メキシコ湾における原油流出事故
6月
15日
連日テレビニュースでは油にまみれた水鳥や、それらの鳥を救うために家庭用中性洗剤で洗浄している人たちのことを報道しているが、われわれの眼にふれることのない魚や亀などの他の海洋動物や、彼らの食料源である海草への被害も甚大なのだろう。この事故による環境への悪影響ははかりしれず、影響が消失するには10年以上の歳月がかかるだろう。更にメキシコ湾はこれからの季節にはハリケーンが襲来する地域であり、関係者の悩みは増す一方だ。
メキシコ湾原油流出事故がオバマ大統領に与える政治的影響も少なくなく、今日は4回目の現地訪問を行い、明後日にはBP首脳をホワイトハウスに呼んで流出阻止対策や補償について協議し、また独立した委員会に補償のための拠出金の出資を求めるようだ。拠出金の額は民主党関係者によれば200億ドル(1.8兆円)とも言われている。今回の事故の遠因にBPマネジメントによる安全対策軽視があったとのことではあるが、その結果が膨大な補償とイメージダウンだ。BPの2009年のアニュアルリポートによれば利益は167.5億ドル(約1.5兆円)、ビッグビジネスであるBPとしても拠出金は大変な額である。
このような状況の中、一部の団体はBPボイコット運動を展開しているが、アメリカに10,000以上あるBPのガソリンスタンドはBP直営店ではなくほとんどが家族経営であり、短絡的なボイコットはこれらの経営者にとっては気の毒なことである。
アメリカは外国企業に起因する社会問題には厳しい国だ。規模はBPほどではないが今年初めのトヨタの場合も上院公聴会で豊田社長が厳しく追及されたことは記憶に新しい。これらの出来事は確かに被害を受けるアメリカ国民にとって重要な問題ではあるが、外国企業叩きは連邦議会議員の選挙民向けキャンペーンのにおいも否定出来ない。
それにしてもBPの事故についてイギリス政府がアメリカ政府との対話を始めたが、トヨタ問題の時、日本政府はアメリカ政府に何かしたという話を聞かない。ビジネスは自己責任であることは論を待たないが、大規模な問題について日本政府は自国企業を守る気概があるのだろうか。