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「実体」「現象」「コトバ」のGAPに迫る-構造主義医療論

スレッド
「実体」、「現象」、「コトバ」の3要素。構造主義医療論を提唱されている名郷直樹先生が示す、構造主義医療概念の基本的な枠組みです。「実体」と「現象」、そして「現象」と「コトバ」の間には{GAP}の存在があると指摘します。

週刊医学界新聞第2985号 2012年7月9日
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02985_03

「実体」、「現象」、「コトバ」の3要素、そして「GAP」、これらが意味するのはいったいなんでしょうか。構造主義医療論の根本概念であるこの枠組みを、存在論と郵便的理論により解きほぐしていきます。

まず、構造主義医療と言うのはいったい何なのでしょうか。構造主義的な医療論ですから、構造主義の概念が包括されていることは疑う余地はありません。少なくとも構造主義の源流と言われるソシュールの思想を知っておく必要があります。

[ソシュールの思想]

ソシュールは言語の記号表記(コトバ)そのものをシニフィアン、そしてコトバの同一性を認識し意味へと変換されたものをシニフィエと呼びます。たとえば「イヌ」という言語はinuという音声=“シニフィアン”と、その意味としての「犬」というイメージ=“シニフィエ”に分けられるわけです。このシニフィアンとシニフィエの結びつきが自然的ではなく、非自然的である、すなわち恣意的であると指摘します。イヌは日本語ですが、英語ではdogであり、したがって犬というシニフィエが直接的にイヌというシニフィアンに結び付いているわけではありません。

またもっと重要なことは、犬、山犬、狼という言語があった時、それぞれのシニフィアンに対応するシニフィエを持っていると考えられますが、たとえば山犬というシニフィアンが消えてしまっても、客観事実である山犬そのものが消滅するわけではありません。山犬というシニフィアンが消えてしまっても、犬と狼に対応するシニフィエが山犬をカバーするだけです。ソシュール研究で有名な丸山圭三郎さんの言葉を借りれば、「この世界のあらゆる事物を砂漠のようなただの砂地に例えれば、コトバと言うのはその砂をすくう網のようなものであって、網の目の大きさや形によって砂に描かれる模様が異なるように、おおよそコトバによって切り取られる世界の見方が変わる」のです。

コトバはその存在と同時に世界の見え方を変えていきます。「山犬」という言葉が生まれると同時に、「犬」たちは「犬」と「山犬」に分節されます。言葉はそれが話されている社会に共通な、経験の概念化、あるいは構造化と言えます。

[ソシュールの思想と病気、病名]
ソシュールの思想を現代医療に落とし込むとすれば、ごく簡単にいうと、「さまざまな病気があらかじめ存在し(未発見である疾患と言えど…)それに対して人が病名を付けるのではなく、人が病名によって、本来連続的な正常(健康)と異常(病気)をカテゴライズしている」ということです。

ソシュール言語学ではカテゴライズする際の同一性概念をシニフィエと呼びました。病気の「実体」から主体が知覚する「現象」、そして主体が発する「コトバ」(=シニフィアン)。そのコトバと病名(シニフィエ)の対応は二重の意味で恣意的だということが分かります。

例えば『呆け』という実体を『痴ほう症』と呼ぶか『認知症』と呼ぶかは社会文化的背景によるという意味で非自然的だということです。さらに、呆け状態をどこから病気としてカテゴライズするかという問題において、MMSEスコアというコトバが正常と異常を分節して行くのです。

構造主義医療論における「実体」⇒「現象」⇒「コトバ」の流れの中で、患者主体からもたらされた「コトバ」と、つけられた「病名」との対応は恣意的であるという側面を持つのです。

[コトバではなく実体・現象に立ち戻れ]

「コトバ」と「病名」という一義的な対応でもって、医療を行うというのが一般的には常識に登録されています。「最近物忘れが多い」というコトバに対して、「認知症」という病名が与えられる。これが常識に登録されているコトバと病名の関係です。しかしながら僕たちは、この時点で認知症という病名とコトバには非自然的な対応があることを見てきました。近代医学は身体不条理を表したコトバに対して、明確な診断名を与える、それが真の医療であるかのような価値観を見出してきましたが、実はそのような主体的理性に基づく科学的な病名付与はなされていないことの方が多いのです。

そして構造主義医療では「コトバ」のあり方すら揺さぶりをかけます。そもそも患者主体から発せられたコトバそのものが、身体不条理という現象、さらにそれを引き起こしている実態とのギャップがあるというのです。したがって、“医療者と患者のコミュニケーションギャップを「現象」と「コトバ」のギャップと置き換え,そのギャップにアプローチしていくような対話が必要”と指摘します。

[実体と現象の存在論的ギャップ]

人はある現象を存在していると意識する存在です。例えば、痛み、吐き気などの現象を知覚し、意識する存在であるのが人間です。このように、現象の存在を知覚する存在そのものを、ハイデガーは現存在と呼びました。そして、その存在への意識は、物事への欲望・関心の影響を常に受けてなされているというのです。

すなわち、端的に言えば、痛みという現象は関心相関的に知覚されるということです。少々頭痛があってもどうしても終わらせないといけない仕事があれば、それに夢中でしばらくは頭痛の知覚がなされないということもあるでしょう。かゆみに対して、メントールなどが配合された薬剤はメントールが掻痒を著明に抑えるわけでもないのに、かゆみが和らぐよう知覚されます。プラセボ効果も関心相関的に知覚される現象の一つでしょう。

現象とはこのようにヒトの欲望・関心相関的に知覚されるのです。したがって、「実体」から知覚された「現象」にはそもそも、ずれが生じており、関心相関の程度によって軽微なものから重篤な知覚まで、人によってはそのギャップがかなり大きくなるということが起こりうるのです。

[郵便的コミュニケーションによる現象とコトバのギャップ]

病気という「実態」があり、人がその「現象」を身体不条理として意識する際のギャップは関心相関に基づく存在的ギャップでした。さらに「現象」を具体的に言語化し「コトバ」として構造化されるところにもギャップが存在します。

郵便というのは、宛先が必ず記載されていますが、相手に届く保証は必ずしも100%ではありません。途中で紛失したり、誤った宛先に届けられてしまうという可能性を排除できないのが実は郵便なのです。さらに郵便は発信者が感じたテクストが相手に届くまでに時間を要します。郵便とはこのように、コトバの送信先のズレ、そして時間的な延長の概念を有しており、デリダは、この差異と延長を合わせて差延と呼びました。

医療におけるコミュニケーションも極めて郵便的です。患者のコトバが、そもそも現象そのものを医療者に伝えられているのかという問題。現象とコトバの対応はソシュールに言われるまでもなく恣意的な非自然的な対応を含んでいます。したがって、患者主体から発せられたコトバがもとの現象とのギャップを孕んでいることは明らかでしょう。

また現象は時間とともに変化するものです。痛みは徐々に和らぐか、ひどくなるか、そのように変化する現象は、常に今現在をコトバによってとらえることは不可能です。そのために現象とコトバの間には差延に基づく郵便的ギャップが存在するのです。

[コトバが編み上げる不健康]

医療を求める人間の思想構造は、健康な生き方と、不健康な生き方の二元論にあると考えられます。生きていくなかで、絶対的に正しい健康的な生き方が存在し、今自分はそこまでの生き方をしていない不健康な存在であるという認識が医療を求める基本構造ではないでしょうか。しかし絶対的に真なる健康的な生き方など存在しません。健康的な生き方など、人の欲望が関心相関的に作り上げた幻想にすぎないのです。

真なる健康的な生き方という現前とそのコピーとしての正しい医療の受給。有史以来、そして今現在すら、多くの人間が疑いません。正しい健康的な生き方というオリジナルを求めさまよう人々、そして共同幻想としての医療「文化」の存在は確かにあります。

健康と不健康という連続性は、絶えず揺れ動く差異の体型として存在している。これらの存在はア・プリオリな実体上ではなく、コトバ自身がうみ出した多義的なシンボルに過ぎないのです。

人間はコトバにより世界を構築していく唯一の生き物です。すなわちそれは、「実体」のないものですら具体化するといえます。たとえば「死」というのも人間だからゆえに具体化された世界でなないでしょうか。

本能的回避行動を除けば人間だけが死を恐れる。そうではないでしょうか。生と死を分節しカテゴライズして思考しているのは人だけではないのかと思います。言い換えれば、人間以外の生物は本当の意味で死なないと言えるのではないでしょうか。生と死の境が存在しない世界に住んでいないのは人間だけです。生物学的な意味において死だとしても、死を思考できるのは人間しかいない。そんな風には考えられないでしょうか。

また異常、正常というのも人間がコトバにより編み上げた社会全体の除外と包括の関係に他なりません。人間は唯一の高等生物などではなく、関係にもてあそばれる唯一の異常な存在であると言えましょう。人間は自然を支配しているのではなく、自ら生み出した非自然に支配されている。コントロールされているのはどちらか。「コトバ」から、「現象」そして、「実体」に立ち返り、もう一度よく考えねばなりません。
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地域医療の見え方  2015.Apr.1;1(12)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-褥瘡に対する亜鉛補充療法の有効性-

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[ポイント]
■褥瘡に対する栄養療法の明確な有効性については不明な部分も多い。
■褥瘡に対するポラプレジンクの有効性はPUSHスコア評価(0~17)で1程度の改善が期待できる可能性を示唆した質の低い研究がある
■褥瘡に対する、亜鉛、アルギニン、抗酸化サプリメント補充療法で褥瘡治癒が促進する可能性を示唆した2重盲検ランダム化比較試験がある。
■本邦においては亜鉛補充に関してはポラプレジンクで対応可能だが、有効性を示した臨床研究で用いられたサプリメント成分量を満たす介入を行うことが現実的にはやや難しい

[イントロダクション]

褥瘡に対する栄養的介入の有用性について明確な根拠はかなり限定的と言えます。ランダム化比較試験23研究のシステマテックレビューでも明確な有用性は示されていません。(※1) しかしながら、亜鉛と褥瘡治癒との関連は複数の症例報告などでも示唆されており、亜鉛の補充療法が褥瘡の予防、並びに治癒促進効果を期待できる可能性があります。今回、2015年までに報告された、臨床研究をもとに、亜鉛補充療法と褥瘡治療への有効性を検討しました。

PubMedを用いて「zinc pressure ulcers」「polaprezinc pressure ulcers」をキーワードに文献を検索し、人を対象とした、褥瘡発症、褥瘡面積、PUSUスコアと亜鉛もしくはポラプレジンクの効果について検討した臨床試験5文献(※2)~(※6)をレビュー対象としました。(表1)

レビューに含めた臨床試験
著者・報告年 症例数 ランダム化 盲検化 アウトカム
Houwing RH.et.al. 2003 2) 103人 褥瘡発症
Sakae K.et.al. 2013 3) 42人 × × PUSH score
Sakae K.et.al. 2014 4) 14人 × × PUSH score
Desneves KJ.et.al.2005 5) 16人 × PUSH score
Cereda E.et.al. 2015 6) 200人 褥瘡面積変化


[褥瘡の発症]

褥瘡の発症に関しては二重盲検ランダム化比較試験1研究(※2)で報告されていました。大腿骨頸部骨折患者103名を対象として、タンパク質、アルギニン、亜鉛、抗酸化サプリメントを含む濃縮栄養剤400mlを服用する51人と、カロリーを有しない水分ベースのプラセボを投与する52人にランダムに割り付けて、退院もしくは治療開始から28日までの褥瘡発症を検討しています。

その結果、褥瘡発症全体で明確な差はありませんでした(サプリメント群55%、プラセボ群59%)しかし、NPUAP分類ステージⅡの褥瘡発症は、サプリメント群18%、プラセボ群28%で、有意な減少を認めています。(差: 9.1%[95信頼区間: 7.0%-25%])

また褥瘡発症までの期間はサプリメント群で3.6日(+/-0.9)プラセボ群で1.6日(+/-0.9)であり、サプリメント群でその発症を遅らせる傾向にありました。(有意差は無い。P=0.090)

この研究では、栄養剤の投与とノンカロリーのプラセボが比較されており、亜鉛の褥瘡に対する有効性を純粋に比較できるものではありません。単に栄養剤の投与はステージⅡの褥瘡発症を減らす可能性があり、褥瘡発症を遅らせる可能性があるかもしれないという示唆にとどまります。

[PUSH (Pressure Ulcer Scale for Healing) score]

PUSHスコアは褥瘡の大きさを0~10の11段階、浸出液の量を0~3の4段階、組織の状態を0~4の5段階、計0~17点で評価する褥瘡の重症度スコアです。数値が大きいほど褥瘡の重症度が大きいことを示しています。

亜鉛とL-カルノシン複合体であるポラプレジンク(プロマック®D錠:1錠中 亜鉛16.9mg含有)とPUSHスコアに関する臨床試験は2件報告されていました。(※3)(※4)いずれも非盲検、非ランダム化比較試験であり、エビデンスの質は高くない印象です。

ステージⅡ~Ⅳの褥瘡患者42人を対象とした非ランダム化比較試験(※3)では、無治療群14人、ポラプレンジク群10人(ポラプレジンク150mg/日[亜鉛34mg+カルノシン116mg]、カルノシン群18人(カルノシン116mg)の3群が比較されました。なお、研究開始時において、人口統計的要因および栄養パラメータや褥瘡特性(重症度、サイズ、ステージング)に関して3群間で明確な差を認めなかったとしています。

4週間後のPUSH スコアの改善は 無治療群で0.8 ± 0.2、カルノシン群で1.6 ± 0.2(P = .02)、ポラプレンジク群で1.8 ± 0.2(P = .009)と有意に改善しました。カルノシン群とポラプレジンク群に明確な差を認めませんでした(P = .73)この研究では、期間中食事摂取内容に関して群間での著明な差は確認されていないとしています。

ポラプレジンクは4週の治療で、PUSHスコアを有意に改善する可能性を示唆しましたが、非ランダム化比較試験である事、盲検化されていない研究でのアウトカム評価のため、例えば介護スタッフによりケアの質の差など、影響を受ける因子は多々あり、PUSHスコアで1の差が、純粋に薬剤効果によるものかどうかは疑わしいと言わざるをえません。

ポラプレジンクの褥瘡への有効性を8週間検討したオープンラベル前後比較研究(※4)では、ステージⅡ~Ⅳの褥瘡患者14人(平均68.4歳、ステージⅠ:1人、ステージⅡ:9人、ステージⅢ:4人、ベースラインPUSHスコア8.1 [95 % CI, 6.0-10.3])を対象にポラプレジンク150mg/日を8週間投与しました。

その結果、PUSHスコアは投与前と比べて有意に改善しました。-1.4 [-4.0 to 1.1] (P < 0.001)研究脱落者は無く、8週間で14例中、11例の褥瘡が治癒したと報告されています。

本研究は比較対照群の設定がなされておらず、ポラプレジンクの有効性の因果を検討するには不十分な研究デザイン(ケースシリーズ)であり、ポラプレジンクが褥瘡治療に有効と結論付けることはできない印象です。

亜鉛の補充とPUSHスコアを検討したランダム化比較試験は1件ありました。(※5)この研究ではステージⅡ~Ⅳの褥瘡患者16人(37歳~92歳、BMI16.4 ~28.1)を対象に、病院標準食に高タンパク、高エネルギーサプリメント追加する群と、病院標準食に加え、アルギニン9g、ビタミンC500mg、亜鉛30mgを含む高タンパク、高エネルギーサプリメントを追加する群にランダム割り付けを行っています。研究開始時のPUSHスコアは同等でした。

投与前後の比較で、アルギニン9g、ビタミンC500mg、亜鉛30mgを添加した群でのみPUSHの有意な改善が認められました。(研究開始時9.4+/-1.2⇒3週間後2.6+/-0.6; P<0.01)
この研究ではランダム化により比較対照群を設定したものの、主要な結果は投与前後比較であり、その結果の解釈は限定的です。

[褥瘡面積]
亜鉛、アルギニン、抗酸化サプリメント添加の高カロリー栄養を用いて褥瘡患者への治癒効果を褥瘡面積で評価した2重盲検ランダム化比較試験が報告されています。(※6)

この研究はステージⅡ~Ⅳの褥瘡患者200人(長期ケア施設、あるいは在宅でのセッティング)
を対象に、自由な食事摂取に加えて、経口アルギニン、亜鉛、抗酸化サプリメント添加、高タンパク栄養剤400ml/日の投与群101人と、サプリメントが添加されていない等カロリー栄養剤を投与する群99人にランダム割り付けを行い、介入から8週後の褥瘡面積の変化が検討されています。患者背景の詳細を以下にまとめます。

表患者背景
・平均年齢:81.4歳 ・男性:31.5% ・平均BMI20.7

・研究セッティング:長期ケア施設66%、在宅34%

・主な合併症:認知症53.5%、大腿骨頸部骨折13.5%、脳血管イベント11.5%、脊髄損傷6.5% 、糖尿病:14%

・主要な褥瘡面積: 22,41㎠ ステージⅡ30.5%、ステージⅢ29.5%



介入に用いた栄養剤の主要な強化成分(1日量)を以下にまとめます。

強化成分
・タンパク40g(うちアルギニン6g) ・総カロリー503.2Kcal ・亜鉛18mg ・銅2.7mg ・セレン0.128mg ・ビタミンE 76mg ・マンガン5.2mg


8週間の介入の後、その結果を以下にまとめます。

結果(8週間)
アウトカム 強化サプリメント群 通常ケア群 平均差

[95%信頼区間]

褥瘡面積変化

[95%CI]

-60.9%

[54.3~67.5]

-45%

[38.4~52.0]

18.7%

[5.7~31.8]



サプリメント群では60.9%の減少[95%信頼区間54.3~67.5]で通常ケア群では45.2%[38.4~52.0%]であり、褥瘡ステージや治療セッティング等で調整した群間差は18.7%[95%信頼区間5.7~31.8]とサプリメント群で有意に高い結果となっています。

[結論と臨床応用]

褥瘡治療への亜鉛補充療法の有効性は5文献中3文献で、その結果の妥当性に関する質がかなり低い印象で、また各研究のサンプル数も少ないため、その有効性に関して明確な示唆を得ることができませんでした。しかし、褥瘡面積変化を検討した2重盲検ランダム化比較試験(※6)では亜鉛18mg/日を含む抗酸化サプリメント配合高タンパク栄養剤の投与で褥瘡治癒が促進される可能性が示唆されていました。

亜鉛の補充に関しては理論上、プロマックD錠75mgを1日1錠(亜鉛16.9mg含有)で代用が可能です。ただし、褥瘡に対する有用性を期待するには、亜鉛以外にもアルギニンや抗酸化サプリメントの添加の必要性が否定できず、これらを考慮するには栄養剤での補給という手段が現実的かもしれません。

明治製菓より発売されている、「メイバランスArg mini」 には1本(125ml)あたり、200kal、アルギニン2.5g 亜鉛3mg セレン12μg等が含有されています。亜鉛以外の組成量が臨床試験で用いた投与量に遠く及びませんが、ポラプレジンクそのものに治癒効果が認められる可能性を考慮すれば、ステージⅡ以上の難治褥瘡患者において、プロマック®D錠75mg1錠と、メイバランスArg mini 1日2本追加(必要に応じてカロリー調整)による8週間の治療は褥瘡の早期治癒が期待できる可能性はあります。

褥瘡治療に関しては除圧ケアに勝るものは無い印象ですが、通常ケアに治療抵抗性の症例には考慮しても良いかもしれません。具体的なレジメンを以下にまとめます。

通常ケアに加えて、以下2つを8週間投与
▶プロマックD®75mg錠(亜鉛16.9mg)1錠 分1投与
▶メイバランス®Arg mini 2本(125ml×2)  分2投与
(アルギニン5.0g、総カロリー400Kal、ビタミンE18.0mg、亜鉛6mg、銅0.3mg、マンガン0.032mg、セレン0.024mg)
※1日のカロリーが400Kal上乗せされるため、ベースのカロリーを必要に応じて減量

[参考文献]
(※1)Langer G, Fink A. Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jun 12;6:CD003216. PMID: 24919719
(※2) Houwing RH, Rozendaal M, Wouters-Wesseling W.et.al. A randomised, double-blind assessment of the effect of nutritional supplementation on the prevention of pressure ulcers in hip-fracture patients. Clin Nutr. 2003 Aug;22(4):401-5. PMID: 12880608
(※3) Sakae K. Agata T, Kamide R.et.al. Effects of L-carnosine and its zinc complex (Polaprezinc) on pressure ulcer healing. Nutr Clin Pract. 2013 Oct;28(5):609-16. PMID: 23835365
(※4) Sakae K, Yanagisawa H. Oral treatment of pressure ulcers with polaprezinc (zinc L-carnosine complex): 8-week open-label trial. Biol Trace Elem Res. 2014 Jun;158(3):280-8. PMID: 24691900
(※5) Desneves KJ, Todorovic BE, Cassar A.et.al. Treatment with supplementary arginine, vitamin C and zinc in patients with pressure ulcers: a randomised controlled trial. Clin Nutr. 2005 Dec;24(6):979-87. PMID: 16297506
(※6) Cereda E, Klersy C, Serioli M, et.al. OligoElement Sore Trial Study Group. A nutritional formula enriched with arginine, zinc, and antioxidants for the healing of pressure ulcers: a randomized trial. Ann Intern Med. 2015 Feb 3;162(3):167-74. PMID: 25643304

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■:Clostridium difficile感染症発症後のPPI継続使用■
McDonald EG, Milligan J, Frenette C.et.al. Continuous Proton Pump Inhibitor Therapy and the Associated Risk of Recurrent Clostridium difficile Infection. JAMA Intern Med. 2015 Mar 2. [Epub ahead of print] PMID: 25730198
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25730198

背景と研究デザイン:Clostridium difficile感染症(CDI)は時に重篤な臨床転帰を招くほか、再発リスクも高いと言われている。Proton pump inhibitor (PPI)の使用はCDI発症との関連が示唆されているが、PPIの処方頻度は高い。本研究は医療関連CDIを発症した患者を対象にした継続的なPPI使用とCDI再発との関連を検討した後ろ向きコホート研究

P:医療関連CDIを発症し、15日以上の生存した患者754人
E:PPIの継続使用
C:PPIの中止
O:90日以内のCDI再発

PPIの継続使用はCDI再発リスクを上昇させる
▶ハザード比:1.5 [95%信頼区間1.1-2.0]

他の因子として
・年齢(75歳以上)▶ハザード比;1.5 [95%信頼区間1.1-2.0]
・抗菌薬▶ハザード比:1.3 [95%信頼区間0.9-1.7]
・入院期間▶(1日当たり) ハザード比:1.003 [95%信頼区間1.002-1.004]

CDI診断後は不必要なPPI使用を中止すべきであると結論

■ビタミンC摂取と白内障リスク■
Wei L, Liang G, Cai C,et.al. Association of vitamin C with the risk of age-related cataract: a meta-analysis. Acta Ophthalmol. 2015 Mar 4. [Epub ahead of print] PMID: 25735187
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25735187

背景と研究デザイン:ビタミンCの摂取は、加齢に伴う白内障への保護作用が有るかもしれないが、その有効性は明らかではない。ビタミンCと白内障に関する疫学的研究を用いて、random effect modelによるメタ分析を行った。

P:ビタミンC摂取に関する15文献20研究と、血清アスコルビン酸濃度に関する8文献5研究に参加した患者
E:ビタミンC摂取のhighestカテゴリ、血清アスコルビン酸濃度highestカテゴリ
C:ビタミンC摂取のlowestカテゴリ、血清アスコルビン酸濃度lowestカテゴリ
O:白内障の発症

ビタミンC摂取量が高いとで白内障リスクが低下する
▶相対危険:0.814[95%信頼区間0.707-0.938]
血清アスコルビン酸濃度が高いと白内障リスクが低下する
▶相対危険:0.704[95%信頼区間0.564-0.879]

白内障の一次予防にビタミンC摂取は有用かもしれないと結論.

