過去のブログのなかで、
不育症、着床障害と甲状腺ホルモン
の関わりの関する記事を
まとめてみました。
下記の #甲状腺 をクリックしてください。
甲状腺ホルモンは、
子宮内膜の脱落膜化を促進している
という報告が2020年にありました。
(Endocrinology 2020; 161: bqaa049)
子宮内膜がうまく脱落膜化することは、
着床、妊娠維持に最も大切なことなのです。
従来から、
子宮内膜の脱落膜化には、
卵巣から分泌される
黄体ホルモンが必須であることは
わかっていましたが、
甲状腺から分泌される
甲状腺ホルモンも重要な要素のようです。
脱落膜化が十分でないと、
子宮内膜内の免疫細胞(NK細胞等)や、
間質細胞に悪い変化を発生させ、
着床不全、流産が起こるようです。
受精卵は子宮内膜に接着すると、
胎盤になる細胞から、
hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)
というホルモンを産生します。
hCGは、卵巣を刺激して、
妊娠維持のために
黄体ホルモンの産生を促します。
同時に、
hCGは、甲状腺も刺激して、
甲状腺ホルモンの産生も
促しているのです。
実際、
正常妊娠において、
妊娠4~10週の期間、
hCGの影響により、
甲状腺ホルモン値(FT4)は
高くなっており、
TSHは低くなっています。
妊娠ごく初期に
TSHを検査して、
TSHが高いならば
(基準値の上半分以上)、
要注意です。
正常な妊娠を維持するためには、
特別な甲状腺機能の管理
が必要です。
ただ肝心な甲状腺検査の値が
世界的に、施設間で多少違うため、
問題でしたが、
今回4月より、日本でも標準化が
開始されました。
生殖医療下の妊娠13週までの
妊娠維持にとっては、
TSHが2.5μIU/mL以下か、
妊娠初期特有の基準範囲の下半分
であることが良いと、
米国甲状腺学会ガイドライン(2017年)
で示されています。
また、
妊娠ごく初期には、
甲状腺機能を20~30%上げる必要があります。
妊娠14週以後については、
TSHを3.0μIU/mL以下ぐらいに
コントロールすることが良い
のではないかと考えています。
2021年4月より、
施設間での甲状腺検査値の違いを
補正するため、
日本全国での調整が行われます。
日本人成人(20~60歳)の
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の
基準値は、
IFCC標準化対応用の試薬検査での
試験例数120検体により、
0. 61~4.23 mIU/L
に変更されました。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、
不育症、着床障害の
原因と治療に、
密接に関係していますので、
要注意です。
甲状腺薬により治療していても
流産を繰り返されている方が
よく来院されています。
そのような方は、
過去の甲状腺機能低下期間により、
潜在性高プロラクチン血症
になっていたり、
同種免疫異常
になっていたり、
ストレスに弱く、
抑うつ状態になっていたり
することが稀ではありません。
過去の甲状腺ホルモンの
低下期間により、
不育症・着床障害の
上記のような原因が
併発している可能性が高いのです。
甲状腺ホルモンは
脳も含めて、
すべての臓器の新陳代謝を
調節する働きを持っていますので、
そのホルモンの低下期間により、
関連する臓器の機能が
低下していたり
異常になっていたり
しやすいのです。
流産の原因のひとつに
甲状腺機能低下症があります。
その検査の多くの基準値は、
TSH値が0.5~5.0となっています。
しかし、流産予防のため、
TSH値が2.5以上のときは、
妊娠前から
甲状腺の薬を飲み、
TSH値を2.5未満にすることが
海外で推奨されています。
(米国内分泌学会ガイドライン2012年)
(米国甲状腺学会ガイドライン2017年)
妊娠したら、出来るだけ早めに
再検査して、
多くの場合、
甲状腺の薬の増量が必要です。
妊娠5~15週に
甲状腺ホルモンの需要が
約1.4倍に増大するからです。
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