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地域医療の見え方  2015.Jul.29;1(28)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-妊娠中のパルボウイルス感染-

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[ポイント]
■伝染性紅斑はパルボウイルスによる感染症で妊娠初期に感染を起こすと胎児水腫や胎児死亡を引き起こす可能性が示唆されている。
■妊娠初期における胎児リスクは6%~7%と見積もられる。妊娠後期においてはそのリスクはかなり低いと考えられる。
■感染した妊婦から出生した新生児において、先天性異常は報告されていない。
■妊娠中の感染源は同居家族(特に自分の子供)からの感染が最多である。


[イントロダクション]
伝染性紅斑(Erythema infectiosum)は第5病(Fifth disease)とも呼ばれ、頬に出現する蝶翼状 の紅斑を特徴とし、小児を中心にしてみられる流行性発疹性疾患です。両頬がリンゴのように赤くなることから、一般的因はリンゴ病の病名で知られていることでしょうヒトパルボウイルスB19(human parvovirus B19:以下B19)によるウイルス性感染症です。感染症発生動向調査では、1987年、1992年、1997年、2001年とほぼ5年 ごとの流行周期で発生数の増加がみられています。

潜伏期間は10日~20日と考えられており、その後、頬に境界鮮明な紅い発疹、いわゆるリンゴ頬が出現し、手・足に発疹がみられることもあります。これらの発疹は通常、1週間程度で所室しますが、中には長引く症例もあるようです。

成人では関節痛・頭痛などが起こることもあり、関節炎症状により1~2日歩行困難な症例もあるようですが、ほとんどは合併症をおこすことなく自然に回復するといわれています。

頬に発疹が出現する7~10日くらい前のウイルス排泄量が最多であり、発疹が現れたときにはウイルス血症は終息しています。したがって発疹発現時はウイルス排泄がほとんどなく、感染力はほぼ消失していると考えられています。したがって、発疹が出ている人は感染源にならないと考えられています。通常は飛沫または接触感染であるが、ウイルス血症の時期に採取された輸血用血液による感染もあるようです。

伝染性紅斑は、健康な妊娠・出産のために注意したい感染症の一つです。パルボウイルスB19は胎盤を通過して胎児に感染を起こし、流産・死産や胎児の浮腫と貧血(胎児水腫)を起こすことが知られており、今回は妊娠中におけるパルボウイルス感染についてまとめていきたいと思います。

[妊娠中のパルボウイルス感染による胎児リスク①]
妊娠中のパルボウイルスB19感染症の臨床アウトカムについて調査されたデータが日本から報告されています。(※1)

この報告は1999年から2004年までに妊娠中にパルボウイルス感染が疑われた478人を前向きに解析したものです。478人のうち100人の感染が確認されました。前例が妊娠20週前の感染で、100人のうち51人は無症状であったと報告されています。最も一般的な感染源は同居中の子供、すなわち自分の子供から感染してしまうケース(65%)と報告されています。

この報告では妊娠20週前の感染で、胎児水腫や胎児死亡は7例と報告されています。(7人/100人:7%)

妊娠期間別の感染による胎児リスク(発生割合)をいかにまとめます。

妊娠期間 胎児リスク
4週未満 0%(0/5)
5~8週 13%(2/16)
9~12週 20%(2/10)
13~16週 7%(1/15)
17~20週 15%(2/13)
20週超 0%(0/39)


[妊娠中のパルボウイルス感染による胎児リスク②]
日本からの報告は100例と規模は小さいものでしたが、1000例を超える症例を検討した研究が報告されています。(※2)

この研究ではパルボウイルスに感染した1018例の妊娠女性が調査されました。妊娠期間全体を通して、胎児死亡は6.3% (64人/1018人) [95%信頼区間4.9~8.0]と報告されています。
胎児死亡について、妊娠20週前の感染では、64人/579人 (11.0%)となっており、胎児死亡は20週前のみで報告されています。
妊娠20週までにおいて、パルボウイルス感染は胎児死亡リスクに関連しているかもしれません。

[パルボウイルス感染と胎児死亡リスクの関連]

これまでの報告は症例集積検討でした。比較対照がないため、感染なしと比較した際にどの程度リスクが増加するのはよくわかりません。

母体のパルボウイルスB19感染症と胎児死亡、出生時体重、妊娠期間の長さの関連を検討した人口ベースの症例対照研究が報告されています。(※3)

この研究は、ノルウエーのコホートより胎児死亡をおこした女性281人を症例とし、胎児死亡を起こさず出生した女性957人を対照と設定しました。パルボウイルB19に対する抗体検査(IgM)より、感染症の有無を比較し、胎児死亡を検討しています。主な結果を以下にまとめます。

抗体検出
アウトカム 症例 対照 調整オッズ比[95%CI] 
胎児死亡 2人/281人(0.7%) 9人/957人(0.9%) 1.45 [0.31–6.78]


母体年齢で調整後のオッズ比は1.45でしたが、95%信頼区間の幅が広く、統計的には明確な関連を認めませんでした。症例対照研究で重要なポイントは対照群の暴露特性が原集団を反映しているかという点ですが、ノルウエーの大規模なコホートを用いているので、このあたりの妥当性については問題ないように思いますが、一つの研究で関連性がないとすることは難しい印象です。オッズは上昇傾向である点は軽視すべきではないでしょう。

[妊娠中のパルボウイルス感染と胎児リスク]
CDCのホームページには以下のような記載があります。(※4)
妊娠中の女性の約50%は、パルボウイルスB19に免疫があるといわれています。パルボウイルス感染を起こすと妊娠前期においては5%に胎児リスクを起こす可能性があるとされています。

また横浜市衛生研究所のホームページには(※5)
「妊娠前期の母親のパルボウイルスB19の感染による胎児死は、10%未満です。妊娠後期の母親のパルボウイルスB19の感染による胎児死は、もっと低い確率です。」と記載があります。
これまでの文献上のデータを見ても、妊娠前期における胎児リスクはおおよそ6%~7%と整理しておきます。20週以後についての報告は少ないです。感染源はやはり、自分の子供からという症例が多いようです。第2子出産時は注意が必要です。残念ながら伝染性紅斑に対するワクチンはありません。

なお、伝染性紅斑を発症した妊婦から出生し、B19感染が確認された新生児であっても、妊娠分 娩の経過が正常で、出生後の発育も正常であることが多いといわれています。さらに、生存児での先天異常は 知られていません。(※6)


[参考文献]
(※1) Chisaka H, Ito K, Niikura H.et.al. Clinical manifestations and outcomes of parvovirus B19 infection during pregnancy in Japan. Tohoku J Exp Med. 2006 Aug;209(4):277-83. PMID: 16864949
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16864949
(※2) Enders M, Weidner A, Zoellner I,et.al. Fetal morbidity and mortality after acute human parvovirus B19 infection in pregnancy: prospective evaluation of 1018 cases. Prenat Diagn. 2004 Jul;24(7):513-8. PMID: 15300741
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15300741
(※3) Sarfraz AA, Samuelsen SO, Bruu AL,et.al. Maternal human parvovirus B19 infection and the risk of fetal death and low birthweight: a case-control study within 35 940 pregnant women. BJOG. 2009 Oct;116(11):1492-8. PMID: 19769750
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19769750
(※4)CDC:Pregnancy and Fifth Disease
http://www.cdc.gov/parvovirusb19/pregnancy.html
(※5)横浜市衛生研究所 伝染性紅斑について
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/apple1.html
(※6) 国立感染症研究所 感染症の話 伝染性紅斑
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_23/k04_23.html




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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■マンモグラフィー実施率と乳がんの診断、乳癌死亡■
Harding C. Pompei F, Burmistrov D.et.al. Breast Cancer Screening, Incidence, and Mortality Across US Counties. JAMA Intern Med. 2015 Jul 6. [Epub ahead of print] PMID: 26147578
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26147578
背景と研究デザイン:マンモグラフィーによるスクリーニング率と乳がん発症率、乳癌死亡との関連を検討

P:40歳以上の女性で乳がんの診断を受けた53207年を10年追跡
E:マンモグラフィーによるスクリーニング率
O:乳癌発症、乳癌死亡

・スクリーニング率10%の上昇で乳がんの診断が16%[95%信頼区間13%~19%]上昇するが、乳癌死亡は変わらず。相対危険1.01[95%信頼区間0.96~1.06]
・特に2センチ以下の小さながんを見つけることが多く、2センチを超えるがんの発見率上昇はわずかであった。
スクリーニング率10%の上昇で小さながんの発見率は25%増加[95%信頼区間18%~32%]大きながんは7%の増加[95%信頼区間2%~12%]

■フェニレフリン点眼液の全身性有害事象■
Stavert B, McGuinness MB1, Harper CA.et.al. Cardiovascular Adverse Effects of Phenylephrine Eyedrops: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Ophthalmol. 2015 Jun 1;133(6):647-52. PMID: 25789577
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25789577
背景と研究デザイン:局所フェニレフリンは安全性に関する注意喚起があまり増されないにも関わらず、全身性有害事象の懸念がある。局所フェニレフリンの有害事象を検討したメタ分析

P:8つのランダム化比較試験に参加した916人
E:フェニレフリン点眼液2.5%、10%の使用
C:フェニレフリン点眼液の使用なし
O:血圧、心拍数の変化

・2.5%製剤では明確な変化は見られず。
・10%製剤では短期的に血圧や心拍数が上昇した。

・点眼後5~10分で血圧+15mmHg[95%信頼区間11.94~18.54]。20分以降では明確な差なし
・点眼後20~30分で心拍数4.48beat/min[95%信頼区間1.09~7.88]。60分以降は明確な差は無い

■心房細動と交通事故による障害リスク■
Lai HC, Chien WC, Chung CH.et.al. Atrial fibrillation, CHA2DS2-VASc score, antithrombotics and risk of traffic accidents: A population-based cohort study. Int J Cardiol. 2015 Jun 25;197:133-139. PMID: 26126057
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26126057
背景と研究デザイン:心房細動と交通事故リスク、抗凝固薬によるリスクへの影響を検討した台湾のコホート研究

P:台湾の国民健康保険データより40歳以上の心房細動患者と年齢、性別、併存疾患をマッチさせた心房指導のない患者。
E:心房細動あり
C:心房細動なし
O:交通事故

追跡期間:平均4.3年
交通事故による障害はE群 5.4/1000人年、C群4.9/1000人年でハザード比1.110[95%信頼区間1.013~1.572]とわずかに上昇。

なお抗凝固薬の使用でリスク低下(ハザード比0.576[95%CI 0.285-0.791]しかし、抗血小板剤では明確な差は無い(p=0.197)

■睡眠の質に対するマインドフル瞑想の効果■
Black DS, O'Reilly GA1, Olmstead R.et.al. Mindfulness meditation and improvement in sleep quality and daytime impairment among older adults with sleep disturbances: a randomized clinical trial.
JAMA Intern Med. 2015 Apr;175(4):494-501PMID: 25686304
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25686304
背景と研究デザイン:マインドフル瞑想(過去や未来にとらわれることなく今現在に集中するメンタルトレーニング。仏教をベースに宗教色を取り払った心身養生法で様々な瞑想プログラムが米国を中心に開発された)と睡眠障害への改善効果を検討したランダム化比較試験

P:ピッツバーグ睡眠質問票(レンジ:0~21)が5点を超える中等度の睡眠障害高齢者(平均66.3歳)49人
E:マインドフルネスを用いた瞑想プログラムの実施(週2時間、6週)24人
C:睡眠衛生に関する教育介入(週2時間、6週)25人
Oピッツバーグ睡眠質問票におけるスコア変化

統計解析ITT 解析組み入れ100%(ロスト6例:追跡率87.8%)
患者背景:ベースラインのピッツバーグ睡眠質問票の平均は同スコア
サンプルサイズ:各群24人

睡眠スコアはE群で10.2⇒7.4、C群で10.2⇒9.1へ改善。
平均差1.8[95%信頼区間0.6~2.9]

■精神科領域におけるマインドフル瞑想の効果■
Goyal M, Singh S, Sibinga EM.et.al. Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014 Mar;174(3):357-68. PMID: 24395196
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24395196
背景と研究デザイン:マインドフルネス瞑想と精神的ストレスへの影響を検討したメタ分析

P:47研究に参加した3515人
E:マインドフルネス瞑想の実施
C:瞑想の実施をしない。
O:不安、抑うつ、疼痛等の標準化平均差

不安:8週で0.38[0.12~0.64] 3~6か月で0.22[0.02~0.43]改善
抑うつ:8週で0.30[0.00~0.59]、3~6か月で0.23[0.05~0.42]改善

瞑想プログラムは心理的ストレスを軽減する可能性がある。

■起立性低血圧のリスク因子■
Gaxatte C, Faraj E, Lathuillerie O,et.al. Alcohol and psychotropic drugs: risk factors for orthostatic hypotension in elderly fallers. J Hum Hypertens. 2013 Sep 19. [Epub ahead of print] PMID: 24048292
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24048292
背景と研究デザイン:起立性低血圧のリスク因子を検討した研究

P:平均80.4歳の高齢者833人
E:リスク因子あり
C:リスク因子なし
O:起立性低血圧

各リスク因子は以下の通り
・SSRI オッズ比2.42[95%信頼区間1.56-3.75]
・SNRI オッズ比5.37[95%信頼区間 1.93-14.97]
・パーキンソン症候群 オッズ比2.54[95%信頼区間1.54-4.19]
・アルコール過量摂取 オッズ比2.17[95%信頼区間 1.32-3.56]
・Ca拮抗薬 オッズ比1.79[95%信頼区間1.16-2.7]

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■農薬中毒の疫学■
永美 大志 他 農薬中毒臨床例全国調査 2010~12年度 日本農村医学会雑誌 Vol. 64 (2015) No. 1 p. 14-22
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/64/1/64_14/_article/-char/ja/

農薬中毒137例の症例集積研究。70歳代 (22%) が最も多く、男女比はほぼ同等。自殺が71%誤飲誤食 13%, 散布中等 12%。原因農薬はアミノ酸系除草剤 29% 有機リン系殺虫剤 (25%), ビピリジリウム系除草剤 8%。成分別ではリホサート 38例、スミチオン 18例, パラコート 12例。死亡例23例のうち8例がパラコートによるものであり, 3例がスミチオン。 パラコートは, 致死率 (80%)であった。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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リンゴ病が流行しているようです。リンゴ病の原因ウイルスであるパルボウイルスは妊娠中に感染すると胎児への影響が懸念される感染症で注意が必要です。
マインドフルネス瞑想のエビデンスが複数報告されていることに驚きました。マインドフルネスに関する学会もあるようです。
http://mindfulness.jp.net/
今後のエビデンスに注目しながら、その有用性を検討したいと思います。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jul.22;1(27)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-PPIと低マグネシウム血症-

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[ポイント]
■PPIの使用と低マグネシウム血症について、メタ分析を含む複数の研究でわずかながら関連が認められる。
■50歳以上で利尿薬を併用しており、1年以上漫然と投与されているPPIは低マグネシウム血症リスクが高い
■マグネシウム以外にもカルシウムやカリウムなど複合的な電解質異常を起こしている可能性が高い。
■H2受容体拮抗薬は代替え候補となるが、近年報告された前向きコホート研究ではH2受容体拮抗薬にも低マグネシウム血症との関連が示唆されている。

当記事は「Blogger版 地域医療の見え方」
プロトンポンプ阻害薬と低マグネシウム血症
http://syuichiao.blogspot.jp/2014/06/blog-post.html
のupdateです。

[イントロダクション]
マグネシウムは体内に約25g存在し、その半分が骨に、45%が軟部組織に存在し、細胞外液には約1%存在すると言われています。血清マグネシウムの正常値は1.8~2.6mg/dl(1.4〜2.1mEq/L)といわれており、低マグネシウム血症とは1.8mg/dl(1.4mEq/L)以下の状態を指します。

低マグネシウム血症には高頻度に低カリウム血症、低カルシウム血症を合併します。細胞内マグネシウムはカリウムチャネル抑制因子なのでマグネシウム欠乏があるとカリウムチャネルの抑制が解除され、カリウム排泄が亢進し、また低マグネシウムはPTH(副甲状腺ホルモン)分泌抑制を引き起こし、低カルシウム血症をもたらすことがその理由です。

アルコールの多飲と低マグネシウム血症は有名です。特に多量の飲酒習慣のある人はマグネシウム摂取の不足やアルコールによる腎尿細管障害によりマグネシウムが尿から喪失し、低マグネシウム血症が生じやすいと言われています。合わせて低カリウムや、低カルシウムが生じることが多いため、このようなケースではまずはマグネシウムの補正が基本となります。


[PPIと低マグネシウム血症]
プロトンポンプ阻害剤(PPI)誘発性の低マグネシウム血症は、2006年から報告されるようになったといいます。2011年に米国食品医薬品局(FDA)は、PPIの長期使用は、低マグネシウム血症を誘導する可能性があると通知しました。(※1)

血清中マグネシウム濃度の低下は,筋痙縮(テタニー)や不規則な心拍(不整脈),痙攣等の重篤な有害事象が生じることがありますが、これらの症状が患者に必ず見られる訳ではありません。PPI誘発性低マグネシウム血症が疑われた際は、マグネシウム補充やPPIの服用中止が基本的な対処となるようです。

FDAはこの通知の中でPPIを長期服用することが予測される患者、およびPPIをジゴキシン、利尿薬(ループ利尿薬及びチアジド系利尿薬)または低マグネシウム血症を引き起こす可能性がある薬剤(アミノグリコシド、アンホテリシン、シスプラチン、シクロスポリン等)と併用する患者では、血清中マグネシウム濃度に留意すべきとしています。このレポートにも記載がある通りPPI投与にともなう低マグネシウム血症の臨床的特徴として以下の2点が重要かと思います。

①低マグネシウム血症は、PPI を 3 カ月以上服用中の成人患者で報告されているが、大半の症例は1年以上投与後に発症している。これらの症例の約 4 分の 1 は、マグネシウム補充に加え PPIの服用中止を必要とした。

②PPI服用中止後にマグネシウム濃度が正常化するのに要した期間の中央値は 1週間であった。PPI 服用再開後に低マグネシウム血症が再発した期間の中央値は 2 週間であった。

またその後の報告では、低マグネシウム血症誘発リスクとしてのPPI投与期間や患者背景は概ね以下のようにレビューされています。(※2)

▶患者背景:36症例中、女性24例(66.7%)、平均67.4±1.9歳(30〜83歳)
▶低マグネシウム血症誘発までのPPIの投与期間は中央値で5.5年(14日から13年とワイドレンジ)
▶低マグネシウム血症はPPIの中止後4日程度で回復し、PPI再開後4日程度で再発につながる可能性がある
▶H2ブロッカーは代替薬剤として考慮すべき薬剤

[PPI誘発性低マグネシウム血症の臨床像]
具体的な臨床上は以下の通りです。

薬剤名 臨床所見 血液・尿中検査所見
オメプラゾール 下痢、嘔吐、幻覚、筋肉の興奮性 低Mg血症、低Ca血症、低P血症、尿中のMgとCaのレベル低下
オメプラゾール 筋肉痙攣、感覚異常、心房粗動、心電図異常 低Mg血症、低Ca血症、低K血症、PTHは基準内
オメプラゾール 手根足と体幹の痙攣 PTHの増加なく、低Mg血症、低Ca血症
オメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール 心電図異常(QT間隔延長、ST低下、Q波) PTHの増加なく、低Mg血症、低Ca血症、低K血症、尿中Mg・Ca低下、尿中K上昇
オメプラゾール 大発作 低Mg血症、低Ca血症、尿中Mg低下
エソメプラゾール 四肢や腹部の無気力、筋肉のけいれん 低Mg血症、低Ca血症、低K血症、血清PTHレベル低下、尿中Mg低下
オメプラゾール 感覚異常、しびれ、手足の脱力 低Mg血症、低Ca血症、ビタミンDレベル低下

(プロトンポンプ阻害剤に関連する低マグネシウム血症患者の臨床症状と検査所見:文献(※3)より作成)

このようにマグネシウムだけでなく、カリウムやカルシウムなどの電解質も異常をきたしていることが臨床的にも確認できます。

[症例報告]
FDAから通知がでた2011年以降も症例報告はいくつか散見されます。

①PPIによる低マグネシウム血症と上室性頻脈

2014年にはランソプラゾールによる低マグネシウム血症によると考えられた上室性頻拍で入院した73歳女性の症例が報告されています。(※4)

マグネシウム補正後、不整脈は改善し、PPI中止後は、マグネシウムの経口投与をすることなく、血清マグネシウムは基準値内であったとしています。そして不整脈や体調不良を訴える患者においてPPIを長期で服用しているケースでは血清マグネシウムをチェックする必要があると強調しています。

②本邦におけるPPI長期投与と低Mg血症
長期的なラベプラゾール使用に伴い誘発されたと考えられる低マグネシウム血症の日本での例は2012年に報告されています。(※5)

吐き気、両足首の関節炎、四肢の振戦で入院した64歳の男性です。5年のラベプラゾール(10mg/日)の服用歴があり、血液検査では重度の低マグネシウム・低カルシウム・低カリウム血症を呈していました。

▶マグネシウム(0.2 mg/dL), ▶カルシウム(5.8 mg/dL) ▶カリウム(2.3 mEq/L)
アルコール多飲や喫煙は無く、併用薬としてはシルニジピン、アトルバスタチン、メコバラミン、 リマプロスト、レバミピド、セレコキシブ、ザルトプロフェンでした。

入院時、中等度の浮腫を認め血圧161/102 mm Hg,(85 beats per minute) 37.4℃でした。
ラベプラゾールを中止し、マグネシウム、カルシウム、カリウムの電解質の是正をすると7日後には状態が安定し、症状が再発することなく、改善しました。

③副甲状腺機能低下患者におけるPPI誘発性低マグネシウム血症

副甲状腺の機能低下をきたしている患者において、プロトンポンプ阻害剤誘発性低マグネシウム血症が示唆された40歳の甲状腺がん女性の症例が報告されています。(※6)

分化型甲状腺癌により甲状腺全摘術を施行した40歳女性において、当初術後24時間の経過は良好でした。なお副甲状腺は保存的に治療されていました。その後、カルシトリオールとカルシウムの補充療法が開始されています。(甲状腺全摘出後には副甲状腺機能低下をきたし,カルシウム補充療法が必要となることが多い)

2日後の午後に大量嘔吐、心窩部痛。内視鏡にて消化性潰瘍が確認され、エソメプラゾールの静注が開始されています。その後テタニーを発現しました。カルシウムを最大量投与しても、テタニーは続きました。この時点で血清マグネシウムが低いことが確認されています。エソメプラゾールの中止で症状は改善しました。

[PPIと低マグネシウム血症の関連(症例対照研究①)]
実際のところ、PPIの使用と低マグネシウム血症との因果関係は強いものなのでしょうか。コホート内症例対照研究が報告されていました。(※7)

この報告は入院時の低マグネシウム血症が、PPIの院外使用に関連しているかどうかを検討したものです。入院時血清マグネシウムが<1.4 mEq/L以下の低マグネシウム血症患者402例(平均70歳、男性40%)をケースとして、また年齢、性別をマッチさせた血清マグネシウム正常患者(1.4-2.0 mEq/L)402例をコントロールとして、院内記録に基づく外来でのPPI使用の有無を検討しています。

交絡はCharlson-Deyo comorbidity index、糖尿病、利尿薬の使用、推定糸球体濾過量、および胃食道逆流等が考慮されています。その結果、PPIの院外使用と入院時低マグネシウム血症に明確な関連性は認めませんでした。調整オッズ比0.82[95%信頼区間0.61-1.11]

入院コホート内症例対照研究であり広範囲な外来患者を対象としていないため解釈は限定的ですが、入院時低マグネシウム血症は外来におけるPPI使用と関連はあまり強くないという結果でした。外来において制酸剤等に含まれるマグネシウム製剤を使用しているケースも多く、こういった薬剤の影響がリスクを過小評価している可能性も考えられます。

[PPIと低マグネシウム血症の関連(症例対照研究②)]
文献(※7)では一般人口を対象としたコホートからの研究ではありませんでしたが、Population-Basedの症例対照研究が2014年に報告されています。(※8)

この研究は66歳以上で低マグネシウム血症により入院した366人(ケース)と、年齢、性別、腎臓病でマッチングした1464人(コントロール)を比較し、PPIの使用と低マグネシウム血症による入院との関連を検討しました。なおPPIの使用は入院日より91日以内、90日から180日、181日から365日と設定されています。

その結果、90日以内のPPIの使用と低マグネシウム血症による入院にはわずかながら関連が認められています。調整オッズ比1.43[95%信頼区間 1.06~1.93]。特に利尿剤を使用している患者では関連がやや強く示唆されており、逆に利尿剤の使用が無い患者では関連は認められず、PPIの使用と低マグネシウム血症のリスクファクターとして利尿剤の併用が示唆されます。

・利尿剤あり:調整オッズ比1.73[95%信頼区間1.11–2.70]
・利尿剤なし:調整オッズ比1.25[95%信頼区間0.81–1.91]

91日~180日、181日~365日での使用、またH2受容体拮抗薬では関連は認めませんでした。
入院コホートでは明確な関連は認めませんでしたが、一般人口を対象とした研究ではわずかながら有意な関連が示唆されています。

[PPIと低マグネシウム血症の関連(システマテックレビュー)]
PPIと低マグネシウム血症に関して複数の文献を俯瞰してみましょう。幸いなことに2015年にはシステマテックレビューが報告されています。(※9)

このレビューでは60のレポートが対象となっています。そのうち45報が個人の症例報告(50歳~80歳の64人)、14報が症例対照研究、1報がFDAのレポートとなっています。

症例対照研究14報のうちPPIの使用と低マグネシウム血症との関連が認められたのは10報となっており、利尿薬の併用でより顕著な関連が認められた報告が2報ありました。

患者の特徴として、50歳以上、PPIの1年以上の使用が挙げられ、チアジドやループ利尿薬、飲酒などの併用がリスクファクターに挙げられています。低カルシウム血症、低カリウム血症など複合的な電解質異常を伴う事も特徴であり、H2受容体遮断薬では明確な関連が認められない点もこれまでの示唆と一致しています。

[PPIと低マグネシウム血症の関連(メタ分析)]
PPIと低マグネシウム、症例対照研究や症例報告を俯瞰すると、わずかながら関連がありそうです。さらにメタ分析が報告されています(※10)

この研究は、9つの観察研究(コホート研究3研究、横断研究5研究、症例対照研究1研究)のメタ分析です。全体で109,798人が解析対象となっています。低マグネシウム血症を有する患者ではPPIの使用が1.4倍多いという結果になっています。相対危険1.43 [95%信頼区間1.08-1.88]

[PPIと低マグネシウム血症の関連(コホート研究)]

新たに前向きコホート研究が報告されています。(※11)
この研究はオランダロッテルダム在住の9,818人の一般人口を対象としています。PPI使用者、H2受容体拮抗薬使用者、薬剤の使用なしが比較され、血清マグネシウムが1.44 mEq/L以下の低マグネシウム血症が検討されました。交絡因子として、年齢、性別、BMI、腎機能、併存疾患、アルコールや、利尿薬が考慮されています。

その結果、PPIの使用は、薬剤使用なしと比較して有意に低マグネシウム血症と関連しました。
・オッズ比2.00[95%信頼区間1.36-2.93]
ループ利尿薬使用者ではさらなるリスク上昇が示唆されています
・オッズ比7.22[95%信頼区間1.69-30.83]
長期間使用するとより関連が強まる可能性が示唆されています。
・182~2,618日の使用; オッズ比2.99[95%信頼区間1.73-5.15]

この研究ではH2受容体遮断薬と低マグネシウム血症の関連が認められていますが、利尿薬との交互作用は認めませんでした。オッズ比2.00[95%信頼区間1.08~3.72]

[PPIと低マグネシウム血症をどう考える?]

