科学力で原子力を制し、CO2を排出せずに、安全でクリーンで豊かな国を夢見ていた。 長く隠蔽体質が続いた原子力行政にも、ここ近年、多少の風通しが見られるようになってきていた。 ここからがスタートだった。 3/11の地震、そして翌日朝の原子炉の状況。 それを目の当たりにして、僕は泣いた。 被災者への悲しみではない。 国家として、社会として、物資文明、経済優先の価値観の崩壊を見たからだ。 人口は大幅に減少し、高齢化社会を迎えた日本が、今後国内がバブル期のように経済発展する事は、物理的にありえない。 世界は資源とエネルギーの争奪戦を繰り広げているのに、日本は5年以上の政治空白が原因で、ここでも完全に出し抜かれている。 そんな中で、日本を以前のような大国にすることなど不可能だ。 日本が先駆者として生き残るためには、「豊かな小国」に生まれ変わることが必要だった。 拡大するのではなく、いかに上手に小さくなっていくかを考えるべきであった。 その切り札として、僕は安全な原子力への取り組みを考えていた。 これが成功すれば、日本は産油国ほどの力を持ち、なおかつ温暖化対策に大きく貢献できるからだ。 しかし、それは一瞬にして幻となった。 テレビに映し出されたあの風景をみて、全てを悟った。 消えた。 何もかも消えた。 日本は次のSTEPに進まなくてはいけない。 新しい形の国へ。 政府は、2重ローンの帳消しだ、液状化も補償する、原子炉事故も全額補償だと、人気取り政策を次々と打ち出しているが、タダで与えられるものは新たな不公平を生むだけだ。 国民がリーダーに求めているのは、国が進む方向を示すことであって、負債の分配ではない。 新エネルギー確保と共に原子力をやめる。 新エネルギーとは、水力、風力、太陽光、潮力、地熱を指す。 低エネルギー社会を作る。 食料自給率を上げる。 人口を減らす。(エネルギー消費、食料消費をダウンサイジングによって抑える) その時点での日本の主力輸出商品は、新エネルギーの効率化技術だ。 また、国家のダウンサイジングの成功事例を世界に誇るものとする。 そして、311を境に日本はどこの国の真似でもない、素数のように美しい新しい形の先進国となることができる。 それが、日本にしかできない地球へのメッセージだ。