▲補習校事務所、2009年教育部会一同
教育部会理事が交代しました
2009年度教育部会長 平沼敏彦 Mitsui & Co. (USA) Inc.
1月29日に開催された商工会総会をもって、教育部会では5名の理事のうち、濱野理事、土屋理事、そして私の3名が退任し、留任した工藤副部会長(2010年度部会長)と小林理事に加え、今回選出された魚田理事(副部会長)、早川理事、荒木理事の5名による新しい教育部会体制がスタートしました。2009年度の理事の皆様、この1年間、何度も行った熱のこもった議論と、それぞれの担当分野における職務、本当にお疲れ様でした。そして工藤新部会長を始めとする5名の新理事の皆様の今年度のご活躍に期待したいと思います。
2009年度の活動を振り返ってみますと、まず、補習学校に通う商工会員子女数が全児童生徒数の約2割に減少し当地日系企業の陣容も縮小するという実態を踏まえ、商工会と補習学校の関係・位置づけの議論を常任委員会などで徹底的に行いました。その結果、商工会員の子女の比率が小さくなったとしても、商工会が引続き補習学校の運営母体であり続けることが商工会そのものの存在意義であるということが確認されました。このことは、商工会員の一人一人が、これまで以上に補習学校運営に、直接・間接を問わず関与し支援していくということを意味していますので、商工会員の皆様のご理解といっそうのご協力をお願いいたします。
補習学校運営に関しては、飯田校長先生、杭田教頭先生、杉本幼・高等部校長、中本事務総長、そして4月から加わったレイ主幹と、教育部会理事5名の合計10名による運営委員会において、学校方針について毎月熱のこもった議論を行いました。しゃくなげクラスを完全に廃止した新基準による学級編成の開始、新型インフルエンザへの対応、不審者対応ロックダウン訓練等々、教育環境の充実に注力しました。また4月から導入した主幹職・副主幹職制度は、校長・教頭が補習学校採用教員の指導にいっそう注力することができるようになり、大きな効果を上げています。
今年で21回目を迎えたベルビュー教育関係者日本派遣事業においては、例年の訪問先の1つである神戸市立葺合高校と、補習学校校舎をお借りしているサマミッシュ高校との間で、姉妹校の提携が行われました。商工会が長年続けてきた本事業がこのような形で実を結んだことは、商工会としても大変うれしくまた誇りに思います。以下に、派遣事業を担当された小林理事の翻訳(ご苦労様でした!)による派遣者3名の報告書を掲載します。どの派遣者の報告書からも、本事業がいかに大きな意義を持っているかがひしひしと伝わってきますので、皆様ぜひご一読ください。
最後になりましたが、2009年度の教育部会及び補習学校運営委員会の活動を支援してくださった在シアトル日本国総領事館の皆様、PTAの皆様、商工会員の皆様、その他数多くの関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
サマミッシュ高校の先生方の目に映った日本と日本の学校
2009年シアトル日本商工会教員派遣事業・派遣教員報告
Kristin Larson 先生
Robin Moore 先生
Tom Duenwald 校長
日本語訳 小林正幸運営委員(教育交流担当理事)
サマミッシュ校 日本来訪2009
私達の日本への旅を、意義のある骨太の文化交流としてくださったすべての皆様に心から感謝いたします。短い滞在でしたが日本で受け入れ先の方々から多くを学びました。日本にいる間ずっと、その刹那刹那に感激いたしました。私達はこの経験をいつまでも心に大切に抱いてゆきます。 シアトル日本商工会がその萌芽から大切に育ててこられたシアトルと日本の文化交流。今回、その中に加えていただいたことを私達は大変誇りに思っております。職員と会員の皆様、旅行代理店の方々、日本でのガイドさん達、自治体代表の方々のご親切。それに各学校での教職員の皆様から受けた丁寧なおもてなしは驚嘆の一語に尽きます。 私達3名は共に旅行し、忘れがたい経験と笑いを分かち合いました(笑いと申せば、奈良で2度までも迷子になったことも含めてです)。 以下に私達それぞれの回想と特に印象に残った事柄を記します。 *以下、原文ママ
ristin Larson 先生
