で、薬物治療が緩和的なものにフォーカスしない限り、以下の薬剤を考慮すべき。

Section A: Cardiovascular System
セクションA:心血管系


1. Vitamin K antagonists or direct thrombin inhibitors or factor Xa inhibitors in the presence of chronic atrial fibrillation.
1.慢性心房細動患者に対するビタミンK拮抗薬、直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬の投与

2. Aspirin (75 mg – 160 mg once daily) in the presence of chronic atrial fibrillation, where Vitamin K antagonists or direct thrombin inhibitors or factor Xa inhibitors are contraindicated.
2.慢性心房細動患者に対して、ビタミンK拮抗薬または直接トロンビン阻害薬、Xa因子阻害薬が禁忌である場合、アスピリン 75-160mg/日の投与

3. Antiplatelet therapy (aspirin or clopidogrel or prasugrel or ticagrelor) with a documented history of coronary, cerebral or peripheral vascular disease.
3.冠動脈疾患、脳血管疾患、もしくは末梢動脈疾患を有する患者への抗血小板薬治療(アスピリン、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロール)

4. Antihypertensive therapy where systolic blood pressure consistently > 160 mmHg and/or diastolic blood pressure consistently >90 mmHg; if systolic blood pressure > 140 mmHg and /or diastolic blood pressure > 90 mmHg, if diabetic.
4.収縮期血圧>160mmHg、拡張期血圧>90mmHgの重度高血圧患者、糖尿病患者では収縮期血圧>140mmHg、拡張期血圧>90mmHgでの降圧療法

5. Statin therapy with a documented history of coronary, cerebral or peripheral vascular disease, unless the patient’s status is end-of-life or age is > 85 years.
5.終末期状態でない、もしくは85歳を超えない患者で、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患を有する場合のスタチン使用

6. Angiotensin Converting Enzyme (ACE) inhibitor with systolic heart failure and/or documented coronary artery disease.
6.収縮期心不全もしくは冠動脈疾患に対するACE阻害薬

7. Beta-blocker with ischaemic heart disease.
7.虚血性心疾患に対するβ遮断薬

8. Appropriate beta-blocker (bisoprolol, nebivolol, metoprolol or carvedilol) with stable systolic heart failure.
8.心不全に対する適切なβ遮断薬(ビソプロロール、ネビボロール、メトプロロール、カルベジロール)

Section B: Respiratory System
セクションB:呼吸器系

1. Regular inhaled 2 agonist or antimuscarinic bronchodilator (e.g. ipratropium, tiotropium) for mild to moderate asthma or COPD.
1.軽度~中等度の喘息、もしくはCOPDに対する定期的なβ2刺激薬吸入、あるいは抗ムスカリン作用を有する気管支拡張薬(イプラトロピウム、チオトロピウム)

2. Regular inhaled corticosteroid for moderate-severe asthma or COPD, where FEV1 <50% of predicted value and repeated exacerbations requiring treatment with oral corticosteroids.
2.中等度~重度の喘息もしくはCOPD患者で、FEV1.予測値<50%、繰り返し経口ステロイドを必要とする増悪既往のある患者に対する定期的な吸入ステロイド

3. Home continuous oxygen with documented chronic hypoxaemia (i.e. pO2 < 8.0 kPa or 60 mmHg or SaO2 < 89%)
3.慢性呼吸不全患者に対する在宅酸素療法(pO2 < 8.0 kPa or 60 mmHg or SaO2 < 89%)

Section C: Central Nervous System& Eyes
セクションC:中枢神経系、眼科


1. L-DOPA or a dopamine agonist in idiopathic Parkinson’s disease with functional impairment and resultant disability.
1.機能障害があるパーキンソン患者に対するL-DOPA製剤、ドパミンアゴニストの使用

2. Non-TCA antidepressant drug in the presence of persistent major depressive symptoms.
2.持続的な大うつの症状が見られる患者への三環系抗うつ薬以外の抗うつ薬

3. Acetylcholinesterase inhibitor (e.g. donepezil, rivastigmine, galantamine) for mild-moderate Alzheimer’s dementia or Lewy Body dementia (rivastigmine).
3.軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)もしくはレビー小体型認知症に対するリバスチグミン

4. Topical prostaglandin, prostamide or beta-blocker for primary open-angle glaucoma.
4.開放隅角緑内障患者に対するプロスタグランジン・プロスタミド・β遮断薬の点眼薬

5. Selective serotonin reuptake inhibitor (or SNRI or pregabalin if SSRI contraindicated) for persistent severe anxiety that interferes with independent functioning.
5.生活に影響を及ぼす持続的な重度の不安に対するSSRI(禁忌の場合はSNRI,プレガバリン)

6. Dopamine agonist (ropinirole or pramipexole or rotigotine) for Restless Legs Syndrome, once iron deficiency and severe renal failure have been excluded.
6.鉄欠乏や重度の腎不全を除外した、レストレッグス症候群に対するドパミンアゴニスト(ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン)

Section D: Gastrointestinal System
セクションD:消化器

1. Proton Pump Inhibitor with severe gastro-oesophageal reflux disease or peptic stricture requiring dilatation.
1.重症の逆流性食道炎や拡張を必要とする消化管狭窄に対するPPI使用

2. Fibre supplements (e.g. bran, ispaghula, methylcellulose, sterculia) for diverticulosis with a history of constipation.
2.便秘既往のある結腸憩室に対するファイバーサプリメント

Section E: Musculoskeletal System
セクションE:筋骨格系


1. Disease-modifying anti-rheumatic drug (DMARD) with active, disabling rheumatoid disease.
1.活動性、もしくは障害がある関節リウマチに対するDMARD

2. Bisphosphonates and vitamin D and calcium in patients taking long-term systemic corticosteroid therapy.
2. 長期にわたる全身性ステロイド内服患者に対するビスホスホネートとビタミンDとカルシウム製剤

3. Vitamin D and calcium supplement in patients with known osteoporosis and/or previous fragility fracture(s) and/or (Bone Mineral Density T-scores more than -2.5 in multiple sites).
3.骨粗鬆症あるいは過去の脆弱性骨折、骨密度低下(Tスコア -2.5を超える)患者に対してビタミンDとカルシウムサプリメントの投与

4. Bone anti-resorptive or anabolic therapy (e.g. bisphosphonate, strontium ranelate, teriparatide, denosumab) in patients with documented osteoporosis, where no pharmacological or clinical status contraindication exists (Bone Mineral Density T-scores -> 2.5 in multiple sites) and/or previous history of fragility fracture(s).
4.骨粗鬆症あるいは過去の脆弱性骨折、骨密度低下(Tスコア -2.5を超える)患者に対して、薬理学・臨床禁忌に該当しない場合、骨代謝薬(ビスホスホネート、ラネル酸ストロンチウム、テリパラチド、デノスマブ)の投与

5. Vitamin D supplement in older people who are housebound or experiencing falls or with osteopenia (Bone Mineral Density T-score is > -1.0 but < -2.5 in multiple sites).
5.骨密度が低下(sTスコア >-1.0、<-2.5)しており転倒歴があるか、外出しない患者に対してビタミンDサプリメントの投与
6. Xanthine-oxidase inhibitors (e.g. allopurinol, febuxostat) with a history of recurrent episodes of gout.
6.再発性の痛風既往がある患者に対するキサンチンオキシダーゼ阻害薬(アロプリノール(、フェブキソスタット)

7. Folic acid supplement in patients taking methotexate.
7.メトトレキサート内服中患者への葉酸投与

Section F: Endocrine System
セクションF:内分泌系


1. ACE inhibitor or Angiotensin Receptor Blocker (if intolerant of ACE inhibitor) in diabetes with evidence of renal disease i.e. dipstick proteinuria or microalbuminuria (>30mg/24 hours) with or without serum biochemical renal impairment.
1.糖尿病患者において、腎障害(顕性蛋白尿、微量アルブミン様尿:30mg/日以上、血液検査異常)有している場合、ACE阻害薬またはARB(ACE阻害薬が使用できない場合)の投与

Section G: Urogenital System
セクションG:泌尿器系

1. Alpha-1 receptor blocker with symptomatic prostatism, where prostatectomy is not considered necessary.
1.症候性で、、前立腺切除が適応とならない、前立腺症状に対するα1受容体遮断薬

2. 5-alpha reductase inhibitor with symptomatic prostatism, where prostatectomy is not considered necessary.
2.症候性で、前立腺切除が適応とならない、前立腺症状に対する5α還元酵素阻害薬

3. Topical vaginal oestrogen or vaginal oestrogen pessary for symptomatic atrophic vaginitis.
3.症候性の萎縮性膣炎への経膣エストロゲン軟膏もしくはエストロゲン添加ペッサリー

Section H: Analgesics
セクションH:麻薬関連


1. High-potency opioids in moderate-severe pain, where paracetamol, NSAIDs or low-potency opioids are not appropriate to the pain severity or have been ineffective.
1.アセトアミノフェン、NSAIDs、弱オピオイドでコントロール不良な中等度から重症の疼痛に対する強オピオイド

2. Laxatives in patients receiving opioids regularly.
2.定期的なオピオイド使用に下剤の併用

Section I: Vaccines
セクションI:ワクチン


1. Seasonal trivalent influenza vaccine annually
1.季節性インフルエンザワクチンの接種

2. Pneumococcal vaccine at least once after age 65 according to national guidelines
2.ガイドラインに従い、65歳以上の高齢者に対して少なくとも1回の肺炎球菌ワクチン接種


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]傾向スコアにより交絡補正し医療データベースを用いた観察研究で治療効果の推定は妥当なのか。(PMID: 26858277)

Hemkens LG.et.al. Agreement of treatment effects for mortality from routinely collected data and subsequent randomized trials: meta-epidemiological survey. BMJ. 2016 Feb 8;352:i493. PMID: 26858277
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26858277

[目的]死亡に対する治療効果にういて、規定どおりに収集された医療データをもちいた観察研究とその後に報告された同じ臨床疑問のランダム化比較試験の結果との差異を評価。

[デザイン]Meta-epidemiological survey

[データソース]2014年11月まで

[方法]解析に組み入れた医療データを用いた研究は2010年までに出版されたもので、交絡への対処として傾向スコアを用いており、死亡に対する介入効果をけんとうしたものであった。解析においては、同一のトピックに関する既報の臨床試験に先立って行われた観察研究のみを含めた。治療効果の方向性は、95%信頼区間、効果サイズ(オッズ比)について、観察研究とランダム化比較試験で比較した。観察研究とランダム化比較試験のすべてのペアで、相対オッズ比、サマリー相対オッズ比算出。サマリー相対オッズ比が1より大きい場合、観察研究のほうが死亡について良い結果を報告していることになる。(過大評価している)

[結果]16の観察研究と36のそれに続く同じ臨床課題のランダム化比較試験(17275人、835人が死亡)が解析に君入れられた。ランダム化比較試験の報告は、観察研究から中央値で3年であった。16の臨床課題のうち5つ(31%)で、観察研究とランダム化比較試で異なっていた。9つ(56%)の観察研究の95%信頼区間に、ランダム化比較試験の効果量が含まれていなかった。全体では、観察研究はその後のランダム化比較試験よりも死亡について31%結果を過大評価していた。(サマリー相対危険1.03~1.65)

[結論]医療データを用いた観察研究はその後に報告された同じ臨床課題のランダム化比較試験の結果と異なることがある。実質的に治療効果を過大評価している可能性が高い。誤った臨床判断を防ぐためにも注意が必要。

[コメント]有効性について検討した観察研究はあくまで仮説生成であることに注意すべき。害を検討したものは比較的重要視することが多いが、治療の検討にいて観察研究は仮説生成的と捉える、これが僕のスタンスではある。だからといってランダム化比較試験の結果が絶対的なものでもない。よのなか絶対的に正しいものなんてないし、解釈の仕方はそれぞれでもよいが、観察研究、RCT両方とも論文があるなら、両方読んだうえでいろいろ考えたい。

[文献]生活習慣改善プログラムの40年(観察研究PMID: 26932978)

Jousilahti P.et.al. Primary prevention and risk factor reduction in coronary heart disease mortality among working aged men and women in eastern Finland over 40 years: population based observational study. BMJ. 2016 Mar 1;352:i721. PMID: 26932978
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26932978

[目的]フィンランド東部の労働年齢、男女において、心血管死亡リスクの低下を示すことができるためには、どのくらい、喫煙や血清コレステロール、収縮期血圧などの主要な心血管疾患リスク因子を変化させれば良いのかを見積もる。人口ベース観察研究

[対象]フィンランド東部在住の30歳から59歳の34525人(national FINRISK studies)

[介入]一次予防のための心血管リスク因子変容プログラム

[評価項目]心血管疾患による死亡の実測値と予測値(年齢により標準化)予測変化値は、リスク因子データ(1972年から5年ごとに行われた9回のサーベイに基づきデータを入手)を用いてロジスティック回帰分析により見積もった。死亡の実測値はNational Causes of Death Register.よりデータを入手。

[結果]40年間の間に、3つの主要な心血管リスク因子は血清コレステロール値のわずかな上昇を除き、低下していた。1969-1972年から2012年にかけて、35~64歳の住民は心血管疾患は男性82%、女性84%減少、していた。研究開始から10年で、3つのリスク因子の変化が総死亡の減少に寄与していた。1980年代中頃から、予測値よりも大きな死亡減少が観察された。直近10年間において、死亡の減少の約3分の2(男性69%、女性66%)は3つのリスク因子のの変化によるもので、残る3分の1がその他の要因であることが示された。

[結論]心血管疾患による死亡や疾患の負担の減少は、集団ベースの一次予防プログラムにより達成することができる。ハイリスク患者や冠動脈疾患の急性イベントの二次予防についても、追加のベネフィットが得られる可能性がある。

