誰かがどこかの時代に どこかで書いたような詩かもしれない 共感できる感情を持つから 当然といえば当然なのだが 大して変わらなくてもよい 僕らの心が どこかの時代でどこかで 変わってゆくこと 変わらないこと それを楽しみながら 僕らを少しづつ変えてゆくのは 詩の力なのだろう
おっと、嘆く前に想い出してみてよ 子どもの頃に疑うことのない 楽観の瞳で物事を見ていたことを まずは挑戦していた 失敗は後からついてくる 成功だって後からついてくる 思っ切り走って 転んだり、爽快にゴールしたり あの輝くスタイルを忘れるって なんだか悲しくはないかい ねえ、そうだろう それに輝く大人にならなくちゃ 子どもに情熱をもつ大人を見せなくちゃ ヒーローにならなくちゃ そう、思い込み 意外とそれって大事じゃないかい 生まれ変わったら そんなことを想像している場合じゃないよ ちょっとばかり熱苦しいくらいの大人 それぐらいにならないと 一度の人生、面白くやらなくちゃ損 えっ、何に燃えたらいいかわからない? なんでもいいじゃないか ひとが少しでも幸せになるようなことなら 深く考えないで胸に手をあてれば ほら、わかっているでしょ自分の夢 知らんぷりはなしだぜ ほな、失礼
僕の◯△◇X どうか誰にも知られず Xだけを抜き取って いったいなぜXなんてモノを 僕たちに与えたのだろう 苦悩がないと らしくない人間になる? ちっともわからないなあ この世界のプログラミングを 間違ったんじゃないかなあ 僕は自分でXを消し始めたら 病人なんて言われてさ たくっ どうなっているんだよ この世界 きっとXに耐えるゲームなんだな このゲームは上手く操作できないよ 誰か攻略法を教えてくれないかい お願いだよ 僕はヤバすぎるんだよ マジで誰か それが無理なら スリープモードにしてくれないか でも電源はまだ消さないでほしい……
早期退職のお誘い これは職員の対象者に通知され 私のところにも来た 終身雇用、年功序列型賃金 定年前に辞めてしまえば 退職金が優遇されても 生涯収入は減るに決まっている 年金もどれだけ貰えるか分からない将来 お得だよ、そんな通知には騙されない とはいえ、早期退職は希望制なので 希望しなければ良いわけで リストラされるという事ではない しかし、早期退職の対象になっている 自分ひとりいなくても この職場は変わらず機能する事は 重々分かってはいるが 社会の老朽したネジになった気分だ 日本の平均年齢は八十歳を超えているし 少子化による人口の減少で国力も低下 やはり中年期、高齢期層の労力は必要不可欠なのだ それでも五十歳で早期退職のお誘いが来る 賃金での支出を抑えて運営を優先 大学生の子供もいるっていうのに 辞めれる訳がないだろ 職場で培ったスキルや努力も評価されず もちろん通知はシュレッターで粉々さ
それが透明の魔物とわかっていても 自ら微笑みながら吸い込んでゆく 何かに縋らなくては 起き上がることも出来やしない 萎えた白を吐き出す その縋りは躊躇なく魔物に消され 再び吸い込むことで委ね続ける 憐れ忘れるほど寒に跪坐く
恋の歌を聴けば せつない詩を書いて ロックを聴けば 挑発的な詩を書いて パンクを聴けば アナーキズムを書いて 演歌を聴けば 操の固い詩を書いて レゲエを聴けば 踊るような詩を書いて ジャズを聴けば アドリブを楽しむ詩を書いて クラッシックを聴けば 情緒的な詩を書いて ヘッドフォンから次々に流れる音楽 ランダムに設定しているから 今はこんな詩しか書けないけど 私は意外と影響されやすい人間なんだ これを活かしていこう 人間には五感があり おのおのが変化を受容しながら 無限に膨らんでいく この詩を書く私の生態と環境は 宇宙に等しい世界を齎らしてくれる
