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地域医療の見え方  2016.Jul.20;2(74)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱戦略-

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[イントロダクション]

ベンゾジアゼピン系薬剤は漫然投与がなされやすい薬剤である。加齢そのものがベンゾジアゼピン系薬剤漫然投与のリスクファクターだと言われているが、米国においては医師における公衆衛生上の問題過小評価が指摘されている。
※J Am Geriatr Soc. 2000 Jul;48(7):811-6. PMID: 10894322
※J Gen Intern Med. 2007 Mar;22(3):303-7. PMID: 17356959

このような漫然投与はベンゾジアゼピンの常用量依存をきたす。古典的にはベンゾジアゼピン退薬症状は、内服が8か月以内では5%であったのに対し、内服が8か月以上に及ぶと43%までにも達することから8か月以上の内服は常用量依存形成のリスクと言われている。
※JAMA. 1983 Aug 12;250(6):767-71.PMID: 6348314

もちろん高用量、継続投与はリスクファクターであるため、本来であれば必要最小量を用いるべきことは明らかである。
※臨床薬理. 1996;27(2):465-46.

しかし、すでに1年以上ベンゾジアゼピン系薬剤を内服しているような症例では、多くの場合で常用量依存が形成されており、その離脱は容易ではない。本稿ではベンゾジアゼピン系薬剤の離脱戦略についてまとめる。[]

[ベンゾジアゼピン系薬剤離脱戦略]

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱戦略は大きく
①ベンゾ以外の薬剤へ代替
②ベンゾを漸減
③ベンゾのリスクについてなど教育的介入
④認知行動療法
に分けられ、これらを単独もしくは組み合わせて用いる。

英国で行われたベンゾジアゼピン系薬剤離脱に関するランダム化比較試験のシステマティックレビューによれば、家庭医からのベンゾジアゼピン系薬剤の減量もしくは中止に関する手紙、情報提供、面談など、最小限の介入を受けると、標準ケアに比べて約2倍中止・減量が多いと報告されている。
※Br J Gen Pract. 2011 Sep;61(590):e573-8. PMID: 22152740

このレビューに組み入れられたのは3つのランダム化比較試験ではあり、3か月以上ベンゾジアゼピン系薬剤を使用している18歳以上の615人が解析対象になっている。主な介入は長期使用における懸念について、潜在的な副作用について、中止にあたり離脱症状が出ないような漸減方法のアドバイスなどが含まれている。その結果、ベンゾジアゼピン系薬剤減量相対危険は2.04[95%信頼区間1.5~2.8]、中止は2.3[95%信頼区間1.3~4.2]、NNT12となっている。

減量、中止介入を試みると、通常ケアに比べて約2倍の中止、減量が期待でき、そのNNTは12人というところであるが、以降、個別に戦略の実効性を見ていこう。

[代替+漸減戦略]
6か月以上ベンゾジアゼピン系薬剤を使用(平均4.15年)している44歳以上の51人を対象に、2~4週毎に用量を25%ずつ減量し、ヒドロキシジン25mg/日などを補助的に使用して離脱を試みた前後比較研究が報告されている。その結果、6か月後、80.4%でベンゾジアゼピン中止に成功し、64% が1年間、離脱を維持。またうつ症状スコアやQOLスコアの改善も示唆と報告されている。
※BMC Res Notes. 2012 Dec 13;5:684. PMID: 23237104

ヒドロキシジンの抗コリン作用には注意が必要であろうが、2~4週毎に25%ずつの減量+代替戦略はベンゾジアゼピン系薬剤離脱の安全な離脱に有用であろう可能性が示されている。

[教育的介入+漸減(6か月有用性)]
約10年内服している高齢者303人(平均75歳)を対象としたクラスターランダム化比較試験で教育的介入(リスクや漸減方法)(148人)と通常のケア(155人)を比較し、6か月後のベンゾジアゼピン中止を検討した結果、教育的介入群で8.3倍多い中止が多いと報告されている。(調整オッズ比8.3[95%信頼区間 3.3~20.9])NNT4.35人であり約5人に1人は成功することが示されている。
※JAMA Intern Med. 2014 Jun;174(6):890-8.PMID: 24733354

