992.1 Porsche 911 GT3 RS ― First Impression
やっと納車されたので、走ってきた。
まだSportモードだけ。シートやミラーを合わせながら、自分にとって最適なセッティングを探している段階なので、本当の評価はこれからだ。それでも、すでに言えることはいくつかある。
僕はこれまで997.2 GT3、Cayman GT4、718 SpyderなどのPorscheに乗ってきた。水平対向エンジンのPorscheで2ペダルは今回が初めて。
MTは、自分でクルマを操っている感覚ではやはり素晴らしい。ただ、このエンジンを本気で使おうとすれば9,000rpm近くまで回すことになる。その高回転域でシフトを失敗しない安心感と、圧倒的なシフトスピードを考えると、このクルマにはPDKがよく似合う。
パドルを引けば一瞬で次のギアにつながり、また高回転域へ入っていく。MTの楽しさとは違う。しかし、GT3 RSの性能を使うための道具としては、PDKの方が理にかなっているように感じた。
初めて「いい音だ」と思ったPorsche
これまで僕は、水平対向Porscheのエンジン音を「美しい」と感じたことはあまりない。メカニカルノイズが多く、ガチャガチャと賑やかだ。
ところが、このGT3 RSは違った。初めて、エグゾーストノートが素晴らしいと感じた。そうなると、これまで気になっていた水平対向エンジン特有のガチャガチャ感も気にならなくなる。
4リッターNA、525馬力、9,000rpm。
ただし、こいつを本気で加速させるには、高回転域を使ってつないでいかなければならない。その点では、僕のAMGのような大トルクのターボカーの方がずっと楽だ。アクセルを踏めば、何事もなかったように急加速する。
GT3 RSはそうではない。公道で多用する中回転域からの中間加速なら、軽いボディを生かして、「まあ、速いかな」という程度。僕はターボカーに慣れているので、少なくともそう感じる。
しかし、このクルマの速さはそこではなかった。
なぜGT3 RSだったのか
スーパーチャージャーではあったが、Lotus Emiraで感じたNA的な加速感が印象に残っていた。
そしてCircuit de Spa-Francorchamps遠征の途中で立ち寄ったNürburgring。さらに翌日訪れたManthey Racingで、大量の911 GT3 RSを見てしまった。あれに完全に毒された。
本来なら、こんなど派手なRSを選ぶはずのない僕が、なぜかどうしても992.1 GT3 RSに乗りたくなった。
992.2 GT3は4リッターNAで登場したものの、現在の噂では992.2 GT3 RSはターボ化される可能性もある。もちろん、まだ確定した話ではない。テストされているターボ車が、次期GT2 RS系の開発車である可能性だってある。
それでも、もしGT3 RSがターボ化されるなら、NAのGT3 RSは992.1が最後になるかもしれない。
そう思うと、広告関連での出会い、新し友人のつながり、そこでの経験、僕自身の関心の方向性など、すべての状況がかみ合うことを感じた。
おとなしくしたレーシングカー
僕が経験してきたFerrari(F8 Spider等)のような、仕立ての良いスーツに包まれたような高級感はない。まあ、Porscheにそれを求めるならTurboを選べということか。
乗り心地は、「セッティングがおとなしめのレーシングカー」という感じ。
レーシングカーはいろいろな雑音が聞こえるものだ。GT3 RSにも機械の音はいろいろあるが、本物のレーシングカーと比べれば騒音もおとなしめ。つまり、公道を普通に走れるだけの基礎的な快適性がちゃんとある。
しかしTrackモードに入れれば、室内からダンパーやデフ、トラクションコントロールなど、さまざまなセッティングができる。そのままサーキットへ持っていけそうだ。
McLaren 600LTも経験しているが、雰囲気はよく似ている。ただし、各部の作り込みはPorscheが上だと感じる。
車内の質感は、Lotus、McLaren以上、Ferrari以下。 内装や快適装備も必要十分。そして液晶画面の使いやすさやソフトウェアの安定性となると、この中ではPorscheがダントツだ。
コーナリングは、やばい。
そして、一番驚いたのがこれ。
コーナリングは、やばい。
トンネル内のコーナーが続く阪神高速左岸線。わずかに速度を上げるだけで強烈なダウンフォースの存在を感じる。これまで乗ったどのクルマよりシックリくる。
もちろん、このクルマは電子制御の塊でもある。しかし運転している側には、「電子デバイスに曲げてもらっている」というある意味不識が感覚がほとんどない。
あくまでタイヤ、サスペンション、空力、そしてクルマそのものの基本性能で曲がっているように感じる。錯覚なのかもしれない。でも、その錯覚をドライバーに与えられること自体がすごい。
走る、曲がる、止まる。
そのすべてに違和感も不安もない。いろいろな速いクルマを経験してきたが、限界で走り続けるサーキット走行と街乗りを、両方不安なくこなすクルマを作る事ができるメーカーはPorscheだけだ。
そして、その中の頂点がGT3 RSだと思う。
525馬力しかない。
今や1000馬力のクルマも珍しくない。GT3 RSの525馬力という数字だけを見れば、大したものではない。実際、アクセルを踏んだ瞬間の暴力的な加速なら、もっと速いクルマはいくらでもある。
しかし、このクルマはそこを競っていない。
馬力で速くするのではなく、クルマそのものを速くする。
今日初めて走らせて、その意味が少し分かった。
まだSportモードだけ。Trackモードも、DRSも、細かなセッティングもこれから。
だから、これはまだ最終評価ではない。
992.1 GT3 RSとの、最初のふれあいである。




