日本は、いろいろな面でBellevueとは大きく異なり、また多くの面で似ていました。 私が経験した中で特に印象的で、今も強く心に残っている点は、人々の目的に沿った行動の仕方、自然に対する深い思いやり、そして、教育への情熱です。 日本についての印象を問われた時、最初に思い浮かぶのは、そこでは全てが何らかの目的に沿ってしっかりと準備が行われているように思われる事です。 会議での席順、食事の際の配膳ともてなし方、そのどれを取っても、人々には明確な意図があって、理にかなった行動をしている事が旅の初期に気づいた事です。 旅程二日めのことです。 神戸で黄色い線が歩道に沿って盛り上がる様に施されているのに気づきました。 その線について尋ねると、それが、盲目の人達を安全に誘導するための工夫だと教わりました。 なんという知恵でしょう。 誰にでも歩道が使えるように生み出された完全なシステムです。 この様に、あらゆることがしっかりと目的性を備えているということは、外国人の我々にとってもルール違反を犯して恥をかく事が無いという点で、とても心地よく、ありがたい事なのです。 次に強く印象付けられたのは、日本人の自然に対する敬意です。 街角には殆どゴミが落ちておらず、店の先々で人々が公道を掃いているのを、幾度も見かけました。 米国では、どうせまた汚されて無駄だからと、公共の場を掃除しようとする人はあまり居ません。 しかし、日本では、そうする事がなかば当たり前で、そのことが町々を清潔で整った状態に保つように作用しているのです。 また、実際に排出されるゴミの量自体が少なくおもわれます。 恐らく、物質面でも量より質を求める国民の資質が影響しているのでしょう。 自然を敬うという点から言えば、奈良などで石篭に囲われた神社や仏閣を訪れた際に、その環境との調和に私は心温まるものを感じました。 都会に暮らしつつも、森や平原を愛する者として自然を慈しむその精神的なアプローチがとても新鮮だったからです。 そして最後になりますが、日本での教育に対する傾注の度合いにも感激しました。 訪問させて戴いたどの学校でも、生徒たちが生活の多岐に渡って指導を受けている事は明白でした。 それが伝統として書き伝えられた事柄であるなしに、-------例えば、校舎を清潔に保つ事、きちんとした姿勢で着席することなどです。 米国でなら、公立学校で扱う対象の範囲を超えると考えられる、あらゆる技能を生徒たちは学校でも教わっているのです。 訪問した学校の全てが、たいそう効率的に運営されている様に見えたのは、こうした作法を共有する教育がなされている為でもあると思います。 それに、付け加えるならば、お会いした数々の方が日本の文化-----宗教、歴史上の英雄、旧跡、神戸大震災などについて熱心に話して下さった事も深く心に残っています。 私達は行く先々で興味深い授業を受ける恩恵に与りました。 この短い訪日で私は自分の言葉では尽くせないくらいの事柄を学びました。 この10日間は私の中では、少なくとも100日分の厚みがあると思います。
obin Moore 先生
今回の日本への旅を実現して下さった日米双方の皆様に対して、どうお礼を申し上げてよいのか、適当な言葉が見つかりません。 旅行の始めから終りまで、それぞれの街を、学校を、そして日本の風習を私達に体験させてあげようと、受入れ団体の皆様が無私になって奉仕して下さった事に強くうたれました。 京都の旧跡を訪ねたり、学校を見学させて戴いたり、私達は毎日、新たな文化的経験をする事ができました。 本当にありがとう御座いました。 ところで、日米には大きな違いが多々あります。 そして、正直申せば、私はこの旅で両国の違いに触れることを期待していました。 旅の準備にページを繰った何冊かの旅行案内に書かれていた様な違いを、体験してみたかったのです。 しかし、私を愕かせたのは、そうした差異よりも日本と米国が共通して持ち合わせている部分が随分とある、という事実でした。 訪問させて戴いたどの学校でも、到着の直後から、両国の文化の違いを目の当たりにする事ができました。 私達の到着が何時であれ、学校の皆さんは暖かく迎えて下さいました。 そして、一様に、私達は礼を尽くす形で、居心地よい座談室に通されました。 そこで、少しよそよそしく名刺交換をすることから始まり、お茶を戴くことになります。 米国では、職場であれ、学校であれ、あんな風に丁寧に歓待を受ける事は希です。 お茶を戴きながら、ゆったりと時間を一緒に過ごすことで、今後の意味深い交流が静かに幕を開けるのです。 各学校で、教師の皆さんや生徒達と話す機会に恵まれました。 そして、学校で日々直面する問題について議論しました。 正直な処、私は日本の先生や生徒が抱える課題は私のそれとはかけ離れているだろうと考えていました。 ですから、多くの先生、ましてや校長先生までもが、私が米国で持っているのと正に同じ問題------授業のレベルに付いてこれない生徒や、充分に日本語を解せない状態で入学してきた生徒を交えて、どうやって円滑にクラスを纏めていくのか------、に取り組んでいらっしゃることを知って、非常に愕きました。 こうした意見の交換のお陰で、日本の教育環境と生徒たちに関する自分の誤った理解から、私自身が解放されたことを大変喜ばしく思います。 何故なら、今、私は教育者として自分が直面する課題が、決してクラスや、学区、あるいは州や国に限られたものでなく、万国共通にあるものなのだと気づいたからです。 問題解決に向けての協力者が地球の裏側にもいることを知ったからです。