※フリーアクセスは抄録のみ。治療カテゴリのメタ分析につき解釈注意。本要約では元論文情報、異質性バイアス、出版バイアス、評価者バイアスに関する事項を確認していない。

※関連論文※
Wang A, Han J, Jiang Y.et.al. Association of vitamin A and β-carotene with risk for age-related cataract: a meta-analysis. Nutrition. 2014 Oct;30(10):1113-21. PMID: 25194611
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25194611
22研究のメタ分析でビタミンA、βカロチンと加齢に伴う白内障リスクとの関連を検討。βカロチン摂取で白内障リスク低下(相対危険0.937[95%信頼区間,0.880-0.997])、ビタミンA摂取で白内障リスク低下(相対危険0.831[95%信頼区間 0.757-0.913])

※フリーアクセスは抄録のみ。治療カテゴリのメタ分析につき解釈注意。本要約では元論文情報、異質性バイアス、出版バイアス、評価者バイアスに関する事項を確認していない。

■脳卒中患者介護者とうつ症状■
Haley WE, Roth DL, Hovater M.et.al. Long-term impact of stroke on family caregiver well-being: A population-based case-control study. Neurology. 2015 Mar 4. [Epub ahead of print]
PMID: 25740862
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25740862
背景と研究デザイン:Geographic and Racial Differences in Stroke (REGARDS) studyに参加者した家族介護者を対象に電話インタービューにより、抑うつ症状、健康関連QOL、生活満足度、余暇の満足度を検討した症例対照研究

P:REGARDS studyより
症例▶脳卒中発症後、の家族を介護する235人
対照▶脳卒中を起こしていない家族を介護する235人
E:脳卒中を発症した家族の介護
C:脳卒中を発症していない家族の介護
O:介護者の、抑うつ症状、健康関連QOL、生活満足度、余暇の満足度
追跡:9, 18, 27, 36か月時点で電話にてインタービューを行っている。

脳卒中後9か月において、健康関連QOLを除いて、介護者の幸福度はE群で低い。22か月時点では抑うつ症状に、31か月で精神QOLに、15か月時点で生活満足度に明確な差が見られる。余暇の満足度は36か月時点で差が見られた。この影響は人種や性別に関係なく見られた。

■ARBと糖尿病リスク■
Chang CH, Chang YC, Wu LC,et.al. Different angiotensin receptor blockers and incidence of diabetes: a nationwide population-based cohort study. Cardiovasc Diabetol. 2014 May 14;13:91. PMID: 24886542
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24886542
背景と研究デザイン:ARBはPPARγ受容体を介するメカニズムで糖尿病発症抑制作用が有る可能性が示唆されている。ARBの種類により糖尿病リスクに違いがあるかを検討した人口ベースコホート研究

P:台湾の国民健康保険データベースより492530人
E:バルサルタン(183486人)、イルベサルタン(80845人)、カンデサルタン(39430人)、テルミサルタン、(35017人)、オルメサルタン(26369人)
C:バルサルタン(127383人)
O:糖尿病発症リスク
調整した交絡因子:高血圧、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、慢性腎臓病、肝疾患、肺疾患、うつ、抗凝固薬、子血小板薬、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬、他の降圧薬、硝酸製剤、スタチン、フィブラート、ジギタリス製剤、抗不整脈薬、COX-2選択的・非選択的NSAIDsの使用

追跡期間も含め主な結果を以下にまとめる。
表タイトル
バルサルタン イルベサルタン カンデサルタン テルミサルタン オルメサルタン
平均追跡期間(日) 1378.66 1425.48 1124.76 1336.51 992.22
平均治療期間(日) 349.32 379.50 344.67 329.76 271.00
1,000,000人年 102.18 99.23 98.56 99.70 107.36
ハザード比 [95%CI] 1.01 (0.99-1.03) 0.99 (0.97-1.01) 0.99 (0.96-1.02) 0.99 (0.96-1.02) 1.07 (1.03-1.12)

※ロサルタン:reference(100.82/1,000,000人年 平均治療期間312.03日

オルメサルタンでわずかにリスク上昇を示唆。治療が1年以下の集団を除外してもほ同様の結果。

■2型糖尿病と降圧治療の効果■
Emdin CA, Rahimi K, Neal B.et.al. Blood pressure lowering in type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2015 Feb 10;313(6):603-15. PMID: 25668264
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25668264
背景と研究デザイン:糖尿病患者における血管リスク減少のために血圧低下治療は一般的である。2型糖尿病患者における降圧療法と結果にベントとの関連を検討したメタ分析

P:2型糖尿病患者(40研究に参加した100,354人)
E、C:降圧療法(血圧低下10-mm Hgごと)
O:総死亡、心血管イベント、冠動脈疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の新規発症もしくは悪化、腎不全

・評価者バイアスへの配慮:2名のレビューアーが独立して評価
・元論文:ランダム化比較試験low risk of bias

収縮期圧が10mmHg低下ごとに各リスクが低下した。特にベースラインの収縮期血圧が140mmHgを超えるグループでは有意な低下が見られた。

表タイトル
アウトカム 相対危険[95%信頼区間] 絶対危険減少[95%信頼区間]
総死亡 0.87[0.78-0.96] 3.16/1000人年[0.90-5.22]
心血管イベント 0.89[0.83-0.95] 3.90/1000人年[1.57-6.06]
冠動脈疾患 0.88[0.80-0.98] 1.81/1000人年[0.35-3.11]
脳卒中 0.73[0.64-0.83] 4.06/1000人年[2.53-5.40]
アルブミン尿 0.83[0.79-0.87] 9.33/1000人年[7.13-11.37]
網膜症 0.87[0.76-0.99] 2.23/1000人年[0.15-4.04]


■ニコチン置換療法長期有用性■
Schnoll RA, Goelz PM, Veluz-Wilkins A.et.al. Long-term Nicotine Replacement Therapy: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2015 Feb 23. PMID: 25705872
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25705872
背景と研究デザイン:ニコチンパッチ製剤の標準的な使用期間は8週間である。この根拠は24週までの臨床データに基づき決定されていた。8週間の使用と比較して、24週、52週のニコチンパッチ使用と禁煙への有効性を検討したランダム化比較試験

P:525人の治療を希望する喫煙者
E:カウンセリングに加えてニコチンパッチを24週、52週使用する
C:カウンセリングに加えてニコチンパッチを8週使用する(標準治療群)
O:6か月及び12か月後の7日間における一酸化炭素レベルで確認された持続的な禁煙

統計解析:intention to treat

アウトカム 長期使用 標準使用 オッズ比[95%信頼区間]
24週での禁煙割合 27.2% 21.7% 1.70[1.03~2.81]
52週での禁煙割合 23.8% 20.3% 1.17[0.69~1.98]


ニコチンパッチの24週以上の使用はその有効性に関するデータにサポートされていない。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ドネペジルと難治性しゃっくり■
McGrane IR, Shuman MD, McDonald RW. Donepezil-Related Intractable Hiccups: A Case Report. Pharmacotherapy. 2015 Mar 10. PMID: 25756505
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25756505
ドネペジルに起因すると思われる難治性のしゃっくりを発症した症例。ドネペジル漸減中止とともに改善。

■アジスロマイシンとしゃっくり■
Jover F, Cuadrado JM, Merino J. Possible azithromycin-associated hiccups. J Clin Pharm Ther. 2005 Aug;30(4):413-6. PMID: 15985056
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15985056
76歳男性。咽頭炎の治療のためにアジスロマイシンを服用した後に永続的なしゃっくりを起こす。バクロフェンとアジスロマイシンの中止後にしゃっくりが軽快。原因の詳細については不明な部分も多い。薬剤誘発性しゃっくりに関する症例は、マクロライド系抗菌薬に関連すると報告さており、本症例もアジスロマイシンによる可能性がある。

■アジスロマイシンとしゃっくり■
Surendiran A, Krishna Kumar D, Adithan C. Azithromycin-induced hiccups. J Postgrad Med. 2008 Oct-Dec;54(4):330-1. PMID: 18953158
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18953158
55歳の男性、咽頭炎の治療薬のためアジスロマイシンを500mg/日3日間服用。初回投与から12時間以内にしゃっくりを発症。アジスロマイシン服用中止した3日目にしゃっくりも止まった。

■アリピプラゾールとしゃっくり■
Silverman MA, Leung JG, Schak KM. Aripiprazole-associated hiccups: a case and closer look at the association between hiccups and antipsychotics.J Pharm Pract. 2014 Dec;27(6):587-90. PMID: 25107419
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25107419
双極I型障害の21歳。アリピプラゾール投与後しゃくり発症。メトクロプラミドやクロルプロマジンに反応なく、アリピプラゾール中止で軽快。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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薬剤誘発性しゃっくり、これもまた興味深いテーマです。薬剤誘発性しゃっくりを起こし得る主な薬剤には、コルチコステロイド、ベンゾジアゼピン、一般的な麻酔薬、NSAIDs、抗うつ薬、抗精神病薬、メチルドパ、ジギタリス、シスプラチン、シクロフォスファミド、アモキシシリン、セフトリアキソン、ドキシサイクリン、クラリスロマイシン、イミペネムシラスタチン、オフロキサシン、ST合剤、アジスロマイシンが挙げられるようです。

さて、今回は褥瘡治療に対する亜鉛の有効性について調べてみました。なかなか現実的には効果を期待できるだけの介入効果を得るには、かなりのコストがかかってしまう印象で、除圧ケアなどに勝るものではないのかなあと思ってしまいます。そして、先日、米国内科学会(ACP)より褥瘡治療ガイドラインが公開されました。

Qaseem A, Humphrey LL, Forciea MA.et.al. Treatment of pressure ulcers: a clinical practice guideline from the american college of physicians. Ann Intern Med. 2015 Mar 3;162(5):370-9. PMID: 25732279
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25732279

こちら全文がフリーで読めます。この中で栄養療法についての要約を見てみますと、ビタミンCサプリメントの有用性は示されておらず、高タンパクサプリメントで改善(Moderate)となっています。なお栄養良能の有害性についてはデータが少なく、結論できないとしています。

このガイドラインでは、「褥瘡の治癒を促進するために(サイズを小さくするために)褥瘡を有する患者ではタンパク質やアミノ酸の補充を推奨する(Grade: weak recommendation, low-quality evidence)としています」

具体的に亜鉛に関する記述は見つけられませんでしたが、やはり栄養療法を実施するにしても基本は高タンパク食であること、ビタミンCの補充療法はあまり効果がないこと、推奨度は弱いですが、この2点は抑えておきたいかなともいます。そして亜鉛の補充はあくまで補助的な介入であること、その有用性はわずかながらあるかもしれないこととして整理しておきます。

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ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Mar.25;1(11)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-プロトンポンプ阻害薬と骨折リスク-

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[ポイント]
■PPIによる大腿骨骨折リスクはステロイド使用の1/3程度であると考えられる。
■PPIによる大腿骨骨折リスクのNNHは約1400人/年であり、相対比で1.3~1.4である
■リスクファクターは65歳を超える高齢者、ステロイドの併用、女性、PPI長期使用である
■H2受容体拮抗薬は骨折リスクに関して明確なリスク上昇を認めず、代替え薬剤候補である

[イントロダクション]

薬剤による骨折リスクはステロイドが有名です。ステロイドの長期使用は骨粗鬆症を誘発し、骨折リスクを高めます。なおステロイド性骨粗鬆症に関しては日本骨代謝学会よりガイドラインが策定されています。

(ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版)
http://jsbmr.umin.jp/pdf/gioguideline.pdf

観察研究のメタ分析によれば、ステロイドの使用は骨粗鬆症性骨折の相対危険2.63~1.71,大腿骨近位部骨折の相対危険4.42~2.48とされています。(※1)

ランソプラゾールに代表されるようなproton pump inhibitor (PPI)でも、骨折リスクの増加が示唆されており、その製剤添付文書においても、「海外における複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターによる治療において骨粗鬆症に伴う股関節骨折、手関節骨折、脊椎骨折リスク増加が報告されている。特に高用量及び長期間(1年以上)の治療を受けた患者で、骨折リスクが増加した」との記載があります。

PPIは薬剤関連有害事象報告の多い薬剤ではありますが、消化性潰瘍の既往のある高齢者において低用量アスピリンを継続的に服用しているケースでは、むしろその使用がなされないことが薬剤の不適切使用とされており(※2)、また、低用量アスピリン使用時のランソプラゾール投与は、プラセボに比べて消化性潰瘍リスクを低下させることが2重盲検ランダム化比較試験で示されています。(ハザード比0.099[95%信頼区間0.042~0.230])(※3)従って、臨床上PPIの長期投与が必要なケースはまれではありません。

PPIによる骨折発症機序は現段階で明確ではありませんが、ラットを用いた基礎研究ではオメプラゾールにより胃内のPHが低下するとカルシウム吸収を阻害する可能性が示唆されています。(※4)

またPPIでは転倒リスク増加も示唆されており、外傷性の骨折が原因となっている可能性もあります。閉経後女性を対象にPPIの1年以上の使用と骨折リスクとの関連を検討した前向きコホート研究では、骨折関連入院の増加(調整オッズ比1.95[95%信頼区間1.20~3.16]に加え、転倒リスクの増加、 (調整オッズ比2.17[95%信頼区間1.25-3.77])、自己申告による転倒リスクの増加(調整オッズ比1.51[95%信頼区間1.00-2.27])が示唆されています。(※5)

一方で、非外傷性骨折リスクを検討したカナダにおける前向きコホート研究も報告されています。(※6)この研究は骨粗鬆症患者9423人を対象とし、PPIの使用と非外傷性骨折リスクを10年間追跡した前向きコホート研究です。非外傷性骨折リスクは交絡因子にて調整後のハザード比1.40 [95%信頼区間1.11-1.77]と有意に上昇しました。

PPI長期投与による骨密度への影響は、約10年の観察で著明な減少は見られないとする報告(※7)もあり、因果関係を含めた明確なことは現時点ではっきりしていませんが、多くの研究で、わずかながら骨折リスクの増加が示されているのは事実であります。

[PPIと大腿骨頸部骨折リスク(症例対照研究)]

イギリスの大規模データベースGeneral Practice Research Databaseのコホートを用いたコホート内症例対照研究では、PPIの使用と大腿骨頸部骨折リスク増加との関連が示唆されました。(※8)

解析の対象となった集団は、大腿骨頸部骨折を起こした症例13,556人と年齢、性別でマッチングした、骨折のない135,386人で、2つの集団で、2群間を比較してPPIの使用割合を調査しました。なお、研究参加者の平均年齢は77歳、女性79.9%でした。

調整した交絡因子としては、骨粗鬆症既往、BMI,喫煙状況、アルコール摂取状況、うっ血性心不全、脳血管イベント、認知症、心筋梗塞、COPDもしくは喘息、消化性潰瘍、末梢血管疾患、リウマチ、失明、セリアック病、パジェット病、骨軟化症、慢性腎不全、クッシング病、炎症性腸疾患、骨折既往、発作性障害が挙げられています。1年以上のPPI 使用と骨折リスクを以下にまとめます。

アウトカム PPI使用あり PPI使用なし 調整オッズ比 [95%信頼区間]
大腿骨頸部骨折 4.0/1000人年(※) 1.8/1000人年(※) 1.44[1.30~1.59]

(※)粗発症率推定値
PPI使用期間 1年 2年 3年 4年
調整オッズ比 1.22[1.15~1.30] 1.41[1.28~1.56] 1.54[1.37~1.73] 1.59[1.39~1.80]


PPIの使用期間が増加するほどリスクとの関連が強くなる可能性が示唆されています。ただこの研究は、大規模コホートを使用した解析と言えど、症例対照研究ですので、2群間の患者背景の相違は軽視できない点やあくまで関連の示唆にとどまる解釈、そして骨折発症頻度は厳密には集団が異なるため直接比較できません。

[PPIと大腿骨頸部骨折リスク(コホート研究)]

アメリカにおけるNurses' Health Studyのデータより79,899人の閉経後女性を対象に、PPIの使用と大腿骨頸部骨折リスクを検討した前向きコホート研究が報告されています。(※9)

対象となった研究参加者の平均年齢は66.6歳~67歳、BMI26.6~28.2、非喫煙者41.2%~44.3%、ビスホスホネート剤の使用6%~7%、骨粗鬆症既往22%~31%、ステロイド使用5%~11%でした。交絡因子は年齢、BMI、アルコール摂取、カルシウム摂取量で調整した総摂取カロリー、骨粗鬆症既往、身体活動、喫煙状態、ビタミンD摂取量、ビスフォスホネート使用、チアジド系利尿薬使用、コルチコステロイド使用、ホルモン補充療法で調整されています。主な結果を以下にまとめます。
アウトカム PPI使用あり PPI使用なし 調整ハザード比 [95%信頼区間]
大腿骨頸部骨折 2.2/1000人年 1.51/1000人年 1.36 [1.13 ~ 1.63]

PPI使用期間 0年 2年 4年 6年~8年
調整オッズ比 基準 1.36[1.12~1.65] 1.42[1.05~1.93] 1.54[1.03~2.31]


年齢 ステロイド 骨粗鬆症 カルシウム摂取
65歳以下

1.34[0.70~2.60]

使用あり

2.09[1.32~3.30)

既往あり

1.28[1.00~1.64]

≥900 mg/日

1.42[1.10~1.83]

65歳超

1.36[1.12~1.64]

使用なし

1.26[1.02~1.55]

既往なし

1.41[1.07~1.87]

<900 mg/day日

1.25[0.95~1.64]



年間で1000人当たり1.5人の骨折を起こす集団においては、PPIの使用で2.2人まで上昇し、全体で36%のリスク上昇に寄与している可能性が示唆されています。先の症例対照研究と同様にPPIの使用期間が長いほどわずかずつリスクが上昇しています。リスクファクターとしては65歳超の高齢者、ステロイドの使用が挙げられ、骨粗鬆症の既往やCa摂取量に相関性は示唆されていません。

結果を簡単にまとめると、1000人/年あたり約0.7人の差が有りますから、PPIを1429人に投与すると1年で1人骨折が発生する可能性を示唆しています。(NNH=1429人)このリスクは長期使用、高齢者、ステロイド使用で上昇する可能性があります。

[男性における[PPIと大腿骨頸部骨折リスク]
これまでの研究の患者背景の多くが女性でしたが、男性のみに限定した研究も報告されています。男性におけるPPIの使用と骨折リスクを検討した症例対照研究(※10)では、45歳以上で大腿骨頸部骨折を起こした6774人と年齢、性別、人種でマッチングした6774人を比較し、PPI(オメプラゾール)使用割合を検討しました。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム 症例 対照 調整オッズ比 [95%信頼区間]
大腿骨頸部骨折 894人(13.2%) 713人(10.5%) 1.13 [1.01~1.27]


長期使用ではさらにリスク増加への関連が示されています。(オッズ比1.23[1.02~1.48])このように男性でもわずかながらリスクの増加が懸念されます。

[PPIの使用と骨折リスク(メタ分析)]

PPIの使用と骨折リスクに関する観察研究は複数存在しますが、2011年にメタ分析が報告されています。(※11)高齢者を対象とした観察研究11研究(例対照研究7研究、前向きコホート研究4研究)でPPIと骨折リスクの統合解析には10研究1,084,560人を対象としています。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム 相対危険[95%信頼区間](I2統計量)
大腿骨頸部骨折 1.30[1.19~1.43](58%)
不特定部位の骨折 1.16[1.02~1.32](67%)
脊椎骨折 1.56[1.31~1.85](6%)


サブグループ 相対危険[95%信頼区間]
・男性 1.25[1.15~1.36]
・女性 1.45[1.16~1.82]
・PPI 1年未満の使用 1.39[1.10~1.74]
・PPI 1年以上の使用 1.24[1.19~1.29]



この研究ではPPIの投与期間に関して明確な結果が出ていませんが、他の研究からの示唆を含めれば長期使用でリスク増加に関連することは疑えない印象です。また男性よりも女性でリスク増加が示唆されています。なおH2受容体拮抗薬では、大腿骨頸部骨折1.12[0.97~1.30]、不特定部位の骨折0.99[0.85~1.15]と明確な差が出ておらず、リスクファクターを有する患者においては胃酸分泌抑制剤の選択としてファモチジンなどH2受容体拮抗薬の選択も良いかもしれません。

[PPIと骨折リスク]

以上を踏まえまして、PPIと骨折リスクについてまとめます。

大腿骨頸部骨折リスク ・NNH=1429人/年

・ハザード比1.36 [1.13~1.63]

・相対危険1.30[1.19~1.43]

・オッズ比1.44[1.30~1.59]

(参考)ステロイドによる大腿骨頸部骨折の相対危険は4.42~2.48

骨折部位 脊椎骨折>大腿骨頸部骨折
リスクファクター 65歳超、ステロイド使用、女性、PPI長期使用
代替え薬剤候補 H2受容体拮抗薬


[参考文献]
(※1) Kanis JA, Johansson H, Oden A,et.al. A meta-analysis of prior corticosteroid use and fracture risk. J Bone Miner Res. 2004 Jun;19(6):893-9. Epub 2004 Jan 27. PMID: 15125788
(※2) Gallagher P, Ryan C, Byrne S,et.al. STOPP (Screening Tool of Older Person's Prescriptions) and START (Screening Tool to Alert doctors to Right Treatment). Consensus validation. Int J Clin Pharmacol Ther. 2008 Feb;46(2):72-83.
(※3)Sugano K, Matsumoto Y, Itabashi T,et.al. Lansoprazole for secondary prevention of gastric or duodenal ulcers associated with long-term low-dose aspirin therapy: results of a prospective, multicenter, double-blind, randomized, double-dummy, active-controlled trial.J Gastroenterol. 2011 Jun;46(6):724-35. PMID: 21499703
(※4) Chonan O, Takahashi R, Yasui H.et.al. Effect of L-lactic acid on calcium absorption in rats fed omeprazole. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1998 Jun;44(3):473-81. PMID: 9742467
(※5) Lewis JR, Barre D, Zhu K.et.al. Long-term proton pump inhibitor therapy and falls and fractures in elderly women: a prospective cohort study. J Bone Miner Res. 2014 Nov;29(11):2489-97. PMID: 24825180
(※6) Fraser LA, Leslie WD, Targownik LE.et.al. The effect of proton pump inhibitors on fracture risk: report from the Canadian Multicenter Osteoporosis Study. Osteoporos Int. 2013 Apr;24(4):1161-8. PMID: 22890365
(※7) Targownik LE, Leslie WD, Davison KS,et.al. The relationship between proton pump inhibitor use and longitudinal change in bone mineral density: a population-based study [corrected] from the Canadian Multicentre Osteoporosis Study (CaMos). Am J Gastroenterol. 2012 Sep;107(9):1361-9. PMID: 22777336
(※8)Yang YX, Lewis JD, Epstein S.et,al. Long-term proton pump inhibitor therapy and risk of hip fracture. JAMA. 2006 Dec 27;296(24):2947-53. PMID: 17190895
(※9)Khalili H, Huang ES, Jacobson BC.et.al. Use of proton pump inhibitors and risk of hip fracture in relation to dietary and lifestyle factors: a prospective cohort study. BMJ. 2012 Jan 30;344:e372. PMID: 22294756
(※10) Adams AL, Black MH, Zhang JL.et.al. Proton-pump inhibitor use and hip fractures in men: a population-based case-control study. Ann Epidemiol. 2014 Apr;24(4):286-90. PMID: 24507954
(※11)Yu EW, Bauer SR, Bain PA.et.al. Proton pump inhibitors and risk of fractures: a meta-analysis of 11 international studies. Am J Med. 2011 Jun;124(6):519-26. PMID: 21605729


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■心筋梗塞後の抗凝固療法とNSAIDs併用リスク■
Schjerning Olsen AM, Gislason GH, McGettigan P.et.al. Association of NSAID Use With Risk of Bleeding and Cardiovascular Events in Patients Receiving Antithrombotic Therapy After Myocardial Infarction. JAMA. 2015 Feb 24;313(8):805-814. PMID: 25710657
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25710657
背景と研究デザイン:抗血栓治療は心筋梗塞後の患者において適応となることも多いがNSAIDsの使用はその安全性において懸念が存在する。心筋梗塞後の抗血栓治療とNSAIDsが投与された患者における出血及び心血管イベントを検討したコホート研究

P:デンマークの全国レジストリより30歳以上で初回心筋梗塞にて入院し、退院後30日生存した患者でアスピリン、クロピドグレル、または経口抗凝固薬およびそれらの併用投与が行われた61 971人(平均67.7歳、男性63%)
E:NSAIDsの併用投与あり(対象患者全体の34%)
C:NSAIDsの併用投与なし
O:入院を必要とする出血と心血管死・非致死的心筋梗塞再発・脳卒中の複合アウトカム
追跡期間:中央値3.5年

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
出血 4.2/100人年 (95% CI, 3.8-4.6) 2.2/100人年 (95% CI, 2.1-2.3) 2.02 [1.81-2.26]
心血管複合アウトカム 11.2/100人年 (95% CI, 10.5-11.9) 8.3/100人年 (95% CI, 8.2-8.4). 1.40 [1.30-1.49]


■腰部脊柱管狭窄症に対するプレガバリン■
Markman JD, Frazer ME, Rast SA.et.al. Double-blind, randomized, controlled, crossover trial of pregabalin for neurogenic claudication. Neurology. 2015 Jan 20;84(3):265-72. PMID: 25503625
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25503625
背景と研究デザイン:腰部脊柱管狭窄症に伴う間欠跛行に対するプレガバリンの有効性を検討した2重盲検ランダム化比較クロスオーバー試験

P:50歳以上で腰部脊柱管狭窄症がX線で確認されており、間欠性跛行症状を3ヵ月以上有する患者29人(平均70.1歳、男性69%、BMI32.1 )
E:プレガバリン10日間投与(75mg1日2回3日間投与⇒150mg1日2回7日間⇒75mg1日2回3日間投与⇒治療なし7日間)
C:アクティブプラセボ(ジフェンヒドラミン等)10日間投与
O:初回の痛みが生じるまでの時間(15分間のトレッドミル検査にてNumeric Rating Scaleで4以上[スケールレンジ:0~10])