プロトンポンプ誘発性の低マグネシウム血症についてポイントを整理していきます。

①低マグネシウム血症を引き起こした症例の多くは50歳以上で、PPIの使用が1年以上と長期間投与されている。
②低マグネシウム以外にも低カリウム、低カルシウム血症をきたしており、これら電解質の是正が必要であるとともにPPIは中止すべきである。
③PPI再開に伴う低マグネシウム血症再発リスクは概ね2週間前後である。
④臨床症状は嘔吐、痙攣、不整脈、しびれなどの感覚異常で、このような症状が見られた場合は、PPIの投与有無を確認すべきである。特に利尿剤(ループ利尿薬)やジゴキシンなどを併用している場合には十分注意する。
⑤マグネシウム含有製剤の併用がリスクの過小評価をもたらしている可能性がある。
⑥H2受容体拮抗薬は代替え薬剤となりうるが、最新のコホート研究ではやはり低マグネシウム血症との関連が示唆されており、いずれにせよ漫然投与は避けるべきである。

[参考文献]
(※1) FDA Drug Safety Communication: Low magnesium levels can be associated with long-term use of Proton Pump Inhibitor drugs (PPIs)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm245011.htm
(※2) Hess MW1, Hoenderop JG, Bindels RJ.et.al. Systematic review: hypomagnesaemia induced by proton pump inhibition.Aliment Pharmacol Ther. 2012 Sep;36(5):405-13PMID: 22762246
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22762246
(※3)Florentin M, Elisaf MS. Proton pump inhibitor-induced hypomagnesemia: A new challenge.
World J Nephrol. 2012 Dec 6;1(6):151-4. PMID: 24175253
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24175253
(※4)Krupa LZ, Fellows IW.Lansoprazole-induced hypomagnesaemia.BMJ Case Rep. 2014 Jan 10;2014PMID: 24414180
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24414180
(※5) Matsuyama J, Tsuji K, Doyama H.et.al. Hypomagnesemia associated with a proton pump inhibitor.Intern Med. 2012;51(16):2231-4PMID: 22892510
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22892510
(※6) Swaminathan K. Proton pump inhibitor-induced hypomagnesemic hypoparathyroidism. Indian J Pharmacol. 2015 May-Jun;47(3):330-1. PMID: 26069375
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26069375
(※7) Koulouridis I, Alfayez M, Tighiouart H.et.al. Out-of-hospital use of proton pump inhibitors and hypomagnesemia at hospital admission: a nested case-control study.
Am J Kidney Dis. 2013 Oct;62(4):730-7. PMID: 2366454
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23664547
(※8) Zipursky J, Macdonald EM, Hollands S.et.al. Proton pump inhibitors and hospitalization with hypomagnesemia: a population-based case-control study. PLoS Med. 2014 Sep 30;11(9):e1001736. PMID: 25268962
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25268962
(※9)Janett S, Camozzi P, Peeters GG.et.al. Hypomagnesemia Induced by Long-Term Treatment with Proton-Pump Inhibitors. Gastroenterol Res Pract. 2015;2015:951768. PMID: 26064102
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26064102
(※10) Cheungpasitporn W, Thongprayoon C, Kittanamongkolchai W.et.al. Proton pump inhibitors linked to hypomagnesemia: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Ren Fail. 2015 Jun 25:1-5. [Epub ahead of print] PMID: 26108134
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26108134
(※11) Brenda C.T. Kieboom,et.al. Proton Pump Inhibitors and Hypomagnesemia in the General Population: A Population-Based Cohort Study. Am J Kidney Dis. Published Online: June 26, 2015[原稿執筆時Pubmed未収載]
http://www.ajkd.org/article/S0272-6386(15)00836-7/abstract

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■DPP4阻害薬と心不全リスク■
Fadini GP, Avogaro A, Degli Esposti L.et.al. Risk of hospitalization for heart failure in patients with type 2 diabetes newly treated with DPP-4 inhibitors or other oral glucose-lowering medications: a retrospective registry study on 127,555 patients from the Nationwide OsMed Health-DB Database. Eur Heart J. 2015 Jun 25. pii: ehv301. [Epub ahead of print] PMID: 26112890
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26112890
背景と研究デザイン:一部の経口糖尿病薬では心不全リスクが示唆されている。イタリア16地域の32ヘルスサービスのデータより、DPP4阻害薬、SU剤、チアゾリジン系薬剤と心不全の関連を検討したコホート研究。

P:2年間の研究受け入れ期間中、経口糖尿病薬を使用していた2型糖尿病患者127555人
E:DPP4阻害薬(14.3%)、チアゾリジン(13.2%)の使用(単独もしくはメトホルミンの併用)
C:SU剤(72.5%)
O:治療から6か月後の心不全による入院
調整した交絡因子:年齢、性別、チャールソン指数、併用薬剤、心血管イベント既往
追跡期間:平均2.6年

DPP4阻害薬はSU剤に比べて心不全による入院リスク低下と関連
・ハザード比0.78[95%信頼区間0.62~0.97] P = 0.026
傾向スコアマッチングもリスク低下(解析対象39465人)
・ハザード比0.70[95%信頼区間0.52~0.94] P = 0.018

非常に大規模な観察研究では、DPP-4阻害薬の使用は、スルホニル尿素と比較した場合、心不全による入院リスク低下と関連。

■レタス種子油の鎮静効果■
Yakoot M, Helmy S, Fawal K. Pilot study of the efficacy and safety of lettuce seed oil in patients with sleep disorders. Int J Gen Med. 2011;4:451-6. PMID: 21731897
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21731897
背景と研究デザイン:レタス(ガーデンレタス)の種子は古くから睡眠導入のための民間療法として用いられており、マウスモデルにおいて有意な鎮静、鎮痛、および抗炎症活性を有することが見出されている。Lactuca sativaすなわちレタスの種子油の催眠効果を検討したランダム化比較試験(パイロットスタディ)

P:不安症のあるなしに関わらず、不眠症を有する60人
E:レタス(L. sativa)種子油1000mgの投与(30人、平均62.5歳)
C:プラセボの投与(30人、平均63.6歳)
O:modified State-Trait Anxiety Inventory(5段階評価の質問20項目からなる睡眠困難度スコア)、Sleep rating scale scores(睡眠困難尺度10項目のアンケート)

注意!「Double-blinding was not possible in this pilot study because the baseline examination, supply of medication, and final assessment were all carried out by the same investigator at each clinic」

その結、果副作用に明確な差は見られず、modified State-Trait Anxiety Inventory と the Sleep rating scale scoresはいずれもE群で有意に改善した。(P < 0.05).

■妊娠中のパルボウイルス感染■
Sarfraz AA, Samuelsen SO, Bruu AL.et.al. Maternal human parvovirus B19 infection and the risk of fetal death and low birthweight: a case-control study within 35 940 pregnant women. BJOG. 2009 Oct;116(11):1492-8. PMID: 19769750
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19769750
背景と研究デザイン:母体のパルボウイルスB19感染症と胎児死亡、出生時体重、妊娠期間の長さの関連を検討した人口ベースの症例対照研究。

P:ノルウエーのコホートより
(症例)胎児死亡をおこした女性281人
(対照)胎児死亡を起こさず出生した女性957人
E:パルボウイルスB19 感染あり(パルボウイルスB19に対する抗体あり)
C:パルボウイルスB19感染なし(パルボウイルスB19に対する抗体なし)
O:胎児死亡

パルボウイルスB19(IgM)抗体が検出されたのは、
・症例群:2人/281人(0.7%)、対照群:9人/957人(0.9%)
・調整オッズ比:1.45 [95%信頼区間0.31–6.78](母体年齢で調整)
明確な関連を認めず。

※補足※
パルボウイルスB19感染症を発症した妊娠女性1018人の前向き観察研究によれば、妊娠全体を通して、胎児死亡は6.3%[95%信頼区間4.9~8.0]、妊娠20週以前での感染では11%、20週以後では0.6%と報告されている。
Enders M.et.al. Fetal morbidity and mortality after acute human parvovirus B19 infection in pregnancy: prospective evaluation of 1018 cases. Prenat Diagn. 2004 Jul;24(7):513-8. PMID: 15300741
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15300741

妊娠中パルボウイルスに感染した100人中51例で無症状であることが報告されている。なお胎児死亡や、胎児水腫の有害事象発生率は7%(7/100)で、全例で妊娠20週前におけるB19感染であった。
Chisaka H.et.al. Clinical manifestations and outcomes of parvovirus B19 infection during pregnancy in Japan. Tohoku J Exp Med. 2006 Aug;209(4):277-83. PMID: 16864949
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16864949

■牛車腎気丸と抗癌剤による神経障害■
Oki E, Emi Y, Kojima H.et.al. Preventive effect of Goshajinkigan on peripheral neurotoxicity of FOLFOX therapy (GENIUS trial): a placebo-controlled, double-blind, randomized phase III study. Int J Clin Oncol. 2015 Jan 28. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25627820
背景と研究デザイン:オキサリプラチンの有害事象として末梢神経毒性は高頻度で起こり得る。予防にカルシウム、マグネシウムの注射が行われるが、近年の3相試験で有用性は示されなかった。(PMID: 24297951)結腸直腸癌患者において、牛車腎気丸の末梢神経障害に対する有用性を検討した2重盲検ランダム化比較試験

P: フルオロウラシル、ロイコボリン、およびオキサリプラチンによる化学療法(mFOLFOX6)を受けている大腸がん患者182人
E:牛車腎気丸7.5mg(7.5g?)89人
C:プラセボ93人
O:グレード2以上の神経障害

神経障害発症はE群で50.6%、C群で31.2%と、E群で1.9倍多い
ハザード比1.908; p = 0.007)

漢方の作用機序はしばしば注目されるが実臨床での実効性はあまり明確ではない。フリーアクセスは抄録のみ。注意すべきは患者背景だろうか。310例のサンプルサイズで計画された顕幽だが、解析されたのは182人となっている。これをもってして効果なしと切り捨てることもまた、難しいかもしれない。

■風邪時の入浴、小児科医の判断■
Okayama M, Igarashi M, Ohno S.et.al. Japanese paediatricians' judgement of the appropriateness of bathing for children with colds. Fam Pract. 2000 Aug;17(4):334-6. PMID: 10934183
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10934183
背景と研究デザイン:日本の小児科医が風邪の際に子供を入浴させるべきかその意思決定を調査した横断研究

P:日本小児科学会所属の486人の小児科医
O:2~4歳の小児における風邪に対して、入浴を許可するかどうか(許可の条件)

回答を得られたのは269(55%)
・無条件で入浴を許可するが5%
・熱が無ければ許可するが72%
・体調がひどくなければが27%
・発症から2~3日経過したらが19%
・入浴を許可しないが12%(そのうち29%が根拠を提示せず)

■指先損傷に対する抗菌薬の予防的投与■
Rubin G, Orbach H, Rinott M.et.al. The use of prophylactic antibiotics in treatment of fingertip amputation: a randomized prospective trial. Am J Emerg Med. 2015 May;33(5):645-7. PMID: 25682579
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25682579
背景と研究デザイン:指先の損傷は、ごく一般的な損傷であるが、抗菌薬の予防的投与が必要かは議論の余地がある。骨露出を認める外科的処置が必要な指先損傷を起こした人を対象に予防的抗菌薬の有用性を検討したランダム化比較試験

P:外科的処置が必要な指先損傷患者
E:予防的抗菌薬あり(セファゾリン1g 3日間)
C:予防的抗菌薬なし
O:10日以内の感染症発症

年齢、手術期間、損傷の状態、手術の種類を一致させた。その結果、両群に明確な差はない。

※サンプルが少ない。盲検化されていない(抄録に記載なし)、などの問題あり。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■スキニージーンズによる横紋筋融解症■
Wai K, Thompson PD, Kimber TE.et.al. Fashion victim: rhabdomyolysis and bilateral peroneal and tibial neuropathies as a result of squatting in 'skinny jeans'. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Jun 23 [Epub ahead of print]PMID: 26105172
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26105172
スキニージーンズ(細身で脚にぴったり張り付くジーンズ)をはいてしゃがんだ姿勢をとり続け横紋筋融解症を起こした35歳女性。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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PPIは様々な有害事象が報告されていますが、高Mgに関してはここ最近でかなり文献が増えてきました。旧ブログ記事からのアップデートですが、全面改訂に近いくらいエビデンスを追加しています。

GENIUS trial個人的にはなかなかインパクトがありました。漢方薬も漫然と投与されていることは多々あり、薬理作用など一見すると合理的な説明がなされている薬剤もあるでしょう。しかし実際には臨床試験がしっかりなされていることはまれであり、今回は見事にその有用性について明確なことは不明であったことが浮き彫りとなりました。このトライアルではむしろE群で多いという結果です。

漢方薬のポリファーマシー。実際にはたまに見ることがあります。併用するメリット、いやそもそも単剤でも本当に必要な薬剤なのか。漢方は患者主観的な薬剤効果も強い側面があり、一律に不要であるとすることもできないかも知れませんが、よくよく評価したいところではあります。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jul.15;1(26)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-中東呼吸器症候群(MERS)について-

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[ポイント]
■致死率は30%~40%と考えられており、全症例の63.4%が重症化し、44.1%が肺炎を発症。
■感染源はヒトコブラクダと考えられており、ヒト―ヒト感染での感染はコロナウイルス同様、咳などを通じて、人の気道分泌物から感染が拡大すると考えられている
■基本再生産数は新型インフルエンザやSARSよりも低く1を下回る可能性が高い。
■潜伏期間は2日から14日であると考えられている。


[イントロダクション]
中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)が隣国の勧告にて感染が拡大さいていることはマスメディアでの報道でも話題です。原稿執筆時点(2015年6月22日)での情報は以下の通りです。

「韓国では、5月20日に、バーレーンから帰国した韓国人男性に、同国初のMERSコロナウイルス感染が確認されました。その後、同国国内で感染が拡大しています。韓国保健福祉部によれば、6月22日現在、韓国におけるMERS感染例は累計172人(渡航先の中国で確認された韓国人1人を含む)、うち死亡者数は27人となっています。また、現在の隔離対象者は19日付け発表と比べて約2,100人減少し、3,833人となっています。(外務省海外安全のホームページより)」
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2015C170

MERSは、2012 年にイギリスで初めて原因ウイルスが同定された新興感染症です。これまでにサウジアラビアやアラブ首長国連邦などのアラビア半島諸国において、感染事例が報告されており、また、欧米諸国、北アフリカ地域、東南アジア地域への輸入事例も報告されています。

CDCのホームページよりMERSの概要を簡単にまとめます。

①致死率
「About 3-4 out of every 10 patients reported with MERS have died」
MERSに感染した10人のうち3人~4人が死亡する(致死率30%~40%)
http://www.cdc.gov/coronavirus/mers/about/index.html

②伝播様式
「MERS-CoV, like other coronaviruses, is thought to spread from an infected person’s respiratory secretions, such as through coughing. However, the precise ways the virus spreads are not currently well understood.」
MERSコロナウイルスは、他のコロナウイルス同様、咳などを通じて、人の気道分泌物から感染が拡大すると考えられているが、現時点で明確なウイルス伝播様式は明らかではない。
http://www.cdc.gov/coronavirus/mers/about/transmission.html

④予防と治療
「Currently, there is no vaccine to prevent MERS-CoV infection」
「There is no specific antiviral treatment recommended for MERS-CoV infection.」
現在ワクチンや推奨される特異的治療薬は存在しない。

[推奨されている予防法]
・20秒間、石鹸と流水で手洗い(石鹸、水が利用できない場合アルコール系消毒薬)
・咳やくしゃみをするときにティッシュ等で鼻や口をカバーする
・手指衛生が完了していない状態で目、鼻、口に触らない
・感染者と食器などを共用しない
・ドアノブなど高頻接触面を消毒

[感染源]
ヒトコブラクダが MERS コロナウイルスを保有しており、そのため、ヒトへの感染源となる動物はヒトコブラクダの可能性が高いとされています(※1)

[潜伏期間]
中央値5.2日[95%信頼区間1.9~14.7](※2)

[臨床症状]
検査確定例144例と可能性例17例の臨床像の解析(年齢中央値50歳[14 ヵ月~94歳]によれば、臨床症状は軽症例から急性呼吸促迫症候群(ARDS)を来たす重症例までさまざまと報告されています。(※3)

この解析において、主な症状は発熱、咳嗽等から始まり、急速に肺炎を発症し、しばしば呼吸管理が必要となります。
全症例の63.4%が重症化し、44.1%が肺炎を発症。70.8%は入院を要し、ICU入室は51.6%、ARDSの合併は12.4%と報告されています。また少なくとも3分の1の患者は嘔吐、下痢などの消化器症状を呈すると報告されています。

[感染能力]

2013年6月21日までの64症例から計算された基本再生産数R0(1人の患者から発生する2次感染者数)について以下のように計算されています。(※4)

・リスクを過小評価して0.60 [95%信頼区間0.42~0.80]
・リスクを過大評価して0.69 [95%信頼区間0.50~0.92]

いずれも1を下回っており、これはSARSコロナウイルスのR0 0.80 [95%信頼区間:0.54~1.13]よりさらに低いことから、現段階でMERSによるパンデミックは想定しにくいと結論しています。

また別の検討では、2013年8月現在までの推定週病者数は940人[95%信頼区間:290~2200例)少なくとも62%の症例が検出されていない。適切な対策がなされていれば、ヒトーヒト感染は持続的とならないといえるが、対策がなされない場合の基礎再生産数R0は0.8-1.3と推定されています。(※5)

参考までに、2009年新型インフルエンザのROは1.4~1.6(致死率0.4%)と報告されていました。(※6)

[MERS 感染予防のための暫定的ガイダンス]
日本環境感染学会よりMERS 感染予防のための暫定的ガイダンスが全文無料公開されています。
http://www.kankyokansen.org/modules/iinkai/index.php?content_id=11


[参考文献]
(※1) Azhar EI, El-Kafrawy SA, Farraj SA.et.al. Evidence for camel-to-human transmission of MERS coronavirus. N Engl J Med. 2014 Jun 26;370(26):2499-505. PMID: 24896817
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24896817
(※2) Assiri A, McGeer A, Perl TM.et.al. Hospital outbreak of Middle East respiratory syndrome coronavirus. N Engl J Med. 2013 Aug 1;369(5):407-16. PMID: 23782161
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23782161
(※3) Who Mers-Cov Research Group. State of Knowledge and Data Gaps of Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus (MERS-CoV) in Humans.PLoS Curr. 2013 Nov 12;5. PMID: 24270606
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24270606
(※4)Breban R, Riou J, Fontanet A. Interhuman transmissibility of Middle East respiratory syndrome coronavirus: estimation of pandemic risk. Lancet. 2013 Aug 24;382(9893):694-9. PMID: 23831141
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23831141
(※5) Cauchemez S, Fraser C, Van Kerkhove MD.et.al. Middle East respiratory syndrome coronavirus: quantification of the extent of the epidemic, surveillance biases, and transmissibility. Lancet Infect Dis. 2014 Jan;14(1):50-6. PMID: 24239323
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24239323
(※6)Fraser C, Donnelly CA, Cauchemez S.et.al. Pandemic potential of a strain of influenza A (H1N1): early findings.Science. 2009 Jun 19;324(5934):1557-61. PMID: 19433588
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19433588

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■メトホルミンの膵臓癌における有効性■
Kordes S, Pollak MN, Zwinderman AH.et.al. Metformin in patients with advanced pancreatic cancer: a double-blind, randomised, placebo-controlled phase 2 trial. Lancet Oncol. 2015 Jun 8. pii: S1470-2045(15)00027-3PMID: 26067687
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26067687
背景と研究デザイン:過去のプレ臨床試験や後ろ向き研究では糖尿病薬のメトホルミンが抗腫瘍活性作用と関連し、膵臓癌をはじめとする多くの癌に対する有用性が期待されていた。進行性膵臓癌に対するメトホルミンの有用性を検討した2重盲検ランダム化比較試験

P:18歳以上の進行性膵臓癌患者121人
E:ゲムシタビン(1000mg/m2を週1回3週投与し4週目を休薬とするレジメン)とエルロチニブ(1日1回100mg)にメトホルミン500mg~1000mg1日2回投与(60人)
C:ゲムシタビン(1000mg/m2を週1回3週投与し4週目を休薬とするレジメン)とエルロチニブ(1日1回100mg)にプラセボ投与(61人)
O:6か月時点での生存
統計解析:ITT

表タイトル
アウトカム E群 C群 結果
6か月時点での生存% 56.7[44.1~69.2] 63.9[51.9~75.9] P=0.41
全生存期間(中央値) 6.8ヵ月[5.1~8.5] 7.6ヵ月[6.1~9.1]


メトホルミンの上乗せによる有効性示されず。

■急性虫垂炎に対する抗菌療法■
Salminen P, Paajanen H, Rautio T.et.al. Antibiotic Therapy vs Appendectomy for Treatment of Uncomplicated Acute Appendicitis: The APPAC Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015 Jun 16;313(23):2340-8. PMID: 26080338
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26080338
背景と研究デザイン:CTにより確認された合併症の無い急性虫垂炎治療において、虫垂切除術に対する抗菌薬治療の非劣性を検証したオープンラベルランダム化比較試験

P:18歳~60歳でCTにより確認された合併症の無い急性虫垂炎患者530人
E:抗菌薬による治療(エルタペネム静注1/日に続きレボフロキサシン500mg1日1回とメトロニダゾール500mg1日3回)257人
C:虫垂切除術273人
O:E群では手術の成功、C群では1年の追跡期間中、手術の必要がなく、虫垂炎の再発なし。

非劣性マージン24%

C群において、手術の成功は99.6%、E群において手術の必要なしは72.7%であり、その差は―27%[95%信頼区間-31.6%~∞]と非劣性示されず。

■牛乳摂取と死亡リスク■
Wang C, Yatsuya H, Tamakoshi K,et.al. Milk drinking and mortality: findings from the Japan collaborative cohort study. J Epidemiol. 2015;25(1):66-73. PMID: 25327185
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25327185
背景と研究デザイン:日本における牛乳と死亡リスクの関連を検討した前向きコホート研究

P:40歳~79歳で脳卒中やがん、満船心不全の既往のない94980人
E:牛乳の摂取あり(月1~2回、週1~2回、週3~4回、毎日)
C:牛乳の摂取なし
O:総死亡、心血管死亡、癌死亡
追跡期間:19年(中央値)
交絡因子:年齢、喫煙、飲酒、身体活動、睡眠時間、BMI,教育水準、野菜の摂取、高血圧、糖尿病、肝臓病の既往

男性:ハザード比(95%CL)
摂取量 総死亡 心血管死亡 癌死亡
月1~2回 0.92 (0.86–0.99) 0.98 (0.85–1.13) 0.88 (0.78–0.99)
週1~2回 0.91 (0.85–0.96) 0.86 (0.77–0.98) 0.90 (0.82–0.99)
週3~4回 0.89 (0.84–0.96) 0.89 (0.79–1.01) 0.85 (0.76–0.94)
ほぼ毎日 0.93 (0.89–0.98) 0.89 (0.82–0.98) 0.94 (0.87–1.01)


女性:ハザード比(95%CL)
摂取量 総死亡 心血管死亡 癌死亡
月1~2回 1.00 (0.91–1.05) 1.14 (0.98–1.33) 0.85 (0.72–1.02)
週1~2回 0.98 (0.91–1.05) 1.03 (0.91–1.17) 0.95 (0.83–1.08)
週3~4回 0.91 (0.85–0.98) 0.88 (0.78–1.01) 0.95 (0.84–1.08)
ほぼ毎日 0.96 (0.91–1.01) 0.99 (0.89–1.08) 1.00 (0.91–1.11)


※関連論文※
Michaëlsson K, Wolk A, Langenskiöld S.et.al. Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies. BMJ. 2014 Oct 28;349:g6015. PMID: 25352269
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25352269
スウェーデンにおけるコホート研究。追跡期間平均20.1年で、死亡や骨折の低下は見られず、総死リスクはむしろ上昇。

■ピオグリタゾンと認知症リスク■
Heneka MT, Fink A. Doblhammer G.et.al. Effect of pioglitazone medication on the incidence of dementia. Ann Neurol. 2015 May 14. [Epub ahead of print] PMID: 25974006
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25974006
背景と研究デザイン:ピオグリタゾンに代表されるPPARγ活性化を示唆する薬剤は、基礎研究において、神経変性疾患へのベネフィットを示唆している。抗糖尿病薬の10年にわたる臨床使用実績は患者ベースでのデータにおける有用性評価を可能にする。ピオグリタゾンと認知症発症との関連を検討した前向きコホート研究