[コメント]個人単位の疫学的研究ではなく集団を観察したいわゆる生態学的研究に近いものであろうか。この研究では40年間にわたる一次予防プログラムの効果を平均的なデータと比較し、死亡の実測値と予測値を比較しているようだ。介入効果を検討する研究デザインとしてはその内的妥当性が高いと言えるかどうか…。今後コホート研究や介入研究での結果が待たれるが、これほど長期間観察するのはなかなか難しいだろう。

[文献]米国におけるHbA1c過剰測定の実態とその影響(コホート研究PMID: 26646052)

McCoy RG.et.al. HbA1c overtesting and overtreatment among US adults with controlled type 2 diabetes, 2001-13: observational population based study. BMJ. 2015 Dec 8;351:h6138. PMID: 26646052
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26646052

[背景]成人の2型糖尿病患者においてHbA1c過剰測定の影響について検討する。

[方法]2001年~2013年における米国の商用保険データを含む診療報酬請求データベースを後ろ向きに解析。研究対象者は18歳以上で、24か月のHbA1cが7.0%未満と安定している2型糖尿病患者であった。またインスリンを使用しておらず、重度の低血糖、高血糖が無く、さらに妊娠していない人が対象となった。

HbA1c測定はインデックス測定から24か月以内の頻度とし、ガイドライン推奨の年2回以下、年3~4回、年に5回以上の過剰測定の3つのカテゴリに層別化した。また測定から3か月後と3か月前の治療レジメンの変化を比較した。

[結果]31545人(平均58歳、平均インデックスHbA1c6.2%)が解析対象となった。ガイドライン推奨を超える測定頻度である、年に5回以上の測定は6%であり、3~4回は55%であった。糖尿病薬の追加やインスリン導入などの治療強化は年5回以上測定で13%、3~4回で9%、2回以下では7%となっており、2回以下に比べて5回以上では治療強化に有意に関連した。(オッズ比1.35[95%信頼区間1.22~1.50])

[結論] 2型糖尿病患者の60%以上が推奨回数以上のHbA1c測定検査を受けており、これは過剰な治療強化をもたらす可能性がある

[コメント]頻回のHbA1cの測定により2型糖尿病患者の真のアウトカムが改善するかは不明だ。一時期、薬局店頭での簡易血糖検査が話題となったが、まあ少なくとも年3回以上行うべきではないだろう。ああいった取り組みは対象者を限定すべきとはこれまでにも、いろいろなところで述べてきたので、もうコメントはしないでおこう。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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STOPP/STARTクライテリアが改訂されていた。Version1に比べるとやや細かくなり、START項目も増えたような印象がある。あまりSTARTしたくない薬剤もあり、やはり重要なのは個別にレビューしなくてはならないだろうとおもう。ただ、Version2を用いた介入研究の結果に注目したいところ。個人的な印象ではあるが、クライテリアのスクリーニング能力として、感度が高い印象である。該当した薬剤が全て不適切ではない可能性もあり注意したい。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Apr.20;2(65)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-80歳を超える高齢者のスタチン療法-

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[introduction]
一般的にはスタチン系薬剤のベネフィットは一次予防、二次予防についてほぼ確立しているように思われる。〔青島周一.薬局.2016.67(1) .72-76〕

しかしながら高齢者を対象とした研究はそれほど多くはない。特に80歳を超える高齢者に対する脂質低下療法のRCTは2014年時点で存在していない。
〔JAMA. 2014 Sep 17;312(11):1136-44. PMID: 25226479〕

75歳から80歳の高齢者を対象にしたRCTや観察研究の結果から、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の二次予防、もしくは糖尿病患者におけるスタチンの使用は推奨されているものの、高齢者では中高年層にくらべて、残された余命は相対的に短く、予防的薬剤であるスタチンの薬剤効果は熟慮する必要があろう。当然ながら総死亡だけを真のアウトカムとすることはできず、薬剤のリスクベネフィットは多種多様な価値観の中で検討される必要がある。

[スタチンの一次予防効果]
高齢者を対象にスタチンの一次予防効果を検討した主な研究には以下のものがある。

・J Am Coll Cardiol. 2013 Dec 3;62(22):2090-9. PMID: 23954343
[RCTメタ分析] 心筋梗塞や脳卒中を減らす可能性があるものの、総死亡や心血管死亡に関しては明確な差が見られず。

・Drugs Aging. 2015 Aug;32(8):649-61. PMID:26245770
[RCTメタ分析] 主要な心血管イベント(複合)を減らすが、致死的心筋梗塞、脳卒中、総死亡に関しては明確な差が見られず。

・BMJ. 2015 May 19;350:h2335. PMID: 25989805
[コホート研究]脳卒中は低下傾向、冠動脈疾患については不明

そもそも日本人におけるスタチンの一次予防効果はMEGAstudyを見てもかなりあいまいである。余命が相対的に少ない高齢者となれば、総死亡や心血管死亡に差が出ないのは当たり前のような気もする。同様にイベントについても高齢になるほど、その恩恵を受けることは難しくなるだろう。糖尿病などイベントハイリスク者を除き、高齢者の一次予防にスタチンの投与は推奨できない印象である。

[スタチンの二次予防効果]
高齢者において、二次予防のためのスタチンをいつまで続ければ良いのかを考えていくのは難しい。その根拠論文は以下の通り。

・J Am Coll Cardiol. 2008 Jan 1;51(1):37-45. PMID: 18174034
[RCTメタ分析]
9件のランダム化比較試験19569人が解析対象。元論文は全て2重盲検ランダム化比較試験。ITT解析は1RCTのみで行われていなかったが、7研究で追跡率95%を達成。主な結果(相対危険)[95%信頼区間]とNNTをまとめよう

総死亡:0.78 [0.65,~0.89]NNT28
心血管死亡:0.70[0.53, 0.83) NNT34
非致死的心筋梗塞:0.74 [0.60~0.89] NNT38
血行再建術:0.70[0.53~0.83)NNT 24
脳卒中: 0.75 [0.56~0.94) NNT58

上記メタ分析は66.8歳~75.6歳の患者が対象であった。やはり80歳を超えるような高齢者では、そのベネフィットは厳密には不明である。ただ、2次予防に関してはイベントのみならず死亡にも有意な差がついている点には注目したい。心血管死亡は30%減らすという結果になっているが、かりに、86歳女性、血圧140/92mmHg、非喫煙者で総コレステロール6mmol/lという症例を考えてみると、スタチン投与で3.2ヵ月余命が延びることが示唆される。〔Open Heart. 2016 Mar 11;3(1):e000343.PMID: 27042321〕

この延命予測が妥当か否かについては議論の余地が多々ある気もするが、余命が1か月~1年未満の患者において、スタチン療法は必ずしも継続だけが選択肢ではない。
〔JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):691-700. PMID: 25798575〕

[80歳を超えるような高齢者へのスタチンをどう考えるか]
現時点での私見をまとめておく。

・一次予防を目的に新規投与は推奨できない
・一次予防を目的に投与されている非糖尿病患者においてはスタチン治療中止も十分に考慮できる。スタチンには糖尿病発症リスクも示唆される。
・糖尿病患者であっても一次予防のためのスタチンは中止を考慮しても良いかもしれない。
・治療を中止すべきかはスタチン治療に対する患者の関心度も考慮すべき。
〔Int J Clin Pharm. 2015 Oct;37(5):949-57. PMID: 26047944〕
・積極的治療を望む場合、二次予防目的でのスタチン治療は継続を考慮できる
・積極的治療を望まない場合、二次予防目的でさえもスタチン治療は中止を考慮できる

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]適度な飲酒は本当に体に良いのか(メタ分析PMID: 26997174)

Stockwell T.et.al. Do "Moderate" Drinkers Have Reduced Mortality Risk? A Systematic Review and Meta-Analysis of Alcohol Consumption and All-Cause Mortality. J Stud Alcohol Drugs. 2016 Mar;77(2):185-98. PMID: 26997174
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26997174

[背景]これまでのコホート研究のメタ分析ではアルコール摂取と全原因死亡の関連は、飲酒量が少ない方がそのリスクは小さい傾向にあるような、J字型を示唆していた。しかしながら、飲酒量が低い状態は、その疾患状態であるがゆえに、比較対象者が禁酒していることから、健康者とみなされることもある。この研究の目的は、このような誤分類(健康上の理由による禁酒と適度な飲酒)や交絡因子の影響を考慮して、健康アウトカムと飲酒の関連を検討した前向き研究のメタ分析である。

[方法]飲酒と死亡のリスクをシステマティックレビュー・メタ分析で検討。解析対象は3,998,626人で、そのうち367,103 人の死亡が確認された。

[結果]87件の研究をメタ分析。飲酒しない人に比べて、調整前における低アルコール摂取群 (1.3-24.9 g ethanol per day) で総死亡が減少(RR = 0.86, 95% CI [0.83, 0.90]). 機会飲酒 (<1.3 g per day) でも同様に減少した。(RR = 0.84, 95% CI [0.79, 0.89]),しかし、禁酒したグループでは死亡のリスクが上昇していた。 (RR = 1.22, 95% CI [1.14, 1.31]).、調整後の解析では低アルコール摂取群で、飲酒のない人と差が見られなかった。(RR = 0.97, 95% CI [0.88, 1.07]). バイアスが除去された質の高い解析では低アルコール摂取群での死亡リスク低下は示唆されなかった。

[結論] アルコール摂取による死亡リスクの予測は、研究デザインや解析対象の特性に大きな影響を受ける。これらの要因を調整して解析すると、低アルコール摂取群とアルコール非摂取者に明確な差はない。

[コメント]適度な飲酒が体に良いというわけで、これまでの研究ではアルコール摂取量と死亡の関連はJ字型で示されるグラフが印象的であった。しかし、そもそも不健康な人たちは飲酒を制限している可能性があり、アルコール摂取の無い人たちが必ずしも健康とは言えない。J時の一番左の部分の死亡リスク増加はこうした集団の影響である可能性があり、アルコールを適度に飲めば(低アルコール摂取者)長生きできると結論付けるものではないのである。

つまり病状により禁酒している集団が、生活習慣としてアルコールを摂取しない人と同じカテゴリに誤分類されている可能性がある。このような集団を比較対象と知ることで、低アルコール摂取群の死亡リスクが見かけ上低くなるのだ。

この研究はこれまで報告されたアルコール摂取と死亡の関連を検討したコホート研究をもとにこのようなバイアスを除去して解析したものである。結果的にJ字型の関連は示唆されず、左部分のリスク上昇はフラットになりむしろ逆L字型と言ったところか。適度な飲酒が体に良いというのは幻想にすぎない可能性が示唆された。

[文献]アジア人でも果実摂取で心血管疾患は減るのか(コホート研究PMID: 27050205)

Du H.et.al. Fresh Fruit Consumption and Major Cardiovascular Disease in China. N Engl J Med. 2016 Apr 7;374(14):1332-43. PMID: 27050205
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27050205

[背景]西洋では果実の摂取量が多いと心血管疾患のリスクが低下する可能性が示唆されているが、果実の消費レベルが低く脳卒中が高い中国では、そのような関連についての知見は限定的である。

[方法]2004年~2008年において、中国10地域の30歳~79歳、512891人を募集。3.2 million person-yearsの追跡間で、研究開始時に心血管疾患や降圧治療のない451665人の間で、5173人の心血管死亡、2551例の主要心血管イベント、14579例の脳梗塞、3523例の脳出血が報告された。Cox比例ハザードモデルを用いて、果実の摂取と死亡率の関連を検討した。

[結果]18.0%で果実を摂取したと報告された。果実を食べないか、ほとんど食べない非消費者群に比べて、果実を毎日摂取する群では収縮期血圧が4mmHg、血糖値9.0mg/dl、低かった。(P<0.001 for trend for both comparisons).心血管死亡の調整ハザード比は0.60 (95% 信頼区間0.54 to 0.67) であり、また主要心血管イベント、0.66 (95% CI, 0.58 to 0.75), 脳梗塞0.75 (95% CI, 0.72 to 0.79), 脳出血 0.64 (95% CI, 0.56 to 0.74), も同様に低下した。

[結論]中国の成人において果実の摂取量が多いと血圧や血糖値が低く、また心血管疾患も少ないことが食事などの因子とは独立に示唆された。

[文献]心筋梗塞後のACEI/ARBのリスクベネフィット(コホート研究PMID: 27056774)

Evans M.et.al. Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors and Angiotensin Receptor Blockers in Myocardial Infarction Patients With Renal Dysfunction. J Am Coll Cardiol. 2016 Apr 12;67(14):1687-97. PMID: 27056774
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27056774

[背景]ACE阻害薬もしくはARBが急性心筋梗塞後のハイリスク患者に対する二次予防に用いるべきかについてのコンセンサスは無い。急性心筋梗塞後のACE阻害薬/ARBによる治療がリスクプロアイル改善に寄与するかを検討した。

[方法]スウェーデンのレジストリより2006年~2009年において、急性心筋梗塞を発症した生存者からACE阻害薬、ARB使用者のデータを追跡調査した。ACE阻害薬/ARBの使用と総死亡、心筋梗塞、脳卒中、急性腎傷害の関連をCox比例ハザードモデルにて検討した。

[結果]解析対象の71%にあたる45697例でACE阻害薬/ARBによる治療が行われていた。3年間死亡は19.8% (ACEI/ARB使用者17.4% 、非使用者25.4%). 調整解析において、ACE阻害薬/ARB使用者は3年死亡リスク減少を示唆。ハザード比0.80[95%信頼区間 0.77 to 0.83]この生存ベネフィットは透析患者を含む、すべての腎機能階層で一貫していた

