ポルシェ・カイエンターボは、4.0リットルV8エンジンのバンク内側にターボチャージャー2基が配置された、センターターボレイアウト(ホットV構成)を採用している。 レスポンスに優れている構造でもありパワフルで、2.4tの巨体にもかかわらず常識外れの加速をする。 AWDでもあり、巨大なタイヤが路面をつかんで離さないが、そのパワーが実用的かと言えばそうではない。 あらゆる電子デバイスが、このクルマをコントロールしていてはくれるが、ドライバーはなぜか気持ちが悪い。 GT3やGT4を愛する者としては、オラオラにも見えてポルシェらしくない。 広くてお客は喜ぶが、僕が運転したいクルマかと言うとそうではなかった。 一方のフェラーリ GTC4 Lusso Tは、3.9リットルV8ツインターボエンジンで、各バンクの外側にターボチャージャーを配置したサイドマウントターボレイアウトを採用している。 610馬力のV8エンジンは、12気筒エンジンのような演出された排気音を奏でる。 長大なボディは、これまた演出されたようなハンドリングを示し、想像以上にノーズがインに切れ込む。 タイヤは正確に路面と接地し不安がなく、これは素晴らしい。 ある意味4人乗り乗用車としての実用性はあるが、困ったことに走行距離が延びると恐ろしく価値が下がる。 いくらでもお金がある人には向いているかもしれないが、要するにこのクルマは、庶民のファミリーカー部門には使いにくい。 それに、サウンドもハンドリングも、実に手の込んだ演出であって、こいつの本性が見えてこない気がしてならなかった。 こちらも、サーキットの同乗走行があればお客は喜ぶが、僕が乗り続けるには不向きなマシンと言わざるを得ない。 そこで新しいファミリーカー部門は、ボディサイズも走行距離も気にせず、実用的であろうマシンを選択した。 2016年のメルセデスAMG C63 S ステーションワゴン。 年式から価格もこなれて、実際に一桁違う。 小さなCクラス ステーションワゴンのボディに、510馬力のエンジンが押し込められている。 メーカー純正のエンジンスワップ車両と言っても過言ではない。 年式が古いにもかかわらず、4.0リットルV8エンジンのバンク内側にターボチャージャー2基が配置された、ホットVレイアウトは、前出のカイエンターボと似た構成だ。 小さなボディのFR車が、このパワーを受け止められるのか心配ではあるが、非常に楽しみな一台だ。 このエンジンの場合、インタークーラーの構造は通常のものではなく、チャージエアーを間接冷却回路で水冷する。 これは、エンジンの水冷ラジエターと共有しているため、ラジエターの容量を向上させることでパワーアップが期待できる。 その他、エアフローの改善及びキャタライザーの改善、プログラムの変更で600馬力オーバーを得ることは確実だ。 国産の「R」バッジを付けたクルマがいかにもと言わんばかりにボディをいじっているにに対し、C63 Sの外観は控えめな変更に留まっている。 AMG C63Sのエンブレムは廃し、廉価版のC180のエンブレムを装着するので、メルセデスに興味がない人にとっては、外観上に何の変哲もないステーションワゴンが意味不明の加速をするシーンを目撃することになるだろう。 当然ながらこれらの変更は、合法の中で行われます。 また本格的な全開走行は、サーキットでしかできないが、こういう楽しみはカーマニアにとってのささやかな遊びだと考えている。