この結果は6か月という短期間の有用性であり、その後もベンゾジアゼピン系薬剤が中止できているかどうかについては不明である。

[教育的介入+漸減(1年有用性)]
6か月以上内服している532人(年齢中央値64歳)を対象にしたクラスターランダム化比較試験で、診察する医師に対する教育的介入および2~3週ごとに10~25%ずつ減量する介入と通常ケアを比較しベンゾジアゼピン中止を検討した結果12か月後のベンゾジアゼピン中止は約3倍多いと報告されている。

※Br J Psychiatry. 2014 Jun;204(6):471-9. PMID: 24526745

本研究ではプライマリケアにおいて隔週ごとの経過観察により漸減を行う構造化教育的介入(structured educational intervention with gradual tapering backed up fortnightly follow-up:SIF)と、書面説明で漸減を行う構造化教育的介入(structured educational intervention supported by written instruction:SIW)の2つが検討されている。

研究に参加した家庭医は、通常ケア、SIF,SIWの3群にランダム化され、研究の概要について1時間の講義、SIF及びSIW群の医師は、ベンゾジアゼピンの適切な減量について追加で3時間の講義を受講。また,SIF群の医師は隔週ごとの経過観察についての講義を更に30分受けた。減量は2~3週ごとに10~25%ずつ段階的に行われ、ベンゾジアゼピンから長時間作用型薬剤への切り替えは許可されている。

2ヶ月後のベンゾジアゼピン中止はSIW群3.01[95%信頼区間2.03-4.46]、SIF群3.00[95%信頼区間2.04-4.40]。SIF群とSIW群の間で有効性に有意差はなかった。

[教育的介入+漸減(3年有用性)]
介入から6ヶ月、そして1年におけるベンゾジアゼピン中止における介入の有用性は示されているが、さらに長期となるとどうであろうか。PMID: 24526745(上記研究)の長期追跡が出ている。
※Br J Gen Pract. 2016 Feb;66(643):e85-91. PMID: 26823269

532人を対象とした離脱戦略検討であったが36か月後のベンゾジアゼピン中止割合は以下の通りであった。
・SIW群66/168 (39.2%) 相対危険1.51 [95% 信頼区間1.10~2.05]
・SIF群79/191 (41.3%) 相対危険1.59 [95%信頼区間 1.15~2.19]
・標準ケア 45/173 (26.0%) (reference)
全体では131/188 (69.7%)の症例で離脱を維持していたと報告されている。介入が成功すれば約7割で3年間は維持できる可能性がある。またこの検討でベンゾジアゼピンの中止で不安、抑うつ、睡眠の質に大きな影響はなかったと報告されている。

[まとめ]
ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱には2~4週ごとに10%~25%の減量
患者、処方医そうほうともに教育的介入は有用
代替として抗うつ薬や抗ヒスタミン薬なども考慮可能である。
離脱介入成功者の7割は3年ほど離脱を維持できる。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]サイクリングで2型糖尿病は予防できるか(コホート研究PMID: 27403867)

Rasmussen MG.et.al. Associations between Recreational and Commuter Cycling, Changes in Cycling, and Type 2 Diabetes Risk: A Cohort Study of Danish Men and Women. PLoS Med. 2016 Jul 12;13(7):e1002076. PMID: 27403867
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27403867

[背景]サイクリングは世界の多くの国において、公衆衛生上の問題に対する潜在的な改善をもたらしうる娯楽的な活動であり、通勤スタイルである。本研究の目的は娯楽や通勤におけるサイクリングと2型糖尿病発症リスクの関連をデンマークのDiet, Cancer and Health cohort studyにより検討することである。