透析患者ではACEI/ARBによる治療はまた3年間心筋梗塞リスク低下を示唆 (ハザード比: 0.91; 95%信頼区間: 0.87 to 0.95),ただ、脳卒中には差が無かった。 急性腎障害の粗発生率は、一般的に低くかった(2.5% and 2.0% for treated and nontreated, respectively) しかし急性腎障害と死亡の複合アウトカムはACEI/ARB 治療で有意に低い。

[結論]心筋梗塞後のACEI/ARBによる治療は腎機能に関わらず、低い腎有害イベントリスクと生存ベネフィットに関連。

[コメント]仮説的研究なので盲信はできない。ただ、急性心筋梗塞後におけるレニンアンギオテンシン系薬剤の使用は腎機能に関わらず一定のベネフィットがある可能性が示唆されており、今後の研究に注目したい。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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80歳を超えるような高齢者のスタチンについて、患者の治療に対する関心度が低ければ個人的には比較的高頻度で脱処方を提案する。以下も参照してほしい。

心筋梗塞既往の寝たきり患者、スタチンは必要?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/aoshima/201604/546315.html

この記事では二次予防のエビデンスは参照していないが、基本的なプラクティスは変わらない。この問題には賛否あると思う。ただ現状でエビデンスが限られている限りは、既存のエビデンスを参照しつつも患者(もしくは介護者)の想いを重視したいのである。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Apr.13;2(64)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-降圧療法のベネフィット-

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[収縮期血圧が140mmHgであれば積極的に降圧すべきか]

心血管リスクを有する高血圧患者において、降圧療法のベネフィットはほぼ明確であろう。

むしろ降圧療法はベースラインの心血管イベントリスクの高低に関わらず、一定のベネフィットを期待できる可能性がある。降圧療法のランダム比較試験におけるプラセボ群より主要心血管イベント5年リスクを見積もり、層別化解析を行ったメタ分析では降圧療法の相対危険度に著明な差はなく有意なリスク減少が示された。
〔Lancet. 2014 Aug 16;384(9943):591-8PMID: 25131978〕

ランダム化比較試験のプラセボ群データを用いているために、一般集団とは潜在的なリスクに差異があり(一般集団よりも低い可能性が高い)結果の一般化には議論の余地があるが、多くの患者において、降圧療法には一定のベネフィットがあることを支持している結果となっている。

特に糖尿病などの心血管ハイリスク患者において、降圧療法は重要であろう。糖尿病患者では収縮期血圧が10mmHg低下するごとに総死亡や心血管イベント、脳卒中が低下することがメタ分析により示されている。
〔JAMA. 2015 Feb 10;313(6):603-15. PMID: 25668264〕

しかしながらベースラインの平均SBPが140mmHgで層別化して解析したところ、140mmHgを超える場合にはリスク低下を示唆したが、140未満では脳卒中以外のアウトカムで差が出なかった。収縮期血圧が140mmHg未満の場合においては、心血管リスクを有する患者でも大きなベネフィットが期待できない可能性が示唆されている。

糖尿病患者におけるリスク層別解析ではこの示唆が、ランダム化比較試験49 研究のメタ分析により補完されている。
〔BMJ. 2016 Feb 24;352:i717. PMID: 26920333〕

十分なベネフィットを得るには収縮期血圧が150mmHgを超えている必要があり、また140mmHg未満では十分なベネフィットが得られない可能性が示されている。潜在的なイベントリスクは重要だが、ベースラインの血圧も重要な要素なのかもしれない。

軽度高血圧患者におけるベネフィットはメタ分析が報告されており、ベースラインの血圧が140 to 159/90 to 99 mm Hg(平均146/83)の患者において、心血管イベント、脳卒中、冠動脈イベント、心血管死亡、総死亡の有意な低下が示されている。
〔Ann Intern Med. 2015 Feb 3;162(3):184-91. PMID: 25531552〕

軽度高血圧と言っても140mmHgを超える高血圧患者が対象となっている点に注目したい。

[収縮期血圧が130mmHg以上であれば積極的に降圧すべきか]

収縮期血圧が130mmHg以上をカットオフにするとどうだろうか。収縮期血圧が130mmHg以上で糖尿病ではないが心血管疾患ハイリスク患者を対象に、収縮期血圧120 mm Hg未満を目指す厳格血圧コントロール群、140mmHg未満を目指す通常血圧コントロール群を比較したランダム化比較試験が報告されている。
〔N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2103-16 PMID: 26551272〕

この研究はPROBE法を採用した研究ではあるが、一次アウトカムである心筋梗塞、他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死亡の複合アウトカムや、二次アウトカムである、総死亡も有意に低下したという結果になっている。なお研究1年後の平均血圧は厳格治療群で121.4 mm Hg、通常治療群で136.2 mm Hgであった。低血圧、失神、電解質異常、急性腎傷害は厳格治療群で多く、得られるベネフィットの絶対リスク(一次アウトカム:2.19%/年vs 1.65%/年;NNT200/年)を考慮すると、収縮期血圧130mmHg以下を目標に血圧コントロールすることのメリットは、ハイリスク患者でも実はあまり多くはないのではないかという印象もある。

血圧コントロールにおける厳格治療のベネフィットを示したメタ分析においても、平均血圧は133/76 mm Hg、対140/81 mmHgの比較であった。
〔Lancet. 2016 Jan 30;387(10017):435-43. PMID: 26559744〕

これらの報告を踏まえると少なくとも130mmHg以下を目指す厳格な血圧コントロールは、比較的ハイリスクな患者かつ余命が十分に残されている患者を除くと、明確なベネフィットが無いと言えるかもしれない。特に虚弱高齢者では収縮期血圧が130mmHg以下の状態で降圧薬を2種類以上服用していると、2年間で死亡リスクが1.78倍増加すると報告されている。〔JAMA Intern Med. 2015 Jun;175(6):989-95. PMID: 25685919〕

そもそも120-139/80-89mmHgの高血圧予備軍における潜在的な死亡リスクはそれほど高くない。血圧120-139/80-89 mm Hgと、120/80 mm Hg未満を比較した場合において、総死亡や心血管死亡、脳卒中に明確な差がない。〔Am Heart J. 2014 Feb;167(2):160-168. PMID: 24439976〕

血圧が150mmHgを超えるような患者ではやはり治療強化は有用かもしれないが、〔BMJ. 2015 Feb 5;350:h158. PMID: 25655523〕130mmHg未満では潜在的なリスク因子の有無にかかわらず微妙であろう。

[収縮期血圧が130mmHgを超えていても…]
N.Engl J Med.に新たな研究が掲載されている。
〔 N Engl J Med. 2016 Apr 2. [Epub ahead of print] PMID: 27041480〕
この研究は、心血管疾患の既往はないが、心血管リスク因子(早期糖尿病や耐糖能異常も含む)を少なくとも一つ以上有する55歳以上の男性、65歳以上の女性12,705人が対象となっている。平均年齢は65.7歳であり、研究開始時の平均血圧は138.1/81.9 mm Hgであった。

対象者はカンデサルタン16㎎/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日とプラセボにランダムに割り付けられた。一次評価項目はFirst coprimary outcomeとして、心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合アウトカム。Second coprimary outcomeとして、First coprimary outcomeに加え、心停止、心不全、結構再建術とした。なお追跡中央値は5.6年であった。

その結果、First coprimary outcomeは、治療群で260人(4.1%)、プラセボ群、279人(4.4%)で、明確な差はなかった。(ハザード比 0.93; 95%信頼区間0.79〜1.10; P=0.40) Second coprimary outcomeは治療群で312人 (4.9%) 、プラセボ群で328人 (5.2%)であり、こちらにも明確な差はつかなかった。(ハザード比0.95; 95%信頼区間 0.81 〜1.11; P=0.51).

あらかじめ計画されたサブグループ解析において、収縮期血圧が>143.5 mm HgではFirst coprimary outcome 、Second coprimary outcomeともに有意に減少した。

降圧治療の有用性が不明なのか、ARBという薬剤の問題なのか、議論の余地はあるが、サブ解析を参照すると、やはりベースラインの血圧がある程度高くないと、ベネフィットも少ない可能性が示唆されている。

患者の潜在的な心血管疾患リスク、降圧薬のクラスエフェクトという要素、に加え、ベースラインの血圧も重要なファクターであることは間違えない。現時点ではやはり130mmHg未満を目指す治療と言うのはリスク/ベネフィットの観点ら言えば、それほど有用な治療とも言えない印象である。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]日光浴で長生きするかも(コホート研究PMID: 26992108)

Lindqvist PG.et.al. Avoidance of sun exposure as a risk factor for major causes of death: a competing risk analysis of the Melanoma in Southern Sweden cohort. J Intern Med. 2016 Mar 16. doi: 10.1111/joim.12496. [Epub ahead of print] PMID: 26992108

[目的]日光への曝露が多い習慣のある女性では日光をあまり暴露しない女性よりも寿命が長いとする報告がある。しかしながら、それは皮膚がんのリスクを上昇させる。太陽光への曝露と死亡の関連を検討した。

[方法] Melanoma in Southern Sweden (MISS) cohort.より29 518人のスウェーデン女性を前向きに20年追跡したコホート研究。太陽光曝露と死亡の関連が検討された。被験者は1990年から1992年(研究開始時25歳~64歳)の間にコホートに登録された。

[結果]太陽光曝露が多い人は、少ない人に比べて、心血管疾患や非癌、非心血管死亡がスクなかった。この延命により癌による死亡の相対的寄与は曝露の多い女性で増加した。

太陽光曝露が少ない非喫煙者では、太陽光曝露の多い、喫煙者とほぼ同程度の余命であった。つまり、太陽光の曝露を避けることは、喫煙と同程度の死亡へのリスクファクターと考えられる。太陽光曝露の多い人に比べて、少ない人では0.6~2.1年余命が少ないと見積もられる。

[結論]太陽光を積極的に浴びる人の余命が長いのは、心血管疾患や、非癌/非心血管死亡低下によるものと考えられ、また余命が延びることは癌による死亡増加に寄与する。

[コメント]喫煙による平均余命短縮は10年と言われているので、日光曝露の無さがそれに匹敵するとは大げさだろう。ただ、日光への曝露が余命を延ばす可能性を示唆するというのは興味深い。当然ながら寿命が延びれば癌死亡も相対的に増えるだろう。

日光曝露の多い人をreferenceとすると、日光曝露の少ない人の生存はハザード比で0.7[95%信頼区間0.5~0.8]と報告されている。

[文献]SGLT-2阻害薬の有効性、安全性(メタ分析PMID: 27009625)

Wu JH.et.al. Effects of sodium-glucose cotransporter-2 inhibitors on cardiovascular events, death, and major safety outcomes in adults with type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Mar 18. [Epub ahead of print] PMID: 27009625

[背景]2型糖尿病患者においてSGLT-2阻害薬は血糖値、血圧、体重を低下させるが、LDLコレステロールや泌尿器、生殖器感染症を増加させる。ケトアシドーシスや骨折のような有害イベントリスク上昇の懸念もあるが、心血管イベントに対する保護効果もまた報告されている。2型糖尿病患者におけるSGLT-2阻害薬の心血管疾患イベント、死亡、安全性アウトカムの検討を行った。

[方法]このシステマティックレビュー、メタ分析では1950年1月1日~2015年7月30日までの米国、欧州、日本のWEBサイト、MEDLINE、Embase,コクランライブラリを検索した。なお解析対象としたのはSGLT-2阻害薬の効果を検討したランダム化比較試験であった。一次アウトカムは主要な心血管有害イベント(MACE)とした・。二次アウトカムは心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、心不全、総死亡とした。この研究ではfixed-effects モデルによるメタ分析を行い、異質性についてはI2統計量を算出した。

[結果]6つの承認申請データ(37525人)と57の出版データ(33385人)が解析に含まれた。なお7種類のSGLT-2阻害薬がデータに含まれている。SGLT-2阻害薬はMACEに対する保護効果を示唆した。(相対危険95%信頼区間0.84[0.75~0.95])また心血管死亡(相対危険0.63[95%信頼区間0.51~0.77]、心不全(相対危険0.65[95%信頼区間0.50~0.85]、総死亡(相対危険0.71[95%信頼区間0.61~0.83])を有意に減らした。非致死的心筋梗塞や狭心症には明確な差がつかなかった。しかし非致死的脳卒中は増加した。(相対危険1.30[95%信頼区間1.00~1.68])生殖器感染症は有意に増加した。(承認申請データ:相対危険4.75[95%信頼区間4.00~5.63]、出版データ:2.88[95%信頼区間2.48~3.34]

[結論]これらのデータはSGLT-2阻害薬が心血管アウトカムや総死亡に対する保護効果を有することを示している。この効果はエンファグリフロジンの知見によるものであった。一方で他の薬剤については結果が明確ではない。有害イベントについては有効性よりも評価が困難であった。

[文献]高齢者における身体活動で心血管疾患は減るか?(コホート研究PMID: 27022033)

Koolhaas CM.et.al. Physical Activity Types and Coronary Heart Disease Risk in Middle-Aged and Elderly Persons: The Rotterdam Study. Am J Epidemiol. 2016 Mar 28. pii: kwv244. [Epub ahead of print] PMID: 27022033
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27022033

身体的活動は心血管疾患リスクの減少に関連している。ただ、特定のアクティブティが高齢者においてどのようなメリットがあるのかについてはあまり明確ではない。我々は、総身体活動、ウォーキング、自転車サイクリング、家事(家庭内動作)、スポーツ、ガーデニングと心血管疾患の関連を評価した。55歳以上(年齢中央値67歳)の5901人を対象とし、その関連を前向きコホート研究にて検討。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出した。(ロッテルダム研究)多変量解析モデルにおいて、我々は年齢、性別、喫煙、飲酒状況、教育水準、食事、また、他のアクティビティタイプにより調整した。

