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  • 地域医療の見え方  2015.Oct.28;1(41)

地域医療の見え方  2015.Oct.28;1(41)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-特集:スタチン系薬剤の減処方を模索する‐

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[イントロダクション]
高齢者におけるスタチン系薬剤の効果については限定的です。ランダム化比較試験8研究のメタ分析によれば、高齢者(平均73歳)に対するスタチンの一次予防に関する効果は心筋梗塞や脳卒中を減らす可能性があるものの、総死亡や心血管死亡に関しては明確なことは示されていません。

Savarese G.et.al. Benefits of statins in elderly subjects without established cardiovascular disease: a meta-analysis. J Am Coll Cardiol. 2013 Dec 3;62(22):2090-9. PMID: 23954343
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23954343

主な結果を以下にまとめます。
高齢者におけるスタチンの効果
アウトカム 相対危険[95%信頼区間]
心筋梗塞 0.606 [0.434~0.847]
脳卒中 0.762 [0.626~0.926]
総死亡 0.941 [0.856〜1.035]
心血管死亡 0.907 [0.686~1.199]



観察研究では、なんと冠動脈疾患すらも減らしていないという結果になっています。

Alpérovitch A.et.al. Primary prevention with lipid lowering drugs and long term risk of vascular events in older people: population based cohort study. BMJ. 2015 May 19;350:h2335. PMID: 25989805
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25989805

この研究はフランスの3つの都市に在住している66歳以上の心血管疾患の既往のない高齢者7484人(平均79.3歳、女性63%)を対象にしたコホート研究です。高齢者におけるスタチンやフィブラートなどの脂質低下療法と血管イベントとの関連(一次予防効果)を検討しています。主な結果を以下にまとめます。

調整ハザード比[95%CI]
アウトカム スタチンorフィブラート スタチン フィブラート
冠動脈疾患+脳卒中 0.91[0.76~1.09] 0.88[0.69~1.13] 0.95[0.75~1.20]
脳卒中 0.66[0.49~0.90] 0.68[0.45~1.01] 0.66[0.44~0.98]
冠動脈疾患 1.12[0.90~1.40] 1.13[0.84~1.52] 1.12[0.84~1.49]


高齢者の平均余命を考慮すれば、スタチン系薬剤における心血管イベント抑制効果にどの程度のベネフィットがあるかは熟慮せねばならないでしょう。真のアウトカムに対する高齢者日本人のスタチンの有用性を検討したエビデンスはありません。

[スタチンの延命効果は思いのほか小さい??]
やや衝撃的な研究が出ています。その解析手法については議論の余地があるかもしれませんので、この論文の結果については不明な部分も多いのですが、あまりにもインパクトが高いのでご紹介しましよう。

Kristensen ML.et.al. The effect of statins on average survival in randomised trials, an analysis of end point postponement. BMJ Open. 2015 Sep 24;5(9):e007118. PMID: 26408281
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26408281

この論文によれは、スタチンの一次予防、二次予防に関する延命効果は中央値でそれぞれ、3.2日、4.1日となっています。ちょっと信じがたい…。

スタチンの延命効果
臨床試験名 スタチン 延命日数
ALLHAT-LL Pravastatin −4.96
ASCOT-LLA Atorvastatin 1.99
CARDS Atorvastatin 18.66
JUPITER Rosuvastatin 7.26
MEGA Pravastatin 4.42
WOSCOPS Pravastatin 9.33
4S Simvastatin 27.18
GISSI-HF Rosuvastatin −9.51
GISSI-P Pravastatin 1.76
LIPID Pravastatin 22.05
CORONA Rosuvastatin 4.09


いずれの研究でも1か月の延命すら示唆していないというかなり衝撃の結果になっていますが、その解析手法はフォトショップを用いた生存曲線の分析のようで、結果の妥当性はいまいちよくわかりません。

[スタチンはどのタイミングなら安全に中止できるのか]
余命が1か月~1年と予測される患者に対する、スタチンの投与中止に関するランダム化比較試験が報告されています。

Kutner JS.et.al. Safety and benefit of discontinuing statin therapy in the setting of advanced, life-limiting illness: a randomized clinical trial. JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):691-700. PMID: 25798575
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25798575