[方法と結果]
1993年~1997年において50歳から65歳で2型糖尿病、あるいはその他の慢性疾患を有さない24623人の男性と27890人の女性が検討された。またサイクリング習慣や生活習慣についてアンケート調査された。

Cox比例ハザードモデルを用いて、2型糖尿病発症のリスクファクターで交絡補正し、娯楽や通勤でのサイクリングと糖尿病発症リスクの関連を検討した。

平均14.2年の追跡期間中、6779例が糖尿病を発症した。多変量解析による調整ハザード比(95%信頼区間)は週のサイクリング時間(分)が0, 1-60, 61-150, 151-300, >300で、それぞれ1、0.87 (0.82, 0.93), 0.83 (0.77, 0.89), 0.80 (0.74, 0.86) 0.80 (0.74, 0.87) であった。

サイクリングの季節ごとの解析ではサイクリングをしない人に比べて、夏季0.88 (0.83, 0.94),冬季0.80 (0.76, 0.85)であった。

[結論]通勤や娯楽のためのサイクリングは2型糖尿病発症リスクを低下させる。

[文献]降圧療法の圧倒的ベネフィットの裏には…(メタ分析PMID: 27228434)

Thomopoulos C.et.al. Effects of blood pressure lowering treatment in hypertension: 8. Outcome reductions vs. discontinuations because of adverse drug events - meta-analyses of randomized trials. J Hypertens. 2016 Aug;34(8):1451-63. PMID: 27228434
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27228434

[背景]
これまでに報告されている降圧療法に関するランダム化比較試験のメタ分析は高血圧患者の心血管アウトカム発症リスク低下に関する圧倒的なエビデンスを提示する。しかし、降圧療法における有害イベントについてはシステマティックに検討されていなかった。

[目的]
降圧療法に関するランダム化比較試験において、治療に関連した有害イベントや治療に余®もたらされる死亡や疾病状態のリスク低下ベネフィットに見合う有害事象の負担を検討する。

[方法]降圧療法に関するランダム化比較試験(実薬対プラセボもしくは低用量治療)70研究、255970例を解析対象とした。有害事象の指標としては治療の有害事象に起因する永続的な治療中止とした。収縮期血圧/拡張期血圧=10/5mmHgで標準化したリスク比、95%信頼区間を算出。ランダムエフェクトモデルを用いて、7つ非致死的アウトカムと有害事象による治療中止を検討した。

[結果]
44のランダム化比較試験のデータは有害事象による治療中止もしくは6つ以上の重大なイベントを報告していた。(解析対象179949例)

50のランダム化比較試験において、主要な心血管イベント24%減少は、治療中止の89%増加に関連していた。5年間で1000人当たり、33の主要な心血管イベントを予防する代わり84件の中止をもたらしていた。

Metaregression analysis によれば、アウトカム減少や治療中心増加は、収縮期血圧、拡張期血圧の低下範囲に関連していた。

[結論]降圧療法による有害イベントの増加は血圧低下の圧倒的ベネフィットを否定するものではないが、降圧療法時には常に議論されるべきであろう。

[文献]H2RAはせん妄発症に関連している可能性が高いし、PPIという選択でせん妄リスクを回避できるかもしれない。(比較研究PMID: 22949902)

Fujii S.et.al. Comparison and analysis of delirium induced by histamine h(2) receptor antagonists and proton pump inhibitors in cancer patients. Case Rep Oncol. 2012 May;5(2):409-12. PMID: 22949902
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22949902

[目的]H2受容体拮抗薬は薬剤関連せん妄を引き起こすことが報告されている。せん妄を発症に関して、食道癌の外科的治療後の吻合部潰瘍予防にH2受容体拮抗薬による治療とPPIによる治療を比較した。

