くまごろうのサイエンス教室『トラピスト1惑星系』
3月
18日
また2016年9月2日のブログにはイギリスのクイーン・メアリー大学などからなる国際チームPale Red Dotが、太陽系から4.2光年しか離れていない最も近い距離にある恒星プロキシマ・ケンタウリに生命が存在出来る可能性のある惑星プロキシマbが存在することを発表したことを書いた。観測データによりプロキシマbの質量は地球の1.3倍、公転周期は11.2日で、表面に液体の水が存在出来る領域にあることが明らかになった。
2017年2月23日、今度はヨーロッパとアメリカを中心とする研究者が、チリにあるヨーロッパ南天天文台やモロッコ、南アフリカなどのいくつかの望遠鏡と、NASAが2003年に打上げたSpitzer赤外線宇宙望遠鏡を使用して、地球から39光年離れたみずがめ座の方向にあるトラピスト1に7つの惑星を確認したことを発表した。この研究グループは2016年5月にトラピスト1の3つの惑星を発見していたが、Spitzer宇宙望遠鏡で詳細に観測の結果、他の惑星の存在も確認した。
トラピスト1は質量が太陽の8%程度、明るさは1000分の1程度の赤色矮星と呼ばれる小さな恒星で、表面温度は2560度と太陽の5780度に比較して低いが、太陽系でいえば水星軌道の距離に7つの惑星が詰め込まれていて、公転周期は数日から十数日と極めて短い。7つの惑星は地球と同じ岩石惑星で、大きさは地球の0.75倍から1.13倍である。更に惑星e、f、gは液体の水が惑星表面に存在しうるハビタブルゾーンにあり、他の惑星もそれらの大気によっては生命が存在する可能性がある。太陽系外惑星はこれまでにも3500個以上見つかっているが、赤色矮星は宇宙にもっともたくさん存在している恒星であり、今回のトラピスト1惑星系の発見により地球型惑星が宇宙にたくさん存在する可能性を示唆している。トラピスト1惑星系は太陽系からの距離がプロキシマbよりは遠いが他の太陽系外惑星より近いため、今後これらの惑星の大気などを調べることで生命が存在するか、過去に存在した痕跡を検出出来る可能性がある。
惑星が液体の水を保持し続けるためには大気を保持し続けなければならない。大気中の分子は温度が高いと激しく運動し、惑星の重力をふりきって宇宙空間に散逸する。そのため惑星が水を保持し続けるためにはその重力がある程度以上でなければならない。数億年の単位で大気を保持するためには火星よりも大きい必要がある、と言われている。この点でトラピスト1の惑星は地球の10分の1程度しかない火星よりずっと大きく、水を保持し続ける条件を満たしている。
ハビタブルゾーンにある惑星に生命が存在するためには液体の水があることが第一条件だが、それだけでは十分ではない。地球上の生物を構成する元素としては水素、酸素、炭素、窒素、カルシウム、硫黄、ナトリウム、カリウム、塩素、リンなどがあるが、これらの元素は地球のもととなった微惑星を構成する岩石に含まれている。地球では約40億年前に火山の噴火とそれに伴う雨により海がつくられたが、原始の海は酸性で陸地に降った雨がナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどを溶かして海を中和していったと考えられている。この過程で生物構成元素のほとんどは海に存在することとなったが、リンは花崗岩に多く含まれるものの海洋地殻を形成する玄武岩にはあまり含まれていない。そのため原始の海にはリンはほとんど存在していなかったようだ。DNA、RNAや生命活動に必須なアデノシン・三リン酸(ATP)などに不可欠な元素であるリンは地球では陸地に降った雨に溶けて海に供給されたが、すべてが水でおおわれている惑星ではリンの供給が容易ではなく、地球型生命の存在は厳しいと思われる。
大気中の酸素は高等生物が有機物からエネルギーを効率的に得るためには必須だが、原始生物にとっては必ずしも必要条件ではない。地球で初めて光合成を行い酸素を生み出したのは単細胞のシアノバクテリアだがその後の進化により植物が光合成を行って大気中の酸素が増加し、約6億年前にほぼ現在の酸素濃度に達したと考えられている。光合成がそれほど盛んでなかった原生代初期(約25億年)以前の地球では生物は酸素を必要としない嫌気性生物がすべてだった。だから太陽系外惑星に生命が存在するのに酸素は必要条件ではない。
ブログルメンバーの方は下記のページからログインをお願いいたします。
ログイン
まだブログルのメンバーでない方は下記のページから登録をお願いいたします。
新規ユーザー登録へ
投稿日 2017-04-01 11:26
ワオ!と言っているユーザー
投稿日 2017-04-01 12:23
ワオ!と言っているユーザー