※クロスオーバー試験。プレガバリン初期用量から増量までの10日間が治療期間。減量から治療なしまでの10日間がウオッシュアウト期間
サンプルサイズ:パワー90%で26人
盲検化:2重盲検(アクティブプラセボ)クロスオーバ-試験
追跡:29人中26人

・痛みが生じるまでの期間に明確な差は無い
▶平均差:-1.08分 [95% 信頼区間-2.25 to 0.08], p = 0.61).
・有害事象はプレガバリンで64.3%、アクティブプラセボで34.6%。特に眩暈がおおく、プレガバリンで42.9%、アクティブプラセボで3.8%

■アモキシシリン(+クラブラン酸)の有害事象■
Gillies M, Ranakusuma A, Hoffmann T.et.al. Common harms from amoxicillin: a systematic review and meta-analysis of randomized placebo-controlled trials for any indication. CMAJ. 2015 Jan 6;187(1):E21-31. PMID: 25404399
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25404399
研究デザイン:ランダム化比較試験のメタ分析

P:45研究の盲検ランダム化比較試験に参加した患者
E:アモキシシリン(+クラブラン酸)の投与(27研究がアモキシシリン、17研究がアモキシシリンクラブラン酸、1研究はその両方)
C:プラセボ
O:有害事象(下痢、カンジダ、嘔気、嘔吐)

評価者バイアス:2名のレビューアーが独立して評価
異質性バイアス:全体の解析ではブロボグラムにばらつきを認める。I2統計量参照
出版バイアス:言語制限なしにデータを抽出。またfunnel plotによる出版バイアスを認めない
元論文バイアス:ランダム化比較試験のメタ分析

下痢(NNH=10、I2=68.8%)
サブグループ E群 C群 オッズ比[95%信頼区間]
アモキシシリン 406/2125 425/2159 0.95[0.81~1.12]
アモキシシリン‐クラブラン酸 88/503 28/502 3.30[2.23~4.87] 
全体[17] 494/2628 453/2661 1.14[0.98~1.33]


カンジダ(NNH=27)
サブグループ E群 C群 オッズ比[95%信頼区間]
アモキシシリン 3/82 0/83 7.54[0.78~72.88]
アモキシシリン-クラブラン酸 7/144 0/144 7.87[1.76~351.19]
全体[3] 10/226 0/230 1.14[0.98~1.33]

嘔気・嘔吐・発疹には明確な関連を認めず。

■ピーナッツアレルギーハイリスク患者へのピーナッツ摂取■
Du Toit G, Roberts G, Sayre PH.et.al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015 Feb 26;372(9):803-13. PMID: 25705822
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25705822
研究デザイン:オープンラベルランダム化比較試験

P:生後4~11か月の乳児(年齢中央値7.8ヵ月)で重度の湿疹もしくは卵アレルギー、あるいはその両方を有しピーナッツアレルギーハイリスクな患児640人。皮膚プリックテストの結果により層別化(陽性:直径 1~4 mm の膨疹あり98人、陰性542人)
E:ピーナッツの摂取あり
C:ピーナッツの摂取回避
O:60か月時点でのピーナッツアレルギーの発症

盲検化:されていないオープンラベル試験
統計解析:intention-to-treat
追跡:皮膚プリックテスト陰性530人/542人 皮膚プリックテスト陽性98人/98人

主な結果は以下の通り
ピーナッツアレルギー発症
SPT E群 C群 P値
陰性530人 1.9% 13.7% <0.001
陽性98人 10.6% 35.3% 0.004
全体628人 3.2% 17.2% <0.001


※臨床スクリプト※
ピーナッツアレルギーのリスクの高い患児において、早期ピーナッツ摂取開始により、アレルギー発症頻度が有意に低下したと結論されている。ただし、皮膚プリックテストで4mm超の膨疹が認められた患者群での研究ではないため、本結果の適用には皮膚プリックテスト等による潜在リスクの評価が重要である。

■血圧低下と認知機能■
Mossello E, Pieraccioli M, Nesti N.et.al. Effects of Low Blood Pressure in Cognitively Impaired Elderly Patients Treated With Antihypertensive Drugs. JAMA Intern Med. 2015 Mar 2. [Epub ahead of print] PMID: 25730775
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25730775
研究デザイン:後ろ向きコホート研究

P:平均79歳の172人(平均MMSEスコア22.1、認知症68%、軽度認知機能障害32.0%、69.8%がアルツハイマー病の治療を受けている)
E:収縮期血圧≤128 mm Hg
C:収縮期血圧129-144 mm Hg、≥145 mm Hg
O:MMSEscore変化による認知機能低下
追跡期間:中央値9か月

・収縮期血圧≤128 mm Hgの群ではMMSEスコアmean [SD], -2.8 [3.8]
・収縮期血圧129-144 mm Hgの群ではMMSEスコアmean [SD], -0.7 [2.5]
・収縮期血圧≥145 mm Hgの群ではMMSEスコアmean [SD], -0.7 [3.7];
収縮期血圧≤128 mm Hgの群では他の群に比べて有意にMMSEスコアが低下した。

■ナッツの摂取と死亡リスク■
Luu HN, Blot WJ, Xiang YB.et.al. Prospective Evaluation of the Association of Nut/Peanut Consumption With Total and Cause-Specific Mortality. JAMA Intern Med. 2015 Mar 2. [Epub ahead of print] PMID: 25730101
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25730101
研究デザインと背景;ナッツの摂取が多い食習慣は死亡リスク低下に関連しているが、これまでの報告は比較的社会的に裕福な集団を対象とした研究であった。主に社会的経済地位の低い集団におけるナッツの摂取と死亡リスクを検討したコホート研究

P:アフリカ系、ヨーロッパ系アメリカ人71 764人[Southern Community Cohort Study (SCCS)]と上海における中国人134 265人[Shanghai Women's Health Study (SWHS)、 Shanghai Men's Health Study (SMHS)]
E:ピーナッツの高用量摂取(最高四分位数)
C:ピーナッツの低用量摂取(最低四分位数)
O:死亡
追跡期間:中央値はそれぞれSCCSで5.4年、SMHSで6.5年、SWHSで12.2年

総死亡はアフリカ系、ヨーロッパ系アメリカ人(SCCS)でハザード比0.79 (95% CI, 0.73-0.86)、上海の中国人(SWHS SMHS)で0.83 (95% CI, 0.77-0.88)と有意に低下。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■イトラコナゾール後発品による感染症悪化■
Saito W, Shishikura Y, Nishimaki K.et,al. [Two cases of pulmonary aspergilosis, which deteriorated with generic itraconazole]. Kansenshogaku Zasshi. 2014 Jul;88(4):469-73. PMID: 25199382
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25199382
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?style=abst&vol=88&mag=0&number=4&start=469
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0880040469.pdf
イトラコナゾール後発品により血中濃度が上昇せずアスペルギルス症が悪化した2例の症例報告。症例は以下の2例。
①慢性肺アスペルギルス症
②アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
どちらのケースもイトラコナゾール先発品で治療を開始し、後発品へ切り替えた。肺アスペルギルス症の悪化は後発品変更後8ヶ月、9ヶ月後に発生した。

①:血中イトラコナゾール(300㎎/日投与)は後発品で46.9 ng/mL、活性代謝物は96.5 ng/mLであり、先発品へ変更後(300㎎/日)2週間で血中イトラコナゾール濃度1,559.7 ng/mL、活性代謝物は2,485.0ng/mLまで上昇した。
②:血中イトラコナゾール濃度(300㎎/日投与)は 後発品で27.2ngmL、活性代謝物 20.1ngmL であり、先発品に変更後(300㎎/日)2 週間で血中濃度857.3ngmL、活性代謝物濃度 1,144.2ngmLへ上昇


■メマンチンと意識消失■
Savić A, Mimica N. Two cases of loss of consciousness after long-term memantine treatment. J Am Med Dir Assoc. 2013 May;14(5):375-6. PMID: 23415840
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23415840
長期メマンチン投与を受けていたアルツハイマー病患者で意識消失を繰り返した症例。メマンチン中止後に症状は消失した。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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症例報告から、イトラコナゾール後発品による感染症悪化、これはなかなかインパクトがありました。イトラコナゾールは確かに吸収のあまり良くない薬剤ではあり、先発品自体の薬物動態にもばらつきがあるという話も聞きますが、ここまで差が出るとは正直驚きです。薬剤によってはこのように臨床的にも差が出てしまう事もあるのでしょうか。

PPIと骨折リスクについては議論の余地も多々あるかと思いますが、その詳細なメカニズムについてはよくわかっていません。転倒が増えることによるものなのか、骨密度が減少することによるものなのか。Ca吸収が関与している可能性はありそうです。いずれにせよ、骨折リスクはわずかながら上昇する可能性があり、たとえ寝たきり患者においても、その介護者が骨折リスクに留意することは有用であると思われます。

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[JJCLIP]薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

スレッド
平成26年度第11回薬剤師のジャーナルクラブを以下の通り開催いたします。
開催日時:平成27年3月29日(日曜日)
■午後20時45分頃 仮配信
■午後21時00分頃 本配信
なお配信時間は90分を予定しております.

※ツイキャス配信は以下のURLより視聴できます。
http://twitcasting.tv/89089314

論文選定、配信司会進行は桑原先生、シナリオ作成は山本先生です。今回の企画、何もしていない僕はせめて、背景エビデンスと、予備知識のまとめを作成したいと思います!では今回のシナリオから。

[症例18:認知症では抗精神病薬は早めに止めた方がよいのでしょうか?]
以下シナリオは山本先生のブログより転載です。
JJCLIP#19

【仮想症例シナリオ】
あなたは, とある薬局に勤める薬剤師です.
こちらの薬局は, 5年前より本格的に在宅療養支援を始め, あなたも昨年よりあるグループホームへ訪問するようになっていました.

ある日, いつものように施設に向かうと, 常勤のヘルパーさんからの次のような質問を受けました.

「Aさんのことなんですけど, 僕らが見た所, かなり症状が落ち着いていると思うので, 薬を減らせるようDr.と相談などできないでしょうか?薬を飲ませるのがちょっと大変で…」

患者情報:
68歳Aさん(女性)
昨年近医よりレビー小体型認知症と診断されドネペジル内服開始.
周辺症状の幻覚妄想を呈していたため, 抗精神病薬を併用.

薬剤情報:
ドネペジル5mg
ニトラゼパム5mg
抑肝散エキス顆粒
リスペリドン内用液1mg/ml 1ml

「薬を中止することが果たして良いのだろうか?」
薬局に戻って調べてみると, あなたは次の論文を見つけることができたので, 早速読んでみることにしました.

[文献タイトルと出典]
Pan YJ, Wu CS, Gau SS.et.al. Antipsychotic discontinuation in patients with dementia: a systematic review and meta-analysis of published randomized controlled studies. Dement Geriatr Cogn Disord. 2014;37(3-4):125-40. PMID: 24157687
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24157687
http://www.karger.com/Article/Pdf/355418

※ワークシートは↓から!
メタ分析を10分で吟味するポイント

[背景エビデンスの整理!]
認知症の周辺症状に関しましては、桑原先生のブログに詳細がまとめられています。
【JJCLIP】認知症では抗精神病薬は早めに止めた方が良い?

ここでも背景エビデンスを少しご紹介いたしましょう。

アルツハイマー型認知症においては、その周辺症状に対して、オランザピンやリスペリドンが他の抗精神病薬やプラセボに比べその有効性が長く続くことが期待できますが、有害事象により、その有効性が相殺されてしまうという報告もあります。

Schneider LS, Tariot PN, Dagerman KS.et.al. Effectiveness of atypical antipsychotic drugs in patients with Alzheimer's disease. N Engl J Med. 2006 Oct 12;355(15):1525-38.
PMID: 17035647
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17035647

またアルツハイマー対する抗精神病薬の投与は死亡リスクに関連するという報告も複数あります。なかなか衝撃的ですよね。

Ballard C, Hanney ML, Theodoulou M,et.al. The dementia antipsychotic withdrawal trial (DART-AD): long-term follow-up of a randomised placebo-controlled trial. Lancet Neurol. 2009 Feb;8(2):151-7. PMID: 19138567
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19138567

Schneider LS, Dagerman KS, Insel P.et.al. Risk of death with atypical antipsychotic drug treatment for dementia: meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. JAMA. 2005 Oct 19;294(15):1934-43. PMID: 16234500
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16234500

Ma H, Huang Y, Cong Z.et.al. The efficacy and safety of atypical antipsychotics for the treatment of dementia: a meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. J Alzheimers Dis. 2014;42(3):915-37. PMID: 25024323
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25024323

抗精神病薬により周辺症状が改善したとしても、死亡リスクが増加する、なんて報告がなされている限りはあまり長期間の投与はしたくありませんよね。どのタイミングで薬剤をやめればよいのかという疑問が生じます。アルツハイマー病の精神症状、興奮に対し 4~8 ヵ月間のリスペリドン投与が奏効した患者においてリスペリドンの中止は再発リスクが上昇する!なんて報告

Devanand DP, Mintzer J, Schultz SK.et.al. Relapse risk after discontinuation of risperidone in Alzheimer's disease. N Engl J Med. 2012 Oct 18;367(16):1497-507. PMID: 23075176
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23075176

もあって、しばらくは継続した方が良いのか悩みます。今回はこのような疑問に対して、メタ分析の論文を読みながらみんなで考えてみましょう!

[メタ分析とは]

“メタ”とは上位のなんて感じの意味です。なのでメタ分析と言うのは上位の分析、すなわち一つの臨床研究だけでなく、複数の臨床研究を集めてきて、それぞれの結果を統合して全体でどうなってるの~?と解析する手法です。研究一つ一つの指標、例えば相対リスクとかハザード比とか、平均差など、そういった統計手法が統合解析され一つにまとめられたものをメタ分析と言います。

[ランダムエフェクト?フィックスドエフェクト?]

結果の統合手法には大きく2つの統計手法があります。その詳細を完璧に理解すれば、自分でメタ分析もできるかも? でも、論文を読むうえでは2つの統計手法の違いを簡単に覚えておくだけで十分でしょう。

・固定効果モデル (fixed-effect model) 統合する研究の母集団が同一と仮定したモデル、すなわち効果のばらつきは偶然誤差のみが原因と考えるモデルで、信頼区間が狭くなり,効果が示されやすくなります。

・変量効果モデル (random-effect model)
統合する研究の母集団が異なると仮定したモデル、すなわち効果のばらつきは偶然誤差と各研究の偏りが原因と考えるモデルで、研究間の異質性が認められても統合しやすくなるメリットがあります。デメリットとして出版バイアスが出やすいと言われています。

異質性と言うのは「効果あり」と「効果なし」を足して2で割ったら、「効果不明」ってやつでしたよね!研究間の結果のばらつきが大きいと結局何の解析をしたのかよく分からないってことになってしまいます。この異質性については論文結果のブロボグラムを視覚的にみて、結果の方向性がそろっているか、あるいはI2統計量の大きさや異質検定の結果を見るのでした。

[システマッテクレビューとメタ分析は何が違う?]

メタ分析は複数の研究を統合して解析する手法でした。ではこの複数の研究ってどうやっつて集めるの~?と言う問題が生じますよね。僕だったらなんとなく読みやすい論文ばっかり集めてくるかもしれませんし、効果の出ていない論文は採用しない!なんてことも起こり得るわけです。メタ分析で大事なのは網羅的に、すなわちシステマテックに論文を集めないといけないのですね!通常は2名以上のサーベイヤーが独立して論文サーチを行ったり評価したりすることで評価者バイアスを防ぐわけです。

システマテックに論文を集めてレビューを行う手法をシステマッテクレビューと言います。この手法では結果が統合されているかはあまり問題ではなく、網羅的な文献検索が行われているかが重視されます。システマテックレビューを行ったうえでメタ分析を行うことがベストですよね!

[集めた研究をどう評価するの?]

たくさん集めてきた研究、それぞれ、妥当性の高いものから低いものまで様々です!メタ分析の批判的吟味ではとりあえずランダム化比較試験が集められていれば良しとしよう!みたいな感じでサクサク進んでかまいませんが、一つ一つの研究をもう少し見ていく便利なツールがあります!

最近のメタ分析論文には「Risk of bias summary」という一覧表がついていることがあります。これは解析に含めた個々の研究の質を評価しているんですね!コクランが推奨する基準として以下の6項目があります!

①割付けの列が適切に生成されているか?
②対象者・調査者に割付けが十分に隠されているか?
③対象者・介入者・評価者に盲検化されているか?
④不十分なアウトカムデータに適切に対処しているか? ⑤報告するアウトカムの選択について報告されている? (研究プロトコルが入手可能であり、当初に設定されたアウトカム全てが既定の方法で報告されているか?)
⑥バイアスのリスクになり得るものが他にないか?
検討したいアウトカムに対して、集められた研究がHigh risk of biasで多く占められているのであれば、たとえランダム化比較試験と言えど、エビデンスの質を低く評価するというのが近年注目されているGRADEシステムの基本コンセプトです。

GRADEシステムではRisk of bias以外にも、研究の非一貫性(先にご紹介した異質性)、非直接性(間接比較ではないか?)不正確さ(信頼区間の幅、やイベント数、症例数)、そして出版バイアスを、アウトカムごとにエビデンスの質を検討して、結果の推奨度を決定します。エビデンスをより実践的・体系的に評価し、実臨床における介入の推奨度を決定するGRADEシステムはEBM実践における最先端であることは間違えありません。既存のエビデンスのヒエラルキーは質の低いランダム化比較試験が質の高いコホート研究の上位に来てしまうなどの問題を孕んでいました。エビデンスの質と推奨度は別問題であるというのは観察研究の論文を読んでいると痛いほどに分かる事実ではあります。
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地域医療の見え方  2015.Mar.18;1(10)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-特集:ポリファーマ―のゆくえ-

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[ポイント]
■潜在的に不適切な薬剤使用の基準としてSTOPP criteriaやSTART criteriaなどがある
■高齢者のポリファーマシーは決して稀なものではなく、むしろ身近に多く存在しうる
■高齢者のポリファーマシーは死亡リスクや薬剤関連問題の増加に関連する
■STOPP criteriaやSTART criteria等の基準に基づいたアラート介入は使用薬剤数やコストを減らせる可能性があるが、患者そのものの臨床転帰については不明である。
■ポリファーマシーの是正はクライテリアの一律な適用ではなく、目の前の患者と、各クライテリア個々の命題に対する十分なアセスメンとが必要であると思われる。
■EBMの手法による薬剤アセスメントはポリファーマシー是正の一つの方法論として有用である可能性がある。

[イントロダクション]

ポリファーマシー(Polypharmacy)、いわゆる多剤併用を中心とした潜在的に不適切な仕方での薬剤使用、PIMs(Potentially inappropriate medications)を指すもの、とここでは定義しておきます。近年、精神科領域のみならず、プライマリ・ケア領域においても急速にその認識は高まってきていると感じています。ポリファーマシーに関する論文報告も多くなってきました。潜在的に不適切薬剤使用の基準としてはSTOPP criteriaやSTART criteria(※1)が有名です。薬剤師としては少なくともこのクライテリアには目を通しておく必要があるでしょう。

[STOPP criteria]
65歳以上の高齢者において以下の処方は潜在的に不適切である。

循環器関連
・腎機能障害を有する患者におけるジゴキシンの1日125μg超の投与
・心不全が無い患者における足首の浮腫のみへのループ利尿薬
・高血圧の初期治療に対するループ利尿薬単独使用
・痛風既往のある患者に対するチアジド系利尿薬
・COPD患者におけるβ遮断薬
・β遮断薬とベラパミルの併用
・NYHA class III 、IVの心不全患者に対するジルチアゼムもしくはベラパミル
・慢性便秘患者に対するカルシウム拮抗薬使用
・H2ブロッカー、もしくはPPIの併用なしにワルファリンとアスピリンの併用
・心血管二次予防に対するジピリダモール単独使用
・消化潰瘍既往患者に対してH2ブロッカー、もしくはPPIの併用なしにアスピリンの投与
・アスピリンの1日150mg以上の投与
・冠動脈、脳血管、末梢血管疾患の症状やイベント既往のない患者に対するアスピリン使用
・脳血管疾患に明らに起因しない眩暈に対するアスピリン使用
・合併症のない深部静脈血栓症に対する6か月以上のワルファリン新規使用
・合併症のない肺塞栓症に対する12か月以上のワルファリン新規使用
・出血性疾患リスクのある患者に対するアスピリン、クロピドグレル、ジピリダモール、ワルファリン

中枢神経関連
・認知症患者に対する三環系抗うつ薬
・緑内障患者に対する三環系抗うつ薬
・心伝導系に障害を有する患者への三環系抗うつ薬
・便秘症患者への三環系抗うつ薬
・オピオイドやCa拮抗薬と三環系抗うつ薬の併用
・前立腺肥大や尿路閉塞疾患の既往を有する患者への三環系抗うつ薬
・長期間(1か月以上)にわたる長時間型ベンゾジアゼピン系薬剤の使用
・長期間(1か月以上)にわたる眠前薬としての抗精神病薬
・パーキンソン症状を有する患者への1か月以上の抗精神病薬
・てんかん患者へのフェノチアジン系薬剤
・抗精神病薬の有害事象に対する抗コリン薬の使用
・臨床的に有意な低Na血症を有する患者へのSSRINの投与
・第1世代抗ヒスタミン薬の1か月以上にわたる使用

消化器系
・原因不明の下痢治療におけるジフェノキレート、ロペラミド、リン酸コデイン
・重度の感染性胃腸炎におけるジフェノキレート、ロペラミド、リン酸コデイン
・パーキンソン症状を有する患者に対するプロクロルペラジン、メトクロプラミド
・8週を超える消化性潰瘍に対するPPIの使用
・慢性便秘に対する抗コリン薬の使用

呼吸器関連
・COPDの単剤療法としてテオフィリン
・中等度~重度COPD患者への全身性ステロイド
・緑内障患者へのイプラトロピウム吸入

筋・骨関連
・出血性の消化性潰瘍既往患者に対する、H2ブロッカー、PPI、ミソプロストールの併用なしにNSAIDs
・中等度~重度高血圧症(160/100mmHg以上)に対するNSAIDsの使用
・心不全患者へのNSAIDs使用
・変形性関節症への3か月を超えるNSAIDs使用
・ワルファリンとNSAIDSの併用
・慢性腎不全患者に対するNSAIDsの使用
・リウマチや変形性関節症に対するステロイドの3か月を超える単独使用
・アロプリノールへの禁忌がない痛風患者の慢性期治療における長期的なNSAIDまたはコルヒチンの使用(初期治療としてアロプリノールを推奨)

泌尿器関連
・認知症患者への抗コリン薬
・緑内障患者への抗コリン薬
・慢性便秘症への抗コリン薬
・前立腺肥大症への抗コリン薬
・男性頻尿におけるα遮断薬
・2ヶ月以上尿道カテーテルが留置されている患者へのα遮断薬

内分泌関連
・2型糖尿病患者へのクロルプロパミド、グリベンクラミド
・糖尿病で低血糖が頻回な患者へのβ遮断薬
・乳癌もしくは静脈血栓塞栓症の既往を有する患者へのエストロゲン
・子宮のある患者に対してプロゲステロンを併用せずにエストロゲンの単独使用

転倒関連(3か月間で1回以上転倒している患者)
・ベンゾジアゼピン
・抗精神病薬
・第1世代抗ヒスタミン薬
・血管拡張薬
・長期オピオイド

鎮痛薬関連
・軽度~中等度の疼痛に対する一次治療として、モルヒネやフェンタニル
・慢性便秘患者における下剤の使用なしにオピオイドの2週間以上の使用
・緩和ケア領域もしくは重度の疼痛以外の目的で認知症患者へのオピオイド使用

薬剤重複関連
・オピオイド併用、NSAIDs併用、SSRI併用、ループ利尿薬併用、ACE阻害薬併用など同クラス薬剤の重複投与(喘息あるいはCOPDに対する長期/短期作用型のβ刺激薬やオピオイドレスキュー等は除く)

[START criteria]
以下の薬剤は処方禁忌が無い限りにおいて65歳以上の高齢者で使用されるべき薬剤である

循環器関連
・慢性心房細動患者におけるワルファリン
・ワルファリンが禁忌であり、アスピリンが禁忌でない場合、慢性心房細動患者におけるアスピリン
・洞調律を有する患者において冠動脈、脳血管、末梢血管疾患の既往に対するアスピリンもしくはクロピドグレルの使用
・収縮期圧160mmHg以上に対する降圧薬
・5年以上の生存が予見される患者への冠動脈、脳血管、末梢血管疾患の既往に対するスタチンの使用
・慢性心不全患者へのACE阻害薬
・急性心筋梗塞後のACE阻害薬
・慢性の安定狭心症に対するβ遮断薬

呼吸器関連
・軽度~中等度の喘息やCOPD患者に対するβ2刺激薬もしくは抗コリン薬吸入
・中等度~重度の喘息やCOPD患者に対するステロイド吸入
・慢性1型・2型呼吸不全に対する在宅酸素療法