Tom Duenwald 校長
私の日本の憶い出は絶え間ない新旧の文化の融合がその中身です。 東京タワーから見えた富士の悠久のおおらかさ。 古語と現代語と英語を学校で学ぶ生徒たち。 茶道に代表される伝統を大切に保ちつつ、和洋折衷を大胆に行う異文化への開放的な態度。 21世紀の近代的都市の中に擁かれ、今も佇む寺社仏閣。 まるで100年以前と同じく自転車や徒歩で街をゆく人々の間を、何の違和感も無く駆け抜け機能する超近代的な交通機関。 私達が日本で過ごした時間は太古から続く文化と現代との挟間を急流の如くさまよう経験と呼べるでしょう。 訪問先に関する想い出は私の場合、そこで得た友人と、教え学ぶことへの情熱とに深く結びついています。 神戸では葺合高校と姉妹校提携を結ぶという、貴重な機会に恵まれました。 そこで、現校長の田阪先生に加え、お二人の前校長にもお会いできました。 どちらも竹内先生なので、お一人は、「大タク」、もうお一方(訳者注:二宮尊志先生、Duenwald校長の勘違いがありました。)が「小タク」と自己紹介戴きました。 ご三名と話すうちに、葺合高校がこんなにも英語教育に熱心で、国際的且つ開放的であり、生徒たちを将来国際的な場で問題を解決できるリーダーになるべく、育んでいる理由がよく解りました。 「小タク」先生にご案内戴いた神戸はとても楽しく、また、その夜にご馳走になった中華料理の席ではシアトルとベルビューに関係する教育者の方々に多数お会いしました。 私達の神戸訪問は「大タク」先生がご自分のウエッブサイトに写真を載せて下さいました。 葺合高校では本当に沢山の友人を得た気がします。 今後も姉妹校の関係を通じて、互いに更なる恩恵を得ることと期待しています。 八尾市とベルビュー市の姉妹都市関係を継承すべく、私達は八尾市を訪れました。 同市では田中市長、中原教育長を始め、数々の重鎮にお目にかかる栄に与りました。 南山本小学校では、上村清校長にご案内戴き、小学生の授業を参観することと、生徒と話す機会を頂戴しました。 特筆すべきは、全生徒から受けた歓迎と、いくつかの日本の伝統的な遊びに興じられた事、それに、一年生達とその担任の先生と一緒に教室で給食を戴いたことです。 子供たちとはその際、好きな色や動物を教えあいました。 ある男の子が新幹線を含め、列車について一生懸命に話してくれたことが忘れられません。 大正中学では南原秀計校長のお計らいで学校を見学させて戴き、沢山の授業を見ることが出来ました。 八尾市での二日間では教育長に晩餐に招いて戴いたり、教育委員会の方々に設けて戴いた市長を交えての昼食など、二度とない経験をさせて戴き、大変うれしく思います。 東京では、オバマ大統領が天皇陛下を表敬した直後に、私達も皇居を訪れた為、普段は閉鎖されている処にも入れた、というおまけもありました。 庭の美しさと年季の入った盆栽の素晴らしさには感嘆しました。 さて、東京で私達を迎えて下さったのは、東京学芸大学付属高校と中学校です。 そこで、海外で学校へ行った経験のある生徒達と話す機会があったことはとても大きなインパクトでした。 彼らは皆将来に対し意欲的で、医薬や、宇宙科学や、国際的なビジネスに興味を持っていました。 それぞれ滞在した地域によって訛りはあるものの、彼らは大変上手に英語を話し、海外で生活することでの利点と大変な事、あるいは、「帰国子女」として経験する障害について語ってくれました。 また、各地での補習校が彼らが日本語と日本文化を培っていくのにどれだけ役立ったか、あるいは、この学芸大学付属校が日本での教育にうまく溶け込めるように、いかに助けてくれたか、を教えてくれました。 締め括りとして、私達の訪日が生涯忘れえぬ経験となる様、お手伝い下さった全ての方に深くお礼申し上げたいと思います。 私達はいかに日本がそして日本の人々が素晴らしいかを知ることができました。 お会いした方々の心の片隅ににでも、何か良い思いが残せたとしたら私達は本望です。 いつの日かあの方々とお逢いできることを強く願っております。 勿論、何方でもベルビューにお越し下さる際は喜んでお迎え致す所存です。 心よりの感謝をこめて。
Kristin, Robin, and Tom
シアトル日本語補習学校在籍者数(2月3日現在)
男子 女子 合計
幼稚園部 28 31 59
小学部 179 192 371
中学部 31 43 74
高等部 18 22 40
合計 256 288 544