[方法]せん妄の発症と重症は後ろ向きに比較した。H2RA群30例(65.2歳)、PPI群30例(65.2歳)せん妄の診断はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-IV-Textに準拠した。せん妄重症度はDelirium Rating Scale (DRS)で評価した。

[結果]せん妄の発症はPPI群で有意に低かった。(p = 0.047) せん妄を発症したH2RA群の11例において、H2RAを中止するとDRSスコアは有意に低下した。(p = 0.009).H2RAを服用していた3人の患者では中止により、3日後のDRSスコアが中止前と比べて50%以上も減少した。

[結論]H2RAからPPIへの変更でせん妄発症リスクが低下できる可能性がある。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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いよいよ夏本格という感じですが、なかなかブログ記事をまとめる時間がないのが悩み…。隔週更新は最低限維持していきたいと思います。

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2016.Jul.6;2(73)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-薬剤と骨折リスクの考え方-

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[introduction]
薬剤による骨折リスクを考える際には、薬物有害反応Adverse Drug Reactionによる薬剤の直接的な作用がもたらす骨折リスクと、薬物有害事象Adverse Drug Eventによる薬剤の間接的な作用がもたらす骨折リスクに分けて考える必要がある。

薬物有害反応による骨折リスクとしては例えば、薬剤性骨粗鬆症を引き起こす代用的な薬剤であるステロイド(J Bone Miner Res. 2004 Jun;19(6):893-9. PMID: 15125788)、骨芽細胞の機能低下が示唆されているピオグリタゾン(CMAJ. 2009 Jan 6;180(1):32-9. PMID: 19073651)Caの吸収阻害が示唆されているプロトンポンプ阻害薬(JAMA. 2006 Dec 27;296(24):2947-53. PMID: 17190895)などがあげられる。

薬物有害事象による骨折リスクは、姿勢制御に影響を与える薬剤がこれに該当する。ベンゾジアゼピン系薬剤は薬物有害事象による骨折を引き起こす可能性のある代表的な薬剤であろう。ベンゾジアゼピン系薬剤は転倒リスクを増加させ(Arch Intern Med. 2009 Nov 23;169(21):1952-60. PMID: 19933955)大腿骨頸部骨折リスクを増加させる(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2010 Dec;19(12):1248-55.)

[骨折の予後]
骨折を起こすとその予後はあまりよろしくない。特に高齢者ともなると死亡リスクの増加が示唆される。カナダにおける50歳以上の7753人を対象としたコホート研究によれば、腿骨頸部骨折から1年目で死亡リスクが3.17倍[95%信頼区間1.35~7.42]増加することが示されている。(CMAJ. 2009 Sep 1;181(5):265-71 PMID:19654194)

また、また三重県の骨粗鬆症患者419人(平均73歳)を対象とし、10年間追跡したコホート研究では、椎体骨折でも生命予後悪化が示されており、さらに骨折箇所増加に伴い生存率が低下することも示されている。(J Orthop Surg (Hong Kong). 2010 Aug;18(2):148-52. PMID: 20808003)

[fall-risk-increasing drugs: FRIDs]
薬剤と骨折リスクについて、薬物有害反応によるものと、薬物有害事象によるものについて述べたが、本稿では後者に注目し、特に近年になり概念化された「転倒リスクを増加させる薬剤群fall-risk-increasing drugs: FRIDs」についてまとめる。

Fall risk-increasing drugs (FRIDs)はSwedish National Board of Health and Welfare (NBHW)によりリストアップされており、催眠鎮静薬、抗うつ薬、抗精神病薬(リチウムを除く)、ベンゾジアゼピン、脂質異常症を除く心血管用薬、抗コリン薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、オピオイドが含まれている。

