「マタイ福音書は御国の書
7月
7日
「マタイ福音書は御国の書」
マタイ福音書・総集編⑵
~マタイ福音書連続講解説教 109~
メッセージノートはこちらから:
http://wdx.hosannamin.org/whatsnew/view/2015-06-30
マタイの福音書は
「御国の書」としての特徴が顕著である。
① 御国について
マタイでは「天の御国」と記されている~ユダヤ人対象に書かれた福音書ゆえ
他の福音書では「神の国」である; 両者は全く同じ概念
基本的な概念は「王による統治」。統治者は神であり不変であるが、統治形態、統治の対象者、統治の結果については5つの異なる形態がある
② 御国とたとえ話
全福音書にたとえ話は29回。直接「御国」に関しては17回、間接的には6回のたとえ話がある。
その大多数はマタイにあり、マタイ独自のたとえ話が10もある。
神の国の5つの異なる側面
聖書に「神の御国」と呼ばれるものは常に同一のものではない。
5つの異なる「神の御国」があり、
文脈からどの「神の国」が言及されているかを見極めなくてはならない。
1) 宇宙的・永遠の御国
神が森羅万物の創造者にして、供給者あり、支配者である側面
全宇宙が、そしてあらゆる時代がすでに神の国であるといえる
詩篇 10:16、145:1-21、使徒 17:24
2) 霊的な御国
聖霊によって新しく生まれた者たちの心に存在する
アダムから現在まで、信仰によって義とされたものたちがその住人
マタイ 6:33、19:16、ヨハネ 3:3-5、使徒 8:12
「教会時代」とは使徒 2 章から今後の携挙までのことをいうが、
この御国はさらに広い時代をカバーしている
この御国はアダムから永遠の先までの信者をメンバーとする
3) 神政政治による御国
神政政治国家(イスラエル)を通じての神の間接統治
モーセによって始めて樹立された
律法が与えられて神政国家の土台が敷かれる
モーセからサムエルまでは、神の召命による仲介者による直接統治
君主制による世襲統治~サウルからダビデ、デゼキア王による間接統治
出エジプト 19 章~Ⅱ歴代 36 章までがこの御国時代
神政時代後半は衰退期。預言者による新しい御国形体の預言が、
この衰退期に活発となる。それが、将来に実現されるメシアの御国である。
4) メシアの御国(千年王国)
統治者か、統治年数に注目するかで呼び名が変わる。メシアによる直接統治
エルサレムでダビデの座についての文字通りの地上統治
これはダビデ契約の成就~とこしえの家、王国、王座、子孫を与えるとの約束 。Ⅰ歴代 17:11~15
OT のほとんどの御国預言はこの側面である
B.ヨハネと主イエスが「近づいた」と伝えた御国
当時のユダヤ世代からは取り去られたが、将来のユダヤ世代(艱難期)に再び 提供されるもの
「神の国の実を結ぶ国民」(マタイ 21:43)とは将来のユダヤ民族のことである。 「国民」を「異邦人」(口語訳)と訳すのは置換神学の史観である
人間的な視点からは神の国は延期された。神の視点からは想定内のことであった ~異邦人に伝道が進むことによる成就(イザヤ 49:1~3)
5) 奥義としての御国
12 章でのメシア拒絶があって、変動された神の国プログラム。それは奥義。
「旧約聖書では啓示されず、新約時代になって初めて明らかにされた真理」
「先に簡単に書いたとおり、この奥義は、啓示によって私に知らされたので す。それを読めば、私がキリストの奥義をどう理解しているかがよくわかる
はずです。この奥義は、今は、御霊によって、キリストの聖なる使徒たちと預言者たちに啓示されていますが、前の時代には、今と同じようには人々に 知らされていませんでした。 (エペソ 3:3-5 )
OT ではこの側面は全く言及されていない
この御国の期間は、メシアの初臨から再臨までの間である
さらに厳密には、ユダヤ人のメシア拒絶(12 章)から、将来の艱難期のメシ ア受容までの間である
「キリスト教界」"Christendom” が最もふさわしい用語であろう
王は天におられて、地上には不在な状態の御国である
13 章の 8 つのたとえ話は、現在進行中の地上にあるこの「奥義としての御国」の様子を描写したものである。
「奥義としての王国」を解説するたとえ話:マタイ13章
神政政治としての御国がバビロン捕囚で潰えたとき、
預言者たちは頻繁にメシア的王国としての御国について預言するようになった。
神の統治がイスラエルを通じて実現させるという試みは頓挫したかに見えた。
イスラエルにおける理想的な神の統治を規範として、
世界に神の栄光を届ける計画は失敗した。
しかし神の計画自体は失敗に終わることはなく、
やがてメシアが地上に来臨してエルサレムに王座を確立し、
全世界を平和に統治する時が来ると預言した。
それがメシア的王国と言われるものであり、
黙示録に至っては千年間続くことが啓示されることから「千年王国」とも呼ばれている。
イエスがメシアとして来臨された時、
ユダヤ人らは拒否した。
そこでメシア的王国はその当時は実現されず、
その成就は将来に延期されることになった。すでに2千年間が経過している。
そのメシア的王国に代わって登場する王国が
「奥義としての王国」である。
期間としてはほぼ教会時代と一致している。
その奥義として御国がどのような時代環境となるかを
イエスご自身がたとえで預言・説明した箇所がマタイ13章である。
1) 第1ののたとえ(18~23 節) ~4つの土壌:4種類の心
2) 第2のたとえ(24~30)~毒麦のたとえ:不信者の教会への混入
3) 第3のたとえ(マルコ 4:26~29)~種の成長:福音には命が内蔵している
4) 第4のたとえ(31~32)~種のサイズ:からし種。始まりの小ささ
5) 第5のたとえ(33~43)~パン種:異端的様子の混入
6) 第6のたとえ(44)~畑に隠された宝:メシアニックジュー
7) 第7のたとえ(45~46)~良い真珠:異邦人クリスチャン
8) 第8のたとえ(47~50)~地引網:千年王国直前のメシアの裁きの座
9) 第9のたとえ(51~52)~蔵から新しいものでも、古物を取り出せる主人:成熟した弟子
世界に対する神の救済事業は
現在も「奥義としての王国」として進行中である。
その救済事業は「千年王国」において完結する。
マタイ13章のたとえ話は、その「奥義としての王国」の性格と進展状況
、最終到達点を教えるものである。