15年間(中央値10,3年〔IQR8.0~11.8〕の追跡中、心血管疾患は624人(10.9%)で発症した。多変量解析では、(身体活動が無い場合と比べて)身体活動が低いグループと、中~高いグループのハザード比〔95%信頼区間〕はそれぞれ、総身体活動:0.79〔0.66~0.96〕、0.71〔0.58~0.87〕自転車サイクリング:0.76〔0.63~0.92〕、0.70〔0.57~0.88〕、家事:0.81〔0.66~0.98〕、0.71〔0.56~0.90〕

ウォークング、スポーツ、ガーデニングは心血管疾患との関連が示されなかった。結論として、この高齢者を長期追跡した研究では家事やサイクリングが心血管疾患を減らす可能性があることを示した。心血管疾患予防を目的に身体活動は推奨されるべきである。


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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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降圧療法に関する論文が近年大量に報告されており、情報についていけなくなってきていますが、なんとか整理していきたいと思います。今回まとめた論文を眺めるだけでも、なんとなく混沌としてきた印象です。血圧は、どんな患者で、どこまで下げればよいのでしょうか。こんな単純な臨床疑問でさえも、大量の論文を読まねばならないことをあらためて痛感しております。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Apr.6;2(63)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-サルメテロールの安全性に関する非劣性試験-

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[introduction]
長期間作動型β2刺激薬の安全性疑惑については、僕が追跡し続けているテーマの一つである。以下文献が参考になろう。
〔Am J Med. 2010 Apr;123(4):322-8.e2 PMID: 20176343〕
〔Thorax. 2010 Jan;65(1):39-43 PMID: 20029037〕
詳細は原著論文を読んでいただくとして、これらの報告は36,588人あるいは106,575人を解析して、つまり数万~数十万規模のサンプルで解析を行い、喘息死亡や重篤な喘息関連アウトカムが約2倍有意に多いということを示したものである。ごくわずかかもしれないが、死亡リスク増加を示唆した点は驚愕する。

2016年3月にサルメテロールの安全性をフルチカゾン併用群とフルチカゾン単独群を比較して検討した非劣性試験が報告された。

〔Stempel DA.et.al. Serious Asthma Events with Fluticasone plus Salmeterol versus Fluticasone Alone. N Engl J Med. 2016 Mar 6. [Epub ahead of print] PMID: 26949137〕

結論を先取りすれば、この研究結果は僕にとって無意味である。

[論文の吟味]
この研究は12歳以上の持続的な喘息を有する患者を対象にした多施設二重盲検ランダム化比較試験である。被験者はフルチカゾン、サルメテロール併用群とフルチカゾン単独群にランダムに割り付けられ26週間治療をおこなった。すべての被験者はランダム化の1年前に(前月を除く)の喘息増悪の既往があった。生命を脅かすような、また非常に不安定な喘息コントロールの患者は除外した。主要安全性評価項目は重大な喘息関連イベント(死亡、気管内挿管、入院)フルチカゾン、サルメテロール併用群の95%信頼区間が2.0未満であるときにフルチカゾン単独群に非劣性と定義している。主要有効性評価項目は重度の喘息増悪とした。

最終的に11,679人が研究に組み入れられ、67人(74件)で重大な喘息関連イベントが発生した。フルチカゾン、サルメテロール併用群では34人(36件)フルチカゾン単独群では33人(38件)のイベントが発生。重大な喘息関連イベントのハザード比[95%信頼区間]は1.03 (0.64 to 1.66)と非劣性であった。喘息関連死亡にも明確な差はなかった。重度の喘息増悪は、単独群に比べて併用群で有意に低下した。(ハザード比 0.79[95%信頼区間0.70 to 0.89])少なくとも1回以上の喘息増悪は併用群で480人/5834人 (8%)、単独群で597 人/5845人 (10%)であった。(P<0.001).

[結果の無意味さ]
ランダム化比較試験としての妥当性は必ずしも悪くない。サンプル計算については、パワー90%片側α0.025で11664人と計算されている。統計解析は『The primary analysis was performed in the intention-to-treat population, which included all the patients who had undergone randomization and received at least one dose of fluticasone–salmeterol or fluticasone alone.』と記載があり、厳密なITTというよりは非劣性試験にふさわしい、修正ITTだろうかと思われる。

ただ非劣性試験としての妥当性は致命的なように思える。『Noninferiority of fluticasone–salmeterol to fluticasone alone was defined as an upper boundary of the 95% confidence interval for the risk of the primary safety end point of less than 2.0.』と記載のある通り、本研究の非劣性マージンは2.0である。これは重大な喘息関連イベント(死亡、気管内挿管、入院)の増加を2倍まで許容するというものである。

何かがおかしい。そもそもこの研究はLABAによるserious asthma eventsリスク増加の懸念を払拭するために行われたのではなかったか。考えても見てほしい。2010年のメタ分析で示されていたのは、数万~数十万規模のサンプルで約2倍、重大なイベントが増えるというものであった。

たかだか千数百のサンプルで、2倍まで許容するスタンスであれば、非劣性が示されてしまうのは当たり前のように思える。この研究が何を語っているのか、僕には理解不能である。Supported by GlaxoSmithKlinem、所詮はそういった研究なのだ。どう考えても背景エビデンスが踏まえられていない。(もしくは意図的に無視されている)

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]論文中のP値はどのように報告されてきたか(テキストマイニング分析PMID: 26978209)

Chavalarias D.et.al. Evolution of Reporting P Values in the Biomedical Literature, 1990-2015. JAMA. 2016 Mar 15;315(11):1141-8. PMID: 26978209
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26978209

[背景/目的] P値の適用や誤用は、広範な議論を生みだした。過去25年間に報告された医学生物学関連論文におけるP値を調査し、統計的情報がP値以外で示される頻度を見積もった。

[方法/評価項目]1990年~2015年における12,821,790 件のMEDLINE抄録とPubMed Central (PMC)から843,884件の抄録/全文に報告されたP値をテキストマイニング分析した。(大量のテキストデータから、「隠れた」情報や特長、傾向、相関関係を探し出す技術をテキストマイニングと呼ぶ)

[結果/結論]テキストマイニングに組み入れたのは4,572,043件のP値データであった。(MEDLINE抄録1,608,736件、PMC full-text articles. 385,393件よりP値データ3,438,299件)論文におけるP値の報告件数は1990年の7.3%から2014年には15.6%まで上昇した。P値の報告は151の主要ジャーナル(抄録29,725件)で33%であった。またメタ分析(5620件)では35.7%、臨床試験(4624件)では38.9%、ランダム化比較試験(13544件)では54.8%、レビュー論文(71529件)では2.4%であった。抄録やフルテキストで報告されたP値は多くの場合で0.05もしくは0.01以下というカテゴリで区分されていた。

時間経過とともに最大統計学的有意P値は少なくなり、最小統計学的有意P値は有意ではなくなっていく。(ちょっと意味が分からない:原文「Over time, the "best" (most statistically significant) reported P values were modestly smaller and the "worst" (least statistically significant) reported P values became modestly less significant.」)

MEDLINE抄録とPMC full-text articlesのP値において、最低一つP値が0.05未満となるのは96%であった。1000件の抄録において、マニュアルレビューを行ったところ、796件が実験データからの報告であった。P値は、抄録中記載15.7%(125件/796件[95%信頼区間13.2%~18.4%])、信頼区間の記載2.3%(18件/796件[95%信頼区間1.3%~3.6%])、ベイズファクターの記載0%[0件/796件]、効果サイズの記載13.9%(111件/796件[95%信頼区間11.6%~16.5%]、P値を見積もるための他の情報記載12.4%(99件/796件[95%信頼区間10.2%~14.9%])有意性に関する定性的なステートメント18.1% (181件/1000件 [95% 信頼区間15.8%-20.6%])、抄録に効果サイズと信頼区間を少なくとも1つ報告していたのは1.8%に過ぎない。

99件のフルテキストデータにおいては55件でP値の報告があり、すべての効果サイズと信頼区間記載が4件、1件はfalse-discovery rates、3件でサンプル計算、5件で一次アウトカムの記載があった。

ほとんどの抄録や論文で記載されていたP値には有意な結果が報告されていた。P値の報告だけではなく、効果の大きさと不確実性を指標に含める必要がある。

[文献]米国における薬剤使用と相互作用経年変化(縦断解析PMID: 26998708)

Qato DM.et.al. Changes in Prescription and Over-the-Counter Medication and Dietary Supplement Use Among Older Adults in the United States, 2005 vs 2011. JAMA Intern Med. 2016 Mar 21. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26998708

[背景]高齢者においては処方薬とOTCやサプリメントは、単独のみならず一般によく併用使用されている。しかしながら、近年の市場の影響は不明である。処方薬とOTC、サプリメントの併用薬剤使用割合に関する変化を特長づけ、潜在的な薬剤相互作用の頻度やタイプを検討した。

[方法]62歳から85歳の地域在住高齢者を縦断的に解析した。薬剤使用に関しては2005~2006年、2010年~2011年に行った。薬剤使用は少なくとも1剤の処方薬もしくはOTC、サプリメントを毎日もしくは毎週使用し、少なくとも2剤の定期的な使用を同時(併用)使用と定義した。

[評価項目]薬剤使用、併用使用、薬物相互作用の割合

[結果]2005年~2006年、及び2010年~2011年において2351人を解析対象とした。平均年齢及び性別は2005~06年で70.9歳、女性53.0%、2010年~11年で71.4歳、女性51.6%であった。少なくとも1剤の処方薬はわずかに上昇していた。2005~06年84.1%→2010年~11年87.7%(P=0.03 )少なくとも5剤以上御処方薬の併用使用は30.6%から35.8%に増加していた。(P=0.02)OTCの使用は44.4%から37.9%に減少していた一方で、サプリメント使用は51.8%から63.7%に増加していた。(P値はOTC,サプリメントともにP < .001)

スタチンの使用(33.8%→46.2%)、抗凝固薬の使用(32.8%→43.0%)、ω3系不飽和脂肪酸の使用(4.7%→18.6%)が特に増加していた。(P < .05 for all)

2006年~06年において8.4%だった潜在的な薬物相互作用のリスクは2010年~11年において約15.1%まで上昇していた。(P < .001).相互作用の組み合わせで最も多いのが薬剤とサプリメントであった。

[結論]本研究において、処方薬やサプリメントの使用、薬物相互作用の併用使用は2005年から増加し、潜在的な薬物相互作用は高齢者の15%にも上る。多剤併用における安全性の改善が高齢者による薬物治療に関連した薬剤有害反応を減らす可能性がある。

[文献]予防的薬剤の予防的効果

Distribution of lifespan gain from primary prevention intervention.[PubMed未収載]
Open Heart 2016;3: doi:10.1136/openhrt-2015-000343

[目的]一次予防治療の開始可能性について患者に助言する際、現段階で、臨床医は期待余命の影響に関する情報を有していない。またどの程度個人間で差があるのかも不明である。

[方法]まず最初に、英国の心血管、非心血管死亡データを用いて、心血管死亡を30%減らすような介入から(例えばスタチンのような)平均余命を見積もった。次に、寿命延伸の確率分布を算出。さらに、3つの英国の都市において2014年3月~2014年7月の間の11日間で、396人(平均40歳、55%が男性)を対象に、一次予防治療から潜在的にどのくらいベネフィットが得られるのか評価した。

[結果]同一患者の多くについて、心血管死亡を30%減らすような介入から、寿命の延伸は予測できなかったごく少数の患者に集中している。例えば、平均的な心血管リスクを有する50歳の男性では7か月であったが、7%の人に飲み、99ヵ月の寿命延伸が見られたが、93%の人には寿命延伸が見られなかった。多くの回答者が、期待できる余命以上の寿命の延伸を望んだ。10年間2%の確率増加より5倍以上の余命増加を期待する人が33%であった。

[結論]予防的治療からの余命の延伸が得られた人は、リスク階層からの平均よりもそのメリットは大きい。

[コメント]
Figure 1を見ると予防的治療の効果が示されている。死亡リスクが30%減ると言っても、まあ余命で1年から2年延びるという感じ。リスク階層別で解析しているが、やはりリスクが高く、年齢が若いほど寿命延伸が期待できる。リスクの低い高齢者ではあまり予防的治療の意義は無いともいえる。これは予防的薬剤のポリファーマシーを考えるうえで非常に重要なデータとなろう。

ただし、同じ年齢でも寿命延伸は一部の人にしか見られない、という奇妙なデータが示されている。Figure 3を見れば明らか。なんと93%はなんら寿命が延伸していないのだ。つまり寿命延伸効果が得られるのは、予防的薬剤を投与したすべての人ではない。これは少々驚きの結果ではないか?医療は賭けである。それもかなりの。。。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ぼちぼち桜が咲き始めました。筆者はこの時期、眠くて仕方ありません。寝たいです。10時間くらい寝たいです。いや24時間は寝たいです。眠いです。

しかしながら論文読むほどに眠気は吹き飛びます。「地域医療の見え方」は旧ブログが2012年4月開設ですから、もう4年がたとうとしています。早いものです。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Mar.30;2(62)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
- Deprescribingのゆくえ-

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[introduction]
ポリファーマシーに対する、潜在的に不適切な薬剤使用をスクリーニングするSTOP/STARTクライテリアなどを用いた是正介入の実効性について、これまでランダム化比較試験やメタ分析、システマティックレビューにおいて不適切な薬剤使用やコストを減らすものの、転倒、入院、死亡など臨床アウトカムにおいては明確な有効性が示されていない。

〔Cochrane Database Syst Rev. 2014;.PMID:25288041〕
〔J Clin Pharm Ther. 2016 Mar 17. PMID: 26990017〕
〔J Am Geriatr Soc.2014;62(9):1658-65. PMID:25243680〕

つまりクライテリアを用いて処方最適化を行っても臨床アウトカムに与える影響はごくわずかでしかないことが現段階で明確となっている。

しかし、ポリファーマシー問題において、クライテリアで同定された問題だけでは薬剤関連問題の多くが扱えない可能性が示されている。STOPP/START と関係ない問題が81%にも上るという報告がなされている。

