小さな風をおこし 君は走りぬけてゆく その無邪気な微笑みと まっすぐな瞳を忘れないで 自由な翼が折れて飛べなくなっても 君の澄んだ想像力さえあれば 目的地にたどり着くからだいじょうぶ 君は素晴らしい 微笑みの持ち主だから 君はやさしい こころの持ち主だから どうか その瞳の輝きを忘れないで
我々の豊かな暮らしへ 原子の力は明るく応えてくれた 目に見えないその存在に 愛着がわく具現物が欲しかった だがお前の力は 我々を脅かす存在になった ゴジラよ 今まで我々の味方だったはず なぜ 共存を拒むのだ なぜ 暴れるのだ 破壊し続けながら進化を遂げる その生き方は悲しみへと進む産物であった 愛情なく生まれた怒り そして今 被害を食い止めるため 冷却により自らの手でその動きを止めた ゴジラよ お前をつくり上げたことすら 間違っていたのだろうか ゴジラよ 冷たくなったお前を見ると 虚しき中を愚かさだけが暴れ出す
さあ さあ いらっしゃい いらっしゃい 今日はとびっきりの詩が入ってるよ そこのお嬢さん 湿気た面していたら イケメンも振り向かないよ 北海道から入荷した この『恋の成就記念日』を読んでみな 新しい恋が始まるよ 読まなきゃ損、損 さあ さあ 読みねえ 読みねえ ここの詩はみんな 金なんて要らねえよ ほら 持ってけ泥棒 そうかい ありがとうよ うれしいねえ 毎度あり いらっしゃい いらっしゃい 叙情詩に叙景詩に叙事詩 新鮮な擬人法の散文詩もあるよ そこのお兄さん 難しい面していたら 旬を味わえねえよ この『蜘蛛の糸のハンモックの上の初冬』を読んでみな とびっきりワイルドに魂を焦がせるよ 読まなきゃ損、損 さあ さあ 読みねえ 読みねえ そうかい ありがとうよ お客様は神様です 毎度あり さあ さあ いらっしゃい いらっしゃい 本日最後の作品だ 残り物には福があるよ この『晩餐の毎日』を読んでみな 身も心もスカッっと元気で 明日の活力になることは間違いねえ おっと そこの仏頂面の社長さん サービス サービス 読まなきゃ損、損 さあ さあ 読みねえ 読みねえ あいよっ 毎度あり これにて完売 明日も新鮮な詩を お待ちあれ 毎度
タタン タン タン ピアノの黒盤を飛ぶように だって あなたの笑い声が教室に響き しあわせがひろがって あなたはわたしの名前を呼んで 英語の教科書を見せ これっ なんて読むの って ただ それだけなのに それだけでない思い 胸が痛くなって いつも夢に向かっているあなた たいそうな夢もないわたし だからかもしれないけど 伝えることもできないアイラブユーを 夢みてしもうのかも 放課後 夢みる階段ではずみ 恋のメロディを口ずさむわたし 明日も また あなたに逢える 今はそれだけで
前に進むムーンウォーク ぎこちない朝の始まり いつものコンビニストア いつものお兄さん おにぎりは別にしますか ああ すぐに食べるから 手にしたおにぎりで ズボンのポケットをふらませる私 一向に芝居が上達しないふたりの会話 階段か エスカレーターか 優柔不断なティミッドワーカー 結局 エスカレーターだ 下腹に手をやり まだこれなら・・・ おにぎりを頬張り 根拠のない大丈夫保険に入る ひじ鉄が私の背中に ゴリゴリくる メガネを曇らせ 車内で小競り合い 私はそいつの頭を 叩いてるイメージで 飽和状態寸前 でも 私のチンケな良心が しつこく囁く ここは我慢しろ ここは我慢だ お前には家族がいるんだろ 我慢だ まあ ケンカする度胸もないけど あの あのですね その肘が背中にあたって とても痛いのですが・・・ 混んでるんだからよ グチャグチャ言うんじねえよ はい すみません なぜか私が謝っている 気弱なティミッドワーカー 電車は新宿を抜ける 私から二十センチ範囲内には もう誰もいない そう誰もいない ここは 私のアナーキーエリアだ 四分の一畳の幸せにホッとする んっ お嬢さんが 私の顔をちらり またちらり これはあのお笑い芸人の それって おいらに惚れているんじゃないの ドンピシャで 頭の中 ハモっている私 やはり自惚れティミッドワーカー それって お嬢さんの知り合いに 似ているだけじゃないの また頭の中でハモっている 天然ティミッドワーカー なんだかんだで やっと職場に着く 更衣室にはまだ誰もいない ひとりで寂しいティミッドワーカー もうそのティミッド何とかという ノリはやめようぜ 自分ツッコミ つり革にぶら下がった 手にはバイ菌 私にはよく見える ああ 気持ち悪い 洗面台で ブクブク泡立てて手洗い そして 今朝もヘアがキマっているのか 鏡をチラリんと あっ キマって・・・ てっ言うか 大きなごはん粒 ほっぺに 付いてるじゃないか これか・・・ あの時のお嬢さんは・・・ 私のことを・・・ なんだか なんだかだな ふっう 説明しようもないため息 すでに疲れた 私は恥ずかしの 呆れたティミッドワーカー まあ それでも結構 朝のイベントを楽しむ 懐の隙間はまだあるようだ そう 私はポジティブな ハッピーヤッピーヒッピーポッピーピッピー ティミッドワーカーさ おいおい 朝から意味不明だし