■FRIDsは骨折リスクを増加させる。
75歳以上の38407人を対象にFRIDsの使用と骨折リスクの関連を検討したスウェーデンのコホート研究では、年齢、性別、疾患状態で補正後、大腿骨頸部骨折はオピオイド使用 (OR 1.56, 95% CI 1.34-1.82), ドパミン作動薬使用(OR 1.78, 95% CI 1.24-2.55), 抗不安薬使用 (OR 1.31, 95% CI 1.11-1.54), 抗うつ薬使用(OR 1.66, 95% CI 1.42-1.95) 催眠鎮静薬使用(OR 1.31, 95% CI 1.13-1.52)と報告されている。(BMC Geriatr. 2014 Dec 4;14:131. PMID: 25475854)

■めまい患者の多くでFRIDsを使用している。
めまいを主訴に耳鼻咽喉科を受診した292例(平均53.3歳)の後ろ向きカルテレビューでは40.8%でFRIDs(34%で2剤以上)を使用していた。なお最も多かった一次診断は片頭痛(43.2%)であり、次にメニエール病(19.2%)であった。(Otol Neurotol. 2015 Jun;36(5):862-4. PMID: 25828649)

オランダのプライマリケアにおける電子医療記録より、65歳以上の2812 人(平均77.0歳)のめまい患者を調査。平均で3.1剤のFRIDs 、そして87.2%もの患者に少なくとも1剤以上のFRIDsが処方されていた。(Scand J Prim Health Care. 2016 Jun;34(2):165-71 PMID: 27049170)

これらの観察研究から、FRIDsが潜在的にめまいを誘発する薬剤である可能性が示唆される。

■大腿骨頸部骨折後のFRIDs使用で死亡リスクが増加する。
スウェーデンにおける3つの公的データベースより、60歳以上で大腿骨頸部骨折を有する患者2043人を対象としたコホート研究によれば、FRIDsを4剤以上使用(518人:25.4%)すると、30日以内の死亡はオッズ比で2.01[95%信頼区間1.44~2.79]、90日以内の死亡はオッズ比で1.56[1.19~2.04]、180日以内の死亡はオッズ比で1.54[1.20~1.97]、365日以内の死亡はオッズ比1.43[1.13~1.80]であった。(Clin Interv Aging. 2016 Apr 29;11:489-96. PMID: 27199553)

[ポリファーマシーとFRIDs]
ポリファーマシー状態は大腿骨頸部骨折リスクを増加させることが報告されている(Medicine (Baltimore). 2010 Sep;89(5):295-9.PMID: 20827106)骨折リスク増加に関して、特にどのような薬剤に注意すべきかを知ることは重要である。

50歳以上の6,666人を解析した縦断研究では、特に抗うつ薬を含むポリファーマシーで転倒リスクが増加(相対危険1.28, 95% CI 1.06-1.54)し、ポリファーマシー状態にない抗うつ薬の使用ではリスクとの関連は見られなかった。またベンゾジアゼピンを含むポリファーマシーでは転倒外傷が増加(相対危険1.40 95%CI1.04–1.87)したが、ポリファーマシー状態にないベンゾジアゼピン使用では明確な差はなかった。(Age Ageing. 2015 Jan;44(1):90-6PMID: 25313240)

この研究では総じて、転倒リスクに明確な差が出ていない。ポリファーマシー状態、抗うつ薬、利尿剤、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、抗うつ薬、いずれも単独解析では明確な転倒リスク上昇は示されていなかった。現段階では不明な部分も多いが、抗うつ薬やベンゾジアゼピンを含むポリファーマシー状態には転倒リスクにより注意が必要かもしれない。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]アレンドロネートの長期使用の影響(症例対照研究PMID: 27353596)

Abrahamsen B.et.al. Risk of hip, subtrochanteric, and femoral shaft fractures among mid and long term users of alendronate: nationwide cohort and nested case-control study. BMJ. 2016 Jun 28;353:i3365. PMID: 27353596
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27353596

