2回以上の流産経験があり、
その後も流産を繰り返されたら、
流産物の染色体検査が保険でもできますよ。
保険の場合、費用は約1万円です。
ただし、
保険で検査をできる施設は、
過去に流産物の染色体検査を自費で
20回以上されている医療施設であり、
保険診療を申請した施設に限定されています。
一般的に、
流産物の染色体検査が可能な施設は、
不育症の原因究明に熱心な施設の可能性が高い
と考えられます。
この検査をすれば、
流産した原因が
染色体異常という卵の異常(運命)によるものか、
染色体正常、つまり卵は正常で
子宮環境の異常によるものか、
はっきりするからです。
夫婦の染色体検査と比較して、
流産物の染色体検査は、
直接的な原因がわかるため、
非常に重要な検査ですよ。
詳しくは、当院ホームページの
「注目ブログ」の中の
「染色体検査」を見てください。
原因不明の不育症に対する画期的な治療法として、
約40年前に、
夫リンパ球免疫療法と、白血球輸血療法が
開発され、
約30年前に、
人免疫グロブリン療法が開発されました。
その後の多くの臨床研究において、
人の血液製剤による感染症(エイズ感染)等の
危険性と、
治療対象・治療方法の世界的多様性による
有効性の疑問により、
ほとんど治療法として使われなくなっていました。
今年の6月、
日本の山田秀人先生らのグループが
「人免疫グロブリン大量静注療法が
原因不明の不育症の治療法として有効である」
可能性を
信頼度の高い研究方法で報告しています。
(eClinicalMedicine.2022;50,101527)
難点は、5日間連続の点滴治療であり、
費用が約100万円と高額であることです。
2018年に放送された
「NHKスペシャル人体」の中の
“生命誕生”見えた!母と子 ミクロの会話
は、今でも鮮明に覚えています。
受精卵が子宮に着床して
どのように胎盤が作られていくのか?
最新情報をもとに、
映像でわかりやすく見せてくれました。
印象深い言葉が、
“赤ちゃんの木”と“恵みの窓”です。
子宮内の母児接点の小空間に、
母親の動脈の出口である
“恵みの窓”があり、
そこから出る栄養と酸素を受け取って、
“赤ちゃんの木”が育っている
という映像はすごく印象的でした。
胎児が発育するために、
妊娠初期の胎盤の中で
いろいろなメッセージ物質が
母児間でさかんに交流しています。
その交流には、
「ホルモン、免疫、こころ等の
バランスが鍵をにぎっている」
ということが、
再確認させられました。
ブログNo.573
「恵みの窓(らせん動脈)の不思議!」
も参照してみてください。
10月の秋晴れの日、
道端に咲く
「秋のキリン草」を見つけました。
キリンの首のように細長い花だから、
キリン草と言うらしいです。
黄色い花が泡立って見えますから、
別名、あわだちそう
と言うらしいです。
おもしろいです。
花言葉は、「安心」 。
自然に触れていると、
こころが幸せになりますね。
「妊娠成立、維持には
免疫の適度な活性化が必要」
であることは、
現在、明らかにされています。
また、免疫の予備刺激(プライミング)は、
免疫のプライミング効果として、
よくわかってきています。
ところで、
精液の中の精子以外の液体(精漿)には、
夫由来の可溶性抗原が存在しており、
自然の妊娠現象では、性交後、
子宮内膜ヘの精漿によるプライミングが起った
その約一週間後に、
卵管で受精した受精卵の子宮内膜への着床が
開始しています。
注目すべきことは、
「精漿による免疫的プライミングが、
その後に起こる着床現象に
有効性がある」
という可能性が近年、
マウスの実験で報告されていることです。
体外受精・胚移植では、
精漿によるプライミングはありませんので、
母体の免疫応答能が低下していれば、
着床に障害が起こる可能性が考えられます。
数えきれない体外受精・不成功
を経験されていた方が、
当院治療により
やっと妊娠されました。
それなのに
流産されてしまったのです。
流産胎児の染色体検査では
数の異常がありましたので、
運命的な流産でしたが、
大きく落胆されていました。
その数か月後、
体外でしか妊娠できないと思っていたのに、
びっくりです。
自然妊娠で授かることができたのです。
さらに、その子は順調に育って
妊娠初期を乗り切ることができました。
「きっと、流産した子が
命をつないでくれたんですね。」
と、思い起こされていたのが
すごく印象的でした。
ある意味、
本当にその通りかもしれません。
正常卵を子宮内へ受け入れない要因は
主に四つあります。
一つ目は年齢です。
卵巣と同じく子宮も加齢とともに老化します。
二つ目は気分です。
気分が悪いとすべての器官に悪影響します。
三つ目は免疫です。
免疫は卵の受け入れを助けますが、
バランスを崩すと不寛容になります。
妊娠の免疫には着床・妊娠を助ける免疫と、
攻撃する免疫があるのです。
四つ目はホルモンです。
ホルモンの状態が不良であれば、
卵を育てることができません。
四つの要因はすべて繋がっていますから、
四つの要因をより正確に評価して、
治療することが理想です。
私は不育症の臨床研究に
40年以上関わっていますが、
人の着床・妊娠初期の「治療」に関する研究は
倫理的な壁により、
ハイレベルな証拠は難しいのです。
当院の診療においては、
少しでも良い結果の確率を高めるため、
四つの要因を診て、
40年以上の治療経験も頼りに
手ごたえのある診療をしています。
発生5日目の胚盤胞を子宮腔へ
移植(着床開始)すると、
絨毛細胞(胎児側細胞)がアメーバのように、
子宮内膜の細胞間の結合組織を溶かして
奥へ侵入してきます。
侵入開始5日目ぐらいには、
子宮の血管を呼び込んで
原始的な胎盤循環を開始します。
(高感度妊娠検査ならば、hCG陽性になります。)
いつから妊娠したと言えるのでしょうか?
一般的には、
妊娠検査薬が陽性になれば妊娠ですが、
妊娠検査はhCGの有無の検査ですから、
感度が高ければ
予定の生理日前に妊娠になります。
着床開始時点で着床の窓のずれがあれば、
早々に発生を終了してしまいますが、
hCGが微量でも検出されたならば、
母児間の免疫が、
その後の発生過程に影響してきます。
体外受精の治療がうまくいっていないときは、
着床過程の「反復するごく初期流産」として
子宮の環境を専門的な検査と加療することが、
成功の近道と思いますよ。
免疫の働きは、異物を攻撃することです。
しかし、
胎児は半分異物ですが、
普通は攻撃されません。
その理由は、
ヒトの進化の過程で
胎児抗原(異物の標識)に対してだけは
局所的かつ特異的な
免疫の抑制機構が、
作られているからです。
現在判明しているその抑制機構とは、
胎盤の栄養芽細胞
(トロホブラスト)に特に多く発現する
特有なHLA―G抗原が(可溶性抗原もあり)
いろいろな免疫細胞の受容体に結合して、
NK細胞の細胞障害活性を阻害したり、
制御性T細胞を誘導したりして、
免疫寛容を誘導しているというものです。
しかし、いろいろな理由で
(たとえば、HLA-G抗原の発現が弱いとか、
免疫がHLA-G抗原に適切に反応できないとか)
免疫寛容が不十分なときには、
流産・着床不成功が連続する
可能性が高くなると考えられます。
免疫を全身的に抑制すれば治療
できるというものではありません。
3年目コロナ疲れと夏バテで、
元気がでません。
ちょっとした
秋の気配に気づいたとき、
一瞬ほっこりしてきます。
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