タフなスマホ
12月
12日
「誰か、助けてくださーい」
夫人の声がする方に振り向くと、白髪の男性が歩道の縁石と車の間に挟まれる形でうつぶせに倒れていた。
駆けつけて頭を打っていないことを確かめてから彼を起こそうとする。
が、満身の力を込めても起き上がらない。
その巨体は悠に100キロを超えていたであろう。
彼の背中に私の胸を密着させて、両足を彼の胸あたりの位置に踏ん張りながら何とか起き上がってもらう。
無事に彼を車に乗せ、その後目的地で1時間ほど経ってから胸ポケットに入れていたスマホがないのに気づいた。
すぐにその場所に向かってみたが見つからない。
友人らは警察にも連絡してくれる。
「もう一度行って、その付近を探すべきだ」
その友人の勧めに従って再度訪問してみる。
すると縁石のすぐ側に黒いスマホがこれまたうつぶせで寝ているではないか。
この時の喜びは宙にも舞い上がってしまうほどだった。
ただしスクリーンがひび割れていて、文字を判読するのも苦労するほど。
このスマホの上を車が乗り上げように感じている。
スクリーンにめっちゃヒビが広がっているだけで、どんな機能も損傷していないのがまた嬉しかった