[重要]骨粗鬆症患者において、アレンドロネートの長期(10年以上)の使用と骨への安全性、有効性を知ることは重要である。

[デザイン]オープンレジストリを用いた、コホート内症例対照研究

[セッティング]デンマークにおける全国調査

[参加者]治療開始時において、過去にアレンドロネートを服用していない50歳~94歳の男女61990人

[介入]アレンドロネートの服用

[主要評価項目]大腿骨転子下/大腿骨幹部骨折もしくは大腿骨頸部骨折。年齢、出生年、アレンドロネート服用開始時期でマッチングした、非骨折者を対照と設定。条件付きロジスティック回帰分析と用いて、オッズ比を算出。

[結果]1428例の大腿骨転子下/大腿骨幹部骨折症例(発生率:3.4/1000人年[95%信頼区間3.2~3.6]、6784例の大腿骨頸部骨折症例(発生率:16.2/1000人年[95%信頼区間15.8~16.6]

大腿骨転子下/大腿骨幹部骨折はMPRが80%を超えるコンプライアンス良好例でMPR50未満の不要例に比べて有意に低下。(オッズ比0.88[95%信頼区間0.77~0.99]ただし、多変量解析するとこの関連が不明確となった。(オッズ比0.88[95%信頼区間0.77~1.01]
また使用なしと比べて10年以上の使用でオッズ比0.70[95%信頼区間0.44~1.11]であった。

大腿骨頸部骨折も同様にMPRが80%を超えるコンプライアンス良好例でMPR50未満の不要例に比べて有意に低下。(オッズ比0.73[95%信頼区間0.68~0.78]5~10年、10円以上の使用で有意にリスク低下。(オッズ比[95%信頼区間]はそれぞれ0.74[0.67~0.83]、0.74[0.56~0.97]
[結論]これらの結果は、アレンドロネートの10年以上の継続使用においても、骨折アウトカムにおけるリスクとベネフィットのバランスは十分許容できることを支持する。

[コメント]
これまでのビス剤の観察研究では、3年~5年の継続使用でベネフィットは少なくなり、5年を超えるとむしろ骨折リスクが増加する可能性が示唆されていた。

本研究は症例対照研究である。抄録からでは研究対象者の概要が分かりづらいが、two nested case control studies、つまり2つの解析を行っている。

①大腿骨転子下/大腿骨幹部骨折
[症例]1428例(平均79.6歳)
[対照]6825例(平均79.8歳)
②大腿骨頸部骨折群
[症例]6784例(平均80.2歳)
[対照]19952例(平均80.1歳)

服薬アドヒアランスはMPR(Medication Possession Ration)という指標で評価されている。処方された薬剤のうちどれくらい服薬されたかを示す指標で80%以下を不良とすることが多いようだ。

アドヒアランスが良いほど骨折リスクは低下し、大腿骨頸部骨折については10年の長期使用でもリスク低下が示されている。アドヒアランスはともかく、長期使用に関してはこれまでの結果と矛盾しており、今後の研究結果に注目したい。

[文献]信仰心は生きる力を肯定するか。(コホート研究 執筆時PubMed未収載)

Tyler J. VanderWeele,et.al. Association Between Religious Service Attendance and Lower Suicide Rates Among US Women.
JAMA Psychiatry. June 29, 2016. doi:10.1001/jamapsychiatry.2016.1243
http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2529152

[重要]宗教活動への参加と自殺のリスクの関連を検討した研究はこれまでにも報告されている。しかし、その多くは横断研究や生態学的研究、症例対照研究によるものであり、方法論的限界がある。

[デザイン、参加者]1996年から2010年において宗教活動への参画と自殺の関連を、大規模コホート研究であるNurses’ Health Study,に参加していた89708例の女性を対象に行った。なお1992年から1996年の間における宗教活動への参画は、自己申告で行われた。データ解析は1996年から2010年にかけて行われた。

[主要評価項目]Cox比例ハザードモデルを用いて、宗教活動への参加と自殺のリスクの関連を見積もった。人口統計学的共変量、ライフスタイル因子、病歴、抑うつ症状、などで交絡補正した。また未知の交絡変数を探索するために感度分析を行った。

