松陰のように生きることはできない。それでも、彼の言葉に背を向けずに生きることなら、できるかもしれない。
7月
3日
窓を少しだけ開けると、山からの風がゆっくりと入り込んでくる。
夏の気配を含んだその風は、どこか遠い昔の匂いも運んでくるようで、私は手にした珈琲の湯気を眺めながら、ぼんやりと道の方へ目をやる。
あの道は、かつて参勤交代の行列が通ったという。
今は軽トラックがのんびりと走るだけの、どこにでもある田舎道だが、足を止めて眺めていると、不思議と時間の層が重なって見えてくる。
槍を担いだ足軽や、疲れを顔に出さぬように歩く供の者たち、その中に混じる人の息づかいのようなものまで、ふと感じることがある。
そんなことを思いながら、吉田松陰のことを考えていた。





















