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窓の話も既に23回目、木製窓の縦かまちと横かまちの木組みやガラス押えの断面形状や格子の種類などまだまだ話題は尽きないが、これらの事項は専門的過ぎてごく一部の人しか関心がないと思われるので、今回デコラティブウィンドウを述べて最終回としたい。
まだ大きな板ガラスの生産が出来なかった中世以前の時代、ガラスの小片を鉛製のケームと呼ばれる溝付きのリムを使ってより大きなガラス板とする技術が発達したが、この技術を利用して赤、青、緑、白などさまざまなカラーのガラス小片を組み合わせることによりステンドグラスが生み出された。ステンドグラスの技術は特に中世のフランスで発展を遂げ、ゴシック様式のキリスト教寺院では建築技術が進化したことにより窓の大型化が進んだことと相まって、宗教的なステンドグラスが多く採用された。現代でも欧米ではステンドグラスに対する憧れは強く、アメリカの地方にある教会でもステンドグラスは珍しくない。
住宅でもはめ殺しのあかりとり窓などにステンドグラスを使用することがある。以前は単なる1枚のステンドグラスを窓枠にはめるだけだったが、冬の寒さが厳しい地域ではステンドグラスの窓でも建築基準法により高断熱が要求されるため、断熱性の高いペアガラスのエアスペースにステンドグラスを取付けたものが使用される。
図案をさまざまなカラーで形づくったステンドグラスではなく、ケームを使用して面取りした透明ガラスや色々な模様入りガラスを幾何学的に組み合わせた窓も住宅に使われる。カラーガラスを全くもしくはごく一部しか使用しないデコラティブガラスは外の景色がまるで絵画のように見え、また外のあかりが室内に十分に取り入れられるので、リビングルームやベッドルームなどにも使用されることがある。
アメリカの高級木製窓メーカーは、添付の写真に示したような上部のとがったゴチックヘッドやハーフラウンドの窓にデコラティブグラスをはめた固定窓や可動窓を標準モデルとしてお値ごろな価格で販売している。
窓の話2『窓の役割』で述べたように、ローマ帝国時代にヴィトリヴィウスによって著された建築の理論書である「建築論考」によれば、建築には用・強・美を兼ね備えることが必須であり、その中の美を究めるのに中世はもちろん近代建築でも窓は重要な要素として扱われている。アメリカで窓を扱ってきたくまごろうは、窓のデザインを生かしたアメリカの美しい住宅をたくさん見てきたが、それに較べて日本の住宅における窓の役割はいろいろな事情があるにせよまだ十分ではないように思われる。住宅を建築する際には、最も重要な建具のひとつである窓については単に建築士や工務店に任せるのではなく、これまでに窓の話で述べた断熱・遮熱性能、構造強度、水密・気密性能、耐久性に加え、窓そのもののデザインや美しさまで十分に考慮して窓を選定してもらいたい、と願ってやまない。