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地域医療の見え方  2015.May.20;1(18)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ビスホスホネート系薬剤の有害事象-

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[ポイント]
■ビス剤と発がんはアレンドロネートで消化器系がんの懸念が示唆されていたが、最新報告では消化器系がんよりは肺癌リスク上昇が懸念された。
■顎骨壊死ではこれまでビス剤の使用とそのリスク上昇が懸念されていたが、抜歯後はビス剤使用のみならず、骨粗鬆症そのものがリスクである可能性がある。
■ビス剤と心血管イベントはこれまで心房細動リスクや心筋梗塞リスクの懸念があったものの最新の報告ではやや否定的。

[イントロダクション]
骨粗鬆症治療薬のスタンダードともいえるビスホスホネート系薬剤。以前より有害事象リスクに関する報告は多々ありました。その有害事象を大きく、発癌リスク(消化管がん)、顎骨壊死リスク、心血管系リスクの3つにわけて、最新の情報をアップデートしていきたいと思います。なおビス剤の長期使用に伴う骨折リスク増加も重大な有害事象ですが、こちらは次回のメインテーマとしてまとめてゆく予定です。

①消化管がんリスク
ビス剤と大腸がんリスクに関する観察研究8件のメタ分析(※1)においては大腸がん、結腸がんリスクの増加は示されませんでした。
・結腸直腸がん:オッズ比0.73(95%信頼区間 0.57-0.93)

QResearchデータベースCPRD (Clinical Practice Research Datalink)の2つのコホートから1997年から2011年の間に消化管癌と診断を受けた50歳以上の症例と症例1例に対し年齢・性別・生活習慣・暦年でマッチした対照5例を設定した大規模症例対照研究(※2)でも明確な関連は示されていません。サブ解析ではアレンドロネートが大腸がんリスクを有意に増加させているようです。ただいずれの癌も投与期間との関連性は低いと言えます。

アウトカム E群

(case/controls)

C群

(case/controls)

調整オッズ比

[95%信頼区間]

食道癌

Qresearch

CPRD

252/1071(23.5%)

262/943(27.8%)

5112/24030(21.3%)

4870/23110(21.0%)

0.97(0.79-1.18)

1.18(0.97-1.43

胃癌

Qresearch

CPRD

141/580(24.3%)

139/694(20.0%)

3014/14135(21.3%)

3018/13992(21.6%)

1.12(0.87-1.44)

0.79(0.62-1.01)

大腸癌

Qresearch

CPRD

929/4345(21.4%)

902/4231(21.3%)

19177/89609(21.4%)

18133/84880(21.4%

1.03(0.94-1.18)

1.10(1.00-1.22)



さらに6つの観察研究のメタ分析(※)においても同様に消化癌リスクの増加は示されていません。

アウトカム 調整オッズ比[95%CI] I2統計量
食道癌[5] 0.96[0.65~1.42] 52.8%
胃癌[3] 0.89[1.71~1.13] 0.0%
大腸癌 [2] 0.62[0.30~1.29] 88.0%

ビス剤と消化管がんについて、現時点では因果関係については不明という印象です。

②顎骨壊死
ビス剤と顎骨壊死に関しては症例報告も多数存在します。(※4)経口又は静注用ビスホスホネート剤を対象としたコホート研究と症例対照研究12件のメタ分析(※5)によれば、顎骨壊死またはその他の骨壊死はオッズ比で2.32[95%信頼区間1.38~3.19]、顎骨壊死単独ではオッズ比2.57[95%信頼区間1.37~4.84]と報告されており、有意な関連が示唆されています。

特に癌患者ではそのリスクが高い可能性が観察研究のメタ分析で示されています。(※6)オッズ比4.25[95%信頼区間3.67~5.36] 

ビス剤は骨粗鬆症以外にも悪性腫瘍による高カルシウム血症や多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変などにも用いられ、骨粗鬆症の治療に用いられるような患者群とは対象となる患者背景が大きく異なることは重要です。静注ビス剤を使用した患者群ではそのリスクがかなり高くなることから、リスク因子に患者背景や薬剤特異的なファクターがある可能性があります。

2014年に報告された台湾の健康保険データベースを用いたコホート研究(※7)では、顎骨壊死はビス剤の使用なしで4.4/100,000人年、ビス剤の使用ありで73.5/100,000人年であり、相対リスクは16.8[95%信頼区間6.0~37.5]と大きな関連を示しています。

リスクファクター別は以下の通り
・経口ビス剤:ハザード比51.4
・静注ビス剤:153.3
・抜歯:5.3
・口腔がん:278.1

③心血管イベント
急性心筋梗塞発症に関して少なくとも12か月以内にビスホスホネートの使用のない患者で、大腿骨または脊椎骨折を発症した65歳以上の14256人(男性95.9%、平均75.6歳、白人82.3%)を対象とした後ろ向きコホート解析においては、ビスホスホネート剤(アレンドロネートが97%)の使用は平均3.6年の追跡で、ハザード比1.38[95%信頼区間1.08~1.77]と有意なリスク上昇を示しました。(※8)

また観察研究6、ランダム化比較試験6の計12研究のメタ分析(※9)によればビスホスホネート剤の使用は心房細動リスク増加を示唆しています。オッズ比:1.40[95%信頼区間 1.02-1.93]。なおこの研究では脳卒中リスクや心血管死亡リスクに関して明確な差は出ませんでした。

さらに5つのランダム化比較試験、4つの観察研究に参加した患者135,347人を対象としたメタ分析(※10)によれば経口および静注ビスホスホネート剤の使用は有意に心房細動リスクを上げ、特に静注用ビスホスホネート剤で強い関連が示唆されています。

これまでの報告をまとめると、ビス剤と消化管がんの関連は不明、ただしアレンドロネートはリスクとの関連がわずかに示唆。顎骨壊死リスクは有意な関連、特に静注用ビス剤、癌患者でリスクが高い可能性が示唆されています。また心血管系リスクでは特に心筋梗塞や心房細動リスクとの関連が示唆されていました。では以下、最新の文献をご紹介いたします。

[ビス剤とがん]

Chen LX, Ning GZ, Zhou ZR.et,al. The carcinogenicity of alendronate in patients with osteoporosis: evidence from cohort studies. PLoS One. 2015 Apr 16;10(4):e0123080. PMID: 25881304
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25881304

イントロダクションでもご紹介しましたが、アレンドロネートとがんの関連の懸念は残っています。この研究は8つのコホート研究のメタ分析でアレンドロネートと発がんリスクを検討した論文です。元データは2名のレビューアーが独立して評価するなどされています。

その結果肺癌リスクは有意な上昇を示しましたが、全がん、結腸直腸がん、食道がんリスクの上昇は示されませんでした。肝臓がんは上昇傾向にあります。観察研究のメタ分析であり、その因果を論じることはやや蒸すかしいかもしれませんが、肺癌リスクはやや気になりますね。今後の研究に注目したいと思います。

アウトカム ハザード比[95%CI] I2統計量
肺がん 1.23[1.03~1.47] 4%
全がん 0.94[0.78~1.12] 73%
結直腸がん 0.91[0.74~1.13] 80%
胃がん 0.86[0.67~1.10] 24%
食道がん 1.07[0.7~1.64] 52%
肝臓がん 1.36[0.9~2.04] 65%


[ビス剤と顎骨壊死]
Huang YF, Chang CT, Muo CH.et.al. Impact of Bisphosphonate-related Osteonecrosis of the Jaw on Osteoporotic Patients after Dental Extraction: A Population-Based Cohort Study. PLoS One. 2015 Apr 16;10(4):e0120756. PMID: 25880208
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25880208

台湾の国民健康保険システムからのデータを用いたコホート研究が報告されています。台湾のコホート研究はやや特徴的で症例コホートと比較コホートを用いた2重コホート研究がデザインされることが多い印象です。一見すると症例対照研究に見えてしまうのですが、前向きに検討されたコホート研究です。

2000年から2010年の間において、骨粗鬆症患者で抜歯を受けた19,399人のコホートと、年齢、性別でマッチした病歴のない通常の健常者で抜歯を受けた38,669人を比較しています。index dateは抜歯日とし、その後追跡を開始しています。日本でもこのような研究ができると良いですね。台湾の観察研究はいつもながら薬剤師にとって重要な研究が多くなされており、貴重なデータベースを構築しています。なお、追跡は顎骨壊死の発症もしくは2011年まで続けられています。

対象患者は平均65.4歳で女性が83%、癌患者は5.2~3.8%でした。なお骨粗鬆症患者コホートの16%しか使用していませんでした。交絡調整は年齢、性別、高血圧、糖尿病、癌となっています。その結果骨粗鬆症コホートでは比較コホートに比べて有意な顎骨壊死リスク上昇が示唆されました。骨粗鬆症患者コホートでビス剤使用者がたった16%であることを踏まえれば、骨粗鬆症そのものも大きなファクターの可能性があり、薬剤を服用していなくても抜歯後は注意しなくてはいけない印象です。

・調整ハザード比:2.05[95%信頼区間1.58–2.65]

この研究ではビス剤の使用と顎骨壊死との関連を検討しているわけではなく、あくまで骨粗鬆症と健常者の比較なので、やや結果の解釈が難しいところですが、ビス剤使用別の解析では、ビス剤の使用なしと比較して、ビス剤の使用で顎骨壊死が有意に上昇している可能性が示唆されています。

・調整ハザード比4.61 (95%信頼区間2.43–8.73)

2つのコホートの比較可能性や交絡の調整など、やや結果の妥当性に問題がある気もしなくはないですが、顎骨壊死のリスク因子として、ビス剤の使用のみならず、骨粗鬆症そのものがリスク因子であるといえそうです。

[ビス剤と心血管イベント]
Kim DH, Rogers JR, Fulchino LA.et.al. Bisphosphonates and risk of cardiovascular events: a meta-analysis. PLoS One. 2015 Apr 17;10(4):e0122646. PMID: 25884398
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25884398

ビス剤には心房細動リスク増加が示唆されてきましたが、一方でアテローム性動脈硬化を減少させる可能性が示唆されています。それらを踏まえて、ビス剤と心血管イベントを検討したメタ分析が報告されました。

この報告は6か月以上追跡したランダム化比較試験のメタ分析で58トライアルを研究に含めています。その多くがアレンドロネートで29RCTとなっています。2名以上のレビューアーが評価するなどの配慮がなされています。その結果全心血管イベントや心房細動リスクに明確な差はありませんでした。

表タイトル
アウトカム E群 C群 オッズ比[95%CI]
心血管イベント[14] 485/5822 278/3564  0.98[0.84~1.14]
心房細動[41] 430/31460 284/19752 1.08[0.92~1.25]
心筋梗塞[10] 69/6154 68/5906 0.96[0.69~1.34]
脳卒中[5] 275/15152 204/10059 0.99[0.82~1.19]
心血管死亡[9] 244/15414 182/10216 0.88[0.72~1.07]


統計的異質性は小さいようですが、結果のばらつきは傾向としては左右に振れており、集めた研究次第では結果が変わりそうな印象もあります。心房細動に関しては重篤なものに限定すると有意なリスク上昇が示されました。
・オッズ比1.41[95%信頼区間1.10~1.81] I2 = 78.4%
異質性が高い原因となっている一つの研究を除くと
・オッズ比1.19[95%信頼区間0.90~1.58] I2 = 0.0%
となり、明確な差は見られません。

[ビス剤の有害事象を整理する]
これまで見てきた3つの有害事象を整理しておきます。

①発がんリスク
これまで懸念されていた消化器系がんの発癌リスクはアレンドロネートも含めて低いと言える。但し、アレンドロネートでは肺癌リスクの懸念が残る。
②顎骨壊死
骨粗鬆症へのビス剤使用で顎骨壊死の有意な関連が見られている。癌患者に用いる静注用ビス剤もリスクが高いと思われるが、抜歯、骨粗鬆症、ビス剤使用の3つはリスクファクターである。
③心血管リスク
心房細動リスク上昇の懸念があったものの、最新の解析ではやや不明という結果。心房細動の程度に評価のばらつきがあるのかもしれない。その他心筋梗塞を含め全心血管イベントに明確な差は見られなかった。

[参考文献]
(※1)Yang G, Hu H, Zeng R,et.al.Oral bisphosphonates and the risk of colorectal cancer: a meta-analysis. J Clin Gastroenterol.2013 Oct;47(9):741-8.  PMID:24030705
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24030705
(※2) Vinogradova Y, Coupland C, Hippisley-Cox J.Exposure to bisphosphonates and risk of gastrointestinal cancers: series of nested case-control studies with QResearch and CPRD data.BMJ. 2013 Jan 16;346:f114 PMID: 23325866
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23325866
(※3)Oh YH, Yoon C, Park SM. Bisphosphonate use and gastrointestinal tract cancer risk:Meta-analysis of observational studies. World J Gastroenterol 2012 Oct 28;18(40):5779-5788 PMID:23155320
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23155320
(※4)井上 理, 豊島 貴彦, 丸山 志保 他当科において経験したビスフォスフォネート系薬剤関連顎骨壊死の7例 Dental Medicine Research Vol. 28 (2008) No. 3 p. 180-185
(※5)Lee SH, Chang SS, Lee M.et.al.Risk of osteonecrosis in patients taking bisphosphonates for prevention of osteoporosis : a systematic review and meta-analysis. Osteoporos Int.2013 Dec 17. PMID:24343364
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24343364
(※6) Lee SH, Chan RC, Chang SS.et.al. Use of bisphosphonates and the risk of osteonecrosis among cancer patients: a systemic review and meta-analysis of the observational studies. Support Care Cancer. 2014 Feb;22(2):553-60. PMID: 24203085
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24203085
(※7)Yuh DY, Chang TH, Huang RY.et.al. The national-scale cohort study on bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw in Taiwan. J Dent. 2014 Oct;42(10):1343-52. PMID: 24907558
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24907558
(※8)Pittman CB, Davis LA, Zeringue AL.et.al. Myocardial infraction Risk Among Patients With Fractures Receiving Bisphosphonates.Mayo Clin Proc. 2014 Jan;89(1):43-51 PMID: 24388021
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24388021
(※9)Sharma A, Chatterjee S, Arbab-Zadeh A.et.al. Risk of serious atrial fibrillation and stroke with use of bisphosphonates: Evidence from a meta-analysis. Chest. 2013 May 30. doi: 10.1378/chest.13-0675. [Epub ahead of print] PMID:23722644
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23722644
(※10)Sharma A, Einstein AJ, Vallakati A.et.al. Risk of atrial fibrillation with use of oral and intravenous bisphosphonates.Am J Cardiol. 2014 Jun 1;113(11):1815-21PMID: 24837258
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24837258

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■PPIと急性腎傷害リスク■
Proton pump inhibitors and the risk of acute kidney injury in older patients: a population-based cohort study
http://www.cmajopen.ca/content/3/2/E166.full
背景と研究デザイン:プロトンポンプインヒビター(PPI)は間質性腎炎を引き起こし、それはまた急性腎傷害の過小評価につながる。(※添付文書:間質性腎炎(頻度不明)があらわれ、急性腎不全に至ることもあるので、腎機能検査値(BUN、クレアチニン上昇等)に注意し、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。)高齢者における、PPI(オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール)の使用と急性腎障害、急性間質性腎炎リスクを検討した、人口ベースコホート研究。

P:カナダオンタリオ州在住の66歳以上の高齢者(平均74歳、女性56.7%、糖尿病24%、高血圧70%)
E:PPIの使用あり290592人
(最初の投与日をインデックスデータと定義。なおオンタリオ州ではPPIは医師の処方箋なしに使用不可。インデックス日より1年以内にPPIを使用していた参加さを除外)
C:PPIの使用なし290592人
O:インデックス日より120日以内の急性腎傷害による入院(2次アウトカムは急性間質性腎炎)
交絡調整:傾向スコアマッチング

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
急性腎障害 13.49/1000人年 5.46/1000人年 2.52[2.27~2.79]
間質性腎炎(※) 0.32/1000人年 0.11/1000人年 3.00[1.47~6.14]

(※)1次アウトカムではないが重要なアウトカム

■低用量アスピリン誘発性小腸障害に対するレバミピド■
Watanabe T, Takeuchi T, Handa O.et.al. A Multicenter, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial of High-Dose Rebamipide Treatment for Low-Dose Aspirin-Induced Moderate-to-Severe Small Intestinal Damage. PLoS One. 2015 Apr 15;10(4):e0122330. PMID: 25874951
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25874951
背景と研究デザイン:低用量アスピリンは小腸障害の原因になることがある。低用量アスピリンにより引き起こされる小腸障害に、いくつかの薬剤の有用性が報告されているが、多くの研究で臨床的に重要でないと想定される軽度の障害を有する患者が除外されていない。この研究は高用量レバミピドが低用量アスピリンにより誘発される中等度から重度の腸疾患易対する効果を検討した多施設 プラセボ対照、2重盲検ランダム化比較試験である。

P:3か月以上、腸溶性低用量アスピリン(100mg/日)を服用しており、カプセル内視鏡により小腸で3つ以上の粘膜障害mucosal break(びらんまたは潰瘍)が見られた患者43人(平均74歳、男性66%、飲酒35%、PPIの使用E群48%、C群53.8%)
E:レバミピド1回300mg、1日3回(常用量の3倍)29人
C:プラセボ14人
O:8週間のベースラインからの粘膜障害の数の変化

・サンプル計算:有意水準5%、統計パワー90%で30人
・追跡期間:8週 43人中試験完遂は39人 最終解析は38人 解析組み入れ88%
・患者背景:基礎疾患に両群のばらつきを認める。PPI使用者が半数近い。検討している粘膜周防害は中央値の比較でC群で多い。

結果は以下の通り。粘膜障害の数はプラセボで統計的有意に変化せず、レバミピドで有意に減少。粘膜障害の数(中央値の変化は以下の通り)
・レバミピド:4.0 (3.0–8.0) ⇒2.0 (3.0–8.0) p = 0.046
・プラセボ:6.0 (4.0–18.5) ⇒3.0 (2.0–15.0) p = 0.08
しかし両群の変化の差に有意な差を見とめず。p = 0.13

病変数の変化は差の差で評価せねばなりませんが、この研究では有意な差は出ていません。プラセボでも有意差は無いものの減少しています。中央値での比較は症例数が少ないためかもしれませんが、投与前後比較での統計的有意にあまり大きな意義は無い印象。High-dose rebamipide is effective for the treatment of LDA-induced moderate-to-severe enteropathy.との結論はやや早々。

■MMRワクチンと自閉症リスク■
Jain A, Marshall J, Buikema A.et.al. Autism occurrence by MMR vaccine status among US children with older siblings with and without autism. JAMA. 2015 Apr 21;313(15):1534-40. PMID: 25898051
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25898051
背景と研究デザイン:麻疹•おたふく•風疹(MMR)ワクチンと自閉症スペクトラム障害との関連性は無いとする研究が多く存在するにも関わらず、ワクチンが自閉症の原因となっているという世間の信憑はワクチン接種意欲を低下させる。既に自閉症を有する子を持つ親はさらに警戒することがある。米国の保険データベースより、兄に自閉症を有する人を含めて、ワクチンと自閉症との関連を検討した後ろ向きコホート研究

P: 健康保険に関連する管理請求データベースより、2001年から2012年の間に出生から、少なくとも5歳までに継続的に健康保険に加入していた小児(年上の兄弟が継続的に少なくとも6か月以上加入している)。兄弟に自閉症のない93798人と兄弟に自閉症のある1929人を対象
E:出生から5歳までにMMRワクチンを1~2回接種
C:MMRワクチンの接種なし
O:自閉症

調整した交絡因子
出生年、年齢、出身地、人種、母親の教育水準、家庭の収入、対象児が出生した時点での母親と父親の年齢、痙攣やアレルギー既往など

主な結果は以下の通り。当論争への終止符。
調整相対危険[95%信頼区間]
年齢 兄弟に自閉症なし 兄弟に自閉症あり
2歳(1回接種) 0.91[0.67~1.20] 0.76[0.49~1.18]
3歳(1回接種) 0.97[0.78~1.20] 0.81[0.54~1.20]
4歳(1回接種) 1.03[0.81~1.32] 0.86[0.58~1.29]
5歳(2回接種) 1.12[0.78~1.59] 0.56[0.31~1.01]


