ロシアがウクライナに侵攻してすでに数日が経ち、当初の目的であったろうロシアによる電撃的なキエフ攻略は挫折したようにもみうけられます。
そこにはウクライナ人の愛国心に裏付けられた粘り強い抵抗と、西側諸国の一致した協力支援体制があえうようです。
さて、このロシアよる侵攻をどのように評価するべきでしょうか。プーチンが言い放ったようにジェノサイドを終了させ自国民を保護するためとの大義名分が成立するのでしょうか。
私は報道を見ている限りプーチンのそれは独裁者の詭弁に過ぎないと感じています。
以下の投稿は北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの宇山教授(元在カザフ日本大使館職員)によるものです。
この方の見識が最も的を得ているように思います。
🇺🇦ウクライナとともに立ち上がります。
Peace on Earth!🌍
「私は、プーチンという政治家は大統領になった時から信用していなかった。平気で噓をつき、非人道的なことをやる人間であることは分かっていた。ただ、状況を正確に判断して、自分の利益になることをやる力はあると思っていた。
彼の判断能力に疑問を持ち始めたのは2014年のクリミア併合の時で、これは短期的には国民を熱狂させ自分の支持率を上げることができるにしても、ロシアの将来を傷つける愚行だと思った(最近時々聞く、「これはロシアの没落の始まりだ」という言葉を、私はその時から使っていた)。ただ、嘘や裏工作を駆使してもっともらしい口実を作ってから行動を起こす手腕は、ある意味で優れていると思った。実際、ロシア国民の大多数だけでなく、少なからぬ外国人(特に日本人)が、彼のクリミア併合の理屈に騙されたのだから。
今回も、ウクライナに侵攻するとしたら、巧みな工作でウクライナ(少なくともドンバス)に深刻な混乱状況を作り出したうえで、解放者のふりをして軍を進めるのだろうと思っていた。しかし実際には、ウクライナで右翼が暴れているわけでも、ドンバスでウクライナ軍が大攻勢に出ているわけでもないのに、一方的に攻撃を始めた。クリミア併合の時の演説は、冷静に考えればおかしな内容であっても、一見もっともらしく、格調高く聞こえる演説だったが、今回、2つの「人民共和国」承認やウクライナへの侵攻に関連して行った演説は、誰もがもう知っている、彼の米欧およびウクライナへの恨みを、老人の繰り言のように並べたものだった。
これまで一部の研究者・評論家は、ロシアにはロシアの論理(一理)があるとか、ロシアだけではなく米欧やウクライナにも非があるとかいうコメントをしてきた。クリミア併合とドンバス紛争開始の時には、これらをあたかもロシアではなくウクライナの問題であるかのように扱う研究者も少なくなかった。今回こそは目を覚まして、ロシア、特にその指導者と政治体制の問題を正面から論じていただきたい。
また、ロシアにとってNATO拡大は脅威であり、ロシアは自らの安全のために行動しているというような解説もやめていただきたい。NATO加盟国(ノルウェーや、アラスカを領土とするアメリカ)は冷戦時代からロシア(ソ連)と近接していたのだし、エストニアとラトヴィアの加盟によってNATOはロシアの中央部に接近したが、それによってロシアの安全が脅かされたなどということはない。プーチンがこだわっているのは、彼が勝手にロシアの一部とみなすウクライナが欧米側に寝返ったということであり、ウクライナをめぐってロシアとNATOが戦争になりうるような状況を作り出したのは彼自身である。
自分の子分だと思っていた者が別の有力者とくっついたから嫌がらせをするというのは、安全保障の論理ではなく、パワハラ・モラハラである。そして、相手と自分の安全を損ねてでも、「裏切り」への復讐を優先するのは、マフィアの理屈である。彼が年を取るにつれこのような妄執にますます取りつかれるのはなぜなのかという意味では、精神医学者や心理学者、加齢医学者との共同研究も有効かもしれない。また、ロシア・ソ連とウクライナの歴史に関する一方的な解釈を侵攻の理由付けに使っているという意味では、歴史の政治利用の恐ろしさを示す研究材料になるだろう。
それにしても、この戦争・侵略を止めるにはどうすればよいのだろうか。アメリカはフライングと言えるほど早くから侵攻の可能性を警告していたが、実際に侵攻が始まったらどうするのか、計画を立てていたのだろうか。経済制裁では明らかに足りない。ロシア軍の情報通信網をダウンさせるような技術はないのだろうか。また、ウクライナ全土を守るためにNATO軍を動かすことはできないにしても、有志連合で首都キエフや戦略的施設、防空システムなどだけでも守れないものなのか(日本も当然、それを直接・間接に支援しなければならない)。今、プーチンがやっていることは、サッダーム・フセインがクウェートに対して行ったのに劣らない犯罪行為なのだから。」
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