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くまごろうのサイエンス教室『New Horizonsと冥王星』

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New Horizons(NA... New Horizons(NASAより借用) New Horizonsで撮影... New Horizonsで撮影された冥王星(NASAより借用) New Horizonsで撮影... New Horizonsで撮影された冥王星(NASAより借用)
NASAは今年7月14日、2006年1月19日にCape Canaveralから打上げられた探査機『New Horizons』が冥王星の約12,500Km上空まで接近したことを確認し、同機が撮影した冥王星の写真を公開した。これまで人類が見てきた冥王星の写真は高性能な地上巨大望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたものだが、あまりにも遠くにあるためぼやけた画像であったのに対し、New Horizonsからの画像は極めて明瞭で、今後同機から送られてくるデータを解析することにより、冥王星がどのような物質でできているのか詳しくわかるだろう。

太陽から地球までの平均距離を1天文単位(1 AU)と称し、現在の定義では1億4,960万Kmであるが、冥王星は太陽から平均で約40AUも離れているため冥王星までの旅はきわめて長い。少しでも早く冥王星に到達するためにNew Horizonsは史上最速の秒速16.3Kmの対地球速度で打上げられた。このスピードを確保するために打上げロケットはAtlas V型ロケットに5基の補助ブースターが取付けられ、また探査機は軽量化されて総重量は465Kgしかない。因みに本年8月に打上げられた国際スペースステーションへの補給機である日本の『こうのとり5号機』の総重量はペイロード5.5トンを加えると約6トンであった。

宇宙探査機として史上最速で打上げられたNew Horizonsは木星付近を通過する際に木星の公転運動と重力を利用したSwing-byにより毎秒4Km加速して冥王星に向った。このSwing-byにより冥王星までの到達時間が約3年短縮されたと言われている。木星軌道を過ぎると太陽からの光が弱く、太陽光発電が十分機能しなくなる。そのためNew Horizonsは原子力電池を搭載しているが、エネルギー消費を節減するために冬眠状態となって半年に1度再起動と点検を繰り返して47億5,000万Kmもの距離を旅し、9年半かけようやくて冥王星の近くにたどり着いた。因みに原子力電池とはプルトニウムなどの放射性元素の原子核崩壊の際に発生するエネルギーを利用して発電するが、寿命が長いという特徴があるものの、打ち上げ失敗の際に放射性物質を撒き散らす恐れがあるため限定的に使用されており、これまでは木星軌道より外側の宇宙探査機だけに搭載されている。

New Horizonsには7種類の観測装置が搭載されており、可視光カメラの他にも地質や地形を観測する可視光赤外線撮像分光装置、大気の量や組成を調べる紫外線撮像分光装置、冥王星とその衛星のカロンの大気の温度、圧力、密度などの観測装置、冥王星から宇宙空間に放出される粒子線などの測定装置などが搭載され、蒐集された画像やデータは今後16ヶ月に渡って地球に送信し続けることになっている。New Horizonsは冥王星の周回軌道に入るためのエンジンを持たないため、冥王星の軌道を通過後、太陽系の外縁天体群であるエッジワース・カイパーベルトの天体を目指して飛行を続け、その天体を近くから観測する予定である。

冥王星に関する情報はこれから送信されてくるデータの解析を待たなければならないが、これまでにNew Horizonsによって新たに明らかになったことは冥王星の直径が2,370Km、衛星カロンの直径が1,208Kmであること、月のようにクレーターがたくさんあるのではという予想に反し、氷河が流れたような平坦な部分や3,500m級の山のような地形があること、冥王星の大気は地表から50Kmまでとその上80Kmまでの2層となっており、大気の成分はメタンが紫外線により分解されてできたエチレンやアセチレンではないかと思われること、冥王星の平均表面温度は零下230℃、水の氷らしきものや窒素や一酸化炭素でできた氷が存在するらしいこと、などである。

冥王星は太陽系の他の惑星とは異なり、太陽系惑星軌道面に対し17度傾いた軌道面を持っている。また水星、金星、地球、火星は中心に金属のコアを持つ岩石惑星、木星と土星は岩石と氷が主成分のコアのまわりに大量の水素ガスのある巨大ガス惑星、天王星と海王星は岩石が主成分のコアのまわりに厚い氷の層があり、その外側に水素の大気のある巨大氷惑星であるのに対し、冥王星は岩石のコアとこれをおおう氷の層でできている。太陽系の惑星は隕石のような微惑星が衝突を繰り返してできたと考えられているが、冥王星やエッジワース・カイパーベルトの天体は衝突が少なく、これらを詳しく調べることにより地球などの惑星成因の解明が期待される。
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zakkah
zakkahさんからコメント
投稿日 2015-10-06 16:27

こんにちは、くまごろう先生。

ご無沙汰しておりました。
東京周辺は、「めっきりと涼しく」、かような感じになってまいりました。

懸案の「安全保障法案」も一応可決され一歩前進です。続いて「TPP」交渉もなんとか良き方向に。
昨日はノーベル医学賞に日本人・中国人が受賞されると発表がありました。地味な微生物研究、漢方の処方が評価されたのは、同じ有色人種として誇りに思います。

扨、さて。。。
いつもながらの深い洞察力、鮮明なる論旨、興味深く拝しました。

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」は、順調に飛行を続けているようです。
目的の小惑星の名前が決まった!!との記事がありました。
すでにご存知かもしれませんが、転載致します。
『はやぶさ2の旅先は「Ryugu」 
小惑星の名称決定
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5日、探査機「はやぶさ2」が向かっている小惑星「1999JU3」の名前を公募したところ「Ryugu(りゅうぐう)」に決定したと発表した。
 JAXAによると、小惑星から岩石などの試料を持ち帰る計画が、竜宮から玉手箱を持ち帰る浦島太郎の物語に重なった。目指す小惑星には水を含む岩石があると期待されており、水を想起させる点も選定につながったという。
 神話由来の名前が望ましいとする国際ルールにも合致した。
 7月22日から8月31日までの募集期間に7336件の応募があった。そのうちRyuguの提案は30件あった。有識者の組織が9月に選定し、米国のチームを通じて国際天文学連合に提案、審査を経て同連合関連の小惑星リストに正式に掲載された。』
産経新聞、電子版より。

天空・・・宇宙は、ロマン溢れますね。

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くまごろう
くまごろうさんからコメント
投稿日 2015-10-07 07:30

zakkahさんコメント有難うございました。安全保障法案成立は海外から見れば遅すぎたくらいです。TPP基本合意も長期的な国益を考慮すれば大変結構なことですが、アメリカ議会が大局的な立場からTPPを批准することを念願しています。

確かにはやぶさ2も約3年半かけてりゅうぐうに到着し、地球への帰還は2020年の末、また冥王星は光でも4時間半かかるほど遠くにあり、宇宙はロマンがいっぱいですね。竜宮とはJAXAもとてもよい名前を選んだものです。

ふり返ってミクロの世界である素粒子の空間もロマンチックです。梶田教授がまたまたニュートリノでノーベル賞受賞、この分野での日本の先進性が証明されました。この受賞は他の多くの研究者や浜松ホトニックスをはじめとする参加企業の英知と努力によるものと思います。

宇宙物理学と素粒子物理学はどちらも宇宙の起源を解くために研究を行っています。われわれが見ることの出来る物質は宇宙にある物質の中の20%程度で他の80%はダークマターと呼ばれる未確認物体、でもその存在は間接的に証明されつつあります。毎年明らかにされる新事実にくまごろうは大いなるロマンを感じています。

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