公園で匍匐前進しながら 口を伸ばし草に喰いつき 怪しい乾きが裸にさせ 香りに削られてゆくカラダ 連なる360度のエゲツない ドロドロしている私は何者か クルクル回る赤い雲 膝に滲みた冷たい青空 痙攣は何処までも夢みる 可能性のひと欠片をフラットさせ グロテスクな骨を地に刺して 右に私は何者か、左に私は何者か 正面に私は何者か、10時に私は何者か 2時に私は何者か、何者かは私か 頭で散歩する爺さん婆さん 足を貸してくれる子ども すみません私を知りませんか どの枯葉が私の首なのか 歩き出せばゴミ箱に私は何者か 広げる途中で破れる望み 駄目になってしまう精密機械は 笑いに逃げていくロケット 視界の良いジャングルから声 堕落のひと欠片をシャープさせ ビーティフルな性を宙に浮かし 右に私は何者か、左に私は何者か 正面に私は何者か、10時に私は何者か 2時に私は何者か、何者かは私か
重なる想いと付け足される想い 贈られてきた詩集のページをめくる 有難いことに詩集を頂くことが多くなり 多角視野による詩人の凝縮されたエネルギーを 自分なりに解凍する楽しみを覚えた しかし詩を書くことと同じように 読み砕いていくという自分のセンスが問われる 自由というのは楽しみにいつも厳しさが伴う まずは先入観を捨て受け入れる パッと字列の風景を見て決めてはいけない 自分のキャンパスはなるべく白くして 描かれ易くしておかなければ すると和紙に染み込むように 滲みながら重なる想いが感情を動かす すでに文字を追っている感覚はなく 読者が創る自由度の高い芸術であり 文字が文字でなくなるのが詩の世界だ だから楽しいだけではない 厳しさがそこにあるから詩の魅力に囚われ 詩を読むことに覚悟が持てるのである 有難き機会に溺れるのも良い
夜のブランコが飛んで行く 僕の僕を振り落とし 滑り台は腰を持ち上げて 遊園地への旅に出発したのさ 棒倒しの棒が見つからず 仕方なく僕が棒になっちゃった 削られる足元からは 隠したはずのテストが現れる 「なにもない世界ってどんな感じですか 夜に聴いてもいいですか」 鉄棒は丸く輪になっては 手招きして軽くステップをして溶けた ジャングルジムはひっくり返り クルクル回れば潜って消えた 砂場はさよならも言わずに 風に紛れて誰かになっちゃった 遊具のない公園には 落書きされた上履きが一足 「なにもない世界ってどんな感じですか そこは僕の行くところですか 」
僕はホットの缶コーヒーを探している まだ自動販売機にはないが もしかしたらあるかもしれないと 襟足からスッと入る冷たさ 探してしまうのは季節のいたずら まだ探しているのは僕の余裕のなさ 今日も行く何処へ行く仕事に行く 課せられた作業へ重たき足で突っ込んで行く
みんな、向かっている コーヒーを啜り 数分後には私もそちらへ ふと、何のために働いているのだろう 乾いた空気に香りだけが流れている チラッと視線が合う見知らぬひとに 無言の催促を感じて ドアを押せば 疑問は香ばしき哲学の風 根源を覗かされても乗り切れない 乗ってしまったら踵を返してしまう 上手くいく一日を願い 安全という人生に従いながら 辻褄を合わせない季節の中 彷徨える衣を掛けられ 私の容器は螺旋で満たされてゆく けして悪くない季節 人間らしくのらしくの風が吹き 深み嵌ってゆく思考は 微かにユーモアの香りが混ざって
感じたい もっともっと青い空を 重たくなったこころ 持ち上げて散らして欲しい 何処にいるのかさえ分からないくらい 青く 青く 青く 初めて空になりたいと思った 知らぬことばかりのまま いつまでも吹き続ける青のように
≡9≡ 水蒸気をバケツで集め、休む暇もない 虹の作業員は近頃忙しい 雲の上ですってんころりん 笑って楽しい雨を降らせている たまに威張って指示する班長に叱られながらも あっち行って、そっち行って、水蒸気を追いかける 「班長様、あなたも水蒸気集めを手伝ってください」 「バカを言うな、俺は班長だぞ!」 「そうでした。あなたは班長様、失礼しました。 でも、汗をかくって気持ちいいですよ」 「……汗をかくのは気持ちいいか、俺様も水蒸気を集めるぞ!」 「今日は班長様、どうなされたのですか?」 「俺様は最近、からだが動くようになったんだよ!」 「でも、無理をなさらないほうが……」 「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」 「はい」 班長の大きな声に作業員はすってんころりん 雲の上に仰向けになると厚い雲に覆われた 作業員は班長から叱られるとドキドキしてしまうので すぐに立ち上がり、また水蒸気を集めはじめた 「汗をかくのは気持ちいいな!」 「そうですね、班長様」 続く。。。