この研究は、スタチンを一次予防もしくは二次予防に3か月以上使用している患者を対象にたもので、継続投与、薬剤中止を比較して60日以内の死亡やQOLを検討しています。対象となったのは平均74.1歳の381人で48.8%ががん患者でした。

60日以内の死亡はスタチン中止群で23.8%、スタチン継続群で20.3%となっており、その差の90%信頼区間は-3.5%~10.5%でした。この研究では非劣性マージンが5%と設定されており、継続投与群に比べて、薬剤中止群の非劣性が示されたわけではありません。しかしながら統計的な有意差は認めず、QOLに関してはスタチン中止群で有意に高いことが示されています。高齢者において余命が1年に満たないと推測される症例ではスタチンの中止を考慮しても良いかもしれません。

[スタチンの減処方を模索する]
スタチン系薬剤の高齢者におけるベネフィットはあまり明確ではありません。特に日本人では大きなベネフィットが得られる可能性は少ないでしょう。START (screening tool to alert doctors to the right treatment)に該当しない限りは、高齢者のスタチンは中止を考慮する価値はあるかと思います。ちなみにSTART (screening tool to alert doctors to the right treatment)では「絶食時の血清コレステロール値>193mg/dl または冠動脈疾患リスクのある糖尿病患者へのスタチン」の使用が推奨されています。
Barry PJ.et.al. START (screening tool to alert doctors to the right treatment)--an evidence-based screening tool to detect prescribing omissions in elderly patients. Age Ageing. 2007 Nov;36(6):632-8. PMID: 17881418
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17881418

このクライテリアに該当していたとしても余命が1年未満と推定される高齢者では、スタチン継続の臨床的意義はあまり大きくない印象です。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■ガイドライン推奨薬剤の実効性■
Tinetti ME.et.al. Association between guideline recommended drugs and death in older adults with multiple chronic conditions: population based cohort study. BMJ. 2015 Oct 2;351:h4984. PMID: 26432468
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26432468
背景と研究デザイン:複数の慢性疾患を有する高齢者において、ガイドラインで推奨されている薬物治療がその生命予後に与える影響を検討した人口ベースコホート研究

P:メディケアデータより、心房細動、冠動脈疾患、慢性腎臓病、うつ病、糖尿病、心不全、高脂血症、高血圧症、血栓塞栓症のうち2つ以上の疾患を有する65歳以上のアメリカ人8578人(平均77.4歳)
E:β遮断薬、Ca拮抗薬、クロピドグレル、メトホルミン、ARB、SSRI、SNRI、スタチン;チアジド、ワルファリンを含む薬剤をガイドラインの推奨に基づき使用
C:薬剤使用なし
O:当該疾患による死亡

追跡期間中央値:24か月
交絡調整:年齢、性別、人種、民族、収入、入院日数、生活環境、BMI、喫煙状況、聴力・視力障害、治験薬以外の薬剤、 補助器具の使用、尿失禁、加入保険、認知障害、身体機能レベル、慢性疾患症状

主な結果は以下の通り(調整ハザード比[95%信頼区間]
・β遮断薬
心房細動:0.59[0.48~0.72]
冠動脈疾患:0.70[0.59~0.83]
心不全0.65[0.57~0.81]
・スタチン
心房細動:0.75[0.62~0.90]
冠動脈疾患:0.75[0.62~0.92]
心不全0.68[0.58~0.80]

▶詳細は以下を参照
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4591503/figure/fig1/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4591503/figure/fig2/

■貧乏ゆすりは体にわるいのか■
Hagger-Johnson G.et.al. Sitting Time, Fidgeting, and All-Cause Mortality in the UK Women's Cohort Study. Am J Prev Med. 2015 Sep 4. pii: S0749-3797(15)00345-1. PMID: 26416340
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26416340
背景と研究デザイン:座位行動を含む身体を動かさない状況は死亡リスクとの関連が示唆されている。貧乏ゆすりをすることでその関連性が否定できるか検討したコホート研究

P:United Kingdom (UK) Women's Cohort Studyより37~78歳の12,778 人の女性(平均55.6歳)
E:日中の座位行動(5〜6時間、7~17時間
C:日中の座位行動(0~4時間)
O:死亡