■高齢者における喫煙インパクト■
Mons U, Müezzinler A, Gellert C.et.al. Impact of smoking and smoking cessation on cardiovascular events and mortality among older adults: meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies of the CHANCES consortium. BMJ. 2015 Apr 20;350:h1551. PMID: 25896935
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25896935
背景と研究デザイン:25のコホートに登録されている60歳以上の高齢者を対象とし、喫煙と心血管死亡などを検討したIPDメタ分析。

P:25のコホートに登録された60歳以上の高齢者503905人(男性56%、60歳~69歳が86.6%)
E;現在喫煙、喫煙経験
C:喫煙なし
O:心血管死亡、急性冠動脈イベント、脳卒中

交絡調整:性別、年齢、境域、アルコール摂取、BMI、身体活動、糖尿病既往、総コレステロール、収縮期血圧、

主な結果は以下の通り
心血管死亡
ハザード比[95%CI] I2統計量 リスク進展期間
現在喫煙 2.07[1.82〜2.36] 82.3% 5.50年[4.25~6.75]
喫煙経験 1.37[1.25~1.49] 68.7% 2.16年[1.38~2.93]


現在喫煙は喫煙なしと比べて5年ほど心血管死亡を早める。60歳以上の高齢者においても禁煙は過剰リスクを減らすのに有効

※関連論文※
Gellert C, Schöttker B, Brenner H.et,al. Smoking and all-cause mortality in older people: systematic review and meta-analysis. Arch Intern Med. 2012 Jun 11;172(11):837-44. PMID: 22688992
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25896935
喫煙は高齢者においても強力な死亡のリスクファクターであり、禁煙はどの年代でも有益というメタ分析

■母体のSSRI暴露と先天性欠損症リスク■
Furu K, Kieler H, Haglund B.et.al. Selective serotonin reuptake inhibitors and venlafaxine in early pregnancy and risk of birth defects: population based cohort study and sibling design.
BMJ. 2015 Apr 17;350:h1798. PMID: 25888213
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25888213
背景と研究デザイン:妊娠初期のSSRIおよびベンラファキシン使用と胎児の先天性欠損症リスクを検討した多国籍コホート研究。

P:デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける単生児を出生した母親
E:SSRI(フルオキセチン、シタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、エスシタロプラム、ベンラファキシン)の使用あり36772人
C:SSRIの使用なし2266875人
O:出産後365日以内に診断された主要な先天性欠損

交絡調整:母体の分娩時の年齢、分娩した暦年、妊娠中の母体の喫煙状況、妊娠糖尿病、現在jの薬物使用(レニン―アンギオテンシン系薬剤、抗てんかん薬、抗不安薬、睡眠薬)

主な結果は以下の通り

アウトカム フルコホート解析

調整オッズ比[95%CI]

兄弟コホート解析

調整オッズ比[95%CI]

先天性欠損 1.13[1.06~1.20] 1.06[0.91~1.24]
先天性心奇形 1.15[1.05~1.26] 0.92[0.72~1.17]


フルコホートの解析では先天性欠損リスク13%、先天性心奇形リスク15%増加が示唆された。しかしながらこれらは、家族間や生活習慣にともなう交絡の影響があると想定され、兄弟コホートでの解析を行った結果統計的差を認めず、実質的な関連はないと結論。

■大腸がんスクリーニングのベネフィットと観察期間■
Tang V, Boscardin WJ, Stijacic-Cenzer I.et.al. Time to benefit for colorectal cancer screening: survival meta-analysis of flexible sigmoidoscopy trials. BMJ. 2015 Apr 16;350:h1662. PMID: 25881903
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25881903
背景と研究デザイン:S状結腸鏡による大腸癌スクリーニングのベネフィットとそれに必要な観察期間を検討したメタ分析

P:4つのRCTに参加した患者。解析対象は459 814人
E:S状結腸鏡による大腸癌スクリーニングの実施あり
C:S状結腸鏡による大腸癌スクリーニングの実施なし
O:大腸がん関連死亡

主な結果は以下の通り
毎年1000人の検診で減らせる大腸がん関連死亡
0.2人 0.5人 1人
4.3年[2.8~5.8] 6.6年[5.1~8.2] 9.4[7.6~11.3]


毎年1000人の検査で一人の大腸癌死亡を減らすために9.4年の観察期間が必要。そのために高齢者においては生存期間が少なくとも10年を見込まれる人に対して行われるべき

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■リナグリプチンの関与が疑われる肝障害■
Kutoh E. Probable linagliptin-induced liver toxicity: a case report. Diabetes Metab. 2014 Feb;40(1):82-4. PMID: 24378344
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24378344
他のジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤とは異なり、リナグリプチンの排泄は主に胆汁経路である。この事実にもかかわらず、リナグリプチンと肝障害は、これまで文献で報告されていなかった。リナグリプチンによる肝毒性の疑いを報告した最初のケース。

58歳日本人女性、リナグリプチン5㎎/日単独療法開始から4週後に、疲労、吐き気、黄疸、肝酵素値の著しい上昇をしめした。他の薬剤を使用していなかったため、肝障害の明らかな理由はほかに見当たらなかった。ウイルス血清学的検査と抗核抗原についての試験は陰性。リナグリプチン中止後、症状は消失し、肝酵素レベルは徐々に低下した。Naranjo scale scoreは6であった。



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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ビスホスホネート剤の有害事象は大きく4つに整理しておくとわかりやすいかもしれません。
①顎骨壊死
②骨折リスク
③心血管リスク
④発がんリスク。

このうち骨折リスクについては次回のメインテーマでまとめて行きます。一度使用されると漫然投与される恐れのあるビスホスホネート剤、有害事象リスクはしっかりアセスメントしておきたいところです。

症例報告ではリナグリプチンを取り上げました。胆汁泄型という事で、基本的には腎機能、肝機能低下患者にそれほど気を遣わず使用できるメリットがありますが、今回の症例報告はやや気になります。まだまだ新しい薬剤のため、今後の有害事象報告に注目です。

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地域医療の見え方  2015.May.13;1(17)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-トレラグリプチンについて-

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[ポイント]
■トレラグリプチンは週1回で血糖コントロールが可能なDPP4阻害薬である
■トレラグリプチンは中等度腎機能低下者には減量を考慮し、重度の腎機能障害患者や透析患者では禁忌である
■トレラグリプチンのHbA1c低下効果は12週間の治療で、50mg:-0.4%、100mg:-0.5%である。
■トレラグリプチンのHbA1c低下効果は24週間の治療で、アログリプチンに非劣性である。
■これまでのDPP4阻害薬に関する知見をもとに考えれば、第一選択として推奨される薬剤ではない。薬剤の使用考慮は、少なくとも本年6月に報告を控えているTECOS試験の結果を待ってからでも遅くはない。

[イントロダクション]
新規DPP4阻害薬トレラグリプチンの発売が間近に迫っているようです。(原稿執筆時)これまでのDPP4阻害薬と決定的に異なるのがその用法設定でしょう。なんと週1回投与という経口糖尿病薬でも初めての用法設定となっています。それだけに注目を集めるだろうことが予測されるこの薬剤ではありますが、基本的にはDPP4阻害薬というカテゴリの薬剤であり、その有効性に関しては、これまでのDPP4阻害薬の臨床的意義を踏まえておく必要があるでしょう。

・心血管イベントはプラセボと比べて少なくとも増加させるものではないが、プラセボに対する優越性については不明である
(PMID:23992601)(PMID:23992602)
・DPP4阻害薬と急性膵炎リスクとの関連はごくわずかであると考えられ、DPP4阻害薬特異的な有害事象ではない可能性が考えられる
(PMID:23440284)(PMID:24622714)(PMID:23837679)(PMID:24741695)(PMID:24736555)(PMID:24764569)(PMID:24723174)
・心不全による入院リスクが懸念される。
(PMID:23992601)(PMID:24750644)(PMID:24793580)(PMID:25528528)(PMID:24998080)
・サキサグリプチンでは心不全既往や腎機能低下者、高齢者で特に心不全リスクに留意する必要がある。
(PMID: 25189213)
・アログリプチンにおいては心不全による入院リスクについて明確には示されていない
(PMID: 25765696)
・ACE阻害薬とDPP4阻害薬の併用は理論上血管浮腫や空咳の有害事象リスクを上昇させる可能性がある。
(PMID:19581505)(PMID:23323612)(PMID:22826453)

そもそも高薬価で有効性不明な薬剤であり、有害事象リスクの懸念を重視したいところですが、それでもDPP4阻害薬を使用せねばならないケースにおいて、はじめてトレラグリプチンの使用を考慮するという段階になるわけですね。

[添付文書から分かること]

添付文書には、用法用量は「通常、成人にはトレラグリプチンとして100mgを1週間に1回経口投与する。」となっており、中等度腎機能障害患者では、排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇するため、投与量を減量する旨の記載があります。具体的にクレアチニンクリアランスで30以上50未満の患者においては週1回50mgの投与が推奨されています。なお高度の腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者は禁忌となっており、注意が必要です。

週に1回服用のため、あらかじめ曜日を決めて服用する旨の記載があり、服用を忘れた場合は、気づいた時点で決められた用量のみを服用し、その後はあらかじめ定められた曜日に服用となっています。万が一連日服用してしまった場合ですが、食事・運動療法又はメトホルミン単独療法を実施してもなお血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象に、トレラグリプチン100mgを12週間連日経口投与した海外臨床試験において、本剤の連日投与で認められた副作用は、プラセボ群と同様であったとの記載があります。

また重大な副作用として急性膵炎、腸閉塞が挙げられており、他のDPP4阻害薬と同様です。

[血糖降下効果について]
血糖コントロールについては代用のアウトカムです。本稿では参考程度にまとめておきますが、あくまでDPP4阻害薬の考え方はイントロダクションに示した通りです。目先の血糖コントロールと言う点で、プラセボとどのような違いがあるのかだけ押さえておきます。

PubMedを使用して「SYR-472」もしくは「trelagliptin」で検索すると現在4件(平成27年5月1日現在)の論文がヒットします。そのうち2重盲検ランダム化比較試験である2つの論文を見ていきましょう。

Inagaki N, Onouchi H, Sano H.et.al. SYR-472, a novel once-weekly dipeptidyl peptidase-4 (DPP-4) inhibitor, in type 2 diabetes mellitus: a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 Feb;2(2):125-32. PMID: 24622716
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24622716

この論文のイントロダクションに、「2型糖尿病では長期間における良好な血糖コントロール維持にはアドヒアランスの改善が重要であり、そうすることによって合併症の発症や悪化を防ぐ」と述べられています。まあ確かにそういった面もあるかもしれませんが、良好なアドヒアランス維持に関して、合併症などの真のアウトカムとの関連は未だ不明な部分も多いのは事実でしょう。

この研究は多施設2重盲検並行群間プラセボ対照2重盲検ランダム化比較試験です。対象となったのは食事や運動療法にも関わらず、十分なコントロールができていない2型糖尿病の日本人322人です。当研究は用量設定試験であり、患者は、プラセボ群(55人)、トレラグリプチン12.5 mg(54人)、 25 mg(52人)、 50 mg(51人), 100 mg(55人)、200mg(55人)の6群にランダム割り付けされています。患者割り当ては研究者及び患者でマスクされています。薬剤は週に1回、12週間にわたり投与されました。主要評価項目は、研究開始時からのHbA1cの変化でした。(代用のアウトカム!)

主な結果は以下の通りです。
薬剤 HbA1c変化(SE)
プラセボ 0.35% (0.068)
12.5mg -0.37% (0.068)
25mg -0.32% (0.070;)
50mg -0.42% (0.070)
100mg -0.54% (0.068;)
200mg -0.55% (0.069)


HbA1cは用量依存的に減少しました。この研究での有害事象はプラセボと同程度でした。低血糖の報告はありませんでした。症例数が少ないので有害事象の関してはあまり参考になりません。この研究から、12週間の治療で、トレラグリプチン50mg-0.4%、100mg-0.5%程度のHbA1c低下効果が期待できると整理しておけばよろしいでしょう。

[既存のDPP4阻害薬との比較]
こちらも、あくまで血糖コントロールに関して既存のDPP4阻害薬との比較をまとめておきます。以下の論文はアログリプチンと比較した非劣性試験です。

Inagaki N, Onouchi H, Maezawa H.et.al. Once-weekly trelagliptin versus daily alogliptin in Japanese patients with type 2 diabetes: a randomised, double-blind, phase 3, non-inferiority study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Mar;3(3):191-7. PMID: 25609193
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25609193

この研究は、多施設、2重盲検、実薬対照、並行群間ランダム化比較試験です。対象患者は食事や運動療法を行っているにも関わらず、コントロール不良な2型糖尿病患者357人です。対照患者は3群にランダム割り付けされています。トレラグリプチン100mg週1回投与、アログリプチン1日1回投与、プラセボ投与で、24週間治療されています。また患者と臨床医がマスクされています。トラレグリプチン群は週に1回トラレグリプチンが投与され、アログリプチンのプラセボは毎日投与されました。アログリプチン群では逆にトレラグリプチンのプラセボが週1回投与され、アログリプチンが連日投与されています。(double-dummy design) プラセボ群も同様にトレラグリプチンプラセボは週1回、アログリプチンプラセボは連日投与されました。主要評価項目は研究開始時からのHbA1c変化です(代用のアウトカム!)なお非劣性マージンは0.4%と設定されています。

357人のうち解析されたのは243人(トレラグリプチン101人、アログリプチン92人、プラセボ50人)でした。主な結果は以下の通りです。

薬剤 HbA1c変化(SE)
トレラグリプチン -0.33%(0.059)
アログリプチン -0.45%(0.061)


両群の差は0.11% (95%信頼区間-0.054~0.281)となっており、あらかじめ設定された非劣性マージンの0.4%を信頼区間上限が下回っているため、トラレグリプチンのHbA1c低下効果はアログリプチンに劣るものではないという非劣性が示されています。当然ながら両群ともプラセボ群と比較して有意な改善が示されています。(p<0.0001)低血糖は報告されず、有害事象に関しても各群間で差は無いとしています。

[トラレグリプチンの考え方]
週1回投与という魅力的な薬剤ではありますが、腎機能に注意すること、基本的には真のアウトカムに対する有効性は未だ不明である事。薬価の面を考慮すれば第一選択としての推奨はできません。少なくともシタグリプチンの大規模臨床試験TECOSの結果を待ってからでも遅くはないでしょう。

(参考:TECOS試験)
https://www.dtu.ox.ac.uk/TECOS/protocol.php
シタグリプチンの心血管アウトカムを検討するための2重盲検ランダム化比較試験。
主要な結果が2015年6月8日にボストンで行われる第75回米国糖尿病学会議のなかで報告予定とのことで注目です!

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■BMIと認知症■
Qizilbash N, Gregson J, Johnson ME.et.al. BMI and risk of dementia in two million people over two decades: a retrospective cohort study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Apr 9. [Epub ahead of print] PMID: 25866264
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25866264/

背景と研究デザイン:中年成人の肥満状況と認知症リスクを検討した大規模後ろ向きコホート研究

P:CPRDのデータより、40歳以上の1958191人(ベースライン中央値55歳)
E:BMI20未満、40超
C:健康体重
O:認知症

追跡期間:メイン解析は中央値で9.1年
・健康体重と比較してBMIが20未満では認知症リスクが34%[95%信頼区間29~38]上昇
・健康体重と比較してBMIが40超では認知症リスクが29%[95%信頼区間22~36]低下

■長期介護施設入所者におけるゾレドロン酸の有効性■
Greenspan SL, Perera S, Ferchak MA.et.al. Efficacy and Safety of Single-Dose Zoledronic Acid for Osteoporosis in Frail Elderly Women: A Randomized Clinical Trial.JAMA Intern Med. 2015 Apr 13. [Epub ahead of print] PMID: 25867538
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25867538
研究デザインと背景:骨粗鬆症を有し、長期療養施設に入所している高齢者の骨折リスクは地域在住の高齢者に比べて8~9倍高いことが示されている。それにも関わらず、多くの施設入所高齢者では治療がなされておらず、また臨床試験にも組み入れられていない現実がある。本研究は長期介護施設に入所している高齢女性を対象として、ゾレドロン酸による骨粗鬆症の治療の有効性、安全性を検討した2重盲検プラセボ対照、ランダム化比較試験である。

P:65歳以上の高齢女性で骨粗鬆症を有する長期介護施設入所者181人(平均85.4歳)
E:ビタミンD、カルシウムサプリメントに加えてゾレドロン酸の静注
C:ビタミンD,カルシウムサプリメントに加えてプラセボ静注
O:12~24か月後の大腿骨及び脊椎の骨密度変化、及び有害事象

骨折率はE群20%、C群16%で、E群で多い傾向にある
・オッズ比1.30[95%信頼区間0.61~2.78]
死亡率はE群16%、C群13%で、E群で多い傾向にある
・オッズ比1.24[95%信頼区間0.54~2.86]
単回の転倒割合はE群28%、C群24%で、E群で多い傾向にある
・オッズ比1.24[95%信頼区間0.64~2.42]
複数回の転倒割合はE群49%、C群35%で、E群で多い傾向にある
・オッズ比1.83[95%信頼区間1.01~3.33]

■腰部脊柱管狭窄症に対する手術と理学療法の比較■
Delitto A, Piva SR, Moore CG.et.al. Surgery versus nonsurgical treatment of lumbar spinal stenosis: a randomized trial. Ann Intern Med. 2015 Apr 7;162(7):465-73. PMID: 25844995
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25844995
研究デザインと背景:腰部脊柱管狭窄症に対する外科的減圧術と理学療法の効果を比較した多施設ランダム化比較試験

P:外科的減圧術の実施に同意した50歳以上の症候性腰部脊柱管狭窄症患者169人
E:外科的減圧術の実施(87人)
C:理学療法の実施(82人)
O:身体機能スコア(SF-36 健康関連QOLを評価するための包括的尺度0~100点)

・盲検化:PROBE
・追跡24か月
・統計解析ITT

24か月後のスコアに明確な差を認めない
・E群22.4[16.9~27.9]C群19.2[13.6~24.8]改善し、その差0.9[-7.9~9.6]
限界:対照群が無いため、純粋な介入効果について論じるものではない。


■膝変形性関節症に対するステロイドの関節内注射■
Henriksen M, Christensen R1, Klokker L.et.al. Evaluation of the Benefit of Corticosteroid Injection Before Exercise Therapy in Patients With Osteoarthritis of the Knee: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2015 Mar 30. PMID: 25822572
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25822572
背景と研究デザイン:運動療法前の膝変形性関節症に対するステロイドの関節内注射の有効性を検討した盲検ランダム化比較試験

P:放射線検査で確認された膝変形性関節症を有する外来患者100人(歩行中の疼痛スコアが4を超える[0~10])
E:リドカイン注(40mg)に溶解したメチルプレドニゾロン(40mg)を関節内注射50人
C:リドカイン注(40mg)生理食塩水を混合し関節内注射50人
O:14週後の膝損傷・変形性関節症アウトカムスコアの疼痛サブスコア
(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score [KOOS] 0~100で評価しスコアが高いほど改善)

試験完遂はE群 45人、C群44人。平均スコア変化はE群13.6、C群14.8で平均差は1.2[-3.8~6.2]と明確な差を認めない

■スタチンの静脈血栓塞栓症一次予防効果■
Li L, Zhang P, Tian JH.et.al. Statins for primary prevention of venous thromboembolism. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Dec 18;12:CD008203. PMID: 25518837
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25518837
背景と研究デザイン:スタチンの静脈血栓塞栓症一次予防に対する有効性を検討したシステマテックレビュー。統合研究数1RCT

P:一つのランダム化比較試験に参加した17,802人
E:ロスバスタチンノ投与
C:プラセボの投与
O:静脈血栓塞栓症の発症

元論文:ランダム化比較試験1件(The quality of the evidence was moderate)
評価者:Two authors independently assessed

主な結果は以下の通り
・静脈血栓塞栓症:オッズ比0.57[95%信頼区間0.37~0.86]
・深部静脈血栓症:オッズ比0.45[95%信頼区間0.25~0.79]

■怒りエピソードと急性心筋梗塞の関連■
Buckley T, Hoo SY, Fethney J.et.al. Triggering of acute coronary occlusion by episodes of anger. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2015 Feb 23. [Epub ahead of print] PMID: 25713468
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25713468
背景と研究デザイン; 血管造影で確認された冠動脈閉塞を有する患者の怒りエピソードと急性心筋梗塞の関連を検討したケースクロスオーバー研究

P:急性の冠動脈閉塞を発症した313人(発症から48時間前までの怒りエピソードを調査、平均58,3歳、男性85%)
E:症状発症から2時間以内、2〜4時間前の怒りエピソード
C;通常の怒りエピソード
O:急性心筋梗塞

怒りエピソードは7段階で評価し、怒りの定義は5以上。
・発症から2時間以内の怒りエピソード;相対危険8.5 (95%信頼区間 4.1-17.6)
なお、5未満の怒りエピソードや、・症状発症から2〜4時間前の怒りエピソードは心筋梗塞

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■小児のリバスチグミン中毒■
Raucci U, Vanacore N, Cecchetti C.et.al. Transient cardiac effects in a child with acute cholinergic syndrome due to rivastigmine poisoning. J Emerg Med. 2014 Jul;47(1):21-5. PMID: 24518556
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24518556
3歳女児がリバスチグミン(錠剤)の摂取うたがいで救急診療部を受診。患児は精神状態の変化、唾液分泌過多、発汗、下痢の症状に続き呼吸不全の兆候が見られた。
リバスチグミンによる中毒は生命を脅かすきわめて危険な状況であり、迅速な鑑別とこの薬物による毒性制の適切な管理を行う事で、救命することができる。

■リバスチグミンパッチの過量貼付■
Lövborg H, Jönsson AK, Hägg S.et.al. A fatal outcome after unintentional overdosing of rivastigmine patches. Curr Drug Saf. 2012 Feb;7(1):30-2. PMID: 22663954
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22663954
87歳男性。リバスチグミンパッチ9,5 mg/24 hにより嘔気、嘔吐、腎不全、電解質異常、死亡に至った症例。誤って6枚のリバスチグミンパッチが同時に、2日間にわたり連続貼付された。死因は嘔吐による脱水の結果、急性尿細管壊死からの尿毒症と考えられた。


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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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トレラグリプチンがいよいよ発売となります。週1回というきわめて印象的な特徴を有し、注目を集めることは間違えありません。本文にも記載しましたが、いずれにせよDPP4阻害薬、その真の有効性はTECOS試験の結果を待ってからでも遅くはないでしょう。

Merck Announces the Trial Evaluating Cardiovascular Outcomes with Sitagliptin (TECOS) Met Primary Endpoint
http://www.mercknewsroom.com/news-release/prescription-medicine-news/merck-announces-trial-evaluating-cardiovascular-outcomes-sit

この試験結果にこそ注目すべきでしょう。今年の最大の注目イベントのうちの一つではあります。この結果によりDPP4阻害薬の臨床的位置づけがより明確になることは間違えありません。当ブログでも詳細をおって検討してゆきたいと思います。
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[JJCLIP]薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

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平成27年度 第2回薬剤師のジャーナルクラブを以下の通り開催いたします。

開催日時:平成27年5月10日(日曜日)
■午後20時45分頃 仮配信
■午後21時00分頃 本配信
なお配信時間は90分を予定しております.

