窓の話18『ダブルハング窓』
11月
15日
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これまで窓の話では窓全般に関することがらを取り上げてきたが、ここからは色々な種類の窓の特徴などについて述べる。その第1回として、外国の住宅といえば先ず頭に浮かぶダブルハング窓を取り上げる。
18世紀以来のジョージアンスタイルやヴィクトリアンスタイルなどはイギリスの伝統的建築様式だが、これらの建築様式はイギリスの植民地やアメリカに持ち込まれ、更に日本でも明治維新以来、役所や商業ビルをはじめ、学校、病院などの西洋建築にも多く採用された。
これらの建築様式に使われた窓はサッシュ窓(Sash Window)またはハングサッシュ窓(Hung Sash Window)と呼ばれ、引き違い窓を縦にしたようなもので、ガラスをはめたふたつのサッシュが窓枠の内側で上下することにより開閉する。明治以降の日本でもサッシュ窓を使った建築は多く、今でも北海道庁庁舎、札幌時計台、横浜や神戸などにある異人館などの古い建物では当時のサッシュ窓を見ることが出来る。
サッシュ窓のうちダブルハング窓は2つの独立したそれぞれのサッシュが上下にスライドすることにより開閉するが、ひとつのサッシュは固定され、もうひとつのサッシュだけが上下するものはシングルハングと呼ばれる。窓を閉じた時に上に来るサッシュをトップサッシュ、下に来るサッシュをボトムサッシュと呼ぶが、雨の室内への侵入を防ぐ理由でトップサッシュは屋外側に、ボトムサッシュは室内側に取付けられる。
昔のサッシュ窓はサッシュの上端部両側にロープまたはチェインを取付け、プーリー(滑車)を介して屋内外からは見えない窓枠の内側にあるカウンターバランスであるおもりにつないでサッシュの上下を容易にしたが、現在生産されるサッシュ窓ではおもりではなくスプリング式のバランサーを使用しているものがほとんどである。スプリング式バランサーのサッシュ窓はおもりのカウンターバランス式に較べて操作がやや重く感じられるが、アメリカの高級木製窓メーカーのなかには今でもチェイン・プーリー・おもりを使った高断熱・高気密ダブルハング窓を製作しているところもある。
昔のサッシュ窓は木製窓枠に設けられた溝にサッシュがはめられており、その溝をサッシュが上下する事により開閉する。また接するふたつのサッシュの間にも特別な気密性を高めるパーツが取付けられていなかったため、サッシュ窓は現代の基準から見ると気密性が高くなく、断熱性能も優れてはいなかった。現代のサッシュ窓は断熱性や気密性を高めるために木製窓でもサッシュが上下する溝の部分にはジャームライナーと呼ばれるPVCなどのプラスティック製パーツを、また二つのサッシュが接する部分にも気密を高めるためのウェザーストリップを使用している。しかしこれらの気密性を高めるためのパーツはサッシュの上下に対しては摩擦抵抗を大きくすることとなり、現代の高気密・高断熱のダブルハング窓は昔のサッシュ窓のように大きな窓でも軽々と開閉することは叶わない。
2枚のサッシュを窓枠内で上下させるため、ハングサッシュ窓のサッシュは他のタイプの窓よりも厚みが薄く、アメリカ製木製窓では1-3/8インチ(35ミリ)の厚みが一般的である。この厚みでは1/2インチ(13ミリ)の厚さのペアガラスしか取付けることが出来ず、より高い断熱性能を求める場合には木製ドアの一般的な厚みである1-3/4インチ(44ミリ)のサッシュに7/8インチ(22ミリ)の厚さのより高断熱なペアガラスを取付けたハングサッシュ窓が使用される。