P:研究開始時に60歳以上で、認知症の診断を受けておらず、インスリン非依存型糖尿病の患者145,928人
E:糖尿病患者でピオグリタゾンの長期使用あり(8四半期以上) 
E:糖尿病患者でピオグリタゾンの短期使用あり(8四半期以下)
E:糖尿病患者でピオグリタゾンの使用なし 
C:糖尿病なし
O:認知症の発症
調整した交絡因子:性別、年齢、ロシグリタゾンまたはメトホルミン、心血管併存疾患

糖尿病なしと比較して、
・長期間のピオグリタゾンの使用は47%のリスク低下(P=0.029)
・糖尿病で短期のピオグリタゾン使用では明確な差を認めない(相対危険1.16P=0.317)
・糖尿病患者でピオグリタゾンの使用が無いと認知症リスクは23%増加した。(P<0.01)

※臨床スクリプト※
糖尿病の診断を受けずとも、耐糖能異常や高血糖は認知症リスクと言われている。
Neurology.2011 Sep 20;77(12):1126-34 PMID:21931106
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21931106
N Engl J Med.2013 Aug 8;369(6):540-8PMID:23924004
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23924004
本研究は観察研究ではあるが、非糖尿病患者との比較で、ピオグリタゾンの効果を検討しているあたりが興味深い。ただし抄録から読み取れる交絡補正は十分とは言えない。有用性を示すには介入研究が必要だろう。

■食べる速さとメタボリックシンドローム■
Zhu B, Haruyama Y, Muto T.et.al. Association between eating speed and metabolic syndrome in a three-year population-based cohort study. J Epidemiol. 2015;25(4):332-6. PMID: 25787239
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25787239
背景と研究デザイン:食べる行動、特に摂食速度は、肥満や糖尿病の発展に寄与する要因として注目されている。日本人を対象に食べる速度とメタボリックシンドロームの関係を検討した人口ベースコホート研究

P:埼玉県草加市在住で、研究開始時にメタボリックシンドロームの診断を受けていない40歳~75歳の8941人(平均63.7歳、BMI 22.8、毎日の飲酒51.4%)食べるスピードをアンケート調査(早い、普通、遅い)
E:食事スピードが速い1901人
C:食事スピードが速くない(遅い、もしくは普通)7040人
O:メタボリックシンドロームの発症
※メタリックシンドロームは以下のうち3つの基準を満たした場合に診断
(1)ウエスト周囲径:男性102 cm超 女性 88㎝超
(2)HDLコレステロール:男性40mgdL以下 女性50mg/dL以下
(3)中性脂肪 150mg/dL以上
(4)収縮期血圧130 mm Hg超 もしくは拡張期血圧85 mm Hg超
(5)血糖値110mg/dL以上 もしくはHbA1c値5.6%(JDS値)以上

追跡期間:3年
調整した交絡因子:年齢、性別、喫煙、飲酒、食行動、身体活動、睡眠、薬剤使用歴

追跡3年でのメタボリックシンドロームの発症はE群170人/1901人(発症率3.1%)、C群477人/7040人(発症率2.3%)で、交絡調整後もE群で1.3倍多い
追跡3年
アウトカム 早い 早くない 調整ハザード比(95%CI)
メタボリックシンドローム発症 3.1% 2.3% 1.30 (1.05–1.60)

・利益相反なし
・研究助成:埼玉県草加市

※メカニズムとしての仮説※
胃が膨満感を感知する前に、すなわち満腹感の欠如のため、迅速な摂取は、過食を引き起こす可能性があること、迅速な摂取はインスリン抵抗性を招きメタボリックシンドロームを発症する

■朝食抜きと糖尿病■
Uemura M, Yatsuya H, Hilawe EH.et.al. Breakfast Skipping is Positively Associated With Incidence of Type 2 Diabetes Mellitus: Evidence From the Aichi Workers' Cohort Study. J Epidemiol. 2015 May 5;25(5):351-8. PMID: 25787236
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25787236
背景と研究デザイン:朝食抜きの食生活は2型糖尿病のリスクファクターである可能性が示唆されているが、この関連は 民族間や性別によって一貫しておらず、 また、 日本人では十分な
検討がされていない。朝食抜きの食生活と2型糖尿病発症リスクを検討したコホート研究

P:35歳~66歳の自治体職員4631人(男性3600人)。朝食の摂取頻度をアンケート調査。自己報告でその頻度を記載
E朝食を毎日食べない(443人 男性73.8% 平均46.0歳)
(朝食をほぼ毎日食べる、朝食を週 3-5日食べる、朝食を週 1-2日食べる、朝食を食べない)
C:朝食を毎日食べる(4188人 男性78.2% 平均47.8歳)
O:2型糖尿病発症

追跡期間8.9年
調整した交絡因子:年齢、性別、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール消費、余暇時間の身体活動、仕事中の身体活動、糖尿病の家族歴、食べるスピード、知覚されたストレス、睡眠時間、スケジュール、大食い、果物や野菜摂取、 魚の摂取、全粒穀物、コーヒー、砂糖入り飲料、スナック類の摂取頻度、BMI、空腹時血糖

毎日食べる集団を基準としたDMリスク
朝食頻度 症例数 発症率 調整ハザード比[95%CI]
ほぼ毎日食べる 35/540 8.4/1000人年 1.06 (0.73–1.53)
週に3~5日 15/121 16.6/1000人年 2.07 (1.20–3.56)
週に 1-2日 17/197 11.4/1000人年 1.37 (0.82–2.29)
食べない 14/125 15.4/1000人年 2.12 (1.19–3.76)

用量-応答の関連なし

なお、「毎日食べる」と「ほぼ毎日食べる」の2カテゴリと「週3~5日」以下の3カテゴリの比較において、朝食抜きの食習慣は2型糖尿病リスク増加に関連(ハザード比1.73 [95%信頼区間1.24–2.42])

※メカニズムとしての仮説※
昼食後の食後血糖およびインスリンレベルは、朝食を摂取した人よりも、朝食をスキップした参加者に有意に高かったという報告、朝食を省略すると、食後のインスリン感受性を損なうという報告がある。

利益相反:なし

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■致死的大量服薬から救命し得た急性カフェイン中毒■
佐藤 孝幸 他 致死的大量服薬から救命し得た急性カフェイン中毒の2例 日本救急医学会雑誌 Vol. 20 (2009) No. 12 P 941-947
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/20/12/20_12_941/_article/references/-char/ja/
症例① 
うつ病にて精神科通院中の34歳女性。感冒症状のため,2か月前より市販感冒薬(新ブロン液エース®:エスエス製薬:無水カフェイン 62mg/60ml(1 本)含有)を連日少なくとも 6 本 /day 以上の過剰服用。急隊到着時は心室細動で,救急車内で心静止状態となったが,搬送中に救急隊の心肺蘇生法により心拍再開。入院。第31病日に神経症状を残すことなく独歩退院。

症例②
うつ病,人格障害で精神科通院中の33 歳の男性。自殺企図にて市販カフェイン錠(エスタロンモカ®:エスエス製薬:無水カフェイン 100mg/錠含有)240 錠(カフェイン量 24g)を内服。12 時間後,著しい気分不快,嘔気が生じたため,自ら救急要請。第 4 病日には神経症状の残存なく,独歩軽快退院


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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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勧告におけるMERS。連日報道されています。7月3日時点の情報は以下の通りです。
「韓国保健福祉部によれば、7月3日現在、韓国におけるMERS感染例は累計184人(渡航先の中国で確認された韓国人1人を含む)、うち死亡者数は33人、また、退院者は109人となっています。」
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2015C195
また現時点でウイルスがその感染力を増したとの強固な証拠はありません。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jul.8;1(25)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-アドバンス・ケア・プランニングについて-

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[ポイント]
■アドバンス・ケア・プランニングとは将来的に意思決定が困難な状況になる前に、患者やその家族と医療におけるケア全体について話し合うプロセスのこと
■アドバンス・ケア・プランニングにおける事前指示(アドバンス・ディレクティブ)には患者自身が延命治療の有無や、受けたいケアについて文書化したリビング・ウィルと意思決定代理人を指定する医療判断代理委任状がある。
■アドバンス・ケア・プランニングにはエビデンスで示されたベネフィットがあるものの、現状問題点も多く、患者にとっては侵襲的であることも多々あると言える
■日本の伝統文化、日本人の価値観に合わせた意思決定のための、行動原理の一つとして価値観に基づく医療(Value-based Medicine; VBM)と言う概念は有用であるかもしれない


[イントロダクション]

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、将来的に意思決定が困難な状態になってしまう場合に備えて、患者さんはもちろん、その家族(意思決定代理人)とケア全体の目標や具体的な治療・療養の方法を話し合うプロセスの事です。

またACPのプロセスにおいて、重要な役割を果たすのが、延命医療の有無や蘇生処置の有無について患者さん自身がまとめた事前指示書であるアドバンス・ディレクティブです。大きく2つにわけられ、患者さん自身の治療方針に関する希望が表明されたものをリビング・ウィルと呼び、患者さんが意志決定できなくなった場合に代わりに決断する代理人を指定する文書を医療判断代理委任状と呼びます。

本題に入る前に、一つ衝撃的な報告があります。転移性の肺癌、大腸がんは化学療法により延命が期待でき、症状の緩和も想定できるが治癒はしないという事は医療者にとっては周知の事実かもしれません。しかしながら前向きコホート研究のデータを用いた横断的研究では、化学療法によって治癒する可能性が低いことを多くの癌患者が理解していないという結果が得られています。(※1)

この研究は癌の診断後4 ヵ月間生存し、新たに診断された転移性の肺癌もしくは大腸癌に対して化学療法を受けた1193人を対象に横断調査されたものです。化学療法によって治癒する可能性があるという期待をもつ患者の割合が検討されました。その結果、肺癌患者の 69%、大腸癌患者の 81%において、化学療法によって癌が治癒する可能性がないという事を理解している、と言う回答を得られなかったと報告されています。

第6回プライマリ・ケア連合学会学術大会において開催されたシンポジウム「生命の危機に直面した患者・家族と“いのちの終わり”に関する話し合いを始める」から、その論点を要約し、また新たに一次情報からの示唆を付け加えながら考察いたします。

[意思決定の根拠]

(症例)
肺炎を発症した88歳の外来患者。「もういやだ、家に帰る」とどなっています。さて、医療者としての判断はいかにすべきなのでしょうか。帰宅させるべきなのでしょうか、それとも鎮静をかけて入院させるべきなのでしょうか。意思決定の根拠にどのような重みを置くのか、すなわち意思決定の原理はとは何なのでしょうか。そして倫理的に考えるということとはどういうことでしょうか。

意思決定の判断において、「良いこと」、「悪いこと」という2元的分類を、私たちは無意識的に行っています。良いこと、悪いこと、そう判断した根拠とは何でしょうか。直観的に良いこと、悪いこと、ではなく、その背景に何があって「良い」、「悪い」の判断をしたのでしょうか。あらためて考えてみると、明確な背景や根拠がないことも珍しくはありません。正しい選択はとは何でしょうか。医学的な正しさでしょうか。学問的正しさよりもむしろ、患者にとって最善の選択は何か?という事を、患者ともに考える作業は大切なことだと思います。医療者は医学的利益、医学的無益、病態生理を重視しがちです。患者の選好、苦痛の度合い、ナラティブなどをどこまで意思決定に反映できるのでしょうか。
心配停止状態において、非癌患者であれば蘇生治療する、癌患者であれば蘇生しない。蘇生するかしないか、なんとなく「空気」でそう決まっている。デフォルトがやる。デフォルトがやらない、そんな現実があります。よくよく考えると、蘇生などの治療をやるか、やらないかの明確な根拠がないことは多々あります。

しかしながら「生きる」という事には無条件の価値があります。寝たきりだからか生きている価値がないと、私たち医療者は一方的に決めること許されませんが、そのような意思決定が慣例によって左右されていることが現実として多々あるのもまた事実と言えそうです。

[対話と支配、意思決定のあり方]
意思決定において、医療者の考えがそのまま決定に左右されている状況、いわば、患者との対立がないところ、実はそこに「支配」があると言えます。むしろ医療者-患者の「対話」とは対立があるところにこそ存在します。不快に思う事こそ重要な部分がある、そういえるのではないでしょうか。人は誰も自分の死、あるいは親しい人の死を向き合うとこを避けるということを望みます。死を語るのはタブーであるという暗黙の了解があります

[アドバンス・ケア・プランニング(ACP)]

終末期において今後の治療・療養について患者・家族と医療受持者があらかじめ話し合う自発的なプロセスをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と言います。患者の医療における意思決定能力低下に備えての対応プロセス全体の事と言えましょう。エンド・オブ・ライフを「表現」して「尊重」されること、そしてより多くの選択肢を知らせるために。このようなプロセスが有用だと言われています。

アドバンス・ケア・プランニングは、エンド・オブ・ライフケアや患者と家族の満足度を改善し、遺族のストレス、不安、抑うつを軽減することがランダム化比較試験で示されています。(※2)

この研究は80歳以上で余命が6か月以内と想定される309人の患者を対象に通常ケアに加えて、ACPを行う154人と通常ケアのみの155人にランダム化しています。ACPは具体的に将来的な医療環境の検討や代理人の指定などを文書化しています。そして、患者の終末期の希望が理解され尊重されていたかどうかを検討しています。

終末期における意志が明確にされ、それに従った終末期を過ごした割合はACP実施群で86%、通常ケア群で30%とACP実施群で有意に多いと報告されています(p<0.001)
またACP実施群は通常ケア群と比較して、死亡した患者家族のストレスや不安、うつ傾向の頻度が有意に低いことが報告されています。(ストレスp<0.001、不安p=0.02、うつ傾向p=0.002)

[アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関わる問題点]

ACPを実践するために、現状では様々な問題があります。患者側の医療情報の理解不足。病状による大きな苦痛、起こり得る状況を予測することが困難。現実の直視を避けながらの意志決定。非現実的な積極的な治療の要望、あるいは医療者側の教育機会の不足。ロールモデルの不在、予後予測の不確かさ。患者の意向の把握不足、多職種連携の不足など、乗り越えるべきハードルはまだまだあると言えます。


ACPの実践において、ある人が医療についての決断を下すことができなくなった場合に、医療についてのその人の希望を伝達するための文書、すなわち事前指示書をアドバンス・ディレクティブ(特に患者の医療環境への希望を表明したものはリビング・ウィル)と呼びます。アドバンス・ディレクティブを準備していた患者では、本人が希望する通りの治療を受けることと大きな関連を示した報告があります。(※3)

この研究では、リビング・ウィルを作成していた対象者では、可能なすべての治療を受ける事に比べ限定的ケアや鎮痛ケアを望む傾向が高く、限定的ケアを望んだ対象者の 83.2%、鎮痛ケアを望んだ対象者の 97.1%が希望通りの治療を受けたと報告しています。

またアドバンス・ディレクティブがないと医師と遺族のコミュニケーションが問題を報告することが多いといわれています。(※4)

しかしながら、アドバンス・ディレクティブはエンド・オブ・ライフの質は変わらないとするクラスターRCTが存在するようです(出典未確認)。さらにアドバンス・ディレクティブを書くこと自体が侵襲的であるかもしれません。感情は思考を支配します。特に日本人の伝統文化価値観は欧米のエビデンスをそのまま適用するのは困難なケースもあるかもしれません。日本の地域医療現場においても明文化されていなくても独自のACPは既に行われており、熱心に取り組まれている医師もいるはずです。ACPという概念を今あらためて提示する必要があるのか、という問題はあるかもしれません。

[経験を訪ねること]

ACPは患者にとって侵襲的な側面を有します。人間は誰しも苦痛から目をそらし、将来の不安と向き合いたくはありません。

「人間は周りにながされ、自分自身で主体的に決断するというあり方から遠ざかっている存在である」とドイツの哲学者、マルティン・ハイデガー(1889~1976)は考察しました。「人はいつか死にゆくが、しかし当分はまだ死ぬことはない」という空談が、人の日常的な死へとかかわる非本来的な姿を浮き彫りにさせるのだと言います。(※5)

死と向き合わないという仕方は、人間の根本的な性質ともいえるのかもしれません。したがって、医療において死を語ることは、ややタブーであり、患者にとっては侵襲的ともいえるのでしょう。

では、どう患者と向き合えばよいのでしょう。患者自身の死と、ともに向き合うために、どのようなコミュニケーションをとれば良いのでしょうか。「経験をたずねることは非侵襲的」というのは大きなポイントと言えそうです。

~となったらどうしますか?
~となったらどうしようかと考えたことがありますか?

「あなたは自分がもう寝たきりになってしまい、意思疎通も取れなくなったらどうしますか?」と尋ねるのはやや侵襲的かもしれません。経験を問うことで、侵襲的な質問を和らげることが可能になることもあります。例えば、「あなたは自分がもう寝たきりになってしまい、意思疎通も取れなくなったらどうしようか、と考えたことはありますか?」と尋ねることで、その話題に振れたくなければ、患者側は「考えたことありません」と容易にこの話題を避けることができます。生きるための医療から死ぬための医療へのシフトとその模索。高齢化を迎えた日本にとって避けて通れない医療のあり方かもしれません。

また患者本人だけではなく、その家族も一緒にケアプランを考えてゆく。できれば、患者本人が意思決定能力を失う前に、患者の選考、「患者にとっての最善」をその家族もしっかりと共有せねば意思決定の代理ができず、代理決定という重荷に苦しむという状況は十分に考えられます。

[患者の選好・価値観に基づく医療(Value-based Medicine; VBM)]

患者がしてほしくないこと、その背景にこそ患者の価値観があります。どのようにすれば、その価値観を共有することができるのか、これはもう医学的な正しさとは無関係であると言えます。「医学的最善」と「患者の最善」は大きく異なるものでありますし、本来医療は、「医学的最善」を実行するのではなく、「患者の最善」を追及して行くシステムであると言えます。事実と価値は相関しない。意思決定を支える価値は多様です。多様であるがゆえに迷いが生じます。問題があるからこそ判断に迷うのです。だからこそ、意思決定プロセスとして相互了解のための原理が今の医療に必要なのだと思います。

[参考文献]
(※1) Weeks JC. Catalano PJ, Cronin A,et.al. Patients' expectations about effects of chemotherapy for advanced cancer. N Engl J Med. 2012 Oct 25;367(17):1616-25. PMID: 23094723
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23094723
(※2) Detering KM, Hancock AD, Reade MC.et.al. The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ. 2010 Mar 23;340:c1345. PMID: 20332506
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20332506
(※3) Silveira MJ, Kim SY, Langa KM.et.al. Advance directives and outcomes of surrogate decision making before death. N Engl J Med. 2010 Apr 1;362(13):1211-8. PMID: 20357283
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20357283
(※4) Teno JM, Gruneir A, Schwartz Z.et.al. Association between advance directives and quality of end-of-life care: a national study. J Am Geriatr Soc. 2007 Feb;55(2):189-94. PMID: 17302654
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17302654
(※5) 渡邊 二郎 ハイデガー「存在と時間」入門 (講談社学術文庫)

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■ベンゾジアゼピンとオーバードーズによる死亡■
Park TW, Saitz R2, Ganoczy D.et.al. Benzodiazepine prescribing patterns and deaths from drug overdose among US veterans receiving opioid analgesics: case-cohort study. BMJ. 2015 Jun 10;350:h2698. PMID: 26063215
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26063215
背景と研究デザイン:米国退役軍人医療サービスのデータベースを用いて、オピオイド鎮痛薬を使用している退役軍人を対象にベンゾジアゼピンの過量投与(オーバードーズ)による死亡リスクを検討したケースコホート研究

P:米国退役軍人コホートより2004年から2009年にかけてオピオイド鎮痛薬の投与を受けた米国退役軍人(ほぼ男性)
(症例)薬物の過量投与で死亡した2400人
(対照)コホートからランダム抽出した420386人
E:ベンゾジアゼピンの投与あり
C:ベンゾジアゼピンの投与なし
O:過量投与による死亡

交絡調整:年齢、性別、人種、地域レベルの貧困、オピオイド使用量、併存疾患指数、心的外傷後ストレス障害、その他の不安障害の診断、双極/精神病性障害、癌、他の薬物の使用

ベンゾジアゼピンの使用なしと比較して、過去の使用でハザード比2.33[95%信頼区間2.05~2.64]現在使用でハザード比3.86[95%信頼区間3.49~4.26]

■PPIと市中肺炎リスク■
Lambert AA, Lam JO, Paik JJ.et.al. Risk of community-acquired pneumonia with outpatient proton-pump inhibitor therapy: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2015 Jun 4;10(6):e0128004. PMID: 26042842
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26042842
背景と研究デザイン:PPIと市中肺炎の関連については複数報告があるが、近年のメタ分析によればGERDによる肺炎リスクという交絡を考慮した解析でそのリスク上昇は示されなかった。
http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/38211189.html
当論文ディスカッションにはこの解析においてGERDによる肺炎リスクという交絡についての言及があり、バイアスを受けている可能性を述べている。介入研究を含む26研究のメタ分析でPPI使用と市中肺炎リスクを検討した論文

P:26研究に参加した患者
E:PPIの使用あり
C:PPIの使用なし
O:市中肺炎の発症

2名のレビューアーが独立してデータを抽出するなど配慮。ケースコントロール研究18報、コホート研究10報、ランダム化比較試験4報、ケースクロスオーバー研究1報の33報がレビューに含まれ、メタ分析されたのはそのうち26報。PPIの使用は市中肺炎リスクと関連。オッズ比1.49[95%信頼区間1.16~1.92]I2統計量99.2%。異質性が高く、また当分析では出版バイアスが懸念されている。現時点ではリスクありという認識で良いと思うが、交絡の仕方で結果が変わってしまう印象。介入研究での評価が望まれる。

■1型糖尿病の強化インスリン療法■
Writing Group for the DCCT/EDIC Research Group, Orchard TJ, Nathan DM, Zinman B.et.al. Association between 7 years of intensive treatment of type 1 diabetes and long-term mortality. JAMA. 2015 Jan 6;313(1):45-53 PMID: 25562265
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25562265
研究デザインと背景:1型糖尿病のランダム化比較試験DCCTに続く、EDICの長期フォローアップ。
P:DCCT、EDICに参加した1型糖尿病患者

※患者背景補足※
DCCT(Diabetes Control Complication Trial:N Engl J Med. 1993 Sep 30;329(14):977-86)
13~39歳の1 型糖尿病患者1441 人(平均年齢26.8 歳、男性 53%、平均 HbA1c 8.9%)を対象にしたランダム化比較試験。自己血糖モニタリングで注射量を調節しながら1日3回以上のインスリン投与、あるいはインスリンポンプを使用した厳格治療群(目標血糖は、食前 70~120mg/dL、食後 180mg/dL、HbA1c 6.05%未満)711人とモニタリングをせず1日1回から 2回のインスリン投与を行う通常治療群730人にランダム割り付け。平均追跡期間6.5年で糖尿病性網膜症の進展、糖尿病性腎症、神経症、大血管障害等を検討。最終的に厳格治療群では通常療法群に比べて網膜症進行のリスクは54%低下。

EDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications. N Engl J Med.2000 Feb 10;342(6):381-9)
はDCCT終了後の経過を長期間にわたり観察した研究。DCCT終了後、通常療法群だった患者にも厳格治療を開始するよう勧め、DCCTで通常療法群だった患者688人と厳格治療群だった患者687人の計1375人を対象とした。網膜症が悪化した患者や尿中アルブミンが増加した患者はDCCTで強化療法だった群で有意に抑制されていた

DCCT/EDIC長期追跡(N Engl J Med.2005:353:2643-2653)
DCCT参加者1441人から、DCCT試験を完了し、1994年にEDICへの参加を承諾した生存例(DCCT対象患者の93%にあたる1341例)を対象に引き続いて2005年まで、長期的な心血管疾患への影響を検討。DCCT追跡期間は平均17年で、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡、無症候性心筋梗塞、狭心症、血行再建術を含む全心血管イベントの発生は、厳格治療群46件(0.38/100人・年)、通常治療群98件(0.80/100人・年)であり厳格治療群では通常治療群に比べて全心血管イベントリスクが42%減少。

E:強化インスリン療法
C:通常ケア
O:総死亡(27年追跡)

今回の報告は総死亡を検討した貴重なものとなっている。結果は以下の通り。

DCCT/EDIC 27年追跡
アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
総死亡 43/711 64/730 0.67[0.46~0.99]


1型糖尿病発症初期の6.5年にわたる厳格治療で27年後の総死亡に差が出たと結論している。

■修正ITT解析とITT解析■
Abraha I, Cherubini A, Cozzolino F.et.al. Deviation from intention to treat analysis in randomised trials and treatment effect estimates: meta-epidemiological study. BMJ. 2015 May 27;350:h2445. PMID: 26016488
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26016488
322のランダム化比較試験を解析。ITT解析された84研究、修正ITT解析された118研究、ITT解析されていない108研究を比較。(12研究は重複)

ITT解析に比べて修正ITT解析は効果を17%過大に見積もる。

■PPIと心血管リスク■
Shah NH, LePendu P1, Bauer-Mehren A.et.al. Proton Pump Inhibitor Usage and the Risk of Myocardial Infarction in the General Population. PLoS One. 2015 Jun 10;10(6):e0124653. PMID: 26061035
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26061035
背景と研究デザイン:PPIの使用は急性冠症候群後のクロピドグレル服用者において有害転帰の可能性が示唆されている。データマイニングの手法を介して、一般集団におけるこの潜在的なリスクを検討

P:290万人、1600万の臨床ドキュメントからデータマイニングのアプローチを用いて検討
E:PPIの使用あり
C:PPIの使用なし
O:心血管リスク

複数のデータソースの分析からGERD患者に対するPPIの使用で心筋梗塞リスクが1.16倍[95%信頼区間1.09~1.24]増加。また前向きコホートの生存分析においても心血管死亡増加が示唆された。(ハザード比2.00[95%信頼区間1.07-3.78])この関連はクロピドグレルの使用に関わらず認められた。なおH2ブロッカーではリスクとの関連はみられなかった。

※関連論文※
Charlot M, Ahlehoff O, Norgaard ML,et.al. Proton-pump inhibitors are associated with increased cardiovascular risk independent of clopidogrel use: a nationwide cohort study. Ann Intern Med. 2010 Sep 21;153(6):378-86. PMID: 20855802
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20855802
PPIとクロピドグレルの併用と心血管アウトカムを検討したコホート研究