※ツイキャス配信は以下のURLより視聴できます。
http://twitcasting.tv/89089314

今回もシナリオ作成は山本先生、司会進行は桑原先生です!

[症例 20:健診で病気の予防は本当にできるのでしょうか?]

[仮想症例シナリオ]
あなたは, とある街の薬局に勤務する薬剤師です.
今年はGWの休日当番もなく, 久しぶりに帰省することに.
両親と談笑している中, ふと健康についての話題に.

母:
「健診なんてここ10年くらい受けてないわね. 案内は来てるのだけれど, いつもタイミングが合わなくて結局行かないのよ」
「でも, それじゃ医療従事者の母としていけないかしらね. 今年は受けようかしら」
「ただ, 悪い病気が見つかるのではと正直不安よ」
「健診ってそれ自体がストレスだけど, 本当に良いものなのかしらねぇ」

これまで病気知らず・薬いらずであった母(60代)の, 独り言のようなつぶやきに対して, 上手く答えられなかったあなた.
ここはちゃんと根拠を見つけて, かつ分かりやすく伝えることも親孝行だと思って, その場でスマートフォン片手にPubmedを検索.
すると, 次のような論文を見つけることができたので, すぐさま読んでみることにしました.

[文献タイトルと出典]
Jørgensen T, Jacobsen RK, Toft U.et.al. Effect of screening and lifestyle counselling on incidence of ischaemic heart disease in general population: Inter99 randomised trial. BMJ. 2014 Jun 9;348:g3617 PMID: 24912589
PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24912589
PDF
http://www.bmj.com/content/bmj/348/bmj.g3617.full.pdf

[ワークシート]
ランダム化比較試験を10分で吟味するポイント
http://2.bp.blogspot.com/-clIkBOVVGfk/UjW8olB-HiI/AAAAAAAAAIg/5UQ8DGNRZl0/s1600/RCT10%E5%88%86.png

[健康ってなんだろう]
今回の論文は、治療というよりは、その追跡期間の長さから予後、というイメージの論文ですが、ランダム化比較試験の論文です。

「健診、大事ですねぇ!みなさん積極的にうけて健康長生き、病気を未然に防いで生活習慣病を予防しよう!」という前提を批判的に受け止め、検討してみようというのが今回のテーマです。

前提を批判的に受け止めあらためて検討する、実はできそうでなかなかできないことです。ドイツの哲学者、マルティン・ハイデガーはこういいます。(と僕は解釈しています)人間はおおよそ世間の一般的な考え方思考に埋没しており、自身で主体的に考えるという事から多かれ少なかれ逃避していると。それが悪であるというわけではく、人間の基本的なあり方こそがそういった、現実から目をそらし、一種の思考停止のうちに「安心」しているというわけです。

しかし、この安心、安らぎのうちに埋没している人間は非本来的な姿だといいます。人間にとって不安で、不気味に感じることこそ根源的な現象であるというのです。人間本来の姿に立ち戻るには、この不安にこそ対峙せねばなりません。

健診こそが健康長寿の象徴であるという「安心」に埋没せず、検診を受ければ病気を防げるという「常識」に流されず、検診にどのような効果があり、しかし本当に真に人間に幸福をもたらすものなのだろうか、という不安的前提に対峙することこそ必要でしょう。

まあ、小難しい話はともかく、少なくとも僕たちは、常識的価値観から解釈するのではなく、その常識的価値観をカッコにいれ、ニュートラルな思考から検討を始めようではありませんか。
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地域医療の見え方  2015.Apr.28;1(16)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-市中肺炎における抗菌薬のエンピリック治療-

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[ポイント]
■市中肺炎において非定型菌までカバーした抗菌薬レジメンの有用性は明らかではない
■重度市中肺炎において、βラクタム+マクロライドレジメンに比べて、キノロン単独レジメンの推奨度は低い
■重度市中肺炎において、βラクタム+マクロライドレジメンに比べて、キノロン+βラクタムレジメンの推奨度は低い
■重度市中肺炎において、βラクタム+マクロライドに比べて、βラクタム単独レジメンの推奨度は低い
■比較的軽症な肺炎においては、βラクタム単独レジメンでもマクロライドやキノロン併用レジメンと比較して著名な差は無いかもしれない。
■安易なキノロン、とりあえずのβラクタム単独を推奨しない。細菌性、非定型が明らかでない場合、外来治療ではβラクタム+マクロライドが推奨される。

[イントロダクション]
本邦における、市中肺炎の3大起炎菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマと言われています。またそれ以外にもクラミジアやレジオネラによる肺炎も少なくありません。これら2者とマイコプラズマで市中肺炎全体の10%~25%を占めると言われています。(※1)

起炎微生物同定前において、グラム染色や迅速抗原テスト等の絞り込み検査すら行えない状況で、クラミジアやレジオネラ、マイコプラズマ等による非定型性肺炎か、肺炎球菌等の細菌性肺炎かの区別は抗菌薬選択において重要です。

日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインでは細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に関して以下のように記載があります。
http://www.nishiizu.gr.jp/intro/conference/h18/conference-18_04.pdf

1.年齢60歳未満
2.基礎疾患がない,あるいは,軽微
3.頑固な咳がある
4.胸部聴診上所見が乏しい
5.痰がない,あるいは,迅速診断法で原因菌が証明されない
6.末梢血白血球数が10,000/μL未満である

[上記6項目を使用した場合]
6項目中4項目以上合致した場合⇒非定型肺炎疑い
6項目中3項目以下の合致 ⇒細菌性肺炎疑い
この場合の非定型肺炎の感度は77.9%,特異度は93.0%

[上記1から5までの5項目を使用した場合]
5項目中3項目以上合致した場合 ⇒非定型肺炎疑い
5項目中2項目以下の合致  ⇒細菌性肺炎疑い
この場合の非定型肺炎の感度は83.9%,特異度は87.0%

起炎菌同定検査のできない状況でのエンピリック治療と言えど、細菌性肺炎か、非定型肺炎か、ある程度の事前確率を上げておく必要はあります。レジオネラはやや特徴的で、旅行、温泉、土木作業歴、オレンジ色喀痰、下痢などの鑑別要素があり、これらの情報入手が重要な要素となりえます。

肺炎球菌ではPRSPやマクロライド耐性、インフルエンザ菌ではBLNAR、モラキセラではβラクタマーゼ産生(ただしマクロライドには感受性良好)を考慮する必要があります。ただし最初からキノロンを積極的に使用すべきかは議論があるところで、基本的にはβラクタマーゼ配合高用量ペニシリンを用いたいところではあります。

しかしながら、実際は細菌性、非定型、両方の可能性を疑い治療をせざるを得ないことも多いはずです。エンピリック治療においては60歳以上の高齢者で基礎疾患があるケースなどではモラキセラや非定型までカバーしたいという時もあろうかと思います。そのような場合はマクロライドの併用を考慮されることもあるでしょう。

今回は成人の市中肺炎のエンピリック治療においてどのような抗菌薬戦略を取れば良いのか、βラクタム単独治療か、他の抗菌薬を併用すべきか、近年のスタディを中心にまとめていきたいと思います。


[これまでのメタ分析から]

市中肺炎に関する抗菌薬治療戦略に関する論文は多く、そのすべてをここでまとめるわけにはいきませんので、背景知識として2005年に報告されたメタ分析を見ておきます。(※2)

この報告は24のランダム化比較試験に登録された、市中肺炎で入院した成人患者5015人(平均31~81歳、平均65歳未満12研究、平均65歳以上9研究。3研究平均年齢が報告されていない)が解析対象となっています。非定型菌までカバーした経口もしくは静注抗菌薬レジメン(マクロライド、キノロン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコール)と、非定型菌までカバーしない経口もしくは静注抗菌薬レジメン(アモキシシリンやセフトリアキソンなど)が比較され、治療終了後30日以内の死亡が検討されました。なおセカンダリアウトカムとして、治療失敗が設定されています。

アウトカム E群 C群 相対危険[95%CI]
30日以内の総死亡 93/2622 67/2224 1.13[0.82~1.54]
治療失敗(セカンダリ) 542/2538 447/2144 0.92[0.82~1.03]


治療失敗(セカンダリアウトカムですが)はわずかに少ない傾向にあるものの、プライマリアウトカムである、総死亡に関しては上昇傾向とういう結果でした。C群で使用された抗菌薬はアモキシシリンやセフトリアキソン、アモキシシリン/クラブラン酸、セフタジジム、メロペネムなど、そのスペクトラムにかなりばらつきがあり、また投与方法も経口、静注ばらばらです。そのような研究を統合してしまうと、たとえ異質性が低くても(この研究では異質性はI2=0%)、個別の治療とその抗菌薬物治療の妥当性が見えにくくなっている印象もあります。この時点で、非定型菌までカバーしたレジメンの有効性についてはよく分からないという印象です。治療失敗というアウトカムの主観的要素が強く、その解釈は難しいところでしょう。

[キノロン単独か、βラクタム+マクロライドか]
市中肺炎に対する抗菌薬の選択、観察研究を見てみます。退役軍人コホートを用いた後ろ向きコホート研究が報告されています。(※3)

市中肺炎においては、βラクタム+マクロライドか、キノロン単独という2つのレジメンの処方頻度が高いわけですが、この研究では重症市中肺炎患者に対するこの2つのレジメンの有効性を検討しています。βラクタム+マクロライドレジメン(広域セフェム+アジスロマイシン、βラクタマーゼ配合セフェム+アジスロマイシン)261人とキノロン単独(レボフロキサシン)レジメン254人を比較し、4日以内の死亡、30日以内の死亡、入院期間が検討されました。対象患者は平均約70歳、男性が約98%でした。

人口統計学的要因、病歴および併存疾患、身体検査と検査所見、事前の抗生物質治療、過去180日間での肺炎エピソード、糖尿病、ヒト免疫不全ウイルス感染症、腫瘍性疾患、肝疾患、心不全、脳血管および腎疾患等を考慮しています。主な結果は以下の通りです。


14日以内の死亡
重症度 B+M F P値
全体 10/261 (3.8) 14/254 (5.5) 0.4
PSI III 1/61 (1.6) 1/48 (2.1) 0.9
PSI IV 2/119 (1.5) 5/132 (4.2) 0.2
PSI V 4/49 (8.2) 11/41 (26.8) 0.02


30日以内の死亡
重症度 B+M F 結果
全体 17/261 (6.5) 27/254 (10.6) 0.1
PSI III 2/61 (3.3) 3/48 (6.3) 0.5
PSI IV 9/119 (6.8) 6/132 (5.0) 0.6
PSI V 9/49 (18.4) 15/41 (36.6) 0.05


入院期間中央値(日)
重症度 B+M F 結果
全体 6 (2-63) 5 (2-280) 0.01


死亡に関しては両群において、全体では著名な差は見られないものの、より重症患者であれば、βラクタム+マクロライドレジメンの方が死亡が少ない可能性を示唆しています。使用されたβラクタムは広域セファロスポリン、マクロライドはアジスロマイシンです。全体としては明確な差が出ていないので、この論文のみで結論付けることは難しいですが、重度の市中肺炎であれば、キノロン単独よりも効果的かもしれないという仮説は示唆されます。コホート自体も退役軍人コホートですから、一般人口集団への外的妥当性という観点においてもやや解釈は難しいかもしれません。

[βラクタム+マクロライドか、βラクタム+キノロンか]

重度の市中肺炎ではキノロン単独よりもβラクタム+マクロライドの方が良いかもしれないという仮説が示唆されましたが、キノロン+βラクタムにしてみてはどうでしょうか。こちらも観察研究が報告されています。(※4)

こちらは人口ベースの後ろ向きコホート研究です。65歳以上で市中肺炎にてICUに入室した患者1989人(平均74歳、98.5%が男性)が対象となっています。βラクタム+マクロライト(1,106人56%)、βラクタム+キノロン(883人44%)の治療戦略が比較され、30日以内の死亡と入院期間が検討されています。なお交絡因子への配慮として傾向スコアマッチングが行われています。

主な結果
アウトカム B+F 883人 B+M 1106人 調整オッズ比[95%CI]
30日以内の死亡 242 (27.4) 268 (24.2) 1.05 (0.85–1.30)
入院期間(日) 21.0 (24.7) 15.9 (16.9) 1.30 (1.27–1.33)


βラクタム+キノロンでは、βラクタム+マクロライドと比較して死亡はほぼ同等であるが入院期間が長くなるという結果でした。

これら2つの観察研究からの示唆をまとめれば、重度市中肺炎において少なくとも、キノロンの安易な使用はあまり良い選択とは言えないかもしれません。

[βラクタム単独か、βラクタム+マクロライドか]

これまで、市中肺炎においては、非定型菌まで考慮したレジメンが、そうでないレジメンと比較して効果的であるかどうか、不明確ではありましたが、少なくとも重度市中肺炎においてはβラクタム+マクロライドの併用がキノロン単独やキノロン+βラクタムと比較して臨床的ベネフィットがわずかに期待できるような印象でした。キノロン系抗菌薬自体、ルーチンで使用する事を極力避けたいという観点からすれば、これらの報告は観察研究と言えど、重要となります。さらに欲を言えば、βラクタム単独で治療できるものなら是非そうしたいわけですよね。

しかし現実的には市中肺炎の中にはβラクタムが無効なケースも多々あります。中等度市中肺炎に対するβラクタム剤単独治療vsβラクタム、マクロライド併用治療のランダム化比較非劣性試験が報告されてます。(※5)

この報告は、中等度市中肺炎によりスイスの救急病院へ搬送された正常免疫の成人患者580人を対象にβラクタム単独291人、βラクタム・マクロライド併用289人を比較し、7日間における臨床的な安定を得られない患者の割合[臨床的安定:心拍数<100/分、 収縮期血圧>90mmHg、体温<38.0C、呼吸数<24/分、ルームエアー酸素飽和度> 90%]を検討しています。やや代用のアウトカムと言う印象ですが、この手のエビデンスが少ない中で貴重な報告です。なお、レジオネラ感染症は体系的に検索しβラクタム単独群ではマクロライドを上乗せしたとしています。研究デザインはOpen-label, multicenter, noninferiority, randomized trialでPROBE法が採用されています。ややソフトエンドポイントよりのアウトカムですから、この研究デザインが果たしてどこまで妥当なのか、やや議論の余地はありそうです。非劣性マージン:90%信頼区間上限8%と設定されました。

アウトカム E群(単独群) C群(併用群) 結果
臨床的安定が

得られない患者割合

120 /291

(41.2%)

97 /289

(33.6%)

差7.6% P = .07

[90%CI 上側13%]

30日以上の再入院 7.9% 3.1% P = .01

臨床安定が得られない患者割合の絶対差90%信頼区間上限が13%であり、非劣性マージンを超えているため、非劣性を示せませんでした。また30日以内の再入院も単独群で多いという結果でした。なお90日以内の死亡率、 集中治療室の入院、合併症 、滞在期間、肺炎の再発に差は無かったとしています。非定型肺炎やPSI(肺炎重症度指数) category IV(5段階で段階が上位ほど重症)の肺炎では臨床的安定がβラクタム単独療法では遅延していたという結果でした。

[市中肺炎、結局のところ、抗菌薬レジメンはどうする?]

