もの言う牧師のエッセー 再投稿
第307「 涙の道( Trail of Tears )」
現在ミャンマーの事実上の国家指導者であるアウンサンスーチー氏は、ノーベル平和賞受賞の21年後、軍政の軟禁が解かれた後に行われたオスロでの記念講演で、「我々の究極の目的は帰る家や希望のない人々が存在しない世界、自由で平和に暮らせる真の聖域のある世界を作ることです」などと述べた。その彼女は今、少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」迫害の責任を問われ、国際社会の批判を浴びている。自身のお家芸である人権問題がブーメランとなって、ノーベル平和賞受賞者に襲いかかる皮肉。
ミャンマー人口の9割を占める仏教徒が抱くロヒンギャへの敵対感情が背景にあるが、スーチー氏もロヒンギャを不法移民だとして民族とは認めていない。すでに59の村で約7000軒が焼き打ちにあい、死者は最低400人以上、ロヒンギャ100万人のうち40万人以上が難民となり、隣国バングラデシュに流入した。
これを見て、善意の人として名高い、アブラハム・リンカーン大統領が1864年に行った、米インディアン「ナバホ族」に対する民族浄化作戦「ナバホの長旅( Long Walk of the Navajo ))を想起した。ナバホ族8500人は、米軍により約500キロ離れたニュー・メキシコ州の強制収容所へ20日以上の徒歩の移動を強いられ、少なくとも200名が死亡。その殆どが子供や老人で、病人や歩けなくなった者も道端に放置された。
米国は1838年にも、チェロキー族をジョージア州からオクラホマ州まで強制移住させており、この時15000名のうち約4000名が途上で死亡、 これは「涙の道(Trail of Tears)」と呼ばれている。これらの事例は、“他者との共存“ということが、政治や善意、方法論で何とか出来るものではないことを明白に示す。
聖書は叫ぶ。
「キリストこそ私たちの平和であり、二つのものを一つにし、
隔ての壁を打ちこわす。」
エペソ人への手紙2章14節。
これはイエスの教えを実践し努力するだけの宗教や法則の如きものではない。”平和の君”であるイエスを心から信じ、彼の下さる聖霊を心に迎えることにより、キリストによる真の平和が我々を通して実現していくことを言う。そうしてようやく涙の道は喜びの道へと変わるのだ。
2017-11-3