7月
20日,
2021年
落語に学ぶ「リーダーシップ」(第四話)
落語に学ぶリーダーシップ。今日は第四話、リーダーシップが落語の中でどう描かれているか。それを具体的に見て行きましょう。今日の切り口は「対話力」です。
対話力
落語は当たり前ですが、噺家がお客様にお話を伝えるもの。従って、その「対話力」がリーダーシップを支えるものの一つ、と私は考えています。
ここで敢えて「対話力」と表現したのには理由があります。単に話をしているだけでは無いからです。
つい我々は日常会話において、自分の「伝えたい」ことを口にすることに注力しています、
しかし一方、相手がそれを「受け取っている」かどうかに、それほど注目していない、忘れてしまっていることが多い気がします。
高座に上がる噺家は、観客席のお客様一人ひとりと直接会話をやり取りする訳ではありません。にも拘わらず、なぜ観客と「一体感」を醸成できるのか?
落語なのでもちろん、お話の中身や流れが面白いことがその理由ではあります。
しかし恐らく、高座と客席と物理的に離れていて、難しいと感じながらも噺家は「対話」を成立させるべく努力しているように感じます。
例えば、落語の導入部分、すなわち「マクラ」の時に、何気ない世間話や身の上話をしながら
「今日のお客さんはどんな感じの人たちなんだろうか?」と反応を観察しているように思います。
観客の年齢層や男女比、会場の地域性など、様々な状況を勘案して、アイスブレークのネタを用意していて、観客からの反応に基づいて瞬時にそれらを取捨選択しているのではないでしょうか?
これに比べて、職場や会議などでの「お偉いさん」の話のあまり面白くないこと!
話をすることを生業にしている落語家と比べてしまっては実も蓋もないですが、社長・経営者や組織のリーダーは、社員やチームメンバーを言葉で動かすことを仕事にしている人たちとも言えます。
従って訓示やスピーチがとっても「面白い」ものでは無くても、聴衆に残るものであって欲しいと感じます。
そういう観点で、リーダーが落語から得られるヒントとしては、二点だけ挙げたいと思います。
1.具体的なエピソードを活用:話に臨場感をイメージを沸かせる
落語が面白く、イメージが沸きやすい一つの理由は、具体的なエピソードを語るからだと考えています。つい組織のリーダーの話は得てして、概念的なお題目や精神論になってしまいがち。
抽象化や一般化の発想は重要ではありますが、聴衆にはなかな実感として伝わらず、腹落ちできないことが多い気がします。
「今朝、出勤途上の山手線の車内でこんな光景に出くわしました。ある男性が、そうですね年齢は70代くらいでしょうか....」
こんな下りで訓示やスピーチを進めていくと、社員やチームメンバーは、何がこれから起こるんだろう?とぐっと引き込まれるかと思います。そして、話の途中で、
「みなさん、みなさんならこんな時、どう対応しますか?」
と少し投げかける。
具体的な状況やイメージが沸いている聴衆は、そのシーンに登場する一人として、自分事として想いや行動を考えるきっかけになるのでは?と思います。
2.話の終わり方が重要:ポジティブに、かつ、行動を引き出す
これは落語の将にクライマックス、サゲ(落ち)を活用したものです。ヒトはポジティブな気持ちになった時のほうが、行動を起こしやすいもの。
社員やチームメンバーを動かすことが仕事の一つであるリーダーは、ぜひこの「ポジティブ+行動」を話の最後で伝えると良いと思います。
エピソードで具体的なイメージを描いてもらい、自分ならどう感じるのか?と自分事になった聴衆に対して、例えば
「我が社の皆さん、一人ひとりが出来ることは何でしょうか?そして、それを行動に移した時、我々のお客様はどのように感じてくれるでしょうか?」
「お客様の笑顔を増やして行きたいので、こんな活動を進めて行きましょう!」
などのような締めくくりはいかがでしょうか?
聞いていて単純に楽しい、面白い落語から、色々なものが見えてくるように感じます。
ではまた明日!
by 「働くあなたを元気にする」コーチ