光を泳ぐ美しき埃 窓を少し開ければ外へ外へと 僕は地面を這うよう進み 二次元のような時間を費やす 重たい埃は地を這い 前へ進み たまに後ろを振り返り 積もれば地獄 飛べば天国なのか それなら僕は当面 意思を足にして 歩くことから始めよう
捥ぎ取って欲しいほどの痛み 右手はもう使えなくなり 痛み止めをどれだけ飲んだことだろう ひとは何かしらの苦も背負いながら それを乗り切ろうと進んで行くもの わたしの場合 頚椎の靭帯が骨化して神経を圧迫 この原因がわからずに腕の痛みは続いた 何件か病院を受診するが 筋肉痛と言われ 神経ブロックの注射を打つ それでも除痛は姑息的 痛み止めを飲み続ける 痛みには勝てない 精神が強いとか弱いとかの次元ではなく 圧倒的に生死を支配する痛みだった どんな死に方をすれば楽なのか 死からほど遠い楽観主義を貫いてきたはずなのに 現実というのは酷(むご)いもので 正義やら真実の裏返しに包まれ これが私なのか こんなになってしまうのが私なのか それでも生きていかなければならないのか 早く死にたい 早く楽になりたい 生きていることの痛みに限界がきていた とにかく早く原因を突き止めなくては 医者なんて頼っている場合ではない 腕の痛みを様々な角度から調べる ひとの助言も聞いて たどり着いたのが 原因は首にあるのではないか と それは間違いのない判断だった この病気の多くは七十歳を越えた頃に発症するらしく わたしはかなり早い段階で頚椎が詰まったため 医者は筋肉痛くらいにしか診断しなかった 脊椎専門病院へ受診をして やはり手術をして頚椎を拡げることになった 手術は怖くなかった これでこの痛みから逃れられる と 信じて 手術が終わり 脊椎の中には セラミックのインプラントが五つはめられ 脊柱管は拡げられ 圧迫されていた神経は徐圧されるが 一度傷ついた神経は治るわけではない だが 腕の痛みは軽減され これなら生きていけると確信した だが 両腕の痺れ 顔面の痺れ 右足の痺れ 首や腕と肩に軽い痛み そして 異常なほどの肩凝り 手術の後遺症なのか 身体の変調は五年経っても消えない それでも握力は次第に戻り始め これなら仕事もなんとかやっていける この病気の術後における完全復職率は 10パーセント未満だろうとも あの痛みに耐えてきたのだから もう怖いものはない そう思いながらも ひとはそれほど強いわけでもなく なんとか身体がこのまま保つように と 神社で神頼み まだ この痛みと痺れなら共存できる これくらいは生きている証だ 私はここで終わるわけにはいかない そう願をかける
僕は水面下で必死に 筆を突くアヒル 努力なんて言葉は知らない そんな嘘を隠して なるべく綺麗な作品を 歌うために詩を作る ひとりの世界でない もうひとりの詩でない 僕は水面下で必死に 筆を突くアヒル 大きな湖で 君にめぐり逢い 歌う喜びに 筆を突くアヒル 詩ができたよ さらりと書いてみたんだ
日曜日、なぜだろう 身体が動こうとしない 力が抜けては緩んだ気持ちに 寂しさと怖さが入り混じった 夢ばかりを見てしまう 死んだものたちが訪れてくる 友人だの親だの犬や猫 何も言わずに冷たく目の前で 死んでいる辛さに 身体の一部を口にすれば ずっと一緒にいれる、と 馬鹿なことまで考えてしまう まったく身体が動こうとしない 水分ぐらいは摂らなくては そちらの仲間になってしまう まだ早い やり残した詩作もあるのに 死の淵に吸い込まれそうな 気怠い日曜日 苦しい孤独が襲い 窓の向こうはもう暗闇だ