■喫煙インパクト■
Banks E, Joshy G, Weber MF.et.al. Tobacco smoking and all-cause mortality in a large Australian cohort study: findings from a mature epidemic with current low smoking prevalence. BMC Med. 2015 Feb 24;13:38. PMID: 25857449
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25857449
背景と研究デザイン:オーストラリアにおける喫煙インパクトを検討した前向きコホート研究

P:オーストラリア在住の45歳以上の204,953人(45~64歳が67%)
E:現在喫煙15,768人、過去喫煙69,900人
C:喫煙なし119,285人
O:死亡

交絡への配慮:年齢、学歴、収入、住居、アルコール
追跡期間:平均4.2年

喫煙なしと比較して現在喫煙者の死亡リスクは以下の通り
・男性:相対危険:2.82 (95%信頼区間2.49-3.19)
・女性:相対危険3.08 (95%信頼区間2.63-3.60)
喫煙なしと比較して過去喫煙者の死亡リスクは以下の通り
・男性:相対危険1.34(95%信頼区間1.24~1.45)
・女性:相対危険1.54(95%信頼区間1.40~1.70)

オーストラリアでは現在喫煙者の3分の2は喫煙が原因で死亡していると結論

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ロキソプロフェンナトリウムが誘因と思われるインスリン自己免疫症候群■
Okazaki-Sakai S, Yoshimoto S, Yagi K, Wakasugi T.et.al. Insulin autoimmune syndrome caused by an adhesive skin patch containing loxoprofen-sodium. Intern Med. 2013;52(21):2447-51. PMID: 24190150
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24190150

62歳の女性。繰り返し低血糖を発現。75g経口ブドウ糖負荷試験により血漿インスリンレベルの増加、耐糖能障害を示し、血漿抗インスリン自己抗体が高いことが示された。診断はインスリン自己免疫症候群。ロキソプロフェンナトリウムを中止すると低血糖を発現しなくなった。ロキソプロフェン貼付剤の再開で低血糖が再度発現。インスリン自己免疫症候群がロキソプロフェンにより引き起こされている可能性が示唆された。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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茨城県はつくば市にて開催された、第6回プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。アドバンス・ケア・プランニングについては恥ずかしながら初めて聞きました。医療における意思決定ツールという観点から言えばEBMと同じような医療者におけるスキルの一つに位置づけられそうです。

シンポジウム当日の資料に該当する内容が以下のWEBサイトで閲覧できます。

国立長寿医療研究センター
「人生の最終段階における医療にかかる相談員の研修会資料」
http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/eol/kensyu/2014leader01_doc.html

論文紹介のコーナーでも取り上げましたが、PPIと心血管リスクについての報告はデータマイニングという手法を用いたものです。薬剤効果もビックデータを解析する時代になってきたのでしょうか。その妥当性はともかく、手法としては興味深いものがあります。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jul.1;1(24)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-エゼチミブの効果-

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[ポイント]
■エゼチミブの有用性を検討した主要な臨床試験はいずれもスタチンへの上乗せ投与であり、エゼチミブ単独での有用性について臨床的意義は不明な部分が多い。現段階で単独使用は推奨されない。
■大動脈弁狭窄症患者に対する心血管アウトカムへのエゼチミブの効果は不明であり、がん死亡が増加する可能性が示唆されている。
■発がんに関しては、その後の研究で明確な増加は示されていないが、メタ分析では増加傾向にある。
■慢性腎臓病に対する心血管アウトカムへのエゼチミブの効果は議論の多々余地があり、末期腎不全への進展を抑制するかどうかについても不明である
■急性冠症候群で入院した超ハイリスク患者に対して、長期間観察すると心血管アウトカムをわずかに改善する可能性がある。
■エゼチミブの有効性は現時点で一貫性がない。高齢者におけるエゼチミブの脳血管疾患への有効性を検討しているEWTOPIA75試験(現在進行中)の結果に注目したい。

[イントロダクション]
エゼチミブは小腸コレステロールトランスポーター阻害薬で、小腸上部の刷子縁膜上に存在する Niemann-Pick C1 Like 1(NPC1L1)のコレステロール輸送機能を阻害することにより、小腸からの胆汁性及び食事性コレステロールの吸収を低下させることが確認されています。ゼチーア錠 10mg 単独投与により LDL コレステロールを約 18%低下させ、スタチン製剤単独で十分な効果が得られない症例にエゼチミブ 10mg を併用することにより,LDL コレステロールをさらに低下させると製剤インタビューフォームに記載があります。

これまでエゼチミブの真のアウトカムに対する有効性については不明確な部分も多く、その臨床効について議論の余地が多々ありました。本年6月にスタチンへのエゼチミブ上乗せ効果を確認したIMPROVE-ITがついに論文化されました。これを機会に、エゼチミブの代表的な臨床試験を振り返りながら、その効果について整理していきたいと思います。

[SEAS試験]
エゼチミブの真のアウトカムを検討した報告として2008年のSEAS試験(※1)は押さえておきたい臨床試験です。

この研究は、45~85歳で無症候性・軽度から中等度の大動脈弁狭窄症患者1873例(平均67.6歳、血圧144.8/82.0mmHg、喫煙19.2%、BMI26.9)を対象に、エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン40mg/日(944人)とプラセボ(929人)が比較され、心血管死亡、大動脈弁置換術、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、心不全、冠動脈バイパス移植、経皮的冠動脈インターベンション、非出血性脳卒中の複合アウトカムを検討した2重盲検ランダム化比較試験です。
主な結果を以下にまとめます。

SEAS試験[追跡52.2か月(中央値)]
アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 333/944(35.3%) 355/929(38.2%) 0.96[0.83~1.12]
がん死亡(※) 39/944(4.1%) 23/929(2.5%) 1.67[1.00~2.79]

(※)プライマリアウトカムではないが重要なアウトカム

E群では少なくとも50%のLDLコレステロールの平均減少を達成できたにもかかわらず、複合アウトカムに明確な差はなく、また一次アウトカムではないものの、がんによる死亡が有意に増えるかもしれないという衝撃的な結果でした。

なおこのがんリスクについては後述する、SHARP、IMPROVE-ITとこのSEASの3研究の解析が行われています。(※2) 、SHARPとIMPROVE-ITはこの時点(2008年時点)で進行中の臨床試験であり、追跡できた患者のみ解析されています。がんの発生数は以下の通り。

3研究のメタ分析によるエゼチミブと発がん
アウトカム E群 C群 リスク比[95%CI]
SHARP+IMPROVE-IT 313/10,319

2.7%/年

326/10,298

1.7%/年

0.96[0.82~1.12]
SEAS 101/944

1.7%/年

65/929

1.8%/年

1.55[1.13~2.12]
全トライアル 414/11263 391/11227 1.06[0.92~1.22]


3研究からの示唆では、エゼチミブとがんとの関連について明確な影響については確かなエビデンスが無いと結論しています。

[SHARP試験]
この研究は慢性腎疾患患者を対象としたスタチンとエゼチミブの併用効果を検討した2重盲検ランダム化比較試験です。(※3)

40歳以上の慢性腎疾患患者(血清クレアチニン M:1.7mg/dL F:1301.5mg/dL以上の透析中または未透析)9270人(平均62歳)を対象に、シンバスタチン20mgとエゼチミブ 10mgを投与した4650人とプラセボを投与した4620人を比較して、非致死的心筋梗塞,全心臓死,全脳卒中,透析手技以外の全血管再建術の複合アウトカムを検討しています。その結果、複合アウトカムは0.83,(95% CI 0.74-0.94)と有意に低下しました。

SHARP試験[追跡4.9年(中央値)]
アウトカム E群 C群 相対危険[95%CI]
複合アウトカム 639 [15.2%] 749 [17.9%] 0.84[0.75~0.94]
総死亡(※1) 1142 [24.6%] 1115 [24.1%] 1.02[0.94~1.11];
発がん(※2) 39/944(4.1%) 23/929(2.5%) 1.67[1.00~2.79]

(※1)プライマリアウトカムでは無いが重要なアウトカム
(※2)プライマリアウトカムではないが注目のアウトカム

注意が必要なのは、この研究は9438人の患者をまず3群(シンバスタチン+エゼチミブ4193人、シンバスタチン1054人、プラセボ4191人)に割り付けている点です。割り付け1年後にシンバスタチン群1054人のうち886人をシンバスタチン+エゼチミブ群とプラセボ群に再度ランダムに割り付けています。この886人の中にはシンバスタチン中止患者が半数ほどいることに注意が必要で、プライマリアウトカムのLife-table plotを見ると、ちょうど1年を境に差が出てきている点も気になります。一定のベネフィットが示されているスタチン、このあたりエゼチミブの真の効果を評価することはこの研究結果からでは難しいでしょう。

慢性腎臓病患者を対象にしたもう一つの研究があります。(※4)
この研究は慢性腎臓病の非透析患者6245人を対象に、シンバスタチン20mg/日+エゼチミブ10mg/日とプラセボの投与を比較し、末期腎不全(維持透析あるいは腎移植の開始)を検討したランダム化比較試験です。追跡期間は4.8年です。主な結果を以下にまとめます。

SHARP試験[追跡4.8年]
アウトカム E群 C群 発生率比[95%CI]
末期腎不全 1057人 [33.9%] 1084人[34.6%] 0.97[0.89 ~ 1.05]
末期腎不全+死亡 1477 人[47.4%] 1513人[48.3%] 0.97[0.90 ~ 1.04]


これらの結果から、慢性腎臓病患者にスタチン+エゼチミブを用いても、腎不全への移行を抑制できるかどうかは不明であり、心血管アウトカムについても議論の余地があるでしょう。


[IMPROVE-IT]
この研究は急性冠症候群にて入院した高リスク患者への脂質低下療法としてスタチン単独とスタチン+エゼチミブの併用効果を検討した2重盲検ランダム化比較試験です。(※5)

対象患者は、50歳以上で急性冠症候群で入院後10日以内の患者18144人。脂質低下療法を受けていない患者ではLDLコレステロールが50~125mg/dl 脂質低下療法を受けている患者ではLDLコレステロールが50~100mg/dlの患者を対象で、平均年齢は63.6歳、男性75.7%、平均体重83㎏、BMI28.3、糖尿病27.2%、高血圧61.5%、ACS発症前のスタチン療法は34.5%、心筋梗塞の既往21%と、かなりハイリスクな患者が対象となっています。またACSは非ST上昇型心筋梗塞が約47%、ST上昇型心筋梗塞が約28%、不安定狭心症が約24%となっています。

シンバスタチン40mgとエゼチミブ10mgの併用療法(9067人)とシンバスタチン40mgとプラセボの投与(9077人)にランダム化し、複合心血管イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、入院が必要な不安定狭心症、割り付け後少なくとも30日後の冠血行再建術、非致死的脳卒中)を検討しました。

統計解析はITT解析で、両群患者背景は同等と記載あります。追跡期間は中央値で6年(追跡率91%)となっており、これまでの研究に比べるとやや長期の観察になっています。ごく小さな差が、追跡期間を長くすることで統計的有意な差を生み出す可能性は念頭に入れておきたいところです。症例数も多く95%信頼区間がかなり狭い印象です。主な結果を以下に示します。


IMPROVE-IT[追跡6年(中央値)
アウトカム E群(9067人) C群(9077人) ハザード比[95%CI]
心血管複合ウトカム 2572人(32.7%) 2742人(34.7%) 0.936[0.89~0.99]
総死亡(※) 1215人(15.4%) 1231人(15.3%) 0.99[0.91~1.07]
がん(※) 738人(10.2%) 732人(10.2%) P=0.57

(※)一次アウトカムではないが重要なアウトカム

ハイリスク患者を対象に、さらに複合アウトカムにしてイベント検出力を挙げ、膨大な症例数と、長期間にわたる観察を経て、ぎりぎりの有意差が出ている印象です。95%信頼区間上限は0.99であり、また信頼区間の幅が非常に狭くなっています。この結果をもってして、エゼチミブが有効と結論するのはやや早々な印象です。超ハイリスク患者において考慮の価値はあるかもしれませんが、目先のLDLコントロール以外に有用性を見出せないというところが実際ではないでしょうか。

[メタ分析より]
エゼチミブの有効性、安全性を検討したメタ分析が報告されています。(※6)
この研究は、少なくとも24週以上追跡したエゼチミブのランダム化比較試験7研究のメタ分析です。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム 相対リスク[95%CI]
がん 3.12[0.62~15.61]
総死亡 1.03[0.43~2.44]
心血管死亡 0.90[0.31~2.59]
重篤な有害事象 1.24[0.88~1.73]


いずれも明確な差を認めておらず、結果に一貫性がりません。


[エゼチミブの考え方使い方]
現段階で、コレステロールが高いだけの低リスク患者に、エゼチミブの単独投与は推奨されません。またスタチンとの併用においても、超ハイリスク患者でさえも、その有効性はかなり小さいものであることが予想され、コストに見合う効果は期待できない印象です。発がんに関しては、1研究でそのリスク増加が示唆され、他の研究を踏まえると、明確なことは良く分からないという状態です。慢性腎臓病患者における末期腎不全への進展抑制効果は不明ですし、心血管イベント抑制効果についても議論の余地は残されています。現段階で、積極的に使用すべき根拠は無いと言えます。

なお現在Ezetimibe Lipid LoWering Trial On PreventIon of Atherosclerosis in 75 or Older(EWTOPIA75試験)が進行中です。この研究は、高LDLコレステロール血症を有するハイリスク高齢患者(75歳以上)に対するエゼチミブの脳心血管イベント発症抑制効果を検討するためのランダム化比較試験で、追跡調査は2017年12月に終了予定です。その結果に注目したいと思います。
http://www.csp.or.jp/ld/ewtopia/about/index.html

[参考文献]
(※1) Rossebø AB, Pedersen TR, Boman K.et.al. Intensive lipid lowering with simvastatin and ezetimibe in aortic stenosis. N Engl J Med. 2008 Sep 25;359(13):1343-56. PMID: 18765433
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18765433
(※2) Peto R, Emberson J, Landray M.et.al. Analyses of cancer data from three ezetimibe trials. N Engl J Med. 2008 Sep 25;359(13):1357-66.PMID: 18765432
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18765432
(※3) Baigent C, Landray MJ, Reith C.et.al. The effects of lowering LDL cholesterol with simvastatin plus ezetimibe in patients with chronic kidney disease (Study of Heart and Renal Protection): a randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2011 Jun 25;377(9784):2181-92. PMID: 21663949
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21663949
(※4) Haynes R, Lewis D, Emberson J.et.al. Effects of lowering LDL cholesterol on progression
of kidney disease. J Am Soc Nephrol. 2014 Aug;25(8):1825-33. PMID: 24790178
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24790178
(※5) Cannon CP, Blazing MA, Giugliano RP.et.al. ; IMPROVE-IT Investigators. Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes. N Engl J Med. 2015 Jun 3. [Epub ahead of print] PMID: 26039521
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26039521
(※6)Battaggia A, Donzelli A, Font M.et.al. Clinical efficacy and safety of ezetimibe on major cardiovascular endpoints: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. PLoS One. 2015 Apr 27;10(4):e0124587. PMID: 25915909
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25915909

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■シタグリプチンの有効性■
Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes
NEJM June 8, 2015
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1501352#t=articleBackground

背景と研究デザイン:TECOS試験。心血管疾患を有する2型糖尿病患者の通常ケアにシタグリプチン上乗せ効果を検討した2重盲検ランダム化比較非劣性試験

P:50歳以上で心血管疾患の既往のある2型糖尿病患者14671人(血糖降下薬での治療下でHbA1cが6.5~8.0%、過去3か月にインクレチン関連薬、チアゾリジン使用者を除外)
E:シタグリプチン100mg/日(eGFRが30以上50未満では50mg/日)を投与(7332人)
C:プラセボを投与(7339人)
O:心血管死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・不安定狭心症による入院の複合アウトカム

※全ての患者において適切な血糖レベル到達のために、必要に応じてオープンラベルで血糖降下薬を使用。
※非劣性マージンは95%信頼区間上限1.3[主要解析はPer-protocol population]
※追跡期間:3年(中央値) 試験完遂はE群6972人(95.1%)、C群6905人(94.1%)
※サンプル計算:14000例
※患者背景:Well balanced

TECOS[追跡3年(中央値)]
アウトカム シタグリプチン プラセボ ハザード比[95%CI]
複合ウトカム[PPT] 695/7257

(9.6%)

695/7266

(9.6%)

0.98[0,88~1.09]
複合ウトカム[ITT] 839/7332

(11.4%)

851/7339

(11.6%)

0.98[0,89~1.08]
総死亡[ITT] (※) 547/7332

(7.5%)

537/7339

(7.3%)

1.01[0.90~1.14]
心不全による入院[ITT](※) 228/7332

(3.1%)

239/7339

(3.1%)

1.00[0.83~1.20]
急性膵[ITT] (※) 23/7332

(0.3%)

12/7339

(0.2%)

1.93[0.96~3.88]

※一次アウトカムではないが注目のアウトカム

心血管疾患を有する2型糖尿病患者の通常ケアにシタグリプチンを上乗せしても心血管イベント、急性膵炎、心不全による入院は増えないと結論。

■スタチン等の脂質低下薬と急性記憶障害との関連■
Strom BL, Schinnar R, Karlawish J.et.al. Statin Therapy and Risk of Acute Memory ImpairmentJAMA Intern Med. 2015 Jun 8.PMID: 26054031
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26054031
背景と研究デザイン:スタチンと記憶障害の関連には一貫性がない。スタチンの使用が急性の記憶障害と関連するかどうか、スタチン非使用者、並びにスタチン以外の脂質低下薬使用者との比較で検討した後ろ向きコホート&ケースクロスオーバー解析

P:THINのデータベースより後ろ向きコホートに組み入れたのは482543人のスタチン使用者と脂質低下薬非使用者482543人、スタチン以外の脂質低下薬使用者26484人。ケースクロスオーバー解析は68028人が対象となっており、アウトカム発症前に3つの暴露期間を設けている。
E:スタチンの使用、スタチン以外の脂質低下薬の使用
C:脂質低下薬の使用なし
O:急性記憶障害

急性記憶障害は脂質低下薬の使用が無い集団と比べると
・スタチンの使用:調整オッズ比4.40[95%信頼区間3.01~6.41]
・スタチン以外の脂質低下薬:調整オッズ比3.60[95%信頼区間1.34~9.70]

なおスタチンとスタチン以外の脂質低下薬の比較では明確な差が無い。
また、ケースクロスオーバー解析でも同様の関連が示唆。


■喘息患者における大豆イソフラボンの効果■
Smith LJ, Kalhan R, Wise RA.et.al. Effect of a soy isoflavone supplement on lung function and clinical outcomes in patients with poorly controlled asthma: a randomized clinical trial. JAMA. 2015 May 26;313(20):2033-43PMID: 26010632
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26010632

背景と研究デザイン:一部の研究では大豆イソフラボンはコントロール不良な喘息患者における有効な治療である可能性が示唆されている。大豆イソフラボンサプリメントが喘息コントロールを改善するか検討したプラセボ対照2重盲検ランダム化比較試験

P:12歳以上のぜんそく患者386人
E:大豆イソフラボンサプリメント100mgを投与(193人)
C:プラセボを投与(193人)
O:24週後の1秒量(FEV1)[代用のアウトカム]

24週後のFEV1の平均変化ははイソフラボンで0.01L[95%信頼区間-0.07~0.07]、プラセボで0.03[-0.01~0.08]と両群に明確な差を認めない(P=0,36 )
喘息コントロール悪化などにも差を認めず、大豆イソフラボンサプリメントの使用は推奨されない。

■勤務形態と死亡リスク■
Honjo K, Iso H, Ikeda A.JACC Study Group..et.al. Employment situation and risk of death among middle-aged Japanese women. J Epidemiol Community Health. 2015 Jun 4. pii: jech-2015-205499. PMID: 26043897
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26043897
背景と研究デザイン:女性における雇用状況(フルタイム、パートタイム)による健康への影響を20年にわたり調査したコホート研究(Japan Collaborative Cohort Study.)

P:40歳~59歳の日本人女性16692人
E:パートタイム、自営業
C:フルタイム
O:死亡
交絡へ配慮:年齢、病歴、住宅地、教育レベル、婚姻状況や子供の数

フルタイム労働と比較して
パートタイム:ハザード比1.48 (95%信頼区間1.25~1.75)
自営業:ハザード比1.44 (95%信頼区間 1.21~1.72),
教育水準によるサブ解析では低水準で死亡リスクが高い可能性を示唆。
雇用情勢と死亡リスクに関連性が認められる。

■化学療法への効果と患者の期待■
Weeks JC. Catalano PJ, Cronin A,et.al. Patients' expectations about effects of chemotherapy for advanced cancer. N Engl J Med. 2012 Oct 25;367(17):1616-25. PMID: 23094723
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23094723
背景と研究デザイン:転移性の肺癌、大腸がんは化学療法により延命が期待でき、症状の緩和も想定できるが治癒はしない。前向きコホート研究のデータを用いた横断的研究。

P: 癌の診断後4 ヵ月間生存し、新たに診断された転移性の肺癌もしくは大腸癌に対して化学療法を受けた1193人
E:化学療法を受ける
C化学療法を受けない
O: 化学療法によって治癒する可能性があるという期待をもつ患者の割合

肺癌患者の 69%、大腸癌患者の 81%において、化学療法によって癌が治癒する可能性がないという事を理解している、と言う回答を得られなかった。化学療法によって治癒する可能性が低いことを多くの癌患者が理解していない。

■スマートフォンの使用と親指への影響■
İNal EE, Demİrcİ K2, Çetİntürk A.et.al. Effects of smartphone overuse on hand function, pinch strength, and the median nerve. Muscle Nerve. 2015 Apr 25. doi: 10.1002/mus.24695. [Epub ahead of print] PMID: 25914119
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25914119
背景と研究デザイン:スマートフォンの使用と手の臨床的および機能的状態に関する影響を評価するために、超音波検査により、スマートフォンのユーザーの長母指屈筋(FPL)腱と正中神経を調査した。(非ランダム化と思われる)

P:102人の学生
E:スマートフォン依存スケールスコア(SAS)による高頻度スマートフォン使用者、低頻度スマートフォン使用者
C:スマートフォン非使用者
O:親指動作時・安静時疼痛(VASで評価)や機能(Duruöz Hand Index :DHIで評価)

依存スコアであるSASスコアは、運動・安静時疼痛VASやDHIと相関した。スマートフォンの酷使は親指の疼痛や機能低下と関連している。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■抗ヒスタミン薬による蕁麻疹■
Sánchez Morillas L1 Rojas Pérez-Ezquerra P, Reaño Martos M,et.al. Urticaria due to antihistamines. J Investig Allergol Clin Immunol. 2011;21(1):66-8. PMID: 21370726
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21370726
エバスチン、フェキソフェナジンにより誘発されたとされる蕁麻疹の症例報告。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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エゼチミブのIMPROVE-IT、やっと論文化されました。脂質低下療法として、単剤での第一選択としての臨床意義は不明ですが、スタチン療法への上乗せについてもかなり微妙な印象です。発がんリスクについてはその後の研究で明確なことはよくわからないという結果になっていますが、コストに見合うだけの予後改善効果は期待できない印象です。代用のアウトカム改善の必要に迫られた場合などその使用はかなり限定的でしょう。

さらにシタグリプチンのTECOSも論文化されました。こちらも結果が待ち遠しいものでしたが、予想通り、悪い意味で期待を裏切らず。。DPP4阻害薬の臨床試験はおおむね出そろいましたので、当ブログでもクロニクルとしてまとめていきたいと思います。

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地域医療の見え方  2015.Jun.24;1(23)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-エフィコナゾール爪外用液の効果-
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[ポイント]
■エフィコナゾール爪外用液は爪白癬に対する治療薬として本邦初の外用液であり、既存の内服治療で懸念される薬物有害事象の問題において圧倒的なアドバンテージがある
■有効性に関して、プラセボに比べて優れているものの、既存の内服治療をしのぐものではない。
■爪白癬の完全治癒に対するNNTは52週の追跡で7人~11人である。
■適用部位皮膚炎などの有害事象に留意する。


[イントロダクション]
新規トリアゾール系化合物であるエフィナコナゾールは日本初の外用爪白癬治療剤と言われています。

エフィコナゾール承認前においては、国内で承認されている爪白癬治療薬は経口抗真菌薬のみであり、「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」でも内服療法を原則としていました。しかし、経口抗真菌薬には肝障害等の有害事象や薬物相互作用も多く、特に高齢者や合併症により複数の薬剤を服用している患者ではなかなか使いづらいケースも多々ありました。

エフィナコナゾールは、爪白癬の原因真菌(皮膚糸状菌)に対して高い抗真菌活性を有することが確認されており、またケラチンとの親和性が低く、爪甲の透過性に優れることから、外用剤として爪表面に塗布することにより爪中・爪床において高い抗真菌活性を発揮する可能性が示唆されています。(※1)

<効能・効果に関連する使用上の注意>は以下の通りです。
1.直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者に使用すること。
2.重症患者における本剤の有効性及び安全性は確認されていない
なお用法及び用量は「1 日 1 回罹患爪全体に塗布する」となっています。

[エフィコナゾールの有効性①第2相臨床試験]
PubMedのClinical Queriesを用いて「Efinaconazole」で検索すると、「therapy」「narrow」において検索される文献は2つのみです。(※2)(※3)
爪白癬の病型として、は以下のものがあります。(※4)

・遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO)
爪甲の遠位部または側縁部より爪甲下に、皮膚糸状菌が侵入して生じます。爪甲の混濁肥厚、爪甲下角質増殖をきたし、爪白癬の9割はこの型といわれています。
・表在性白色爪真菌症(SWO)
爪表面の傷口から皮膚糸状菌が侵入して生じるといわれており、点状ないし斑状の白濁が見られます。DLSOに比べ、症例数ははるかに少ないといわれています。
・近位爪甲下爪真菌症(PSO)
近位側の爪上皮より皮膚糸状菌が侵入して生じます。足の爪では極めてまれ。
・全異栄養性爪真菌症(TDO)
DLSO、SWO、PSOが進行し、病変が爪全体へ拡大したものです。

第2相試験は、爪白癬の9割をしめる遠位側縁爪甲下爪真菌症( distal and lateral subungual onychomycosis、DLSO)を対象に行われています。(※2)