今までの報告を整理すると、成人に対する重度市中肺炎に関して言えば、キノロン単独、βラクタム+キノロン、βラクタム単独に比べてβラクタム+マクロライドレジメンが臨床アウトカム改善を示唆して言います。特に重度の市中肺炎においてはキノロンよりもマクロライドを併用し、βラクタム単独では心もとないという印象です。

では一般病棟に入院するような重症肺炎ではない市中肺炎でもルーチンでマクロライドを併用すべきでしょうか。つい先日、成人の市中肺炎の抗菌薬治療戦略に関する興味深い論文が報告されました。(※6)

この研究は市中肺炎による通常の入院(ICUではなく)において、βラクタム単独、βラクタム+マクロライド、キノロン単独の3群を比較したクラスターランダム化比較クロスオーバー試験です。(非劣性試験)対象となったのは、IUCではない病棟に入院した市中肺炎患者で、βラクタム+マクロライド戦略期間739人(遵守率88%)、キノロン単独戦略期間 888人(遵守率92.7%)、βラクタム単独戦略期間656人(遵守率93.0%)の3群が比較され90日以内の死亡が検討されました。

なお、各クラスターにおいて、3つの戦略を4か月ごとに変えてゆくクラスターランダム化クロスオーバー非劣性試験(ITT解析)で非劣性マージン3%と設定されています。主な結果を以下にまとめます。

戦略期間 90日以内の死亡 差[90%信頼区間]
βラクタム単独戦略期間 59人(9.0%) reference
βラクタム+マクロライド戦略期間 82人(11.1%) 1.9%[-0.6~4.4]
キノロン単独戦略期間 78人(8.8%) -0.6%[-2.8~1.9]


マクロライド併用ではむしろ死亡が多い傾向が示唆され、βラクタム単独での非劣性が示されました。この研究は耐性菌状況が良好なオランダでの研究である事に注意が必要かもしれません。この研究結果が、マクロライド耐性の深刻な本邦に当てはまるかどうかは議論の余地があります。また非劣性試験では厳密性を強めるために97.5%信頼区間法を用いることが多いのですが、この研究では90%信頼区間法を用いています。このあたりの結果を割り引いて考えれば、結果の妥当性の解釈も難しそうです。

比較的軽度の肺炎であれば、非定型肺炎の可能性が低い状況において、βラクタム単独でも臨床ベネフィットは変わらない可能性がありますが、重度市中肺炎のエンピリック治療においては、

・安易にキノロンを使用しない
・βラクタム単独では心もとない

ということは言えるかもしれません。

参考までに米国感染症学会/米国胸部疾患学会合同の市中肺炎ガイドライン2007では

①外来治療
・基礎疾患なし:マクロライド 
・基礎疾患あり:キノロン もしくは βラクタム+キノロン
②入院治療
・キノロン もしくは βラクタム+マクロライド
③ICU治療
・βラクタム+マクロライド
・βラクタム+キノロン

となっていますが、これまでの示唆を踏まえれば、②と③において、キノロン単独レジメン、キノロン+βラクタムの推奨は低い印象です。また、本邦におけるJAID/JSCの感染症治療ガイドラインでは、細菌性か非定型か明らかでない場合、外来治療においては、高用量ペニシリンとマクロライドの併用を推奨しており、キノロンは代替えとして温存すべきと記載されています。

[参考文献]
(※1)藤本卓司 感染症レジデントマニュアル 第2版 2013 医学書院
(※2) Shefet D, Robenshtok E, Paul M.et.al. Empirical atypical coverage for inpatients with community-acquired pneumonia: systematic review of randomized controlled trials. Arch Intern Med. 2005 Sep 26;165(17):1992-2000. PMID: 16186469
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16186469
(※3) Lodise TP, Kwa A, Cosler L.et.al. Comparison of beta-lactam and macrolide combination therapy versus fluoroquinolone monotherapy in hospitalized Veterans Affairs patients with community-acquired pneumonia. Antimicrob Agents Chemother. 2007 Nov;51(11):3977-82. PMID: 17709460
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17709460
(※4) Wilson BZ, Anzueto A, Restrepo MI,et.al. Comparison of two guideline-concordant antimicrobial combinations in elderly patients hospitalized with severe community-acquired pneumonia. Crit Care Med. 2012 Aug;40(8):2310-4. PMID: 22622401
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22622401
(※5) Garin N, Genné D, Carballo S.et.al. β-Lactam monotherapy vs β-lactam-macrolide combination treatment in moderately severe community-acquired pneumonia: a randomized noninferiority trial. JAMA Intern Med. 2014 Dec;174(12):1894-901. PMID: 25286173
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25286173
(※6) Postma DF, van Werkhoven CH, van Elden LJ.et.al. Antibiotic treatment strategies for community-acquired pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015 Apr 2;372(14):1312-23. PMID: 25830421
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25830421

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■第2世代抗精神病薬の等価換算量■
Leucht S, Samara M, Heres S.et.al. Dose Equivalents for Second-Generation Antipsychotic Drugs: The Classical Mean Dose Method. Schizophr Bull. 2015 Apr 3. pii: sbv037. [Epub ahead of print] PMID: 25841041
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25841041
背景と研究デザイン:等価換算量は薬物治療において重要な情報である。75の2重盲検ランダム化比較試験(解析対象16555人)をもとに13の第2世代の抗精神病薬とハロペリドール、クロルプロマジンの等価換算量を検討した報告。

P:75のランダム化比較試験に参加した16555人
E&C:各種抗精神病薬
O:等価用量

オランザピン1mg/日と等価な用量は以下の通り
・アリピプラゾール1.4mg/日
・クロルプロマジン 38.9mg/日
・クロザピン 30.6mg/日
・ハロペリドール 0.7mg/日
・クエチアピン32.3mg/日
・リスペリドン0.4mg/日
・ゾテピン13.2mg/日
■アロプリノールの有効性■
Goicoechea M, Garcia de Vinuesa S, Verdalles U.et.al. Allopurinol and Progression of CKD and Cardiovascular Events: Long-term Follow-up of a Randomized Clinical Trial. Am J Kidney Dis. 2015 Apr;65(4):543-9. PMID: 25595565
研究デザインと背景:無症候性の抗硝酸血漿は腎・心血管リスクを増加させる。過去に単盲検ランダム化比較試験の2年間の観察で、アロプリノールはeGFRや心血管リスクの改善の示唆が確認されている。さらに5年間の追跡で腎・心血管イベントを検討したランダム化比較試験のポストホック解析(事後比較)

P:アロプリノールのランダム化比較試験に参加した113人のうち追跡調査できた107人
E:アロプリノール100mg/日の投与
C:標準ケア
O:腎臓イベント(透析の開始、血清クレアチニン倍化、eGFRの50%以上の低下)、心血管イベント(心筋梗塞、冠動脈再建術、狭心症、うっ血性心不全、脳血管疾患、末梢血管疾患)

※注意!:単盲検試験でソフトエンドポイントを含むデザイン。複合アウトカムでの検出力増加とポストホック解析であることを踏まえる必要がある。

盲検化:単盲検
ランダム化:されている
追跡:2年と5年追加追跡(追跡中央値84ヵ月)

腎イベントはE群9人に対してC群24人
▶ハザード比0.32[95%信頼区間0.15~0.69]
(年齢、性別、ベースラインでの腎機能、尿酸値、ARBの使用で補正)

心血管イベントはE群16人に対して、C群23人
▶ハザード比0.43[95%信頼区間0.21~0.88]
(年齢、性別、ベースラインでの腎機能で調整)

Limitation:サンプルサイズ、単施設、単盲検、ポストホック解析

■スボレキサントの有効性■
Patel KV, Aspesi AV1, Evoy KE. Suvorexant: A Dual Orexin Receptor Antagonist for the Treatment of Sleep Onset and Sleep Maintenance Insomnia. Ann Pharmacother. 2015 Apr;49(4):477-483. PMID: 25667197
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25841041
背景と研究デザイン:スボレキサントの有効性、安全性を検討したレビュー

P:3つのランダム化比較試験に参加した患者
E:スボレキサントの投与
C:プラセボの投与
O:睡眠時間、中途覚醒時間、睡眠潜時

・元論文バイアス:2重盲検ランダム化比較試験
・出版バイアス;動物実験、英語以外の言語論文を除外
・異質性バイアス:メタ分析はされていない
・評価者バイアス:抄録に記載なし

4週間の治療でスボレキサントはプラセボにくらべて

▶総睡眠時間を改善
・スボレキサント10mg:22.3分
・スボレキサント20mg:49.9分
▶中途覚醒時間を改善
・スボレキサント10mg:-21.4分
・スボレキサント20mg:-28.1分
▶睡眠潜時を改善
・スボレキサント10mg:-2.3分
・スボレキサント20mg:-22.3分

■マルチビタミンと脳卒中■
Dong JY, Iso H2, Kitamura A.et.al. Multivitamin Use and Risk of Stroke Mortality: The Japan Collaborative Cohort Study. Stroke. 2015 Mar 31. [Epub ahead of print] PMID: 25828234
背景と研究デザイン:マルチビタミンの脳卒中への有効性は明らかではない。マルチビタミンと脳卒中による死亡リスクを検討した日本の大規模コホート研究(JACCStudy)

P:癌や心血管疾患のない日本人72180人
E:マルチビタミンの使用あり
C:マルチビタミンの使用なし
O:脳卒中による死亡

・追跡期間19.1年 

脳卒中による死亡:ハザード比0.87[95%信頼区間0.76~1.01]
脳梗塞による死亡:ハザード比0.80[95%信頼区間0.63~1.01]
脳出血による死亡:ハザード比0.96[95%信頼区間0.78~1.18]

果物や野菜の摂取が1日3回未満の参加者において、全脳卒中は有意に低下
ハザード比:0,80[95%信頼区間0,65~0.98]

※臨床スクリプト※
当然ながらこの研究のみで因果関係を示すものではない。この結果から示唆されるのは日常生活にいおいて、野菜や果物がほとんど摂取できない人においてはマルチビタミンの摂取で脳卒中が減るかもしれないということだが、生活習慣と脳卒中の関連は多岐にわたり、交絡の影響を排除することは難しい。やはりランダム化比較試験での検証が必要であろう。

■地域薬局による糖尿病予防プログラム■
Schmiedel K, Mayr A, Fießler C.et.al. Effects of the Lifestyle Intervention Program GLICEMIA in People at Risk for Type 2 Diabetes: A Cluster-Randomized Controlled Trial. Diabetes Care. 2015 Mar 17. [Epub ahead of print] PMID: 25784662
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25784662
研究デザインと背景:糖尿病リスクを低下させるために42の地域薬局で行われた12か月の予防プログラムの有用性を検討したクラスターランダム化比較試験

P:1092人の参加者
E:年3回の個別のカウンセリングと5回の教育セッション
C:患者の健康状態を評価した情報提供を年に3回実施
O:フィンランドにおける糖尿病リスクスコアFinnish Diabetes Risk Score [FINDRISC]

※注意:FINDRISCは、8項目の質問表で構成されたスコアで、このスコアと10年後の糖尿病発症率が相関することが示されているが、あくまで代用のアウトカムである点に注意

クラスター構成と患者背景で調整後の糖尿病リスクスコアはC群に比べてE群で0.74 [95% 信頼区間0.42-1.04]改善していた。

※臨床スクリプト※
あくまで代用のアウトカムの改善。我々はADDITION-Cambridgeの結果を軽視すべきではない。
Simmons RK, Echouffo-Tcheugui JB, Sharp SJ.et.al. Screening for type 2 diabetes and population mortality over 10 years (ADDITION-Cambridge): a cluster-randomised controlled trial. Lancet. 2012 Nov 17;380(9855):1741-8. PMID: 23040422
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23040422

■セデーションの有用性■
Beller EM, van Driel ML, McGregor L.et.al. Palliative pharmacological sedation for terminally ill adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 2;1:CD010206. PMID: 25553674
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25553674
背景と研究デザイン:終末期において、せん妄、不安、興奮、呼吸困難、疼痛、嘔吐など、心理的・物理的な苦痛を緩和する目的で緩和的鎮静療法(セデーション)を行うことがある。終末期を迎えた成人に対してセデーションが患者にとって利益のある治療であるかを検討したシステマテックレビュー

P:14研究に参加した終末期を迎えた成人4167人(95%以上が癌を有する)
E:セデーションを受ける
C:セデーションを受けない
O:終末期における臨床症状

・評価者バイアス:2名のレビューアーが独立して評価
・元論文バイアス:ランダム化比較試験及び準ランダム化比較試験を含まず、すべてがケースシリーズ研究であった。また主要評価項目において、QOLや幸福度を検討していない研究であった。

セデーションを実施したにも関わらず、せん妄と呼吸困難が見られ、症状のコントロールに明確な差を見いだせなかった。薬剤誘発性せん妄を発症した疑いのある患者もみられた。また生存期間に明確な差は見られなかった。しかし生存期間を短縮しないとしても、根拠としては弱いものであり、注意が必要であり、むしろその有用性には十分な根拠がないことに注目すべきである。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■シタグリプチンによる白血球減少症■
Pitocco D, Zaccardi F, Martini F.et.al. Severe leucopenia associated with Sitagliptin use. Diabetes Res Clin Pract. 2011 Feb;91(2):e30-2. PMID: 21035885
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21035885
シタグリプチンによる治療に関連した重大な白血球減少症を発症した、2型糖尿病患者の症例報告。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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DPP4阻害剤における原因不明の血液学的な異常はやや注目のテーマかもしれません。症例報告でご紹介したのはシタグリプチンによる白血球減少ですが、本年3月にシタグリプチンの添付文書が改定され、「重大な副作用」の項に「血小板減少」が追記されました。直近 3 年度の国内副作用症例の集積状況は血小板減少関連症例 6 例(うち、因果関係が否定できない症例 2 例)【死亡 0 例】となっています。

[MSD:使用上の注意改訂のお知らせ]
https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/revision_201503_r_januvia_tab.pdf

[厚労省DSUNo.238(2015 年4月)]
https://www.pmda.go.jp/files/000204263.pdf

現時点で重篤な臨床転帰に至った例は無いようですが、併用薬や患者背景にも注意が必要であり、今後継続してフォローしていかなければいけないテーマだと思います。ちなみに1例は70歳の症例で、検査で血糖値の上昇が目立つようになりHbA1c 7 %に対して薬物治療開始後の有害事象です。70歳の高齢者に対してHbA1c7%で薬剤が必要だったのかとても考えさせられますね。当ブログでも、引き続き注目していきたいと思います。

#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Apr.22;1(15)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-SSRIと骨折リスク-

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[ポイント]
■三環系抗うつ薬と比較し、SSRIは、転倒、骨折などの有害転帰の有意な上昇と関連している。
■SSRIには骨折のみならず、転倒リスクも増加する可能性が報告されている。
■SSRIの骨折リスクは骨密度とは独立したものである可能性が示唆されている。
■SSRIの骨折機序として、血圧低下、失神による転倒、作用機序に関してセロトニンを介した骨代謝の影響による骨密度低下などが挙げられる。
■SNRIにおいてもSSRIとほぼ同程度骨折リスクが懸念される。
■PPI、ステロイド、向精神薬など骨折リスクを上昇させる薬剤との併用においては相加・相乗的リスク増加に留意すべき。

[イントロダクション]
一部の高齢者における抗うつ薬の使用、特に三環系抗うつ薬の使用に関しては「STOPP criteria」においても潜在的に不適切な使用として挙げられています。

地域医療の見え方2015.Mar.18;1(10)「ポリファーマシーのゆくえ」
http://jp.bloguru.com/syuichiao/234314/2015mar18110

また、高齢者においては転倒・骨折リスクは軽視できる問題ではなく、椎体骨折と股関節骨折は死亡リスクの増加に関連付けられており、これらの骨折の発生率を減少させる介入が生存率を改善するために実行される必要があります。(※1)

以前に薬剤の使用と骨折リスクに関しては、過去にPPIと骨折リスクについて取り上げました。

地域医療の見え方2015.Mar.25;1(11)「プロトンポンプ阻害薬と骨折リスク」
http://jp.bloguru.com/syuichiao/234826/2015mar25111

今回は高齢者においても、決して処方頻度が低くないSSRIと骨折リスクについて考察していきます。なおパキシル®(SSRI)やトレドミン®(SNRI)の添付文書には以下のような記載があります。

「主に50歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において、選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ剤を含む抗うつ剤を投与された患者で、骨折のリスクが上昇したとの報告がある。」

[高齢者における抗うつ薬の有害事象を俯瞰する]

本題に入る前に、高齢者のおける抗うつ薬全般について、その有害事象リスクを把握しておきます。QResearchデータベースより65歳以上でうつ病の診断を受けた60,746人を対象とし、抗うつ薬の有害転帰を検討したコホート研究が報告されています。(※2)

英国では、地域在住の高齢者の10~15%がうつ病という報告もあるようです。対象となったのは英国のプライマリケアのセッティングで平均75歳、女性66.7%のコホートです。うつ病重症度は軽度が7割近くであり、非喫煙者が半数以上、高血圧の患者が4割で、半数が降圧薬を使用していました。少なくとも1つ以上の抗うつ薬の処方を受けたのは54038人(89.0%)で、抗うつ薬は1398359処方を解析対象としました。治療期間中央値は364日(四分位範囲91~1029)でした。その中でもSSRIは処方最多であり、764659処方(54.7%)でした。なお三環系抗うつ薬は442192処方(31.6%)でした。

1996年1月1日~2007年12月31日に新規発症として登録された患者で、2008年12月31日まで追跡されています。

調整した交絡因子は、年齢、性別、うつ病診断年、65歳以前のうつ病既往、うつ病重症度、タウンゼントスコア、喫煙、冠動脈疾患、糖尿病、高血圧、脳卒中/一過性脳虚血発作、癌、認知症、てんかん/発作、パーキンソン病、甲状腺機能低下症、強迫性障害、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、リチウム、アスピリン、抗高血圧薬、抗痙攣薬、催眠薬/抗不安薬、骨折既往となっています。

全原因死亡
抗うつ薬 ハザード比[95%信頼区間]
使用なし 1.00
三環系抗うつ薬 1.16 (1.10~1.22)
SSRI 1.54 (1.48~1.59)
他の抗うつ薬 1.66 (1.56~1.77)


自殺・自傷リスク
抗うつ薬 ハザード比[95%信頼区間]
使用なし 1.00
三環系抗うつ薬 1.70 (1.28~2.25)
SSRI 2.16 (1.71~2.71)
他の抗うつ薬 5.16 (3.90~6.83)


心筋梗塞
抗うつ薬 ハザード比[95%信頼区間]
使用なし 1.00
三環系抗うつ薬 1.09 (0.96~1.23)
SSRI 1.15 (1.04~1.27)
他の抗うつ薬 1.04 (0.85~1.27)


脳卒中・TIA
抗うつ薬 ハザード比[95%信頼区間]
使用なし 1.00
三環系抗うつ薬 1.02 (0.93~1.11)
SSRI 1.17 (1.10~1.26)
他の抗うつ薬 1.37 (1.22~1.55)


転倒
抗うつ薬 ハザード比[95%信頼区間]
使用なし 1.00
三環系抗うつ薬 1.30 (1.23~1.38)
SSRI 1.66 (1.58~1.73)
他の抗うつ薬 1.39 (1.28~1.52)


骨折
抗うつ薬 ハザード比[95%信頼区間]
使用なし 1.00
三環系抗うつ薬 1.26 (1.16~1.37)
SSRI 1.58 (1.48~1.68)
他の抗うつ薬 1.64 (1.46~1.84)

結果を大まかに把握していくと、中央値で1年程度の抗うつ薬使用は死亡リスクが上昇し、自殺・自傷リスクも高いという結果でした。

(自殺リスクに関する関連文献:Coupland C, Hill T, Morriss R.et.al. Antidepressant use and risk of suicide and attempted suicide or self harm in people aged 20 to 64: cohort study using a primary care database. BMJ. 2015 Feb 18;350:h517. PMID: 25693810)

また心筋梗塞や脳卒中、転倒、骨折はSSRIで三環系抗うつ薬よりも相対的に高いハザードとなっています。したがって三環系抗うつ薬と比較し、SSRIは、転倒、骨折などの有害転帰の有意な上昇と関連している可能性があります。

[SSRIと骨折リスク(前向きコホート研究)]

では具体的にSSRIと骨折リスクの関連を見ていきます。2007年には前向きコホート研究が報告されていました。(※3)

この研究はカナダにおける一般人口からランダム抽出したコホート研究で、50歳以上の成人5008人(SSRI使用137人、使用なし4871人 平均約65歳、女性71%~83%、を対象とし、前向きにSSRIの使用と骨折リスクを5年間追跡検討しています。

交絡因子は、人口統計情報(年齢、性別、教育、研究センター)、体重、身長、喫煙、アルコール摂取、身体活動カルシウム、ビタミンDの摂取量。乳癌、前立腺癌、子宮癌、認知症、高血圧症、腎疾患、肝疾患、慢性関節リウマチ、心筋梗塞、脳卒中および一過性脳虚血発作、1型・2型糖尿病、慢性閉塞性肺疾患。ビスホスホネート剤、降圧薬、チアジド利尿薬、経口・静脈内・筋肉内・吸入ステロイドの使用、女性におけるエストロゲン療法、長時間作用型ベンゾジアゼピン、抗けいれん薬、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、などの要素で考慮されています。

その結果、SSRIの連日使用で骨折リスクの有意な上昇が示されました。
▶ハザード比2.1[95%信頼区間1.3-3.4]
転倒リスクも同様に有意な上昇が示されました。
▶オッズ比2.2[95%信頼区間1.4-3.5]

骨折部位は40%が前腕、足と足首が21%、股関節が13%となっています。前腕が多いというのはやはり転倒による骨折という可能性が示唆されるでしょうか。この報告では、SSRIの使用で股関節や腰椎の骨密度減少が示唆されていますが。SSRIによる血圧降下が転倒を招く可能性や失神リスクなどを言及しています。

[SSRIと骨折リスク(メタ分析)]

SSRIと骨折リスクに関するメタ分析は複数報告されています。まずは観察研究13研究のメタ分析を見てみます。(※4)この研究は7つのコホート研究(130,637人)と6つの症例対照研究(188,511人)が解析対象となっています。

その結果、骨折リスクはSSRI使用なしと比較して使用ありで有意に上昇しています。
▶相対危険1.72[95%信頼区間 1.51~1.95](12研究)
骨密度で調整してもリスクは残存しました。
▶相対危険1.70[95%信頼区間1.28~2.25](3研究)
なお骨密度に関して明確な差はありませんでした。
▶骨密度減少0.19%[95%信頼区間-0.15 ~0.53](2研究)

これらの結果からSSRIの骨折リスクは骨密度とは独立したものである可能性が示唆されています。

もう一つは12の観察研究のメタ分析で、同年2012年に報告されています。(※5)この研究は7つの症例対照研究と5つのコホート研究を解析対象にしています。その結果、こちらも骨折リスクとの有意な関連が示唆されています。