中枢神経関連
・明らかな機能障害を有するパーキンソン病におけるL-DOPA
・少なくとも3ヶ月持続する中等度~重度の抑うつ症状に対する抗うつ薬

消化器関連
・重篤な胃食道酸逆流症または拡張を必要とする消化性狭窄に対するプロトンポンプ阻害剤
・便秘による憩室性疾患に対するファイバー(繊維)サプリメント

筋・骨関連
・12週持続する中等度~重度の活動性リウマチ性疾患に対するDMARD
・ステロイド投与を受けている患者へのビスホスホネート剤
・骨粗鬆症患者に対するCaとビタミンDサプリメント

内分泌関連
・メタボリックシンドロームを有する2型糖尿病へのメトホルミン
・腎症を有する糖尿病患者に対するARBもしくはACE阻害薬
・1つ以上の主要な血管疾患リスク因子(高血圧、高コレステロール血症、喫煙歴)を有する糖尿病患者への抗血小板剤
・1つ以上の主要な血管疾患リスク因子(高血圧、高コレステロール血症、喫煙歴)を有する糖尿病患者へのスタチン

[ポリファーマシーの実態]

ポリファーマシーは実臨床でどの程度存在しているのでしょうか。最新の横断研究を見ながらその実態を把握していきます。

スウェーデンで行われた横断研究では65歳以上の1346709を対象に調査が行われ、Beers criteriaに該当したのは24%でした。(※2)

またスペインのプライマリ・ケアのセッティングではSTOPP / START基準による潜在的に不適切な薬剤の存在割合を横断調査しています。(※3)この研究によれば、潜在的に不適切な薬剤使用は32.8%でその多くがベンゾジアゼピン系薬剤であったとしています。一方本来処方されるべき薬剤が処方されていなかったのは29.6%で、1つ以上の主要な血管疾患リスク因子(高血圧、高コレステロール血症、喫煙歴)を有する糖尿病患者へのスタチンが最多でした。

日本の在宅ケアにおけるポリファーマシーの実態を検討した横断研究が報告されています。(※3)65歳以上の高齢者89人を調査し、STOPP/START criteria.に基づく不適切使用の割合を検討しています。その結果、少なくとも1つの潜在的に不適切使用薬剤を処方されていたのは40.4%と報告されています。

このように地域やセッティングなどで幅がありますが、その存在割合はご紹介した報告だけでも20%~40%以上にのぼり、ポリファーマシーは決して稀では無いことがお分かりいただけるでしょう。

[ポリファーマシーのリスク]

単独薬剤でも有害事象リスクが存在するわけで、そのリスクを定量化し、アセスメントをするというのは当ブログ(旧ブログ含めて)のメインテーマとなっております。それが多剤ともなれば、そのリスクはもう自明でしょう。ここでは情報のアップデートに留めます。

高齢者におけるポリファーマシーが死亡リスクと関連しているかどうかを検討した集団ベース前向き研究が報告されています。(※4)

この研究はスペインにおける65歳以上の高齢者5052人を対象とし、中央値で6.5年追跡した前向きコホート研究です。なおポリファーマシーグループは6剤以上の使用と定義され、1~5剤と0剤とのグループで死亡リスクを比較しています。死亡者数は各群以下の通りです。

死亡リスクに対するハザード比[95%信頼区間]
薬剤使用なし 1~5剤の使用 ポリファーマシー
361人/931人 (28.8%) 1946/3787人 (51.4%) 243/334人 (72.8%)
reference 1.47[1.31-1.64] 2.78[2.36-3.27]


多剤併用の裏には重篤な疾患の存在などそもそも死亡リスクが高いわけなのですが、交絡調整後もポリファーマシー群では有意な死亡増加が認められています。
ハザード比:1.83[95%信頼区間1.51-2.21]

もうひとつ高血圧を有する日本人高齢者のポリファーマシーに関する報告をご紹介しておきましょう。(※5)この研究は高血圧を有する65歳以上の日本人高齢者61,661人(男性41.8%; 75歳以上 35.1%)を対象とした後ろ向きコホート研究です。単一薬剤使用群、3剤まで薬剤師用群、4剤以上のポリファーマシー群を比較して薬剤有害事象を検討しています。

薬剤有害事象発生率は以下の通り
有害事象の発生率比 [95%信頼区間]
単一薬剤 最大3剤の使用 ポリファーマシー
2.0/10000人年 5.1/10000人年 8.6/10000人年
reference 2.4[2.2-2.6] 4.3[3.8-4.8]

※発症率比は年齢、性別、および初期降圧療法で調整

発症頻度はそれほど多くないのですが、死亡リスクで約2.7倍、有害事象リスクで約4.3倍と、まず予想通りの結果であり、ポリファーマシーは多かれ少なかれ臨床転帰悪化に関連すると言えそうです。

[ポリファーマシーの是正とその臨床転帰]

ポリファーマシーは身近な臨床現場で身近に存在すること、そしてそのリスクについてご紹介してきましたが、では具体的にポリファーマシーに対してどう向き合えばよいのでしょうか。ポリファーマシーの是正を僕は「ポリファーマシーのde-escalation」と呼んでいますが、その際に判断基準となるのが冒頭紹介したSTOPP criteriaやSTART criteriaです。このクライテリアに基づきアラートを行う介入については複数の研究が報告されています。

入院時における持参薬をSTOPP criteriaに基づきコンサルテーションを行い不適切処方の減少効果を検討したランダム化比較試験が報告されています。(※6)

この報告は146人の入院患者を対象に、標準的な助言に加えてSTOPP criteriaに基づいた潜在的に不適切な薬剤処方をやめる勧告をする群74人と標準的な助言のみの群72人を比較しました。対象患者は平均85歳で、1日の服用薬剤数は中央値で7剤でした。潜在的に不適切な薬剤は介入群で53%、対照群で51%にみられています。退院時、潜在的に不適切な薬剤は介入群で39.7%減少し、対照群で19.3%減少しました。ただし潜在的に不適切な薬剤を1剤以上有する患者の割合には差が有りませんでした。

この報告からSTOPP criteriaやSTART criteriaに基づくアラート介入は、潜在的に不適切な薬剤の剤数を減らす可能性が示唆されています。ただし薬剤数の減少は、いうなれば代用のアウトカムにすぎません。確かに有害事象リスクやコストが大幅に減る可能性はありますが、それを検証したものではありません。

このようなアラート介入は本来、医薬品の専門家である薬剤師の業務領域であるはずです。ポリファーマシー患者に対する薬剤師による薬剤レビュー介入と薬物関連有害事象を検討したランダム化比較試験が報告されています。(※7)

この報告は65歳以上で5剤以上の投薬を受けている高齢者209人(平均79歳)を対象に老年医学に関する認定を受けた薬剤師による腎機能評価に基づく薬剤アセスメントや患者中心の医療スキルなどを駆使するケアと通常のケアを比較し、薬物関連問題や薬物有害事象の頻度を検討しています。209人中解析されたのは141人と脱落が多い印象ですが、結果的に薬物関連問題、薬物有害事象に明確な差が出なかったと報告しています。

患者1人当たりの件数
通常ケア 研究開始 研究終了 前後比較
薬剤関連問題 1.37件 1.11件 n.s
薬物有害事象 0.53件 0.50件 n.s


患者1人当たりの件数
薬剤師介入 研究開始 研究終了 前後比較
薬剤関連問題 1.73件 1.31件 P=0.02
薬物有害事象 0.64件 0.52件 n.s


前後比較では薬剤関連問題に有意な差がついていますが、患者1人当たり0.4件と言う結果です。この報告ではSTOPP/STARTクライテリアに基づくアラート介入ではありませんが、2014年に報告されたランダム化比較試験ではさらに衝撃的な結果が出ています。(※8)

この報告は、359人の患者(平均82.7歳、服用薬剤の剤数:13剤以上13.3%、9~12剤32.9%、5~8剤44.1%、5剤未満9.8%)183人に対して、STOPP/START各クライテリア該当薬剤を薬剤師から主治医に提言し、主治医がこの提言に基づき薬剤の使用可否を判断するという介入を行っています。この研究では介入に関わる薬剤師と主治医には盲検化がされていませんが、他の医師や介護職員には盲検化がなされました。183人を介入群に、175人を対照群に割り付けました。最終的に解析に組み入れられたのは306人(85.5%)でした。追跡1年間における主な結果を以下にまとめます。

表タイトル
アウトカム E群 C群 P値
使用薬剤の剤数 8.8 (3.4)⇒7.3 (2.7) 8.2 (3)⇒8.9 (3.2) <0.01
コスト/月Israeli shekels 382⇒279 381⇒402 <.001
転倒 (回) 1.3(2.4)⇒0.8(1.3) 1.4(2.5)⇒1.3(2.4) 0.28
入院 (回) 0.6(1.0)⇒0.5(1.0) 0.4(0.8)⇒0.5(0.9) 0.10


この研究では機能評価スコアやQOLスコアにも明確な差が出ませんでした。ポリファーマシーに対する介入は、使用薬剤の剤数やコストを減らす可能性があるものの、それが臨床転帰とどのような関連があるのか明確には示されていません。これはコクランのメタ分析でも明らかとなっています。

65歳以上の高齢者を対象として、評価ツールとしてMedication Appropriateness Index :MAIスコア(8研究)、 Beers criteria(1研究)、STOPP criteria(2研究)、 START criteria(1研究)を用いたポリファーマシー是正に関する介入やコンピューターによる意思決定支援と介入なしを比較した12研究のメタ分析(※9)では以下のように報告されています。

・不適切な薬物使用量の減少をもたらした
・ベースラインと比較して、MAIスコアの減少(4研究) 平均差 -6.78, [-12.34 ~ -1.22]
・入院対する影響や薬剤関連問題に関する影響はエビデンスの一致を見ない

[ポリファーマシーと向き合う]

潜在的に不適切な薬剤の使用は有害転帰に関連していることは明らかではあります。現在用いられている潜在的に不適切な薬剤の判断基準である、STOPP criteriaや START criteriaを用いて介入を行うことは薬剤使用量の減少とコスト削減に貢献しうる可能性は示唆されています。ただ、その差はわずかである可能性があり、さらに現段階ではその是正が薬剤関連問題や有害事象及び入院リスクとどのような関連があるのか明確には分かっていません。

ポリファーマシーによる有害事象リスクの絶対差があまり大きくないということが介入効果を小さくしているという側面もあるでしょう。僕ら薬剤師がポリファーマシーに向き合うというのはそのようなごくわずかな介入効果に対して全職能をかけて挑むことに他なりません。言い換えれば、ポリファーマシーの是正の判断基準として用いられる各クライテリア、これをもってして単に一律に患者の処方をアセスメントするということが本当に良いかどうか、僕はこの点に注目しています。

例えば認知症患者に対して三環系抗うつ薬不適切だ、と言うのは分かります。だからと言って薬剤をすぐに中止できるケースは稀ですし、変化がなければ、アウトカム自体も変わらないでしょう。代替え治療をどのように提案していくのか、問題なのは各クライテリアにおける命題を臨床疑問としてEBMの手法で具体的な臨床行動方針を組み立て実行するという点にあるのではないかと考えています。機械作業のようにクライテリアを適用してくだけでは、これまでの研究から、あまり意味がない可能性があります。基準に当てはめるだけならば、潜在的に不適切な薬剤を自動ではじくような処方オーダーシステムを作ることは容易でしょう。

大事なのはクライテリアをもとにどのような判断、そして治療提案をし、それが採用されていくかどうかです。そのためにも薬剤ごとのリスクアセスメントは必須です。ポリファーマシー是正のための一つの手段として、EBMの手法で形作る薬剤有害事象リスクの定量化と相互作用リスクの定量化は有用ではないかと考えています。

当ブログでは今後クライテリアの各項目ごとにEBMの手法を用いたリスクアセスメントを臨床スクリプトとしてまとめていく作業も進めていく予定です。

[参考文献]
(※1)Gallagher P, Ryan C, Byrne S,et.al. STOPP (Screening Tool of Older Person's Prescriptions) and START (Screening Tool to Alert doctors to Right Treatment). Consensus validation. Int J Clin Pharmacol Ther. 2008 Feb;46(2):72-83.PMID:18218287
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18218287
(※2) Morin L, Fastbom J, Laroche ML.et,al. Potentially inappropriate drug use in older people: a nationwide comparison of different explicit criteria for population-based estimates. Br J Clin Pharmacol. 2015 Feb 22.PMID: 25702921
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25702921
(※3) Hamano J, Tokuda Y. Inappropriate prescribing among elderly home care patients in Japan: prevalence and risk factors. J Prim Care Community Health. 2014 Apr 1;5(2):90-6. PMID: 24399442
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24399442
(※4) Gómez C1, Vega-Quiroga S, Bermejo-Pareja F, Polypharmacy in the Elderly: A Marker of Increased Risk of Mortality in a Population-Based Prospective Study (NEDICES). Gerontology. 2014 Dec 6. [Epub ahead of print] PMID: 25502492
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25502492
(※5)Sato I, Akazawa M. Polypharmacy and adverse drug reactions in Japanese elderly taking antihypertensives: a retrospective database study. Drug Healthc Patient Saf. 2013 Jun 24;5:143-50. PMID: 23843704
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23843704
(※6)Dalleur O, Boland B, Losseau C.et.al. Reduction of potentially inappropriate medications using the STOPP criteria in frail older inpatients: a randomised controlled study. Drugs Aging. 2014 Apr;31(4):291-8. PMID: 24566877
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24566877
(※7)Lenander C, Elfsson B, Danielsson B.et.al. Effects of a pharmacist-led structured medication review in primary care on drug-related problems and hospital admission rates: a randomized controlled trial.Scand J Prim Health Care. 2014 Dec;32(4):180-6. PMID: 25347723
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25347723
(※8)Patterson SM, Cadogan CA, Kerse N.et.al. Intervention with the screening tool of older persons potentially inappropriate prescriptions/screening tool to alert doctors to right treatment criteria in elderly residents of a chronic geriatric facility: a randomized clinical trial.J Am Geriatr Soc. 2014 Sep;62(9):1658-65. PubMed PMID: 25243680
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25243680
(※9)Patterson SM, Cadogan CA, Kerse N.et.al. Interventions to improve the appropriate use of polypharmacy for older people. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Oct 7;10:CD008165. PMID: 25288041
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25288041

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■抗うつ薬と自殺リスク■
Coupland C, Hill T, Morriss R.et.al. Antidepressant use and risk of suicide and attempted suicide or self harm in people aged 20 to 64: cohort study using a primary care database. BMJ. 2015 Feb 18;350:h517. PMID: 25693810
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25693810
研究デザイン:イギリスにおけるGP(一般診療)データベースであるQResearchをもちいて、抗うつ薬の使用と自殺及び自殺企図・自傷リスクを検討した大規模コホート研究

P: QResearch(イギリスのGPから1200万人規模のデータベース)より20歳~64歳のうつ病患者238963人(男性38.9%、平均39.5歳、うつ病重症度:軽度71.7%、中等度24.8%、重度3.6%)
E:抗うつ薬の使用
C:SSRI(シタロプラム)の使用
O:自殺、自殺企図・自傷リスク
調整した交絡因子:年齢、性別、うつ病診断年、うつ病受傷度、タウンゼントスコア、喫煙状況、アルコール消費、民族(人種)、冠動脈疾患、てんかん、糖尿病、高血圧、甲状腺機能低下症、変形性関節症、喘息・慢性閉塞性疾患などの併存疾患、NSAIDsの使用、降圧薬、抗痙攣薬、睡眠薬・抗不安薬、経口避妊薬、ホルモン補充療法などの薬剤使用、さらに一過性虚血発作、関節リウマチ、骨粗鬆症、強迫性障害、抗精神病薬の使用、ビスホスホネート剤の使用、抗凝固薬の使用で調整。
追跡中央値:5.2年

主な薬剤について自殺に関する結果を以下にまとめる。
薬剤 調整ハザード比[95%信頼区間]
シタロプラム 1.00
エスシタロプラム 0.89[0.31~2.55]
パロキセチン 1.59[0.77~3.28]
セルトラリン 1.15[0.51~2.63]
アミトリプチリン 0.68[0.24~1.96]
ドスレピン 1.04[0.40~2.74]
トラゾドン 2.00[0.47~8.57]
ミルタザピン 3.70[2.00~6.84]

なおSSRIの自殺リスクを1とすると、三環系抗うつ薬ではハザード比0.84[95%信頼区間0.47~1.50]であり、他の抗うつ薬(ミルタザピン等)ではハザード比2.64[95%信頼区間1.74~3.99]と有意に高かった。なお抗うつ薬の使用なしではハザード比0.39[95%信頼区間0.28~0.55]と有意に低かった。

関連論文
Coupland C, Dhiman P, Morriss R.et.al. Antidepressant use and risk of adverse outcomes in older people: population based cohort study. BMJ. 2011 Aug 2;343:d4551. PMID: 21810886
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21810886
高齢者における抗うつ薬と有害事象リスクを検討した人口ベースコホート研究。QResearchより570のGPデータを用いて65歳から100歳のうつ病患者60,746人(平均75歳、女性66.7%、うつ病重症度;軽度69.6%)を解析対象としている。なお追跡期間は平均3.3年である。
性別、年齢、うつ病の重症度、65歳以前のうつ病既往、喫煙状態、タウンゼント剥奪スコア、冠状動脈疾患、糖尿病、高血圧症、癌、認知症、パーキンソン病、甲状腺機能低下症、強迫性障害、てんかん/発作、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、リチウム、アスピリン、抗高血圧薬、抗痙攣薬、および催眠薬の使用で交絡調整。抗うつ薬の使用なしと比較して総死亡リスクや自殺企図、自傷リスクが有意に増加。

■出生前SSRI曝露と小児の広汎性発達障害との関連■
El Marroun H, White TJ, van der Knaap NJ.et.al. Prenatal exposure to selective serotonin reuptake inhibitors and social responsiveness symptoms of autism: population-based study of young children. Br J Psychiatry. 2014 Aug;205(2):95-102.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25252317
背景と研究デザイン:選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、比較的安全であると考えられ、妊娠中に使用されることも多い。しかしながら過去の2つの症例対照研究ではSSRIの使用と自閉症リスクとの関連が示唆されている。SSRIの子宮内暴露が幼児期の自閉症と関連するかを検討した前向き人口ベース研究

P:出生前にSSRIに暴露された376人の
E:出生前に母親がうつ病と診断されたがSSRIの暴露を受けていない小児376人とSSRIの暴露を受けた69人の小児
C:SSRIの暴露を受けていない5531人の小児
O:社会的応答性尺度による自閉症の評価

うつ病の診断を受けた母親から出生した小児の広汎性発達障害との関連は以下の通り
・SSRIの使用なし:オッズ比1.44,[95% CI 1.07-1.93]
・SSRIの使用あり:オッズ比1.44,[95% CI 1.15-1.81]

この論文に対するコメントも重要な指摘だと思います。
Petersen I, Evans S, Nazareth I. Prenatal exposure to selective serotonin reuptake inhibitors and autistic symptoms in young children: another red herring? Br J Psychiatry. 2014 Aug;205(2):105-6. PMID: 25252319
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25252319
SSRI使用の曝露のみならず、妊娠中のうつ症状についても自閉症の特性と関連付けられている。SSRI使用はうつ病の重症度の見かけ上のマーカーであり、その治療による影響を結論するのはまだ早々であろう。この研究により浮上する懸念は妊娠中にうつ病を発症した場合に治療しないままとなる患者を残し、さらなる不安材料を創出する可能性もある。

■インクレチン関連薬と急性膵炎リスク■
Thomsen RW, Pedersen L, Møller N.et.al. Incretin-Based Therapy and Risk of Acute Pancreatitis: A Nationwide Population-Based Case-Control Study. Diabetes Care. 2015 Jan 29. PMID: 25633664
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25633664
研究デザイン:GLP-1受容体アナログ、DPP4阻害薬と膵炎リスクを検討した症例対照研究最新報告

P:急性膵炎にて入院した12,868人(症例)と、マッチングした128680人(対照)
E:インクレチン関連薬の使用あり
C:インクレチン関連薬の使用なし
O:急性膵炎
調整した交絡因子:胆石症の既往、アルコール依存、肥満、他の膵炎関連病態、使用薬剤

症例群の0.69%、対照群の0.53%がインクレチン関連薬を使用。調整オッズ比は0.95[95%信頼区間0.75~1.21]。DPP4阻害薬では1.04[0.80~1.37]、GLP-1受容体アナログでは0.82[0.54~1.23]

■市中肺炎に対する全身ステロイドの使用①■
Blum CA, Nigro N, Briel M.et.al. Adjunct prednisone therapy for patients with community-acquired pneumonia: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial. Lancet. 2015 Jan 16. pii: S0140-6736(14)62447-8. PMID: 25608756
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25608756
短期的なステロイドの使用が市中肺炎により入院した患者の臨床転帰を改善するかどうかを検討した2重盲検ランダム化比較試験

P:スイスにおける7つの医療機関において18歳以上で市中肺炎で入院した患者785人
E:プレドニゾロン1日50mgを7日間投与392人
C:プラセボを投与393人
O:バイタルが24時間安定する臨床的安定までに要する時間(中央値:日)
統計解析:intention to treat

アウトカム E群[IQR] C群[IQR] 結果[95%信頼区間]
臨床的安定 3.0日[2.5~3.4] 4.4日[4.0~5.0] ハザード比1.33[1.15~1.50]
30日以内の合併症 11人(3%) 22人(6%) オッズ比0.49[0.23~1.02]
院内高血糖 76人(19%) 43人(11%) オッズ比1.96[1.31~2.93]

肺炎合併症を増やさず、臨床的安定を早めるとしてまいす。インスリンを要する院内高血糖の発症はE群で増加に関連していました。

■市中肺炎に対する全身ステロイドの使用②■
Torres A, Sibila O, Ferrer M.et.al. Effect of corticosteroids on treatment failure among hospitalized patients with severe community-acquired pneumonia and high inflammatory response: a randomized clinical trial. JAMA. 2015 Feb 17;313(7):677-86. PMID: 25688779
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25688779
背景と研究デザイン:重度の市中肺炎患者において、炎症反応の増悪はしばしば治療成功率を下げる。ステロイドの使用は患者におけるサイトカインリリースを調節するかもしれない。しかし、ステロイドを用いた補助療法のベネフィットは未だ議論の余地がある。重度市中肺炎患者におけるステロイドの有効性を検討した2重盲検ランダム化比較試験。

P:スペインにおける3つの医療機関より重症市中肺炎で炎症反応(CRPが150mg/L以上)が高い患者
E:入院後36時間以内にメチルプレドニゾロン0.5mg/kgを12時間かけて静注(61人)
C:入院後36時間以内にプラセボを12時間かけて静注(59人)
O:治療失敗(ショックによる臨床転帰悪化、侵襲的な人工呼吸の開始、72時間以内の死亡)

アウトカム E群 C群 結果[95%信頼区間]
治療失敗 8人(13%) 18人(31%) 差18%[3~32%] オッズ比0.34[0.14~0.87]
院内死亡 6人(10%) 9人(15%) 差5%[-6~17]
高血糖 11人(8%) 7人(12%) P=0.34


■病棟での抗菌薬の使用とクロストリジウムディフィシル感染■
Brown K, Valenta K, Fisman D.et.al. Hospital Ward Antibiotic Prescribing and the Risks of Clostridium difficile Infection. PMID: 25705994
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25705994
研究デザイン:後ろ向きコホート研究

P:16区画(ICU5区画、非ICU11区画)で構成される急性期病院より18歳以上の患者34298人
E&C:年齢、併存疾患、入院歴、抗菌薬への曝露などの患者レベルでのリスクファクターと100人•日あたりの抗菌薬使用、手指衛生の遵守、患者の平均年齢など病棟レベルでのリスクファクター
O:院内クロストリジウムディフィシル感染症の発症
追跡46か月

追跡期間中255人がクロストリジウムディフィシル感染症を発症(5.95/10000人・日95% CI, 5.26-6.73) 病棟レベルでの抗菌薬使用は21.7~56.4/100人・日)
病棟レベルの抗菌薬使用が10%上昇するとC difficile感染も2.1/10000人上昇した(P < .001)
これは患者レベルのリスクファクター病棟レベルのリスクファクターで調整後も有意であった(相対危険1.34/10%抗菌薬使用上昇[95%信頼区間1.16~1.57]

■サウナ入浴と健康への影響■
Laukkanen T, Khan H, Zaccardi F.et,al. Association Between Sauna Bathing and Fatal Cardiovascular and All-Cause Mortality Events. JAMA Intern Med. 2015 Feb 23. PMID: 25705824
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25705824
研究背景とデザイン:サウナ入浴は、より血行動態機能の改善に関連した健康習慣であるが、心血管および全死因死亡とサウナ入浴の関連は知られていない。サウナ入浴と心臓突然死、致死的冠動脈疾患、致死的心血管疾患、そして総死亡の関連を検討した前向きコホート研究

