ローマあるいはパリだろうか。 石畳の上、ゆっくりと筆を走らせる白髪の男性。 彼の絵には、風景だけでなく、 空気のにおいや時間の流れまでが映る。 「若さは一瞬、老いは芸術」―― その言葉を体現するかのように、 今日も絵筆ひとつで、人生を味わい尽くしている。
がらくたと宝物が入り混じる蚤の市の一角。 そこに、小さな椅子に腰かけた画家の老人がいる。 目の前の景色をスケッチしながら、 誰にも媚びず、売ることも気にせず、ただ描いている。 「今ここにある」ということの豊かさを、 キャンバスにそっと閉じ込めるように。
古びた帽子に絵の具のしみ。 パリの街角、イーゼルを立てて黙々と筆を走らせる老人がいる。 通り過ぎる観光客も、彼の世界には入り込めない。 描いているのは風景か、思い出か―― いや、きっと彼自身の人生そのもの。 積み重ねた時の厚みが、筆先に滲む。
押しつけではなく、対話のなかで生まれる「真実」が、きっとどこかにあるはず。 そんな確信のような気持ちが、年を重ねるごとに静かに芽を育ててきた。 自分のことだけでなく、相手のことも、まわりの人の幸せも含めた「基本方程式」が、たしかにある——。 その核心に少しでも近づきたくて、日々を生きている気がする。 その“共通項”こそが、社会生活にも、地域生活にも、欠かせないものではないか。 まだまだ模索の途中。 でも、「どう生きるか」を考えるよりも、「どう生かされているか」に感謝できるようになってきた気がする。 人との出会いが、自分の中の共通項を磨き、深めてくれる。 だから、これからも刺激をもらいながら、付き合っていけたら嬉しい。そんな気持ち。