研究デザインは多施設2重盲検ランダム化比較試験で、軽度から中等度のDLSO患者135人が対象となっています。用量探索試験という目的もあるため患者は以下の4群に割り付けられました。

(1)エフィコナゾール10%溶液
(2)エフィコナゾール10%溶液(治験薬を塗布し、乾燥後に対象爪のみを半透性フィルムで覆い、その状態を一晩維持するsemiocclusion)
(3)エフィコナゾール5%溶液
(4)基剤(有効成分なし)

用法は各群ともに1日1回、36週間治療を行い、治療後4週まで追跡しました(40週)評価項目は完全治癒、細菌学的治癒、臨床的有効率でした。

主な結果は以下の通りです。

・完全治癒
基剤のみで9%に対して、エフィコナゾール群はいすれもそれを上回った(16~26%)

・細菌学的治癒
エフィコナゾール10% semiocclusion, で83%、エフィコナゾール10%で87%、エフィコナゾール5%で87%

・臨床的有効率
エフィコナゾール10%群で基剤に比べ有意であった。
エフィコナゾール10% semiocclusion, P=.0088
エフィコナゾール10%.0056

DLSOに対して、semiocclusionの有無にかかわらず、エフィコナゾール10%溶液1日1回を36週間の治療は基剤単独に比べて効果的であっつたと結論し、これらの結果に基づき、エフィコナゾール10%溶液が3相試験の用量として設定されました。

[エフィコナゾールの有効性②第3相臨床試験]
DLSOに対するエフィコナゾール10%溶液の有効性を検討した第3相試験は、多施設、2重盲検、ランダム化比較試験により検討されています。なおこの第3相試験は国際共同第Ⅲ相試験(870例)、海外第Ⅲ相試験(781 例)の2研究で構成されています。

患者はエフィコナゾール10%溶液群、基剤群の2群に3:1でランダム化されており、1日1回48週間治療されました。さらに治療後4週間追跡されています。主要評価項目は52週時点での完全治癒率(感染面積0%かつ真菌学的治癒の割合)でした。

なお論文自体は抄録しかアクセスできませんが、クレナフィン®のWEBサイトに詳細が掲載されていますので、ここではその情報も合わせてまとめます。

①国際共同第Ⅲ相試験
http://clenafin.jp/product/clinicaltest1.html
対象となったのは、第1趾爪(対象爪)の感染面積が20~50%である軽度~中等度のDLSO(遠位・側縁部爪甲下爪真菌症)患者870例(日本人患者243例を含む)です。

②海外第Ⅲ相試験
http://clenafin.jp/product/clinicaltest2.html
対象となったのは第1趾爪(対象爪)の感染面積が20~50%である軽度~中等度のDLSO(遠位・側縁部爪甲下爪真菌症)患者781例です。

主要評価項目である52週時点での完全治癒率は以下の通りです。

完全治癒率(52週目)
研究名 E群 C群 結果
国際共同第Ⅲ相試験 17.8% 3.3% P < .001
海外第Ⅲ相試験 15.2% 5.5% P < .001


せっかくなのでNNTを計算してみましょう。52週で7人~11人という感じでしょうか。NNTだけ見てみると決して悪くはないイメージです。まあ比較対象が単なる基剤ですから、治療効果が低ければ感染症治療薬としてはなかなかその存在意義は危うくなります。軽度~中等度のDLSO患者10人を48週治療して一人完治するというのがエフィコナゾールの実力という感じでまとめておきます。

[3相試験のプールド解析]

ご紹介した2つの3相試験のプールド解析が行われています。(※5)
アウトカム E群 C群 結果
完全治癒 18.5% 4.7% P< 0.001
細菌学的治癒 56.3% 16.6% P< 0.001

なお有害事象は基剤と同等であり、局所部位反応が2%であったとしています。

[エフィコナゾールの刺激性]
外用剤だけに局所反応は致し方ない部分もありますが、その刺激性はどの程度のものなのでしょうか。

18歳~70歳の健常ボランティア239人を対象とした、エフィコナゾールと基剤の刺激性を検討した研究が報告されています。(※6) この研究によるとエフィコナゾール10%溶液は、接触感作の原因とはならず、また皮膚刺激は最小限であった。と報告しています。

先の第3相試験での有害事象も見てみましょう。

国際共同試験ではクレナフィン群7.5%(49/653例)、基剤群2.3%(5/213例)で、主な副作用は適用部位皮膚炎22例(3.4%)、適用部位小水疱12例(1.8%)、適用部位紅斑5例(0.8%)、適用部位そう痒感4例(0.6%)等でした。

海外試験ではクレナフィン群5.1%(29/574例)、基剤群4.5%(9/200例)で、主な副作用は適用部位小水泡6例(1.0%)、適用部位皮膚炎4例(0.7%)、適用部位紅斑4例(0.7%)、適用部位疼痛4例(0.7%)、適用部位腫脹4例(0.7%)、適用部位皮膚剥脱4例(0.7%)等でした。

[既存の爪白癬治療との比較]
エフィコナゾール爪外用液の有効性は、これまでの内服薬よりも優れるものなのでしょうか。爪白癬に対する抗真菌薬の有効性を検討したネットワークメタ分析の報告を見てみましょう。(※7)

テルビナフィン250mg(ラミシール®)は、イトラコナゾール(イトリゾール®)400mgのパルス療法を除く、全ての治療よりも有意に優れていました。またイトラコナゾール200mgはフルコナゾール(ジフルカン®)に有意に優れていました。

局所治療は、フルコナゾール、エフィコナゾール、テルビナフィン外用液などはプラセボに比べて優れているだけでした。

これらの結果を踏まえると、テルビナフィン内服やイトラコナゾールのパルス療法が優れた治療である可能性を示唆していると結論しています。

参考までに添付文書上の情報を含めて以下にまとめておきます。アウトカム指標の定義が同一ではないものと思いますので、あくまで参考程度ですが、ネットワークメタ分析の結果をほぼ支持しており、エフィコナゾールはこれまでの内服治療の有効性をしのぐものではない印象です。

爪白癬に対する有効性
薬剤名 結果
イトラコナゾールパルス療法 有効率

400mg/日3サイクル投与84.6%

200mg/日6サイクル投与66.7%

200mg/日3サイクル投与63.8%

テルビナフィン内服 有効性: 爪白癬84.4%
エフィコナゾール爪外用

(第3層試験より)

完全治癒:15.2%~17.8%

臨床的有効率:31.0%~35.7%



[エフィコナゾール爪外用液の考え方]

プラセボに比べて有効性が高いのは当たり前ですが、現段階で経口抗真菌薬をしのぐものではないといえます。確かに経口抗真菌薬は有害事象の面で問題となるケースが多々ありますが、現在使用されているテルビナフィンの外用液などとの効果に著明な差が出るのか議論の余地はありそうです。問題はテルビナフィン外用液に爪白癬の適応がないことくらいでしょうか。テルビナフィン外用液と爪白癬に関する研究はあまりないようで、今回PubMedで検索しても有効性を示すような論文は見つけることができませんでした。

経口治療における有害事象リスクを加味すればクレナフィン爪外用液は安全性に優れていると言えそうですが、テルビナフィン外用液との有効性差異は不明確です。薬剤選択においては治療効果(経口抗真菌薬>クレナフィン)、有害事象(経口抗真菌薬<クレナフィン)に関して、十分な説明がなされたうえで、患者自身の希望も十分に考慮に入れたいところです。

[参考文献]
(※1)クレナフィン爪外用液10% インタビューフォーム2015 年 3 月改訂(第 3 版)
(※2) Tschen EH, Bucko AD, Oizumi N.et.al. Efinaconazole solution in the treatment of toenail onychomycosis: a phase 2, multicenter, randomized, double-blind study. J Drugs Dermatol. 2013 Feb;12(2):186-92. PMID: 23377392
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23377392
(※3) Elewski BE, Rich P, Pollak R.et.al. Efinaconazole 10% solution in the treatment of toenail onychomycosis: Two phase III multicenter, randomized, double-blind studies. J Am Acad Dermatol. 2013 Apr;68(4):600-8. PMID: 23177180
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23177180
(※4) 爪真菌症 疫学,診断,治療の最近の進歩 真菌誌,47(2),69-73,2006
http://www.jsmm.org/common/jjmm47-2_069.pdf
(※5)Gupta AK, Elewski BE, Sugarman JL,et.al. The efficacy and safety of efinaconazole 10% solution for treatment of mild to moderate onychomycosis: a pooled analysis of two phase 3 randomized trials. PMID: 25007364
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25007364
(※6) Del Rosso JQ, Reece B, Smith K.et.al. Efinaconazole 10% solution: a new topical treatment for onychomycosis: contact sensitization and skin irritation potential. J Clin Aesthet Dermatol. 2013 Mar;6(3):20-4. PMID: 23556032
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23556032
(※7) Gupta AK, Daigle D, Paquet M.et.al. Therapies for Onychomycosis: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Mycological Cure. J Am Podiatr Med Assoc. 2014 Jul 17. [Epub ahead of print] PMID: 25032982
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25032982

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-
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■糖尿病や腎障害を有する患者での降圧薬■
Palmer SC, Mavridis D, Navarese E.et.al. Comparative efficacy and safety of blood pressure-lowering agents in adults with diabetes and kidney disease: a network meta-analysis. Lancet. 2015 May 23;385(9982):2047-56. PMID: 26009228
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26009228
背景:糖尿病や腎臓疾患を有する高血圧患者に対する降圧薬の有効性には議論の余地がある。このような患者集団を対象とした降圧薬の有効性、有害性をネットワークメタ分析で検討。

P:157研究に参加した43256人の2型糖尿病患者、慢性腎臓病患者
E:降圧薬の使用
C:プラセボの使用
O:総死亡、末期腎不全、(セカンダリアウトカム:高カリウム血症、急性腎障害など)

総死亡はいずれの降圧薬においてもリスクの低下は示されなかった。
ACE阻害薬とARBの併用は末期腎不全リスクを減らす。
・オッズ比:0.62[95%信頼区間0.43~0.90]
ARB単独治療は末期腎不全を減らす
・オッズ比0.77[95%信頼区間0.65~0.92]

ACE阻害核とARBの併用は高カリウム血症や急性腎傷害リスクの増加傾向にある
・高カリウム血症:オッズ比:2.69[95%信頼区間0.97~7.47]
・急性腎傷害:オッズ比:2.69[95%信頼区間0.98~7.38]

■お茶の摂取と出血性脳卒中■
Lee SM, Choi NK, Yoon BW.et.al. The Impact of Green Tea Consumption on the Prevention of Hemorrhagic Stroke. Neuroepidemiology. 2015 May 27;44(4):215-220PMID: 26021303
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26021303
背景と研究デザイン:お茶の種類により、脳卒中の予防効果が変わるのかを検討した症例対照研究

P:脳卒中の既往のない、非外傷性出血性脳卒中患者(30歳~84歳)940人を症例とし、年齢、性別でマッチングした院内コントロール940人と地域在住のコントロール940人を対照群に設定。
E:緑茶、ウーロン茶、紅茶の摂取あり
C:お茶の摂取なし
O:出血性脳卒中

摂取なしと比較した脳卒中のオッズ比[95%信頼区間は以下の通り]
・緑茶:0.71[0.59~0.87]
・ウーロン茶:0.86[0.55~1.37]
・紅茶:1.34[0.91~1.98]


■尿管結石に対する薬物療法■
Pickard R, Starr K, MacLennan G.et.al. Medical expulsive therapy in adults with ureteric colic: a multicentre, randomised, placebo-controlled trial. Lancet. 2015 May 18. pii: S0140-6736(15)60933-3. PMID: 25998582
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25998582
背景と研究デザイン:これまでのランダム化比較試験のメタ分析ではタムスロシンやニフェジピンが尿管結石の薬物治療として効果が期待できる可能性が示唆されていたが、質の高い研究が必要とされてきた。CTにより最大径が10mm以下の結石が尿管に1つ見つかった患者を対象に、タムスロシン、ニフェジピンを投与して、尿管結石の破砕などの治療を受けずに済んだ人の割合を検討したランダム化比較試験。

P:CTにより最大径が10mm以下の結石が尿管に1つ見つかった18歳~65歳の尿管結石患者1167人(平均42.7歳、結石の大きさや、結石の位置などで調整)
E:タムスロシン0.4mg/日を投与391人
E:ニフェジピン30mg/日を投与387人
C:プラセボを投与389人
O:割り付けから4週以内に結石の破砕など治療が不要だった人の割合

盲検化:2重盲検
統計解析:修正ITT解析
サンプルサイズ:パワー90%、αエラー5%で各群354人(1062人)
追跡期間:4週

主な結果は以下の通り。いずれも明確な差は出なかった。
結石の破砕など治療が不要だった人の割合
薬剤名 タムスロシン ニフェジピン プラセボ
結果 307/378

(81%)

303/379

(80%)

303/379

(80%)

調整オッズ比 1.09[0.67~1.78] 1.03[0.68~1.56] reference
調整リスク差 1.3%[-5.7~8.3] 0.5%[-5.6~6.5] reference



■急性冠症候群による入院後のスタチン+エゼチミブ■
Cannon CP, Blazing MA, Giugliano RP.et.al. ; IMPROVE-IT Investigators. Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes. N Engl J Med. 2015 Jun 3. [Epub ahead of print] PMID: 26039521
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26039521
背景と研究デザイン:スタチンはLDLコレステロール値を低下させ、心血管イベントの減少効果を期待することができるが、スタチンにエゼチミブを上乗せした際の併用効果は不明である。急性冠症候群にて入院した高リスク患者への脂質低下療法としてスタチン単独とスタチン+エゼチミブの併用効果を検討した2重盲検ランダム化比較試験(IMPROVE-IT)

P:50歳以上で急性冠症候群で入院後10日以内の患者18144人。脂質低下療法を受けていない患者ではLDLコレステロールが50~125mg/dl 脂質低下療法を受けている患者ではLDLコレステロールが50~100mg/dlの患者を対象とした。なお平均年齢は63.6歳、男性75.7%、平均体重83㎏、BMI28.3、糖尿病27.2%、高血圧61.5%、ACS発症前のスタチン療法は34.5%、心筋梗塞の既往21%と、かなりハイリスクな患者が対象となっている。またACSは非ST上昇型心筋梗塞が約47%、ST上昇型心筋梗塞が約28%、不安定狭心症が約24%となっている。

E:シンバスタチン40mgとエゼチミブ10mgの併用療法(9067人)
C:シンバスタチン40mgとプラセボの投与(9077人)
O:複合心血管イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、入院が必要な不安定狭心症、割り付け後少なくとも30日後の冠血行再建術、非致死的脳卒中)

盲検化:2重盲検法
1次アウトカムのサンプル計算:パワー90%で5250人
(※)症例数は計算されたサンプルサイズを大幅に上回る。そのため95%信頼区間の幅が小さくなり、統計的有意な差が出やすい可能性がある
統計解析:ITT解析
両群患者背景:同等と記載あり
追跡期間:中央値で6年 追跡率91%(総死亡においては97%)
(※)追跡期間が通常の慢性疾患で行われる臨床試験よりも長い印象。ごく小さな差が、追跡期間を長くすることで統計的有意な差を生み出す可能性を考慮したい。


アウトカム E群(9067人) C群(9077人) ハザード比[95%CI]
心血管複合ウトカム 2572人(32.7%) 2742人(34.7%) 0.936[0.89~0.99]
総死亡(※) 1215人(15.4%) 1231人(15.3%) 0.99[0.91~1.07]
がん(※) 738人(10.2%) 732人(10.2%) P=0.57

(※)一次アウトカムではない

ハイリスク患者を対象に、さらに複合アウトカムにしてイベント検出力を挙げ、膨大な症例数と、長期間にわたる観察を経て、ぎりぎりの有意差が出ている。95%信頼区間上限は0.99であり、また信頼区間の幅が非常に狭い。この結果をもってして、エゼチミブが有効と結論するのはやや早々。少なくとも日常臨床において、著明な効果は期待できなず、これまでの研究の示唆を大きく覆すものではない印象。超ハイリスク患者において考慮の価値はあるかもしれないが、目先のLDLコントロール以外に有用性を見出せない。

■2型糖尿病における血糖コントロール VADT長期追跡■
Hayward RA, Reaven PD, Wiitala WL.et.al. ; VADT Investigators. Follow-up of Glycemic Control and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2197-2206. PMID: 26039600
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26039600
背景と研究デザイン:退役軍人省糖尿病試験(VADT)において、1791人の退役軍人に対する厳格な血糖コントロールが標準ケアに比べて、追跡中央値5.6年で主要な心血管イベントを抑制できなかった。この研究参加者を長期追跡して、厳格な血糖コントロールの予後を検討した。

P:VADTに参加した退役軍人(完全コホート92.4%、調査コホート77.7%)
E:厳格な血糖コントロール
C:通常の血糖コントロール
O:心血管イベント初発(心臓発作、脳卒中、うっ血性心不全の新規発症もしくは悪化、虚血性壊疽による肢切断、心血管死亡)
追跡:全体で9.8年(中央値)

心血管イベント初発は17%減少する。
・ハザード比0.83[95%信頼区間0.70~0.99]
セカンダリアウトカムの総死亡に明確な差は無い。
・ハザード比1.05[95%信頼区間0.89~1.25]

RCTの長期追跡のため解釈注意。交絡の影響あり。複合アウトカムにおいて10年追跡でぎりぎりの有意差。総死亡についてはおそらくサンプルが足りないため評価不能であり、結論の「改善しない」と言うのはやや言い過ぎか。先日報告されたADVANCEの長期追跡と並んで貴重な報告。今後出るであろうACCORDの長期追跡に注目したい。

■乳がん検診におけるinformed choice■
Hersch J, Barratt A, Jansen J.et.al. Use of a decision aid including information on overdetection to support informed choice about breast cancer screening: a randomised controlled trial. Lancet. 2015 Apr 25;385(9978):1642-52. PMID: 25701273
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25701273
背景と研究デザイン:マンモグラフィーによるスクリーニングは乳癌死亡を減らすことができる。しかしながら、多くの女性で、スクリーニングによって、取るに足らない病変もまた見つかってしまい、過剰診断や、過剰治療を導く。この研究の目的は、過剰診断についての情報提供が、50代の女性で、乳癌スクリーニングにおけるinformed choice(医療者の十分な説明を前提とした、患者の能動的な選択)のための決定支援になるかどうかの検討を行ったランダム化比較試験である。

P:電話にてリクルートした48歳~50歳の女性879人(過去2年間にマンモグラフィーを受けておらず、本人に乳癌の既往が無く、また強い家族歴もない患者)
E:エビデンスに基づく過剰診断、乳癌死亡の減少効果、偽陽性についての説明と定量的情報の提供440人
C:乳癌死亡減少効果と偽陽性についての説明439人
O:割り付け3週後の十分な知識とスクリーニングへの意志とその態度の一貫性で定義された、informed choice(医療者の十分な説明を前提とした、患者の能動的な選択)

ロストは41人(E群21人、C群20人)

アウトカム E群(409人) C群(408人) 絶対差[95%信頼区間]
informed choice 99人(24%) 63人(15%) 9%[3~14]
十分な知識 29% 17% 12%[6~18]
前向きな態度 69% 83% 14%[9~20]
検診への意志 74% 87% 13%[8~19]


より適切な情報提供ではinformed choiceは上昇し、スクリーニングは受診しなくなる傾向にあるという結果。非常に重要な示唆であり、検診推進論者はこの点を軽視してはならない。すなわち、常識的価値観で検診を推奨するのではなく、エビデンスを踏まえたうえで、様々な選択肢を提示し、患者に決定させるという事が大切なのだ。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-
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■ジェットコースター乗車後に生じた硬膜下血腫■
小守林 靖一.大間々 真一 , 吉田 雄樹 他 ジェットコースター乗車後に生じた硬膜下血腫の1例.日救急医会誌. 2015; 26; 25-9
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12003/abstract
2年前に右前頭葉底部の脳挫傷で入院加療の既往がある63歳の女性。遊園地でジェットコースターに5回乗車し、乗車後より頭重感。翌日に頭痛が増悪し近医を受診。頭部CTで右急性硬膜下血腫を認め入院加療。経過観察で軽快するも、再び硬膜下血腫の増大を認めたため緊急入院。穿頭血腫除去術を施行。術5日目に神経学的脱落症状なく,独歩自宅退院

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-
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NEJMから重要な報告が出ています。VADT長期追跡とエゼチミブのIMPROVE-ITです。このテーマは次回以降、当ブログでもまとめていきたいと考えています。
Lancetの乳がん検診の論文も非常に重要な報告かと思います。このテーマについても乳がん検診の実効性を踏まえて、考察をまとめていかねばならないなあと思っています。

さて、当ブログ立ち上げから約半年。ブログ記事をジャーナル形式にして週1回の更新を続けてまいりました。テーマのネタがなくなってしまうのでは、という当初の予想に反して、まとめておきたいテーマは尽きません。まとめている間にも情報は更新されていきますが、いったん整理しておかないと、最新の論文知見を最大限に活用できない、というのはこのブログを続けている中で、経験的に学びました。

当ブログはこのジャーナルスタイルを維持したまま今後も更新を続けたいと思います。WEBマガジンでもブログでもなく、WEBジャーナルという新たなメディアとして、是非、日常業務で活用していただけましたら幸いです。

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ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jun.17;1(22)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-薬局での簡易血糖検査、その新たな可能性-

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[ポイント]
■糖尿病検診の実効性は曖昧であるがゆえに、有効である、無効である、などと言うような明確な言説は多くの場合で誤りである可能性がある。
■糖尿病検診はその対象者を限定して考えるべきである。
■薬物有害事象のモニタリングのために簡易血糖検査を行うのは薬剤師の新たな役割としての可能性を孕んでいる。

[イントロダクション]
地域医療の見え方2015.Apr.15;1(14)supplement
http://jp.bloguru.com/syuichiao/237073/2015apr15114supplement
では糖尿病スクリーニングに関する最新レビューをもとに急遽記事をアップしました。このテーマは薬局店頭における簡易血糖測定など、薬剤師にとっても非常にホットな話題だけに、その是非をめぐり多くの議論を必要としていると感じます。

また当テーマに関して以下のサイトにこれまでの思索をまとめてあります。

▶地域医療ジャーナル2015年06月号 vol.1(4)
「対論:糖尿病検診の実効性、そして病名と時間」
http://cmj.publishers.fm/article/8210/

▶思想的、疫学的、医療について
「糖尿病検診のゆくえ」
http://syuichiao.hatenadiary.com/entry/2015/05/28/000000

現時点で一つ言えるのは、このようなエビデンスを踏まえると、薬局店頭での糖尿病スクリーニングを推進することで健康長寿を達成できるというような単純明快な言明で済ませられるようなものではなく、非常に複雑な事態であることが浮き彫りとなります。そのために少なくとも以下の2つの言明は誤りであると言えます。

①薬局店頭での糖尿病スクリーニングは地域住民の健康的な生活に貢献できる
②薬局店頭での糖尿病スクリーニングに意味はない。

対象者を絞れば、明確な言明の妥当性は上昇しますが、「薬局店頭における検診希望者」、という条件付きではその妥当性は低くなる印象を受けるのは僕だけでしょうか。

世の中の大きな流れは、完全に①の方向に振り切っています。したがって僕自身は①でも②の立場でもないのですが、世間的には②の立場の人と見られているかもしれません。いずれにせよどちらも誤りであり、「そういう部分がある」という事に過ぎないわけです。したがって全体を取り扱う方法ではないという事は明確です。(対象者を絞り、個別考慮すべき問題)ゆえに自治体がマスを対象に行うというのはまだまだ検討の余地があるはずなのです。

繰り返しますが、糖尿病スクリーニングは全体の問題ではなく、患者個別の問題です。個別の問題と言ってしまえば身もふたもないですが重要なことです。

スクリーニングのベネフィットは、通常の健康診断などで全く検診を受けない人たちのと比較のにおいて、特定の年齢と、特定検診サイクルの中で費用対効果がシミュレーションにより示された報告はあります。(※1)
30歳~45歳までの間にスクリーニングを開始し、3年から5年毎に定期的に続けるというのが費用対効果に優れると報告されています。なので会社で健康診断を受けている、あるいはかかりつけの病院で血液検査を定期的に受けている人にはあまり費用対効果に優れているとは言えない側面もあるでしょう。
まあ個別の問題じゃないとする意見もあるかもしれませんが、現時点で全体を取り扱う方法としての有用性は不明な部分が多いのです。

[個別の問題、具体的にどう考える?]
おおよそ薬局店頭での糖尿病スクリーニングにお金を払ってまで受けたいと思う人たちは健康意識が低いとは考えにくいです。すでに何らかの医療機関を受診している可能性も高い。例外はもちろんありますが、そもそも日本の保険薬局において、医療機関を受診せずに来局するというのはなかなかハードルが高い部分もあります。(全てがそうとは言いません。またドラックストアなどは別かもしれませんが…)

そのハードルを下げるための取り組み、と言われれば、まあそれも意味があるのでしょう。然しそれもまた部分にすぎません。健康増進のための薬局の役割と言うのは、時に幻想的な側面もあります。やはり対象となる患者を限定すべきです。(※1)の論文を踏まえれば、30歳~45歳くらいで、特に以下のような人を対象にするのも良いかもしれません。

①医療機関を数年全く受診していない人
②社会的な外部接触が非常に少ない人

まあ①も②も同じだ、と言えるかもしれませんが…。年齢は異なりますが、例えば以下のような状況はどうでしょうか。

「うちの旦那は医者嫌いで、絶対に病院へ行かないんです。定年してからは、いつも家にいて、布団も敷きっぱなしですし…。医者嫌いな割には、歯が痛いとか、体がだるいとか、そんな文句ばっかり言って。お昼からお酒を飲んで、ぼけーっとしてるんですよ。本当に困ったものです。」

という人ならばおそらく糖尿病スクリーニングも有用かもしれません。この場合、この会話の人ではなくその旦那さんを対象に行うという事になります。薬局に自ら進んで足を運ぶような人ではなく、そういった人の周りに存在する先の①や②に該当する人(別に周りじゃなくても良いと思いますが)、と言うような視点で眺めてみると、対象者を限定すべきということが具体的にわかりやすくなるかもしれません。