〔Verdoorn S.et.al.Eur J Clin Pharmacol. 2015 PMID: 26249851〕

クライテリアで扱えるのは薬剤関連問題のほんの一部であり、薬物治療最適化は本来、患者個別、薬剤個別に実施されるべきである。この最適化介入プロセスの概念が近年Deprescribing(以下、脱処方)と呼ばれるアルゴリズムである。

〔JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):827-34. PMID: 25798731〕

[脱処方の実効性を検討したランダム化比較試験]
オーストラリアにおける高齢者介護施設に居住する65歳以上の高齢者95人を対象に脱処方の実効性を検討した非盲検化ランダム化比較試験が報告された。

〔PLoS One. 2016 Mar 4;11(3):e0149984. PMID: 26942907〕

研究参加者の平均年齢は84.3歳で女性が52%であった。ベネフィットが少ない薬剤の中止を計画するdeprescribing(脱処方)介入を受けた47人と通常ケア48人が比較された。被験者は割り付け後、12か月観察された。一次アウトカムは定期的に使用している薬剤の平均剤数変化とし、またすべてのアウトカムは研究開始時、6か月後、12か月後に評価した。なお生存や転倒、骨折、入院は二次アウトカムとして検討されている。

脱処方介入群は9.6剤、対照群は9.5剤の定時薬を研究開始時に使用していた。脱処方のターゲットとなったのは348剤(定時薬の78%で患者1人当たり7.4剤)で207剤が脱処方に成功した。(ターゲット薬剤の59%で患者1人当たり4.4剤)

12か月時点での平均薬剤使用剤数変化は、脱処方介入群で-1.9剤、対照群では+0.1剤(差2.0[95%信頼区間0.08~3.8]であった。

また、割り付け12か月以内に介入群12人、対照群19人が死亡した。(介入群26%、対照群40%、ハザード比0.60[95%信頼区間0.33~1.22])他の二次アウトカムに明確な差はなかった。

[論文の吟味]
これまで向精神薬の中止が転倒予防につながる、などの散発的な研究やレビューはあったが、〔Age Ageing. 2014 Jan;43(1):20-5. PMID: 24222659〕ここまでシステマティックな介入を前向きで評価した臨床試験は無かった。

本研究で用いられた脱処方アルゴリズムは〔JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):827-34. PMID: 25798731〕で示されたものとほぼ同じものである。本研究の主要なlimitationは症例数が少ないことと非盲検デザインだったことである。サンプル計算によれば必要症例数は324例となっており、この研究では大幅に症例数が不足している。それでも一次アウトカムに有意な差がついている。また二次アウトカムに有意な差がついていないのはβエラーである可能性が高く、特に死亡が減少傾向にあった点は、症例数が多くなれば有意な差がついていた可能性もある。

[現時点での結論]
・潜在的に不適切な薬剤をスクリーニングするクライテリアのみに依拠した薬物治療是正介入で臨床アウトカムの改善は期待できない
・脱処方アルゴリズムを実践し、患者個別、薬剤個別にリスク/ベネフィットを評価することで、死亡リスクを低下させることができるかもしれない。少なくとも死亡リスクや有害転帰を増加させずに脱処方できることが仮説として示されている。今後の検証を待ちたい。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]降圧薬の使用量と転倒リスク(前向きコホート研究PMID: 24934339)

Callisaya ML.et.al. Greater daily defined dose of antihypertensive medication increases the risk of falls in older people--a population-based study. J Am Geriatr Soc. 2014 Aug;62(8):1527-33. PMID: 24934339
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24934339

[目的] 降圧薬の1日投与量と転倒リスクの関連を検討する。

[デザイン]前向き人口ベースコホート研究

[セッティング]オーストラリアのタスマニア研究

[参加者]60歳から86歳の高齢者をランダム抽出

[評価項目]降圧薬の投与量を1日投与量(DDD)により見積もり、薬剤クラス間の標準的な比較を可能にした。転倒は12か月間、前向きに検討し同定した。年齢、性別、BMI、教育、心血管疾患、他の転倒因子で調整し、転倒と降圧薬の投与量の関連を検討した。

[結果]409人が研究対象となった。(平均72歳、56%が男性)研究開始時の平均血圧は142/80 mmHgで54% が降圧薬による治療を受けていた。161人の参加者(39%)で12か月間の間に転倒を起こしていた。転倒を起こした人は、転倒を起こさない人に比べて、降圧薬のDDDが高かった。1.51vs1.03.P=0.07。DDD高値は骨折の独立したリスクファクターであった。(相対危険1.07[95%信頼区間1.02~1.11]

DDDが3を超えると、48%も転倒リスクが増加した。(相対危険1.48[95%信頼区間1.06~2.08]

特に脳卒中の既往のある患者では高DDDで転倒リスクが増加した。(P for interaction .01)

この効果は降圧薬の使用なしを除外もしくは、高血圧や他の薬の使用の有無に層別化し多後でも残存した。

[結論] 高用量の降圧薬使用は高齢者における転倒の独立したファクターであり、特に脳卒中の既往や3剤以上の降圧薬使用はハイリスクであった。

[コメント]降圧薬3剤併用というのは高齢者にとってわりとリスクになるということは〔JAMA Intern Med.2015;175(6):989-95. PMID:25685919〕を見ても明らか。HYVETで示されたベネフィットを考慮すれば、虚弱高齢者では3剤の降圧薬を使用して130mmhg未満を目指すより、2剤もしくは1剤で140mmHg~150mmHgを維持できるくらいが良いのではなかろうか。

[文献]心房細動を予防する降圧薬はどれか(メタ分析PMID: 26668582)


Zhao D.et.al. Prevention of atrial fibrillation with renin-angiotensin system inhibitors on essential hypertensive patients: a meta-analysis of randomized controlled trials. J Biomed Res. 2015 Nov;29(6):475-85. PMID: 26668582
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26668582

高血圧を有する患者においてレニンアンジオテンシン系薬剤は心房細動を予防できるかを検討したランダム化比較試験のシステマティックレビュー、メタ分析。

高血圧患者を対象にACE阻害薬/ARBの有効性を検討したランダム化比較試験11研究42892人(ACEI/ARBs20,491人、β遮断薬/Ca拮抗薬22,401人)が解析対象となった。

その結果、ACEI/ARBsは心房細動の再発を有意に減らした。対Ca拮抗薬(RR = 0.48; 95%CI, 0.40-0.58; P<0.00001)、対β遮断薬(RR = 0.39; 95%CI, 0.20-0.74; P = 0.005)
さらにACEI/ARBsはうっ血性心不全を減らした。(RR = 0.86; 95%CI, 0.77-0.96; P = 0.007).
しかしながら、新規心房細動、死亡、心筋梗塞、脳卒中に明確な差はなかった。

これらの結果はACEI/ARBsが心房細動再発やうっ血性心不全を重篤な有害事象なしに減らす可能性を示唆している。

[コメント]
背景としては、「Atrial fibrillation (AF), a common complication of hypertension, is associated with an increased risk of morbidity and mortality」つまり心房細動は高血圧のコモンな合併症であり、生命をおびやかすリスクを有する。

この研究は降圧薬と心房細動発症リスクを検討したシステマティックレビューである。組み入れられた研究は、「Randomized control trials (RCTs) only」データ抽出は2 investigators (D-Z and Z-MW)が independentlyに実施している。論文評価はCochrane Reviewer's Handbook 5.1.0.に基づき行われているようだ。

盲検化については、組み入れられた11研究のうち6研究は二重盲検試験、2研究がPROBE法、1研究が単盲検、1研究は不明。ITT解析は2研究で行われていない。

抄録ではわかりにくいが結果は以下の通り
対コントロール(ACEI/ARB以外)
・3か月における心房細動再発 リスク比0.49[0.34~0.72]
・長期追跡での心房細動再発  リスク比0.47[0.39~0.57]
・心房細動の新規発症予防   リスク比0.86[0.69~1.97]
対カルシウム拮抗薬
・長期追跡での心房細動再発  リスク比0.48[0.40~0.58]
・心房細動の新規発症予防   リスク比0.96[0.74~1.24]
対β遮断薬
・長期追跡での心房細動再発  リスク比0.39[0.20~0.74]
・心房細動の新規発症予防   リスク比0.87[0.62~1.21]

なお心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中に明確な差はなく、心不全についてはわずかながら有意な減少が示唆された。

心房細動再発と言うアウトカムはつまり代用のアウトカムに近い。本研究結果がARB/ACEIを積極的に推奨する根拠としてはいまいちな感じは否めない

[文献]潜在的に不適切な薬剤による有害事象(コホート研究PMID: 26407684)

Hedna K.et.al. Potentially inappropriate prescribing and adverse drug reactions in the elderly: a population-based study. Eur J Clin Pharmacol. 2015 Dec;71(12):1525-33. PMID: 26407684
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26407684

[目的]潜在的に不適切な処方Potentially inappropriate prescriptions (PIPs)のクライテリアは高齢者の処方評価のために広く使われている。しかしながら、薬剤有害反応との関連性についてはエビデンスが限られている。この研究はスウェーデンの高齢者を対象にSTOPP criteriaを用いてPIPsの存在割合と、薬剤有害反応の関連を調査した。

[方法] Swedish Total Population Register.に登録された5025人より65歳以上の高齢者813人を特定し、処方薬の登録データ、医療記録や健康管理データから後ろ向きコホート研究にて解析した。多変量ロジスティック回帰分析によりPIPsとADRsの関連を検討した。

[結果]PIPsを1剤以上持っていたのは46%にあたる374人であった。またADRを1件以上経験していたのは19.5%に当たる159人であった。全ADRsの29.8%がPIPsによるものとされた。PIPsの存在はARDsを有意に増加させた。(オッズ比2.47[95%信頼区間1.65~3.69] PIPsの存在は心血管疾患に及ぼすADRsの60%、神経系に影響を及ぼすADRsの50%、転倒に対する62.5%と見積もられた。

[結論]PIPsはスウェーデンでは一般的に存在し、それは薬剤有害反応のリスクを増加させる。PIPsを減少させる介入で、特に心血管系や神経系、あるいは転倒と言った薬剤有害反応を予防できる可能性がある。

[コメント]
当然ながらPIPsの増大とともに医療にかかわるコストが増大することが知られている。〔Eur J Clin Pharmacol. 2012 Oct;68(10):1425-33. PMID: 22447297〕もちろんこれは本質的な問題ではないと僕は考える。

現在、潜在的に不適切な薬剤を同定するクライテリアは大きくSTOPP & START 2008 criteria.とBeers 2015 criteria.があるがBeers 2015の研究は現時点で少ない。STOPP & START 2008 criteria と Beers 2012 criteriaを比較した研究では、

デンマークのHospital Admissions Related to Medication (HARM) study によれば、
PIMsの同定割合は
・Beers 2012 criteria:44.4%
・STOPP & START 2008 criteria:34.1%であった。

STOPP 2008 criteriaにより同定されたPIMsでの入院はオッズ比2.30〔1.30~4.07〕
Beers 2012 criteriaにより同定されたPIMsでの入院はオッズ比1.49〔0.90~2.47〕であったと報告されている。〔Drug Saf. 2016 Jan;39(1):79-87. PMID: 26553305〕

PIMsをスクリーニングする範囲はBeers 2012 criteriaで広いが、実際に入院リスクはSTOPP 2008 criteriaで同定されたPIMsで有意に高いことから、Beers 2012 criteria はbroadなクライテリア、STOPP & START 2008 criteria:はnarrowなクライテリアと言えるかもしれない。まあこれは対象となるコホートにもよりかもしれないが。

PIMsによる入院リスクの同定は概ねSTOPP 2008 criteriaクライテリアで優れている印象はある。〔Age Ageing. 2008 Nov;37(6):673-9. PMID: 18829684〕ただしBeersは2015年で改訂されているので、今後の検討が必要であろう。

さて、PIMsが(この論文ではPIPsと記載されている)薬剤有害反応を引き起こすとして、具体的には心血管疾患系、神経系、転倒が挙げられるという結果だ。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ポリファーマシー関連が注目を集める中で、エビデンスも次々登場している。概念の定着は、科学的探究を促す。(現象の)観察→理論→実験という枠組みは、程度の差はあれ重要であるように思える。観察は前提理論の負荷を受けているかもしれないが(ハンソン:観察の理論負荷)、それでも観察は重要である。理論負荷を受けていようが受けていまいが、僕たちはそこから理論を構築する。しかし、理論のそのもの実在性は疑わしい。少なくとも介入により、理論対象の実在性を検証せねばなるまい。(ハッキング:介入実在論)

つまり、エビデンスにキャッチアップできないと、いつまでの古い理論からアップデートできないばかりか、古典的な理論に負荷された観察に基づく理論にいつまでもしがみつくことになろう。万物は流転する。昨日の記憶はもうすでに遠い過去なのだ。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Mar.23;2(61)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-金銭的インセンティブが医療関連行動を変えるか-

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[introduction]
「お金のために…」と言う行動原理は、たとえそれが社会全体の効用を改善したとしても、なにか「それは違うような…」というような感じがぬぐえないのはなぜだろう。代理出産ビジネスや、金銭的インセンティブを導入した学習システムなどなど…。

国民が健康的であれば、医療費が節約でき、経済的メリットがある。そのため、人の医療行動は社会経済に少なからず影響を及ぼすだろう。例えば、禁煙政策は必ずしも社会全体の効用を改善しないかもしれないが、喫煙者を雇用する会社にとって、この従業員が喫煙により健康アウトカムが悪化することは、健康保険で負担する医療費の増大と、健康アウトカムが悪化しなかった場合に従業員が会社にもたらす利益の減少が想定される。

