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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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迷う夢

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昨夜は青年が旅に出る話を書き終えたのちに眠りにつく。すると、その話に類似した夢を見ていた。目が覚めてそのまま夢の内容を書き留めておこう。

なんだか電車の中で忙しい。もう降りないといけないようだが、鍵付きのロッカーに荷物が入っていて、鍵を解除しそれを取り出すのに慌てている。ああ、もう時間がない。手に取ったビニール袋を持ち出し電車から飛び降りた。なんとか目的の駅に降りることができた。改札に向かいスイカを出そうとした時に気づいた。貴重品を入れているバックを忘れてしまった。やってしまった。何で一番大事な荷物を持ってこなかっただろう。財布とiPadが入っているというのに。仕方ないので駅員に聴いてみた。「さっき乗っていた電車にスイカを忘れてしまったのですが、どうすればよいですか?」と。駅員は「では、これを持って線路を歩いてください。それで大丈夫です」そう言って縦1メートル、横50センチくらいの白い板を渡した。駅員に促され線路に降りる。仕方なく私は線路を歩き出した。

薄っすらと雪が積もっていた。私の他にも歩いている者がいた。子ども二人と父親。雪を握り投げ飛ばしている子どもの。いったい、この家族は何をしているのだろう。やはり電車に大事な忘れ物をしたのだろうか。しかし、私のように白い板は持っていない。それに慣れた感じで線路の上を歩いている。
ふと、白い板に何が書いているのかと思い見てみた。赤で文字が書いてあるのだが、私の目がおかしいのか何が書いてあるのかわからない。たぶん、この人が忘れ物をしています。荷物を渡してください。と、荷物を持ってきてくれた方がわかりやすいように書いてあるのだろう。

しばらく歩いているとあの家族たちもいなくなっていた。そして、線路もなくなり昼間なのに少し暗い坂道を下っていた。これでは、荷物を渡されることはないだろう。しかもすでに白い板も持っていない。私はこれからどうすればいいのだろう。……とりあえずさっきの駅へ戻ろう。ちょうど中年男性が二人、向こうから歩いてきた。「あの、駅はどっちですかね?」と、訪ねてみた。すると、「駅? この辺にはない。ずっとあっちだな。二日くらい歩かないと」そう言われた。えっ、そんなに遠くまで私は歩いてきたのだろうか。おかしい、これはおかしい。夢ではないか………

そんなところで目が覚めた。ああ、なんだか疲れてしまった。「迷」と題目を付けたくなる夢だ。この夢を分析するとどういうことが見えてくるのだろう。ただ荷物がないという不安の夢だろうか。
その前にトイレに行こう。迷わずに行けるはずだ。

#詩 #雑記

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旅立ち

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「行ってきます」

僕は部屋で父の弾くギターの音色に紛れて言った。愛はきらめきの中に、っていう曲だったろうか、なんとなくせつない親心のようなものを感じながら玄関の向こう側へ。言葉少ない父はいつも悲しげな背中を見せていた。それは母が亡くなったからだろう。そして、僕が出て行ってしまった空間でこれから何の曲が流れるのだろう。聴きたくなった時には父に電話をするに違いない。「最近はどんな曲を弾いているんだい」と。

小さな世界から飛び出したかった。父に遠慮している自分も好きでなかった。

だから僕は旅に出ることにしたんだ。そのことを父に告げる。父は「ああ」と言った。らしい言葉に「そう」と返事を。いつもながら呆気ない会話。十八年も一緒に暮らしてきたのにどこまでも限りなく他人に近い親子だ。それでも僕は父に感謝をしている。叱らない、束縛しない、傷つけない。楽しい家族ではなかったが、愛は感じとっていた。ものごころのついた頃から食事をきちんと作ってくれた。凝った料理ではないが、そこには息子を思う気持ちがあった。今までありがとう。

列車の窓から田園の風景が流れる。ふと、あらためて僕は何のために旅に出たのだろうと考えた。二人という最小限の家族から離れ、ひとりになることの意味があるのだろうか。これから知らぬ土地で世界を感じてみようと思っても、たぶん自分の世界を歩いてしまうことになってしまうのではないか。でも、僕がどんな人間なのかもきっとまだまだ解ってはいないんだ。やはり、旅が必要で父からまずは離れないと何も始まらない。

最初の街にやって来た。空はいつもより広く、僕がどんどん小さく思えてくる。そこは初めて踏み込んだ知らない世界。ここから歩いて行こう。

「すみません、住み込みでアルバイトのできるところを知りませんか」

#詩

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月・赤とんぼ/三木露風

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雪ふりぬ絶え間もなく、
雪ふりぬいともわびしら。

夜の「時」はかくて近づき
そこはかと木により枝より
悲しげに粉雪に落つる。

凍えたる小鳥の翼を見よ
あふぎ見よ、大木の灰色の欺きを。

いつしか淋しげに月に輝やき
地平より色褪めてうかがひのぼる。
ちからなきためいき……
一物もなき冬の夜に
あはれにも、うかがひ寄る月のこころ。





赤とんぼ


夕焼け、小焼の、
赤とんぼ、
負われて見たのは、
いつの日か。

山の畑の、
桑の實を、
小籠に摘んだは、
まぼろしか。

十五で姐やは、
嫁に行き、
お里のたよりも、
絶えはてた。

夕焼け、小焼の、
赤とんぼ、
とまっているよ、
竿の先。


✳︎實(実・み)


#詩

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超人以前の人以前の

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惜しみなく捧げる矢印のように生きる人
いや、もう人生と言えない世界で
奉仕の心は超人化し人として浮いている
いや、しっかりと歩いているのだ