今回はそれ以外の対象者として、一つの仮説を提示したいと思います。僕は薬局店頭での糖尿病スクリーニングに対して、それが無意味だなんていうつもりは毛頭ありません。そういった取り組みは、まず「その実効性を詳細に分析する」こと、分析された実効性に対して、「どのような集団に有効か」「どのような目的で実施するか」、この2点を熟慮すべきだとこれまでにも述べてきました。しかし相変わらず世の中は、物事を単純化したいようです。

[糖尿病スクリーニングの新たな可能性]

否定的なことをここで延々述べるつもりはありません。僕も薬剤師です。あらたな職能、それは僕たちにとってとても大事なことでしょう。しかしそれ以上に大事なことは根幹となる職能をより洗練させることです。薬剤師は医薬品のプロフェッショナル。有効性、安全性に関して医師よりも熟知していなくてはいけません。

その様な観点から糖尿病スクリーニングを眺めてみると一つの可能性が浮き彫りとなります。そうそれは薬剤による有害事象としての糖尿病、それをモニタリングすること。すなわち糖尿病スクリーニングをどのような目的で実施するかということの一つの可能性です。

その実効性が現段階で明確に示されているわけではありませんが、糖尿病と言うアウトカムは、治療と言う観点からいえば代用のアウトカム(真のアウトカムは合併症や死亡)、有害事象の観点からいえば真のアウトカムと言えるのではないでしょうか?特に薬剤による極端な高血糖は糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡などを引き起こします。このようなモニタリングが患者に与える負担はあるにせよ、糖尿病の予防や治療のための検診を推奨するのであれば、副作用のモニタリングとしての血糖測定も議論されるべきではないか、というのが僕の主張です。しかしながら糖尿病の早期発見、早期治療は推進するけど、副作用としての高血糖にはあまり言及されない。そんな現実があります。世の中薬を使いたい方へ、病気を増やす方へ、そんな力が働いているとしか思えません。(そのわりにはポリファーマシーで盛り上がっていて、なんだか異常な世の中だなあと思います)

[抗精神病薬の高血糖リスク]

糖尿病のない高齢者における抗精神病薬の使用はコホート内症例対照研究で検討されています。(※2)ベースラインで糖尿病のない66歳以上の高齢者(平均78.3歳)を対象に高血糖で救急診療部を受診もしくは入院した患者を症例、高血糖を起こさなかった対照群と比較し、抗精神病薬の使用割合を比較しています。その結果、抗精神病薬の使用は高血糖による入院もしくは救急診療部受診リスクと有意に関連しました。(オッズ比1.52[95%信頼区間1.07-2.17])特に‎定型抗精神病薬ではリスクとの関連が高くなっています。(オッズ比2.86[95%信頼区間1.46-5.59])

また66歳以上の高齢者においてベースラインで糖尿病を有する場合でも、同様に症例対照研究で糖尿病リスクとの関連が示唆されています。(オッズ比1.50[95%信頼区間1.29-1.74])(※3)

もちろん、小児、青年層でも同様です。非定型抗精神病薬の使用は後ろ向きコホート研究でハザード比HR 2.18[95%信頼区間1.45~3.29]と報告されています。(※4)

やや古い報告ですが、統合失調症を対象にした抗精神病薬と糖尿病リスクを検討したメタ分析でも同様の結果となっており、抄録の結論には以下の記載があります。

「Regardless of type of antipsychotic, screening for diabetes in all people with schizophrenia should be routine.」

[抗精神病薬による高血糖、そのリスクファクター]
折角なのでもう少し詳しく見ていきましょう。
725,489人を対象として非定型抗精神病薬と、高血糖による入院リスクを検討した後ろ向きコホート研究によるとその頻度は以下の通りです。(※5)

イベント発生率(/1000人年)
薬剤 18~65歳 66歳以上
リスペリドン 0.78, 2.01,
オランザピン 0.85 1.87,
その他の非定型 0.93, 1.61
定型 1.03 2.06,
全体 0.93, 1.92


イベント発生率(/1000人年)
薬剤 18~65歳(糖尿病あり) 18~65歳(糖尿病なし)
リスペリドン 9.45 0.36
オランザピン 9.62, 0.51
その他の非定型 11.71 0.30
定型 14.20 0.46,
全体 11.4 0.39,


イベント発生率(/1000人年)
薬剤 66歳以上(糖尿病あり) 66歳以上(糖尿病なし)
リスペリドン 7.07, 0.85,
オランザピン 6.74 0.78
その他の非定型 4.98 0.67
定型 7.35 1.03
全体 6.64 0.85


リスクファクターとして、既に糖尿病を有する人と言うのが浮き彫りとなってきます。これまでの報告を見ると定型だろうが非定型だろうがリスクの懸念はあり、添付文書上の禁忌かそうでないかはあまりあてにならない印象です。

[薬局店頭での糖尿病スクリーニングの可能性]

薬剤による高血糖、糖尿病リスクは抗精神病薬だけではありません。ステロイドや、スタチン系薬剤でも起こりえます。こういった薬剤を服用している人は定期的に医療機関を受診している事がほとんどでしょうが、定期的な有害事象モニターがどこまでなされているのか気になるところです。スタチンなどを服用しているケースでは脂質とともに血糖も検査するでしょうから、常識的に考えれば、あえて薬局店頭で簡易血糖検査をする必要性は低いと考えられますが、その他の薬剤ではモニタリング状態を確認するのは薬剤師の業務の中に含まれているはずです。もしモニタリングされていなければ、簡易血糖検査を行う事で、副作用の早期発見につながるのでは、ということの可能性について本稿では提示させていただきました。その有効性が実証されているわけではありません。しかし、この取り組みが高血糖による入院頻度を有意に減らせるのであれば、医療費と言う観点からもメリットはあるはずで、糖尿病を見つけて治療を開始するよりも医療にかかわるコストを抑えることができるものと推測できます。(ワクチンなど結果的に医療コストを下げることが期待できる政策が進まないのはなぜだろうと思います。。)

医師の治療方針など薬局単独では動きにくい部分もあるかと思いますが、糖尿病の早期発見を積極的に推進するというのなら、こういった可能性についても是非言及してみてはいかがでしょうか。

最後に一つ仮想症例シナリオです。

「60代女性。統合失調症により5年前からオランザピンが継続して投与されている。もともと医者嫌い、あまり社交的ではなく、普段から家にいることが多かった。50代過ぎ頃から、やや精神的な不調を訴えていたが放置。数年後に状態が悪化し、大学附属病院の精神科を受診し、その時よりオランザピンを継続して服用している。最近は症状が落ち着いており、特に変わりがない様子。相変わらず自宅にいることが多く、外へ出るのは病院を受診するときだけである。薬局で薬をもらうのは大抵家族であり、本人の様子はよく分からない。その後、しばらくして、精神科とは別の医療機関から発行された処方箋をもって、その女性のご家族の方が来局された。女性にはピオグリタゾン新規で処方されていた。」

ピオグリタゾンは当然ながら糖尿病の薬です。この患者さんは糖尿病の診断名がついていることになります。糖尿病はいつ発症するかわからないから、定期的に検診を受けましょう。なんて文句で検診を推奨していることもありますけれど、このシナリオの患者さんの場合、もし糖尿病を発症していいたらジプレキサは禁忌に該当します。薬剤師とって「禁忌」というのは非常に神経をつかって業務を行っていると思いますが、今回のケースではどうでしょうか。

ピオグリタゾンが処方になって初めて、ジプレキサの不適切性を指摘(疑義照会)するのか…。そうではなく、いつの間にか「禁忌」になっている可能性について僕たちは病気を見つける事よりも真剣に取り組むべきではないでしょうか。 

[参考文献]
(※1)Kahn R, Alperin P, Eddy D.et.al.Age at initiation and frequency of screening to detect type 2 diabetes: a cost-effectiveness analysis.Lancet. 2010 Apr 17;375(9723):1365-74 PMID: 20356621
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20356621
(※2)Lipscombe LL, Lévesque LE, Gruneir A,et.al. Antipsychotic drugs and the risk of hyperglycemia in older adults without diabetes: a population-based observational study. Am J Geriatr Psychiatry. 2011 Dec;19(12):1026-33. PMID: 22123274
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22123274
(※3) Lipscombe LL, Lévesque L, Gruneir A,et.al. Antipsychotic drugs and hyperglycemia in older patients with diabetes. Arch Intern Med. 2009 Jul 27;169(14):1282-9. PMID: 19636029
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19636029
(※4) Sohn M, Talbert J, Blumenschein K.et.al. Atypical antipsychotic initiation and the risk of type II diabetes in children and adolescents. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Mar 23. [Epub ahead of print] PMID: 25808613
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25808613
(※5) Lipscombe LL, Austin PC, Alessi-Severini S.et.al. Atypical antipsychotics and hyperglycemic emergencies: multicentre, retrospective cohort study of administrative data. Schizophr Res. 2014 Apr;154(1-3):54-60. PMID: 24581419
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24581419

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■妊娠中の抗精神病薬の使用■
Vigod SN, Gomes T, Wilton AS.et.al. Antipsychotic drug use in pregnancy: high dimensional, propensity matched, population based cohort study. BMJ. 2015 May 13;350:h2298. PMID: 25972273
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25972273
背景と研究デザイン:妊娠中の抗精神病薬の与える影響を検討したコホート研究

P:カナダオンタリオ州において2003年から2012年に単生児を出生した妊娠女性(平均28.8歳)
E:第一、第二トリメスター期に抗精神病薬を使用1021人
C:抗精神病薬の使用なし1021人
O:妊娠糖尿病、妊娠高血圧、静脈血栓塞栓症、早産(37週未満)、出生体重
交絡への配慮:高次元傾向スコアマッチング

母体のアウトカム
アウトカム E群 C群 調整相対危険
妊娠糖尿病 71人(7.0%) 62人(6.1%) 1.10[0.77~1.57]
妊娠高血圧 48人(4.7%) 42人(4.1%) 1.12[0.70~1.78]
静脈血栓塞栓症 12人(1.2%) 13人(1.3%) 0.95[0.40~2.27]

出生児のアウトカム
アウトカム E群 C群 調整相対危険
早産児 148人(14.5%) 146人(14.3%) 0.99[0.78~1.26]
低体重児 62人(6.1%) 51人(5,1%) 1.21[0.81~1.82]
過体重児 36人(3.6%) 23人(2.3%) 1.26[0.69~2.29]


■脂質低下療法の実効性■
Alpérovitch A, Kurth T, Bertrand M.et.al. Primary prevention with lipid lowering drugs and long term risk of vascular events in older people: population based cohort study. BMJ. 2015 May 19;350:h2335. PMID: 25989805
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25989805
背景と研究デザイン:高齢者におけるスタチンやフィブラートなどの脂質低下療法と血管イベントとの関連(一次予防効果)を検討した前向きコホート研究

P:フランスの3つの都市に在住している66歳以上の心血管疾患の既往のない高齢者7484人(平均79.3歳、女性63%)
E:スタチンやフィブラートを用いた脂質低下療法の実施
C:脂質低下療法を行わない
O:冠動脈疾患、脳卒中
交絡因子への配慮:年齢、性別、糖尿病、BMI,喫煙、飲酒、高血圧、不整脈、抗血栓薬、トリグリセリド濃度、LDL、HDL

調整ハザード比[95%CI]
アウトカム スタチンorフィブラート スタチン フィブラート
冠動脈疾患+脳卒中 0.91[0.76~1.09] 0.88[0.69~1.13] 0.95[0.75~1.20]
脳卒中 0.66[0.49~0.90] 0.68[0.45~1.01] 0.66[0.44~0.98]
冠動脈疾患 1.12[0.90~1.40] 1.13[0.84~1.52] 1.12[0.84~1.49]


症例数がそれほど多くないせいかもしれないが、曖昧な結果。しかし実効性としてはスタチンと言えどこの程度なのかもしれない。フィブラートで脳卒中が減っているのにはちょっと意外だった。今後の研究に注目したい。

■禁煙のためのエクササイズ介入■
Ussher M, Lewis S, Aveyard P.et.al. Physical activity for smoking cessation in pregnancy: randomised controlled trial. BMJ. 2015 May 14;350:h2145. PMID: 25976288
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25976288
背景と研究デザイン:妊娠中の禁煙のための身体活動介入の有効性を検討したランダム化比較試験。

P:16歳~50歳の妊娠女性(10週から24週)789人(平均27.2~27.8歳、妊娠前の1日喫煙数中央値20本[IQR12-20]
E:禁煙予定日の1週間前より、週に6回禁煙のための行動支援介入に加え、身体活動consultingやエクササイズを14セッション行う393人
C:禁煙予定日の1週間前より、週に6回禁煙のための行動支援介入を行う395人
O:呼気一酸化炭素または唾液コチニン濃度によって検証された禁煙予定日から出生までの期間における禁煙持続割合(自己申告に基づく)
統計解析:789人中785人がITT解析

アウトカム E群 C群 調整オッズ比[95%CI]
持続禁煙割合 30人/392人(8%) 25人/393人(6%) 1.37[0.78~2.41]


バレニクリンの臨床試験などと比較すると、禁煙達成者が少なすぎる印象。喫煙妊娠女性の禁煙動機づけはかなり難しいことがうかがえる。

■高齢者における抗凝固薬の出血リスク■
Sharma M, Cornelius VR, Patel JP.et.al. Efficacy and Harms of Direct Oral Anticoagulants in the Elderly for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation and Secondary Prevention of Venous Thromboembolism: Systematic Review and Meta-Analysis. Circulation. 2015 May 20. [Epub ahead of print] PMID: 25995317
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25995317
背景と研究デザイン:高齢者における新規抗凝固薬(NOAC=DOACs)の出血リスクを検討したランダム化比較試験のメタ分析

P:19研究に参加した急性血栓塞栓症や、心房細動における脳卒中予防のめの治療をうけた75歳以上の高齢者
E:ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバンの使用
C:ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)の使用
O:出血イベント

・大出血
ダビガトラン150mg:オッズ比1.18[0.97~1.44]
アピキサバン:オッズ比0.63[0.51~0.77]
エドキサバン60mg:オッズ比0.81[0.67~0.98]
エドキサバン30mg:オッズ比0.46[0.38~0.57]
リバーロキサバンについてもリスクは小さい

・消化管出血
ダビガトラン150mg:オッズ比1.78[1.35~2.35]
ダビガトラン110mg:オッズ比1.40[1.04~1.90]

・頭蓋内出血
ダビガトラン150mg:オッズ比0.43[0.26~0.72]
ダビガトラン110mg:オッズ比0.36[0.22~0.61]

■糖尿病スクリーニングの費用対効果■
Kahn R, Alperin P, Eddy D.et.al. Age at initiation and frequency of screening to detect type 2 diabetes: a cost-effectiveness analysis. Lancet. 2010 Apr 17;375(9723):1365-74. PMID: 20356621
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20356621
8つの糖尿病検診戦略に関する費用対効果を分析した論文

・30歳から3年毎のスクリーニング:10512ドル(130万円)
・45歳から毎年のスクリーニング:5509ドル(190万円)
・45歳から3年毎のスクリーニング:9731ドル(120万円)
・45歳から5年毎のスクリーニング:9786ドル(120万円)
・60歳から3年毎のスクリーニング:25738ドル(310万円)
・高血圧患者に対して毎年スクリーニング:6287ドル(77万円)
・高血圧患者に対して5年毎にスクリーニング:6490(80万円)
・30歳から6か月毎にスクリーニング:40778(500万円)

30歳~45歳から検診をはじめ3年~5年毎に行うのが費用対効果に優れるという結論。なおコストは1QALYsあたり金額である。QALYsとは質調整生存年のことであり、生存年を効用値(健康=1、死亡=0)で重みづけしたものである。簡単に言うと100%健康な状態で暮らす1年間の人生を1QALYと表現する。健康寿命の価値を一律に決めることは難しいがおおよそ5万ドル(600万円)位を基準にすることが多いという。

■喘息の薬物治療におけるステップダウンの長期的影響■
Rank MA, Johnson R, Branda M.et.al. Long term outcomes after stepping down asthma controller medications: A claims-based, time-to-event analysis. Chest. 2015 May 21. doi: 10.1378/chest.15-0301. [Epub ahead of print] PMID: 25997080
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25997080

背景と研究デザイン:喘息薬をステップダウンした後の長期的なアウトカムは十分に検討されていない。米国における喘息コントロール薬剤のステップダウンに関するtime-to-event解析。

P:全身性ステロイドの使用や救急診療部の受診などの増悪が無い喘息患者26,292人
E:4か月間に使用薬剤の50%以上の減量するステップダウン治療後
C:ステップダウン治療前
O:初回増悪までの期間


ステップダウン後において、喘息増悪と有意な関連が示された。
各期間での安定性維持割合は以下の通り。
4か月未満:-44%
4~7か月:-34%
8~11か月:-30%
12か月以上:-21%
p<.001.

ステップダウン後2年以内に32%が喘息増悪を起こすという結果。投与前後比較であるため因果を決定づけるものではない。
※関連論文※
Brozek JL, Kraft M, Krishnan JA, et.al. Long-Acting β2-Agonist Step-off in Patients With Controlled Asthma: Systematic Review With Meta-analysis. Arch Intern Med. 2012 Aug 27:1-11. PMID:22928176
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22928176
メタ分析において吸入気管支拡張薬を4~8週で中止すると、QOLが低下、喘息症状が悪化、無症状日数が少ないという結果

※重要論文※
Salpeter SR, Wall AJ, Buckley NS. Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events. Am J Med. 2010 Apr;123(4):322-8.e2. Epub 2010 Feb 20. PMID: 20176343.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20176343.
メタ分析においてLABAを3ヵ月以上使用すると、喘息関連死亡・気管内挿管有意に多い

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■メロペネムとバルプロ酸の併用■
Gu J, Huang Y. Effect of concomitant administration of meropenem and valproic acid in an elderly Chinese patient. Am J Geriatr Pharmacother. 2009 Feb;7(1):26-33.PMID: 19281938
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19281938
メロペネムとバルプロ酸の併用投与は、バルプロ酸の血中濃度の急激な低下につながるとされ、両剤は併用禁忌である。(メロペネムに限らずカルバペネム系薬剤)

脳卒中後の癲癇予防と肺炎治療のために、2回にわたりバルプロ酸とメロペネムが併用投与された85歳の中国人男性。バルプロ酸濃度の急激な低下がメロペネム投与後のいずれの期間でも観察された。初回併用時では痙攣は観察されなかったものの、3か月後に併用された時には発作が発現。発作の原因を探索するのは困難であると言えるが、Naranjo adverse drug reaction probability scale,は7であり、メロペネムとバルプロ酸の併用投与に関連すると考えられた。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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かかりつけ薬局という言葉が話題ですが、2型糖尿病のスクリーニングについて最後に一つだけ。「普段の健康状態をチェックできる場所として機能することが、かかりつけ薬局の役割を推進していくカギ」ではないと思います。

そのことよりもむしろ健康状態をチェックする意義とはなにか、その実効性はどの程度のものなのか、医療全体を考えたときに、死なないための医療を推進するよりも、死ぬからこそある医療を推進することが必要ではないか、かかりつけ薬局の役割を推進していくカギはそこにこそあると僕は考えています。

このテーマを考える際に大変参考となる本をご紹介します。

「健康第一」は間違っている (筑摩選書)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480016058/hatena-blog-22/
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jun.10;1(21)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-2型DM:メトホルミンの次に使用すべき薬剤は何か-

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[ポイント]
メトホルミン+SU剤に比べた有効性について
■DPP4阻害薬は複数の研究で総死亡リスク低下が示唆されている。
■インスリンは癌死亡が増える可能性が示唆されている。
■グリニド系薬剤は総死亡が低い傾向にあり心筋梗塞が少ない可能性が示唆されている
■ピオグリタゾンは総死亡リスクが少ない可能性が示唆されている
■αグルコシダーゼ阻害薬 は心筋梗塞リスクが少ない可能性が示唆されている

[イントロダクション]
2型糖尿病の薬物治療において第一選択として用いるべき薬剤は原則的にはメトホルミンであると認識しています。その根拠としては旧ブログにまとめてありますのでご参照下さい。

▶2型糖尿病の治療に今更メトホルミンは使用に値しますか?
http://syuichiao.blogspot.jp/2013/10/2_18.html

結論をまとめるとおおむね以下のようになります。
■メトホルミンはSU剤に比べて心血管イベントや死亡を抑制する可能性が高い。
■メトホルミンは高価なDPP4阻害薬に比べて死亡を抑制するかもしれない。
■心不全合併患者においてはメトホルミンが有用な可能性がある。
■脳卒中リスクに関してそのリスクを抑制するかもしれないという報告がある
■メトホルミンは癌抑制リスクが報告されている
■メトホルミンの乳酸アシドーシスリスクは他の薬剤に比べてとりわけ高いものではない。
■メトホルミンは後発医薬品も含めてとても安価である。

またαグルコシダーゼ阻害薬との比較においても、傾向スコアマッチングにより解析した台湾のコホート研究(※1)で、アカルボースはメトホルミンに比べてわずかに心血管イベントによる入院が多いことが報告されています。(調整ハザード比:1.05[95%信頼区間1.01~1.09])

2型糖尿病治療における第一選択としてどのようなクラスの薬剤を用いれば良いのか検討した後ろ向きコホート研究ではメトホルミン以外の糖尿病治療薬では他の薬剤やインスリンの追加などの治療強化が増加すると報告されています。(※2) 継続治療におけるコスト面でも利点を示唆しています。

以上のような観点から第一選択として、考慮する価値は十分あると考えます。少なくともSU剤、ピオグリタゾン、DPP4阻害薬(サキサグリプチンでは心不全入院リスクが示唆されているN Engl J Med.2013 Sep 2. [Epub ahead of print] PMID:23992602)と比べれば、それら薬剤よりも優先的に使用すべき薬剤だと個人的には思います。

問題はメトホルミンにて血糖コントロールが不良の場合、どのような治療戦略を取れば良いのかということです。確かに厳格な血糖コントロールは良いアウトカムを生まないとしても、あまりにも不良な血糖コントロールはやはり是正しなければならないことも多々あるでしょう。今回は2型糖尿病のセカンドライン治療としてメトホルミンの次にどのような薬剤を使用したらよいのか考察してきます。

[SU剤か、DPP4阻害薬か]
メトホルミンに上乗せするならSU剤か、DPP4阻害薬か、心血管アウトカムを検討したコホート研究が報告されています。(※3)

この研究はUK Clinical Practice Research Datalink (CPRD)より抽出した2型糖尿病患者を対象に、メトホルミン+SU剤(33983例)から傾向スコアマッチングした6901例と、メトホルミン+DPP4阻害薬(7864例)から傾向スコアマッチングした6901例を比較し、総死亡、主要心血管イベント(心筋梗塞又は脳卒中)が検討されました。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム SU剤併用 DPP4阻害薬併用 調整ハザード比[95%IC]
心血管イベント 11.3件/1000人年 5.3件/1000人年 1.497 [1.092-2.052]
総死亡 16.9例/1000人年 7.3例/1000人年 1.547 [1.076-2.225]


観察研究からの示唆ですが、メトホルミンにDPP4阻害薬を上乗せした治療がSU剤を上乗せした治療よりも良い傾向がみられています。

デンマークにおける後ろ向きコホート研究でも概ね同様の結果となっています。(※4)
この研究では心筋梗塞や脳卒中の既往のない2型糖尿病患者(40028人、男性59%、平均60歳)において、メトホルミン+SU剤(25092人)、メトホルミン+DPP4阻害薬(11138人)、SU剤+GLP-1アナログ(4345人)、そしてインスリン(21人)が比較され、総死亡や心血管死亡が検討されました。主な結果を以下にまとめます。

総死亡
メトホルミン+ 発症率 率比[95%信頼区間
SU剤 18/1000人年 reference
DPP4阻害薬 10/1000人年 0.65[0.54~0.80]
GLP-1アナログ 8/1000人年 0.77[0.51~1.17],
インスリン 21/1000人年 抄録に記載なし


心血管疾患死亡においてもDPP4阻害薬の方でリスク低下が示唆されました。

さらにClinical Practice Research Datalinkを用いた解析は2015年にも報告されており、11,807人を対象とした解析でもメトホルミン+SU剤に比べてメトホルミン+DPP4阻害薬で心血管イベントや総死亡が少ないという結果になっています。(※5)

[SU剤か、インスリンか]
メトホルミン治療に加えてインスリンまたはSU剤を投与した場合を比較検討した後ろ向きコホート研究が報告されています。(※6)

この研究は、18歳以上でメトホルミン治療を受けている(中央値14か月)患者からPropensity score matchingした14616人[平均60歳、男性95%、HbA1c 8.1% (IQR, 7.2%-9.9%))が対照となっています。メトホルミン+インスリン2436人とメトホルミン+SU剤12 180人が比較され、急性心筋梗塞、脳卒中による入院、死亡の複合アウトカムが検討されました。主な結果を以下にまとめます。

アウトカム インスリン併用 SU剤併用 ハザード比[95%IC]
複合アウトカム 172人/2436人

42.7件/1000人年

634人/12180人

32.8件/1000人年

1.30[1.07-1.58]


メトホルミンを服用していた糖尿病患者においてスルホニル尿素の追加投与と比較して、インスリンの追加は、非致死的心血管イベント、全死亡のリスクの複合アウトカム増加と関連していたと結論しています。死亡原因を見ると癌死亡が有意に増加しています。(ハザード比1.85[1.21~2.84])

[SU剤か、グリニド系薬剤か]
インスリン分泌促進系の薬剤に関してSU剤とグリニド系薬剤の上乗せを比較した後ろ向き解析が報告されています。(※7)

この研究はデンマークのレジストリを用いた後ろ向きコホート研究で、脳卒中や心筋梗塞の既往のない、18歳以上のメトホルミンとインスリン分泌促進薬を投与された患者56827人を対象としています。使用された薬剤はメトホルミンの他に、グリメピリド(40026人)、グリベンクラミド(7429人)、グリクラジド(5966人)、グリピジド(4466人)、トルブタミド(2173人)およびレパグリニド(2118人)でした。平均60歳~63歳前後となっています。主な結果を以下にまとめます。

総死亡
薬剤名 発症率 率比[95%信頼区間
グリベンクラミド 23.7/1000人年 0.98[0.87~1,10]
グリクラジド 21.1/1000人年 1.01[0.88~1.15]
グリメピリド 20.7/1000人年 Reference
グリピジド 28.1/1000人年 1.16[1.02~1.32]
レパグリニド 15.4/1000人年 0.81[0.62~1.05]
トルブタミド 27.7/1000人年 1.04[0.85~1.28]


