送った手紙はニ年前 今でも返事を待っている 彼にとって私は友人でなくなったのか 私にとっても彼は友人ではなくなったのか 彼は精神の病を持ち 三十年ほど病院で暮らしている 私とは半年に一度ほど電話で話をしていた そして、最後に話したのは 共通の友人が亡くなったことを私から伝えた時 「ハルオが癌で亡くなったよ」 「そう、亡くなったか。 それでさ、おれ最近、太っちゃって……」 言葉をなくす 友人の死をかるくながす彼 病気だから仕方ないことなのか しかし、私の違和感は膨らんでゆく そして彼は言った 「手紙をくれよ、内容はなんでもいいから、 送ってきて欲しい」 もう亡くなった友人のことなど頭の隅にもない 己に自分しかない様子だった 彼は病気 自分から手紙を書くことを拒む けれど、病人である前に友人であって欲しい けっきょく、私は手紙を書いた この間も電話で話したように 手紙が欲しいのなら まず、自分から送って欲しかった 震える手で書いたものでも 俺は笑ったりはしない だから、今度は君の手紙を待っている そのようなことを書き彼に送った それからというもの彼からは手紙も電話もこない 私はこのことで自分を曲げようなどと思わない あえてこちらから連絡はしない 十年経とうが、二十年経とうが、三十年経とうが もう彼とは歩み寄ることがないかもしれない そこには何の悔いなどはない 私も頚椎を痛めた身 手が痺れているが 手紙を書くのに努力は惜しまない 彼に書けないはずがない 受話器を持ちボタンが押せるのだから 病気だからといってながせることではない 書けない理由より礼儀が欲しい 待つしかない ただ待つしかない 厳しいことを言っているかも知れないが 私は手紙を待っている 彼の思いを綴った手紙を待っている
なに成し遂げるわけでもない日々の徒然に、 燃え尽きた枯葉が僕を笑っています 曇りない充実を得るための夢は想像できず、 景色を眺めながらこころ泳がせて詩を認める 生きるための紐付け 充分に思えるのは時の力 押し寄せて重なってゆく、 過去の機微はとても恥ずかしいのですが、 それでも歌え歌えと今の自分を奮い立ててくれます 現実に想像は渦巻いて混沌とした世界 カタチにできる業の詩ということになります 向かうべき方向は知れず、 追うべき夢をもたない道ではありますが、 進んでゆける不思議に身を委ね 誰のために、 なんのために、 証のためにを捨てて、 時に身を寄せ集中を糧に歌い続けます
僕らの想像は どこか超えていない this time それでも進んでいる cheap ticket 聞こえない叫び 届かぬ心象は maybe maybe 手応えのない empty box 僕らはチューインガムを膨らまし 蹴飛ばす空き缶の roll over 露骨な若さを遠ざけ this time 知らないふりして poker face 流れる痛みの中では sentimental person 深く被る帽子 様子を伺う fashion 僕らは姑息を纏いながら 裸にもなれない false smile やり切れない思いを写す それでも進んでいる cheap ticket maybe maybe そうじゃなくて surely surely いつしか 僕らが裸になろうとも 信じ続ける natural smile 僕らは弱さの中で this time 羽ばたく夢を描き続ける future ・future(未来) ・this time(この時間) ・cheap ticket(割引切符) ・maybe(たぶん) ・empty box(空箱) ・roll over(転がる) ・poker face(無表情を装う顔) ・sentimental person (感情家) ・fashion(ファッション) ・false smile(偽りの笑顔) ・surely(きっと) ・natural smile(ほんとうの微笑み)
膨らんだり萎んだりするレゲエのリズム あんたの瞳が Ya-ya-yah あたいをひっぱる手がちょっと痛いけど 許してしまうのは Ya-ya-yah Oh, there's a butterfly! 緑が萎え風を感じる至福のウエーブ あたいの夢は No-no-non 今はあんたと時が流れて 感じてしまうのよ Ya-ya-yah Oh, there's a butterfly 浜辺で悠々となにを見ているの あたいたちの頭上から激写するつもり カシャ キスするフォトグラフ あたいも今 飛んでいるの 暮れてゆく歌声は震えるレゲエのせつなさ 広がるオレンジに No-no-non あんたへの思いはミサンガで飾りつけ サイケにその手首を One-two-love Oh, there's a butterfly! 輝くほど願いを込めるレインボーな夜 同じ色の星はなくて Blue-red-yellow あんたはあたいのそばにずっと あたいはあんたと La-la-la The present day! Ya-ya-yah Oh, there's a butterfly!