P:フィンランドにおける42~60歳の男性(人口ベースサンプル2315人)
E&C:サウナ入浴の頻度及び期間
週に1回601人、週に2~3回1513人、週に4~7回201人
O:心臓突然死、致死的冠動脈疾患、致死的心血管疾患、総死亡
追跡期間:中央値20.7年(IQR8.1-22.6)

アウトカム 週に1回 601人 週に2~3回 1513人 週に4~7回 (201人)
心臓突然死 61 (10.1%) 119 (7.8%) 10 (5.0%)
致死的冠動脈疾患 89 (14.9%) 175 (11.5%) 17 (8.5%)
致死的心血管疾患 134 (22.3%) 249 (16.4%), 24 (12.0%)
総死亡 295 (49.1%) 572 (37.8%) 62 (30.8%)

週に1回と比較した心臓突然死の調整ハザード比は
・週に2~3回0.78 (95% CI, 0.57-1.07)
・週に4~7回0.37 (95% CI, 0.18-0.75)
P for trend = .005
致死的冠動脈疾患、致死的心血管疾患、総死亡についても同様の関連が認められた。(P for trend ≤.005)

入浴時間では11分未満と比較すると心臓突然死のハザード比は
・11~19分で0.93 (95% CI, 0.67-1.28)
・19分以上で0.48 (95% CI, 0.31-0.75)
P for trend = .002
致死的冠動脈疾患、致死的心血管疾患でも同等だったが総死亡に関しては明確な差が出なかった。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■PPIによるアレルギー交差反応■
Kara M, Tanoglu A, Kutlu A.et.al. Esomeprazole: a safe alternative to lansoprazole allergy? Iran J Allergy Asthma Immunol. 2014 Aug;13(4):296-7. PMID: 24659167
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24659167
PPIによるアレルギー反応は少ないものの、実際に報告されている。オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾールなどは同クラスカテゴリの薬剤である。生化学的構造の類似性にもかかわらず、PPI間の交差反応性には議論の余地がある。

①胸焼けのためにランソプラゾールを処方され、アレルギーを起こした39歳女性。ランソプラゾール30mgを投与後、まもなく体幹の発赤と掻痒感を発症。その後 蕁麻疹、血管性浮腫と息切れが発生し救急診療部受診。皮膚プリックテストはランソプラゾールが陽性であったがエソメプラゾールは陰性であった。

②ディスペプシア症状にてランソプラゾール30mgを服用した60代女性。蕁麻疹、血管浮腫などアレルギー症状を発症。皮膚プリックテストにてランソプラゾール陽性。その後胃食道逆流症にてPPI治療を再開。エソメプラゾールを使用したが、特に問題となる有害事象は見られなかった。

③ヘリコバクターピロリ除菌のためアモキシシリン、クラリスロマイシン、ランソプラゾールの投与を受けた35歳男性。10分後にかゆみなどに続いて、眼や唇の腫れ、動機、強迫観念が出現。ランソプラゾールの皮膚テストで紅斑浮腫反応を認めた。アモキシシリン、クラリスロマイシンには反応を認めず。ランソプラゾールアレルギーと診断を受けた。除菌療法はエソメプラゾールにて継続したが問題となる有害事象は発現しなかった。

ランソプラゾールによるアレルギーを有する患者においてはエソメプラゾールが安全に使用できるかもしれない。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ポリファーマシーに関する話題は、最近では医学・薬学関連雑誌にも取り上げられ注目を集めています。この国では、慢性疾患のコントロールこそが健康長寿の源であり、医薬品を服用することで良好なコントロールが実現するというような社会・文化的背景を有しています。

40代、50代の患者に使用された薬剤は時間経過とともに多剤傾向を有し、高齢化社会と言われる状況から近い将来、超高齢化社会に突入した際に、ポリファーマシーの問題は健康影響のみならず医療経済にも深刻な状況をもたらすでしょう。慢性疾患治療薬はDPP4阻害薬やSGLT-2阻害薬など、糖尿病関連を通じて薬価の高い新薬が次々登場し、COPD関連でも高価な吸入薬剤が登場し続けています。保険制度の設計上、医療アクセスが大変良好なこの国で、このような薬剤の多剤併用傾向は将来的に医療財政を破綻させる可能性は十分に存在するでしょう。

ポリファーマシーに対する警告は注目を集めてきていますが、具体的な介入としての方法論は、臨床アウトカムが明確に改善したという形で示されていません。僕ら薬剤師が行うべきはやはり具体的な介入方法の確立とその評価、及び継続的な実践にあるのではないでしょうか。

当ブログはポリファーマシーに対する介入の一助としてSTOPP criteriaや START criteriaに準じた、薬剤有害事象リスクの定量化、並びに薬剤相互作用リスクの定量化作業を開始する予定です。

PPIによるアレルギーの交差反応は興味深いテーマです。同クラスにまとめられるPPIですが、アレルギー反応に関して異なる症例が報告されているようです。オメプラゾールによるアレルギーを起こした9例に皮膚プリックテストをした結果、8例が陽性で下が、ランソプラゾールは全例で陰性でした。

Lobera T, Navarro B, Del Pozo MD.et,al. Nine cases of omeprazole allergy: cross-reactivity between proton pump inhibitors. J Investig Allergol Clin Immunol. 2009;19(1):57-60. PMID: 19274931
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19274931

・ランソプラゾールアレルギー⇒エソメプラゾールで代替え可能か
・オメプラゾールアレルギー⇒ランソプラゾールで代替え可能か

PPIによる重篤なアレルギー症例は経験したことがありませんが、このあたり非常に興味深いテーマです。掘り下げてみたいと思います。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

[コラム]医薬分業批判の本質とは何か

スレッド
「医薬分業における規制の見直しに関する規制改革会議」を明日に控えています。余談ですが、僕はかつて医薬分業の思想について「医薬分業の理念はわが国では存在しない」と述べました。

Blogger版 地域医療の見え方:医薬分業という思想を生きる
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/06/blog-post_24.html

「独自の理念を持って行動せよ、というのはいささか無理がある」、ととらえた僕の当時の視点は今でもそれほど大きな変更を要しません。調剤報酬の枠組みの惑わされることなく、薬についてのプロフェッショナルという薬剤師の基本的な部分、そう足元の整理からゆっくり始めること、それが対外的に貢献できたかどうか、現時点でわかりませんが、僕は粛々と取り組んできたつもりではいます。

最初に述べておきますが、これはあくまで個人的意見であり、このような問題が提起された背景にはこれまでの薬剤師の行動に関する問題が存在し、その問題そのものを軽視すべきではなく、重大な問題として慎重に熟慮せねばならないことは十分承知しております。本稿で述べたいのは、責任転嫁でもなく、この国の医療のゆくえから浮かび上がる一つの構造です。その構造を明らかにしたい、そういう観点から読んでいただけると幸いです。(だからこの問題の責任が我々薬剤師に無いなどと主張しているわけではありません)

以下のブログでは医薬分業が話題になっている背景について以下の2点を挙げています
「伸二のブログ」
http://riehener.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-f2cb.html
1) 患者の利便性
2) 調剤技術料に基づく医療費の高騰

利便性に関して言えば、それを上回るほどのベネフィットが存在すればクリアできるのかもしれません。相当困難な道のりとは思いますが、現状薬剤師はこの問題をクリアせねばならないでしょう。調剤技術料に基づく医療費の高騰、さしあたってはこちらのウエイトがかなり大きいように思います。利便性はバッシングを正当化する理由の一つに過ぎず、問題のコアはこちらではないか、僕はそう思います。

医療費の高騰は深刻な問題でしょう。少子高齢化はこれからますます進みます。健康寿命が延びたこの国で、生きるとはすなわち医療費を消費しながら生活を続けることに他なりません。医療を受けることの当り前さ、その当たり前さゆえに、高齢化社会を生きるには医療を受けない選択というものがあまり明確に示されない、いや示されていけないような、無意識に医療を受け続けるという構造の存在が見え隠れします。 そのような構造の中で、医薬分業が進んだ今日、処方箋枚数は増加し、保険薬局の数も相当程度増え、それに伴う薬剤使用は上昇していくのは当たり前の帰結のように感じてしまう部分もあります。

この問題に関して、アポネットR研究会のHPに小嶋先生の記事が投稿されています。
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/150301.html
兵庫県立大学大学院経営研究科・商大ビジネスレビューに対して、目に留まったポイントとして以下を挙げられています。

・株式会社化された営利目的の薬局では「あるべき薬局像」は達成することは困難
・我が国の医療を崩壊に導いているのは株式会社化された調剤薬局が主たる原因
・株式会社化された薬局の保険調剤部門は非営利化するか、出来なければ税率を重くし利益を出ない仕組みを考えることが必要

一部同意する部分も個人的にはありますが、医療崩壊を招いているのは本当に株式会社された調剤薬局なのでしょうか。薬局の保険調剤部門は非営利化することで医療崩壊が防げるのか、この問題にはいささか疑問を感じ得ずにはいられません。

[調剤技術料に基づく医療費の高騰を招いたのは何か]

ジャック・ルソーというフランスの思想家がいます。僕はルソーについて、そう多くは知りません。ただ彼が構想した「一般意志」という概念はとても興味深いものがあります。一般意志とは1762年にルソーが発表した社会契約論のなかで提唱された概念です。

人間個々はそれぞれの意志を有しています。ルソーは、これを特殊意志と呼び、それらの総体、人間あるいは国民全体の意志を全体意思と呼びました。特殊意志は人間個々の欲望など私的な利益を含むものであり、その総和の全体意思は国民の欲望の総和にすぎません。一般意志は単純な特殊意志の和ではないところに存在している。そうルソーは言うのです。一般意志とは社会契約論の中で理解しようとすると非常に難しい。ここでは、全体意思と一般意志とは異なるもの、まずはそこを強調しておきたいと思います。

小説家であり、思想家である、東浩紀氏は「一般意志2.0」のなかで、一般意志の概念をフロイトの「無意識」、そして現代社会の背後にそびえるインターネット上での人々のアクティビティから抽出できるもの、そこに見出せる可能性を指摘しています。僕たちはツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアを常に活用しながら、日々テクストを投稿し続けています。そのテクストが意図的に投稿されたものであろうと、世界中の人々のアクティビティを縦断的に抽出すれば、無意識的な意志を見出すことができ、インターネット上に記録されたこのデータはその意思を可視化することができる。現代だからこそ具現化したこの一般意志を一般意志2.0と呼んでいます。ここではその詳細について言及しません。

さて医療費が高騰し、医療崩壊が叫ばれている今日、その急速な医療費高騰に貢献したのが調剤報酬なのでしょう。それは医薬分業を政策誘導した背景ももちろんありますが、ここで僕が強調したいのが、国民の健康への認識の高まり、偏ったヘルスリテラシー、予防接種よりも病気の早期発見を推進する活動や政策、医療アクセス向上への政策と福祉の充実、薬価の高い薬剤のプロモーション強化、感染症流行に対するメディアの反応、健康診断、メタボ健診、乳癌検診の推進、インフルエンザ検査、などなど、人々の関心が、医療や健康問題に集まり、健康で長生きする、健やかな生活をおくることに政治や医学は注力することが望まれるということ。これは全体意志とも取れるのです。このようなアクティビティは現実の医療・衛生・福祉環境を大きく改善し、世界最高長寿を達成するまでになりました。

このような観点からすれば国民の全体意思を反映した政策は成功したように思えます。しかしながら医療者や政治家も含めた日本国民全体のアクティビティが医療費高騰という現実を浮き上がらせます。これは少なくとも、より良い生活環境を生み出そうとする意志の実行のために副次的に表れた、無意識と言えば語弊があるかもしれませんが、医療費の高騰は国民の一般意志と言う形で具現化したのではないのかと僕は考えるのです。医療を受けることの当り前さ、ゆえに医療を受ける。このような医療を受ける仕方を「無意識に受ける医療」と定義するのならば、「無意識」に医療を受け続けるという構造が確かに存在するのではないかということです。その構造そのものが僕自身も含めた国民の一般意志であり、それが経済的データとして可視化されたに過ぎないのではないか。

調剤報酬額の高騰が医療政策における致命的な問題ならば医薬分業について疑問を投げかける、それは国民の一般意志と言う形で明確になったものに対して、あたかも、医薬分業のせいで、と言うような後付けの理由に思えてしまうのです。

当然ながら僕ら薬剤師にも責任がないなんてことは全くありません。この問題の一部(繰り返し強調するが全部ではない)は国民の全体の責任と言うよりは一般意志と言う形で現れたと主張したいのです。すなわち調剤報酬額の高騰という形で示されているものの一部は一般意志である可能性は十分にあるのではないか。EBMを意識した業務を実践されている方なら思うことも多いでしょう。このような医療ではこの国の医療経済が破綻するのは目に見えていると。

この国の医療崩壊の一部の原因は実は国民の一般意志が招いたものであることに気づくべきではないか、そして高齢化社会を乗り切るその、しのぎに全体意思が利用されているのではないか。誰かを犠牲にすれば逃げ切れる目算がある。そのターゲットに国民の全体意志を使うのはややお門違い。そんな気もします。これは理論の拡大解釈であり、極論かもしれませんが、そういう見方もあってよい、一部はそういった理由なのではないか、そんなふうにとらえることもそろそろ必要ではないかと僕は問いたいのです。だからと言ってこれは薬剤師の問題ではないということではないのです。薬剤師から発信されるテクストの総体が一般意志を変えていく可能性を模索したい。そのために何をなすべきなのか、すべての立場の薬剤師が模索を始める事こそ肝要ではないか、そう思うのです。
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地域医療の見え方  2015.Mar.11_1(9)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-高血圧に対する新規治療開始の目安-

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[ポイント]
■120-139/80-89mmHgの高血圧予備軍における潜在的な死亡リスクは高くない
■140-159/90-99mmHgの軽度高血圧患者における降圧ベネフィットが示唆されている
■降圧治療強化は収縮期圧で150mmHgを閾値にすると良いかもしれない
■一部の高齢者では収縮期血圧が130mmHgを下回ると死亡リスクが上昇する可能性がある

[イントロダクション]
降圧治療の開始について、患者個別の状況を踏まえれば、多くの議論の余地があるかと思いますが、ここでは大まかに全体を俯瞰したいと考えています。高血圧症における降圧治療は概ねそのベネフィットを示した報告が多いと思います。80歳超の高齢者であっても収縮期血圧が160mmHgを超えるようであれば低用量利尿剤を用いることで脳卒中や死亡リスクを低下させる可能性を示唆したHYVET Studyは有名です。(※1)

この研究は80歳以上の高血圧患者3845名(平均血圧173.0/90.8 mm Hg)を対象にしたランダム化比較試験でインダパミド、必要に応じてペリンドプリルを用いて血圧150/80mmHgを目指す治療とプラセボ治療が比較されました。その結果プライマリアウトカムである脳卒中は試験の早期中止(追跡中央値1.8年)にもかかわらず30%(95%信頼区間‐1~51)抑制されることが示唆されました。
たとえ高齢者でも収縮期圧が170mmHg前後と比較的高い症例では、降圧治療開始を考慮しても良い印象です。

[軽度高血圧症の予後]

 高血圧予備軍(prehypertension)と言われるような人たちの潜在的なリスクはどの程度なのでしょうか。観察研究のメタ分析が報告されています。(※2)

この研究は20の前向きコホート研究に参加した18歳以上(高齢者も含む)の1,129,098人を対象としたものです。高血圧予備軍(prehypertension)として血圧120-139/80-89 mm Hgと、比較対象として 120/80 mm Hg未満が比較されました。なお2名の著者が独立してデータを抽出するなど評価者バイアスへの配慮がなされています。プライマリアウトカムは総死亡と心血管死亡で、冠動脈疾患死亡、脳卒中死亡はセカンダリアウトカムに設定されています。主な結果を以下にまとめます。なおプライマリアウトカムにおいてfunnel plotによる出版バイアスは認められなかったとしています。

アウトカム リスク比[95%信頼区間] I2統計量
総死亡 1.03[0.97~1.10] 66%
心血管死亡 1.28[1.16~1.40] 63%
冠動脈疾患死亡 1.12[1.02~1.23] 12%
脳卒中死亡 1.41[1.28~1.56] 19%


おおむね高血圧予備軍と言われるような人でもリスクは上昇傾向にあるようですが、総死亡はほぼ同等と言うのが印象的です。対象患者の年齢層が幅広く、この結果のみで降圧治療の開始血圧を考察するのはかなり難しいでしょう。基礎疾患や年齢にもよりますが、新規降圧療法が想定される健常な中年層において少なくとも収縮期血圧が140mmHg未満であればその潜在リスクは比較的低いとも考えられます。

[軽度高血圧症は治療すべきか]

いわゆる軽症高血圧(収縮期血圧140-159mmHg拡張期圧90-99mmHg)程度と収縮期血圧が140mmHgを超えた患者さんであれば、降圧治療を開始すべきと言うような印象もありますが、心血管疾患など基礎疾患を有さないような比較的健常者でも降圧治療を開始すべきなのでしょうか。2012年に報告されたCochrane Database Syst Revは重要な論文だと思います。(※3)

この研究は4つのランダム化比較試験に参加した軽度高血圧症患者8912人を対象としたメタ分析です。降圧薬4年から5年の使用で総死亡は明確に減りませんでした。(相対リスク0.85, [95%信頼区間0.63~1.15])さらに合併症も大きく減らすことはありませんでした。主な結果を以下にまとめます。
アウトカム 相対リスク[95%信頼区間]
総死亡 0.85[0.63~1.15]
冠動脈疾患 1.12[0.80~1.57]
脳卒中 0.51[0.24~1.08]
心血管疾患 0.97[0.72~1.32]
有害事象 4.80[4.14~5.57]

唯一脳卒中が大きな減少傾向を示唆していますが、有害事象は有意に増加。全体として大きなベネフィットが無いという印象です。

このメタ分析の追加解析が昨年報告されました。(※4)この研究は、心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、冠動脈バイパス術、脳卒中、一過性脳虚血発作、頸動脈手術、末梢動脈手術、間欠性跛行、腎不全)の既往のない軽度高血圧患者(収縮期血圧140 ~159/拡張期血圧90~99 mm Hg)15266人が解析対象となっています。少なくとも1年間にわたる降圧薬による治療もしくは、血圧を下げるための厳格な治療 7842人とプラセボもしくは、血圧を下げるための従来療法 7424人が比較され、5年間の心血管イベント、冠動脈イベント、総死亡、脳卒中、心不全、心血管疾患死亡が検討されました。主な結果を以下にまとめます。
アウトカム オッズ比[95%信頼区間] I2統計量
心血管イベント 0.86[0.74~1.01] 2.7%
脳卒中 0.72[0.55~0.94] 28.9%
冠動脈イベント 0.91[0.74~1.12] 0.0%
心不全 0.80[0.57~1.12] 0.0%
心血管死亡 0.75[0.57~0.98] 35.2%
総死亡 0.78[0.67~0.92] 17.0%


追加の解析では軽度高血圧患者においても降圧治療のベネフィットが示されています。

血圧が120-139/80-89 mm Hg程度であれば合併症リスクはわずかに上昇する懸念はあれど総死亡に対するリスクはごくわずかであり降圧治療をすべきかは議論の余地がかなりありましたが、血圧が140 ~159/ 90~99 mm Hg程度になると降圧治療を開始した方が良い印象となっています。既存の解析を含めれば、少なくとも脳卒中の発症先延ばし効果は、わずかに期待できる可能性があります。

[高血圧、治療強化の目安は?]

先日BMJから、降圧治療の新規開始とその血圧データに関する大変興味深い論文が報告されました。(※5)この研究は後ろ向きコホート研究で、その結果の妥当性、特に交絡調整に関しては議論の余地もあり、また収縮期血圧のみに注目している点など実臨床での適用には注意が必要ですが、非常に重要な報告だと思います。

英国のプライマリケアデータベースThe Health Improvement Networkから88 756の患者を対象に、降圧治療戦略ごとに死亡や急性冠動脈イベントリスクを検討しています。降圧治療選択とは具体的に、治療強化のための収縮期血圧閾値、血圧上昇時への治療タイミング、治療強化後からの次回フォローアップ期間です。

患者背景は平均58.5歳、男性が41.5%、BMIが27.6とやや日本人に比べればやや高く、喫煙の既往もしくは現在喫煙者が56.5%、心血管疾患の既往は11.2%、糖尿病既往が6.6%、慢性腎臓病が2.7%というプライマリケアでのセッティング患者です。

中央値で37.4ヵ月における死亡リスクの結果を以下にまとめます。
治療強化の血圧閾値
収縮期圧mmHg ハザード比[95%信頼区間]
130-139 0.99[0.90~1.09]
140-149 reference
150-159 1.05[0.97~1.14]
160-169 1.26[1.15~1.37]
170-179 1.42[1.28~1.58]
180以上 1.69[1.53~1.87]

治療強化の遅延
ヵ月 ハザード比[95%信頼区間]
0-1.406 reference
1.407-4.646 1.11[1.03~1.20]
4.647-8.684 1.24[1.14~1.43]
8.684-15.350 1.20[1.10~1.30]
115.351以上 1.30[1.19~1.42]

治療強化後からのフォローアップ期間
ヵ月 ハザード比[95%信頼区間]
0-0.723 1.02[0.95~1.10]
0.724-1.018 reference
1.019-1.544 1.01[0.93~1.09]
1.545-2.694 1.05[0.98~1.15]
2.695以上 1.21[1.13~1.30]


結果を簡単に要約すると、治療強化の収縮期血圧閾値は150mmHg以上であり、血圧上昇後に治療強化が1.4ヵ月以上の遅延、治療強化後のフォローアップが2.7カ月遅延は死亡リスクと関連するという結果です。

[施設入所の高齢者の血圧コントロール]

比較的健常な中年層の患者であれば血圧140~150あたりが降圧治療開始・強化の目安となりそうですが、施設入所の高齢者においては過度の降圧が死亡リスクに関連するという前向き観察研究が出ています。(※6)

この研究はフランスとイタリアにおける施設入所高齢者(80歳以上、平均87.6歳、女性78.1%)の患者1127人を対象に収縮期圧が130mmHg以下で降圧薬を2剤以上服用しているケースとそれ以外のケースを比較して2年間前向きに観察し死亡を検討した縦断研究です。その結果、収縮期血圧が130以下で2剤以上の降圧薬を服用している高齢者では死亡リスクが有意に上昇しました。(ハザード比1.81[95%信頼区間1.36~2.41])。傾向スコアマッチングや交絡因子で補正後も同様の結果で、施設入所の高齢者においては降圧薬を複数服用している場合、収縮期圧の過度な降圧は死亡リスクに関連する可能性が示唆されました。

[健常高血圧患者の血圧管理をどう考える?]