心血管死亡についても概ね類似の経口で、グリメピリドを基準に比較すると、グリピジドを除くSU剤どうしでは明確な差は無く、またレパグリニドでは減少傾向にありました。

レパグリニドにおいてはメトホルミンと同程度の大血管症および死亡率低下効果を持つ可能性があるとするデンマークのコホート研究があり、(※8)SU剤との比較においてはアドバンテージがある印象です。

[SU剤か、ピオグリタゾンか]
General Practice Research Databaseを用いて、メトホルミンの次に使うべき薬剤を検討した後ろ向きコホート研究が報告されています。(※9)

この研究ではメトホルミンにより治療を開始された2型糖尿病患者を対象に、血糖降下のためのセカンドライン治療が開始された27,457人を対象として、総死亡や主要心血管イベントが検討されています。検討されたセカンドライン治療は以下の通り。
①メトホルミン+SU剤(15377人)[reference]
②SU剤単独(2244人)
③メトホルミン+ピオグリタゾン(2525人)
④メトホルミン+ロシグリタゾン(4677人)
⑤メトホルミン+DPP4阻害薬(1455人)
平均年齢は60~70歳前後となっています。

その結果、総死亡はメトホルミンSU剤を基準とするとSU単独で有意に上昇し(ハザード比1.459[95%信頼区間1.207-1.763])メトホルミン+ピオグリタゾンで有意に低下し(ハザード比0.707[95%信頼区間0.515-0.970])、DPP4阻害薬を含む他の治療では明確な差は出ませんでした。個人的にはピオグリタゾンの有効性に懐疑ではありましたが少々意外な結果で驚いています。

[結局のところどうするべきか]
メトホルミンで治療が開始された2型糖尿病患者におけるセカンドライン治療において、どの薬剤を使用すべきか、台湾からの最新の報告(※10)を見ながらまとめていきます。

この研究はTaiwan National Health Insurance databaseより36118人が対象となっており、SU剤(比較基準)やグリニド、DPP4阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬が比較され、急性心筋梗塞やうっ血性心不全、脳梗塞などの心血管イベントによる入院が検討されました。その結果心血管イベント全体では明確な差が出ませんでした。但し、急性心筋梗塞に限るとグリニドとαグルコシダーゼ阻害薬でリスク低下が示唆されました。

・グリニド:調整ハザード比0.39[95%信頼区間0.20~0.75]
・αGI:調整ハザード比0.54[95%信頼区間 0.31~0.95]

これまでの示唆をまとめてみましょう。
薬剤名 メトホルミン+SU剤に比べた有効性
DPP4阻害薬 複数の研究で総死亡リスク低下を示唆。
インスリン 癌死亡が増える可能性を示唆
グリニド系薬剤 総死亡が低い傾向にあり心筋梗塞が少ない可能性を示唆
ピオグリタゾン 総死亡リスクが少ない可能性を示唆
αグルコシダーゼ阻害薬 心筋梗塞リスクが少ない可能性を示唆


実際のところ著明な差はあまりない印象ですが、メトホルミンの次にSU剤と言う選択肢はあまり推奨されない印象です。ピオグリタゾンに関しては、これまでの有害事象報告を加味すると、一つの研究だけではややインパクトに欠けます。インスリンに関してはアドヒアランスの問題もあるでしょう。αGI、グリニドは食直前と言う用法においてアドヒアランスが良好に保たれるようであれば考慮できるでしょう。現実的にはDPP4阻害薬ということになるのでしょうか。しかし、いずれも観察研究からの示唆であり、その結果の推奨度はそれほど高くありません。介入研究による検討が待たれます。

[参考文献]
(※1) Chang CH, Chang YC, Lin JW.et,al. Cardiovascular risk associated with acarbose versus metformin as the first-line treatment in patients with type 2 diabetes: a nationwide cohort study. J Clin Endocrinol Metab. 2015 Mar;100(3):1121-9. PMID: 25555040
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25555040
(※2) Berkowitz SA, Krumme AA, Avorn J.et.al. Initial choice of oral glucose-lowering medication for diabetes mellitus: a patient-centered comparative effectiveness study. JAMA Intern Med. 2014 Dec;174(12):1955-62PMID: 25347323
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25347323
(※3) Morgan CL1, Mukherjee J, Jenkins-Jones S.et.al.Combination therapy with metformin plus sulfonylureas versus metformin plus DPP-4 inhibitors: association with major adverse cardiovascular events and all-cause mortality. Diabetes Obes Metab. 2014 Apr 25PMID: 24762119
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24762119
(※4)Mogensen UM, Andersson C, Fosbøl EL,et.al. Cardiovascular safety of combination therapies with incretin-based drugs and metformin compared with a combination of metformin and sulphonylurea in type 2 diabetes mellitus--a retrospective nationwide study. Diabetes Obes Metab. 2014 Oct;16(10):1001-8. PMID: 24827939
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24827939
(※5) Yu OH, Yin H, Azoulay L.et.al. The Combination of DPP-4 Inhibitors Versus Sulfonylureas with Metformin After Failure of First-line Treatment in the Risk for Major Cardiovascular Events and Death. Can J Diabetes. 2015 Apr 1. pii: S1499-2671(15)00328-7. PMID: 25840943
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25840943
(※6) Roumie CL1, Greevy RA2, Grijalva CG.et.al.Association Between Intensification of Metformin Treatment With Insulin vs Sulfonylureas and Cardiovascular Events and All-Cause Mortality Among Patients With Diabetes.JAMA. 2014;311(22):2288-2296 PMID: 24915260
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24915260
(※7)Mogensen UM, Andersson C, Fosbøl EL.et.al. Metformin in combination with various insulin secretagogues in type 2 diabetes and associated risk of cardiovascular morbidity and mortality--a retrospective nationwide study. PMID: 25458330
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25458330
(※8) Schramm TK, Gislason GH, Vaag A.et.al. Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a previous myocardial infarction: a nationwide study. Eur Heart J. 2011 Aug;32(15):1900-8. PMID: 21471135
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21471135
(※9)Morgan CL, Poole CD, Evans M.et.al. What next after metformin? A retrospective evaluation of the outcome of second-line, glucose-lowering therapies in people with type 2 diabetes. J Clin Endocrinol Metab. 2012 Dec;97(12):4605-12. PMID: 23076348
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23076348
(※10) Chang YC, Chuang LM, Lin JW.et.al. Cardiovascular risks associated with second-line oral antidiabetic agents added to metformin in patients with Type 2 diabetes: a nationwide cohort study. Diabet Med. 2015 May 13. doi: 10.1111/dme.12800. [Epub ahead of print] PMID: 25970814
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25970814

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■心筋梗塞後の慢性腎臓病を有する2型DM患者におけるシタグリプチン■
Chen DY, Wang SH, Mao CT.et.al. Sitagliptin and cardiovascular outcomes in diabetic patients with chronic kidney disease and acute myocardial infarction: A nationwide cohort study. Int J Cardiol. 2015 Feb 15;181:200-6. PMID: 25528312
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25528312
背景と研究デザイン。急性心筋梗塞後の慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者におけるシタグリプチンの有効性・安全性を検討した台湾のコホート研究

P: Taiwan National Health Insurance Research Databaseより、心筋梗塞を発症した慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者1025人
E:シタグリプチンの投与あり205人
C:シタグリプチンの投与なし820人
O:心筋梗塞、脳梗塞、心血管死亡の複合アウトカム
追跡期間:平均1.02年

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
複合アウトカム 54人/205人

(26.3%)

164人/820人

(20.0%)

1.32[0.97~1.79]
心筋梗塞再発 抄録に記載なし 抄録に記載なし 1.43[1.04~1.95]


※臨床スクリプト※
複合アウト化カムは増加傾向、心筋梗塞再発は43%多いという結果。現時点で心筋梗塞の既往があり、慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者にシタグリプチンは他に選択肢がある限り避けたい印象。ただし症例数の少ない観察研究であるがゆえに、この結果のみで結論できず臨床への適応は悩ましい。

■重症MRSA感染症に対するST合剤■
Paul M, Bishara J, Yahav D.et.al. Trimethoprim-sulfamethoxazole versus vancomycin for severe infections caused by meticillin resistant Staphylococcus aureus: randomised controlled trial. BMJ. 2015 May 14;350:h2219. PMID: 25977146
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25977146
背景と研究デザイン:重症MRSA感染症に対するST合剤の有効性をバンコマイシンと比較したランダム化比較非劣性試験

P:重症MRSA感染症患者252人(平均64.8~67歳、糖尿病50%~46%)
E:ST合剤(トリペトプリム320mg/スルファメトキサゾール1600mgを1日2回)を最低7日間投与
C:バンコマイシン(1g1日2回)を最低7日間投与
O:7日後の治療失敗(死亡、死、血行動態不安定性や発熱の持続、Sequential Organ Failure評価スコアの悪化、菌血症の持続性で非劣性マージン15%)と30日以内の死亡

アウトカム E群 C群 率比[95%信頼区間]
治療失敗 51/135(38%) 32/117(27%) 1.38[0.96~1.99]
30日以内の死亡 19/135(14%), 13/117 (11%) 1.27[0.65~2.45]

治療失敗は非劣性マージンの1.5を超え、非劣性を示せず。

■COPDに対するツロブテロールパッチとテオフィリン徐放製剤■
Minami S, Kawayama T, Ichiki M.et.al. Clinical efficacy of the transdermal tulobuterol patch in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a comparison with slow-release theophylline. Intern Med. 2008;47(6):503-9. PMID: 18344636
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18344636
背景と研究デザイン:COPD患者に対するツロブテロールパッチ製剤とテオフィリン製剤の有効性を検討したランダム化比較クロスオーバー試験

P:40歳以上のCOPD患者16人(平均71.8歳、男性14人、喫煙12人、COPD重症度GOLDステージⅢ~Ⅳの重症から最重症が10人)
E:ツロブテロールパッチ製剤を4週間貼付
C:テオフィリン徐放製剤を4週間投与
※クロスオーバーデザイン
O:呼吸困難スコア、症状スコア、咳嗽スコア、身体活動スコア、睡眠状況、QOL(SGRQ)
※プライマリアウトカムは明確ではない。

・呼吸困難スコア:明確な差を認めない(P>0.05)
・症状スコア、咳嗽スコア:4週時点では、テオフィリンに比べてツロブテロールで有意に低い(P<0.05)(注:スコア変化の比較ではない)
・QOL:SQRQスコアに明確な差を認めない

■テストステロンの剤形と有害事象■
Layton JB, Meier CR, Sharpless JL.et.al. Comparative Safety of Testosterone Dosage Forms. JAMA Intern Med. 2015 May 11. [Epub ahead of print] PMID: 25962056
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25962056
背景と研究デザイン:テストステロンの使用増加はテストステロンの心血管リスク増加の懸念を提起する。テストステロンは注射、経皮パッチ、ゲル等があり、血中濃度の動態も異なる。テストステロンの注射、経皮パッチ、ゲルを比較し、その安全性を検討した後ろ向きコホート研究。

P:新規のテストステロンを使用した544 115人
E:注射剤の使用(37.4%)、経皮パッチ製剤の使用(6.9%)
C:ゲル製剤の使用(55.8%)
O:心血管イベント及び脳血管イベント(心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中)、静脈血栓塞栓、死亡、全原因入院

ゲル製剤に比べて、注射製剤では心血管イベントリスク、入院リスク、総死亡リスクが増加するが静脈血栓リスクは明確な差なし
・心血管イベント:ハザード比1.26[95%信頼区間1.18~1.35]
・入院リスク:ハザード比1.16[95%信頼区間1.13~1.19]
・死亡リスク:ハザード比1.34[95%信頼区間1.15~1.56]
・静脈血栓症:ハザード比0.92[95%信頼区間0.76~1.11]

ゲル製剤に比べてパッチ製剤では明確な差は無い
・心血管イベント:ハザード比1.10[95%信頼区間0.94~1.29]
・入院リスク:ハザード比1.04[95%信頼区間1.00~1.08]
・死亡リスク:ハザード比1.02[95%信頼区間0.77~1.33]
・静脈血栓症:ハザード比1.08[95%信頼区間0.79~1.47]

あくまでもゲル製剤比較である点に注意。

■妊娠女性におけるSSRIの安全性■
Wang S, Yang L, Wang L.et.al. Selective Serotonin Reuptake Inhibitors (SSRIs) and the Risk of Congenital Heart Defects: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. J Am Heart Assoc. 2015 May 19;4(5). PMID: 25991012
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25991012
背景と研究デザイン:妊娠女性におけるSSRIの安全性を検討した前向きコホート研究のメタ分析。

P:4つの前向きコホート研究に参加した第1トリメスター期の妊娠女性1996519人
E:SSRIの使用あり
C:SSRIの使用なし
O:胎児の先天性心欠損

SSRIの使用は先天性心欠損リスクに関連せず。
オッズ比:1.06 (95%信頼区間 0.94~1.18)

■キサンチンオキシダーゼ阻害薬の効果■
Kim SC, Schneeweiss S, Choudhry N.et.al. Effects of Xanthine Oxidase Inhibitors on Cardiovascular Disease in Patients with Gout: A Cohort Study. Am J Med. 2015 Feb 3. pii: S0002-9343(15)00086-8. PMID: 25660249
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25660249
背景と研究デザイン:高尿酸血症と痛風は、心血管疾患(CVD)のリスク増加と関連している。しかしながら、アロプリノールやフェブキソスタットなどのキサンチンオキシダーゼ阻害剤(XOIs)で高尿酸血症を治療することで心血管リスク増加を修正できるか不明である。血清尿酸値≥6.8 mg/dLの高尿酸血症の人を対象にXOIsの有効性を検討したコホート研究

P: US insurance claims dataより24,108人、平均51歳、男性88%
E:痛風患者におけるキサンチンオキシダーゼ阻害薬の使用あり
C:血清尿酸値≥6.8 mg/dLの高尿酸血症におけるキサンチンオキシダーゼ阻害薬の使用なし
O:非致死的心血管アウトカム( 心筋梗塞、冠動脈血行再建術、脳卒中、心不全)

交絡への配慮:傾向スコアマッチング

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%CI]
非致死的CVD 24.1/1000人年 21.4/1000人年 1.16[0.99~1.34]


痛風治療におけるキサンチンオキシダーゼ阻害薬の治療は、高尿酸血症未治療と比べて非致死的心血管アウトカムを減らさなかった。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害■
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 Injury Alert(傷害速報)No. 53 
 日本小児科学会雑誌 第119巻 第 5 号934―(130)
12 歳の女性(体重:36kg、身長:149cm)ヘリウムガス入りスプレー缶(市販の変声用のパーティーグッズ:ヘリウム 80%,酸素20% の混合ガス)を吸引後意識消失。脳空気塞栓症の疑い。高次脳機能障害を残す可能性があると判断されており,早期のリハビリ介入が検討されている.

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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症例報告はマスメディアでも報道されたものです。この報告には「,今回のように一般者が使用できる加圧されたヘリウムガスの吸引で発生した事例の報告は,学術誌上では世界的に数例のみのようである」と記載があり、珍しいケースなのかもしれませんが、面白半分で使用すると思わぬ事故につながりかねません。

メインテーマはメトホルミンにもう一剤加えるとしたらどんな薬剤を使用すべきか、そんなテーマを取り上げました。個人的にはDPP4阻害薬よりもレパグリニドに期待しているところですが、服薬アドヒアランスはDPP4阻害薬の方が有利かもしれません。いずれも観察研究での検討のため、そこから決定的な因果を想定するのは難しい印象です。ただピオグリタゾンがやや前向きな結果が出ており意外でした。有害事象報告も多く、その使用には熟慮が必要ですが、ピオグリタゾン=悪と決めつけると、大事なことを見失うのかもしれません。あらためて一次情報に当たることの大切さを学んだ気がします。(ですが、今回の示唆を踏まえても現段階でピオグリタゾンを積極的にセカンドライン治療で推奨するものではありません)

次週はいよいよ薬局での簡易血液検査、その新たな可能性に言及して行きます。
このテーマに関しては「地域医療ジャーナル」にも投稿いたしました。まずはバックグランドとしてこの記事を読んでいただけたら幸いです。

地域医療ジャーナル2015年06月号 vol.1(4)
[対論:糖尿病検診の実効性、そして病名と時間]
http://cmj.publishers.fm/article/8210/

#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.Jun.3;1(20)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-気管支拡張症に対する低用量マクロライド-

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[ポイント]
■びまん性汎細気管支炎に対するマクロライド療法のエビデンスは十分とは言えない
■非嚢胞性繊維症性の気管支拡張症に対するマクロライド療法は肺増悪を有意に減らす。
■非嚢胞性繊維症性の気管支拡張症に対するマクロライド療法は概ねQOLを改善する傾向にあるが、研究間によってばらつきがある。
■非嚢胞性繊維症性の気管支拡張症に対するマクロライド療法は下痢の有害事象が多く、耐性菌も増加する
■マクロライド系薬剤には心血管系有害事象の報告が複数ある。

[イントロダクション]
気管支拡張症は慢性の感染および炎症によって引き起こされる大きな気管支の拡張ならびに破壊です。気管支拡張症には、肺のさまざまな部分に生じる、びまん性気管支拡張症1、2カ所だけにみられる局所性気管支拡張症があります。その原因としては、感染症や、先天性疾患があります。先天的な要因として最も一般的なものに嚢胞性線維症があります。嚢胞性線維症は、特定の分泌腺が異常な分泌物を産生し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。今回は非嚢胞性繊維症性の気管支拡張症のマクロライド療法についてまとめていきます。

なお、低用量マクロライド療法と言えば、びまん性汎細気管支炎が有名です。びまん性汎細気管支炎は、両肺びまん性に存在する呼吸細気管支領域の慢性炎症を特徴とし,呼吸機能障害をきたす疾患で、進行すると気管支拡張症を引き起こすこともあります。びまん性汎細気管支炎は欧米での報告はほとんどなく、そのほとんどが日本をはじめとする東アジアでみられる疾患と言われています。

びまん性汎細気管支炎に対するマクロライドの効果について、コクランよりレビュー(※1)が出ていますので、簡単にご紹介しておきます。

このレビューはランダム化比較試験、もしくは準ランダム化比較試験の論文をサーチしています。2名のレビューアーが独立して評価するなど配慮れています。その結果、レビューに採用されたのはたった1件のRCTのみで解析対象も19人というかなり小規模の研究でした。しかもこの論文はwith significant methodological limitationsとのことで、その妥当性もあまり高くないようです。DPBの治療におけるマクロライドのための根拠はほとんどないとまで結論されています。

公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターのびまん性汎細気管支炎のWEBサイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/322
には「1985年以降,エリスロマイシン(EM)など14員環マクロライド剤による少量長期療法が導入された結果,著しい予後の改善が得られている。」と記載がありますが、その具体的な根拠論文が示されていません。予後の項目には観察的研究データ(生態学的データ)が示されていますが、これはマクロライドとの直接的な因果関係を示すものではなく、国民の医療アクティビティ、や衛生環境、マクロライド以外の治療薬の登場やその他の治療進歩などさまざまな影響が想定され、このデータをもって、マクロライドがびまん性汎細気管支炎の予後を改善すると結論付けることにはやや抵抗があります。(全く改善しないわけではなさそうですが、少なくとも明確な根拠が現時点でないことは押さえておいて良さそうです)

話題がそれましたが、びまん性汎細気管支炎は欧米での症例が少なく、比較的妥当性の高い低用量マクロライドの効果を検討した研究は、主に非嚢胞性線維症性の気管支拡張症を対象としたものに限ります。最近まであまりエビデンスのなかったこのテーマですが、2012年のEMBRACE試験(※2)、2013年のBAT試験(※3)、BLESS試験(※4)それに続くメタ分析等の報告が増えてきました。まずは代表的なランダム化比較試験である、EMBRACE、BAT、BLESSの3つを見ていきましょう。

[EMBRACE試験]

この研究は非嚢胞性線維症性の気管支拡張症(non-CF bronchiectasis)患者141人を対象とした2重盲検ランダム化比較試験です。対象となったのは18歳以上の過去1年以内に抗菌薬物療法を必要とする増悪を少なくとも1回経験しており、 高解像度CTスキャンにて気管支拡張症と診断された141人です。アジスロマイシン500mg/を1週間に3日間投与する群(71人)とプラセボを1週間に3日間投与する群(70人)にランダム化しています。追跡は6か月で、主要評価項目は6か月以内の増悪頻度や呼吸機能FEV(1)、QOLスコアでした。

ITT解析の結果、増悪頻度はアジスロマイシン群で患者1人当たり0.59回、プラセボ群で患者1人当たり1.57回でした。(発生率比0.38, 95%信頼区間0.26-0.54)
しかしながらQOLスコアに明確な差はありませんでした。

この研究では呼吸器増悪頻度は62%(患者1人当たり6か月間で約1回)有意に減少しましたがQOLスコアに明確な差は見られませんでした。過去に少なくとも1回以上の増悪を経験した非嚢胞性線維症性の気管支拡張症患者への新たな治療オプションとして有用と結論していますが、6か月にわたるマクロライド投与は耐性菌の観点、マクロライドの心血管イベントリスクなど熟慮が必要なところだと思われます。(マクロライドの心血管リスクについては別の機会で取り上げたいと思います。)

[BAT試験]

この研究は非嚢胞性線維症性の気管支拡張症の維持療法としてのアジスロマイシンの有用性を12か月間検討したプラセボ対照の2重盲検ランダム化比較試験です。EMBRACE試験は6か月という比較的短期間の追跡でしたが、こちらの研究は12か月間追跡しています。また介入方法もEMBRACE試験とことなり、アジスロマイシン250mg/日を連日投与しています。アジスロマイシン群43人(平均59.9歳)とプラセボ群40人(平均64.6歳)を比較して感染増悪をきたした患者数が検討されました。

ITT解析の結果、治療期間中に1回以上の感染増悪を来した患者数中央値はアジスロマイシン群で20人(46%)、プラセボ群で32人(80%)でした。ハザード比0.29[95%信頼区間0.16~0.51] この研究でも増悪患者数を有意に減らしている結果となっています。

[BLESS試験]

こちらの研究は非嚢胞性線維症性の気管支拡張症患者117人(平均62.3歳)に対するエリスロマイシン(200mg、1日2回)の効果を検討した2重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験です。プロトコルに事前定義した肺増悪を検討しています。エリスロマイシン群59人、プラセボ群58人にランダム化され、12か月治療されました。

ITT解析の結果、肺増悪は患者1人当たり年間平均
・エリスロマイシン群:1.29 [95%信頼区間 0.93-1.65]
・プラセボ群:1.97 [95%信頼区間 1.45-2.48]
発生率比は0.57 [95%信頼区間, 0.42-0.77]と有意に減少しました。これは年間で患者1人当たり0.7回ほどの増悪減少と言い換えることができます。マクロライドの耐性菌(口腔咽頭連鎖球菌)は当然ながら増加したと報告されています。

[systematic review and meta-analysisの結果から]

近年、気管支拡張症に対する低用量マクロライドに関するメタ分析の報告が相次いでいます。

2014年に報告された小児及び成人の非嚢胞性線維症性の気管支拡張症に対するマクロライド療法のメタ分析を見てみます。(※5)

この研究はBAT試験、EMBRACE試験、BLESS試験を含む、小児、及び成人の非嚢胞性線維症性の気管支拡張症患者に対するマクロライド療法の有効性を検討した9つの臨床研究(解析対象559人)を統合解析したメタ分析論文でマクロライド療法と気管支拡張症の増悪リスクやQOLを検討しています。

その結果、マクロライド療法は増悪リスクを有意に減らしました。
・成人:相対危険 0.59[95%信頼区間0.40~0.86]
・小児: 相対危険0.86[95%信頼区間0.75~0.99]
また患者QOLも改善しましたが、増悪による入院リスクを減らすことはありませんでした。下痢の有害事象はマクロライドで多いと報告されています。

非嚢胞性線維症性の気管支拡張症患者に対するマクロライドの長期使用に関する報告は2014年、2015年と報告されており、増悪に関してはいずれも有意な減少を報告しています。以下にメタ分析の結果を簡単にまとめます。

メタ分析より
文献 元文献 増悪頻度 QOL
Gao YH,et.al.2014(※5) RCT9研究 減少 改善
Zhuo GY.et.al.2014(※6) RCT4研究 減少 不明
Fan LC.et.al.2015(※7) RCT10研究 減少 改善


有害事象としては下痢の頻度が高く、Fan LC.et.al.2015ではオッズ比5.36[95% 信頼区間2.06,~13.98]と報告されています。

[非嚢胞性線維症性の気管支拡張症へのマクロライド]
増悪頻度をわずかに減らすことは複数の研究で支持されています。ただしQOLに関しては研究間にばらつきがあるようです。プライマリアウトカムに設定されていない研究も多くサンプルサイズの不足も影響しているかもしれません。文献上では、インパクトを与える程大きな効果
とは言いにくい印象で、下痢や心血管系リスクなどの有害事象、耐性菌、コストの問題など熟慮すべき点は多いでしょう。

[参考文献]
(※1)Lin X, Lu J, Yang M.et.al. Macrolides for diffuse panbronchiolitis. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 25;1:CD007716. PMID: 25618845
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25618845
(※2)Wong C, Jayaram L, Karalus N.et.al. Azithromycin for prevention of exacerbations in non-cystic fibrosis bronchiectasis (EMBRACE): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. PMID: 22901887
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22901887
(※3)Altenburg J, de Graaff CS, Stienstra Y,et.al. Effect of azithromycin maintenance treatment on infectious exacerbations among patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis: the BAT randomized controlled trial. JAMA. 2013 Mar 27;309(12):1251-9.PMID: 23532241
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23532241
(※4) Serisier DJ, Martin ML, McGuckin MA.et.al. Effect of long-term, low-dose erythromycin on pulmonary exacerbations among patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis: the BLESS randomized controlled trial. JAMA. 2013 Mar 27;309(12):1260-7. PMID: 23532242
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23532242
(※5) Gao YH, Guan WJ, Xu G.et.al. Macrolide therapy in adults and children with non-cystic fibrosis bronchiectasis: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014 Mar 6;9(3):e90047. PMID: 24603554
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24603554
(※6) Zhuo GY, He Q, Xiang-Lian L.et.al. Prolonged treatment with macrolides in adult patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis: meta-analysis of randomized controlled trials. Pulm Pharmacol Ther. 2014 Oct;29(1):80-8. PMID: 24594263
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24594263
(※7) Fan LC, Lu HW2, Wei P.et.al. Effects of long-term use of macrolides in patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Infect Dis. 2015 Mar 27;15(1):160. [Epub ahead of print] PMID: 25888483
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25888483


