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現代詩の小箱 北野丘ワールド

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揺れる赤いN

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ばら色に割れた
アンデスの少女の額が
氷の塔をつきやぶり
銀のスプーンの先端で仰むく
千年のぬれた喉
りんごん

ムラサキの口火の肌に
ほっと憩う
薄羽のつけ根の振動
おりてくるものに逢うための
階段だけの開放塔
硝子質のストローは切断面から炎えあがる

焼失した学名の菌床で
毛深い女神の樹液色の爪がのびて
百年の寝返りをうつ
号泣する節穴を
ふたたび女神の乳房がのしかかる

羨道のぬかるみで逸失した
管理人に座る盗掘者
鳩笛がぽぽうと嘴からこなごなに鳴けば
揺れる赤いN
空中静止する熊ン蜂の
憤怒の喜びの踊りがうなりだす

あらゆる運動が待機する
気象の前兆
曇天からふりそそぐ虹彩のこおろ
放射しつづける熱量の意匠



水平線から
腰にさしこまれ
やむまで腕に折れている
#黒筒の熊五郎

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ぽんぽんダリヤ

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中野ブロードウェーという
脳天気なアーケード街を歩いてゆくと
ころんとした小振りの玉ネギが後をついてきた
振り返ると
むこうもはっとして立ちどまった
いや、玉ネギは歩いても立っているのでもなかったが
じっとみつめると前球面に影をつくった
また歩きだすと玉ネギは
ぱっと光ってついてくるようだった

なんだか
いもうとに似ている
遊ぶのに足手まといで
いじめられるのが
心配で
わたしより
可愛がられているくせに
わたしがいないと淋しくて眠れない
オネショにまみれ
泣いて
なんでもわたしを真似て
石油タンクに昇った梯子で
未知のきょうふにまっしろになって
落ちた
わたしの名を たぶん 手の虚空に呼んで

 ……ちゃあああん……

   走れば泣く
    とおい
      うしろ
    ぽんぽんダリヤ

すっと
路地に身を隠す玉ネギ
ああ、もうそこはいいんだ
悩みの季節に通った
喫茶店スヴェニールは
ふらんすの想い出というらしいから
行こう
いや、まて玉ネギ
おまえは、生まれる前の
あいつがいない前の
じぶんなのか

忽然と
なんだろう
はく息がまっしろな
あいつの生誕した きらきらした雪の朝だ
耳にほぐれる土の匂いで笑って
わたしを追い越していく
あまく鮮烈な球体
身もあらわに
うすみどりの縞のつやつやで
#黒筒の熊五郎

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閑静な住宅街の禁足地 切り株

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消防署が近いので、すみません家の犬がうる
さくてと向かいの奥さんに声かけられた。い
えいえそんな、アパートに住む奥さんは答え
た。火事ですか救急ですか。近づいてくると
高くなる狼の音域。人は逃げ、犬は目覚めよ。
おおおんと真似ると夫が笑うので、さらにオ
クターブをあげ玄関をでて犬と合唱する。

違法駐輪自転車の一時保管場所になっている
隣の空地は高いフェンスに囲まれている。草
刈りに来た人によれば、役所が借り上げて管
理しているんですわ、地主さんが使うとなれ
ばあれですけど、らしい。春先の雨でスギナ、
ドクダミの繁茂、アパートの影が短くなれば
ヒメジョオン。昼顔。へびいちごの赤い実。
やがて蔓がびっしり。

草が刈られてカラッポになった。そうしろと
いう形にしか思えない眼前の網。だしてくれ
え、こうだな。俺は何もやってないんだあ。
これ奥さんと夫の声、声がする。俺をだせ。
振動が手を離さない、止まらない。背後から
夫の熱い掌が奥さんの両腕を掴んだ。今夜は
無風。

  遠い彼方で
  湯のように黴の匂いがゆらいだ
  ごっそりと みずからを引き千切り
  ほろほろと赤土を零し
  岩盤に喰らいつき
  蛸となり
  青く燃えながら光る断面が直進していた

ちょっと眉をしかめ、寝息をたて始めた奥さ
んを覗き込み、こいつは寝顔が一番いいなと
思う夫が読書灯を消した。

  アパートのドアをがさり
  箒がさするような音がする
  奥さん…
  いま、はーい。いま何時なの
  うつつに思うと
  奥さんの口が「夜中の三時」といった
  武蔵野の面影と
  名告る切り株が
  隣の奥さん…
  「あなたは何の面影」と聞いてきた

