メキシコ湾における原油流出事故(その2)
6月
24日
BPの原油流出事故により、オバマ政権は5月末に500フィートを越える深海での海底油田掘削を6ヶ月間禁止する通達を出したが、禁止通達は既に認可を受けている33の掘削井の作業を禁止しかつ新たな認可を与えないもので、そのために影響を受ける主にルイジアナのビジネスが地元の連邦裁判所に禁止通達無効の訴訟を起し、またルイジアナ州知事もこの訴訟を支持していた。昨日、ルイジアナ連邦裁判所のフェルドマン判事がひとつの掘削井の事故によりすべての掘削井が危険と断定するのは根拠が不十分とし、この通達を無効とした。
この決定に対し、ホワイトハウスは数日内に連邦巡回区控訴裁判所に控訴する予定だ。環境保護関係者もフェルドマン判事の決定は短期的なビジネスを保護するだけで長期的ヴィジョンを欠いていると批判し、また一部のメディアはフェルドマン判事がエネルギー関連企業の株主であり、特に今回事故を起したトランスオーシャン社の株式も所有していたことを問題視している。
当分の間、深海における原油掘削について政治的な論議が沸騰することだろう。ところでチェイニー前副大統領は原油流出事故を起した掘削作業を行っていたグループの一員であるハリバートン社の元会長であり、イラクにおけるハリバートン社の参画には色々と噂があったが、今回の原油流出事故についてはなぜか沈黙を守っている。
ところでBPの社長であるイギリス人のトニー・ヘイワードはロンドンに戻り、今後の原油流出事故対策は数年前のBPのCEOレースで負けたミシシッピ生まれのボブ・ダドレイに任せることになった。われわれから見ればイギリス人もアメリカ人も同じような考え方をすると思えるが、今回の事故が発生してからトニー・ヘイワードのコメントが何回も問題となったので、アメリカ人に任せることにしたようだ。
トニー・ヘイワードは先週末より休暇に入り52フィートのヨットに乗って大西洋でのヨットレースに参加しており、連日数万人がメキシコ湾岸で原油汚染と闘っていることから批判されているが、BPのスポークスマンは彼が4月以来の激務から解放される権利を理解してほしい、と言っているが、説得力に欠ける気がする。
森元総理大臣が愛媛丸の事故の際にゴルフをしていたことで辞任に至った日本では、大きな事故を起した渦中の責任者が休暇を取ることはきわめて困難だろう。イギリスと日本のビジネス風土の違いなのだろうか。