どうやら水素が 二重結合された炭素に トランス状態で付いていると ヤバい、らしいよ パクパク 僕ら日本人はいつの間にか 腐らない食物を摂取して 便利さ 手軽さ 安さ の 副作用がジリジリと 現れ出しているんじゃん なんて言われているよ 僕は専門家じゃないから 正確なことはわからないけど なんだか ヤバい、らしいよ 一度 疑ってみても いいんじゃない カラダに入ってしまう 食物のことだから そういえばこの間 冷蔵庫に入っていた 一ヶ月前のコンビニ弁当 ビニール袋に入っていたから つい忘れていたんだ やっちまったよ そう思い弁当の様子を見ると ご飯にカビが生えてないし 唐揚げも美味しそう 匂いも腐っていない感じ これって オモチャ弁当 プラスチックかよ そんなことあったっけなあ ああ、怖っ そのうち僕らのカラダも プラスチックになっちゃうんじゃない 見えないから オバケみたいにゾッとする 調べよう、っと 得体の知れないというのが 一番怖いからね それを 見えるようにしないとね うーん 塩分 糖質 は、マークしていたが ノーマークだったよ トランス脂肪酸 知らなかったの僕だけ?
愛を知らぬ者の 愛という言葉は 空気に触れた瞬間 嘘という言葉に変わる 父の口から 愛という言葉を 一度だけ聞いたことがある 母親は俺を産んで すぐに逝ってしまった おっぱいを欲しがる 赤ん坊を残して どれだけ無念だったか 「どうかこの子が 幸せになりますように」 そう願ったことだろう それが俺の信じている愛だ 父の口から吐きだされた愛の言葉 私の中にあっただろう愛のカタチは いとも容易く崩れ堕ちた 二十歳の私はまだ愛を知らぬ者だった 戦争を体験している父親世代 愛なんて言葉は小っ恥ずかしいから 吐き出さないのだと思っていた それは違っていた 愛とは別格の言葉 愛は心のずっと深いところに 途轍もない優しさで燃えている 容易く吐き出し 冷やすものではないと 父から教わった
2030年4月 国から一通の恋文 まさか老体の私にこれが来るとは 子どもの頃 叔父の洗脳されていた話を思い出す 命を捧げることに疑問など持たなかったという 自分も国のためにバンザイと突っ込んでゆく そんな歴史を繰り返す時が来た 何てことだ 今まで社会のために骨身を削り ヨタヨタになるまで働き 家族の幸せを信じて 闘ってきたんだ そんな私にも あなたを愛しています だからもっとお国を愛しなさい 弛まない志しで弾丸になりなさい と 明日 軍隊が迎えに来る 衝撃は 恐怖に変換され 膨張し続け ことの次第を把握すれば バンッ 音を立て現れしは 怒りだ 政治に無関心だった自分への 怒りだ 手遅れの怒りだ 今まで何を勉強してきたのだろう 何のために生きてきたのだろう なぜ流されてしまったのだろう Love and Peace この国は夢の島だったのか 悲しい歴史を乗り越え 辿り着く筈だったのに 弾丸になることで 見知らぬ国のひとを苦しめ 私は何処へ行ってしまうのだろう 愚かに繰り返す殺人兵器の一部になり 桜散ることを勇敢だと讃える この国 いや違う この国の本音は 桜色の恋文に花びらを散りばめて 歴史を繰り返し遊びたいだけなんだ 今 すべての心を失う 此れ無情 明日 軍隊が迎えに来る 桜咲く頃 桜の木は一本も無い
僕は天空の図書館にいる 人の上、車の上、ビルディングの上 誰にも届かぬ遠いところで 真っ白なページの雲を読んでいる そよそよと感じてくる柔風 程よいほどの光のシャワー 僕のエッセイに希望を与えてくれる 誰もいないのに寂しくない気持ち 読書の時間は静かに優しく 見知らぬ鳥がめくったページに現れる 僕と同じ高さで飛んでいても 違和感などありません もっと天高く翼を広げて飛んで欲しい 僕よりもお日様は低いところで 足元を照らし始めている 暗くなってはたいへんと月が光りだす 読書の夜は幸せだけが微笑んで 誰もいないのに嬉しくなる気持ち 天空の図書館は愛しく夢みる
さらりさらさらさらり風 さらなる旅路にさらりと吹いて 僕はさらりさらりと進みたい さらりさらさら さらりさら さらりさらさらさあらさら 立ち止まる気はさらさらないよ さるものは追わないように さらりさらさらとさようなら さらりさらさら さらりさら さらりさらさらさあらさら さらさらさらさらり風 次の街へさらにさらさら吹いて さらりさらさらさようなら さらりさらさらまた会う日まで さらりさらさらさようなら