伊是名島では、雨が降り続いていた。 キャンプ地で、眠りに付こうとしていた頃、さらに強風が吹き始めていた。 僕は、ハンモックでのキャンプをあきらめ、バンに荷物を突っ込んで、シートで横になっていた。突然の雷。20mを超える突風。 タープが狂ったように踊る。 ポールが折れたテントもあった。 この状況がしばらく続いた。その後、村の議員さんが見回りに来て、「公民館に避難しませんか?」と、暖かい言葉をかけていただきました。 ・・・で、久しぶりのお布団。冒険の旅には、思い出までが付いてきました。
強烈な向かい風が、カヤックを押し戻そうとする。 この橋をくぐれば、伊平屋島とお別れだ。 ここから先の海峡は、時間によっては激潮になる場所だ。波も高い。 単独の旅ならば引き返している状況だった。「早く渡れば、下げ潮が残っている」と忠さんは言った。 海図と潮汐表だけを見ている僕には「?」だった。「上げでしょ?」 皆が彼の判断を信じて、視界が悪く目標の伊是名島が見えない海峡をコンパス進路で進んでいく。海峡の半ばを過ぎたところで、突然パドルが軽くなった。 「あっ、今潮が変ったね!」 僕たちのカヤックは、下げの潮に運ばれはじめた。 そして、伊是名島の島影がはっきりと見えてきたのだ。 酔っ払いの忠さんではない、プロのガイドの姿を見た瞬間だった。
目的地を目指して出発。 今日の目的地は? 漠然とした計画はあるものの、自然の中ではその時折に色々な状況が起こりうる。 だから、「絶対に行かなければならない」場所などない。 天候、潮流、体力、上陸場所の状況・・・etc. 全てが判断材料だ。 「どの浜に何時に到着するか、どこでキャンプするか、行動計画書を一週間前までに提出すること」・・・と、言われても、できるわけないよね。状況を無視して、計画通りに行動したら、だいいち危ない。それはさておき、今日はもう少し先に進めそうだ。
ちょうど10年前のことだ。 僕がカヤックの初心者だった頃、今日と同じフェザークラフトのカヤックで慶良間の海を旅した。 その時、僕のカヤックを一緒に漕いでくれたのが、写真左の野村氏だ。 同じくそのツアー参加者で、僕らのカヤックの写真を残してくれたのが、写真中央の山下氏だ。 10年の時を経て再会しても、その空白の時間を感じることはない。 やはり、この海はタイムトンネルなのか。