『俺は夢に勝てるのか』 今回のテーマは、これだぜ。小学生の頃から見ていた夢に出てくるあの怖いヤツ。もしかしたら、もっと前からの話かもしれない。ヤツはいつも俺を追いかけて、足首を掴もうとする。その後どこかに連れて行くのか、そのまま食べられてしまうのか、って夢。でもヤツに触られたことはない。その前に「ぎゃー」と叫び、自分の声で目が覚めてしまうからだ。朝になるとお母さんから「またずいぶんと汗かいたわね、今日は雨だから布団を干せないから困ったわ」なんていわれ、おねしょじゃないんだからいいじゃないか、そう思うことが度々あった。「とつぜん、なにを語りだすんだよ」って、君はバカバカしいこの詩だかなんだか分からない字の羅列を拒絶してしまうかもしれない。だけど俺は語らずにいられないから仕方ない。我慢して読んで欲しいくらいだけどさ。まあ、どうでもいいや。俺は、勝手に進んで行くよ。 そうそうテーマに戻ろう。『俺は夢に勝てるか』ってことなんだけど、もう分かっていると思うけど、その夢って希望とかの夢じゃなく寝ている時に見る夢のことだぜ。俺はどうやら夢の中で、恐怖による脅しを受けると変貌し、自分の穏やかな性格(?)がトゲトゲになって攻撃的になることが分かった。それっ、キレるって感じかな。でも、さすがに小学生の頃はそれを発動させることはなかったから苦しんだ、ってことはあったんだけど。 ちなみに俺は、学校をサボり気味の十七歳。この間も朝からダルダルだったから午後から学校に行ったんだけどさ、駅からとぼとぼ歩いて校舎にたどり着くと「おい、今日の授業はもう終わりだぜ。お前、やる気ねえなあ、相変わらず」なんて、校舎から出てきたクラスメイトにいわれたよ。なんと昼で授業は終わりでさ、仕方ないからそいつの下駄箱に「やる気満々!」って、マジックで落書きして帰ったよ。たくっ、よ。 おっと、脱線してしまったぜ。今回のテーマ『俺は夢に勝てるのか』の話に戻すよ。その結果は、さっきもいっちゃった感じがするけど昨日、夢に勝っちゃたんだなあ。十年以上もあの怖いヤツに苦しめらてきたけど、もういつ来てもいいぜ。カモンって、感じさ。 さあ、ここからが本番。もしかして君、寝ていないよね。「うおっー、起きろ!」って、叫んでみた。それで、昨日の夢の舞台は学校の教室、それも夜で電気がついていない。月明かりの薄暗い感じ。怖くなるような演出で迫ってきているみたいだけど、怖いって感じがちっともしない。授業を受けるためなのか、椅子に座っている生徒たちが五人。はいはい、こいつらが怖いヤツだ。今まで恐怖を与えながら追いかけてきたロクデナシだ。そして、俺は初めてヤツの後ろ姿を見た。ん〜なんだかウケる〜、今日は追いかけられるどころか俺がヤツらの背後にいる。そうそう俺は精神的に強くなったんだ。だてに十七年も生きてないぜ。もう支配されやしないし、この世界が夢だってことも薄々分かっているし、現実を取り巻く社会と夢が連動していることもすでに分かっていた。今までビビって負け続けていたけど、やってやるぜ。もう、俺はキレまくっているし、今までの仕打ちを百倍返ししてやる。まず、お前からだな、なんでもこいや。俺は窓側に座るヤツの顔を覗いた。えっ、えっ、なんだよ顔がねえじゃん。それに全身がすぐ消えちゃってさ、すでに透明? お前も、お前もか、怖くないねえ、闘わずにあらら呆気ない勝利。やってやった感がゼロだぜ。なんだろう、今までの苦悩を考えると空くなるようなこの感覚。ああ、終わったな〜、ちょっと寂しいくらいだぜ。正直にいうとそんな感じ。 結句、同じこと再三いうけど『俺は夢に勝った』、そういうこと。「はいはい、そりゃ良かったね」って君、今いったね。はいはい、良かったよ。今度は、君の夢に俺がすげえ特殊メイクで参上するから覚悟しておけよ! 世界地図を描くことになると思うぜ! ふっ、じゃあ、おやすみな!