▶オッズ比1.69[95%信頼区間1.51~1.90] (I2=89.9%)
異質性がかなり高い結果となっています。

骨折部位別は以下の通り
▶大腿骨骨折:オッズ比2.06 (95%信頼区間 1.84-2.30, I(2 ) = 62.3%),
▶脊椎骨折:オッズ比1.34 (95%信頼区間 1.13-1.59, I(2 ) = 48.5%)
▶手首・前腕骨折:オッズ比1.51 (95%信頼区間 1.26-1.82, I(2 ) = 76.6%)

作用機序に関してセロトニンを介した骨代謝の影響に関して言及されています。

[SNRIとSSRIの比較]
三環系抗うつ薬は冒頭紹介したように高齢者ではや使用しづらい印象でした。しかしながらSSRIに関しても、骨折リスクは軽視できないものがあります。類似カテゴリであるSNRIではどうなのでしょうか。

SSRIとSNRIを比較し骨折リスクを検討したコホート研究が報告されています。(※6)この研究は50歳以上の成人を対象にSSRI使用335,146人、SNRI使用61,612人を比較し、骨折リスクを検討しています。

その結果骨折率はほぼ同等であったと報告されています。
▶追跡1年:ハザード比1.11 [95 %信頼区間0.92-1.36]
▶追跡5年:ハザード比1.06[95%信頼区間 0.90-1.26],

[SSRIの骨折リスクをどう考える]

添付文書にも差異がある通り、SSRIと骨折リスクはわずかながら有意な関連が認められます。転倒リスクの増加も認められることから特に高齢者では注意が必要と思われます。またそのリスクはSNRIとほぼ同等であり、SNRIにおいても同様に注意が必要でしょう。相対指標からうけるリスクの程度はそれほど大きくは無い印象ですが、併用薬剤による相加・相乗的リスクの増加には注意が必要でしょう。特にPPI、ステロイド併用時、さらにゾルピデムを含む向精神薬を服用中であれば、転倒リスクは高くなり、骨折リスクハイリスク患者となりえます。

(参考)薬剤と骨折リスク
薬剤 骨折リスク
ステロイド 大腿骨頸部骨折 相対危険4.42~2.48
PPI 大腿骨頸部骨折 相対危険1.30[1.19~1.43]
ゾルピデム 大腿骨頸部骨折 オッズ比1.95[1.09~3.51]
ベンゾジアゼピン 大腿骨頸部骨折 オッズ比1.46[1.21~1.76]
抗精神病薬 大腿骨頸部骨折 1.61[1.29~2.01]
抗うつ薬 大腿骨頸部骨折 1.46[1.22~1.75]
三環系抗うつ薬 骨折 ハザード比1.26 [1.16~1.37]
SSRI 骨折 ハザード比1.58 [1.48~1.68]
SSRI 大腿骨骨折:オッズ比2.06 [1.84~2.30,]

※データ数値は地域医療の見え方2015.Mar.25;1(11)及び、地域医療の見え方2015.Mar.4;1(8)を参照

[参考文献]
(※1)Ioannidis G, Papaioannou A, Hopman WM.et.al.Relation between fractures and mortality: results from the Canadian Multicentre Osteoporosis Study. CMAJ. 2009 Sep 1;181(5):265-71. PMID:19654194
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19654194
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/24356924.html
(※2) Coupland C, Dhiman P, Morriss R.et.al. Antidepressant use and risk of adverse outcomes in older people: population based cohort study. BMJ. 2011 Aug 2;343:d4551. PMID: 21810886
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21810886
(※3) Richards JB, Papaioannou A, Adachi JD.et.al. Effect of selective serotonin reuptake inhibitors on the risk of fracture. Arch Intern Med. 2007 Jan 22;167(2):188-94. PMID: 17242321
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17242321
(※4)Wu Q. Bencaz AF, Hentz JG.et.al. Selective serotonin reuptake inhibitor treatment and risk of fractures: a meta-analysis of cohort and case-control studies. Osteoporos Int. 2012 Jan;23(1):365-75. PMID: 21904950
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21904950
(※5)Eom CS, Lee HK, Ye S, Park SM.et.al. Use of selective serotonin reuptake inhibitors and risk of fracture: a systematic review and meta-analysis. J Bone Miner Res. 2012 May;27(5):1186-95. PMID: 22258738
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22258738
(※6)Lanteigne A, Sheu YH, Stürmer T.et.al. Serotonin-Norepinephrine Reuptake Inhibitor and Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Use and Risk of Fractures: A New-User Cohort Study Among US Adults Aged 50 Years and Older. CNS Drugs. 2015 Mar;29(3):245-252. PMID: 25708711
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25708711


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■プライマリ・ケアにおける患者教育の重要性■
Traeger AC, Hübscher M, Henschke N.et.al. Effect of Primary Care-Based Education on Reassurance in Patients With Acute Low Back Pain: Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Intern Med. 2015 Mar 23. PMID: 25799308
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25799308
背景と研究デザイン:患者の安心感を高めることは、医療プラクティスのコアの側面であるが、それを達成する方法は未だあまり知られていない。プライマリ・ケアにおける患者教育が、急性、もしくは亜急性の腰痛患者における安心感を増加させるかどうかを検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:14研究に参加した腰痛患者4872人
E:腰痛に対する患者教育介入
C:通常ケア介入
O:短期間、長期間における患者の安心感(恐怖、心配、不安などの感情を評価)、12か月間の医療ケア施設利用状況

評価者バイアスは2名のレビューアーで評価する等の配慮がなされている。短期間及び長期間における患者の安心感はE群で増加した。(恐怖や心配、不安などの減少)

▶短期:標準化平均差‐0.21[95%信頼区間 -0.35~‐0.06]
▶長期:標準化平均差‐0.15[95%信頼区間-0.27~‐0.03]

12か月フォローアップでプライマリ・ケアの受診もE群で減少した
▶標準化平均差‐0.14[95%信頼区間-0.28~‐0.00]

■リンゴは健康に良いのか■
Davis MA, Bynum JP, Sirovich BE.et.al. Association Between Apple Consumption and Physician Visits: Appealing the Conventional Wisdom That an Apple a Day Keeps the Doctor Away. JAMA Intern Med. 2015 Mar 30. PMID: 25822137
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25822137
背景と研究デザイン:果物の摂取は健康に対して良い影響があるのではないかと考えられている。毎日の「リンゴを食べることは医者知らず」とも言われる。この研究は、そんな毎日のリンゴが本当に「医者知らず」なのかを検討することであった。アメリカ人を対象とした横断研究

P:18歳以上の8728人
E:毎日少なくとも1個のリンゴ、もしくは生のリンゴ149gを摂取
C:リンゴの摂取なし
O:医者知らずの達成(自己申告による過去1年間に医師の受診がわずか1回)
セカンダリアウトカム;ヘルスサービス知らず(薬剤処方やメンタルヘルス専門家受診など)

8399人を解析に含めた。「医者知らず」達成は両群に明確な差を示さなかった
▶調整オッズ比1.19[95%信頼区間0.93~1.53]
「薬物治療知らず」の達成は有意にリンゴ摂取で多かった。
▶調整オッズ比1.27[95%信頼区間1.00~1.63]

■運動とビタミンDサプリメントによる転倒予防効果■
Uusi-Rasi K, Patil R, Karinkanta S.et.al. Exercise and Vitamin D in Fall Prevention Among Older Women: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2015 Mar 23. PMID: 25799402
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25799402
背景と研究デザイン:高齢者において、転倒予防にビタミンDサプリメントと運動が推奨されるが、これら2つの要因に関しては結果が矛盾している。高齢女性における運動とビタミンDサプリメントの転倒予防に対する有効性を検討したランダム化比較試験。

P:70歳から80歳の患者409人(前年に少なくとも1回の転倒既往あり、ビタミンDサプリメントを使用しておらず、運動が医学的に禁忌ではない患者)
E&C
①プラセボ+運動なし
②ビタミンDサプリメント(800IU)+運動なし
③プラセボ+運動あり
④ビタミンDサプリメント(800IU)+運動あり
O:転倒(/月)

2重盲検ランダム化比較試験で、2年間の追跡。統計解析はITT。

転倒頻度 負傷を伴う転倒
①プラセボ+運動なし 118.2/1000人年 13.2/1000人年
②VD+運動なし 132.1/1000人年 12.9/1000人年
③プラセボ+運動あり 120.7/1000人年 6.5/1000人年
③VD+運動あり 1113.1/1000人年 5.0/1000人年

転倒頻度に著名な差を認めなかった。プライマリアウトカムではないが負傷を伴う転倒は、①群に比べて③と④群で有意に低下した。
①vs④ ハザード比0.38[95%信頼区間0.17~0.83]
①vs③ ハザード比0.47[95%信頼区間0.23~0.99]

■脳卒中と曜日の関連■
Shigematsu K, Watanabe Y, Nakano H.et.al. Weekly variations of stroke occurrence: an observational cohort study based on the Kyoto Stroke Registry, Japan. BMJ Open. 2015 Mar 24;5(3):e006294. PMID: 25805529
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25805529
背景と研究デザイン:脳卒中の発生とその時間的パターンやトリガーが分かれば、脳卒中の発症率を低下させるための重要な戦略になりうる。11年及ぶ院内記録データベース(Kyoto Stroke Registry)を用いた解析

P:13788人の日本人(平均約71歳)
E:月曜日~土曜日
C:日曜日
O:脳卒中発症率

日曜と比較すると月曜で有意に脳卒中発症が多い。(オッズ比1.154[95%信頼区間1.030~1.293])他の曜日では明確な差は無い。

■腰痛や変形性関節症に対するアセトアミノフェン■
Machado GC, Maher CG, Ferreira PH.et.al. Efficacy and safety of paracetamol for spinal pain and osteoarthritis: systematic review and meta-analysis of randomised placebo controlled trials. BMJ. 2015 Mar 31;350:h1225. PMID: 25828856
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25828856
背景と研究デザイン:腰痛や膝、腰の変形性関節症に対するアセトアミノフェンの有効性・安全性を検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:13のランダム化比較試験に参加した非特異的な腰痛もしくは、腰や膝の変形性関節症を有する患者
E:アセトアミノフェンの投与
C:プラセボの投与
O:疼痛・機能障害・QOL

・評価者バイアス:2名のレビューアーによる独立評価
・出版バイアス:言語、未出版の制限なくサーチ
・元論文バイアス:RoBにて評価(選択バイアスに関して不明な試験が多い)
・異質性バイアス:I2統計量にて評価

アウトカム[統合研究数] 平均差[95%信頼区間] I2統計量
腰痛(疼痛・即時効果)[3] 1.4[-1.3~4.1] 0%
腰痛(疼痛・短期効果)[2] -0.5[-2.9~1.9] 0%
腰痛(機能障害・即時)[2] -1.9[-4.8~1.0] 0%
腰痛(機能障害・短期)[2] 0.4[-1.7~2.5] 0%
変形性関節症(疼痛・即時)[5] -3.3[-5.8~‐0.8] 33%
変形性関節症(疼痛・短期)[8] -3.7[-5.5~‐1.9] 0%
変形性関節症(機能・即時)[3] -1.7[-6.0~2.6] 84%
変形性関節症(機能・短期)[8] -2.9[-4.9~‐0.9] 33%


重篤な有害事象:リスク比1.2[95%信頼区間0.7~2.1](7研究I2統計量0%)
有害事象(肝臓):リスク比3.8[95%信頼区間1.9~7.4](3研究 I2統計量0%)

腰痛に対するアセトアミノフェンの効果は不明であり、変形性関節症に関しては短期的にはわずかな効果が期待できる可能性、有害事象は多い傾向にあり、肝臓関連の有害事象は多いという結果になっています。

※関連論文※
Williams CM, Maher CG, Latimer J.et.al. Efficacy of paracetamol for acute low-back pain: a double-blind, randomised controlled trial.Lancet. 2014 Jul 23. pii: S0140-6736(14)60805-9. PMID: 25064594
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25064594
急性腰痛を発症した患者に対して、アセトアミノフェンの定期服用(3900㎎/日 1日3回)550人、もしくは必要に応じてアセトアミノフェン投与(最大4000㎎/日)549人(最長で4週間治療)とプラセボ553人を比較して腰痛からの回復(疼痛スコア0~10のうち7日間連続して0もしくは1の持続)を検討したランダム化比較試験。常用量および頓用量のアセトアミノフェンは腰痛の回復期間を改善しなかった。(定期服用:ハザード比0.99[0.87~1.14]、屯用:1.05[0.92~1.19])

■市中肺炎における抗菌薬選択■
Postma DF, van Werkhoven CH, van Elden LJ.et.al. Antibiotic Treatment Strategies for Community-Acquired Pneumonia in Adults. N Engl J Med. 2015 Apr 2;372(14):1312-1323.
PMID: 25830421
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25830421
背景と研究デザイン:市中肺炎による通常の入院(ICUではなく)において、抗菌薬のエンピリック治療は難しい。βラクタム単独、βラクタム+マクロライド、キノロン単独の3群を比較したクラスターランダム化比較クロスオーバー試験。(非劣性試験)

P:IUCではない病棟に入院した市中肺炎患者
E:βラクタム+マクロライド戦略期間739人(遵守率88%)
E:キノロン戦略期間 888人(遵守率92.7%)
C:βラクタム単独戦略期間656人(遵守率93.0%)
O:90日以内の死亡

各クラスターにおいて、3つの戦略を4か月ごとに変えてゆくクラスターランダム化クロスオーバー非劣性試験(ITT解析) 非劣性マージン3%

表タイトル
戦略期間 90日以内の死亡 差[90%信頼区間]
βラクタム単独戦略期間 59人(9.0%) reference
βラクタム+マクロライド戦略期間 82人(11.1%) 1.9%[-0.6~4.4]
キノロン戦略期間 78人(8.8%) -0.6%[-2.8~1.9]

マクロライド併用ではむしろ死亡が多い傾向。βラクタム単独での非劣性が示された。

関連文献
市中肺炎で入院した患者への初期治療で抗菌薬は非定型菌までカバーすべきですか
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/40908485.html
市中肺炎ではβラクタム剤にマクロライドを併用すべきでしょうか?
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/40603873.html

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■セフトリアキソンによるSJS■
Narayanan VS, Mamatha GP, Ashok L.et.al. Steven Johnson syndrome due to I.V Ceftriaxone--a case report. Indian J Dent Res. 2003 Oct-Dec;14(4):220-3. PMID: 15328988
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15328988
25歳女性、セフトリアキソンの静注投与によると思われるSJSを発症した症例に関する文献

■セフトリアキソンによる固定薬疹■
Ozkaya E, Mirzoyeva L, Jhaish MS.et.al. Ceftriaxone-induced fixed drug eruption: first report. Am J Clin Dermatol. 2008;9(5):345-7. PMID: 18717612
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18717612
固定薬疹とは、原因となる薬剤が投与されるたびに、同一部位に発疹が生じる病態のことでセフェムでの報告は稀である。54歳トルコ人女性、セフトリアキソンにより固定薬疹を発症した症例報告。


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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-
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セフトリアキソンによる皮膚障害の有害事象、一般にセフェムでは世代数が大きいほどアレルギーが出にくいと考えられていますが、セフトリアキソンは臨床現場においてその使用頻度が高いせいか症例報告は存在します。

皮膚障害の重篤なものとしてSJS(Stevens-Johnson syndrome)さらにその重症型としてのTEN((toxic epidermal necrolysis)があるわけですが、薬剤性の場合、その原因薬剤として、抗菌薬,解熱鎮痛消炎剤,抗てんかん剤,痛風治療剤,サルファ剤,消化性潰瘍用剤,催眠鎮静剤,抗不安剤,精神神経用剤,緑内障治療剤,筋弛緩剤,高血圧治療剤などが挙げられます。

SJS、TENの本邦における報告件数及び臨床転帰は以下の資料にまとまっており参考になります。

医薬品による重篤な皮膚障害について(医薬品・医療機器等安全性情報No.261)
http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/261-1.pdf

ロキソプロフェンなどを含む市販薬でも報告件数が多く、なかなか軽視できないものがあります。

さて今週の論文紹介で、市中肺炎における抗菌薬選択、このテーマは少し気になっていました。次週は市中肺炎に対する抗菌薬物療法戦略をテーマにまとめてみたいと思います。

#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Apr.15;1(14)supplement

スレッド
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糖尿病のスクリーニング・早期治療
~U.S. Preventive Services Task Force~
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2型糖尿病スクリーニングに関するシステマテックレビューが出ました。非常に重要な論文だと思いますので、「地域医療の見え方2015.Apr.15;1(14) supplement」として記事を更新します。論文は全文フリーで読めます。

Selph S, Dana T, Blazina I,et.al. Screening for Type 2 Diabetes Mellitus: A Systematic Review for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2015 Apr 14. [Epub ahead of print] PMID: 25867111
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25867111

結論から言うと糖尿病スクリーニングを検討した2研究で10年後の死亡を改善しませんでした。16研究で空腹時血糖異常、耐糖能異常の治療は糖尿病への進展を遅らすことが示されたとしていますが、早期の空腹時血糖異常、耐糖能異常への治療が死亡を減らしたり、心血管死亡を減らすような根拠は見いだされなかったとしています。ただライフスタイルの改善介入1研究において23年の観察で死亡や心血管死亡を減らす可能性が示唆されました。

糖尿病スクリーニングを検討した2研究とは以下の2つです。

Simmons RK, Echouffo-Tcheugui JB.et.al. Screening for type 2 diabetes and population mortality over 10 years (ADDITION-Cambridge): a cluster-randomised controlled trial. Lancet. 2012 Nov 17;380(9855):1741-8. PMID: 23040422
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23040422

Simmons RK, Rahman M, Jakes RW.et.al. Effect of population screening for type 2 diabetes on mortality: long-term follow-up of the Ely cohort. Diabetologia. 2011 Feb;54(2):312-9. PMID: 20978739
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20978739

特に最初のADDITION-Cambridgeは薬剤師にとって必読の論文です。2 型糖尿病発症リスクが高い 40~69 歳の研究参加者20184 人を対象としたクラスターランダム化比較試験で、糖尿病検診によるスクリーニング実施群と非実施群を比較しました。その結果、追跡9.6年で総死亡はハザード比1.06[95%信頼区間0.90~1.25]とその有効性不明という結果でした。

もう一つのSimmons RK.et.al,2011の論文は人口ベースコホートから患者を抽出したランダム化比較試験です。40歳~65歳の参加者を対象に行われました。糖尿病スクリーニング群は非スクリーニング群と比べて10年の追跡で総死亡は減少傾向にあるもののぎりぎりで有意な差は尽きませんでした。調整ハザード比0.79 [95%信頼区間 0.63-1.00]

このようなスクリーニングは死亡が減らないかもしれないが、糖尿病の治療を早期に行えるメリットがあるという主張もあるでしょう。その前に早期診断のデメリットについて知っておかねばなりません。

Park P, Simmons RK, Prevost AT,et.al. Screening for type 2 diabetes is feasible, acceptable, but associated with increased short-term anxiety: a randomised controlled trial in British general practice. BMC Public Health. 2008 Oct 7;8:350. PMID: 18840266
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18840266

この研究はランダム化比較試験で糖尿病のスクリーニングと不安などの精神面を検討しています。新規の糖尿尿診断はスクリーニング6週後の不安状態と関連したという結果でした。
short-form Spielberger State-Trait Anxiety Inventory scores (46.7 vs. 37.0; P = 0.031)

それでもスクリーニングをして、その後空腹時血糖や耐糖能異常の是正し、しっかりフォローすることに意味があるのだという主張もあるでしょう。このレビューではそのあたりにも言及します。スクリーニングにより早期治療(薬理学的介入)の有用性はメタ分析にて解析されており、各オッズ比は以下の通りです。

・総死亡:1.00[95%信頼区間0.86~1,17]
・心血管死亡:1.06[95%信頼区間0.84~1.35]

但しライフスタイル是正介入に関しては中国で行われたクラスターランダム化比較試験で前向きな結果が出ています。

Li G, Zhang P, Wang J.et.al. Cardiovascular mortality, all-cause mortality, and diabetes incidence after lifestyle intervention for people with impaired glucose tolerance in the Da Qing Diabetes Prevention Study: a 23-year follow-up study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 Jun;2(6):474-80. PMID: 24731674
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23040422