調整した交絡因子:年齢、慢性疾患、身体活動レベル、座位時間、学歴、職業社会階級、退職の状態、喫煙、アルコール、果物/野菜の消費量、睡眠時間

表タイトル
貧乏ゆすりすくない 貧乏ゆすり中等度 貧乏ゆすり多い
5~6時間座位 1.17(0.95~1.45) 1.10(0.72,〜1.68) 0.63(0.43~0.91)
7時間以上座位 1.30(1.02~1.66) 0.75(0.44~1.29) 0.76(0.50~1.15)


■キノロンと解離性大動脈瘤リスク■
Lee CC.et.al. Risk of Aortic Dissection and Aortic Aneurysm in Patients Taking Oral Fluoroquinolone. JAMA Intern Med. 2015 Oct 5:1-9. PMID: 26436523
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26436523
背景と研究デザイン:キノロンの解離性大動脈瘤発症リスクを検討した症例対照研究

P:Taiwan's National Health Insurance Research Databaseより
(症例)解離性大動脈瘤を発症した1477人
(対照)147 700人
E:キノロンの使用あり(現在使用:60日以内 過去使用:61~365日前、1年以上前使用)
C:キノロンの使用なし
O:解離性大動脈瘤発症
交絡調整:傾向スコア

キノロンの現在使用で解離性大動脈瘤リスク増加
・率比2.43[95% CI, 1.83-3.22]
過去使用でもわずかにリスク増加
・率比1.48[95% CI, 1.18-1.86]

■喘息治療におけるマクロライド■
Kew KM.et.al. Macrolides for chronic asthma. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 15;9:CD002997. PMID: 26371536
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26371536/
背景と研究デザイン:慢性喘息管理におけるマクロライドの有用性を検討したコクランレビュー

P:23のランダム化比較試験に参加した喘息患者1513人
E:マクロライドの使用
C:プラセボの使用
O:入院を要する喘息増悪、QOL、ステロイド使用など

入院を要する喘息増悪はオッズ比0.98[0.13~7.23](2研究143人 I(2) = 0%)で、主要な臨床アウトカムについては不明。

■砂糖入り飲料と高血圧■
Jayalath VH.et.al. Sugar-sweetened beverage consumption and incident hypertension: a systematic review and meta-analysis of prospective cohorts. Am J Clin Nutr. 2015 Oct;102(4):914-21. PMID: 26269365
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26269365
背景と研究デザイン:砂糖入り飲料と高血圧リスクを検討した前向きコホート研究のメタ分析

P:6つの前向きコホート研究に参加した240,508人
E:砂糖入り飲料摂取多い(最高四分位)
C:砂糖入り飲料摂取少ない(最低四分位)
O:高血圧

率比1.12[95%信頼区間:1.06~1.17]

■屋外遊びと近視■
He M.et.al. Effect of Time Spent Outdoors at School on the Development of Myopia Among Children in China: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015 Sep 15;314(11):1142-8PMID: 26372583
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26372583
背景と研究デザイン:屋外での遊びと近視の関連を検討したクラスターランダム化比較試験

P:中国における12の小学校
E:40分の屋外活動を追加する介入群6校
C:非介入群6校
O:近視の3年累積発生率

近視発症は、介入群30.4%、非介入群39.5%
差-9.1%[95%信頼区間-14.1% 〜 -4.1%]

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■シプロフロキサシンによる血小板減少症■
Erdemli Ö.et.al. Ciprofloxacin-induced severe thrombocytopenia. Kaohsiung J Med Sci. 2015 Feb;31(2):110-1. PMID: 25645991
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25645991

5年にわたる慢性的な下痢のために緊急入院した61歳の女性。解熱治療に応答せずシプロフロキサシン500㎎1日2回投与。患者はパーキンソン病にてレボドパおよびバクロフェンを定期的に服用していた。その後下痢、吐き気、嘔吐、低血圧、頻脈、頻呼吸、および発熱が悪化。シプロフロキサシンによる血小板減少症が疑われた。

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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スタチン系薬剤も漫然と投与される機会が多い薬剤ではないかと考えています。ベネフィットが確立された薬剤のようにも思いますが、日本人でのエビデンスはMEGAstudy位なものでしょう。高齢者に対する明確な有効性は不明な部分も多いのです。どのタイミングで減処方すべきかについては、まだ今後の研究をフォローしていかねばなりませんが、高齢者におけるスタチンの有用性は思いのほか小さいかもしれませんね。
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

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