前回(64)の『やがて警官は微睡る』では、タフガイ刑事「武本」とお坊ちゃま上司「潮崎」が主人公でしたが、本書では、イケメン刑事「新垣遼太郎」とグルメで映画オタクで痛風の「上坂勤」がバディを組む二人が主人公の物語です。
多々読んできています<今野敏>や<堂場瞬一>・<誉田哲也>・<浜嘉之>といった作家たちに登場する王道の刑事物とは路線が違うのですが、面白く読み終えれました。
2019年11月に単行本が刊行され、2022年8月25日に文庫本が発売されています。千円を超える文庫本に、星一つ50円の岩波文庫時代を知っている世代として、また、長年文庫本愛読者として、ついに千円を超える定価の時代到来に驚かざるを得ません。
毎月集まって金を出し合い、グループの欲しい人間から順に落札するこの制度で集めた、沖縄の互助組織(模合)仲間の金六百万円を持ち逃げした「比嘉」が模合仲間からの告訴を受け、行方を追うこととなった大阪府警泉尾署の刑事、「新垣」と「上坂」です。
「比嘉」は沖縄に向かったらしいという情報をつかんだ二人は、沖縄・宮古島・石垣・奄美と跡を追い、辿り着いたのは沖縄近海に沈む中国船から美術品を引き上げるという大掛かりなトレジャーハントへの出資詐欺事件でした。
古代景徳鎮の焼き物、クルーザーチャーター。様々な情報と思惑が錯綜するなか、「上坂」と「新垣」は、捜査活動の息抜きを要領よくしながらも刑事としての本分は忘れずに捜査に専念、異色の刑事コンビが事件の謎に迫ります。
大阪府警泉尾署ということで、大阪周辺のグルメめぐりや幹線道路名や地名など馴染みの場面が多く、特に「上坂」の〈映画〉に関する描写は、映画ファンとして嬉しく読めました。
1050円で585ページ、納得できる一冊でした。
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