・心血管死亡:ハザード比0.59[95%信頼区間0.36~0.96]
・総死亡:ハザード比 0.71[95%信頼区間0.51~0.99]
・糖尿病発症:ハザード比0.55[95%信頼区間0.40~0.76]

症例は耐糖能異常のある577人(平均BMI25.8)で、人数は決して多くはありません。結果だけ見るとかなりインパクトがあります。ただ、この研究は6年間もの生活介入を行い23年間の追跡をしています。6年間患者とともにライフスタイルのあり方を考え続けた結果として23年後にはこれだけの効果(信頼区間に注目です)が得られる可能性はあります。一方で薬理学的介入にはほとんど明確な有効性を認めていません。糖尿病を早期に見つけて、空腹時血糖異常に対して薬を飲みましょう、でフォローしても何の意味もないのかもしれません。であれば、少なくとも6年以上、患者とともにライフスタイルについて一緒に考え、20年以上見守る覚悟が無ければ、糖尿病を早期に見つける資格なんてないのかもしれません。

糖尿病進展抑制にも意味のあることじゃないかという主張もあるかもしれませんね。確かにこのレビューではライフスタイル介入や薬理学的介入で糖尿病の進展抑制が示されているようです。αグルコシダーゼでは相対危険で0.65[95%信頼区間0.44~0.91]と示されています。その他透析への移行などについては言及されていませんが、少なくとも比較的健常な一般人口集団を対象とした安易な糖尿病スクリーニングの推奨はあまりセンスが良いとは言えないかもしれません。

本レビューとは関係ありませんが、つい先日地域薬局による糖尿病予防プログラムに関する論文が出ていました。

Schmiedel K, Mayr A, Fießler C.et.al. Effects of the Lifestyle Intervention Program GLICEMIA in People at Risk for Type 2 Diabetes: A Cluster-Randomized Controlled Trial. Diabetes Care. 2015 Mar 17. [Epub ahead of print] PMID: 25784662
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25784662

この研究は糖尿病リスクを低下させるために42の地域薬局で行われた12か月の予防プログラムの有用性を検討したクラスターランダム化比較試験です。1092人の参加者を対象に、年3回の個別のカウンセリングと5回の教育セッションを実施する群と、患者の健康状態を評価した情報提供を年に3回実施した群を比較し、フィンランドにおける糖尿病リスクスコアFinnish Diabetes Risk Score [FINDRISC]を検討しています。FINDRISCは、8項目の質問表で構成されたスコアで、このスコアと10年後の糖尿病発症率が相関することが示されているが、あくまで代用のアウトカムである点に注意が必要です。その結果、クラスター構成と患者背景で調整後の糖尿病リスクスコアはC群に比べてE群で0.74 [95% 信頼区間0.42-1.04]改善していました。しかしながら、あくまで代用のアウトカムの改善であります。今回の糖尿病のスクリーニング・早期治療に関する結果を軽視すべきではありません。以下にこのレビューの要点をまとめておきます。

・糖尿病のスクリーニングの有効性
⇒10年死亡に差は無い
・糖尿病のスクリーニングの有害性
⇒糖尿病の診断で短期的ではあるが不安が増加する可能性がある。
⇒ただし、1年以上の追跡では差は無い
・早期治療のメリット
⇒23年フォローアップのライフスタイル改善介入でメリットがあるかもしれない。
⇒しかし多くの研究で総死亡、心血管死亡に差は無い。
⇒糖尿病への進展抑制効果は期待できる可能性がある。

ここからは僕の個人的な意見です。賛否あるかと思いますが、スクリーニング・早期治療で糖尿病と診断されることを遅らす意味とは何でしょうか。薬理学的介入、ライフスタイル介入を受けなければならないのであれば、それは糖尿病という名がついていないだけの糖尿病もどきであり、その実態は糖尿病となんら変わりが無い気がするのは僕だけでしょうか。死亡リスクや心血管死亡リスクが変わらないというのはそういうことです。(透析や網膜症などの問題もありますけれど…)少なくとも6年以上患者と向き合い20年以上フォローし続ける覚悟がなけば(それでも効果はごくわずかかもしれません)、糖尿病の早期発見・早期治療に薬剤師が関わる意義はあまりないのではないでしょうか。(あくまで薬剤師がという部分を強調しておきます)

糖尿病の早期発見が健康に良いという常識に依拠している限り見えてこないことがあるのは明らかとなりました。僕らの行動原理は常識に依拠してはいけないことは今さら強調するまでもありません。ひとつの臨床判断についてエビデンスと向き合い熟議が必須なのも明らかです。どのようなものでも究極の価値になりうるというのは、人が生きていく上で最も注意せねばならないことです。常識に価値を見いだすこと、信仰に価値を見いだすこと。人は価値観の相違で殺戮と破壊を繰り返してきました。医療における行動の原理に対する価値観もまた同様ではないでしょうか。僕たちは原理に社会の全体意志(ナラティブの総体・個人の常識的価値観の総体)を適用してはなりません。向き合うべきは疫学的現実です。常識は常に疑うことができるという単純な原理こそ肝要ではないでしょうか。
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地域医療の見え方  2015.Apr.15;1(14)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-特集:ポリファーマシーのゆくえ(第2回)-

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[ポイント]
■AMDAによる長期療養患者の潜在的に不適切な医療に関するChoosing Wisely10項目
■余命1ヶ月~1年の患者におけるスタチンはその使用を中止すべきかもしれない。
■ポリファーマシーの状態を是正し、患者転帰改善を目的とした薬剤使用中止のプロセスを「Deprescribing」という。
■実臨床ではDeprescribingプロセス実行が困難なことも多々あり、そのためにも薬剤師による支援介入「Deprescribing Support intervention(DSI)」は有用である可能性がある。

[イントロダクション]

当サイト「地域医療の見え方2015.Mar.18;1(10)」にて、“ポリファーマシーのゆくえ”と題して、近年、注目を集めつつある概念、ポリファーマシーの実態とその臨床的影響、及びポリファーマシーの是正介入の効果についてまとめました。

地域医療の見え方2015.Mar.18;1(10)

潜在的に不適切な薬剤使用の基準としてSTOPP criteriaやSTART criteriaなどがあり、高齢者のポリファーマシーは決して稀なものではなく、むしろ身近に多く存在しうること、高齢者のポリファーマシーは死亡リスクや薬剤関連問題の増加に関連すること、STOPP criteriaやSTART criteria等の基準に基づいたアラート介入は使用薬剤数やコストを減らせる可能性があるが、患者そのものの臨床転帰については不明であることなどをご紹介し、ポリファーマシーの是正はクライテリアの一律な適用ではなく、目の前の患者と、各クライテリア個々の命題に対する十分なアセスメントが必要であると思われると結論しました。

当ブログでは引き続きポリファーマシーに関するテーマをアップデートし、まとめていきたいと考えています。

[Choosing Wiselyから見る、潜在的に不適切な医療]

The Society for Post-Acute and Long-Term Care Medicine(AMDA)による長期療養患者の潜在的に不適切な医療に関するChoosing Wiselyがアップデ―トされています。(※1)

「Choosing Wisely」とは適切な医療のために対話を促すことを目的に米国内科専門医認定機構財団が2011年から行っている活動であり、米国各学会が「Things Physicians and Patients Should Question(医師と患者が話し合うべき項目)」を公表する取り組みです。重要項目が非常に簡潔にまとまっている、Choosing Wiselyですが、AMDAでは10項目に加筆され、より具体的な項目が追加されています。高齢者医療を考えるうえでは必見の内容となっています。

①重度の認知症患者への胃瘻は設置せず経口補助栄養を推奨。
②高齢者施設に居住する人における長期的な糖尿病管理に対して、スライディングスケールによるインスリンを使用しない。
③著明な症状がない限り、尿培養を行わない
④根本原因のアセスメントをすることなく、認知症のBPSDに対して抗精神病薬を使用しない。
⑤余命の限られた人に脂質低下薬投与しない。
⑥尿失禁の管理にために尿道カテーテルを挿入しない。
⑦余命10年未満の人に乳がん検診、大腸がん検診、前立腺がん検診を推奨しない
⑧治癒確認のための C. difficile毒素検査をしない。
⑨ケア目標やリスクベネフィットの明確な理解なしに積極的治療あるいは病院でのケアを推奨せず。
⑩60歳以上では収縮期血圧150mmHg未満、収縮期血圧90mmHg未満での降圧療法を開始しないこと。


インスリン治療を受けている場合はどう対応すればよいのか、尿培養や認知症のBPSDなどなど、なかなか実践が困難な項目も含まれているかと思いますが、ポリファーマシー是正を考慮するうえでも重要な内容となっています。当ブログを振り返ってみても、該当する箇所があります。

※降圧療法の新規開始※
高血圧に対する新規治療開始の目安[地域医療の見え方2015.Mar.11_1(9)]でもまとめたとおり、一部の高齢者では収縮期血圧が130mmHgを下回ると死亡リスクが上昇する可能性があり、60歳以上の一般的患者集団においては、収縮期血圧150mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上で薬物治療開始過を考慮すると良い印象です。

※認知症に対する抗精神病薬※
認知症患者に対する抗精神病薬の使用は死亡リスク増加に関連していることが明らかとなっています。(※2)(※3)(※4)(※5)
アルツハイマー型認知症においては、その周辺症状に対して、オランザピンやリスペリドンが他の抗精神病薬やプラセボに比べその有効性が長く続くことが期待できますが、有害事象により、その有効性が相殺されてしまうという報告もあります。(※6)だからと言ってすぐに中止できるかと言うとなかなか難しい問題もあるのですが…(※7)(※8)

BPSDに対する抑肝散の効果は[地域医療の見え方2015.Jan.21;1(2)]に少しまとめてあります。認知症患者のBPSDに対して抑肝散は一定の効果が期待できる可能性があるが、ADLに対して効果はあってもわずかかもしれない。また認知機能に対して抑肝散の効果はほぼ期待できないと結論しました。

[余命の限られた人に脂質低下薬投与しない]

先日JAMA Intern Med.に興味深い論文が掲載されました。

Safety and Benefit of Discontinuing Statin Therapy in the Setting of Advanced, Life-Limiting Illness.A Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online March 23, 2015. doi:10.1001/jamainternmed.2015.0289
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2204034

スタチン系薬剤のベネフィットは長期継続的に得られるものであって、余命の限られた人においてはリスクの方が上回ると考えられます。しかしながらスタチン中止に伴う影響に関する知見は乏しいと言わざるを得ません。

この研究は緩和ケア医療のセッティングにおいて、スタチン系薬剤の中止による安全性、臨床的影響、コストへの影響を評価した多施設非盲検ランダム化比較非劣性試験です。対象患者はスタチン系薬剤を心血管疾患の1次予防もしくは2次予防のために、3か月以上服用している、推定余命1か月~1年の患者381人でした。(平均74歳、22%が認知機能障害、48.8%が癌)

スタチンの継続群192人もしくは中止群189人の2群にランダム割り付けを行い、最大で1年間観察しました。主要評価項目は60日以内の死亡割合で、セカンダリアウトカムとして、心血管イベントやQOL,コストなどを検討しています。

主要評価項目である60日以内の死亡割合はスタチン中止群でスタチン継続群に非劣性でした。(スタチン継続群20.3%、スタチン中止群23.8% 差の90%信頼区間[−3.5%~10.5%] P = .36)

総QOLはスタチン中止群で優れていました。(平均McGill QOLスコア, 中止群7.11 継続群6.85; P = .04)

スタチン系薬剤の中止は安全であり、QOLの改善、コスト削減に有用であることが示されています。非盲検化試験ですが、死亡と言うアウトカムであり、大きな問題はなさそうです。非劣性試験であり、その解釈に関しては熟慮が必要な印象ですが、貴重な研究報告となっています。

[ポリファーマシーにおけるDeprescribingのプロセス]

同じくJAMA Intern Med.のSpecial Communicationに興味深い情報が掲載されています。

Reducing Inappropriate Polypharmacy.The Process of Deprescribing
JAMA Intern Med. Published online March 23, 2015. doi:10.1001/jamainternmed.2015.0324
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2204035

高齢者における不適切な多剤使用は、薬物有害事象、や死亡リスクなどの負担を増加させる可能性があることはこれまでも見てきたとおりです。潜在的に不適切な処方と高齢患者における薬物有害事象リスクの最も重要な予測因子は、処方薬の数と言われています。ポリファーマシーの状態を是正し、患者転帰改善を目的とした薬剤使用中止のプロセスを「Deprescribing」と呼んでいます。これは、これまでに僕が提唱してきた、「ポリファーマシーのde-escalation」とほぼ同義であると考えています。

Deprescribingの有効性については、無作為化試験及び観察研究から徐々に浮き彫りとなってきました。Deprescribingのプロトコルは以下の5段階が提唱されています。


①患者が現在使用しているすべての薬剤について、その処方理由を再確認する。
②必要とされるdeprescribing介入強度を決定する上で、個々の患者における薬剤誘発性危害の全体的なリスクを考察する
③各薬剤における、現時点、あるいは将来の潜在的なリスクと比較して、潜在的なベネフィットを評価する。
④高ベネフィット、低リスクとなるよう、そして退薬症状リスクを最低限に抑えるよう、中止薬剤の優先順位を決める。
⑤中止レジメンを実行し、アウトカムの改善や副作用発現のために注意深く患者を観察する


以上5つのプロセスに基づく作業が「Deprescribingプロトコル」と呼ばれるものです。

[ポリファーマシーのde-escalationからDeprescribing Support interventionへ]

僕が提唱してきた“ポリファーマシーのde-escalation”においては、患者情報、処方内容と疫学データや基礎研究からの示唆を用いて、

①薬剤効果の定量化
②薬剤有害事象リスクの定量化
③薬物相互作用リスクの定量化

を行い、必要と思われる薬剤、不要と思われる薬剤を定量効果に基づき順位付けします。この作業は“Deprescribingプロトコル”における①~④と同等のプロセスと言えるかもしれません。薬剤師の立場からすると、薬剤使用の中止提案という仕方で介入することになりますが、その際、根拠となる論文情報(定量化情報)についてできる限り詳細にアセスメントする必要があります。

これら一連の作業、すなわち「薬剤師によるポリファーマシーのde-escalationの提案」を今後、当ブログでは「Deprescribing Support Intervention(DSI)」と呼ぶことにします。

[Deprescribingプロセスの実効性]

Proton pump inhibitors (PPIs)の不適切使用は実に使用者の50%までに上ると言われています。PPIの潜在的不適切処方を減らすための患者中心のDeprescribingプロセスの実効性について、外来患者を対象にした前向き研究(prospective feasibility study)が報告されています。(※9)患者中心のDeprescribingプロセスとは先に紹介したDeprescribingの5つのプロトコルです。

対象となった患者は57人のPPI使用者で、平均70歳、使用薬剤数は平均14剤でした。実際にPPIの処方指示が出ていた43人のうち、潜在的に不適切な使用は19人(44%)でした。介入により研究に同意が得られた6人のうち3人が使用を中止、残り3人が用量減量に成功したと報告しています。4人の参加者では6か月間、この状態が維持されたとしています。

かなり小規模サンプルの前向き報告ですが、患者中心のDeprescribingプロセスにより潜在的に不適切なPPI使用を減らせる可能性を示唆したとしています。結果自体についてはこの1報告では何とも言えない印象もありますが、完全な薬剤使用歴へのアクセス困難、限られた時間、適応症における有効性を示唆する根拠が、実臨床におけるプロセス実施の障壁となっていると報告されています。

この障壁に対する支援介入が「Deprescribing Support intervention(DSI)」となります。薬剤師によるDSIが潜在的に不適切な薬剤使用削減に貢献できるような具体的な手法の確立を模索したいと思います。

[参考文献]
1)AMDA Releases Second Round of Potentially Unnecessary Medical Tests, Procedures as Part of the ABIM Foundation’s Choosing Wisely® Campaign
http://www.amda.com/tools/AMDA_ChoosingWisely_10things.pdf
(※2)Maust DT. Kim HM, Seyfried LS.et.al. Antipsychotics, Other Psychotropics, and the Risk of Death in Patients With Dementia: Number Needed to Harm. JAMA Psychiatry. 2015 Mar 18. PMID: 25786075
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25786075
(※3)Ballard C, Hanney ML, Theodoulou M,et.al. The dementia antipsychotic withdrawal trial (DART-AD): long-term follow-up of a randomised placebo-controlled trial. Lancet Neurol. 2009 Feb;8(2):151-7. PMID: 19138567
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19138567
(※4)Schneider LS, Dagerman KS, Insel P.et.al. Risk of death with atypical antipsychotic drug treatment for dementia: meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. JAMA. 2005 Oct 19;294(15):1934-43. PMID: 16234500
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16234500
(※5)Ma H, Huang Y, Cong Z.et.al. The efficacy and safety of atypical antipsychotics for the treatment of dementia: a meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. J Alzheimers Dis. 2014;42(3):915-37. PMID: 25024323
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25024323
(※6)Schneider LS, Tariot PN, Dagerman KS.et.al. Effectiveness of atypical antipsychotic drugs in patients with Alzheimer's disease. N Engl J Med. 2006 Oct 12;355(15):1525-38.
PMID: 17035647
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17035647
(※7)Devanand DP, Mintzer J, Schultz SK.et.al. Relapse risk after discontinuation of risperidone in Alzheimer's disease. N Engl J Med. 2012 Oct 18;367(16):1497-507. PMID: 23075176
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23075176
(※8)Pan YJ, Wu CS, Gau SS.et.al. Antipsychotic discontinuation in patients with dementia: a systematic review and meta-analysis of published randomized controlled studies. Dement Geriatr Cogn Disord. 2014;37(3-4):125-40. PMID: 24157687
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24157687
(※9)Reeve E, Andrews JM, Wiese MD.et.al. Feasibility of a patient-centered deprescribing process to reduce inappropriate use of proton pump inhibitors. Ann Pharmacother. 2015 Jan;49(1):29-38. PMID: 25385826
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25385826

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■23価肺炎球菌ワクチンの有効性■
Leventer-Roberts M, Feldman BS, Brufman I.et.al. Effectiveness of 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine Against Invasive Disease and Hospital-Treated Pneumonia Among People Aged ≥65 Years: A Retrospective Case-Control Study. Clin Infect Dis. 2015 Feb 10. [Epub ahead of print] PMID: 25669354
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25669354
背景と研究デザイン:肺炎球菌は肺炎や侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)の原因となるが、23価肺炎球菌ワクチンPPSV23によるそれらの予防効果には議論の余地がある。PPSV23の有効性を検討した集団ベースのコホートを用いた症例対照研究

P:65歳以上の470070人のデータより
症例:侵襲性肺炎球菌疾患212人と入院治療肺炎23441人
対照:年齢、性別、リスクでマッチングしたコントロール群

・侵襲性肺炎球菌疾患:調整オッズ比0.58[95%信頼区間0.41-0.81]
・入院治療肺炎:調整オッズ比1.01[95% 信頼区間0.97-1.04]

全原因肺炎に対する有効性については不明な部分も多いが侵襲性肺炎球菌疾患は有意な減少に関連するという結果

■慢性疲労症候群に対するデュロキセチン■
Arnold LM, Blom TJ, Welge JA.et.al. A Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blinded Trial of Duloxetine in the Treatment of General Fatigue in Patients With Chronic Fatigue Syndrome. Psychosomatics. 2014 Dec 16. pii: S0033-3182(14)00193-5. PMID: 25660434
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25660434
背景と研究デザイン:慢性疲労症候群におけるデュロキセチンの有効性・安全性を検討したランダム化比較試験。

P: 慢性疲労症候群を有する患者
E:デュロキセチン60-120mg/日の投与30人
C::プラセボの投与30人
O:多次元疲労インベントリ(4~20で評価する疲労スケール。数値が大きいほど疲労が大きい)
・追跡期間:12週
・盲検化:2重盲検
・統計解析:intent-to-treat

多次元疲労インベントリはプラセボと比較して明確な差が無い。
▶スコア差-1.0 [95%信頼区間-2.8~0.7] P = 0.23

■ダイエット炭酸飲料の効果■
Fowler SP, Williams K, Hazuda HP.et.al. Diet Soda Intake Is Associated with Long-Term Increases in Waist Circumference in a Biethnic Cohort of Older Adults: The San Antonio Longitudinal Study of Aging. J Am Geriatr Soc. 2015 Mar 17.[Epub ahead of print] PMID: 25780952
背景と研究デザイン:ダイエット炭酸飲料と長期的な胴囲の関係を検討したテキサス州サンアントニオにおける後ろ向きコホート研究。

