雑誌ニュートンの10月号をようやく手に入れた。本来なら10月初めにはシアトルの紀伊国屋で入手出来るのだが少し出遅れたために購入出来ず、10月号を日本から取り寄せてもらうはめとなった。紀伊国屋の話では毎月3冊しか入荷していないとのこと、これから確実に入手するために1年間の定期購読を申し込んだ。それにしてもニュートンのような科学雑誌が当地では3冊しか読まれていないとは、日本の科学離れが叫ばれてから久しいが、元科学少年のくまごろうにとっては寂しい限りである。
ニュートン10月号を是非読みたいと思ったのは、特集が『太陽・地球コネクション、温暖化?それとも寒冷化?』で、この科学雑誌は地球温暖化の問題をどのように取扱うのかに関心があったからである。
この特集では2004年より2010年の間で太陽に黒点のなかった日が836日におよび太陽の活動が弱まっていることから説き起こし、黒点が強力な磁石であること、太陽からは可視光線以外にも紫外線やX線などの電磁波が放射されており、それらの強さが黒点の活動と深く関わっていること、黒点活動が低下した1645年から1715年のマウンダー極小期には地球に冷害が襲ったこと、黒点がほとんどない時期である極小期から次の極小期までの太陽活動の周期が約11年であること、1755年から始まる第1周期から数えて第23周期に当る1996年からの周期は13年と異常に長かったことなどを多くのデータに基づいて解説している。マウンダー極小期の直前には2周期に渡りこの周期が13年だったこととあわせて考えるとやや不吉である。
太陽活動の変動による可視光線の変化は約0.1%であり、地球表面温度への影響は0.1℃程度でほとんど影響はないが、近紫外線は1-10%変化し、地球表面から50kmの高空の気温が1-2℃変動することがわかっている。しかしこの変動が地表に及ぼす影響は詳しくはわかっていない。
太陽活動が活発な時は太陽の強力な磁力が超新星爆発によって生じた陽子や電子などの粒子である銀河宇宙線の太陽系への侵入を防いでいるが、太陽活動極小期には太陽の発する磁力が弱くなり、地球に銀河宇宙線が侵入しやすくなるという。銀河宇宙線が多いと大気中の分子や原子をイオン化し、それらが水蒸気を集めて雲が発生しやすくなる、という説がある。この説によれば宇宙線が多いと雲の量が増えて太陽光がさえぎられ、地表温度が低下することになる。
2011年7月6日付くまごろうのひとりごとでは世の中が地球温暖化で騒いでいる一方、科学者による太陽活動の研究結果として地球寒冷化の可能性を述べたが、ニュートンではNASAや日本の太陽観測衛星による太陽の異変観測の重要性を説き、温暖化するのかあるいは寒冷化するのか結論付けてはいない。
20世紀に入ってからの人類による爆発的な化石燃料の使用は大量の二酸化炭素を発生させ、それが地球環境に悪影響を与えているかもしれない、という思いは大切であり、将来の化石燃料の消費を削減すべきだという考え方は正しいだろう。しかし現在の地球温暖化議論については、大気中の温暖化ガスとして水蒸気がその97%を占めているのであり、大気中に400ppmしか存在しない二酸化炭素の影響がどの程度であるか科学的にはまだはっきりしていない上、太陽活動や近赤外線による高空の温度変化の地表への影響や銀河宇宙線の影響など科学的データに基づく検討がまだまだ必要である。
科学的な知見に基づかない政治的なかけひきで地球温暖化を議論し、日本は2020年までに1990年比で二酸化炭素を25%削減する、と鳩山前総理が国連で宣言したのはあまりにも非科学的だと思う。
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