米国高血圧合同委員会による高血圧診療ガイドラインを見てみましょう(※7)

60歳以上の一般的患者集団においては、収縮期血圧150mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上で薬物治療開始。収縮期血圧<150mmHg、拡張期血圧<90mmHgを目標(Grade A)としています。

また60歳未満の一般的患者集団では拡張期血圧90mmHg以上で薬物治療を開始し、拡張期血圧90mmHg未満を目標とする(Grade E)か、収縮期血圧140mmHg以上で薬物治療を開始し、収縮期血圧140mmHg未満を目標として治療する(Grade E)となっていて、今まで見てきた報告との大きな相違はありません。

非高齢者において、収縮期血圧で140~150mmHgを目安に治療開始、治療強化を考慮することは大きな誤りではないような印象です。ただ一部の高齢者では収縮期圧が130mmHgを下回らないよう、注意が必要です。

[参考文献]

(※1)Beckett NS, Peters R, Fletcher AE.et.al. HYVET Study Group. Treatment of hypertension in patients 80 years of age or older. N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1887-98. PMID: 18378519
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18378519
(※2) Huang Y, Su L1, Cai X.et.al. Association of all-cause and cardiovascular mortality with prehypertension: a meta-analysis. Am Heart J. 2014 Feb;167(2):160-168. PMID: 24439976
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24439976
(※3) Diao D, Wright JM, Cundiff DK.et,al. Pharmacotherapy for mild hypertension. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Aug 15;8:CD006742. PMID: 22895954
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22895954
(※4) Sundström J, Arima H, Jackson R.et.al. Effects of Blood Pressure Reduction in Mild Hypertension: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2015 Feb 3;162(3):184-91. PMID: 25531552
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25531552
(※5)Xu W, Goldberg SI, Shubina M.et.al. Optimal systolic blood pressure target, time to intensification, and time to follow-up in treatment of hypertension: population based retrospective cohort study. BMJ. 2015 Feb 5;350:h158. PMID: 25655523
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25655523
(※6)Benetos A, Labat C, Rossignol P.et.al. Treatment With Multiple Blood Pressure Medications, Achieved Blood Pressure, and Mortality in Older Nursing Home Residents: The PARTAGE Study. JAMA Intern Med. 2015 Feb 16. PMID: 25685919
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25685919
(※7)James PA, Oparil S, Carter BL.et.al. 014 evidence-based guideline for the management of high blood pressure in adults: report from the panel members appointed to the Eighth Joint National Committee (JNC 8). PMID: 24352797
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25685919

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■がん関連問題を報じる医療ジャーナリスト■
H. Nakada, M. Tsubokura, Y. Kishi, Koichiro Yuji, et.al. How do medical journalists treat cancer-related issues? ecancer 9 502 / DOI: 10.3332/ecancer.2015.502
http://ecancer.org/journal/9/full/502-how-do-medical-journalists-treat-cancer-related-issues.php
癌患者は、様々なメディアソースを介して、その疾患についての情報を得ることができる。したがって医療ジャーナリスストが癌に関連する情報をどのように取り扱うかは重要な問題である。82団体の364人の日本人医療ジャーナリストに対してがん関連問題を報じる理由と、直面しうる困難さに関するアンケート調査を行った。364人中57人(約16%)より回答を得た。34人のジャーナリストは人文科学を専攻し、自然科学専攻は13人、医学を専攻していたのは1人であった。

理由 結果
個人的な興味 36人
従来治療について 33人
医療政策について 30人
新規治療法について 25人
診断について 25人
ワクチンについて 25人


調査したジャーナリストの全員が、健康上の問題を報告における困難さを経験している。
感じている困難さ 結果
情報の質について 36人
社会的影響について 35人
専門的な知識の欠如 35人
専門用語を理解する困難さ 35人


情報ソース
・医師を含む個人のネットワーク42人
・電子メール、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディア32人
・学術誌18人(38%)

なお 48人中35人のジャーナリストがホスピスに関するトピックを報告したことがなく、情報が偏っていた。医師は、がんに関する情報の最も信頼できるソースで、とジャーナリストは医師へのインタビューに高い信頼性を有していた。医学知識の急速な進展により、ジャーナリストががん関連問題をカバーすることは困難になってきている。積極的な治療や生存率は 治療の失敗、有害事象、終末期ケア、死に関してよりもジャーナリストの関心を集めた。

学術誌を引用していたジャーナリストはわずか38%でした。なおこのアンケートは16%しか回答が得られていませんので、実際のところ学術誌をベースに報道されているという状況はかなり低いものと言えそうです。また関心を集めるテーマにもバイアスがかかっており、医療ジャーナリスソトが報道する内容は質、バランスともに非常に偏りがあるのもまた事実でしょう。

■健康情報番組の情報信頼度■
Korownyk C, Kolber MR, McCormack J.et.al. Televised medical talk shows--what they recommend and the evidence to support their recommendations: a prospective observational study. BMJ. 2014 Dec 17;349:g7346. PMID: 25520234
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25520234

健康問題に関するテレビの医療番組での推奨内容や主張内容を評価した前向き観察研究。健康情報トーク番組のドクター・オズ・ショーとザ・ドクターで放送されたエピソードからランダムに40エピソードをそれぞれ抽出し、さらにそれぞれの番組から80の推奨テーマ(全160テーマ)について、経験豊富なエビデンスレビューアーによりエビデンスに支持されたテーマの割合を検討した。

160の推奨テーマの少なくとも54% (95%信頼区間47~62)が支持された。ドクター・オズ・ショーでは46%が支持され、15%が矛盾し39%は根拠不明であった。ザ・ドクターズでは63%が支持され、14%が矛盾し、24%が不明であった。

■喫煙に起因する死亡原因■
Carter BD, Abnet CC, Feskanich D.et.al. Smoking and mortality--beyond established causes. N Engl J Med. 2015 Feb 12;372(7):631-40. PMID: 25671255
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25671255
研究デザイン:コホート研究5件のプール度解析

P:55 歳以上の男性 421,378 人,女性 532,651 人
E:喫煙あり
C:喫煙なし
O:喫煙に起因する死亡
交絡への配慮:年齢,人種,教育水準,1 日のアルコール摂取量

アウトカム 相対リスク[95%信頼区間]
腎不全による死亡 2.0[1.7~2.3]
腸管虚血による死亡 6.0[4.5~8.1]
高血圧性心疾患による死亡 2.4[1.9~3.0]
感染症による死亡 2.3[2.0~2.7]
種々の呼吸器疾患による死亡 2.0[1.6~2.4]
乳癌による死亡 1.3,[1.2~1.5]
前立腺癌による死亡 1.4,[1.2~1.7]


■電子機器と睡眠■
Hysing M, Pallesen , Stormark KM.et.al. Sleep and use of electronic devices in adolescence: results from a large population-based study. BMJ Open. 2015 Feb 2;5(1):e006748. PMID: 25643702
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25643702
研究デザイン:人口ベース横断研究

P:16歳から19歳の3つの年齢コホートから9846人(平均17歳、女性53.5%(5252人)
E:就電子機器 (パソコン、携帯電話、MP3プレーヤ、タブレット、ゲーム機、テレビ)を使用
C:電子機器の使用なし
O:自己申告に基づく就寝時間や睡眠時間、入眠戦時、など


就寝時電子デバイスの使用に関する結果のみ以下に要約する

オッズ比[95%信頼区間]
使用デバイス 入眠潜時60分以上 2時間以上の睡眠不足
パソコン 1.52[1.34~1.71] 1.53[1.34~1.76]
携帯電話 1.48[1.30~1.68] 1.35[1.17~1.55]
MP3プレーヤー 1.36[1.25~1.48] 1.21[1.10~1.32]
タブレット 1.18[1.08~1.29] 1.12[1.02~1.23]
ゲーム機 1.13[1.04~1.23] 1.20[1.10~1.32]
テレビ 1.19[1.10~1.30] 1.36[1.24~1.49]

電子デバイスの就寝前使用は睡眠時間睡眠時間短縮に関連。

オッズ比[95%信頼区間]
使用デバイス 5時間未満 7~8時間
パソコン 2.70[2.14~3.39] 1.64[1.38~1.96]
携帯電話 1.85[1.45~2.35] 1.50[1.24~1.83]
MP3プレーヤー 1.19[1.01~1.41] 1.19[1.03~1.36]
タブレット 1.18[1.08~1.29] 1.10[0.95~1.28]
ゲーム機 1.40[1.19~1.64] 1.17[1.01~1.35]
テレビ 1.51[1.29~1.77] 1.16[1.01~1.33]


■徐々に喫煙数を減らす禁煙に対するバレニクリンの効果■
Ebbert JO, Hughes JR, West RJ.et.al. Effect of varenicline on smoking cessation through smoking reduction: a randomized clinical trial. JAMA. 2015 Feb 17;313(7):687-94. PMID: 25688780
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25688780
背景と研究デザイン:喫煙者の中には直ちに禁煙できないもののその意思はある喫煙者も多い。この研究は1か月以内に禁煙は難しいが3か月のスパンで禁煙を希望する人たちを対象に行われた喫煙本数をバレニクリンによる禁煙補助療法とともに減らし禁煙を達成するという介入効果を検討したプラセボ対照のランダム化比較試験。

P:18歳以上で1日に10本以上喫煙し、過去3か月以内に持続して禁煙できなかった喫煙者で、1か月以内に禁煙するつもりはないが3か月以内に禁煙したいという意思をもつ参加者を広告にて募集。(1510人、平均44.7~44.4歳、男性55.9~56.8%、喫煙開始年齢17.3歳)
E:バレニクリン2㎎/日を24週投与(0.5㎎/日3日、1㎎/日4日、その後維持量を推奨)760人
C:プラセボの投与750人
※直ちに禁煙するのではなく最初の4週で喫煙数を50%減らし、8週目までに75%減らし、12週までに禁煙を目標とする。
O:15~24週における一酸化炭素で確認された禁煙持続率

盲検化:プラセボ対照二重盲法
サンプルサイズ:各群702例(パワー90%、両側α0.05)
統計解析:intent-to-treat解析
追跡期間24週(解析組み入れは100%、試験完遂はE群559人/760人、C群516人/750人)

主な結果は以下の通り
アウトカム E群 C群 結果[95%信頼区間]
15~24週の持続禁煙 244/760(32.1%) 52/750(6.9%) 相対リスク4.6[3.5~6.1]
吐き気 209/751(27.8%) 67/742(9.0%) リスク差18.8[14.99~22.61]
異常な夢 86/751(11.5%) 43/742(5.8%) リスク差5.66[2.83~8.49]
不眠 80/751(10.75) 51/742(6.9%) リスク差3.78[0.92~6.64]


■適度なアルコール消費量■
Knott CS, Coombs N, Stamatakis E.et.al. All cause mortality and the case for age specific alcohol consumption guidelines: pooled analyses of up to 10 population based cohorts. BMJ. 2015 Feb 10;350:h384. PMID: 25670624
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25670624
研究デザイン:適度なアルコール消費量がどれくらいかを検討した横断研究のプールド解析

P:50歳から64歳、65歳以上の男女
E&Cアルコール消費量(1単位:純アルコール20g)
O:総死亡
交絡調整:年齢、BMI 経済活動、教育、民族性、役所地域、婚姻状況、喫煙状況、社会地位
男性の結果のみまとめる。
アルコール消費量(/週) 50~64歳

  ハザード比[95%信頼区間]

65歳以上

  ハザード比[95%信頼区間]

これまでに飲酒なし 1.00 (reference) 1.00 (reference)
過去に飲酒 1.28 (0.75 to 2.19) 1.50 (1.18 to 1.92)
過去1年に飲酒なし 1.02 (0.24 to 4.37) 1.53 (0.94 to 2.51)
月1回未満 0.77 (0.46 to 1.29) 1.07 (0.85 to 1.36)
月1から2回 0.69 (0.41 to 1.16) 0.97 (0.76 to 1.25)
0.1-5.0 units 0.68 (0.41 to 1.14) 1.04 (0.83 to 1.31)
5.1-10.0 units 0.63 (0.38 to 1.03) 0.83 (0.66 to 1.04)
10.1-15.0 units 0.61 (0.37 to 1.02) 1.01 (0.79 to 1.28)
15.1-20.0 units 0.48 (0.27 to 0.83) 0.78 (0.59 to 1.03)
>20.0 units 0.81 (0.51 to 1.28) 0.96 (0.77 to 1.20)


■禁煙補助アプローチの実効性■
Kotz D, Brown J, West R. Prospective cohort study of the effectiveness of smoking cessation treatments used in the "real world".Mayo Clin Proc. 2014 Oct;89(10):1360-7PMID: 25282429
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25282429
研究デザイン:前向きコホート研究

P:イギリスの全国世帯調査に参加した成人1560人(平均46.5歳、女性55.8%)
E:①禁煙補助薬(ニコチン置換、ブプロピオン、バレニクリンなど)+専門家による指導
E:②禁煙補助薬(ニコチン置換、ブプロピオン、バレニクリンなど)+簡単なアドバイス
E:③OTCにてニコチン置換製剤
C:介入なし
O:自己申告による6か月後の禁煙
交絡調整;たばこの依存度、年齢、性別、社会的地位

介入方法 オッズ比[95%信頼区間]
①薬剤+専門家指導 2.58 (1.48-4.52)
②薬剤+簡単なアドバイス 1.55 (1.11-2.16)
③OTCでのNRT 0.68 (0.49-0.94)
④介入なし


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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■シプロフロキサシンとSIADH■
Babar SM. SIADH associated with ciprofloxacin. Ann Pharmacother. 2013 Oct;47(10):1359-63. PMID: 24259701
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24259701
68歳白人女性。尿路感染症のためシプロフロキサシンの処方を受けたところ、血清Naが低下。Naranjo scaleを用いた結果シプロフロキサシンとSIADHとの関連を示唆した。血液脳関門を通過したシプロフロキサシンがγアミノ酪酸およびN-メチル-D-アスパラギン酸受容体を刺激することで、抗利尿ホルモンの合成、分泌を促進したものではないかと考えられる。

■モキシフロキサシンとSIADH■
Yam FK, Eraly SA. Syndrome of inappropriate antidiuretic hormone associated with moxifloxacin. Am J Health Syst Pharm. 2012 Feb 1;69(3):217-20. PMID: 22261943
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22261943

66歳COPD女性。頭痛や体の痛み、めまいを訴え救急診療部受診。5日前よりCOPD増悪のためプレドニゾロン40mg/日とモキシフロキサシン400mg/日の投与を受けていた。血清Naは110 meq/Lと低値。モキシフロキサシン継続のまま集中治療室へ。Na補正を開始したものの119-122 meq/Lで頭打ちとなった。入院3日目にモキシフロキサシン中止、入院5日目でNaが131 meq/Lまで回復した。モキシフロキサシンと関連する薬剤誘発性SIADHが疑われた。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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SIADHは抗利尿ホルモンが以上分泌され低Naを起こす状態ですが、薬剤性のものも知られており、原因薬剤は向精神薬やレニンアンギオテンシン系薬剤が有名ですよね。キノロン系抗菌薬でも症例報告があるのは恥ずかしながら知りませんでした。

モキシフロキサシンでは想定できませんが、キノロン系薬剤が尿路感染症で使用される場合、水分を多めにとるよう指導(排尿ドレナージのため)されていることもあり、万が一SIADHによる低Naをきたした場合、多飲によりさらに状況が悪化する可能性も想定できます。

レボフロキサシンやシプロフロキサシンの添付文書では特に注意喚起がなされていませんが、電解質異常はそく致命的となりうるために、今後の報告や疫学的研究に注目したいと思います。

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地域医療の見え方  2015.Mar.4;1(8)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ゾルピデムの有害事象リスクを考える-

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[ポイント]
■ゾルピデム5㎎/日の骨折リスク、パーキンソン病発症リスクは連日1年以上の投与でリスクが高くなる。
■ゾルピデム5㎎/日の緑内障発症リスクは連日40以上の投与で有意に関連する。
■ゾルピデム5㎎/日の脳卒中発症リスクは概ね連日3か月の使用でリスクが高くなる。
■ゾルピデム5㎎/日の癌発症リスクは概ね連日2ヶ月の使用でリスクが高くなる
■少なくともゾルピデム5㎎/日を1年以上漫然と使用すべきではない。
■ゾルピデムでの健忘睡眠関連摂食障害に要注意

[イントロダクション]
ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン系の催眠鎮静剤,抗不安剤です。短期作用型ベンゾジアゼピンの有害事象リスクがクローズアップされる中で、個人的には相対的に筋弛緩作用や依存の点などでアドバンテージがあるように感じていました。しかしながら、マイスリー®の添付文書には「警告」が設けられており以下のような記載がります。

「本剤の服用後に、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)があらわれることがある。また、入眠までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがあるので注意すること。」

筋弛緩作用云々の話以前に、やはり転倒、骨折リスクの懸念は十分にあるでしょう。また保険上の適応もやや特徴があります。

「不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)」

となっていて、抗うつ薬や抗精神病薬との併用は保険上問題となるケースもあるようです。

ベンゾジアゼピン受容体はベンゾジアゼピン系以外の薬物も結合することができ、1988年Langer and Arbillaは、オメガ(ω)受容体に改称することを提唱しました。ω受容体には2つのサブタイプが存在し、それぞれω1、ω2受容体と呼ばれます。ベンゾジアゼピン系薬剤は一般にω1、ω2受容体に対する選択性が低いため、催眠鎮静作用、抗痙攣作用、抗不安作用及び筋弛緩作用の間の分離が悪いと考えられています。ω1ないしω2受容体に選択的な親和性を有する化合物は、これら作用の間の分離ができる可能性が考えられ、ω受容体サブタイプに選択的に作用する薬剤の開発が待たれていたわけです。

ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン構造を有し、ω1受容体に選択的に作用する速効性の短時間型睡眠薬です。そのためゾルピデムは動物実験において抗コリン作用は示さず、眼圧に影響を与えることはないと考えられているほか、依存や転倒リスクもベンゾジアゼピンと比べて少ないといわれています。

さてベンゾジアゼピン系薬剤、様々なリスクが挙げられていますが、睡眠薬全般にわたり死亡リスク上昇を報告した研究が複数あることはなかなか衝撃的です。(※1)(※2)観察研究から様々な交絡が考えられるかもしれませんが、長期連用はできる限り避けたいところです。

そのような中で比較的安全性が高いといわれるゾルピデムは漫然と使用されるケースも多いのではないかと思っています。今回はゾルピデムの有害事象に関して文献ベースでまとめていきます。

[ゾルピデムの転倒骨折リスク]
ベンゾジアゼピン系薬剤に比べてω1受容体に選択的に作用するゾルピデムは理論上、転倒リスクが少ないと考えられますが、実際のところどうなんでしょう。

65歳以上の高齢者を対象とした大腿骨頸部骨折との関連を検討した症例対照研究(※3)では間接的に比較するとベンゾジアゼピン系薬剤よりもむしろリスクの関連が可能性を示唆しました。

この研究は大腿骨頸部骨折をおこし外科的修復を受けた患者1222例を症例とし、年齢、性別でマッチしたコントロール4888例を比較してイベント期間の180日前の鎮静催眠薬の使用有無を調べ大腿骨頸部骨折との関連を検討しました。
薬剤 調整オッズ比[95%信頼区間]
ゾルピデム 1.95[1.09~3.51]
ベンゾジアゼピン 1.46[1.21~1.76]
抗精神病薬 1.61[1.29~2.01]
抗うつ薬 1.46[1.22~1.75]


もう少し骨折・転倒リスク関連を見ていきましょう。ゾルピデムと重症損傷リスクを検討したコホート研究が報告されています。(※4)

この研究はゾルピデムの処方をうけた18歳以上の8188人のコホートと、年齢性別でマッチした32752人の2つのコホートを比較し、少なくとも1年以上追跡し頭部外傷や骨折リスクを検討しました。その結果ゾルピデムの使用は入院を必要とする頭部外傷や骨折リスクと関連する可能性が示唆されました。(ハザード比1.67[95%信頼区間1.19-2.34]).
年間の投与量とリスクとの関連は以下のとおりです。
年間使用量 ハザード比[95%信頼区間]
71~800㎎ 2.04[1.32-3.13]
801-1600 mg 4.37[2.12-9.01]
1600 mg以上 4.74[2.38-9.42]

ゾルピデム5㎎を毎日服用すると年間で1825㎎となりますから1600㎎を軽く超えてしまいますね。1年でリスクは4倍以上に増えると考えられます。

またゾルピデムと骨折リスクを検討した後ろ向きコホート研究でもゾルピデムの使用は股関節骨折リスクの上昇に関連する可能性を示唆しました。(※5)ゾルピデムでの発症率は3.10/1000人、非使用で1.39/1000人年 性別、年齢、人口統計的状況や医療状況で補正後リスクは2.28倍高いことが示されています。(95%信頼区間1.61~3.23)

このようにゾルピデムの骨折リスクは決して侮れるものではなくベンゾジアゼピン系薬剤とそのリスクの程度はほぼ同等と考えていたほうが良いでしょう。

[ゾルピデムのパーキンソン病リスク]

台湾の国民健康保険システムのデータを用いた人口ベース後ろ向きコホート研究が報告されています。(※6)

この研究は3か月以上ゾルピデムを使用している2961人と、年齢、性別、登録年をマッチングしたゾルピデム非使用者を比較しパーキンソン病の発症リスクを検討しました。

その結果パーキンソン病はゾルピデム使用群で増加しました。ハザード比:1.88[95%信頼区間1.45~2.45]
また低用量ではリスクが低いですが、高用量ではリスクが高いことが示唆されています。

・400mg/年未満:ハザード比0.7
・1600㎎/年以上:ハザード比2.94

ゾルピデム5㎎を毎日服用すると年間で1825㎎でしたから、こちらも1年の漫然投与でそのリスクを増やしている可能性があります。

台湾の国民健康保険研究データベースを用いたゾルピデムとパーキンソン病リスクとの関連は2014年にも報告されています。(※7)

5年の追跡でゾルピデム使用1.2%、非使用0.5%でP<0.001。cumulative defined daily doses (cDDDs)ごとのリスクは以下の通りです。

cDDs ハザード比[95%信頼区間]
28-90 1.10 [0.88-1.37]
91-365 1.41 [1.17-1.72]
365以上 1.27 [1.05-1.55]


[ゾルピデムと緑内障リスク]

動物実験では眼圧に対する影響がないとするゾルピデムですが臨床上はどうなのでしょうか。ゾルピデムと緑内障リスクを検討した症例対照研究が報告されています。(※8)

こちらも台湾における国民健康保険システムを用いています。緑内障と診断された患者8898人に対して、年齢・性別でマッチした35592人のコントロールを用いてその関連を検討しています。平均年齢は約40歳。調整した交絡因子は高血圧、糖尿病、心血管疾患、高脂血症、うつ病、不安症。その結果、ごくわずかですがリスクとの関連が認められました。

表タイトル
アウトカム E群 C群 調整オッズ比[95%CI]
緑内障 2.8% 2.0% 1.19 (1.02–1.38)


全体的にはその関連はあまり強くはない印象で、ベンゾジアゼピン系薬剤に比べたらその影響は小さいものと考えられますが、年間使用量が上昇するほどリスクとの関連が強くなる可能性が示唆されており、漫然投与はそのリスク上昇に寄与している可能性があります。

年間使用量 調整オッズ比[95%信頼区間]
<40㎎ 1.06 (0.83–1.37)
40–199㎎ 1.19 (0.91–1.57)
≥200mg 1.31 (1.03–1.68)


[ゾルピデムと急性膵炎]

急性膵炎はしばしば重篤な合併症を引き起こす可能性のある重大な有害事象ですが、こちらもゾルピデムの使用と急性膵炎リスクを検討した人口ベース症例対照研究が台湾から報告されています。(※9)

この研究は20歳から84歳で急性膵炎を発症した4535人を症例とし、年齢・性別、登録年でマッチングしたコントロール18,140人を比較しゾルピデムの使用有無から急性膵炎との関連を検討したものです。なおゾルピデムは急性膵炎発症7日以内の使用と定義されています。その結果調整オッズ比7.20[5.81~8.92]とかなり強い関連を示しました。なお添付文書への副作用としての記載は現時点でありません。

[ゾルピデムと脳卒中]

やはり台湾の国民健康保険データベースを用いて、ゾルピデムと脳卒中リスクの関連を検討した症例対照研究が報告されています。(※10)

この研究は脳卒中の診断を受けた12,747を症例とし、症例1人に対して4人のコントロールを設定しました。その結果ゾルピデムの使用は虚血性脳卒中のリスク増加との関連を示唆しました。(オッズ比:1.37[95%信頼区間1.30-1.44])年間投与量に対する各リスクは以下の通りです。

年間使用量 調整オッズ比[95%信頼区間]
< 70㎎ 1.20,
71-470,㎎ 1.41,
470 mg 1.50,


同様に漫然投与がリスクを上昇させる可能性を示唆しています。マイスリー5㎎であれば年間470㎎は約3か月の連日使用を意味しています。

[ゾルピデムと癌]

多くの薬剤で研究されることの多い薬剤と癌との関連ですが、ゾルピデムでも報告があります。(※11)
この研究も台湾の国民健康保険データベースを用いており、ゾルピデムを使用していた14950人のコホートと、年齢、性別でマッチした使用していないコホートを比較し、ゾルピデムと発がんリスクを検討しています。その結果ゾルピデムの使用は、その後の癌のリスク増加と関連し得ることを示唆しました。(ハザード比1.68[95%信頼区間1.55~1.82])
なお年間で300 mgを超えるとリスクは2.38倍まで上昇する可能性が示されています。マイスリー®5㎎を毎日服用して60日(約2ヶ月)ですからやや衝撃的です。

[ゾルピデムの有害事象、どう考える?]