P:65歳以上のメキシコ系、ヨーロッパ系749人
E:ダイエット炭酸飲料の摂取あり
C:ダイエット炭酸飲料の摂取なし
O身長、体重、胴囲

追跡:平均9.4年(各区間、平均2.64年)
・FU1 (2000-01)474(79.1%)
・FU2 (2001-03)413(73.4%)
・FU3 (2003-04)375(71.0%)

交絡補正:人口統計学的特性、身体活動、糖尿病、喫煙
各区間の平均胴囲変化はダイエット炭酸飲料摂取群で3倍多い(P < .001)
▶ダイエット炭酸飲料摂取群:2.11 cm[95%信頼区間 1.45-2.76 cm]
▶ダイエット炭酸飲料非摂取群:0.77 cm[95%信頼区間0.29-1.23 cm]

少なくともダイエット炭酸飲料にダイエット効果は不明という印象。

■認知症に対する抗精神病薬■
Maust DT. Kim HM, Seyfried LS.et.al. Antipsychotics, Other Psychotropics, and the Risk of Death in Patients With Dementia: Number Needed to Harm. JAMA Psychiatry. 2015 Mar 18. PMID: 25786075
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25786075
背景と研究デザイン:抗精神病薬は、認知症の高齢者が増加死亡率と関連しているが、代替え向精神薬や治療なしとの比較において絶対的な影響は不明な部分も多い。認知症に対する抗精神病薬の使用と死亡リスクのNNHを治療なしもしくは代替え療法を比較し検討したケースコントロール研究

P:
E:新規抗精神病薬(ハロペリドール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン)
C:薬剤使用なし、もしくはバルプロ酸(及びその誘導体)、抗うつ薬の使用
O:180日以内の死亡(NNH)
交絡補正:年齢、性別、認知症歴、せん妄の有無、他の臨床・人口統計学的特性

主な結果は以下の通り

治療なしとの比較
薬剤名 NNH[95%信頼区間] リスク増加[95%信頼区間]
ハロペリドール 26 (15-99) 3.8% (1.0%-6.6%)
リスペリドン 27 (19-46) 3.7% (2.2%-5.3%)
オランザピン 40 (21-312) 2.5% (0.3%-4.7%)
クエチアピン 50 (930-150) 2.0% (0.7%-3.3%)


抗うつ薬との比較
薬剤名 NNH[95%信頼区間] リスク増加[95%信頼区間]
ハロペリドール 8 (6-12) 12.3%(8.6%-16.0%)
クエチアピン 31 (21-62) 3.2% (1.6%-4.9%)


抗精神病薬は高用量ほど死亡リスク増加。クエチアピンに比べて、リスペリドンやオランザピンでは死亡リスクが増加した。(用量にて調整解析)。

■コーヒーと死亡リスク■
Saito E, Inoue M, Sawada N.et.al. Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. Am J Clin Nutr. 2015 Mar 11. [Epub ahead of print] PMID: 25762807
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25762807
背景と研究デザイン:コーヒーの消費は世界的であるにも関わらず、その摂取と死亡リスクとの関連を検討した報告は限定的である。Japan Public Health Center-based Prospective Study.

P:研究開始時において、癌、脳血管疾患、または虚血性心疾患の既往がない40歳~69歳の日本人90,914人
E:コーヒーの摂取あり
C:コーヒーの摂取なし
O:総死亡率、癌死亡、心臓疾患死亡、脳血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡、外傷死亡、その他の原因による死亡
・追跡期間:平均18.7年
・潜在的な交絡因子の調整とコックス比例ハザード回帰モデルを用いて死亡リスク検討

コーヒーの摂取なしと比較した総死亡に対するハザード比は以下の通り
・1日1Cup未満:0.91 (95%信頼区間0.86-0.95)
・1日1~2Cup:0.85 (95%信頼区間0.81-0.90)
・1日3~4Cup;0.76 (95%信頼区間0.70-0.83)
・1日5Cup超:0.85 (95%信頼区間0.75-0.98)
(P-trend < 0.001).
さらにコーヒーの摂取は 心臓病、脳血管疾患、および呼吸器疾患による死亡リスク低下と関連

■テトラサイクリン系薬剤と歯の着色リスク■
Todd SR, Dahlgren FS, Traeger MS.et.al. No Visible Dental Staining in Children Treated with Doxycycline for Suspected Rocky Mountain Spotted Fever. J Pediatr. 2015 Mar 14. pii: S0022-3476(15)00135-3. PMID: 25794784
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25794784
背景と研究デザイン:ダニ媒介性感染症の1つであるロッキー山紅斑熱に対するドキシサイクリンの治療を受けていた小児を対象に小児の永久歯の着色あるいはエナメル質形成不全を評価した後ろ向きコホート研究。なお本邦添付文書にも8歳未満の小児に対する注意喚起の記載がある。

P:アメリカアリゾナ州における8歳~16歳の小児。
E:8年前にドキシサイクリンの投与を受けている(平均9.8歳 58人)
C:ドキシサイクリンの投与なし(平均11.8歳、213人)
O:永久歯の歯牙着色、エナメル質形成不全

医療や薬局記録のレビューおよび歯科横断調査やアンケートからなるデータを用いてドキシサイクリンの使用歴を確認。平均7.3日の使用。投与時年齢は平均4.5歳。アンケートにより、コーヒー、紅茶、コーラ、喫煙、歯のブラッシング頻度の情報を収集した。

歯の色素沈着は確認できず。(0人/58人)両群に差は無い。(P = .20)
エナメル質形成不全にも明確な差を認めない。(P = 1.0)

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■点眼薬のポリファーマシー■
Ramli N, Supramaniam G, Samsudin A.et.al. Ocular Surface Disease in Glaucoma: Effect of Polypharmacy and Preservatives. Optom Vis Sci. 2015 Feb 27. [Epub ahead of print] PMID: 25730335
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25730335

緑内障患者における眼表面疾患(ocular surface disease:OSD)に関する報告。既存の臨床試験から、緑内障点眼薬を使用していたケース105人と緑内障治療薬を使用していなかった102人を横断調査。OSDの有病割合を検討した。緑内障点眼薬を使用していた患者でのOSD有病割合は、臨床試験によって37~91%の範囲で変動した。角膜染色はケース63%、コントロール36%であった(P=0.004 )眼表面疾患インデックスで中等度の症状を示したのはケース17%、コントロール7%であった。塩化ベンザルコニウムの存在は眼表面疾患インデックス異常のリスクを上昇させた。(オッズ比で3倍)

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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ポリファーマシー特集、本稿で2回目です。今回はポリファーマシー是正介入として新しい概念であるDeprescribingと、薬剤師によるDeprescribing Support intervention(DSI)をご紹介いたしました。Deprescribingについて、「土橋内科医院院長ブログ -心房細動な日々-」で詳しくまとめられていました。

「不適切なポリファーマシーを減らす:Deprescribing=減処方のプロトコール表:JAMAIM」
http://dobashin.exblog.jp/21082119/

僕自身、これまでの取り組みの質をより向上させるために、その手法の体系化を模索したいと思います。

さて症例報告でご紹介した論文。点眼剤のポリファーマシーに関する貴重な報告だと思います。塩化ベンザルコニウムが含有された点眼剤は今現在も少なくありません。これら薬剤を複数使用し続けることは、眼の表面に何らかの異常を起こす可能性が高くなるという報告で、点眼薬と言えど、必要最低限の使用に留めなくてはなりませんね。

さて、当ブログでは引き続きポリファーマシーに関する話題と薬剤師によるDeprescribing Support interventionに関して取り上げていきたいと考えています。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

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[JJCLIP]シンポジウム開催のお知らせ

スレッド
薬剤師のジャーナルクラブでは、第6回日本プライマリ・ケア連合学会 学術大会 の会期に合わせ、平成27年6月12日に「薬剤師のジャーナルクラブシンポジウム2015」を開催いたします。

薬剤師の臨床現場における基本的な「行動原理」について考えたことがあるでしょうか。社会に出て、仕事をするというのは、その行動を基本的なところで支える”原理”があるはずなんです。例えば、個人の倫理観や自分の所属する組織の業務マニュアル、就業規則、組織の運営方針など、そういった原理によって自分自身の行動が妥当されているわけです。

薬剤師は薬学部を卒業後、就職し社会活動を営むわけですが、学部で学んだことは薬剤師としての基本的な「学問的常識」であり、その多くは行動原理というわけではありません。薬理学や病態生理学、薬物動態学というような学問的知識は薬剤師業務の「常識」や「思考の方向性」を支えることはあっても、具体的な臨床行動原理ではありませんよね。組織の構成員(たとえば会社員)としての行動原理はあっても、薬剤師という医療従事者としての行動原理を改めて考えてみると、具体的な原理を明確に特定することができないようにも思えませんか。薬剤師の行動を基本的なところで支えるメタ的な原理、そういったことについていろいろ考えてみようというのが、本シンポジウムの企画の狙いでもあるわけです。

EBMは一つの行動原理です。日常で出会う臨床疑問を定式化して、情報を集め、それを吟味して、自分の行動の意思決定材料にする、そして意思決定後の再評価を行う。という一連の流れは、自身の行動を常に妥当かどうか問い直すシステムに支えられており、その判断基準の一つとしてエビデンスを用いているわけですね。ただ本シンポジウムで注目したいのは何もEBMだけではありません。これまでの薬剤師の取り組み、その方法論について、もう少し広い意味での行動原理について皆様と一緒に考えたいのです。

また薬剤師のジャーナルクラブでは、これまでインターネットを媒体としたEBMスタイル抄読会を定期的に開催してきました。その取り組みを一つの研究として、エビデンスを作るプロジェクトも進行しています。今後の薬剤師のジャーナルクラブの活動の展開について、是非皆様と一緒に議論したい。それがJJCLIPメンバー3人の想いです。

[開催概要]

・日時▶2015年06月12日(18:15〜20:45)
・開催場所▶株式会社つくば研究支援センター 1F 研修室1+2
  (茨城県つくば市千現2丁目1−6)
・参加費▶2,000円
・定員▶30人(先着順)

参加のお申込みやシンポジウム詳細は以下のWEBサイトをご参照ください。
http://kokucheese.com/event/index/284793/

是非、皆様のご参加をお待ちしています。
#ブログ

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Apr.8;1(13)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-薬剤使用と市中肺炎の関連-
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[ポイント]
■PPI、抗コリン薬、抗精神病薬の使用と市中肺炎リスクの関連性が示唆されている
■ACE阻害薬、スタチン、H2受容体拮抗薬、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用と市中肺炎リスクとの関連性は比較的低い

[イントロダクション]

胃酸分泌抑制剤と市中肺炎リスクは比較的有名ですよね。しかしながら調べてみると、様々な薬剤と市中肺炎リスクを検討した報告は多数あります。そのすべてを網羅するのは、とても大変な作業となり、現状難しいですが、代表的な薬剤について少しまとめてみます。主に症例対照研究からの示唆となり、その因果関係については議論の余地があるかと思いますが、リスクとの関連の強さを俯瞰できれば良いかなと思っています。

[PPIと市中肺炎リスク]

PPIと市中肺炎リスクは複数の研究で報告されています。

①デンマークにおける症例対照研究

デンマークにおける人口ベースの症例対照研究(※1)では退院時診断名で市中肺炎による入院患者7642人と、年齢、性別でマッチングした34176人のコントロールを比較してPPIの使用割合を比較しました。平均年齢は55.5歳~56.5歳、男性52.8%~53.5%でした。年齢、性別のほかに市中肺炎の既往やCOPD,消化性潰瘍、アルコール関連疾患、虚血性心疾患、肝硬変、腎臓病、心不全、脳卒中、全身もしくは吸入ステロイド使用、NSAIDs使用、抗コリン薬使用、抗精神病薬使用等の交絡因子を補正しています。

PPIの使用は現在使用(受診日から90日以内の使用)、最近使用(受診日の90~180日以前の使用)、過去使用(受診日から180日以上前での使用)で検討しています。主な結果を以下にまとめます。

PPI
使用時期 ケース コントロール 調整オッズ比[95%CI]
現在使用 817/6825 1584/32592 1.5(1.3-1.7)
最近使用 123/6702 335/32257 1.2(0.9-1.6)
過去使用 806/5896 2795/29462 1.0(0.9-1.1)


H2受容体拮抗薬
使用時期 ケース コントロール 調整オッズ比[95%CI]
現在使用 139/6684 478/32114 1.1(0.8-1.3)
最近使用 26/6660 134/31980 0.7(0.4-1.1)
過去使用 820/5840 2861/29119 1.1(1.0-1.2)


PPIの現在使用は市中肺炎リスクと関連しているもののH2受容体拮抗薬では有意な関連は見られませんでした。

②イギリスにおける症例対照研究

イギリスにおけるGeneral Practice Research Databaseのコホートを用いたコホート内症例対照研究(※2)では18歳以上の患者を対象に、肺炎を発症した80066人をケースとして登録し、フォローアップ期間等でマッチングした799881人をコントロールとして設定し、受診日30日以内のPPIの使用割合を比較しました。

全体ではPPIの使用は市中肺炎リスクとの関連は見られませんでした。
調整オッズ比1.02 [95%信頼区間0.97~1.08])
しかしながら直近のPPI使用では市中肺炎との関連が見られています。
・2日以内:オッズ比6.53 [95%信頼区間3.95~10.80]
・7日以内:オッズ比3.79 [95%信頼区間2.66~5.42]
・14日以内:オッズ比3.21 [95%信頼区間2.46~4.18]
長期の使用では関連が見られませんでした。

このようにPPIの現在使用は肺炎リスク増加の懸念が存在します。

[抗コリン薬と市中肺炎リスク]

抗コリン薬と市中肺炎リスクを検討した症例対照研究も報告されています。(※3)
この研究はワシントン州における統合医療提供システムを利用した65~94歳の参加者を対象とした集団ベースの症例対照研究です。肺炎を発症した1,039人と、年齢、性別でマッチングした2,022人のコントロールを比較し、抗コリン薬の使用割合を比較しています。

抗コリン薬の現在使用(診断日の90日以内の使用)はケースで59%、コントロールで35%であり、そのオッズ比は2.55[95%信頼区間2.08~3.13]と有意な関連が見られました。過去の使用(診断日の前年使用)ではケース17%、コントロール23%でオッズ比は1.19, 95%信頼区間[0.92-1.53]と明確な関連は見られませんでした。また抗コリン薬の漫然使用はケース53%、コントロール36%でオッズ比2.07[95%信頼区間1.68-2.54]と関連が見られています。

抗コリン薬は高齢者においてできる限り使用を避けたい薬剤であり、特に漫然使用は是正したい印象ですね。

[ACE阻害薬と市中肺炎リスク]

ACE阻害薬の場合では肺炎リスク低下が期待されていました。ACE阻害剤は、気道におけるサブスタンスPおよびブラジキニンを増加させることで、誤嚥性肺炎の予防に効果的ではないかなどと言われたこともありましたよね。

ACE阻害薬と市中肺炎リスクを検討したコホート内症例対照研究は2012年に報告されています。(※4)この研究もワシントン州の統合医療提供システムを利用し65-94歳の高齢者を対象としたもので、肺炎の診断をうけた1,039人と年齢、性別、暦年でマッチングした2,022を比較し、受診日から180日以内のACE阻害薬の使用割合を比較しています。平均年齢は77歳、男性が約50%でした。

喘息、COPD,COPDによる入院、在宅酸素療法、肺疾疾患による長期間のステロイド使用、嚥下障害、心不全、心不全による入院、FEV1、脳卒中、喫煙、心筋梗塞、冠動脈再建術、高血圧、糖尿病、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、認知症、吸入ステロイド、経口ステロイド、吸入気管支拡張薬、フロセミド、ジゴキシン、インスリンの使用等で交絡を調整しています。

主な結果は以下の通りです。
表タイトル
ACE阻害薬 ケース コントロール 調整オッズ比[95%CI]
使用あり 242 (23.3) 433 (21.4) 0.99 (0.83~1.19)
使用なし 797 (76.7) 1589 (78.6) 1.00 (Ref.)


ACE阻害薬の使用と肺炎との関連は認められずという結果でした。肺炎リスクが減少する可能性を期待した研究でしたが、明確な差は出ませんでした。


[スタチンの使用と市中肺炎リスク]

スタチンの使用と市中肺炎リスクを検討した症例対照研究も報告されています。(※5)この研究はイギリスの一般診療所データベースであるTHINを利用したもので、スタチンの使用は肺炎リスク減少に関連している可能性が示唆されています。
▶調整オッズ比0.78,[95%信頼区間0.65-0.94]

またこの研究ではACE阻害薬のリスク低下も示唆されました。
▶調整オッズ比0.75[95%信頼区間0.65-0.86]

さらにH2受容体拮抗薬ではリスクの増加傾向、PPIではリスクの上昇が示唆されています。
▶H2受容体拮抗薬;調整オッズ比1.14[95%信頼区間0.92-1.40]
▶PPI;調整オッズ比1.55[95%信頼区間 1.38-1.77]

イギリスにおけるスタチンやACE阻害薬と市中肺炎リスクを検討した、40歳以上の肺炎患者3681人を対象としたコホート研究(※6)においても、スタチンの使用で肺炎死亡が減少する可能性が示唆されています。
▶肺炎症例での30日以内の死亡:ハザード比0.33[95%信頼区間0.19-0.58]

この研究ではACE阻害薬による死亡リスク低下は見られませんでした。
▶ハザード比0.62[95%信頼区間0.47-0.82]

ワシントン州における医療提供システムデータベースを用いた症例対照研究(※7)では65~94の高齢者を対象に、肺炎と診断された1125人と、年齢、性別でマッチングした2235人のコントロールが比較されました。診断日の180日前のスタチン使用割合が比較されています。平均77歳、男性50.8%でした。

喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患による入院既往、在宅酸素の使用、喫煙状態、うっ血性心不全、駆出率、脳卒中の既往、 障害嚥下、アルコール依存症、糖尿病、糖尿病の合併症、心筋梗塞の既往、冠動脈血行再建術、他の心疾患、 高血圧、高コレステロール、歩行や入浴で支援を必要とする、認知症、 吸入気管支拡張薬、吸入コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、フロセミドの使用で交絡補正しています。

主な結果を以下にまとめます。

ケース コントロール 調整オッズ比[95%CI]
使用なし 944 (83.9) 1908 (85.4) Reference
使用あり 181 (16.1) 327 (14.6) 1.26 (1.01~1.56)


こちらでは逆にむしろリスク上昇に関連するという結果でした。
スタチンに関しては結果に一貫性が無く、明確な影響はよく分からない印象です。

[オピオイドやベンゾジアゼピンの使用と市中肺炎リスク]

オピオイドの使用やベンゾジアゼピン系薬剤の使用と市中肺炎との関連を検討した症例対照研究が報告されています。(※8)

この研究は65–94歳の高齢者を対象に、肺炎を発症した1,039人のケースと年齢、性別、暦年でマッチングした2,022人のコントロールを比較しました。診断日から現在使用(5日~60日)過去使用(61日~365日)の間における薬剤使用の割合を比較しています。
また、喘息、COPD、COPD入院歴、肺疾患による長期間ステロイド使用、在宅酸素療法、心不全、心不全による入院、脳卒中、認知症、吸入気管支拡張薬、吸入、経口ステロイド、フロセミドの使用等で交絡を補正しています。主な結果を以下にまとめます。

オピオイド
使用時期 ケース コントロール 調整オッズ比[95%CI]
使用なし 695 (66.9) 1527 (75.5) 1.00 (Ref.)
現在使用 144 (13.9) 161 (8.0) 1.38 (1.08, 1.76)
過去使用 200 (19.2) 334 (16.5) 1.06 (0.88, 1.27)


ベンゾジアゼピン
使用時期 ケース コントロール 調整オッズ比[95%CI]
使用なし 892 (85.9) 1796 (88.8) 1.00 (Ref.)
現在使用 87 (8.4) 94 (4.6) 1.08 (0.80, 1.47)
過去使用 60 (5.8) 132 (6.5) 0.62 (0.46, 0.85)


この研究ではオピオイドの現在使用では弱い関連が見られますが、ベンゾジアゼピン系薬剤使用に関しては関連性は明確には示されませんでした。

[抗精神病薬と肺炎リスク]

