窓の話19『ケースメント窓』
12月
15日
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ケースメント窓とはサッシュの右または左の縦かまちにヒンジを取付けた開き窓、またはサッシュの上かまちおよび下かまちに複合ヒンジを取付けた縦すべりだし窓のことで、現代の住宅用窓として普及している。
前回取上げたダブルハング窓が住宅に普及する18世紀頃まではイギリスを中心としたヨーロッパでは、大きな板ガラスが高価なため住宅用窓としてはステンドグラスのように鉛のケームを使用してガラスの小片をつなぎ合わせて大きくしたガラスをはめた内開きのケースメント窓が一般的で、屋外側には外開きのシャッターが取付けられていた。そのなごりで現代のアメリカやヨーロッパの住宅でもデザインのために窓の両側に固定したシャッターを取付けることが少なくない。
ケースメント窓はダブルハング窓やスライダー窓と較べると窓をロックした時の窓枠に対する密着性に優れており、その結果としてダブルハング窓より気密性能や断熱性能を高めることが容易である。
またケースメントのサッシュをヒンジなしに直接窓枠に固定した固定窓もケースメント窓と組み合わせて広く使われている。窓の話4『ガラス』でも述べたが、固定窓を作る場合、窓枠に直接ガラスをはめることも出来るが、ケースメントのサッシュを製作してこれを窓枠に固定すると、サッシュのかまち(ガラスパネルの外側にある上下左右の枠の部分)の幅が隣接するケースメントと統一され、建築学的に正しい窓となる。添付写真のうち、上がカーブした3つのサッシュによる窓は両翼のサッシュと中央のサッシュのかまちが統一されており美しく見える。
ケースメント窓の中には幅900ミリメートル、高さ1800ミリメートルに達しドアとあまり変わらない大きさのものもあるが、このような大型のケースメント窓でもクランクハンドルを回転することにより開閉することが出来る。当然のことながらこのような大型ケースメント窓のハードウェアは丈夫に作られている。添付のダイニングルームの写真はその一例である。
ヨーロッパやアメリカのニューイングランドでは昔ながらの内開きケースメントに対する郷愁があるようで、アメリカの高級木製窓メーカーは添付写真のような窓を製作しそのような需要に応えている。ただこの窓は室内にサッシュを引き込むので、部屋の広さに余裕がないとお勧め出来ない。
住宅の正面を示した添付写真は、ケースメント窓をカーブした窓と組合せ、窓枠のカラーも相まって住宅の美しいデザインを一層引き立たせている。窓の話2『窓の役割』で述べたように、窓は建物をより美しく見せるためのアクセサリーとしての役割があり、中世はもちろん近代建築でも建築設計の重要な要素として扱われている。
添付写真のうちレンガの外壁に取付けられているケースメント窓はCopper Cladと呼ばれる屋外側が銅葺きの窓で、値段は少々張るが時間の経過と共に銅葺きの屋根と共に青銅色に変化する趣のある窓である。