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くまごろうのひとりごと

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くまごろうのサイエンス教室 『1メートルの長さ』

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アメリカでは物の長さや距離を測るのに今でもインチやフィートなどの単位を使うが、もともと1インチは成人男性の親指の幅(爪の付け根付近)、1フィートは親指からかかとまでの足の長さに由来している。古代中国でも親指の幅を基準に1寸、手を広げた時の親指から中指までの距離を1尺と定義しており、古代ではこのような人間の体を基準とした長さである身体尺が使われていた。しかし身体尺では個人差があり色々と不便を生じるため、文明の発達に伴い国ごとに長さを測る基準が制定された。

大航海時代を経た1790年代、長さの単位を国際的に統一しようということになり、フランスを中心とした当時のヨーロッパ諸国がメートルという単位を採用した。この単位は地球の北極から赤道を直交する南極までの線、すなわち子午線の長さの20,000,000分の1を1メートルと定義している。逆に言うと北極から赤道までの長さは10,000キロメートルとなる。そして白金とイリジウムの合金でメートル原器と呼ばれる基準となる器具を作り、メートル原器に刻まれた二つの目盛り線の間の距離が1メートルになった。くまごろうが小学生の頃に教わった1メートルはこれである。しかしその後の厳密な測定によりメートル原器は熱により伸縮し、また合金の腐食によっても長さが変動することがわかってきた。

そのため19世紀後半から主張されていた光の特定波長をメートルの基準とすべきだ、という議論が主流となり、1960年に開催された国際会議ではクリプトン-86が真空中で発する電磁スペクトルの波長をメートルの基準とするように改められた。しかしこの方法でもばらつきがでてしまうことが明らかになり、1983年の国際度量衡総会において光の速度を基準とすることになった。すなわち1メートルとは光が真空中を299,792,458分の1秒に進む距離、ということに定義された。

この新基準が採用されるためには正確な時間の測定が重要だが、昔は地球の自転を1日とし、その24分の1を1時間、更にその60分の1を1分、更にその60分の1を1秒と定義したが、地球の自転は一定ではないことがわかり、より正確な時間の定義が必要になった。その後の科学の進歩により、1967年以後はセシウム原子の放射する電磁波の周波数に基づく1億年に1秒の誤差という高精度のセシウム原子時計による1秒の定義が採用されている。

1メートルの長さは子供の背丈くらい、また3階建てのビルの高さは約10メートル、今話題の東京スカイツリーの高さは634メートル、富士山の高さは3,776メートル、地球の半径は6,378キロメートルである。宇宙規模で見ると、地球から最も近い天体である月の半径は1,737キロメートル、月までの距離は平均384,400キロメートル、太陽までの距離はおよそ1億5,000万キロメートルある。宇宙の他の天体までの距離をメートル単位とすると数字が大きくなりすぎるので、光が1秒間に進む距離を1光秒、1分間に進む距離を1光分、1年間に進む距離を1光年と呼ぶ。これによれば地球から月までの距離は1.28光秒、太陽までの距離は8.34光分となる。更に太陽から地球までの距離を1天文単位(AU)とも呼び、太陽から地球のすぐ外側を回る火星までの距離は1.52AU(12.68光分)、木星までの距離は5.20AU、更にその外側を回る土星までの距離は9.54AUとなる。すなわち太陽から土星までの距離は14億3,000万キロメートルになる。

宇宙飛行士が長期間滞在している国際宇宙ステーションは上空約400キロメートルのところを飛行しているが、太陽からは地球の表面を動き回っているように見えていることだろう。
#受験 #外国語 #学校 #教育 #科学

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エメラルド
エメラルドさんからコメント
投稿日 2012-09-26 03:37

アメリカはいつまでこの変な単位を使い続けるのでしょうね。これも文化として守るべき物なのでしょうか・・・。

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くまごろう
くまごろうさんからコメント
投稿日 2012-09-26 15:43

何ごとにも合理的なアメリカがいまだにフィートやポンドを愛用するのは、何となく愛嬌がありますね。ちなみに華氏の温度表示は0度が血が凍る温度、100度が体温という説もあり、きわめて人間的な尺度です。

30年位前、アメリカもメートル法に変換しようと連邦政府が号令をかけ、フリーウェイには速度制限がメートル法でも表示されたことがありますが、そんなことを覚えている人は今では少数派ですね。

この時メートル法変換の大きな問題となったのは、例えば目盛りがインチ基準で造られているため、アメリカにある旋盤のような工作機械をすべて入れ替えなければならない、といったようなことです。

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