米国食品医薬品局からの安全性の警告によると、肺炎は抗精神病薬で治療される認知症の高齢患者死亡の最も頻繁に報告された原因の一つであるとされています。しかしながら抗精神病薬使用と肺炎リスクとの関連性の疫学的証拠は限られていますが、抗精神病薬と市中肺炎の関連を検討したコホート内症例対照研究が報告されています。(※9)

この研究は65歳以上の患者を対象に肺炎を発症した258人と、年齢、性別、発症日でマッチングした1686人のコントロールを比較し抗精神病薬の使用割合を検討しています。

その結果、抗精神病薬の現在使用は有意に肺炎リスクに関連していました。
非定型:オッズ比2.61 [95%信頼区間1.48~4.61]
定形:オッズ比1.76 [95%信頼区間1.22~2.53])

[薬剤と市中肺炎リスク]
代表的な症例対照研究のみしかアセスメントしていませんので、以下の内容には偏りがあるかと思いますが、傾向を把握するためにまとめておきます。

薬剤使用と市中肺炎リスク
薬剤名カテゴリ オッズ比[95%信頼区間]
PPI 1.5[1.3~1.7]
H2受容体拮抗薬 1.1[0.8~1.3]
抗コリン薬 2.55[2.08~3.13]
ACE阻害薬 0.99[0.83~1.19]
スタチン 1.26[1.01~1.56]
オピオイド 1.38 [1.08~1.76]
ベンゾジアゼピン 1.08 [0.80~1.47]
非定型抗精神病薬 2.61 [1.48~4.61]
定型抗精神病薬 1.76 [1.22~2.53])


上記薬剤でもスタチン、ACE阻害薬、H2受容体拮抗薬、ベンゾジアゼピンの関連性は低そうですが、PPI、抗コリン約、抗精神病薬、には注意が必要です。

(※1)Gulmez SE. Holm A, Frederiksen H.et.al. Use of proton pump inhibitors and the risk of community-acquired pneumonia: a population-based case-control study. Arch Intern Med. 2007 May 14;167(9):950-5. PMID: 17502537
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17502537
(※2) Sarkar M, Hennessy S, Yang YX.et.al. Proton-pump inhibitor use and the risk for community-acquired pneumonia. Ann Intern Med. 2008 Sep 16;149(6):391-8. PMID: 18794558
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18794558
(※3) Paul KJ, Walker RL, Dublin S.et.al. Anticholinergic Medications and Risk of Community-Acquired Pneumonia in Elderly Adults: A Population-Based Case-Control Study. J Am Geriatr Soc. 2015 Mar 2 PMID: 25726764
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25726764
(※4)Dublin S, Walker RL, Jackson ML.et.al. Angiotensin-converting enzyme inhibitor use and pneumonia risk in community-dwelling older adults: results from a population-based case-control study. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2012 Nov;21(11):1173-82. PMID: 22949094
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22949094
(※5)Myles PR, Hubbard RB, McKeever TM.et.al. Risk of community-acquired pneumonia and the use of statins, ace inhibitors and gastric acid suppressants: a population-based case-control study. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2009 Apr;18(4):269-75. PMID: 19235776
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19235776
(※6)Myles PR. Hubbard RB, Gibson JE.et.al. The impact of statins, ACE inhibitors and gastric acid suppressants on pneumonia mortality in a UK general practice population cohort. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2009 Aug;18(8):697-703. PMID: 19455553
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19455553
(※7)Dublin S, Jackson ML, Nelson JC.et.al. Statin use and risk of community acquired pneumonia in older people: population based case-control study. BMJ. 2009 Jun 16;338:b2137. PMID: 19531550
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19531550
(※8) Dublin S, Walker RL, Jackson ML.et.al. Use of opioids or benzodiazepines and risk of pneumonia in older adults: a population-based case-control study. J Am Geriatr Soc. 2011 Oct;59(10):1899-907. PMID: 22091503
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22091503
(※9)Trifirò G, Gambassi G, Sen EF.et.al. Association of community-acquired pneumonia with antipsychotic drug use in elderly patients: a nested case-control study. Ann Intern Med. 2010 Apr 6;152(7):418-25,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20368647

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-
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■バレニクリンと精神神経系有害事象■
Thomas KH, Martin RM, Knipe DW.et.al. Risk of neuropsychiatric adverse events associated with varenicline: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2015 Mar 12;350:h1109. PMID: 25767129
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25767129
背景と研究デザイン:バレニクリンは精神神経系有害事象の懸念がある。バレニクリンと精神神経系有害事象の関連を検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:39のランダム化比較試験に参加した10 761人
E:バレニクリンの投与
C:プラセボの投与
O;自殺、自殺未遂、自殺念慮、うつ病

・評価者バイアス:2名のレビューによるデータ抽出
・元論文バイアス:ランダム化の手法、割り付けの隠蔽、患者、医師の盲検化、アウトカム評価の盲検化、追跡状況などで評価。

アウトカム E群 C群 オッズ比[95%CI]
自殺もしくは自殺未遂 4/5352 2/4478 1.67[0.33~8.57]
自殺念慮(I2=0%) 15/779 18/2191 0.58[0.28~1.20]
うつ(I2=0%) 163/5356 139/4487 0.96[0.75~1.22]
易怒性 293/5406 266/4615 0.98[0.81~1.17]
攻撃性 39/4276 24/3524 0.91[0.52~1.59]
死亡 13/5760 11/4887 1.05[0.47~2.38]
睡眠障害 211/5081 123/4284 1.63[1.29~2.07]
不眠症 679/5621 379/4762 1.56[1.36~1.78]
悪夢 603/5606 224/4741 2.38[2.05~2.77]


■スタチンと糖尿病リスク■
Cederberg H, Stančáková A, Yaluri N.et.al. Increased risk of diabetes with statin treatment is associated with impaired insulin sensitivity and insulin secretion: a 6 year follow-up study of the METSIM cohort. Diabetologia. 2015 Mar 10. [Epub ahead of print] PMID: 25754552
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25754552
背景と研究デザイン:スタチン療法は糖尿病リスクとの関連が指摘されている。男性を対象とした人口ベースコホート研究。

P:Metabolic Syndrome in Men (METSIM)コホートより45-73歳で8,749人の非糖尿病患者(平均56歳から58歳、BMI26.5~29.3)

E:スタチンの使用あり2,142人(シンバスタチン65.9%、アトルバスタチン18.1%、ロスバスタチン、8.6%、フルバスタチン3.8%、ロバスタチン2.3%、プラバスタチン1.3%)
C:スタチンの使用なし
O:糖尿病発症(HbA1c ≥6.5%もしくは糖尿病治療薬の開始)
追跡期間5.9年
調整した交絡因子:年齢、BMI,身体活動、喫煙、アルコール、糖尿病家族歴、β遮断薬、利尿薬

スタチン使用は糖尿病リスク増加に関連
・ハザード比1.46 [95%信頼区間1.22~1.74]
・主な機序として、インスリン感受性及びインスリン分泌の減少に起因する可能性が示唆された。

■DPP4阻害薬と心不全リスク■
Zannad F, Cannon CP, Cushman WC.et.al. Heart failure and mortality outcomes in patients with type 2 diabetes taking alogliptin versus placebo in EXAMINE: a multicentre, randomised, double-blind trial. Lancet. 2015 Mar 9. pii: S0140-6736(14)62225-X. PMID: 25765696
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25765696
背景と研究デザイン:EXAMINE試験は、急性冠症候群を発症した2型糖尿病患者における、主要有害心イベント発症率を検討した2重盲検ランダム化比較非劣性試験でDPP-4阻害薬アログリプチンはプラセボに対して非劣性を示した。しかし他の研究においてDPP4阻害薬と心不全による入院リスクの懸念が浮上した。EXAMINE試験のデータを用いて心不全リスクを検討した。

P:急性冠症候群を発症した(15日から90日前)2型糖尿病患者5380人
E:アログリプチン2701人
C:プラセボ2679人
O:主要心血管イベント(総死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症にための血行再建術、心不全による入院)
事後解析:心血管死亡、心不全による入院
追跡期間:中央値533日 (IQR 280-751)

・主要心血管イベントはE群433 (16•0%)、C群441 (16•5%)
▶ハザード比0.98[95% CI 0.86-1.12]
・心不全による入院はE群85 (3•1%)、C群79 (2•9%)
▶ハザード比1.07[95% CI 0.79-1.46]
事後解析においても明確な差はでず。
・ハザード比1.00, [95% CI 0.82-1.21]

■葉酸とACE阻害薬の併用効果■
Huo Y, Li J, Qin X.et.al. Efficacy of Folic Acid Therapy in Primary Prevention of Stroke Among Adults With Hypertension in China: The CSPPT Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015 Mar 15. [Epub ahead of print]PMID: 25771069
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25771069
背景と研究デザイン:脳卒中の一次予防に対する葉酸の有効性は不明である。中国における高血圧患者に対してエナラプリルと葉酸の併用が脳卒中にどの程度効果があるのかを検討したランダム化比較試験。

P:脳卒中や心筋梗塞の既往のない高血圧患者20702人(男性41%、平均60歳、BMI25、非喫煙69%)
E:葉酸0.8mgとエナラプリル10mgの合剤を投与10 348人
C:エナラプリル10mgを投与10 354人
O:脳卒中初発(くも膜下出血や潜在性脳卒中silent strokeを除く)

・盲検化:2重盲検
・ランダム化:されている。なお、葉酸濃度に影響を与える可能性のあると考えられているメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の遺伝多形で層別化を行っている。(MTHFR)C677T多型(CC,CT,TT遺伝子型)
・サンプル計算:αエラー5%、パワー80%で20337人(症例数は十分である)
・統計解析:intention-to-treat解析
・追跡期間:中央値4.5年(解析組み入れは100%、ロストは67例で追跡率99.7%)

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
脳卒中 282(2.7%) 355(3.4%) 0.79[0.68~0.93]
脳梗塞(※) 223(2.2%) 292(2.8) 0.76[0.64~0.91]
脳出血 58(0.56%) 62(0.60%) 0.93[0.65~1.34]
総死亡 302(2.9%) 320(3.1%) 0.94[0.81~1.10]

(※)セカンダリアウトカム

かなり大規模な研究であり、脳卒中にわずかながら有意な差が出ているが、巨大なサンプルの影響もある。しかしながら研究自体の内的妥当性は決して低くなく、葉酸自体のコストや安全性を踏まえれば、ACE阻害薬との併用投与により得られるベネフィットはやや注目に値する。


■13価肺炎球菌ワクチンの有効性■
Bonten MJ, Huijts SM, Bolkenbaas M.et.al.Polysaccharide Conjugate Vaccine against Pneumococcal Pneumonia in Adults. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25. PMID: 25785969
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25785969
背景と研究デザイン:13 価多糖体結合肺炎球菌ワクチン(PCV13)は乳児の肺炎球菌感染症に対する予防効果を示しているが、65 歳以上の成人における肺炎球菌性市中肺炎に対する有効性については不明である。65歳以上の成人におけるPCV13の有効性を検討したランダム化比較試験。

P: 65 歳以上の成人 84496人
E: 13 価多糖体結合ワクチン接種
C:プラセボワクチン接種
O:ワクチン型株による感染症の初発(肺炎球菌性市中肺炎,非菌血症性・非侵襲性肺炎球菌性市中肺炎,侵襲性肺炎球菌感染症)

盲検化:2重盲検
統計解析;per-protocol及び修正intention-to-treat
アウトカム E群 C群 ワクチン有効率
ワクチン型株感染症の初発 49人 90人 45.6%[95.2%CI 21.8~62.5]
非菌血症性・非侵襲性市中肺炎 33人 60人 45.0%[95.2% CI 14.2~65.3]
侵襲性肺炎球菌感染症 7人 28人 75.0%[95% CI 41.4~90.8]
市中肺炎 747人 787人 5.1%[95% CI -5.1~14.2]


市中肺炎そのものを減らすわけではないという衝撃の結果。

■市中MRSAを考慮した皮膚感染症抗菌薬レジメン■
Miller LG, Daum RS, Creech CB.et.al.Clindamycin versus Trimethoprim–Sulfamethoxazole for Uncomplicated Skin Infections .N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1093-103. PMID: 25785967
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25785967
背景と研究デザイン:市中型MRSAを考慮した皮膚・軟部組織感染症にための抗菌薬レジメンについては不明確な部分も多い。蜂窩織炎に対する抗菌薬の有効性を検討したランダム化比較試験。

P:蜂窩織炎、あるいは 5 cm(低年齢の小児ではより小さく設定)を超える膿瘍、もしくはその両方を有する単純性皮膚感染症を発症した外来患者524人(29.6%が小児、蜂窩織炎280人、膿瘍160人、膿瘍、蜂窩織炎混合82人、ブドウ球菌の検出は41.4%で、そのうち77%がMRSA)
E:膿瘍切開を行い、リンダマイシンを 10 日間投与264人
C:膿瘍切開を行い、トリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を 10 日間投与260人
O: 治療終了後 から7~10 日における臨床的治癒

統計解析:intention-to-treat
盲検化:患者及び医師に、治療割付けと微生物学的検査の結果をマスク

ITT解析
アウトカム E群 C群 差[95%信頼区間]
臨床的治癒 80.3% 77.7% -2.6%[-10.2 ~4.9]

上記のとおり、有効性に明確な差を認めない。なお、有害事象は両群 で同程度であった。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-
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■リバーロキサバンとカルバマゼピンの相互作用■
Risselada AJ, Visser MJ, van Roon E.et.al. [Pulmonary embolism due to interaction between rivaroxaban and carbamazepine]. Ned Tijdschr Geneeskd. 2013;157(52):A6568. PMID: 24382036
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24382036

新規抗凝固薬の利点としては抗凝固効果の日常的なモニタリングが少なくてすむということである。膝関節形成術を受けた53歳の男性。息切れや胸痛を訴え救急診療部を受診。症状はダルテパリン5000 IUよりリバーロキサバン10mgへ切り替え後発症。肺塞栓症と診断。当該患者は癲癇治療にてカルバマゼピン600mgを併用中であった。カルバマゼピンがCYP3A4を誘導しリバローキサバンのクリアランス増加のメカニズムによる肺塞栓症発症が疑われた。(なお本邦添付文書では併用注意に該当。フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウなどが該当しうる)

■リバロキサバン過敏症(アレルギー)■
Yates J, Choudhry M, Keys G.et, A case report describing a suspected rivaroxaban hypersensitivity reaction in a surgical patient. J Clin Pharm Ther. 2013 Apr;38(2):159-61. PMID: 23167549
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23167549
膝関節置換術をうけた57歳男性(アレルギー既往あり)。術後リバーロキサバン10mg 2週間の治療を受けた。術後7日目に再入院を必要とするアレルギー症状を発症した。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-
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今回のテーマは薬剤と市中肺炎リスクでした。市中肺炎と言うところがポイントで、いわゆる薬剤による間質性肺炎とは異なる感染症との関連でした。ちなみにリバーロキサバンと間質性肺炎は記憶に新しいところです。
http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/310_2.pdf

薬剤と市中肺炎の関連は交絡による影響や結果-原因の可能性もあり(PPIでは多くの研究が示唆していて因果関係の可能性が高いかもしれません)、薬剤ごとの詳細な検討も必要だと感じています。これをきっかけに個々の薬剤リスクも調べてみたいと思います。

リバーロキサバンは抗凝固効果について詳細なモニタリングが必要ないことをメリットとしていますが、薬剤相互作用によるクリアランスの増減は慎重なモニタリングが必要な印象です。基本的に有効性・安全性がワルファリンとほぼ同等(非劣性)であれば、そのモニタリングを慎重に行わなければいけない事実は変わりありません。特にCYP3A4が絡んでいますから、相互作用には十分に注意したい印象です。
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[JJCLIP]薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

スレッド
平成27年度第1回薬剤師のジャーナルクラブを以下の通り開催いたします。
開催日時:平成27年4月12日(日曜日)
■午後20時45分頃 仮配信
■午後21時00分頃 本配信
なお配信時間は90分を予定しております.

※ツイキャス配信は以下のURLより視聴できます。
http://twitcasting.tv/89089314

[症例20:葉酸を摂ると脳卒中を予防できるのでしょうか?]

本年度第1回目は、ランダム化比較試験をはじめからていねいに!をコンセプトに進めていきます。論文の読み方については以下を参照しておくと良いと思います!
http://syuichiao.blogspot.jp/2013/09/1.html

シナリオ作成は山本先生、司会進行は桑原先生です!

【仮想症例シナリオ】

あなたは, とある保険薬局に勤める新人薬剤師さんです.国家試験にも無事合格し, 4月から第一志望の薬局で働くことができて, 気分も季節通り晴れやかです.
新人研修を受けつつ, 店舗での基本業務もすぐに身についたあなたは, 他の新人薬剤師よりも一足早く服薬指導ができるようになりました.
すると, 初めて担当することになった, 60代の男性高血圧患者さんから, いきなり次のような質問を受けました.

「なぁなぁ, 葉酸のサプリメントを摂ると脳卒中とかが減ってがええんやって噂を聞いたんだけど, それって本当なのかな?」

(…わからない!)

すぐには返答できずに困ったあなた.
とりあえず次回までに調べておきますとその場をしのいだものの,
先輩薬剤師に聞いても納得できる返答が得られず, もやもやして焦りだけが募ります.

「そういえば, 学校の授業でEBMについての授業を受けた時に, PubMedを使って論文を調べるとよいって習ったよな…???」

学部時代に学んだことを思い出しながら, PubMedで自分で情報を得ようと悪戦苦闘するあなた.すると, 運良く次の論文を見つけることができたので, 早速, 見よう見まねで読んでみることにしました.

[文献タイトルと出典]
Huo Y1, Li J1, Qin X, Huang Y.et.al. Efficacy of Folic Acid Therapy in Primary Prevention of Stroke Among Adults With Hypertension in China: The CSPPT Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015 Mar 15. . [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25771069
PDF → 全文フリーで手に入りますが, あらかじめJAMAへの無料会員登録が必要です。

使用するワークシートは↓
http://2.bp.blogspot.com/-clIkBOVVGfk/UjW8olB-HiI/AAAAAAAAAIg/5UQ8DGNRZl0/s1600/RCT10%E5%88%86.png

[研究背景を探る!]

この研究は中国で行われたものですが、脳卒中は中国においても主要な死亡原因であり、世界的には死亡原因として、2番目に多いといわれています。脳卒中の77%が初発(再発ではなく)と言われており、死亡原因として重要な位置を占める脳卒中は、その一次予防が重要というわけです。脳卒中一次予防のための葉酸の効果は現時点では、そのデータに一貫性がなく、明確ではありません。

これまでの研究を見ると、心血管疾患2次予防のための葉酸の効果を検討した妥当性の高いランダム化比較試験においては有益な効果を示していません。しかしながら脳卒中においては、メタ分析などで有効性を示している研究もあります。

このことは葉酸の摂取が心血管疾患よりも、脳卒中の予防に効果的ではないのか、という仮説を導くわけです。過去の葉酸の研究ではいずれも一次アウトカムに脳卒中を設定したものはありませんでした。

この研究は中国における高血圧患者に対して、降圧薬に葉酸を加えることで、脳卒中リスクを低下させることができるのかを検討したランダム化比較試験です。

[参考までにこれまでのメタ分析では?]

葉酸の効果を検討したメタ分析を少してみましょう。

Yang HT, Lee M, Hong KS.et.al. Efficacy of folic acid supplementation in cardiovascular disease prevention: an updated meta-analysis of randomized controlled trials. Eur J Intern Med. 2012 Dec;23(8):745-54. PMID: 22884409
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22884409

この研究は、葉酸サプリメントの心血管疾患、冠動脈疾患、脳卒中に対する有効性を検討したランダム化比較試験のメタ分析です。26研究、58,804人が解析対象となりました。主な結果は以下の通りです。

・心血管疾患:相対危険0.98[95%信頼区間0.95~1.02]
・冠動脈疾患:相対危険1.03[95%信頼区間0.98~1.08]
・総死亡  :相対危険1.00[95%信頼区間0.96~1.04]
・脳卒中  :相対危険0.93[95%信頼区間0.86~1.00]

確かに、心血管疾患や冠動脈疾患、総死亡すら減らしませんが、脳卒中は僅かに減らすかもしれない可能性が示唆されていますね。
脳卒中がどのくらい減るのか、今回の論文はこのテーマの最新論文です!続きは配信の中で!

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