ゾルピデムは副作用の少ない薬剤などと言われることも多いですが、転倒・骨折リスクは必ずしも低いとはいえず、ベンゾジアゼピン系薬剤と同等という認識でよいかと思います。また緑内障に関しても1か月以上の連用で有意な関連を示唆しています。癌や脳卒中リスクも2~3日ヶ月の連用で有意な関連、急性膵炎リスクはややオッズが高くその関連性が強く疑われるかもしれません。骨折リスク、パーキンソン病リスクを考慮すれば少なくとも1年以上の連日漫然投与は避けたい印象です。なお10㎎製剤を使用していた場合、その期間は半分になり、より高いリスクが想定されます。

またゾルピデムでは健忘睡眠関連摂食障害等の報告が多数あり(※12)(※13)ゾルピデム服用後、無意識状態で調理を行い摂食行動に走ったり、わざわざ買い物まで出かけて食品を購入するなどの行動があるようです。火をつかったり、外出は無意識状態で行われているため非常に危険であると思われます。知らないうちに体重が増えたとか、食べ物がなくなっているなどの現象が見られた場合はこの有害事象の可能性を念頭に入れたほうが良いかもしれません。

[参考文献]
(※1)Kripke DF, Langer RD, Kline LE. Hypnotics' association with mortality or cancer: a matched cohort study. BMJ Open. 2012 Feb 27;2(1):e000850. PMID: 22371848
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22371848
(※2)Weich S, Pearce HL, Croft P, Singh S,et.al. Effect of anxiolytic and hypnotic drug prescriptions on mortality hazards: retrospective cohort study. BMJ. 2014 Mar 19;348:g1996.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24647164
(※3)Wang PS, Bohn RL, Glynn RJ,et.al. Zolpidem use and hip fractures in older people. J Am Geriatr Soc. 2001 Dec;49(12):1685-90. PMID: 11844004
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11844004
(※4)Lai MM, Lin CC, Lin CC.et.al. Long-term use of zolpidem increases the risk of major injury: a population-based cohort study. Mayo Clin Proc. 2014 May;89(5):589-94. PMID: 24684782
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24684782
(※5)Lin FY, Chen PC, Liao CH.et.al. Retrospective population cohort study on hip fracture risk associated with zolpidem medication. Sleep. 2014 Apr 1;37(4):673-9. PMID: 24899758
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24899758
(※6)Huang HC, Tsai CH, Muo CH,et.al. Risk of Parkinson's disease following zolpidem use: a retrospective, population-based cohort study. J Clin Psychiatry. 2015 Jan;76(1):e104-10. PMID: 25650675
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25650675
(※7)Yang YW, Hsieh TF, Yu CH.et.al. Zolpidem and the risk of Parkinson's disease: a nationwide population-based study. J Psychiatr Res. 2014 Nov;58:84-8. PMID: 25124550
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25124550
(※8)Ho YH, Chang YC, Huang WC.et.al. Association Between Zolpidem Use and Glaucoma Risk: A Taiwanese Population-Based Case-Control Study. J Epidemiol. 2014 Aug 23. [Epub ahead of print] PMID: 25152195
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25152195
(※9)Lai SW, Lin CL, Liao KF.et.al. Increased relative risk of acute pancreatitis in zolpidem users. Psychopharmacology (Berl). 2014 Dec 10. [Epub ahead of print] PMID: 25491930
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25491930
(※10)Huang WS, Tsai CH, Lin CC.et.al. Relationship between zolpidem use and stroke risk: a Taiwanese population-based case-control study. J Clin Psychiatry. 2013 May;74(5):e433-8. PMID: 23759463
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23759463
(※11)Kao CH, Sun LM, Liang JA.et.al. Relationship of zolpidem and cancer risk: a Taiwanese population-based cohort study. Mayo Clin Proc. 2012 May;87(5):430-6. PMID: 22560522
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22560522
(※12)Najjar M. Zolpidem and amnestic sleep related eating disorder. J Clin Sleep Med. 2007 Oct 15;3(6):637-8. PMID: 17993047
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17993047
(※13)Kim HK, Kwon JT, Baek J.et.al. Zolpidem-induced compulsive evening eating behavior. Clin Neuropharmacol. 2013 Sep-Oct;36(5):173-4. PMID: 24045611
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24045611

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■妊娠高血圧症に対する血圧コントロール■
Magee LA, von Dadelszen P, Rey E.et.al. Less-tight versus tight control of hypertension in pregnancy. N Engl J Med. 2015 Jan 29;372(5):407-17. PMID: 25629739
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25629739
研究デザイン:ランダム化比較試験(非盲検国際多施設共同試験)

P:妊娠14~33週6日目までの女性。拡張期圧90~105mmHg(もしくは降圧薬を服用して85~105mmHg)987人(74.6%が高血圧既往)
E:非厳格コントロール降圧治療(目標拡張期圧100mmHg)493人
C:厳格コントロール降圧治療(目標拡張期圧85mmHg)488人
O:流産及び出生後28日以内の48時間以上の高度医療をせざるを得ない新生児の複合アウトカム

結果▶プライマリアウトカムの発症はE群31.4%、C群30.7%,で調整オッズ比1.02[95% 信頼区間0.77~1.35]とほぼ同等であった。セカンダリアウトカムである重篤な母体合併症は6週の追跡でE群3.7%、C群2.0%であり、調整オッズ比は1.74[95%信頼区間0.79~3.84]とむしろ増加傾向であった。

■成人のインフルエンザに対するオセルタミビル■
Dobson J, Whitley RJ2, Pocock S.et.al. Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. 2015 Jan 30. pii: S0140-6736(14)62449-1. PMID: 25640810
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25640810
研究デザイン:成人のインフルエンザ感染症に対するランダム化比較試験のメタ分析最新報告

P:9研究に参加した4328人の成人インフルエンザ(様)患者
E:オセルタミビル75mgを2回
C:プラセボ
O:症状緩和までの時間
元論文はプラセボ対照の2重盲検ランダム化比較試験

結果▶オセルタミビル群では時間比で21%症状回復が早い。time ratio 0.79[95%信頼区間0.74~0.85]症状消失までの時間は中央値でE群97.5時間、C群122.7時間であり、差は-25.2 時間[95%信頼区間 -36.2~-16.0]であった。

なお抗菌薬を必要とする合併症はE群4.9%、C群8.7%でリスク比は0.56[95%信頼区間0.42~0.75]、リスク差は-3.8%[95%信頼区間 -5.0~ -2.2]であった。さらに全原因入院はE群0.6%、C群1.7%でリスク比0.37[95%信頼区間 0.17~0.81]、リスク差-1.1%[95%信頼区間 -1.4 ~-0.3]であった。

有害事象に関しては嘔気がE群9.9%、C群6.2% リスク比1.60[95%信頼区間1.29~1.99]、嘔吐がE群8.0%、C群3.3% リスク比2.43[95%信頼区間1.83~3.23]。また精神系有害事象や重篤な有害事象に関しての記録はなかった。

※旧ブログ関連記事※
抗インフルエンザ薬をどう考える
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/04/blog-post_14.html

2014年のコクランでは成人に対するオセルタミビルの効果は症状緩和までの時間は平均差-16.8時間と報告されていた。今回の報告ではやや消失時間が早まり有効性の面でポジティブな結果が出ている。

■ラクトバチルス・ブレビスKB290(ラブレ菌)とインフルエンザ■
Waki N, Matsumoto M, Fukui Y.et.al. Effects of probiotic Lactobacillus brevis KB290 on incidence of influenza infection among schoolchildren: an open-label pilot study. Lett Appl Microbiol. 2014 Dec;59(6):565-71. PMID: 25294223
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25294223
研究デザイン:ランダム化比較試験

背景:
ラクトバチルス・ブレビス(KB290)は京都で生産される漬物(すぐき)から分離された植物由来の乳酸菌である。「すぐき漬け」といえば、千枚漬、しば漬と並び、京都の冬の代表的な漬物である。乳酸菌の中でもLactobacillus acidophilusは、発熱、鼻漏、および咳などの呼吸器症状発生率を減少させることが報告されている。
Leyer GJ, Li S, Mubasher ME, Reifer C,.et.al. Probiotic effects on cold and influenza-like symptom incidence and duration in children. Pediatrics. 2009 Aug;124(2):e172-9. PMID: 19651563
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19651563
本研究は日本の小学生を対象にLactobacillus brevis KB290のインフルエンザ感染症に対する有効性を検討した非盲検化比較試験である。ランダム化されていない点に注意が必要であろう

P:栃木県那須塩原市の小学校15校より2926人
E: ラクトバチルス・ブレビスKB290(ラブレ菌) 60億コロニー形成単位含有乳酸菌飲料80ml1日1回。
C:プラセボ飲料
O:インフルエンザ罹患率
盲検化:されていない
追跡:解析されたのは2926人中1783人(規則に従った服用方法をしなかった参加者を除外した)

研究デザインはクロスオーバーデザインで、研究参加者をグループAとグループBに分けている。(ランダム割り付けではない)グループAは8週間で週に5日間ラブレ菌飲料を服用し(第1期)、その後非摂取期間が8週(第2期)。グループBは非摂取期間8週(第1期)の後にラブレ菌飲料を服用。(第2期)
栃木県でのインフルエンザ流行が第2期となっており、本研究では第1期においてはインフルエンザ感染症発症率の評価に適していないと結論付けている。したがって主要な評価は第2期のE群(グループB)、C群(グループA)比較となっている。主な結果は以下の通り。
サブグループ E群 C群 相対危険[95%CI]
全体 171/1089(15.7%) 166/694(23.9%) 0.656[0.542~0.795]
ワクチン接種あり 70/466(15.0%) 70/356 (19.7%) 0.764[0.565~1.032]
ワクチン接種なし 101/620 (16.3%) 96/335 (28.7%) 0.568[0.445~0.727]


※関連論文※
Gleeson M. Bishop NC, Oliveira M.et.al. Daily probiotic's (Lactobacillus casei Shirota) reduction of infection incidence in athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2011 Feb;21(1):55-64. PMID: 21411836
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21411836
活動性の高いスポール選手84人(自転車部、トライアスロン、陸上部、水泳部所属、男性54人、平均27歳を対象にプロバイオティクス1日2本(1本65ml)(ラクトバチルス•カゼイシロタ)42人とプラセボ42人を比較。1週以上持続する上気道炎発症割合、上気道炎の平均発症回数を検討した2重盲検ランダム化比較試験。16週の追跡で1週間以上持続する上気道症状はE群66%、C群90%で有意だった。p = .021

■アトピー性皮膚炎に対するプロバイオティクスの効果■
Kim SO, Ah YM, Yu YM.et.al. Effects of probiotics for the treatment of atopic dermatitis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Ann Allergy Asthma Immunol. 2014 Aug;113(2):217-26PMID: 24954372
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24954372
研究デザイン:ランダム化比較試験

P:25のランダム化比較試験に参加した1,599人
E:プロバイオティクスの投与あり
C:プロバイオティクスの投与なし
O:SCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)スコア(アトピー性皮膚炎の重症度分類)

SCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)スコアの変化は以下の通り
全体:-4.51[95%信頼区間 -6.78 ~ -2.24]
小児(1歳から18歳)-5.74[95%信頼区間 -7.27 to -4.20]
成人:-8.26[95%信頼区間 -13.28 ~ -3.25]
なお1歳未満では明確な差が出なかった。

※関連論文※
Wang IJ. Wang JY. Children with atopic dermatitis show clinical improvement after Lactobacillus exposure. Clin Exp Allergy. 2015 Jan 20. PMID: 25600169
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25600169
Lactobacillus paracasei(LP)と Lactobacillus fermentum(LF) によるアトピー性皮膚炎への有効性を検討した2重盲検ランダム化比較試験。LP、LF、 LP+LF、 placeboの4群比較。追跡は3か月。SCORAD, FDLQI, CDLQI スコアなどを検討。LP、LF、 LP+LF、はプラセボに比べて有意にSCORADを改善

※関連論文※
Gerasimov SV, Vasjuta VV, Myhovych OO.et.al. Probiotic supplement reduces atopic dermatitis in preschool children: a randomized, double-blind, placebo-controlled, clinical trial. Am J Clin Dermatol. 2010;11(5):351-61. PMID: 20642296
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20642296
1歳から3歳までの中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者90人を対象とし、Lactobacillus acidophilus DDS-1, Bifidobacterium lactis UABLA-12の有効性を検討した2重盲検ランダム化比較試験。8週後のSCORADスコアを検討。SCORAD はプロバイオティクスで33.7%減少、プラセボで19.4%減少し、その差は有意であった。(p = 0.001).

※関連論文※
Woo SI, Kim JY, Lee YJ.et.al. Effect of Lactobacillus sakei supplementation in children with atopic eczema-dermatitis syndrome. Ann Allergy Asthma Immunol. 2010 Apr;104(4):343-8. PMID: 20408346
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20408346
88人の小児を対象としたLactobacillus sakeiのアトピー性皮膚炎に対する有効性を検討した2重盲検ランダム化比較試験。12週の追跡でSCORADが有意に減少。(P = .01).

※関連論文※
Weston S, Halbert A, Richmond P.et.al. Effects of probiotics on atopic dermatitis: a randomised controlled trial. Arch Dis Child. 2005 Sep;90(9):892-7. PMID: 15863468
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15863468
6歳~18歳の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者56人を対象にLactobacillus fermentumの有効性を検討したランダム化比較試験。SCORADはプロバイオティクス群で有意に改善。

■HPVワクチンと性感染症リスク■
Jena AB, Goldman DP, Seabury SA.et.al. Incidence of Sexually Transmitted Infections After Human Papillomavirus Vaccination Among Adolescent Females. JAMA Intern Med. 2015 Feb 9. [Epub ahead of print] PMID: 25664968
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25664968
研究デザイン:保険データベースを用いた介入前後の差分の差分法による解析

P:12歳~18歳の女性
E:HPVワクチン接種あり
C:HPVワクチン接種なし
O:性感染症発症
介入前後の差を比較するdifference-in‐difference解析
ワクチン接種前における性感染症リスクはトリートメントグループで4.3件/1000人、コントロールグループで2.8/1000人、調整オッズ比1.37[95%信頼区間1.09~1,71]
ワクチン接種後における性感染症リスクはトリートメントグループで6.8件/1000人、コントロールグループで4.2件.1000人年)
介入前後の差分の差分法による解析でE群とC群の関連はほぼ同等であることが示された。
調整オッズ比1.05[95%信頼区間0.80~1.38]

■ジョギングと死亡リスク■
Schnohr P, O'Keefe JH, Marott JL.et.al. Dose of jogging and long-term mortality: the copenhagen city heart study. J Am Coll Cardiol. 2015 Feb 10;65(5):411-9. PMID: 25660917
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25660917
研究デザイン:健康寿命を向上させる理想的な運動時間を検討するための前向き研究

P:健常者5048人(ジョギングをする3950人とジョギングをしない1098人)
E&C:ジョギングのペースや運動量
O:総死亡

ジョギングをしない人と比べて、
・週に1~2.4時間ジョギングする人
ハザード比0.29[95%信頼区間0.11~0.80]
・週に2~3時間ジョギングする人
ハザード比0,32[0.15~0.69]
・週に1時間以下
ハザード比0.29[0.12~0.72]

ジョギングのペース
・ゆっくり:ハザード比0.51[0.24~1.10]
・平均:ハザード比0.38[0.22~0.66]

ジョギングの程度
・軽いジョギング:ハザード比0,22[0.10~0.47]
・中等度のジョギング:ハザード比0.66[0.32~1.38]
・激ししいジョギング:ハザード比1.97[0.48~8.14]
⇒リスクはU字カーブ

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■バレニクリンとジストニア■
Uca AU, Kozak HH, Uguz F.et.al. Varenicline-induced acute dystonic reaction: a case report. Gen Hosp Psychiatry. 2014 May-Jun;36(3):361.e1-2. PMID: 24576987
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24576987
ジストニアは頻繁なねじれおよび反復動作や異常な姿勢を引き起こす持続的な筋肉の収縮を特徴とする症候群である。ニコチン中毒の治療のために使用されたバレニクリンで急性ジストニアにより救急診療部を受診した25歳の患者症例。

■バレニクリンと急性冠症候群■
Kalayci , Eren A, Kocabay G,et.al. Varenicline-induced coronary thrombosis. Ann Pharmacother. 2013 Dec;47(12):1727-9. PMID: 24259623
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24259623
バレニクリンは、有害心血管イベントと関連している可能性が示唆されている。バレニクリンの使用が疑われた急性冠症候群を起こした30歳男性の症例報告。Naranjo probability scaleはバレニクリンが被偽薬である可能性を示唆。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ゾルピデムの研究は台湾からの観察研究が数多く出ていました。薬剤有害事象リスクの定量化には大変役に立つ情報です。症例対照研究ではあくまで関連という示唆にとどまるかもしれませんが、同様のテーマでコホート研究でも同じような結果が示されればその関連は強固なものとなり、因果関係を類推することができますね。比較的安全性が高い印象のゾルピデムでしたが、ベンゾジアゼピン系よりも安全であるとするのは早々だと思います。

乳酸菌とインフルエンザの論文が出ていました。乳酸菌も調べてみると本当にたくさんの種類があって、それぞれ微妙に違うのか、などど果てしない興味がわいてきます。栃木県で行われたラブレ菌の報告は残念ながらRCTではありませんでしたが、示唆としては興味深いです。機会があったら乳酸菌について一度調べてみたいと思います。
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地域医療の見え方  2015.Feb.25;1(7)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ST合剤の併用による高カリウム血症-

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[ポイント]
■ST合剤には高カリウム血症の有害事象が起こり得る
■ST合剤とスピロノラクトンの併用で高カリウム血症による入院のみならず突然死リスクが穂報告されている
■ST合剤とレニンアンジオテンシン系薬剤の併用で高カリウム血症による入院のみならず突然死リスクが報告されている
■ST合剤とβ遮断薬の併用で高カリウム血症による入院リスクが報告されている
■高カリウム血症を誘発する恐れのある薬剤を服用中の高齢者では代替え薬剤がある限りST合剤の投与は避けたい。
■特に腎機能が低下している高齢者に対してスピロノラクトンとST合剤の併用は高カリウム血症リスクが高いうえに低ナトリウムなどの電解質異常を引き起こす恐れもある

[イントロダクション]
ST合剤はスルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤で、主に緑膿菌を除くグラム陰性菌に抗菌スペクトルを有する薬剤です。バイオアベイラビリティも良好であり、外来における尿路感染症などでは代表的な起炎菌をカバーすることから非常に重宝する薬剤ではないかと思います。特に大腸菌へのキノロン耐性をはじめ、尿路感染症へのキノロン系抗菌薬の使用は薬剤耐性の観点から非常に重要な問題です。

このように抗菌薬が必要な尿路感染症においては使い勝手がよさそうなST合剤ではありますが、薬物相互作用や血液障害、高カリウム血症、重篤な皮膚障害などの有害事象報告の多い薬剤ではあります。今回はST合剤使用時の注意ポイントとして高カリウム血症を誘発する恐れのある薬剤との併用について文献的考察をしていきます。


[ST合剤とスピロノラクトン]
ST合剤の有害事象として高カリウム血症,低ナトリウム血症の電解質異常が添付文書にも記載があります。当然ながらスピロノラクトンはK保持性利尿剤ですから、両剤の併用は高カリウム血症のリスクを高める危険があります。

具体的なリスクを報告した文献は2011年に掲載されています。(※1)この報告は66歳以上のカナダ人のコホート(平均年齢81歳から82歳)を用いたコホート内症例対照研究で、慢性疾患のためにスピロノラクトンを継続服用し、抗菌薬(ST合剤、アモキシシリン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン)を処方されて、14日以内に高カリウム血症で入院した患者248例を症例とし、スピロノラクトンを継続使用しており、抗菌薬4剤の処方を受けたが高カリウム血症による入院歴がなかった患者783例を対照としました。

年齢、性別、慢性腎疾患の有無、糖尿病の有無でマッチングを行っています。この2群間でST合剤、ノルフロキサシン、アモキシシリンの使用割合を検討し、アモキシシリンを基準として、ST合剤、ノルフロキサシンの高カリウム血症による入院リスクが検討されています。

調整した交絡因子は年齢、うっ血性心不全、慢性肝疾患、慢性腎臓病、スピロノラクトン治療歴、レニンアンギオテンシン、アルドステロン関連薬などの薬剤使用となっています。その結果、ST合剤で高カリウム血症による入院の有意な関連(調整オッズ比12.4[95%信頼区間7.1~21.6])が見られましたが、ノルフロキサシンでは明確な関連は見出せませんでした。(調整オッズ比1.6[95%信頼区間0.8~3.4])

高K血症による入院
薬剤 症例 対照 オッズ比[95%CI]
ST合剤 65% 21% 12.4[7.1~21.6]
ノルフロキサシン 7% 17% 1.6[0.8~3.4]
アモキシシリン 15% 42% reference


アモキシシリン比較ですが、ST合剤とスピロノラクトンの併用による高カリウム血症入院リスクはかなり強い関連因があると言えましょう。

高カリウム血症による入院は真のアウトカムと言えるほど重篤な有害事象と認識していますが、今年に入りST合剤とスピロノラクトンの併用による突然死リスクを検討した論文がCMAJに掲載されました。(※2)

この研究も同じくカナダオンタリオ州のデータベースを用いた66歳以上の患者(平均86歳)を対象にしたコホート内症例対照研究です。スピロノラクトンを服用中、ST合剤を処方され14日以内に突然死を起こした患者328人を症例とし、年齢、性別でマッチした1171人を対照としました。

2群間において、ST合剤、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、アモキシシリンの使用割合から、アモキシシリンを基準として、各薬剤の突然死との関連を検討しています。

なお交絡因子は糖尿病既往、高血圧既往、うっ血性心不全既往、慢性腎臓病、心筋梗塞、狭心症、脳卒中もしくはTIA、心筋症、利尿剤、β遮断薬、カリウムサプリメント、NSAIDs、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬、ジゴキシン、抗不整脈薬、硝酸製剤、抗血小板薬、スタチン、フィブラート、経口糖尿病薬、インスリン、抗精神病薬、抗うつ薬、鎮静薬、コリンエステラーゼ阻害薬などの薬剤使用で調整しています。主な結果を以下にまとめます。

突然死リスク
薬剤 症例 対照 オッズ比[95%CI]
ST合剤 26.2% 16.1% 2.46[1.55~3.90]
ノルフロキサシン 8.2% 13.8% 0.86[0.47~1.58]
シプロフロキサシン 32.0% 24.7% 1.99[1.38~2.87]
アモキシシリン 18.6% 28.1% reference

やや意外なのはシプロフロキサシンでも上昇している点です。ただ関連の強さを比較すればST合剤の方が高く、高カリウム血症による入院リスクと複合的に考えれば、スピロノラクトンとの併用による有害事象リスクは高い関連が存在すると言えるでしょう。したがってスピロノラクトンを服用中の患者においては、抗菌薬のそもそもの使用有無を含め、選択を慎重にせねばならない印象です。

[ST合剤とレニンアンジオテンシン系薬剤]

スピロノラクトンと同様、レニンアンジオテンシン系薬剤の有害事象でも高カリウム血症は有名です。ST合剤とレニンアンジオテンシン系薬剤との併用に関して高カリウム血症による入院リスクを検討したコホート内症例対照研究が2010年に報告されています。(※3)

この研究はACE阻害薬又はARBを服用している66歳以上の患者コホート(平均年齢81.5歳、男性39.2%)から、ST合剤、アモキシシリン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンを処方されてから14日以内に高カリウム血症により入院した367例を症例とし、年齢、性別、慢性腎臓病、糖尿病歴でマッチングした1417例を対照としました。アモキシシリンを基準として、ST合剤・ノルフロキサシン・シプロフロキサシンによる高カリウム血症入院リスクを検討しています。

交絡はうっ血性心不全、過去3年以内の高K血症による入院歴、併存疾患指数、ケア施設入所期間、収入、薬剤服用数、β遮断薬、利尿薬、NSAIDs、カリウムサプリメントにて調整されています。主な結果を以下にまとめます。

高Kによる入院
薬剤 症例 対照 オッズ比[95%CI]
ST合剤 55.6% 22.8% 6.7[4.5~10.0]
ノルフロキサシン 5.4% 11.5% 0.8[0.4~1.5]
シプロフロキサシン 20.7% 29.1% 1.4[0.9~2.2]
アモキシシリン 13.4% 27.5% reference

ST合剤に関しては予想どおりですが、やはりシプロフロキサシンでもリスクが上昇傾向なのは興味深いです。

こちらも突然死リスクまで検討した文献が2014年にBMJに掲載されています。(※4)カナダオンタリオ州に住む66歳以上でACE阻害薬、もしくはARBを服用している高齢者のコホート(年齢中央値82歳、男性約37%)より血清K値上昇リスクがなく、主に尿路感染症で抗菌薬を処方された患者を対象に、抗菌薬投与後7に位以内に突然死を発症した、1027を症例として、年齢、性別、慢性腎臓病、糖尿病でマッチした3733人を対照としました。
ST合剤、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、アモキシシリンの使用割合から、アモキシシリンを基準に各薬剤の抗菌薬投与後7日以内の突然死を検討したコホート内症例対照研究です。疾病リスク指標で調整したオッズ比を以下にまとめます。

突然死
薬剤 症例 対照 オッズ比[95%CI]
ST合剤 28.0% 19.7% 1.38[1.09~1.76]
ノルフロキサシン 7.7% 12.2% 0.74[0.53~1.02]
シプロフロキサシン 33.1% 25.8% 1.29[1.03~1.62]
アモキシシリン 22% 29.4% reference

ST合剤は当然ながら有意な関連を示していますが、やはりシプロフロキサシンでも有意な上昇しています。これには症例数も関係していそうな感じです。このあたりは今後の研究報告に注目したいと思います。

[ST合剤とβ遮断薬]
β2カテコラミンは細胞膜のNa/Ka ATPaseを活性化しKを細胞内へシフトさせることにより血清カリウム値を下げますが、それを遮断するβ遮断薬は理論上高カリウム血症を誘発する懸念がります。β遮断薬とST合剤の併用における高カリウム血症による入院リスクを検討したコホート内症例対照研究が報告されています。(※5)

この研究もカナダオンタリオ州のデータからβ遮断薬を使用している66歳以上の高齢者(平均80歳)を対象にST合剤を処方されてから14日以内に高カリウム血症で入院した189人と、年齢、性別、慢性腎臓病、糖尿病の既往でマッチさせた対照641人を比較し、ST合剤、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、アモキシシリン使用割合から、アモキシシリンを基準として各薬剤の高カリウム血症による入院リスクとの関連を検討しました。