[結果]Nurses’ Health Studyより、30歳~55歳の89708例が対象となった。週に1回以上の主教活動への参加は、全く参加の無い人に比べて5倍以上の自殺リスク低下が示された。(ハザード比0.16[95%信頼区間0.06~0.46]

またほとんど参加しない人に比べて、週に1回以上参加する人は、カトリックでハザード比0.05[95%信頼区間0.0006~0.48]、プロテスタントでハザード比0.34[95%信頼区間0.10~1.10]であった。

[結論]米国の女性コホートにおいては、宗教活動への頻回の参加が自殺リスクの有意な低下に関連している。

[コメント]ハザード比を見ると驚異的。交絡の影響もあるかもしれないが、信仰心という者が自殺念慮を大きく減退させる可能性を、つまり、生きるという事を肯定してくれる力を与えてくれるのかもしれない。

[文献]75歳以上の高齢者における降圧療法(RCTサブ解析 PMID: 27195814)

Williamson JD.et.al. Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016 Jun 28;315(24):2673-82. PMID: 27195814
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27195814

[重要]高血圧を有する高齢者における適切な収縮期血圧は不明である。

[目的]糖尿病を有さない75歳以上の高血圧患者を対象に収縮期血圧が120mmHg未満を目指す厳格治療と140mmHg未満を目指す標準治療の効果を比較する。

[デザイン、参加者]
多施設ランダム化比較試験であるSPRINTに参加した75歳以上の高齢者を解析対象とした。

[介入]参加者は収縮期血圧で120mmHg未満を目指す厳格治療群(1317人)もしくは140mmHg未満を目指す標準治療群(1319人にランダム化された

[主要評価項目]
一次心血管アウトカムは非致死的心筋梗塞、心筋梗塞の生じていない急性冠症候群、非致死的脳卒中、非致死的急性非代償性心不全及び心血管死亡の複合アウトカムとした。なお総死亡は二次アウトカムに設定した。

[結果]2636人(平均79.9歳、女性37.9%)のうち95.1%mにあたる2510例のデータを追跡完了した。追跡は中央値で3.14年であった。一次アウトカムは標準治療群に比べて、厳格治療群でわずかに減少した。厳格治療群102件、標準治療群148件、ハザード比0.66[95%信頼区間0.51~0.85]

また総死亡も減少した。厳格治療群73件、標準治療群107件、ハザード比0.67[95%信頼区間0.49~0.91]

重篤な有害イベントは両群で様認めなかった。厳格治療群48.4%、標準治療群48.3%、ハザード比0.99[95%信頼区間0.89~0.11]低血圧は厳格治療群で2.4%、標準治療群で1.71%と厳格治療群で多い傾向にあった。ハザード比1.71[95%信頼区間0.97~3.09]同様に湿疹も厳格治療群3.0%、標準治療群2.4%と多い傾向を認めた。ハザード比1.23[95%信頼区間0.76~2.00]また電解質異常、急性肝障害、転倒による外傷も厳格治療群で多い傾向にあった。

[結論]75歳以上の外来の高齢者において、収縮期血圧を140mmHg未満を目指す治療と比較し、120mmHg未満を目指す治療では、非致死的な主要心血管イベント、総死亡が少ない可能性が示された。

[コメント]一見するとHYVETに続く超高齢者の降圧療法に関するランダム化比較試験に思えてしまうが、
This trial was specifically funded to enhance recruitment of a prespecified subgroup of adults aged 75 years or olderと記載があり
The Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT)のあらかじめ予定されたサブグループ解析であることに注意したい。
大事なのは仮説生成的であること。効果もそうだが、有害イベントに有意差がないことを過信してはならない。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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当ブログの更新頻度をとりあえず2週に1回としたいと思います。現状ブログ記事を編集している時間が限られており、毎週更新が厳しい状況です。

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