玄関がばんと開き、薄い強力な水膜が進入し、
くるぶしが包囲された。昏い男が台所に現れ
る。皆さがって、彼女は叫んだがのろい再生
音のようにしか口が動かない。実際、逃げる
者はいない。何か飛び、壁に突き刺さった。
銀に光る刃が美しいと彼女は思った。

的確な放擲と感心する彼女の右腕の際に、斧
が光っていた。遅れて到着した戦慄に反転し
斧をぬきとり、渾身こめて台所の窓に放り投
げた。泉の水面のように斧はすりぬけ無音
のまま落ちてゆく。閑静な住宅地、赤い屋根、
その玄関先に光が突き刺さった。

昏い男はまだ眼の前にいた。逃れられない。
切迫が口を衝き、わたしと一緒に、と男の腕
を掴んだ。腕からかなしみが全身にながれ
、わたしの身体に男が入り込み、放電の衝撃の
うちに消えた。

奥さんは右腕をあげていた。ベットから起き
上がると腰から下が切り株だった。寝室から
外までの扉という扉が開いていた。

 「MYおっとはどこですか」
  トイレの好きな夫は
 「といれっと」と答えた
 「隣のフェンス消えてるよ」
 「ほう、鳥さん日記もこれまでですか」

奥さんはゆく。玄関をごそっと這い出し、杭
に張られた低いロープをよいしょ、とまたぐ
とき、切り株の下半身が乱暴に笑った。

小鳥たちの楽園を楽しんでいた武蔵野の老木
はいい香りを放っていた。やがて根こぎにさ
れる生きてる断面を奥さんはなでた。色とり
どりの重機類が集結し言い残すことばをじっ
と待っていた。

切り株に、奥さんは素足で立ち、両腕を水平
にしてくるくる回った。そうして、右上から
左下、左上から、白昼をひらいた。 
#黒筒の熊五郎

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閑静な住宅街の禁足地  鳥さん

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 鳥さんがみたい
 隣の空き地に
 鳥さんが来るから買って


コドモ化するとパパ化してくれる夫がペンタ
ックス8×21の双眼鏡を私の首にぶらさげ
てくれたその朝。

首にペンタックスをかけたまま朝食をとり茶
碗を洗い米を研ぎダイニングキッチンで仁王
立ちすると、夫はすたすたと奥から現れフラ
ッシュを焚いてくれた。

後は任せた。夫が無言で手を挙げ前方注視の
横顔のまま自転車が泳げば首からペンタック
スの妻は回れ右をしサンダル歩行でもどる。

と、高いフェンス沿いの通路でばったり三毛
猫とでくわした。おまえは前の世のミーちゃ
んか、妾になんのと因縁の睨みあいの続きを
する現世。

ふふふ妾にはいまひとつ強力な眼があるのだ、
まて、こらまて…。鴉が四度鳴き、遠くに同
数の呼応を聞いた。

 放置されたままの
 鳥たちの小楽園
 高いフェンスに 施錠された扉
 夕暮れには 迷い猫

アパートの窓から網戸とフェンス、二重の網
を透過するレンズを向けると、なにかおかし
い。眼鏡に双眼鏡はおかしい。乙女のように
眼鏡をはずすと、白昼何をしとるかと夫の声
が追ってきた。

任された全営為にペンタックスが加えられた
からにはイエッサー。穴ふたつとは名言なり
座右の銘なり。裸眼にくっきり丸ひとつの輪
郭イエッサー。

いざとなったら玉。玉をだせと繰り返す妄想
生活を玉梓が怨霊よ、脱却せよとの夫の願い
をペンタックスよ。見ヨ。強力ニ見ヨ! 見
たというまでペンタックス、鳥さんを呼べ!