本来健康になろうとする意志は、お金を得ることが目的ではないのであるが、金銭的インセンティブがあると人の医療行動はより改善する傾向にあるかもしれない。

なんの役にたつかわからないが、今回は金銭的インセンティブ介入の代表的エビデンスを少しまとめておく。

[減量するから金をくれ]

Volpp KG.et.al. Financial incentive-based approaches for weight loss: a randomized trial.JAMA. 2008 Dec 10;300(22):2631-7. PMID: 19066383

この研究は肥満治療のための減量を金銭的インセンティブにより誘導できるか検討したランダム化比較試験である。30歳~70歳の健常者57人が対象となった。被験者のBMIは30~40とかなり大きい。被験者は毎月の体重測定群、くじインセンティブプログラム(lottery incentive program)、保証金契約(deposit contract)の3群にランダム化されている。くじインセンティブプログラムとは宝くじのようなものが提供される仕組みだ。16週間(4か月)のプログラムを実施した結果、インセンティブ群2群はともに毎月の体重測定群よりも体重減少が大きかった。しかしながら7か月後においてはその差に統計的有意な差を認めなかった。インセンティブがなくなったとたんに明らかなリバウンドを起こしている現象は示唆に富む。

肥満者にとって減量が仮に寿命を延ばすとして、痩せたらお金がもらえるという制度が実用化されたらどうだろうか。

[ワルファリンを飲むから金をくれ]

Kimmel SE.et.al. Randomized trial of lottery-based incentives to improve warfarin adherence.
Am Heart J. 2012 Aug;164(2):268-74. PMID: 22877814

ワルファリンは特に心房細動を有する患者において、極力アドヒアランスを保ちたい薬剤である。脳梗塞ハイリスク心房細動患者に対するワルファリンの服用は数々の研究で、そのベネフィットが示されている。

この研究はワルファリン投与における、くじインセンティブ介入の効果を検討したランダム化比較試験である。100人の被験者が対象となった。ところが、6か月後、INRのコントロール不良者に明確な差はなかった。オッズ比0.93[95%信頼区間0.62~1.41]

ただ、サブグループ解析では、もともとINRが低かった人で、くじインセンティブプログラム群のコントロール改善が見られている。もともとアドヒアランスがわるい患者には金銭的インセンティブは有効かもしれない仮説を提起している。ワルファリンのアドヒアランスそのものではなくINRを評価項目にしていたため、あまり大きな差が出なかったのかもしれない。まあいずれにせよ、代用のアウトカムなのだが。

[薬を飲むから金をくれ]

Giuffrida A.et.al. Should we pay the patient? Review of financial incentives to enhance patient compliance. BMJ. 1997 Sep 20;315(7110):703-7. PMID: 9314754

薬をしっかり飲むことが良いことなのか、議論の余地もあろうが、なんと「お金を払うからしっかり薬を飲んでくれ」という介入を評価したレビューが97年に報告されている。これによれば11研究中10研究で金銭的インセンティブは患者のコンプライアンス(アドヒアランス)を改善したと結論されている。

これで寿命が延び、医療経済的メリットがあるかどうかは別問題ではあるが、残薬問題においうて、薬をしっかり飲んでほしければ、なんだかんだ介入を施すより、患者にお金を払えば一定の効果があるかもしれない。

[禁煙するから金をくれ]
この手の研究は多いが今回は2009年NEJMの報告をご紹介しよう

Volpp KG.et.al. A randomized, controlled trial of financial incentives for smoking cessation. N Engl J Med. 2009 Feb 12;360(7):699-709. PMID: 19213683

この研究は米国の多国籍企業の被雇用者878人が対象となった。禁煙プログラム情報を提供する442人と、それに加えて金銭的インセンティブを与える436人にランダム化されている。この研究における金銭的インセンティブは現金支給である。つまりプログラムを完了したら100 ドル、登録後 6 ヵ月以内に生化学検査で禁煙が確認された場合は250ドル、最初の禁煙が確認されてからさらに6 ヵ月間の禁煙達成で400 ドルが支払われた。その結果、インセンティブ群では情報提供のみの群に比べ、9 ヵ月後、12 ヵ月後、15 ヵ月後,18 ヵ月後いずれも禁煙割合が高かった。

[ワクチンも接種するし検診も受けるからするから金をくれ]

禁煙のみならず、検診の受診率やワクチン接種率なども金銭的インセンティブで上昇する可能性が示されている。

Giles EL.et.al. The effectiveness of financial incentives for health behaviour change: systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014 Mar 11;9(3):e90347. PMID: 24618584

この研究はランダム化比較試験16研究のシステマティックレビュー・メタ分析である。禁煙はもちろん、ワクチン接種/検診受診も有意に増加している(リスク比1.92[95%信頼区間1.46~2.53])

検診を受けてほしければ、なにか金銭的なインセンティブをつけたらいい。そうすれば病気をたくさん見つけて、医療機関の全体的な効用は上がるかもしれない。社会的なメリットは良く分からないが。ただワクチンに関しては、ただでさえ、普及が遅れている状況で、金銭的インセンティブは何か一定の効果があるかもしれないが…。それでも何か違う…感は否めない。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]静脈血栓塞栓症リスクは血液型と関連するか?(コホート研究PMID: 26939588)

Vasan SK.et.al. ABO Blood Group and Risk of Thromboembolic and Arterial Disease: A Study of 1.5 Million Blood Donors. Circulation. 2016 Mar 3.[Epub ahead of print] PMID: 26939588
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26939588

[背景] ABO式血液型は、静脈血栓塞栓症および動脈疾患のリスク増加に関連することが示唆されている。しかしながら、この示唆は小規模研究に基づいており、またその関連の大きさも矛盾しているケースが多々ある。

[方法と結果]SCANDAT2のデータベースを用いて、ABO式の血液型と静脈血栓塞栓症と動脈疾患イベントの関連を検討した。1987年~2012年のあいだにデンマーク、及びスウェーデンにおける血液ドナーが、その後、静脈血栓塞栓症、動脈疾患の診断を受けた。

研究期間中、1112072例の解析データのうち、静脈血栓塞栓症9,170件、動脈疾患24,653件が発生した。O型に比べて、非O型では、静脈血栓塞栓症、動脈疾患のリスクが増加した。妊娠関連静脈血栓症(発生率比2.22[95%1.77-2.79])深部静脈血栓症,(発生率比1.92; [95%1.80~2.05]),肺塞栓症 (発生率比1.80[95%信頼区間1.71-1.88])

[結論] この健常者集団において、非O型は静脈血栓イベントが30%高い可能性が示唆されている。ABO式血液型は、潜在的なリスクを評価することができる可能性があるが、その臨床応用には様々なリスク指標との比較が必要である。

[コメント]
Scandinavian Record-Linkage Studyを用いた研究は他にもある。
血液型と認知症リスク:PLoS One. 2015 Jun 4;10(6):e0129115. PMID: 26042891
血液型と疾患リスクの関連は興味深い。
血液型と血管疾患リスク:J Thromb Haemost. 2008 Jan;6(1):62-9. PMID: 1797365

[文献]妊娠中のジカウイルス (症例集積検討PMID: 26943629)

Brasil P.et.al. Zika Virus Infection in Pregnant Women in Rio de Janeiro - Preliminary Report. N Engl J Med. 2016 Mar 4. [Epub ahead of print] PMID: 26943629
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26943629

[背景]ジカウイルスは小児小頭症との関連が指摘されている。妊娠中のジカウイルス病の特性を特徴づけるために、リオデジャネイロにおける患者から、母体の臨床症状と胎児における急性ジカウイルス感染の影響を聴視した。

[方法]5日以内に発疹を有しており、血液、尿検体でPT-PCRを行い、ジカウイルスを特定した妊娠女性を組み入れた。被験者を前向きに調査し、臨床的、超音波によるデータを入手した。

[結果]2015年7月から2016年2月間までの間に、88人の女性が対象となった。88人の女性のうち、82%にあたる72人でジカウイルス陽性であった。ジカウイルス感染の時期は妊娠5週から38週であった。

主な臨床的症状は黄斑変性もしくは斑点状丘疹、関節痛、結膜充血、頭痛、発熱(28%)であった。ジカウイルス陽性者は陰性者に比べて、斑点状丘疹(44% vs. 12%, P=0.02),結膜充血(58% vs. 13%, P=0.002), リンパ節腫脹(40% vs. 7%, P=0.02).が多い。

超音波検査はジカウイルス陽性者の58%(42人)とジカウイルス陰性者全員に対して行われた。胎児異常は、ジカウイルス陽性者42人のうち12人(29%)で認められた。なお16人のジカウイルス陰性者では認められなかった。

有害所見は妊娠36週から38週での胎児死亡(2例)小頭症の有無にかかわらず、子宮内の成長制限(5例)心室の石灰化、もしくは中枢神経の病変(7例)羊水量の異常、脳、妻帯動脈流の異常(7例)

[結論] 軽度の臨床症状にもかかわらず、妊娠中ZIKA感染は胎児死亡、胎盤機能不全、胎児の成長制限、およびCNS損傷などの重大な転帰と関連する可能性がある。

[コメント]対象となったのは中央値で28.5歳の妊婦88例(ジカウイルス陽性者72例、陰性者16例)である。ジカウイルスの感染時期は妊娠6週から35週の間と推定される。小頭症がクローズアップされているが、この報告では、ジカウイルス感染が周産期アウトカムそのものを悪化させる可能性が示唆された。

なお小頭症児の脳組織からジカウイルスが検出されたとする報告は同じくN Engl J Med.2月10日電子版に掲載されている。〔Mlakar J.et.al.2016. PMID: 26862926〕ジカウイルスが垂直感染する可能性を示唆している。

ちなみに妊娠中のデングウイルス感染についても論文が出ていた。
妊娠中のデングウイルス感染は胎児アウトカムを悪化させるかもしれない。
Lancet Infect Dis. 2016 Mar 3 PMID: 26949028
http://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(16)00088-8/abstract


[文献]アスピリンでがんは予防できるか(コホート研究PMID: 26940135)

Cao Y.et.al. Population-wide Impact of Long-term Use of Aspirin and the Risk for Cancer. JAMA Oncol. 2016 Mar 3. [Epub ahead of print] PMID: 26940135
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26940135

[背景]The US Preventive Services Task Force は、米国成人に対して、大腸がんや心血管疾患予防のためにアスピリンを推奨している。しかしながら、アスピリンと他のがんとン関連性は、特にスクリーニングの文脈では不明である。スクリーニングの文脈におけるアスピリンと癌予防効果の関連を評価する。

[方法]the Nurses' Health Studyおよび、Health Professionals Follow-up Studyの米国における2つの大規模コホートを解析した。がん発生に対する相対危険、人口寄与リスクを検討した。

[結果]88084例の女性、47881例の男性を32年間追跡した。女性では20414例、男性では7571例が癌を発症した。アスピリンを定期的に使用していない人に比べて、定期的に使用していた人では、がん全体が少なかった。(RR, 0.97; 95% CI, 0.94-0.99),主に消化管がんが少なく(RR, 0.85; 95% CI, 0.80-0.91),大腸は特に少ない。(RR, 0.81; 95% CI, 0.75-0.88).

消化管がんに対するアスピリンのベネフィットは週に0.5錠から1.5錠、低リスクに関連している最少期間は6年であった。50歳以上の人では、定期的なアスピリン使用で、内視鏡検査を受けていない人で100000人年あたり33件の大腸がんを予防できると見積もられた(PAR, 17.0%)、内視鏡検査を受けている人でも、100000人年あたり18件の大腸がんを予防できると見積もられた。(PAR, 17.0%)

アスピリンの定期的な使用は乳癌や進行性前立腺がん、肺がんと関連性は認められなかった。

[結論]アスピリンは大腸がんリスクを低下させ、スクリーニングの利点を補完する。

[コメント]癌の予防のためのアスピリンの潜在的な利点は何か、というCQにこたえる大規模観察研究。少なくとも6年間のアスピリンの低用量の定期的な使用では、全体的な癌、消化管の主腫瘍の有意なリスク低下と関連していたという結果。特にスクリーニングを受けていない人たちでその恩恵は大きい可能性が示唆されている。交絡調整は多岐にわたり、入念な解析が行われている印象。詳細はTable 3を参照。
がん全体で減っているのは、あまりにも大規模な研究だからゆえという印象で、臨床的な差異はあまりないように思える。ただ大腸がんに関してはこれまでの研究結果を支持するものとなっている。実臨床での実効性が期待できるものなのか、今後の介入研究に期待したい。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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それはお金で買うようなもんじゃない、と言うような価値観は現代社会では徐々に薄れている。罰金と追加料金の区別さえ曖昧だ。レンタルDVDの延滞料は罰金なのか、追加料金なのか。あるいは交通ルールの違反は罰金なのか、追加料金なのか。

今回は何の役に立つかわからないシリーズとして金銭的インセンティブと医療行動について少しまとめてみた。ここから様々な思索を展開してきたいと思う。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Mar.16;2(60)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-キノロンと不整脈リスク-

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[モキシフロキサシンと不整脈リスク]
キノロン系薬剤には重篤な不整脈発症との関連性が指摘されており、2012年にカナダのケベック州の医療データベスを用いた症例対照解析が報告されている。〔Lapi F.et.al.2012. PMID: 22865870〕

この報告は重篤な不整脈を発症した症例1838例と、1症例に対して20例の対照36 670例を設定し、キノロンの使用割合から、キノロンと不整脈リスクの関連を検討したものである。その結果キノロン全体で、調整相対率比1.76 [95%信頼区間1.19–2.59]とわずかな上昇を認めた。薬剤別の解析では、本邦では承認が取り消されたガチフロキサシンでかなり高い。(調整率比7.38 [95%信頼区間2.30–23.70])

