著者<大崎梢>は、元書店員であり、連作短編集
『配達あかずきん』にて作家デビューしています。本好きとしては元書店員らしいタイトルの
『平台がお待ちかね』などがあり、気になる作家のひとりです。
そんな著者の総合出版社「千石者」を舞台にした作品として、
『プリティが多すぎる』 ・
『クローバー・レイン』 ・ 『スクープのたまご』の続く第4作目が本書『彼方のゴールド』になります。
主人公は、老舗出版社「千石社」で営業部から総合スポーツ誌『Gold』編集部に異動になった「目黒明日香」、26歳です。勝ち負けにこだわるスポーツへの苦手意識が強かったのですが、仕事は野球にバスケットボール、水泳、陸上と多方面をカバーしながら、取材ライターやカメラマンとともにアスリートの努力と裏側を取材するうちに、スポーツの魅力と、伝える仕事の面白さを知っていきます。
「明日香」自身は小学生の途中までスイミングスクールに通ったことがある程度でしたが、その時の思い出が、リンクするように構成された全6章の構成で、出版業界の裏側とアスリートの裏側を絡めながらスポーツの魅力の世界を描いています。
「千石社」社員のカメラマン「凡野ゆかり」が脇役ながら、主人公「明日香」以上の存在感を出していました。