ドアポストにゴソリと音がして、突如、不審
な監視者のように狼狽したが、ドミノピザと
は一切関係ないのでほっとした。ばかやろう
鳥さんが驚いて来ないじゃないか。出し抜け
に今カラデモ遅クナイと拡声器がひびく。

 …ヲ捨テ本隊ニ帰リナサイ
 帰ってます
 お家はここだとパパがいった
 敵がいるの? ミーちゃんかな
 フェンスの中に 敵がいるの?
 …ニ告グ、…ニ告グ…。

おかえりと言うと、夫が帰ってきてくれたの
で、今からでも遅くないの帰れソレントがわ
たしを包囲してわたしは逃げられなくなった
のと妻はいった。それで鳥さんはきたのかい
と夫が聞くので、ああ、鳥さん! そう鳥さ
んが、このフェンスの中にぱらいそ!

ぱらいそ…? 降り立っては飛び立つ鳥さん
がいるんだね。

眠ると妻が言うと、布団をかけてくれる夫が、
待っていたのにどこかで敵が現れて、その敵
をなんとかしないと鳥さんに戻れないんだね
というと、妻は嬉しそうにこっくりした。
#黒筒の熊五郎

ワオ!と言っているユーザー

ゴンドラ巡礼

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首がもどるところでしたか
逆様ですよ
願掛け地蔵さま
一緒に
どうです
夜のお散歩は
逆様で首ふる地蔵を背にする
白鷺二丁目
ふいに地蔵のもと石がいう
(ものいわぬこどものゆかわたな)

  止めてください
  男が残した鞄が危険です
  バスの運転手はハンドルを切る
  また山中だ いちめん茶色の地肌 窓の下は崖
  道路が見えない 巨大なすり鉢 見あげる
  そのむこうも山また山

降りる
白鷺二丁目でわたしは降りる
酔っても朦朧としてもなにがなんでも
終点だけ電光させて
窓に手をついたまま呆然とゆくだけのこんなバス
鞄など怖くはない 前触れにすぎない
「そんなことが ここで できるわけがない」
あの運転手
そういった
白鳥をどこまでも追うひとよ
天湯河桁(あめのゆかわたな)
胸先にまで髭がのびても
ものいわぬこどもが
あぎといったその白鳥
(わたしは追って)きたとでも

速度を緩めずに車が
大通りを一本入った三叉路を侵入していく
「どっちでも好きにさらせ」
すすけた祠に埃が舞った
「ワンカップ飲んでくだまかないでください
 つげの木地蔵さん」
とろんとすり減った目の輪郭がみるみる戻り
横のつげの木がいう
「おまえ変な駕籠に乗っとる」
「えっ」

  むきだしの断層 青銅いろの急流
  岩盤の台地 わずか ゆれる草                        
  切れるまで 延びている道                          
  眼下
  それら一瞬

「しかもまっ白…ウウム
 ゴンドラ巡礼!」

目の前を扉がしまる
誰か誰か
ゴンドラからわたしは電話する
野太い女の声の交換手が番号を復唱する
なんでこんな旧式なことが
観光地にメルヘンにあるようなゴンドラ
見せかけだけにきまっている
はやく誰か
ゴンドラは気がすむまでというように動かない

  嵌め込み窓ふたつ
  変容のお舟
  やがて光さしこみ
  白鷺たちの渓谷を
  ゆられてゆく

この追分
どちらをゆこうと

*天湯河桁(あめのゆかわたな)…日本書紀にのっている古代豪族。垂仁天皇の皇子誉津別皇子(ほむつわけのみこ)が髭が生えても物いわず、白鳥を見て「これは何だ」と片言を発したので、命を受けて出雲まで白鳥を捕まえに行った人物。

#黒筒の熊五郎

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簀巻き奥さん

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あなた
巻いてください
奥さんは
まっ裸でむしろの上に横たわり
ごろりごろり
鉄火巻きの要領で巻かれる

どうぞ
足をかけられ
粗縄できつく縛りあげられ
荒巻鮭の質感がする奥さんは
抱き起こされる

L字型の金具を
奥さんは脇腹に刺してもらい
買い物バックをすくってひっかけた
あなた買い物に行ってきます
ぺこり

自転車には乗れないので徒歩でゆく
沈められる前にあなたの好きな
のりたま補充しておきます
わたしが原因で原因の元はあなたで
あなたの元の素はわたし

電話ボックスに全力でダッシュし
よちよち駆け込み
L字の先でプッシュする
あなた わたしたちは編み上げ靴のひもなの!
あ 牛乳
きれてませんでしたか

あ こんにちわ
あの 犬 苦手なんです すいません
ぺこり

軸をふりふり奥さんの
歩く跡には
わらがほとりと落ちている
#黒筒の熊五郎

ワオ!と言っているユーザー

熊笹の女

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よいしょこらしょ
ほっほっほっときて
ピィィィィィィィィィィ
人には熊もあいたくないの
ときた七曲り
つとひらいた扇には
群来なつかしのォ 銀の海
ときたもんだ

