先週土曜日に名古屋市東文化小劇場で、楽しみにしていたラーマーヤナの「クンバカルナの戦死」がワヤン・クリッ・バテルで上演された。普通バリのワヤン・クリッは、グンデルという鍵盤楽器4台だけで演奏されるが、バテルはこれに、太鼓、ゴング、チェンチェンなどの打楽器が加わる。今回はさらに、途中で眠っているクンバカルナを大きい音で起こすために、大きい太鼓とシンバルを使ったブレガンジュールも演奏し、そのときワークショップに参加したお客さんも鳴り物で演奏した。演奏は前評判通りうまかった。そして、梅田ダランもノリノリで、終演予定の20時をかなり過ぎてしまった。
しかし、私はなぜか楽しむことが出来なかった。梅田さんから出るギャグもあまり面白いと感じることができなく、なんか重い気分だけが残った。終わった後、梅田さんの補佐役だった友人に「どうでした。」と聞かれ、一瞬答えにつまり、慌てて「面白かったですよ。」と答えたが、その後に続ける言葉がうまく出てこなく、一言二言何かを言ったあと黙ってしまった。ごまかすことが下手で、すぐ表に出てしまう。だめだなぁ。
そして、この重い気分はなんだろうと考えているうちにブログへの報告も3日経ってしまった。で、やっと気がついた。おそらく演目が戦争の内容だったからである。この「クンバカルナの戦死」は魔王ラワナの軍団とラーマ王子側の猿軍団との戦いで、一回目の戦いの後からストーリーは始まるのである。そして、最後は、戦争の不条理を感じながら死んでいくクンバカルナの戦闘シーンが長く続く。この最後のクンバカルナが手足をもぎ取られながらも前進していくシーン(梅田さんが、いけいけノリノリの場面)の最中に、私の右斜め後ろに小学生の女の子が突然現れて、スクリーンに向かって「もういやだ。帰りたい!」と叫んだのである。慌てて母親らしき人が追いかけてきて、後ろから彼女の口を手でふさぎながら連れ去っていった。感受性の強い子だったのか、戦闘シーンの残酷さ、あるいは、クンバカルナが受けた理不尽な仕打ちに嫌悪感を抱いたのかもしれない。
しかし、まだ、気分は重い。いやいや、今はもしかしたら仕事のせいかな。不条理に感じることが多いからなぁ。まあ、とにかく梅田さんには悪いが、今回は楽しむことが出来なかった。でも、いいかえれば、影絵芝居ワヤン・クリッという芸能はバリ舞踊などとは異なり、こういう人間の生きていく上での教訓を人々に伝えていく奥深い芸能だということである。そして、今回の演奏を含めたパフォーマンスは、私の心に重く何か共感させる力を持つすばらしいものだったのかもしれない。まあ、なかなか自分の感情を的確に論理的な言葉で表現できないが、許していただきたい。
さあ、まだ、「バリ島ワヤン夢うつつ」を読んでいない皆さん!
ぜひ本を購入して、梅田さんの影絵芝居を見に行きましょう。そして、自分の人生を振り返って、いろいろ考えてみましょう。次回の上演は、来月3月21日(日)沖縄です。私はたぶん行きません。
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投稿日 2010-02-17 00:21
ワオ!と言っているユーザー
投稿日 2010-02-18 09:24
ワオ!と言っているユーザー