夏の山が衣を夕日に染め 君は紅(くれない)を着こなす 萠ゆる思いは麗しきを枯らし 僕は黄に茶を塗しながら 長襦袢となり内の夢を見る 僕らは実ることを知っている 帯が固く巻きつこうとも 秋の山が必然を全うすることを
君はちっとも笑わない 僕は気になってしまう どうすれば笑ってくれるのだろう いろいろ試してみたけど やはり視線は遠く何処かの世界 君が微笑んだら どんなに可愛いだろう どんなに美しいだろう どんなに嬉しいだろう 僕は何も知らない 君が君でいることがちっとも 迷惑だろうか 声を掛けてしまうことは 望まれていないのかもわからない でも君は僕を邪険にしていない 君が微笑んだら どんなに可愛いだろう どんなに美しいだろう どんなに嬉しいだろう 僕は今日も君に話しかける おはよう そう言って微笑むのさ
私が私を振り返らない そんな詩を書いてみたい そしたら詩ではなくなって しまうのだろうか そんなことはない あなたと私を媒介する者になり 真実よりも大事なものが 見えてくるはずだろう 真実以前 加工した思想にはいつも 騙し絵が施され 言葉を使わない詩を書く 誰にも読めない 私にも読めないあなたの詩 あなたが此処にいる いつの日か私を消したその詩を
ひとは難しい 僕も難しい だからこんがらがっちゃう あっち行って考え こっちに戻って考え くるくる回って考え 頭の中は足跡で どんどん黒くなってしまい 最後はすべて黒くなってしまう 訳がわからなくなる頃 考えることにずいぶんと疲れて いずれ寝てしまう そして目が覚めると 頭の中が白くなっている するとまた黒にしたくなるんだ ひとは難しい 僕も難しい だからこんがらがっちゃう