ピィィィィィィィィィィィィィィィィ

なんで吹くのか忘れるほどに心地よさが浸るころ
がさがさっと
しげみが揺れる
喉ひっとしてかたまると
ゆるい女の歌声がするという

駆け降りる者の後ろに立っている
熊の縄張りで
しび しび 歌っているという

たつたつと魚の血が落ちているらしいとも
頭にはつむじがみっつ うねる漆黒
髪の毛ながくてながくてながくて
はあ
笹にからまって でてこれないのさ
そこはニヤッと笑って言うことになっている
       *                           

女が熊の縄張り にですか
採れたもの 交換してたって話だな
あのあたりは昔
畑があったらしいんだな
畑を守ってるんじゃあないですか
はあ 笹だらけの波だらけ
ざわざわっとくれば
凍(しば)れる景色というもんだ
   
やっと
   きたの

しびしび
と歌うしびはマグロのことですか
ここまで回遊してたって話は
定かでないのさ
とれた話は聞かないし
土地ではね鮭だともいうな

   手籠に熊笹を敷き
   やわらかい腹の 頭のない魚(うお)をいれ

したけども
このうんと先に鮪の岬ってあるのさ
岩が柱になってでさ もりもり盛り上がってでね
こんもり桜の林でさ 夏はおめぇ、エゾユリ咲いてね
海にほそ長くてさ 海みどり色に深くてさ
なんの魚だかなんでも 魚の形してるってんで
しび なんだよ
しび なんですか

   岬に
   女は現れた

なんでも その岬の主は大蛸で
怒って暴れて 海は大時化
船かっぱがえって 漁師が死ぬ
鰊はとれない 蛸の祟りだって困り果ててね

   遠いところ
   いってた
   ここから一番遠いところ いかなくちゃと

したけどある時
岬の主が江差の鴎島に嫁にいって
それから海は凪いだっていうことだ
鴎に蛸ですか
はあ 鴎の啼く音に
ふと目をさまし
あれが 蝦夷地の山かいな
ときたもんだ

       *                           

遠いところ いってた
いかなくちゃと 思って
女がいうと
斜面に眠る シベリヤ帰りの男は
顔に 季節はずれの花を配したまま

   北の北の北の
   夏は短い

うっとりと謡いながら 半身を起こし
舟形に瞑った ふた筋をひらくと
細紐が首からするりとほどけ 鎌首をもちあげる
女はひんやりとする 胴の鱗をつかみ
ちろちろと赤い舌を飾りに
おかっぱの黒髪を結った

   ドスビダーニャ ドスビダーニャ
   安心の家郷

半身の男を女は抱き
潮見の丘へ階をのぼる
なにかの用に打たれた
円形のコンクリートに額づき
半身の男を横たえ
頭のない魚を添えた
海鳥のふん白く
コンクリートはあったまっていた

       *

夏の凪の日の日没には
岬の展望台から狼煙(のろし)のような煙が立ち
沖にでた漁師には見えるけれど
陸からは見えないのだという

熊笹の女
しび しび と歌い
ときおり コリコリと齧る音をたてる
鮭の骨だろう
いや人の骨だという話である



*しびの岬の伝説…北海道乙部町に伝わる実際の伝説。しびはマグロの古名。しびの岬の主は大蛸で海が時化ると蛸の祟りと恐れられていた。しかし、あるとき江差の鴎島に嫁に行って海は凪いだという。
*鴎の鳴く音に ふと目をさまし あれが蝦夷地の山かいな…民謡江差追分の一節。
#黒筒の熊五郎

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キン ほたり。キン。。

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ながいながい吹雪がやんで
屋根裏部屋で
ほっと女は目が覚めた