詩ノ表現シ世界ヲ酷評スルナラバ ソノ言葉ノ深キトコロニ 真愛ヤ真実ガナケレバナラナイ 詩人ノ言葉ハ個ノ中ニ在リシ信念ノ生キ様 描イタ世界ハソノ者ノ自由タル具現 詩人其ノ物 ヨッテ浅ハカナ酷評ハ悲シキ景色 云ウモノ聞クモノ哀レナル景色 ダダシ詩人タル者 全身全霊デ描カントセネバ コレマタ虚シキ景色ナリ 其ノ空疎ニコソ酷評スベシ
ゆらゆら夢心地 温かな足もとから根が生える 「次は新宿、新宿、お出口は右側です」 聞こえているけど 聞こえないよ 俺はもう…… あれっ ほんとうに足の裏から もやしみたいな根が出てきたよ 靴を抜け 根はどんどんなり太くなり 恐ろしいほどに伸びてゆく 車両の床に突っ込み 枕木を巻き込み あらあら 俺の上半身は気球のように巨大化 車両を突き破り植物ゴジラって感じになっているぞ それに頭の上にパンタグラフがのっているし 根に覆われた車両はもう見えないぞ 俺の下半身はマングローブ化している この現実ってどうなんだい いや〜 それにしても景色が最高 ひとも車も家もビルもちっちぇえな〜 俺は違う意味でビックになったぞ でもさ〜 この腹まわりの大木的なぽっこりは嫌だなあ 痩せないと生活習慣病でとんでもないことになるぞ 気を付けなきゃ いやいや俺はもう植物ゴジラだから そんなこと気にしないでいいんだ ラーメン、カツ丼、寿司、ステーキ そうそうご飯を大盛りで食べてやれ カロリーからの解放 やっほ〜 そうだ そうだ 俺は植物ゴジラ 遠慮なんていらない生き方ができるし… 「おい、重てえんだよ、どけよ!」 んっ 誰か何か言った? 「ネクタイおやじが!」 ……あれれ、俺、もしかして寝ていたのか! 「すいません!」 お兄さんの肩に寄りかかっていたのか めちゃ恥ずかしい こんな時はまた寝たふり 寝たふり やってしまったようだ それにしてもここはどの辺だろう 俺は何をやっているんだ 変な夢も見ていたし 「上野 上野」 ありゃ 俺はどこまで来てしまったんだ まず降りて立ち食いラーメンでも食べるか まてよ 健康診断の結果でなんだかヤバイ数値が出ていたよな 我慢 我慢 このままもうひと眠りしよう 俺は疲れているんだ 山の手線を何周したっていいじゃないか とにかく俺は今 プチ堕落して癒されたいんだ 足の裏から根っこが生えてもいいじゃないか
聞こえないとこに 僕はのぼって行きました 嫌になって逃げたのではありません ちょっとお誘いがあったので だから安心してくださいね 聞こえない世界は とても素晴らしいところです 動いているものは何もありません 僕はお日さまの光に身体をつつまれ 胸の上で指をかさね 目も閉じながら感じています 今までいろいろありましたが すべてが素晴らしい思い出になって 静けさの中にはゆるされる世界があります 特別ですから 一生の終わりに一度だけ その先の世界ですか わかりません 行ったことがないので でも知ったところでなにも変わらない そう僕は思います やはり今のしあわせを感じるほうが 素敵じゃないですか 聞こえない世界にいる僕はそう思います それに聞こえる世界も素晴らしいところでしたよ