モキシフロキサシンでは3.30 [95%信頼区間1.47–7.37]と有意に上昇したが、レボフロキサシンでは1.29 [0.40–4.17]と統計的有意ではなかった。この時点で、モキシフロキサシンの不整脈リスクが懸念された。

[レボフロキサシンと不整脈リスク]
退役軍人コホートを用いた後ろ向きコホート研究でアジスロマイシン、レボフロキサシンと不整脈リスクが検討されている。〔Rao GA.et.al.2014 PMID: 24615307〕

平均56.8歳の米国退役軍人を対象にアモキシシリン979,380人, アジスロマイシン594,792人、レボフロキサシン201,798人が比較された。

レボフロキサシンはアモキシシリンに比べて、死亡(ハザード比2.49[95%信頼区間1.7-3.64) 重篤な心臓不整脈 (ハザード比2.43[95%信頼区間1.56-3.79])と有意に増加した。

[モキシフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンと不整脈リスク]
アモキシシリンクラブラン酸と比較してマクロライド、キノロンの不整脈リスクを検討した台湾のコホート研究は2015年に報告された。〔Chou HW.et.al.2015 PMID: 25409476〕

シプロフロキサシン205 205人、レボフロキサシン117 352人、モキシフロキサシン38 833人がアモキシシリンクラブラン酸1 102 358人と比較されているかなり大規模な研究である。なお、解析にあたりpropensity scoreによる交絡調整が行われている。

心室性不整脈は
モキシフロキサシン:調整オッズ比3.30 [95%信頼区間2.07–5.25]
シプロフロキサシン:調整オッズ比1.07 [95%信頼区間0.69–1.66]
レボフロキサシン:調整オッズ比1.41 [95%信頼区間0.91–2.18]

とこれまでの結果を概ね支持している。レボフロキサシンに関してはリスクがあったとしても、ごくわずかであろう。シプロフロキサシンでは明確な関連性は不明。やはりモキシフロキサシンが目立つ。これはモキシフロキサシンを使用せねばならない症例においてより重篤な患者であったというような選択バイアスは考慮できるだろう。

なお心臓死亡ではレボフロキサシンのリスク上昇も示唆されている。
モキシフロキサシン:調整オッズ比2.31[95%信頼区間1.39–3.84]
シプロフロキサシン:調整オッズ比0.70[95%信頼区間0.44–1.12]
レボフロキサシン:調整オッズ比1.77 [95%信頼区間1.22–2.59]

[シプロフロキサシンと不整脈リスク]
経口フルオロキノロンと重度不整脈との関連を検討した、デンマーク、スウェーデンの処方データを用いたコホート研究が報告された。〔Inghammar M.et.al.2016.PMID: 26920666〕

この研究は、デンマーク、スウェーデンにおける40歳〜79歳の909656人の経口キノロン使用者(シプロフロキサシン82.6%、ノルフロキサシン12.1%、オフロキサシン3.2%、モキシフロキサシン1.2%、その他のキノロン0.9%と909656人のペニシリンV使用者を傾向スコアマッチングにて解析したものだ。

追跡期間中144件の重篤な不整脈が発症した。キノロン現在使用者は66件(発生率3.4/1000人年)、ペニシリン使用者は78件(発生率4.0/1000人年)であった。

ペニシリンVと比較して、キノロンの発生率比は0.85[95%信頼区間0.61〜1.18]、絶対リスクは-13 [95%信頼区間-35〜16]件/1 000 000と明確な差はなかった。これまでの研究とは対照的にキノロンで不整脈リスクは増加していなかったと結論している。

しかしこの研究では、これまで不整脈リスクとの関連性が低いことが示唆されているシプロフロキサシンの使用が8割を超えている。全体の解析で、明確な差が出ないのは、これまでの研究を否定するものではない。モキシフロキサシンの使用者な1.2%にすぎない。

[キノロンと不整脈リスク]
現段階でシプロフロキサシンと重篤な不整脈の関連は不明である。関連があっても臨床上はごくわずかであろう。一方でモキシフロキサシンはそのリスク上昇に警戒が必要だと思われる。レボフロキサシンに関しては不明な部分も多いが、シプロフロキサシンよりはリスクを多めに見積もっても良いかもしれない。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]地震/津波被害と肺炎リスク(生態学的研究PMID: 26908515)

Shibata Y.et.al. Characteristics of pneumonia deaths after an earthquake and tsunami: an ecological study of 5.7 million participants in 131 municipalities, Japan. BMJ Open. 2016 Feb 23;6(2):e009190. PMID: 26908515
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26908515

[背景]2011年3月11日、東日本大震災が日本を襲った。いくつかの研究で地震は肺炎死亡を増やすことが報告されているにも関わらず、津波の被害がそのリスクを増加させるかどうかについてあまり検討されていない。地震/津波後の肺炎死亡リスクを検討した。

[研究デザイン]生態学的研究

[セッティング]日本の2010年と2012年の人口動態統計、2010年、2012年の国勢調査及び住民基本台帳より肺炎死亡に関するデータを調査。

[研究参加者]震災後から1年の間における、宮城県、岩手県、福島県住民570万人を対象とした。131の自治体は内陸部93(地震の影響を受けた地域)、と沿岸部38(津波と地震の影響を受けた地域)に分類した。

[評価項目]週の肺炎死亡者数は2010年3月12日から2012年3月9日まで集計された。観察された肺炎死亡(O)と性別および年齢ごとの予想される肺炎死亡数(E)を乗じて観察集団における性別と年齢の群の合計数を算出した。予想される肺炎の死亡率は、前年における肺炎の死亡率とした。標準化死亡比は年齢、性別により調整し(O/E)により求めた。標準化死亡比は内陸部、沿岸部で算出した。

[結果]震災1年後に6603人が肺炎により死亡した。標準化死亡比は第1週目から第12週目にかけて、有意に増加した。2週目にける標準化死亡比は沿岸部自治体2.49 (95% CI 2.02 to 7.64)、内陸部自治体1.48 (95% CI 1.24 to 2.61),であった。沿岸部自治体の標準化死亡比は内陸部よりも高かった。

[結論]地震は肺炎死亡を増加させるが、津波はさらにそのリスクを増加させる。

※※論文読解※※
東日本大震災から5年がたった。地震のみならず、津波は被災地に甚大な被害をもたらした。本研究は東日本大震災による地震、津波が肺炎死亡に寄与しているかどうかを検討した大規模データベースを用いた生態学的研究である。評価指標は標準化死亡比が用いられている。人口動態統計より、肺炎死亡の期待値をベースに、震災後に実際に観測された肺炎死亡者数の比を算出しているのである。当然ながら1を上回ると、その地域は、何らかの理由で検討されているアウトカム(本研究では肺炎死亡)が多く発生していることになる。

津波は創傷感染のみならず、汚染水の引水、ならびに固形物やほこりの吸引などから重症肺炎(津波肺'tsunami lung'.)を発症することが知られている。津波ではステノトロフォモナス・マルトフィリア、レジオネラ・ニューモフィラ、バークホルデリア・セパシア、および緑膿菌など検出のほか、化学物質も原因となるという。(Inoue Y.et.al.2012. PMID: 22057370)

これまで経験したことがない大災害であり、実際に東日本大震災クラスの大規模な津波と肺炎死亡との関連について、詳細なことは不明であった。本研究の対象者は福島県、宮城県、岩手県に在住の5 725 977人であった。そのうち沿岸部地域の居住者は1 801 324人だった。解析の結果はtable2にまとまっている。沿岸部、内陸部で標準化死亡比に差が出た。

もちろん因果関係を証明するような研究ではないかもしれない。津波や地震が直接的に肺炎死亡を増やしている原因であるという事は研究デザインの構造上結論できないものであるが、震災におけるこのような健康被害を検討できる研究デザインは限られている。現時点で大変貴重なデータであり、災害医療の現場における感染制御がいかに大切かを物語る。高齢者の多い地区、あるいは津波被害が想定される沿岸部などでは肺炎リスクに十分な警戒が必要であろう。

本研究では沿岸部と区分した地区と、実際の津波の影響は一致しない可能性が指摘されている。
『However, our study has some limitations. First, it classified coastal municipalities as tsunami-impacted areas. It was difficult to classify areas into tsunami-impacted areas accurately.』
これは肺炎死亡の過小評価につながる可能性があると記載がある。

また、人口移動の考慮がない旨もlimitationに挙げられている。つまり、沿岸部の人たちが、内陸部に避難したという事が考慮されていないのである。肺炎死亡リスクは実際には内陸部と沿岸部で大きな開きがあるかもしれない。これは津波の影響の過小評価につながるとしている。したがって、この研究で示されたリスクよりも現実はもっと過酷であったのだろう。

[文献]補完代替医療の安全性(診療データ二次解析PMID: 26277113)

Nightingale G.et.al. A pharmacist-led medication assessment used to determine a more precise estimation of the prevalence of complementary and alternative medication (CAM) use among ambulatory senior adults with cancer. J Geriatr Oncol. 2015 Sep;6(5):411-7. PMID: 26277113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26277113

[目的] complementary and alternative medication (CAM)、つまり補完代替的な薬剤使用は、中高年のがん患者において広く普及している。しかしながら、ポリファーマシー状態や、潜在的に不適切な薬剤使用の影響や、補完代替的な薬剤使用が、病状や薬剤数の増加に寄与するかどうかはほとんど知られていない。

[方法]がん診療を受けている高齢者258人に対する二次解析で、補完代替的薬剤使用やその影響を検討した。データは電子医療記録から取得した。補完代替的薬剤使用は、ビタミンを除くハーブ、ミネラル、他のサプリメントと定義した。補完代替的薬剤使用に影響するような患者背景で調整した。

[結果]薬剤師によって評価された234人を解析に含めた。平均年齢は79.9歳、女性64%、白人種74%、固形がんは87%で、併存疾患は平均7.69であった。補完代替的薬剤使用は26.5%にあたる62人で使用されていた。(median CAM use was 0 (range 0-10)?)補完代替的薬剤使用は1剤19.2%、2剤6.4%、3剤0.4%であった。補完代替的薬剤使用は使用なしと比較してポリファーマシー状態 (P=0.045),視力障害(P=0.048)、泌尿器合併症(P=0.021)と関連。

[結論]補完代替的薬剤使用は視力障害や泌尿器合併症に関連する可能性がある。

[コメント]癌患者では、代替医療に関して関心が高いこともまた事実と言える。しかし実際に効果が検証されたものはそれほど多くはない。サプリメントの摂取はベネフィットだけでなく、リスクの存在もまた軽視すべきではない。むしろリスクが上回っている可能性すらある。

complementary and alternative medicationは補完・代替医療と訳されることも多いが、PIMsという概念と横並びに位置するものとして、補完代替的薬剤使用と訳した。

[文献]施設入所高齢者のインフルエンザ予防にオセルタミビルは投与すべきか(非ランダム化比較試験 PMID: 25403263)

Gorišek Miksić N.et.al. Oseltamivir prophylaxis in controlling influenza outbreak in nursing homes: a comparison between three different approaches. Infection. 2015 Feb;43(1):73-81PMID: 25403263
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25403263

[目的]特別養護老人ホームにおいて、異なるインフルエンザの予防法とインフルエンザアウトブレイクを検討した。

[方法]3つの老人ホーム(NH1:208人、NH2:167人、NH3:164人の3施設)において2011年/2012年の季節性インフルエンザ流行期間中に、A型インフルエンザアウトブレイクの特性を比較した。NH1では全例にオセルタミビル75mg10日間を服用させた。NH2では直接曝露対策、NH3では予防対策なし。

[結果]インフルエンザ流行過程における急性上気道炎発症は、NH1で55/208 (26.4 %)、NH2で64/167 (38.3 %)、NH3で31/164 (18.9 %)であった。入院を要する急性上気道炎はNH1で2/55 (3.6 %), NH2で5/64 (7.8 %), NH3で5/31 (16.1 %)であった。上気道炎を発症した患者のうち、インフルエンザ流行中の死亡はNH1で1/55 (1.8 %)NH2で 1/64 (1.6 %), NH3で3/31 (9.7 %) であった。アウトブレイク期間はNH1で約8日間、NH2で14日間、NH3で12日間とNH1で短かった。

[結論]3つの老人ホーム施設におけるオセルタミビルによるインフルエンザ予防は、発生持続期間を短縮する。

[コメント]非ランダム化比較試験である。施設規模での検討も悪くはないが、せめてクラスターランダム化が必要であろう。施設居住者の全例にオセルタミビルを投与すべきか、この研究結果からでは結論することは難しい。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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東日本大震災から5年がたちました。当時僕は宇都宮勤務で震度6強の地震を経験しました。電柱がぐにゃぐにゃと揺れ、自動車は上下に跳ね上がり、立っていることも難しいような状況で、公共交通機関は完全にその機能を停止しました。

宇都宮市街周辺でも被害は多きく、瓦屋根の破損や住宅の外壁の崩落、大規模な停電。その後に続く計画停電の影響は計り知れないものがありました。幸い栃木県は沿岸地域からは遠く、津波の被害を受けることはありませんでしたが、それでも多くの方の日常生活に影響が出たことでしょう。

あらためて被災者の皆さまに、心より御見舞い申し上げます。また亡くなられた皆さまに、深く御冥福をお祈り申し上げます。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Mar.9;2(59)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-妊娠中のノイラミニダーゼ阻害薬-

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[妊娠中のインフルエンザ感染]

妊娠中のインフルエンザ感染症は重症化しやすいと言われている。194人の妊婦を対象とした2009 年のパンデミックインフルエンザ[influenza A(H1N1))での周産期アウトカムを検討したコホート研究によれば、低体重児(オッズ比1.78[95%信頼区間1.11-2.860])、早産(オッズ比2.21[95%信頼区間1.47-3.330])、乳児死亡(オッズ比4.46[95%信頼区間1.80-11.00])が有意に増加した。
〔Doyle TJ.et.al.2013PMID: 24205364〕