なんてまぶし

まっしろい雪
なあ
あったけぇような気がするな
ばさばさっと音がしたかと思うと
鷹がいた
じっと目があったと思ったら
ぶいと飛んでった
また舞い戻ってきて
何をくわえているかと見てみれば
凍ったヤンマを
ことって置いた
(食べれってか)
虫は食べられないと顔をしかめると
たっとまた飛んでった
小半時もした頃だったか
窓の近くで四角い箱を背にしょって
ふらふら飛んでる鷹が見えた
(おや ずんぶ強ぇみてだな)
案の定 鷹はがtっと降り立って
箱をおろした
窓の桟に嘴をすりつけている
(おれに開けれって道理か)
蓋を静かに女は退けた

は これはおめの
エサだのがい

なかには真っ黒い毛の赤んぼがはいっていた
(鷹のことだ赤んぼエサにしても不思議でない)
女は頭がぐらぐらしてきた

おれに
食べれ
    って

鷹はふっと消えていなくなった

浜野廃屋から
ばさっこばさこと音が聞こえた
雪の村には
まだ、なんの足跡もついていない
軒先にはつららら

キン ぽたり。
         キン。。
#黒筒の熊五郎

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森の子

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ポケットに
生きてる古綿の重みの
雛がいた

夢のお告げは波打ち際で
(海の女神に
 傷ついた 雛を帰しない)
との声だった
ほう
それを知ったら惜しくなった

白い乳母車に雛をのせ
夜の岬に散歩にでかける
どれも淡い色の奥

似てる かな昔話の女に似てるかな
けれど部屋に
籠もりすぎても凶

海に女神いるって話
おまえ覚えてますか
日除けをたたんで
雛は
くるりくるり
顔を全方位にまわしている
なんでまた わたしに
うまいかい うちのハムスター
わたしは おまえを盗んだのですか
どうだろう
おまえの脚のかぎ爪は
御覧

みんながおまえに道をあける
わたしたちの月光浴

 波の砕ける音がするね
 さあ
 まるのめ ほうほう
 くるり目 ほう
 ままはは まるのめ
 かぎ爪 ほう
 夜界の枝で贄まてよ
 はばたけ ほうほう
 森の子 ほう

さあ
おまえ
海に女神がまだいたら
きっと岬に ほうほうと告げておくれ
傷などなかった羽になら
はじめから
おまえはポッケにいた
#黒筒の熊五郎

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ハニワ魔神外伝

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皆がおっぱい飲んでいた頃
水道がコチンと凍り
手にも足にも霜焼けができ いたくてかゆい島があった
無縁 歴史とは関わらぬ時が 桜を五月に咲かしていた

怒ォーン ォオーン
ほったらかしに
されたままのある村の岬のどて腹を貫く隧道を
魔神は歩いていた
どこだ どこにいる 娘 娘の泣く声がする
オレは墓を守る衛士
汝ゆけと君詔られたかどうだかもうわからないが
オレは目覚めた
オレは怒る 怒りのハニワなのだ

怒ォーン ォオーン
魔人は村の河原にきて 岩とみればひっくり返した
どうダア だんごむしども
ダアア

しょせんはだんご
関係ないと逃げるのは習性であろう
ならば 薄
おまえはどうか
秋 ですから
        だと
季に詠まれ自足顔した抒情どもめ
髑髏の目でも突き刺しておれ
なぜだ
洪水でもない日照りでもない不漁でもない
臭い息吐くほおずき目のオロチも朽ち果て幾千年
それでも なにか
人柱にしなきゃおさまらんものがあるのか
そこのそこのそこにへばりついている
コケ
きさま なにかもの言え
・ ・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・
来たんだ 来たんだ 来たんだオレは
娘 娘の泣く声が満ちている
怒ォーン ォオーン
ン? 何か光るものあり
魔人の頭上を 一際 照らしたかと思うと
背後にほとりと 降り立つものがあった
魔神がふりむくと 娘の泣く声がはたと止んだ
足下に亀を従え
柔和に羽を腰にたたみ うつむく白鶴
頂には鋭い一角を成し 青き光を発していた
(なつかしい
 ひびわれ ひびけ魔神)
金属の羽をひろげ
瞑目する一角鶴(と亀)は去った

オレは
知らん

魔神のまなこから
塩の珠ほろほろこぼれ こぼれつづけている
#黒筒の熊五郎

ワオ!と言っているユーザー

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