チャールソン併存疾患スコア、社会経済的地位、うっ血性心不全、冠動脈疾患、および高カリウム血症の既往、非カリウム保持性利尿薬、カリウム保持性利尿薬、カリウムサプリメント、非ステロイド性抗炎症薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬の使用で交絡調整を行っています。主な結果を以下にまとめます。

高K血症による入院
薬剤 症例 対照 オッズ比[95%CI]
ST合剤 51.9% 19.5% 5.1[2.8~9.4]
ノルフロキサシン 4.2% 15.8% 0.5[0.1~1.2]
シプロフロキサシン 27.0% 24.8% 1.8[0.9~3.3]
アモキシシリン 10.6% 25.0% reference

ST合剤は高カリウムを誘発しえる薬剤との併用でそのリスクは高まると考えられましょう。有意差はありませんがシプロフロキサシンでも上昇傾向で、これまでの文献と同様の結果です。

[高カリウム血症起こしやすい薬剤を服用中の患者にST合剤は要注意]

これまで紹介した研究を少し横断的にみてみましょう。まあ単純比較はできませんが全体の傾向を把握しておいて損はないでしょう。
アモキシシリンと比較した 各リスクの調整オッズ非[95%信頼区間]
併用薬 高K血症による入院 突然死
スピロノラクトン 12.4[7.1~21.6] 2.46[1.55~3.90]
レニンアンジオテンシン 6.7[4.5-10.0] 1.38[1.09~1.76]
β遮断薬 5.1[2.8~9.4]

※対象患者はいずれも66歳以上の高齢者

ST合剤は腎機能が正常な患者においても高カリウム血症を引き起こした症例が報告されており(※6)、腎機能低下が起こっているような状態で、尿量が減少している症例では、カリウム排泄が理論上低下していることから、さらにリスクが高まるものと推測されます。
また、レニン‐アンジオテンシン系薬剤は腎保護の目的で使用されるケースもあり、基礎疾患易は十分配慮すべきでしょう。スピロノラクトンはK保持性を謳うだけあり、リスクとの関連は突然死も含めてレニンアンジオテンシン系薬剤よりも高い可能性があります。
これ以外にもβ遮断薬のような高カリウム血症を誘発する可能性のある薬剤とST合剤の併用は十分注意する必要があります。

ST合剤では低ナトリウム血症の有害事象報告があり(※7)スピロノラクトン併用下では高カリウム以外にも低ナトリウムにも留意する必要があります。カリウム保持を謳う利尿薬では複合的な電解質異常リスクが懸念されます。代替え薬剤がある限り、できれば併用を避けたい印象です。

ST合剤は特に尿路感染症に使いやすい印象を持ちますが、高齢者においては高カリウム血症誘発薬剤以外にも様々な薬剤[ワルファリンやSU剤、フェニトイン(※8)等]が併用注意となっており、併用薬剤に留意する必要があります。安易なキノロンも禁物ですが、安易なST合剤も危険でしょう。尿路感染症においては抗菌薬が必要かどうかを十分考慮したうえで、起炎菌によっては第1~2世代セフェム系薬剤などの使用も考慮したいところです。

[参考文献]
(※1)Antoniou T, Gomes T, Mamdani MM.et,al, Trimethoprim-sulfamethoxazole induced hyperkalaemia in elderly patients receiving spironolactone: nested case-control study. BMJ. 2011 Sep 12;343:d5228. PMID: 21911446
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21911446
(※2)Antoniou T, Hollands S, Macdonald EM.et,al. Trimethoprim-sulfamethoxazole and risk of sudden death among patients taking spironolactone. CMAJ. 2015 Feb 2. pii: cmaj.140816. [Epub ahead of print] PMID: 25646289
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25646289
(※3) Antoniou T1 Gomes T, Juurlink DN,et.al. Trimethoprim-sulfamethoxazole-induced hyperkalemia in patients receiving inhibitors of the renin-angiotensin system: a population-based study. Arch Intern Med. 2010 Jun 28;170(12):1045-9. PMID: 20585070
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20585070
(※4)Fralick M, Macdonald EM2, Gomes T.et.al. Co-trimoxazole and sudden death in patients receiving inhibitors of renin-angiotensin system: population based study. BMJ. 2014 Oct 30;349:g6196 PMID: 25359996
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25359996
(※5)Weir MA, Juurlink DN, Gomes T.et.al. Beta-blockers, trimethoprim-sulfamethoxazole, and the risk of hyperkalemia requiring hospitalization in the elderly: a nested case-control study.
Clin J Am Soc Nephrol. 2010 Sep;5(9):1544-51. PMID: 20595693
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20595693
(※6)Nickels LC, Jones C, Stead LG. Trimethoprim-sulfamethoxazole-induced hyperkalemia in a patient with normal renal function. Case Rep Emerg Med. 2012;2012:815907. PMID: 23326725
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23326725
(※7)Dunn RL, Smith WJ, Stratton MA. Trimethoprim-sulfamethoxazole-induced hyponatremia. Consult Pharm. 2011 May;26(5):342-9. PMID: 21733815
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21733815
(※8)Antoniou T, Gomes T, Mamdani MM.et.al. Trimethoprim/sulfamethoxazole-induced phenytoin toxicity in the elderly: a population-based study. Br J Clin Pharmacol. 2011 Apr;71(4):544-9. PMID: 21395647
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21395647

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■高齢者の腎機能とワルファリンの出血リスク■
Jun M, James MT, Manns BJ.et.al. The association between kidney function and major bleeding in older adults with atrial fibrillation starting warfarin treatment: population based observational study. BMJ. 2015 Feb 3;350:h246. PMID: 25647223
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25647223
背景と研究デザイン:ワルファリンの投与開始に当たり心房細動を有する高齢者の腎機能レベルと出血リスクの関連を検討した後ろ向きコホート研究

P:カナダアルバータ州からのワルファリンの服用を開始した心房細動を有する66歳以上の高齢者12403人
E&C:eGFR (mL/min/1.73m(2))により腎機能を分類し比較
≥90(581人:平均70.7歳)を基準, 60-89(6140人:平均76.4歳), 45-59(3221人:平均78.8歳), 30-44(1820人:平均80.6歳), 15-29(586人:平均81.8歳), <15(55人:平均80.0歳)
O:入院もしくは大出血(頭蓋内、上部・下部消化管・その他)による救急診療部受診
調整した交絡因子:性別、年齢、人種状況、高血圧、糖尿病、チャールソン併存疾患(癌、脳血管疾患、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、認知症、転移性固形腫瘍、心筋梗塞、軽度の肝疾患、中等度または重度の肝疾患、麻痺、消化性潰瘍疾患、末梢血管疾患、リウマチ性疾患)、出血による入院歴、タンパク尿、薬物使用(抗血小板薬、非ステロイド性抗炎症薬、プロトンポンプ阻害剤)、地域、収入

治療開始から30日以内
eGFR 発症率(100人年) 発症率比[95%信頼区間]
≥90 6.1[2.19~19.4]※ Reference
60-89 9.2[6.9~12.3] 1.50[0.46~4.98]
45-59 12.7[9.2~17.6] 2.07[0.63~6.83]
30-44 12.4[8.2~18.6] 2.02[0.59~6.84]
15-29 19.8[11.7~33.5] 3.22[0.90~11.45]
<15 63.4[24.9~161.6] 10.33[2.34~45.54]

※原著では21.9~19.4になっているが2.19の誤りと思われる。
治療開始から30日以後
eGFR 発症率(100人年) 発症率比[95%信頼区間]
≥90 3.7[2.7~5.0] Reference
60-89 3.8[3.5~4.1] 1.03[0.76~1.39]
45-59 4.1[3.7~4.5] 1.10[0.80~1.50]
30-44 4.3[3.7~4.5] 1.16[0.84~16.2]
15-29 5.4[4.3~6.8] 1.45[1.00~2.11]
<15 8.3[4.2~16.1] 2.22[1.07~4.59]


■妊娠中糖尿病における薬剤選択■
Balsells M, García-Patterson A2, Solà I.et,al. Glibenclamide, metformin, and insulin for the treatment of gestational diabetes: a systematic review and meta-analysis. BMJ. 2015 Jan 21;350:h102. PMID: 25609400
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25609400
背景と研究デザイン:薬物治療が必要な妊娠糖尿病患者におけるグリベンクラミド、メトホルミン、インスリンを比較検討したランダム化比較試験15研究のメタ分析

P:妊娠糖尿病の女性
E&C:
①グリベンクラミド対インスリン(7研究798人)
②メトホルミン対インスリン(6研究1362人)
③メトホルミン対グリベンクラミド(2研究349人)
O:母体及び胎児アウトカム(重要と思われるものを以下に要約)

①インスリンに対するグリベンクラミドの相対リスク
・早産0.87 (95%信頼区間0.57~1.33)
・巨人症2.62 (95%信頼区間1.35~5.08)
・周産期死亡1.45 (95%信頼区間0.29~7.21)

②インスリンに対するメトホルミンの相対リスク
・早産1.50 (95%信頼区間1.04~2.16)
・巨人症0.96 (95%信頼区間0.73~1.27)
・周産期死亡1.0 (95%信頼区間0.14~7.12)

③グリベンクラミドに対するメトホルミンの相対リスク
・早産1.15 (95%信頼区間0.32~4.17)
・巨人症0.33 (95%信頼区間0.13~0.81)
・周産期死亡0.92 (95%信頼区間0.06~14.6)

短期的なアウトカムとしてグリベンクラミドよりもメトホルミンやインスリンを使用すべきかもしれない。グリベンクラミドは他に比べて明らかに劣るとしています。

■緑茶の摂取とうつ病リスク■
Dong X, Yang C, Cao S.et.al. Tea consumption and the risk of depression: A meta-analysis of observational studies. Aust N Z J Psychiatry. 2015 Feb 5. [Epub ahead of print] PMID: 25657295
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25657295
研究デザイン:観察研究のメタ分析

P:11の観察研究に参加した22817人
E:お茶の摂取が高い人
C:お茶の摂取が低い人
O;うつ病発症

お茶の高用量摂取は低用量摂取に比べてうつ病リスク低下に関連。
相対危険:0.69[95%信頼区間0.63~0.75]
1日3カップごとにうつ病リスクが37%低下(相対危険0.63[95%信頼区間0.55~0.71]

■ゾルピデムとパーキンソン病リスク■
Huang HC, Tsai CH, Muo CH,et.al. Risk of Parkinson's disease following zolpidem use: a retrospective, population-based cohort study. J Clin Psychiatry. 2015 Jan;76(1):e104-10. PMID: 25650675
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25650675
研究デザイン:人口ベース後ろ向きコホート研究

P:台湾の国民健康保険システムのデータより研究参加者を抽出
E:3か月以上ゾルピデムを使用している2961人
C:ゾルピデムを使用していない人から年齢、性別、登録年をマッチング
O:パーキンソン病の発症

パーキンソン病はゾルピデム使用群で増加
・ハザード比:1.88[95%信頼区間1.45~2.45]
低用量ではリスクが低いが高用量ではリスクが高い
・400mg/年未満:ハザード比0.7
・1600㎎/以上:ハザード比2.94

ベンゾジアゼピン単独では明確な差が出ないが(ハザード比1.31[95%信頼区間0,91~1.90])ゾルピデム単独ではリスク上昇(ハザード比2.35[95%信頼区間1.66~3.33]

※関連論文※
Lai MM, Lin CC, Lin CC.et.al. Long-term use of zolpidem increases the risk of major injury: a population-based cohort study. Mayo Clin Proc. 2014 May;89(5):589-94. PMID: 24684782
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24684782
ゾルピデムと重症損傷リスクを検討したコホート研究。ゾルピデムの使用は入院を必要とする頭部外傷や骨折リスクと関連。ハザード比1.67 (95%信頼区間1.19-2.34).
・71~800㎎/年;2.04; 95%信頼区間 1.32-3.13
・801-1600 mg/年:4.37; 95%信頼区間, 2.12-9.01
・1600 mg/年以上:4.74; 95%信頼区間, 2.38-9.42

※関連論文※
Lin FY, Chen PC, Liao CH.et.al. Retrospective population cohort study on hip fracture risk associated with zolpidem medication. Sleep. 2014 Apr 1;37(4):673-9. PMID: 24899758
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24899758
ゾルピデムと骨折リスクを検討した後ろ向きコホート研究。ゾルピデムの使用は股関節骨折リスクの上昇に関連

※関連論文※
Yang YW, Hsieh TF, Yu CH.et.al. Zolpidem and the risk of Parkinson's disease: a nationwide population-based study. J Psychiatr Res. 2014 Nov;58:84-8. PMID: 25124550
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25124550
台湾の国民健康保険研究データベースよりゾルピデムとパーキンソン病リスクを検討したコホート研究。5年の追跡でゾルピデム使用1.2%、非使用0.5%でP<0.001。cumulative defined daily doses (cDDDs)ごとのリスクは以下の通り。
・cDDs28-90:調整ハザード比1.10 (95% CI, 0.88-1.37),
・cDDs91-365:調整ハザード比1.41 (95% CI, 1.17-1.72),
・cDDs365以上:調整ハザード比1.27 (95% CI, 1.05-1.55)

※関連論文※
Kao CH1, Sun LM, Liang JA.et.al. Relationship of zolpidem and cancer risk: a Taiwanese population-based cohort study. Mayo Clin Proc. 2012 May;87(5):430-6. PMID: 22560522
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22560522
台湾の国民健康保険データベースよりゾルピデムと発がんリスクを検討したコホート研究。ゾルピデムの使用は、その後の癌のリスク増加と関連し得ることを示唆。ハザード比1.68; 95%信頼区間1.55~1.82

※関連論文※
Huang WS, Tsai CH, Lin CC.et.al. Relationship between zolpidem use and stroke risk: a Taiwanese population-based case-control study. J Clin Psychiatry. 2013 May;74(5):e433-8. PMID: 23759463
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23759463
台湾の国民健康保険データベースよりゾルピデムと脳卒中リスクの関連を検討したコホート研究。ゾルピデムの使用は虚血性脳卒中のリスク増加との関連を示唆。オッズ比:1.37; 95%信頼区間1.30-1.44

※関連論文※
Ho YH, Chang YC, Huang WC.et.al. Association Between Zolpidem Use and Glaucoma Risk: A Taiwanese Population-Based Case-Control Study. J Epidemiol. 2014 Aug 23. [Epub ahead of print] PMID: 25152195
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25152195
ゾルピデム使用および緑内障リスクを検討した台湾の症例対照研究。わずかながらゾルピデムの使用で緑内障リスクと有意な関連を示唆。オッズ比1.19 (95%信頼区間, 1.02-1.38).

■座位行動とうつ病リスク■
Zhai L, Zhang Y, Zhang D. Sedentary behaviour and the risk of depression: a meta-analysis. Br J Sports Med. 2014 Sep 2. [Epub ahead of print]PMID: 25183627
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25183627
研究デザイン;横断研究、縦断研究のメタ分析

P:30の横断研究110152人と11の縦断研究83014人
E:座位行動あり
C:座位行動なし
O:うつ病

座位行動ありの群はない群に比べてうつ病リスク増加に関連
相対危険;1.25[95%信頼区間1.16~1.35] I2統計量50,7%


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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ゾルピデムと摂食障害■
Kim HK, Kwon JT, Baek J.et.al. Zolpidem-induced compulsive evening eating behavior. Clin Neuropharmacol. 2013 Sep-Oct;36(5):173-4. PMID: 24045611
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24045611
ゾルピデムと睡眠関連摂食障害Sleep related eating disorder (SRED)の症例報告は多数存在する。これは睡眠状態で摂食行動を起こし、健忘のため記憶がないというものである。本事例は不眠症のためのゾルピデムの処方をうけた57歳の女性で、“覚醒状態の下”で夜間の強迫的摂食行動を示した症例。ゾルピデム中止で軽快。

■ゾルピデムと摂食障害■
Najjar M. Zolpidem and amnestic sleep related eating disorder. J Clin Sleep Med. 2007 Oct 15;3(6):637-8. PMID: 17993047
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17993047
46歳女性。不眠症にてゾルピデムを服用。健忘睡眠関連摂食障害を起こした症例。夜間の摂食障害がみられた場合では薬物誘発性睡眠関連摂食障害を疑うとこも有用であろうとしている。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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今回のメインテーマはST合剤と高カリウム血症のリスク評価でした。ST合剤の相互作用はコホート内症例対照研究での文献が多くあり、リスク評価には貴重な情報源となっています。併用注意というのはなかなかどの程度なのか定量的なリスクの把握が難しく、このような研究のオッズ比からリスクの関連を定量化しアセスメントしていく方法は薬剤師にとって有用だと考えています。

文献紹介ではゾルピデムの有害事象が印象的でした。台湾からの研究が多いですね。薬剤師としてはこのような研究に関わりながら薬剤の有害事象リスク定量化と実臨床への情報発信ができたらと思います。

ゾルピデムの有害事象については次週まとめてみたいと思います。今回症例報告をみて初めて知ったのですが、一部の睡眠導入剤では睡眠関連摂食障害という有害事象があるのですね。睡眠時に過食状態になるそうで、睡眠状態下で起こるため、健忘により記憶があまりないそうです。家族など周りの人から見たらちょっと異常な行動に見えますから、とても心配になりますね。眠ったままでの調理行動は思わぬ事故を引き起こしかねません。ゾルピデムではそのような症例報告が多々目につきました。
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[JJCLIP]薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

スレッド
平成26年度第10回薬剤師のジャーナルクラブを以下の通り開催いたします。
開催日時:平成27年3月1日(日曜日)
■午後20時45分頃 仮配信
■午後21時00分頃 本配信
なお配信時間は90分を予定しております.

※ツイキャス配信は以下のURLより視聴できます。
http://twitcasting.tv/89089314

[症例17:インスリンを使うとガンになりやすくなる?!]

【仮想症例シナリオ】

あなたは、とある民間病院に勤める薬剤師です。
今月から内分泌・糖尿病内科の病棟勤務となり、入院患者への服薬支援だけでなく栄養指導も管理栄養士さんや看護師さん達と協働で行うなど、忙しい毎日を送っておりました。

病棟での回診業務を終えて一息ついたある日の午後、たまたま病棟で居合わせた研修医の先生から次のような質問を受けました。

「今日の外来でとある患者から『あんまりインスリンの量が多いと癌が増えるってネットに書いてあったんですけれど本当ですか?』って聞かれて, なんとも答えに困ってしまってね. インスリンのグラルギンなんだけど, そんな報告って本当にあるのですか?」

患者情報:2年前から2型糖尿病と診断された40代男性.
     A1c=8.5%, 平均血糖190mg/dl, BMI = 28.4
     他に現病, 既往なし

あなたは, インスリングラルギンによって本当にガンの発症リスクが増加するのか, 早速調べてみたところ, 次の論文がヒットしたので読んでみることにしました.

[文献タイトルと出典]

Colhoun HM; SDRN Epidemiology Group. Use of insulin glargine and cancer incidence in Scotland: a study from the Scottish Diabetes Research Network Epidemiology Group. Diabetologia. 2009 Sep;52(9):1755-65 PMID: 19603149
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19603149
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2723678/

[もっと好きになる疫学!]

今回もシナリオ作成は山本先生が担当されています。ジャーナルクラブ司会進行は桑原先生です。今回はコホート研究ということで、JJCLIPでコホート研究を扱うのは3回目となりますでしょうか。コホート研究論文をあまり学ぶ機会が少なく、EBMというとどうしてもランダム化比較試験やそのメタ分析に関心が集まりがちですよね。

ランダム化比較試験にせよ、コホート研究にせよ、症例対照研究にせよ、多くの疫学的研究が目指すものは、医療介入(あるいは曝露)と疾病の関連がどのようになっているのかを探索することです。ある薬剤の投与、あるいは治療の実施が、ヒトの健康においてどのような影響を及ぼすのか、すなわち有効性と安全性を検討するためのものです。この疫学的研究が目指すものは病態生理学や薬理学的知見と異なるのは「暴露により疾病発生がどのようなメカニズムで発生するのかではなく、曝露と疾病の間に関連はあるのか」という点に尽きます。

インスリンにより癌が増えるというのは諸説ありますが、疫学的研究で明らかにしたいのはそのメカニズムではなく、その関連と因果関係の確からしさです。

今回のシナリオは医師からの疑問を薬剤師がEBMの手法で整理しながら問題解決にあたるという設定です。インスリンで癌が増えるのかと言う問題は、インスリンが原因となってその結果癌になる可能性はどの程度あるのか、と言う問題に他なりません。原因と結果の関係、これは因果関係と呼ばれるもので、知りたいのはその可能性であります。

時にヒトは真に原因-結果にないにも関わらず、現象を因果関係であると思い込むことがあります。このシナリオで考えてみると例えば、医師の経験上においてインスリンを処方した人たちに、その後比較的すぐに癌を発症してしまった事例を複数経験していたとしたら、それはインスリンにより癌が起きたかもしれないと「原因」-「結果」の構造でとらえることを容易にします。客観的にみれば「たまたまそういった事例を経験した」かもしれない可能性を指摘できますが、やはり自験例と言うのは因果をヒトに植え込むには強力な現象となりえます。

因果関係である可能性(あるいは関連の強さ)と言うのはどのような仕方で構造化すれば良いのか、その問題を解決すべく登場したのがランダム化比較試験に代表されるような疫学的研究です。そもそも因果関係を定量的に把握するためにはどのような仕方で検討すればよいのでしょうか。

例えばAさんがインスリンを使って癌になったとした場合、これは因果関係とは言えるのでしょうか。癌になる要素と言うのはインスリン以外にも複数、いや膨大な数の因子がありますよね。例えば遺伝的背景(癌家系など)喫煙状況、職業、生活習慣、居住地、…。数えきれないくらい、そして癌への関与が未だ解明されていない因子だって大量にあるかもしれません。このようなインスリン以外の要素を極力排除したうえで因果関係を初めて論じることができるのです。

ではこの要素を排除するにはどうしたらよいのでしょうか。Aさんに対してインスリンを使用し3年で癌になったとします。そして全く同じAさんが同じ時期にインスリンを使用しなかったら3年後も癌を発症しませんでした。この場合、インスリンの使用と癌発症には因果関係があると言えそうです。ただしこれは同じAさんが同じ時期に、全く同じ環境で、インスリン使用のみが異なる世界を比較して初めてわかることなんです。

さてさて、もうお分かりいただけると思いますが、因果関係を示すにはAさんのクローンでもだめで全く同じAさんをパラレルワールドのように同じ環境下で同時期に観察しなくてはいけないという超難問にぶち当たるわけなんです。因果関係をしめすって難しいですね。良く広告でこの薬を飲めば痩せる、とか、この食事方法で病気知らず、なんて言いますけど、因果関係なんてそう簡単に示せないんですよ。現実的にパラレルワールドは作れない、じゃ、どうしましょか。

因果関係を定量的に示すには介入(曝露)と非介入(非曝露)を比較し、その差を出すわけですよね。現実的にはパラレルワールドを作り出せないがために、2つの患者群を比較するという擬似的な方法でその差を構造化するという戦略が疫学的研究デザインです。

一人の症例では癌発症の要素が多彩です。だから2人を比べてもその2人の背景因子はまるで異なる。ここで応用されるのが確率論なんです。一定数の症例を集めてその平均値をもってすれば人を構成する要素は概ね平均化されます。その集団を2つに分けることで比較するのです。ランダム化比較試験は一定数の症例をまるででたらめに2つの群に振り分けます。そうすることでヒトを構成する要素、すなわち年齢だとか喫煙だとか、性別だとか、思想などなどを偏りなく2群に分けるんです。そうして初めて擬似的なパラレルワールドを作り出すんです。これでやっと比較できるんですね。

しかし、世の中そう、うまくパラレルワールドを作り出せないこともあります。特に今回のようなケースでは癌の発症を比較するんです。あるいはインスリンが必要なのにそれを用いない治療なんて受けたいと思う人が少ないかもしれません。現実的にランダム化できない事例は、一方の群が治療を受けられないというデメリット、一方の群において明らかに害が発生すると考えられるデメリットをクリアしなくてはいけませんね。

それがクリアできない場合に用いる研究手法が観察研究なんです。だからあくまでも原因-結果の因果関係を探索したいという目的はランダム化比較試験と同じです。しかし大きく異なるのがランダム化できない点にあるということです。そのために2群間の患者背景が偏っているかもしれません。そうなると因果効果の推定は難しくなります。比較可能性をどう高めるか、それを観察研究では統計解析の力を借り、交絡調整という仕方で制御するのでした。

ランダム化比較試験やコホート研究などの疫学的研究、その目的とは何か、そこが分かると疫学って本当にリアルな世界の因果関係(あるいは関連の強さ)を模索するための学問なんだってことがお分かりいただけるでしょう。

コホート研究を読む際には、論文のPECOに加え、患者背景をどのように統計的に補正しているか、交絡因子の調整が需要なポイントとなります。また合わせて追跡状況(追跡期間)や対象患者(母集団)の一般化可能性などに注目してみましょう。では続きは実際のジャーナルクラブで!


※「因果関係」と「関連」は異なりますが、本稿では疫学的探索を俯瞰するために特に明確に区別せず記載させていていただきました。
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