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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■高齢者2型糖尿病患者におけるインスリン導入■
Bhattacharya R, Zhou S, Wei W.et.al. A Real-World Study of the Effect of Timing of Insulin Initiation on Outcomes in Older Medicare Beneficiaries with Type 2 Diabetes Mellitus. J Am Geriatr Soc. 2015 May 8. [Epub ahead of print] PMID: 25955280
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25955280
背景と研究デザイン:高齢者の2型糖尿病患者におけるインスリンの早期導入と遅れた導入を比較して臨床的影響やコストを検討した後ろ向きコホート研究

P:65歳以上の2型糖尿病患者14669人
E:早期のインスリン導入(導入前経口糖尿病薬使用1種類)
C:遅れてインスリン導入(導入前経口糖尿病薬使用2種類以上)
O:HbA1c変化、低血糖イベント、コスト
追跡期間:1年

E群はC群に比べて有意にHbAc1が低下した。また低血糖イベントやコストに明確な差は無かった。

■慢性疾患の有病と余命■
Laditka JN, Laditka SB. Associations of multiple chronic health conditions with active life expectancy in the United States. Disabil Rehabil. 2015 May 4:1-8. [Epub ahead of print] PMID: 25936731
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25936731
背景と研究デザイン:複数の慢性疾患と平均余命、障害余命(disabled life expectancy)との関連を検討した研究。

P:55歳以上のアメリカ人(平均63.3歳)2118人
E:慢性疾患の有病
C:疾患無
O:平均余命、障害余命(disabled life expectancy)

慢性疾患を1つでも有病する人は平均寿命が短くなる。例えば、女性白人において、有病なしでは87.3歳に対して心臓病ありでは75.8歳であった。複数の慢性疾患の有病は平均余命をさらに減らすだけでなく、しばしば障害余命を伸ばす。

■高齢者に対する抗うつ薬の安全性、有効性■
Thorlund K1, Druyts E, Wu P.et.al. Comparative Efficacy and Safety of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors and Serotonin-Norepinephrine Reuptake Inhibitors in Older Adults: A Network Meta-Analysis. J Am Geriatr Soc. 2015 May 6. [Epub ahead of print] PMID: 25945410
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25945410
背景と研究デザイン:高齢者におけるSSRIやSNRIの有効性・安全性を検討したネットワークメタ分析

P:15のランダム化比較試験に参加した高齢者
E:SSRIやSNRIの投与(シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、デュロキセチン、ベンラファ鬼神、フルオキセチン、セルトラリン)
C:プラセボ等の投与
O:うつ病スコアが少なくとも50%改善と定義された部分応答と有害事象(めまいや意識消失)

部分応答はセルトラリン(相対リスク=1.28)、パロキセチン(相対リスク=1.48)、およびデュロキセチン(相対リスク=1.62)でプラセボよりも優れていた。他の介入は相対リスク1.2を下回っていた。

めまいはデュロキセチン(相対リスク=3.18)、ベンラファキシン(相対リスク=2.94)でプラセボより有意に悪化。セルトラリンは比較的リスクが低かった(相対リスク=1.14)

■2型糖尿病におけるBMIと予後■
Costanzo P, Cleland JG, Pellicori P.et.al. The obesity paradox in type 2 diabetes mellitus: relationship of body mass index to prognosis: a cohort study. Ann Intern Med. 2015 May 5;162(9):610-8. PMID: 25938991
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25938991
背景と研究デザイン:2型糖尿病患者における肥満と予後の関連を検討した前向きコホート研究

P:イギリスにおける2型糖尿病患者10568人(年齢中央値63歳、男性54%)
E:BMI30超(肥満)、BMI25~29.9(過体重)
C:BMI18.5~24.9(標準)
O:心血管疾患、総死亡
追跡期間:10.6年

標準(BMI18.5~24.9)に比べて、過体重及び肥満(BMI25超)では心臓イベントが多いが、過体重では死亡リスクが低く、肥満でも死亡リスクは同等であった。

■2型糖尿病における第一選択薬剤■
Chang CH, Chang YC, Lin JW.et,al. Cardiovascular risk associated with acarbose versus metformin as the first-line treatment in patients with type 2 diabetes: a nationwide cohort study. J Clin Endocrinol Metab. 2015 Mar;100(3):1121-9. PMID: 25555040
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25555040
背景と研究デザイン:メトホルミンは、心血管リスクに対するベネフィットが認められた2型糖尿病におけるファーストライン治療である。近年のエビデンスではアカルボースもまたメトホルミンと類似した血糖降下作用と心血管リスク減少が示唆されている。(PMID:12876091やPMID:14683737など) この研究は糖尿病の治療のファーストラインとして、メトホルミンを用いるべきか、アカルボースを用いるべきかを検討した台湾のコホート研究である。

P:Taiwan National Health Insurance (NHI)のデータベースより、研究対象者を抽出
E:糖尿病の初期治療にアカルボースの使用17366人
C:糖尿病の初期治療にメトホルミンを使用230023人
O:急性心筋梗塞やうっ血性心不全、脳梗塞を含む心血管イベントによる入院

交絡への配慮:傾向スコアマッチングを行っている。

アカルボースはメトホルミンに比べてわずかに心血管イベントが多い
調整ハザード比:1.05[95%信頼区間1.01~1.09]

■魚の摂取と急性膵炎■
Oskarsson V, Orsini N, Sadr-Azodi O.et.al. Fish consumption and risk of non-gallstone-related acute pancreatitis: a prospective cohort study. Am J Clin Nutr. 2015 Jan;101(1):72-8. PMID: 25527752
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25527752
背景と研究デザイン:魚の摂取量と急性膵炎(非胆石性)との関連を検討した前向きコホート研究

P: 「the Cohort of Swedish Men」と「the Swedish Mammography Cohort」の2つのコホートより、39,267人の男性と32,191人の女性 (45歳~84歳)
E:魚の摂取1.4, 2.4, and 3.5 servings/wk,
C:魚の摂取0.9 servings/wk
O:急性膵炎

追跡期間:13年

魚の摂取が週に0.9サービングのヒトと比べて1.4サービング、2.4サービング、3.5サービングの人の急性膵炎リスクは以下の通り。
・1.4サービング:ハザード比0.86[95%信頼区間0.76~0.96]
・2.4サービング:ハザード比0.77[95%信頼区間0.62~0.96]
・3.5サービング:ハザード比0.85[95%信頼区間0.65~1.10]

交絡因子の調整について抄録から詳細情報を読み取れず、結果の解釈注意。

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■ランソプラゾールとメトロニダゾール併用下での黒舌■
Sakallioglu O. Black tongue due to lansoprazole plus metronidazole. Indian Pediatr. 2014 Sep;51(9):763. PMID: 25228624
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25228624
ヘリコバクター・ピロリ除菌療法ではPPIとメトロニダゾールの併用を行うこともあるが、本症例報告はヘリコバクター・ピロリの除菌療法のためにメトロニダゾール20mg/kg/日とランソプラゾール2mg/㎏/日が投与された6歳女児で投与から2週後に舌が黒色になった症例。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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EBM創始者の一人David Sackett先生が5月13日に亡くなられました。
http://fhs.mcmaster.ca/sackettsymposium/sackett_dave.html

当然ながら僕は直接お会いしたこともありませんし、Sackett先生について多くを知っているわけでもありません。しかしながらSackett先生が「Clinical Epidemiology」という本を世に出さなければ、巡り巡って今の僕は存在しないでしょう。いろいろ考えると出会いとは不思議なものです。Sackett先生が医療に与えた影響は計り知れません。ご冥福をお祈り申し上げます。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

ワオ!と言っているユーザー

地域医療の見え方  2015.May.27;1(19)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ビスホスホネート剤と骨折リスク-

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[ポイント]
■ビスホネート系薬剤では大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部の非定型骨折リスクとの関連は強く示唆される。
■ビスホスホネート剤の使用は3年を超えると骨折リスク増加に関連し、5年を目途に休薬することが推奨される。
■ボスホスホネート剤は骨折リスクの高い患者に用いることが推奨される。


[イントロダクション]
ビスホスホネート剤は骨粗鬆症に用いる薬剤であり、当然ながら骨折リスクを軽減する薬剤です。しかしながら添付文書の重大な副作用には「大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部の非定型骨折」との記載があり、骨折が有害事象として示唆されている薬剤でもあります。背景知識として2011年に報告された2つの文献を押さえておきましょう。

まず1つ目はカナダオンタリオ州の68歳以上の女性を対象に、人口ベースのコホート内症例対照研究で検討されたビスホスホネート剤の治療期間と大腿骨骨幹部骨折リスクを検討した研究です。(※1)

この研究は大腿骨転子下骨折あるいは大腿骨骨幹部骨折で入院した716人と年齢でマッチングした3568人を比較して経口ビスホスホネート剤との関連を検討しています。交絡調整は、社会的地位、エストロゲン、ステロイド、利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ワルファリン、PPI、レボチロキシン、スタチン、傾向糖尿病薬、インスリン、ベンゾジアゼピン、ACE阻害薬/ARB、コリンエステラーゼ阻害薬、抗けいれん薬、オピオイド、抗精神病薬、抗うつ薬、うつ、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病、認知症、高血圧、うっ血性心不全、失神、喘息、慢性閉塞性肺疾患、脳卒中、TIA,過去の骨粗鬆症性骨折、骨密度検査等

大腿骨転子下骨折あるいは大腿骨骨幹部骨折リスクを以下にまとめます。
ビス剤使用期間とオッズ比
100日未満 100日~3年 3~5年 5年以上
reference 0.90[0.48~1.68] 1.59[0.80~3.15] 2.74[1.25~6.02]


これをみると3年以上の使用で有意なリスク上昇が示されていることが分かります。少なくとも5年以上のビスホスホネート剤の使用ベネフィットは不明が多いわけです。

骨粗鬆症を有する閉経後女性もしくは50歳以上の男性を対象として、ビスホスホネート系薬剤を5年以上継続して治療するか、5年で中止するかを比較したランダム化比較試験及び非ランダム化比較試験3研究(解析対象1443人)のメタが報告されています。(※2)

その結果、

・非脊椎骨折:相対危険0.97[95%信頼区間0.77-1.23]
・椎体骨折:相対危険0.61[95%信頼区間0.32-1.19]
・形態骨折:相対危険0.90[95%信頼区間 0.50-1.64]

といずれも明確な差は出ませんでした。もと文献の妥当性こそ高くないものの、5年をめどにビスホスホネート剤を中止することは推奨される印象です。

[ビスホスホネート剤の長期投与]
2011年の2報、これだけで5年をめどに休薬すると確固たる決断をすることもまた悩ましい部分ではあるでしょう。2013年にはさらに観察研究2件が報告されており、2011年の示唆を補完するものとなりそうです。順にみていきましょう。

65歳以上の女性を対象にビスホスホネート剤の長期使用と大腿骨頸部骨折との関連を検討した症例対照研究が報告されています。(※3)

この研究は、スペインにおけるGeneral practice researchのデータベースから65歳以上の女性2005年1月1日から2008年12月31日の間に大腿骨頸部骨折と診断された2009例と年齢、暦年でマッチングした対照10045例を対象にビスホスホネート剤の使用有無を比較し、大腿骨頸部骨折を検討しています。平均年齢82.4歳でした。

調整した交絡因子は、喫煙、BMI、アルコール依存、骨折既往、腎臓病、脳卒中、認知症、リウマチ、糖尿病、てんかん、吸収不良、パーキンソン病、PPIの使用、抗不安薬、鎮静剤、抗うつ薬、降圧薬、経口ステロイド、ラロキシフェン、ホルモン補充療法、チアゾリジン系薬剤の使用でした。
主な結果を以下にまとめます。
この研究全体では大腿骨頸部骨折に明確な差を認めませんでした。オッズ比1.09[0.94~1.27]

ビス剤の使用期間
使用期間 調整オッズ比[95%信頼区間]
30日以上1年未満 1.20[0.97~1.47]
1年以上3年未満 0.94[0.74~1.20]
3年以上 1.15[0.82~1.60]


ビス剤を最初に 使用してからの期間
期間 調整オッズ比[95%信頼区間]
30日以上1年未満 0.85[0.60~1.21]
1年以上3年未満 1.02[0.82~1.26]
3年以上 1.32[1.05~1.65]


この研究では、ほとんどの解析で統計的有意差は出ていませんが、おおむね使用期間が短ければ骨折減少傾向に、長ければ増加傾向にあるという可能性が示唆されています。ただ、短期での使用でも骨折リスクが有意に減少しないという結果が印象的でした。

同時期に、65歳以上の女性を対象にビスホスホネート剤の使用と非定型大腿骨骨折のリスクとの関連を評価したコホート内症例対照研究が報告されました。同じくスペインのGeneral practice research databaseを用いています。脱退骨転子下または幹部骨折を起こした症例44人と骨折のない対照220人(平均82歳)を比較しています。ビスホスホネートの使用と非定型大腿骨骨折リスクを検討しました。

調整した交絡因子は喫煙、アルコール依存症、BMI、骨折既往、腎疾患、吸収不良、脳卒中、認知症、関節リウマチ、糖尿病、てんかん、パーキンソン病、甲状腺疾患、PPI、抗不安薬、鎮静薬、抗うつ薬、降圧薬、コルチコステロイド、ラロキシフェン、ホルモン補充療法、チアゾリジンの使用です。

ビス剤の使用割合は症例で29.6%、対照で10.5%であり、非定型大腿骨骨折オッズ比は4.30[95%信頼区間1.55~11.9]と有意な上昇を示しました。先の研究ではリスクが減るかどうかはよくわからないという結果でしたが、こちらの解析では有意に上昇しています。使用期間ごとのリスクを以下にまとめます。

ビス剤の使用期間
使用期間 調整オッズ比[95%信頼区間]
使用なし 1 (ref.)
1年未満 2.55 [0.47 〜 13.7]
1年以上3年未満 1.68 [0.36 〜 7.85]
3年以上 31.9 [4.05 〜 251]

オッズ比を見るとかなり驚異的な数値が算出されています。症例数が少ないため信頼区間の幅が広く、たまたま極端な結果に至ったのかもしれませんが、やはりビス剤は基本的には3年以上使用すべきではなく、少なくとも5年を目途に休薬することはこれら知見を踏まえてより強く推奨される印象です。


[最新のメタ分析から]
これまでの研究は、ビスホスホネートの使用が非定型大腿骨骨折の増加発生を示唆していました。ビスホスホネートの使用と非定型骨折のリスクを増加させるかどうかを検討したメタ分析が報告されています。(※5)

対象となったのは観察研究、ランダム化比較試験で、ビスホスホネート剤の使用あり、と使用なしを比較した研究10研究(658497人が解析対象)をレビューに含めました。なお2名の著者が独立して評価するなど配慮されています。

大腿骨転子下・骨幹部骨折リスクは有意な上昇を示しています。
・調整オッズ比1.99[95%信頼区間1.28-3.10] I 2 統計量 84.3
転子下骨折は
・調整オッズ比 2.71 [95%信頼区間1.86-3.95] I 2統計量83.6%
幹部骨折は
・調整オッズ比2.06 [95%信頼区間1.70-2.50] I 2統計量 29.7%

とかなり衝撃的な結果となっています。
ビスホスホネート剤は安易に使用せず、骨折既往のある患者などハイリスクな患者のみに用い、(※6)3年以上の使用は慎重に、少なくとも5年を目途に休薬することが強く推奨されます。

[参考文献]
(※1)Park-Wyllie LY, Mamdani MM, Juurlink DN.et.al. Bisphosphonate use and the risk of subtrochanteric or femoral shaft fractures in older women. JAMA. 2011 Feb 23;305(8):783-9. PMID: 21343577
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21343577
(※2)Fraser LA, Vogt KN, Adachi JD.et.al. Fracture risk associated with continuation versus discontinuation of bisphosphonates after 5 years of therapy in patients with primary osteoporosis: a systematic review and meta-analysis. Ther Clin Risk Manag. 2011;7:157-66. PMID: 21691586
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21691586
(※3)Erviti J, Alonso A, Gorricho J.et.al. Oral bisphosphonates may not decrease hip fracture risk in elderly Spanish women: a nested case-control study. BMJ Open. 2013 Feb 20;3(2). pii: e002084. PMID: 23430594
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23430594
(※4)Erviti J, Alonso A, Oliva B.et.al. Oral bisphosphonates are associated with increased risk of subtrochanteric and diaphyseal fractures in elderly women: a nested case-control study. BMJ Open. 2013 Jan 30;3(1). pii: e002091. PMID: 23370011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23370011
(※5)Lee S, Yin RV, Hirpara H.et.al. Increased risk for atypical fractures associated with bisphosphonate use. Fam Pract. 2015 Apr 5. pii: cmu088. [Epub ahead of print]PMID: 25846215
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25846215
(※6)Black DM, Bauer DC, Schwartz AV.et.al. Continuing bisphosphonate treatment for osteoporosis--for whom and for how long? N Engl J Med. 2012 May 31;366(22):2051-3. PMID: 22571169
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22571169

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■緑茶と死亡リスク■
Saito E, Inoue M, Sawada N.et.al. Association of green tea consumption with mortality due to all causes and major causes of death in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study (JPHC Study). Ann Epidemiol. 2015 Mar 25. pii: S1047-2797(15)00096-4. PMID: 25900254
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25900254
背景と研究デザイン:日本の大規模コホートを用いた緑茶と死亡リスクを検討した前向きコホート研究(JPHC Study)

P:40歳~69歳の日本人90,914人
E&C:緑茶の摂取量
O:総死亡、
追跡期間:18.7年

緑茶の消費量が1Cpa未満/日の集団と比較して、
▶男性の総死亡リスク
・1-2 cups/day 調整ハザード比0.96[95%信頼区間0.89-1.03]
・3-4 cups/day 調整ハザード比0.88[95%信頼区間0.82-0.95]
・5 cups/day  調整ハザード比0.87[95%信頼区間0.81-0.94]
・P for trend <.001
▶女性の総死亡リスク
・1-2 cups/day 調整ハザード比0.90[95%信頼区間0.81-1.00]
・3-4 cups/day 調整ハザード比0.87[95%信頼区間0.79-0.96]
・5 cups/day  調整ハザード比0.83[95%信頼区間0.75-0.91]
・P for trend <.001
緑茶の消費と死亡リスク減少との関連が示唆された。

■コリンエステラーゼ阻害薬の肺炎リスク■
Lai EC, Wong MB, Iwata I,et.al. Risk of Pneumonia in New Users of Cholinesterase Inhibitors for Dementia. J Am Geriatr Soc. 2015 Apr 27. PMID: 25912671
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25912671
背景と研究デザイン:高齢者の認知症におけるドネペジル、ガランタミン、リバスチグミの使用と肺炎のリスクを比較検討したメディケアのデータベースを用いた後ろ向きコホート研究。

P:メディケアのデータベースより、65歳以上で新規にコリンエステラーゼ阻害薬の投与を受けた35,570人(女性75%)
E:ガランタミンの使用1,176人、リバスチグミンの使用4,220人
C:ドネペジルの使用30,174人
O:肺炎の発症
肺炎リスクはドネペジルに比べて
・リバスチグミン:ハザード比0.75[95%信頼区間0.60-0.93]
・ガランタミン:ハザード比0.87[95%信頼区間0.62-1.23]
肺炎リスクはドネペジルに比べて、リバスチグミンで低かった。

■予防接種時の苦痛軽減介入■
Cerne D, Sannino L, Petean M.et.al. A randomised controlled trial examining the effectiveness of cartoons as a distraction technique. Nurs Child Young People. 2015 Apr;27(3):28-33 PMID: 25858408
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25858408
背景と研究デザイン:予防接種に関連した苦痛と痛みは子供、介護者や医療従事者のための重要な問題である。予防接種時に子供にアニメを見てもらう事で、苦痛や疼痛を軽減できるかどうかを検討したランダム化比較試験

P:6歳の小児35人
E:アニメを見てもらいながら予防接種
C:通常ケアによる予防接種
O:スケール評価に基づく苦痛の程度

苦痛のレベルはアニメを見てもらいながらのほうが有意に低かった。

■抗凝固薬の消化管出血リスク■
Chang HY, Zhou M, Tang W.et.al. Risk of gastrointestinal bleeding associated with oral anticoagulants: population based retrospective cohort study. BMJ. 2015 Apr 24;350:h1585. PMID: 25911526
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25911526
背景と研究デザイン:消化管出血リスクに関して、ワルファリンと比較して、ダビガトラン、リバーロキサバンの安全性を評価した後ろ向きコホート研究

P:米国における18歳以上で過去6か月間に消化管出血や経口抗凝固薬の服用のない患者46 163人(平均57.6歳、女性45.3%)
E:ダビガトランの使用4907人、リバーロキサバンの使用1649人
C:ワルファリンの使用39 607人
O;消化管出血発症

交絡への配慮:propensity score(重みづけ)、年齢、非ステロイド性抗炎症薬の使用。
ワルファリンと比較した消化管出血リスクは以下の通り
・ダビガトラン;調整ハザード比1.21[95%信頼区間0.96~1.53]
・リバーロキサバン:調整ハザード比0.98[95%信頼区間0.36~2.69]

結果的には有意な差が出ていないが、ワルファリンと比較してダビガトランで50%以上、リバーロキサバンで2倍以上のリスク増加の懸念は除外できないとしている。

■抗凝固薬の消化管出血リスク②■
Abraham NS, Singh S, Alexander GC.et.al. Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study. BMJ. 2015 Apr 24;350:h1857. PMID: 25910928
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25910928
背景と研究デザイン:消化管出血リスクに関して、ワルファリンと比較して、ダビガトラン、リバーロキサバンの安全性を評価した後ろ向きコホート研究

P:メディケアデータより新規にダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンを処方された患者92816人
E:ダビガトランの使用8,578人、リバーロキサバンの使用16,253人
C:ワルファリンの使用67,985人
O:消化管出血リスク

交絡への配慮:傾向スコアマッチング

ワルファリンと比較した消化管出血リスクは以下の通り
▶心房細動患者
・ダビガトラン:ハザード比0.79[95%信頼区間0.61~1.03]
・リバーロキサバン:ハザード比0.93[95%信頼区間0.69~1.25]
▶非心房細動患者
・ダビガトラン:ハザード比1.14[95%信頼区間0.54~2.39]
・リバーロキサバン:ハザード比0.89[95%信頼区間0.60~1.32]

新規抗凝固薬の消化管出血リスクはワルファリンと同等であったが、年齢別にみると76歳以上でリスク増加の懸念が残るという結果。



■ジゴキシンと死亡リスク■
Vamos M, Erath JW, Hohnloser SH.et.al. Digoxin-associated mortality: a systematic review and meta-analysis of the literature. Eur Heart J. 2015 May 4. pii: ehv143. [Epub ahead of print] PMID: 25939649
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25939649
背景と研究デザイン:心房細動やうっ血性心不全に対するジゴキシンの使用に関してネガティブなデータが存在する。ジゴキシンと死亡リスクに関するシステマテックレビュー・メタ分析

P:19の研究に参加した326426人(心房細動9研究、うっ血性心不全7研究、AF+CHF3研究)
E:ジゴキシンの使用あり
C:ジゴキシンの使用なし
O:死亡リスク

評価者バイアス:経験豊富な2人のレビューアーが独立して評価
元論文バイアス:ランダム化比較試験のほか、RCTの事後解析や前向き研究は後ろ向き研究を含む
出版バイアス;重大な出版バイアスは認めない
異質性バイアス:異質性は高い I2統計量87.5%

ジゴキシンは死亡リスクを有意に上昇させる
・ハザード比:1.21[95%信頼区間1.07~1.38]

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■レパグリニドとST合剤の併用■
Roustit M, Blondel E, Villier C,et.al. Symptomatic hypoglycemia associated with trimethoprim/sulfamethoxazole and repaglinide in a diabetic patient. Ann Pharmacother. 2010 Apr;44(4):764-7. PMID: 20197475
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20197475
糖尿病患者おけるスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)とレパグリニドとの併用に起因すると思われる臨床的に有意な低血糖の症例報告。

レパグリニド1㎎を1日3回投与されている、腎機能障害を有する76歳の糖尿病患者。低血糖の既往はなかった。5日後、尿路感染症のためST合剤の投与を受け、症候性の低血糖を発現。レパグリニド、ST合剤を中止し、ブドウ糖を静注。ST合剤を中止したままレパグリニドを再開したがその後低血糖は発現しなかった。低血糖はST合剤とレパグリニドの相互作用による可能性が推測された。

レパグリニドの代謝には主として薬物代謝酵素CYP2C8が関与している。トリメトプリムはCYP2C8を阻害し、レパグリニドの血中濃度を上昇させる可能性がある。通常では起こりにくいと考えらえるが腎機能低下患者がゆえに、トリメトプリムのCYP2C8阻害効果が蓄積したものと推測される。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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前回に引き続き、ビスホスホネート系薬剤の有害事象についてまとめてきました。ビス剤の有害事象として大きく4つ、骨折リスク、発がんリスク、顎骨壊死リスク、そして心血管リスク、今後も継続してフォローしながら、ビス剤の考え方、使い方を詰めていきたいと思います。

注目すべき論文としてはジゴキシンと死亡リスクのレビューでしょう。これまで、複数の論文で示唆されていたテーマだけに、このレビューでまずは、見解がまとまった印象です。元論文はすべてRCTではありませんが、害の報告が故に軽視できない点はあります。異質性は高く研究間にばらつきがありそうですが、そのベネフィットも考慮すれば、高齢者での漫然とした使用に対する再検討の余地は十分にあるでしょう。

レパグリニド、個人的にはあまり実臨床で見る機会が少ないのですが、こんな論文もあります。
Schramm TK, Gislason GH, Vaag A,et.al. Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a previous myocardial infarction: a nationwide study. PMID: 21471135
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21471135
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

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