さらに、この研究では妊婦自身も集中治療室入室などのリスクも上昇したと報告されている。IUC入室の調整オッズ比22.26〔95%信頼区間9.69~51.12〕と著明なリスク上昇を示唆した。(“念のための入室”のようなもの含まれる可能性はあり、実際の重篤な転帰に限定すれば、結果を割り引いて考えても良いかもしれない。)

一般的に妊娠中のインフルエンザ感染症は重篤化しやすいばかりでなく、胎児にも影響があると考えられている。
〔Jamieson DJ.et.al.2009 PMID: 19643469〕
〔Rasmussen SA.et.al.2012. PMID: 22920056〕

妊婦の症状重篤化については様々な要因が考えられるが、妊娠中は免疫抑制状態であり、それが重症化に関連しているのではないかという仮説もある。自己免疫疾患が妊娠中に軽快することからもこの仮説が指示されているだ。
〔Memoli MJ.et,al,2013. PMID: 23170853〕

国内で使用できるノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル®、リレンザ®、イナビル®)は妊婦に対して有益性投与となっている。リスクを考慮すれば、妊娠中のインフルエンザ感染に対するノイラミニダーゼ阻害薬は多くの場合でベネフィットが上回る可能性がある。2009年のパンデミック時において米国疾病管理予防センター(CDC)は全ての妊婦に抗インフルエンザ薬を推奨している
「Treatment with antiviral medications is recommended for pregnant women or women who are up to 2 weeks postpartum (including following pregnancy loss) with suspected or confirmed influenza and can be taken during any trimester of pregnancy.」
http://www.cdc.gov/h1n1flu/pregnancy/antiviral_messages.htm)

[妊娠中のノイラミニダーゼ阻害薬使用]

近年の文献報告を中心にまとめておく。

①イギリスにおけるコホート研究〔Dunstan HJ.et,al.2014.PMID: 24602087〕
妊娠中にリレンザ(ザナミビル)使用180人、タミフル(オセルタミビル)使用27人と、ノイラミニダーゼ阻害薬の使用の無い575人を比較して、先天性奇形、早産、低出生体重を検討。主な調整オッズ比(95%信頼区間)は以下の通り。

先天性奇形
・zanamivir 0.37(0.02~2.70)
・oseltamivir 0.81(0.05,~14.15)
早産
・zanamivir 0.95(0.45~1.89)
・oseltamivir 1.68(0.38~5.38)
低体重
・zanamivir 0.94(0.25~2.90)
・oseltamivir 4.12(0.59~17.99)

いずれも妊娠の有害転帰との関連は見られなかったと結論。

②フランスにおけるコホート研究〔Beau AB.et,al.2014.PMID: 24512604〕
妊娠中のタミフル®使用者337人とタミフル®の使用がない674人を比較して先天性奇形や早産、低体重、流産(妊娠損失)新生児病理学的異常を検討。各アウトカムの相対指標(95%信頼区間)は以下の通り。

・流産1.52(0.80-2.91)
・早産0.64(0.31-1.27),
・新生児の病理学的異0.62;(0.23-1.54)

この研究でも、有害な妊娠転帰と妊娠中のオセルタミビルへの曝露との間に有意な関連はみられなかったとしている。

③カナダにおけるコホート研究〔Xie HY.et.al.2013. PMID: 23333544〕

妊産婦新生児データベースから2009年11月から2010年4月までにカナダで単生児を出産した女性55,355人が対象。インフルエンザの治療、または予防のためタミフル®投与1237人と、タミフル®の使用なしを比較して、周産期アウトカムを検討している。その結果、胎児発育遅延(small for gestational age)はむしろオセルタミビル群で減少。(リスク比0.77[95%信頼区間0.60~0.98])

④タミフル®市販後データの解析〔Wollenhaupt M.et.al.2014. PMID: 24995623〕
妊娠中のタミフル®使用に関する安全性について2012年4月30日までに報告されたデータを解析したもの。2128例の妊娠女性の転帰について情報が集められている。その多く(なんと90%以上)が2009年のパンデミックインフルエンザの報告でした。主な周産期アウトカムは以下の通りです。

・自然流産:2.9% (61/2128)
・治療的中絶:1.8% (39/2128)
・早産:4.2% (84/2000 live births),

これは一般集団のバックグラウンドよりも低い値であったとしている。先天性異常は81例の報告があったものの、タミフル®との因果関係は示唆されず。タミフル®による妊娠、胎児への影響はほとんどないと結論。

[まとめ]
。日本産婦人科学会では妊娠中においてもタミフルの使用を推奨している。

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対してのインフルエンザに対する対応
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20101222.html

しかしながら、イナビル®に関しては使用例が少なく、十分な検討ができていないようだ。以上を踏まえると、基本的に妊娠中のノイラミニダーゼ阻害は周産期アウトカムを悪化させるという根拠はほとんどなく、妊娠中の母体リスクを考慮すれば、その積極的な投与が推奨される。薬剤選択について、臨床的差異はほとんどないものと考えられるが、現時点でデータが豊富なタミフル®を推奨することは大きな誤りではないように思える。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]利尿薬で認知症は予防できるか(メタ分析PMID: 26886565)

Tully PJ.et.al. Diuretic antihypertensive drugs and incident dementia risk: a systematic review, meta-analysis and meta-regression of prospective studies. J Hypertens. 2016 Feb 17. [Epub ahead of print] PMID: 26886565
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26886565

[目的]
利尿薬は高齢者における高血圧治療の主流である。しかしながら、認知症への補助効果は過小評価されている。降圧利尿薬と認知症リスク低下について定量化を試みた。

[方法]2015年7月まで電子データベースを検索。認知症を有さない人を対象に、利尿薬の使用有無を比較したプライマリケア、地域コホートやランダム化比較試験を組み入れた。標準的なクライテリアに基づく認知症の診断を評価した。fixed-effects modelsを用いてメタ分析を行い、ハザード比と95%信頼区間を算出した。

[結果]15研究(52599人、認知症3444件、年齢中央値76.1歳)が解析対象となり、追跡中央値は6.1年であった。利尿剤は認知症のリスクを有意に低下させた。 (HR 0.83; 95% CI 0.76-0.91, P < 0.0001, I = 0) アルツハイマー型認知症も低下した。 (HR 0.82; 95% CI 0.71-0.94, P = 0.004, I = 0).層別解析ではK保持性利尿薬、チアジド、ループ利尿薬に差が出た。(P = 0.01)

[結論]降圧利尿薬は異質性なしに認知症リスク低下と関連している。


[コメント]観察研究も含むメタ分析なので、因果を決定的にするものではない。Stratified analysis indicated a difference between potassium sparing, thiazide and loop diuretics (P = 0.01).と記載があり、利尿薬により、その差に違いがあるようだが、抄録に詳細の記載はない。今後注目したいテーマ。

[文献]不適切な抗菌薬処方を減らすための介入(クラスターRCT PMID: 26864410)

Meeker D.et.al. Effect of Behavioral Interventions on Inappropriate Antibiotic Prescribing Among Primary Care Practices: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016 Feb 9;315(6):562-70.PMID: 26864410
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26864410

[重要]行動科学に基づく介入は不適切な抗菌薬使用を減らすかもしれない。

[目的]行動介入の効果、及び、急性呼吸器感染症により受診した患者への不適切な抗菌薬処方の割合を評価する

[研究デザイン、参加者]ボストン、ロサンゼルスにおける47のプライマリケア施設で行われたクラスターランダム化比較試験。参加者は18か月にわたり、248人の組み入れられた医師による4つの治療群(コントロール群と3つの治療介入)に割り付けられた。全ての医師が、ガイドラインによる抗菌薬使用に関する教育を受けている。介入は2011年9月1日から2012年10月1日にかけて行われ、2014年4月1日までフォローされた。合併症や感染症を併存している患者は除外された。

[介入] 3つの行動介入が単独または組み合わせて実施された。
①抗菌薬以外の治療を表示する代替提案
②抗菌薬を使用するためにフリーテキストでその理由を記載せねばならない、抗菌薬使用正当化介入
③抗菌薬の不適切処方率を処方医にメール送信する同僚との比較介入

[評価項目]18か月における、抗菌薬が不適切となる診断(非特異的上気道感染、急性気管支炎、インフルエンザに対する抗菌薬使用割合。

[結果]16959件(平均48歳、67%が女性)の受診のうち、抗菌薬の使用が不適切な急性呼吸器感染症14753件の受診(平均47歳、69%が女性)があった。コントロール群に比べて、抗菌薬の処方は18か月で平均24.1%から13.1%に減少した。(絶対差―11%)

代替提案では22.1%から6.1%(絶対差―16%)に減少し、コントロール群との差は-5.0% [95% CI, -7.8% to 0.1%]であった。

抗菌薬使用正当化介入では23.2%から5.2%(絶対差-18.1%)に減少し、紺とトール群との差は-7.0% [95% CI, -9.1% to -2.9%]であった。

同僚との比較介入では19.9%から3.7%(絶対差-16.3%)に減少し、コントロール群との差は-5.2% [95% CI, -6.9% to -1.6%]; P < .001).であった。

それぞれの介入間で統計的有意な差は認めなかった。

[結論]行動科学による介入が抗菌薬の不適切使用を減らす可能性がある。

[コメント]非常に興味深い論文。抗菌薬の処方理由を処方箋備考欄に記載することは薬剤師の立場から見ても、とても有用なように思える。必要に応じて疑義照会をしやすくなり、さらに不適切な抗菌薬使用が減る可能性がある。

呼吸器感染症に対する抗菌薬の遅延処方戦略に関してはRCTが報告されていた。
〔de la Poza Abad M.et.al. 2016.PMID: 26719947〕
スペインにおける23のプライマリケアセンターから405人の合併症の無い急性呼吸器感染症患者を対象としたオープンラベルランダム化比較試験で、

①患者主導の遅延処方戦略(増悪時に抗菌薬使用指示)
②プライマリケアセンターより処方をうける遅延処方戦略(増悪時に再診指示)
③直ちに抗菌薬投与
④抗菌薬を投与しない

の4群を比較し、症状持続期間と重症度(6ポイントリッカートスケール使用。3,4は中等度、5,6は重度と定義)が検討された。参加者405人のうち398人がITT解析され、34.2%が男性、平均45歳であった。症状の持続期間は、すぐに抗菌薬投与=11.7日、増悪したら再診する遅延処方戦略=12.3、患者主導の遅延処方戦略=13.1、抗菌薬投与なし=14.4(すぐに抗菌薬投与に対して有意差あり)であった。あらゆる症状の最も高い重症度中央値はすべての群で5であった。重症度、症状持続期間は臨床的にはあまり明確ではなく、遅延処方戦略を支持する結論となっている。

[文献]外が寒いと心血管疾患は増えるのか。(コホート研究PMID: 25690792)

Yang L, Li L.et.al. Outdoor temperature, blood pressure, and cardiovascular disease mortality among 23 000 individuals with diagnosed cardiovascular diseases from China. Eur Heart J. 2015 May 14;36(19):1178-85. PMID: 25690792
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25690792

[イントロダクション]血圧は心血管疾患の主要な要因であり、外気温が下がると、両者ともそれを上昇させる。しかしながら、過去に心血管疾患の既往がある患者において、血圧や心血管疾が季節によりどう変化するかは未だ限定的な情報しかない。

[方法]2004年から2008年におけるChina Kadoorie Biobankのコホートデータより、中国の10地域から心血管疾患の既往がある23040人(平均61歳)を解析した。7年間の追跡で、1484件の心血管疾患が報告された。研究開始時のデータを、収縮期血圧と外気温の変動の関連を季節ごとに評価するために使用した。全解析は年齢、性別、地域で調整した。

[結果]平均血圧は夏季よりも冬季でわずかだが有意に高かった。(145 vs. 136 mmHg, P < 0.001), 特にcentral heating(中央暖房装置)の設備のない地域で高かった。5度以上におていは、外気温が10度低下するごとに収縮期血圧が6.2 mmHg上昇した。また収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに、心血管疾患死亡が21%[95%信頼区間16〜27]上昇した。心血管疾患死亡は夏季に比べて冬季で41%[95%信頼区間21〜63]多かった。

[結論]心血管疾患の既往のある中国の成人において、冬季には血圧および心血管疾患が上昇する。寒い時期における注意深い観察とより積極的な降圧は心血管死亡を減らすために有用である。

[コメント]この研究は心血管疾患の診断を過去に受けたものが対象となっている。研究開始時の血圧は、平均収縮期血圧141mmHg、拡張期血圧80mmHg、BMIは24.9であった。喫煙者は43%と多い印象。夏季の平均気温は25.5℃、冬季の平均気温は3.8℃である。気温差は21.7℃にもなる。

外気温と血圧、心血管疾患の関連を検討した大規模研究はあまりないようである。貴重な研究。交絡補正は、高血圧治療、喫煙、飲酒、BMI、教育、年齢、性別、地域。

なお同コホートを用いた過去の研究で外気温が低いと高血圧の診断が増えることが示されている。〔Su D.et.al.2014. PMID: 25135908〕

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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今年はインフルエンザの流行が遅く、だらだらと続いているようだ。妊娠中のインフルエンザ流行はなかなか厄介な話である。同居家族も十分に注意しなくてはならない。それでも同居家族が罹患した場合、抗インフルエンザ薬の予防投与が行われることも多いが、この時に問題となるのが、妊娠中の抗インフルエンザ薬は安全か、という問題である。このテーマは問い合わせも多く、これを機会にまとめておいた。

なお情報はすぐに更新される可能性があり、現時点での示唆が、必ずしも妥当とは限らないことに注意が必要である。「情報は常に暫定的」なのだ。

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