これまでに述べてきた断熱性能、遮熱性能、気密性能、水密性能、耐風圧性能などの他に、窓としての性能には、遮音性能、紫外線遮断性能、透視性能などがある。
遮音性能: 一般的に地下鉄の車内は90デシベル、交通量の多い街の騒音は80デシベルであるが、室内で快適な生活と感じられる騒音は40デシベル以下と言われている。音はデシベルで表される強さの他に周波数(高さ)により感じ方が異なる。JISでは屋外の騒音レベルから窓の遮音性の数値を差引いたものがおおよその室内での騒音と規定し、周波数ごとの遮音性によりT-1からT-4の4種類の等級を規定している。T-1は500ヘルツより高い周波数の遮音性が25デシベル、また遮音性が最も高いT-4では40デシベルとなっている。1枚ガラスの窓ではT-1のレベルに達しないものが多いがペアガラスの窓ではT-1を超え、窓のタイプによってはT-4レベルのものもある。日本では、防音性を考えた住宅と呼ばれているものでは通常T-1の性能の窓が使用されているが、これでは交通量の多い街では室内が40デシベル以下とはならず、静寂とは言えない。
アメリカでは遮音性能をSTC(Sound Transmission Class)にて表示することが一般的だが、これは異なる周波数における遮音性能の加重平均であり、STC10は屋外騒音の50%が通過することを示し、STC20、STC30、STC40は屋外騒音のそれぞれ25%、12.5%、6.25%が通過することを示している。アメリカの高級木製窓メーカーの製品はSTC30を超えるものが一般的である。
窓の遮音性能を高めるためには、きわめて薄いプラスチックフィルムを貼り付けたラミネートガラスを使用する、1枚ガラスよりペアガラスとする、ペアガラスより3重ガラスとする、ペアガラスの場合2枚のガラス厚みを異なるものとする、ペアガラスの2枚のガラス間距離を大きくする、などの方法が効果的である。
紫外線遮断性能: 窓際に置かれたカーテンや家具は月日と共に退色することがあるが、これは太陽からの有害な光線のためである。太陽光線はその波長により300-380ナノメートル(1ナノメートルは10⁻⁹メートル)が紫外線、380-760ナノメートルが可視光線、760-2,500ナノメートルが近赤外線と称される。この中で家具などを退色させる有害光線の波長は300-600ナノメートルであり、特に波長が380ナノメートル以下の紫外線がもっとも有害である。ガラスはその性質によりごく普通の透明ペアガラスでも約40%の有害光線を遮断するが、ペアガラスでは80%の紫外線遮断効果は一般的である。更に高い紫外線遮断効果が必要な場合には、ペアガラスの1枚にきわめて薄いプラスチックフィルムを貼り付けたラミネートガラスを使用することにより99%の紫外線遮断も可能である。
透視性能: 窓の話その2『窓の役割』に述べたように、採光だけが目的で外部からのぞかれない不透明ガラスの窓を除いては、美しい野外の景色をながめる眺望は窓の重要な機能のひとつである。窓に使用されているソーダライムガラスは、その特性として表面で可視光線を反射するため、透視性はガラス1枚当たり8%低下し、ガラスを2枚使用したペアガラスでは透視度は84%となる。断熱性や遮熱性を高めるためにローイーコーティングを行うと透視度は更に低下し、その程度はコーティングの材料や厚さによる。透視性の低下を少なく抑え、かつ高断熱性、高遮熱性を保つためには宇宙開発で発展した真空蒸着による極めて薄いコーティングの技術が必須である。アメリカの高級窓メーカーでは高断熱・高遮熱でかつ透視性が70%の窓を生産している。透視度が70%というのは一見低いように見えるが、ローイーコーティングされていない3重ガラスでは76%であり、また遮熱の目的で主に商業ビルなどで使用されるティントガラス(着色ガラス)では45%程度であるのに較べると、それほど低い数字ではない。
余談だが、日本ではビルディングに取付けられたガラスは外から見ると鏡のように景色を映しているが、アメリカではビルディングのガラスに映る景色は歪んでおり、高速道路沿いの建物に映る景色を見ていると船酔いのような感じとなることがある。これは日本の板ガラスの方がガラス表面の平滑度が高いこと、建設会社がガラスパネルを取付ける際に景色の歪に配慮しているなどによる。しかし映った景色が歪んで見えるアメリカのガラスでも、建物の室内側から外の景色を見れば歪んで見えることはない。
アメリカではこれらの窓に関する性能の他にも防犯性能が要求される場合がある。これはForced Entry/Bullet Resistanceと呼ばれ、犯罪多発地区やハリケーンが頻繁に襲来する地域で考慮される。窓の話その13『耐風圧性能』でも述べたインパクトテスト http://www.youtube.com/watch?v=TL_j8sp8Vx8 と呼ばれる重さ5キロの角材を時速56キロで発射して窓にぶつけるテストなどに合格しなくてはならない。これらの窓やパティオドアに使用されるガラスは通常の焼きなましガラスはもちろん、焼入れした強化ガラスでも十分な強度がないため、プラスチックの薄膜をサンドイッチした積層ガラスが用いられる。またガラスだけでなくガラスの窓枠へのはめ込み方、窓枠の強度、窓枠の建築躯体への取付け方なども必要な強度が発揮出来る方法が取られていることは言うまでもない。
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