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高齢者の便秘[地域医療の見え方.2016.Dec.16;2(77) ]

スレッド
[疫学]
便秘の罹患率は年齢と共に増加し、その有病割合はセッティングによって異なるが、80歳以上の成人では50%近くになると推定されており、地域社会に住む高齢者の40%、施設の60%が罹患しているとも言われている。

・Am J Gastroenterol. 2004 Apr; 99(4):750-9.
・J Epidemiol Community Health. 1993 Feb; 47(1):23-6.

また、別の研究によれば、地域在住の65歳以上高齢者での有病割合は女性で26%、男性で16%であり、この割合は、84歳以上の女性では34%、男性では26%に増加する。また、長期介護居住者の場合、その有病割合は80%とも言われている。

・Am J Gastroenterol. 2012 Jan;107(1):18-25
・Aging (Milano). 1991 Jun;3(2):161-70
・BJU Int. 2011 Jan;107(2):254-61.

排便時のいきみは、しばしば高齢者にみられる症状であり。65歳以上の地域在住高齢者の65%で発生し、これらのうち約40%で硬便が報告されている。

・CMAJ. 2013 May 14; 185(8): 663–670.
・Am J Gastroenterol. 2012 Jan; 107(1):18-25; quiz 26

[定義]
便秘の診断にはいくつかの定義とツールがある。端的に言うと、排便頻度が稀なため、満足感が無いもしくは、排便が困難または不完全な状態のことである。

・Can J Gastroenterol. 2011 Oct;25 Suppl B:7B-10B.
・Gastroenterology. 2013 Jan;144(1):211-7

便秘は症状ベースの主観に基づくので、「正常」なるものは個人で異なる。研究者や医療従事者は、しばしば便通を定義するために便通の頻度や一貫性に頼っているが、患者は、張り、硬い便、鼓腸などの症状を呈する傾向がある。ローマIIIの基準は成人における便秘の診断のために良く引用されるが、臨床プラクティスというよりは研究において多く使用される。

・Can J Gastroenterol. 2007 Apr;21 Suppl B:3B-22B.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3206562/table/t2-cjg25007b/

[影響]
便秘がもたらす影響は深刻である。虚弱高齢者では、過度の緊張が、失神発作、または冠状動脈または脳虚血を引き起こす可能性がある。

・J Am Geriatr Soc. 1973 Aug;21(8):383.
・Atherosclerosis. 2016 Mar;246:251-6.

またそれほど深刻ではないかもしれないが、便のつまりをもたらす便秘は、食欲不振、吐き気および機能低下に伴う疼痛を誘発する。

・N Engl J Med. 1989 Sep 7; 321(10):658-62

実際、便秘がもたらした腸内に長く滞留している糞便により、穿孔性潰瘍、穿孔および死亡が報告されている。

・J Am Geriatr Soc. 2007 Jun; 55(6):965-7.

[便秘を誘発する薬剤群]
(Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2009; 23(6):875-87、CMAJ. 2013 May 14; 185(8): 663–670より引用)

■OTC医薬品
・カルシウムまたはアルミニウムを含む制酸薬 ・カルシウムサプリメント ・非ステロイド性抗炎症薬 ・経口鉄サプリメント ・抗ヒスタミン剤
■処方薬
・オピオイド ・カルシウムチャネルブロッカー ・抗パーキンソン病薬 ・抗コリン作用薬 ・利尿薬 ・抗精神病薬 ・三環系抗うつ薬

[便秘に関連する疾患]
(Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2009; 23(6):875-87、CMAJ. 2013 May 14; 185(8): 663–670より引用)

■代謝性疾患
・糖尿病 ・甲状腺機能低下症 ・高カルシウム血症 ・低カリウム血症
■消化器系疾患
・結腸直腸癌 ・憩室症 ・消化管狭窄 ・痔核 ・直腸脱出
■神経疾患
・脳卒中 ・パーキンソン病 ・認知症 ・多発性硬化症 ・自律神経障害
■精神疾患
・うつ病 ・不安 ・身体化障害
■結合組織
・全身性硬化症 ・アミロイドーシス

[薬物治療]

おもなランダム化比較試験の要約は以下参照
http://www.cmaj.ca/content/suppl/2013/01/28/cmaj.120819.DC1/con-gandell-1-at.pdf
高齢者における薬物治療のリスクベネフィットは以下参照
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3652936/table/t1-1850663/
高齢者における便秘管理の段階的アプローチは以下参照
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3652936/table/t2-1850663/
慢性便治療のエビデンスと推奨は以下参照
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3206558/table/t3-cjg25022b/
linaclotideの有効性は以下参照
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3388525/table/table3-1756283X12443093/
prucaloprideの有効性は以下参照
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3388525/table/table2-1756283X12443093/

2016年に報告されたネットワークメタ分析ではピコスルファートNaの有用性が示唆されているが、便秘治療薬間の有効性差異はあまり明確ではない。

・Gut. 2016 Jun 10. pii: gutjnl-2016-311835(PMID27287486)

本邦で汎用されるマグネシウム製剤では電解質異常や薬物相互作用に注意したい。

[参考文献]
・Can Fam Physician. 2015 Feb; 61(2): 152–158.
・CMAJ. 2013 May 14; 185(8): 663–670
・Can J Gastroenterol. 2011 Oct; 25(Suppl B): 22B–28B.
・Clin Colon Rectal Surg. 2012 Mar; 25(1): 12–19.
・Can J Gastroenterol. 2007 Apr; 21(Suppl B): 3B–22B.
・Therap Adv Gastroenterol. 2012 Jul; 5(4): 233–247.
・Therap Adv Gastroenterol. 2011 Jan; 4(1): 37–48.

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