僕はまだ歩いてもいない
ましてや生かされているとも言えない
それでも生きていたい太陽に向かうような原動力
死ぬ前に一歩でもいいから踏み込まなくては
追われているものの問いすら見ることが出来ない

複雑に絡まる自我の蜘蛛の糸
ひとつひとつ解く思考で始めなければ

#詩

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雑念なき文藝

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どこかで作品が読まれ
それで賞が頂けたのなら拒まない

だが自分から賞を貰うことも念頭にあって
作品を送りつけるのは
何だか違うような気がする
そこまで自分の表現をアピールすることに
純粋な意志を汚してしまう

そういったものは
後からついて来るものであってほしい
特について来なくても良いものであってほしい

作品との出会いは自然で
素晴らしい景色と遭遇するように
偶然の微笑ましい純粋が入っていれば
なお素敵なのだから

誰がどんな詩を書いてなんて
消えてしまっても良い
その作品の世界に入り込むだけだ

もし名前を出して表現するとするならば
自分自身が題目になり
生き様が文藝に反映することに終始
捧げられるかどうかだ

自分の作品を読んでほしい気持ちは
生きがいのひとつになるだろう
だが作品に肩書きを添わそうとすれば
一歩先の表現に霞すみながら進み
前に歩いているつもりが
行き先も解らず後退しているようなもの

作品が素晴らしいかは
雑念なくそのひとのものであってほしい

#詩

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朝の収穫

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若き頃、詩作の収穫は夜中だった
最近はどちらかと言うと朝
寝起きはボッとしていたいはずなのに
年齢とともに朝型になるのだろう

準備体操はすでに夢の中から始まる
起きているような寝ているような
柔らかい金縛り状態で詩の内容を模索
たぶん眠りが浅くなっているからだ

その柔和な感じがとても作品に反映され
しっかりと考えていないだろうが
自分という中核はある訳なのだから
良い方に傾いたのなら収穫ありだ

なぜ朝の詩作が面白いかと言うと
社会での自分より、自分の中の世界で
作品が吟味され反映されているからだ

ひとはルールに従い順応して生きる
しかし、朝はその地盤から浮いたまま
現実に感じることから少し離れ
感じたいことから自分を発進できる

そして、朝の新鮮さに吐き出す言葉は
汚れていないと言うのが一番の魅力
朝露に触れて感じるような
清々しさがとても良かったりする

#詩

ワオ!と言っているユーザー

キ・ラ・ク

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滑り出したら止まらない月曜日
ほら、僕たちはそれでいいのさ
気にすることはない
摩擦のことなんか考えていられない
ツルツル人生のクレイジー加減で

イエッ、イエッ、イエッー
ヤヤヤッ、ヤヤヤッ、ヤヤヤッー


人さし指を天に向けて叫ぶさ
空を突き抜けて真空の言葉は行くさ
月を突き抜け太陽を突き抜け
銀河系も突き抜け
ブラックホールを飲み込むパラダイス

ヘヘヘッ、ヘヘッ、ヘッ
オーイエッ、イエッー、ドスコイッ


軽くて軽くて僕たちは浮いちゃう
なあ、そうだろ、どこまでも
正解はハッピーの中の
ケラケラしたムーブチャチャだろ
そうそう、それっ、ピンポーン

エブリィ、チャカッ、チャカッ
エブリィ、チャカッ、チャカッ
オチャラカ、ホイ、ホイ、ホーイッ


となっ

#詩

ワオ!と言っているユーザー

アゴに

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「おヒゲが」

昼食はいつもサラダ
食べ過ぎると眠くなるし
ダイエットも兼ねて
ちょっぴり味気ない感じで

さあ
あと半日をがんばろう
そう思った時に
そのひとは優しく言った



「キャベツが」

なんて言われたら
笑えるけど
なんか恥ずかしくなるだろう

相手を思いやる一言
ちょっとした言葉遣いで
こちらの気分はずいぶんと変わる



そして
恥ずかしいことはなく

「ありがとう」

その言葉を言えた幸せを感じて

「がんばろっ」


#詩

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温もりから

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再び手が重なり合えば
忘れていなかったその温もり


容易く僕を捧げるような日々
そのフィールドで疲れ果てることは
あなたにとっても
僕にとっても良いことではなかった

犠牲にする毎日は
何も答えを見出すことがなく
回避することで潰れぬよう
旅に出て何かに近づきたかった


僕はどこまでも歩いた
あなたから遠ざかると遠ざかるほど
近づいてゆく心の不思議
自分が見えてくる不思議
あなたが見えてくる不思議


あなたらしいあなたの手と僕らしい僕の手
幸せになろうとするところから進もう
それを忘れないように

旅は教えてくれた
手の温もりの優しさとほんとうの強さを

この先にも苦悩はやってくるだろうけど
日々の旅に深呼吸をしながら
自分を見失わないように
あなたを見失わないように
小さな幸せにも微笑むことができるように

#詩

ワオ!と言っているユーザー

雨の誘い

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雨粒が葉を揺らしても
とても静かです

その景色に
僕は耳を傾けています

過去の想い出
どこかの安らぎに手をのばし

僕は淑やかに
なっているのかもしれません

少し斜めの銀色にのせられ
そんなことを呟いて
どこまでも落ち着いてゆきます

幼き頃からの
心に揺れるオルゴールを感じて
誰もいないここで
優しいひとを遠くに見れば
なお景色が揺れます

僕の好きな世界
頬に静かに雨が添っても
少しも哀しくはありません

雨に包まれて……

#詩

ワオ!と言っているユーザー

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