狐火(母への鎮魂話)

母は岐阜県加茂郡坂祝村深田(現在は美濃加茂市)の生まれ。
昭和2年の生まれで、この地で成人した。
生家の南に鳩吹山がある、奇しくもこの山は私のホームグラウンドで現在もよく登る。
この山の北面に木曽川が流れ山肌を削っているので一般道はもちろん、登山道も無い。
犬山市の栗栖が最終地で、ここから可児市の土田までは鳩吹を登らねば往来は出来ない。

母はよく私に、天神山(鳩吹の旧名)には狐が住んでいて、時々嫁入りがあるので
狐火が出る、何度も見たと話してくれた。

この話は何度も聞かされいるので、すっかり覚えているのだが、内容はぶれていないので
単なる作り話ではなさそうである。

その母は10年ほど前に認知症を患い、私が誰であるかもわからなくなり、2022年3月22日
に他界した。

昨日、親不孝息子はその死に顔を拝みに駆けつけ、夜半に帰宅したのだが。
帰路はちょうど鳩吹山を正面に見る道、山中では無いが麓付近にいくつかの光が
見えた。それは近年出来上がった温泉施設の光が途中の林間から漏れる光で有ることは
想像出来たが、それは昨晩だけは狐火であり、そう思うことが母への鎮魂であると言い聞かせ帰路についた。


わかお かずまさ
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